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日本バーチャルリアリティ学会第 11 回大会論文集 (2006 9 ) 反射像を利用した高解像度触覚センサ アクティブパターンの検討High-Resolution Tactile Sensor using Movement of a Reflected Image –The Use of Active Patterns– 1 , 1) 1) Satoshi Saga, Hiroyuki Kajimoto and Susumu Tachi 1) 大学 (〒 113 7-3-1, {saga,kaji,tachi}@star.t.u-tokyo.ac.jpAbstract : In recent years, many tactile sensors have been developed with the advancement in robotics. For example, there are sensors that measure the contact state or force distribution. They are very useful, but the resolution of the measurement is still inferior as compared to that of a human. Thus, we propose a new type of optical tactile sensor that can detect surface deformation with high precision by using the principle of optical lever. We construct a tactile sensor that utilizes the resolution of a camera to the maximum by using transparent silicone rubber as a deformable mirror surface and taking advantage of the reflection image. This time we consider the way how to utilize the active pattern. Key Words: tactile sensor, optical lever, reflected image, transparent silicone,active pattern 1. はじめに ,ロボット い,多く 覚センサが されている. 態を するセンサ するセンサ があげられる. する 覚センサ して,1 する 6 センサ 態を するセンサ, する 覚センサ されている [1] 多く センサ して,センサユニット ユニットに があげられる. 々に センサを させるため,各センサユニット され,ユニットから するた それぞれ される.そ ため すほ センサ ストレスを けるこ い. また, レベルにおいて 覚センサ していくつか されている [2, 4].これらセンサ セン シング をカメラに するこ ,ユニット から くすこ きた ある.しかし, スポットを マーカに依 しているため,カメラ かしている いえ い. そこ てこに したセンサを する. てこ するこ により,変位を拡大 する ある. する 1: センサ断面 センサ して ったセンサ して てこを し, カメラ かすため, した しい 覚センサを 案する.これら たす ために する. して, シリコンゴムを いる. シリコンゴムが する における ら,こ して つこ る. するこ により, つセンサ ( 1) する. 550

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  • 日本バーチャルリアリティ学会第 11回大会論文集 (2006年 9月)

    反射像を利用した高解像度触覚センサ

    –アクティブパターンの検討–

    High-Resolution Tactile Sensor using Movement of a Reflected Image

    –The Use of Active Patterns–

    嵯峨 智 1, 梶本 裕之 1), 1)

    Satoshi Saga, Hiroyuki Kajimoto and Susumu Tachi

    1) 東京大学 情報理工学系研究科(〒 113 東京都文京区本郷 7-3-1, {saga,kaji,tachi}@star.t.u-tokyo.ac.jp)

    Abstract : In recent years, many tactile sensors have been developed with the advancement in

    robotics. For example, there are sensors that measure the contact state or force distribution. They

    are very useful, but the resolution of the measurement is still inferior as compared to that of a

    human. Thus, we propose a new type of optical tactile sensor that can detect surface deformation

    with high precision by using the principle of optical lever. We construct a tactile sensor that utilizes

    the resolution of a camera to the maximum by using transparent silicone rubber as a deformable

    mirror surface and taking advantage of the reflection image. This time we consider the way how to

    utilize the active pattern.

    Key Words: tactile sensor, optical lever, reflected image, transparent silicone,active pattern

    1. はじめに近年,ロボット工学の発展に伴い,多くの触覚センサが

    開発されている.例えば接触状態を計測するセンサや,力

    分布を計測するセンサなどがあげられる.力を計測する触

    覚センサとして,1点の力を測定する 6軸力センサや,接触

    状態を計測するセンサ,力の分布を計測する触覚センサなど

    が市販されている [1] .

    多くの分布型の力センサの欠点として,センサユニット

    の数とユニットに伴う配線数があげられる.個々に小さな

    センサを分布させるため,各センサユニット自体は計測面

    に近い場所に配置され,ユニットからの情報を集約するた

    めの配線はそれぞれ独立に集約される.そのため測定を繰

    り返すほどセンサ自体はストレスを受けることとなり劣化

    を免れない.

    また,研究レベルにおいては光学式の分布型触覚センサ

    としていくつか研究されている [2, 4].これらセンサはセン

    シング部分をカメラに集約することで,ユニットと配線を

    計測面から無くすことができた好例である.しかし,測定

    スポットを個々のマーカに依拠しているため,カメラの解

    像度を十分に生かしているとはいえない.

    そこで我々は,光てこに着目したセンサを検討する.光

    てことは,反射の特性を利用することにより,変位を拡大

    する手法のことである.我々は,接触対象を測定する触覚

    図 1: センサ断面

    センサとしての視点をもったセンサとして光てこを利用し,

    カメラの解像度を十分に生かすため,反射像を利用した新

    しい方式の触覚センサを提案する.これらの性質を満たす

    ために我々は柔軟な鏡面を利用する.

    柔軟な鏡面として,今回は透明なシリコンゴムを用いる.

    シリコンゴムが空気と接する境界における屈折率の分布か

    ら,この境界面が鏡面としての反射特性を持つこととなる.

    この鏡面反射特性を利用することにより,柔軟な鏡面を持

    つセンサ (図 1)を構成する.

    550

  • 2. 原理我々のセンサでは,柔軟な鏡面をどのように構成するか

    が重要なポイントとなる.柔軟な鏡面を構成することによ

    り,微少変位を拡大して取得することができる光てこの原

    理を利用可能となり,さらに,反射像全体を利用すること

    により,カメラの解像度を最大限に生かすことができる.

    柔軟な鏡面として,今回は透明なシリコンゴムを用いる.

    これにより,シリコンゴムと空気との境界の屈折率分布に

    より,スネルの法則から全反射条件が規定される.この鏡

    面反射特性を利用することにより,柔軟な鏡面を持つセン

    サを構成する.

    2.1 反射像の変形

    光学式センサとしてカメラを用いるものの多く [4, 2]は,

    マーカを追跡することにより変形を捉えるものがある.し

    かしこれらはマーカの解像度によってセンサの解像度も制

    約をうけてしまう.我々は,カメラの解像度を最大限に利用

    するため,反射像を利用した新しい方式の触覚センサを提

    案する.光てこと柔軟な鏡面を組み合わせて用いることで

    触覚センサとして利用する.図 1のように画像パターンとカ

    メラ,透明シリコンゴムを配置することにより,画像パター

    ンからの散乱光がシリコンゴム境界で反射し,カメラに結

    像する.このとき,シリコンゴムに接触対象が触れること

    によってシリコンゴム境界が変形する.これにより反射面

    が変形を起こし,画像パターンの反射像が変形する.この

    変形から逆問題を解くことにより反射面自体の変形を測定

    する.これにより,反射像の全てが情報を持つことになり,

    カメラの解像度を最大限に利用することができる.

    このとき,画像パターンとして動的に変更が可能なアク

    ティブパターンを用いることを検討する.アクティブパター

    ンを用いる例としては,変位による画像変化を打ち消すよ

    うにパターンを変化させることにより,零位法のような測

    定方法を可能にする手法などが考えられる.そのためにま

    ず,接触による変位によって,反射像が垂直,水平方向にど

    のように変位するかを定式化する必要がある.

    2.1.1 幾何光学

    図 2: 幾何光学 (垂直)

    図 3: 幾何光学 (垂

    直)(拡大)

    まず,センサの垂直方向についての幾何光学を考える.図

    2のように,撮影対象となるパターンが平面状に配されてい

    るとき,このパターンのある面をパターン面 pと名付ける.

    パターン面 pと反射面 qのなす角を α0,撮像面 rと反射面

    q のなす角を β0 とする.

    反射面 q上における各点での水平からの傾きを θとする.

    変形前に平面 q′ であった面が変形後に曲面 q となり,P0

    から l の距離にある Q1 が d沈みこみ,θ1 傾いているとす

    る.同様に P0 から l + ∆lの距離にあるQ2 が d + ∆d沈み

    こみ,θ2 傾いているとする.このとき,P1 → Q1 → R1,P2 → Q2 → R2 と像が映るときを考え,カメラに入射する光線群がパターン面では α1, α2,撮像面では β1, β2 傾いて

    いるとする.Q1, Q2 における反射面の傾きが θ1 → θ2 と連続的に ∆θ 変化するとき,Q2QH で表される高さ変位 ∆d

    ∆d =

    ∫ ∆l0

    tan(θ +∆θ

    ∆ll)dl (1)

    =∆l

    ∆θlog(| cos θ

    cos(θ + ∆θ)|) (2)

    で表される.また,反射面における入射角と反射角の対称

    性から,

    6 P2Q2QH = 6 QHQ2QR − 2 6 QHQ2Qn (3)α2 = β2 − 2θ2 (4)

    同様に

    α1 = β1 − 2θ1 (5)

    次に ∆l で m = P0P1, w = R0R1 を表す.図 3において

    4P0P1Q1 での正弦定理より,

    γ = arctand

    l(6)

    m =√

    l2 + d2cos(α1 − γ)cos(α1 − α0) (7)

    と表せる.同様に

    w =√

    l′2 + d2cos(β1 − γ′)cos(β1 − β0) (8)

    が成立する.

    センサの水平方向についても同様に幾何光学を解く.4PQP0

    図 4: 幾何光学 (水平)

    図 5: 幾何光学 (水

    平)(灰色面)

    における正弦定理より,次式が成り立つ.m

    sin(π2− (α0 − α1)) =

    PQ

    sin(α0 − γ)w

    sin(π2− (β0 − β1)) =

    QR

    sin(β0 − γ′)(9)

    551

  • 図 5より, P−Q =

    PQ

    cos α−

    QR− =QR

    cos β−

    θ− =β− − α−

    2

    (10)

    また,AB,EF間の距離を考え,QR− sin β− + w− = l

    ′−

    P−Q sin α− + m− = l−

    L0− = l− + l′−

    (11)

    が成立する.このとき,{C ≡ −QR− sin β− + L0− − w− − m−D ≡ PQ (12)

    とおくことにより,P Q,α は下記のいずれかで表される.

    {P−Q = −C2 − D2√

    C2 + D2, α− = − arccos[− D√

    C2 + D2]},

    {P−Q = −C2 − D2√

    C2 + D2, α− = arccos[− D√

    C2 + D2]},

    {P−Q =√

    C2 + D2, α− = − arccos[ D√C2 + D2

    ]},

    {P−Q =√

    C2 + D2, α− = arccos[D√

    C2 + D2]}

    (13)

    2.2 反射面の再構成

    我々のセンサにおいて垂直方向について測定できる量は

    m, w, β1, β2 であり,既知の量は L0, α0, β0 である.求めた

    い量は θ, dの分布である.式 2より,∆θ, ∆lがわかれば∆d

    が構成でき,∆θ, ∆dがわかれば θ, dを再構成できる.しか

    し,式 7,8において θ → θ + ∆θ, l → l + ∆l としても,未知数の数に対し式が少ないのでこのままでは解けない.

    ここで,

    ∆α ≡ α1 − α0 (14)

    とし,7を変形した式

    m2 cos2 ∆α − (l2 + d2)(cos2(α0 + ∆α)) = 0 (15)

    において,γ = 0, ∆α → 0として,2次のテイラー展開から ∆αを表すと,

    ∆α =

    −(d2 + l2) cos α0 sin α0

    §

    √√√√√√ (d2 + l2)2 cos2 α0 sin

    2 α0

    −(m2 − (d2 + l2) cos2 α0)£((−m2) + (d2 + l2)(cos2 α0 − sin2 α0))

    (−m2) + (d2 + l2)(cos2 α0 − sin2 α0) (16)

    となり,式 5,14,16より θ1を既知の値と測定値で表現できる.

    式 2において,Q1 を n番目の特徴点とし,n番目の ∆d

    を ∆dn と表すと,境界面の連続性から,

    ∆dn ' ∆dn+1 (17)

    を仮定する.これにより式 2は下記のように表せる.

    ∆dn+1 =∆ln∆θn

    log(cos θn

    cos(θ + ∆θn)) (18)

    l = 0 と l = L0 では d = 0 を仮定することができるので,

    式 7より lnを求め,θnを求めることができる.得られた θn

    から∆θn を求め,式 18を用いて∆dn+1 算出する.これを

    漸次繰り返すことにより,α, dの分布 αn, dn を求める.

    水平方向については,式 13より α までは算出される.こ

    れをもとに式 11より θ を求める.得られた θ に基づき,

    垂直方向と同様に式 18を用いることで dn を求める.

    3. シミュレーション前節の幾何光学に基づき,シミュレーションによってそ

    の精度を確認する.なお,変形する形状は横軸 1200[pixel]

    に対し縦軸 9[pixel] 程度の大きさである (図 6).図 6で示

    すような曲面を上下反転したものを反射面として想定し,

    α0 = β0 =π

    4,カメラ中心を無限遠として β1 = β2 = β0,

    L0 = 1200とする.

    まず垂直方向について検討する.この計算結果が図 7,8で

    ある.

    0200

    400600

    8001000

    1200

    0

    200

    400

    600

    800

    1000

    12000

    2

    4

    6

    8

    10

    l [pixel]l_ [pixel]

    Depth [pixel]

    図 6: 針状変形

    実線がもとの反射面形状であり,−は∆l, ∆dを l = 0から上昇系列で加算したもの,4は l = L0 から下降系列で加算したものである.

    図 7: θ の分布 (垂直) 図 8: 深度分布 (垂直)

    続いて水平方向のシミュレーション結果を示す.実線が

    もとの反射面形状であり,− は ∆d を l = 0 から上昇系列で加算したもの,4は l = L0 から下降系列で加算したものである.

    真値との誤差について検討すると,垂直,水平方向とも

    に誤差率 (誤差/真値)は全域で 1%程度におさえられている

    552

  • 図 9: θ の分布

    Distribution of depth (horizontal)

    -2

    0

    2

    4

    6

    8

    10

    12

    0 200 400 600 800 1000 1200 1400

    l_ [pixel]

    dep

    th[p

    ixel

    ]

    Original depth

    Series of rises

    Series of drops

    図 10: 深度分布 (水平)

    ことがわかる.

    4. 実装前節におけるシミュレーションに基づき,実際のシステ

    ムを構築し,動作を確認する.透明なシリコンゴムとして,

    付加重合型のシリコン (KE109A,B [3]) を用いる.作成さ

    れた柔軟な鏡面を写すカメラを適切に設置し,固定する (図

    11).

    図 11: センサ概観図 12: 変形の様子

    5. 実験実装されたセンサを用いて実環境での測定を行う.今回は

    図 12に示すように鉛筆の先端をセンサ面にあて,約 0.2mm

    押し込んだ状態を測定した.

    このときの中心部の縦一列の格子点を特徴点として対応

    をとり,理論式に基づき形状を復元した.図 13は上昇系列と

    下降系列の平均を示す.今回用いた格子パターンは 2.5mm

    幅,取得画像サイズは 625£ 392[Pixel],画像における格子の数は縦 16個であるから,1[Pixel]'0.1mmとなり,平均系列のピーク値は真値に近い値を示している.同様にして

    水平方向について算出した結果を示す (図 14).

    図 13: 深度分布 (垂直) 図 14: 深度分布 (水平)

    6. まとめと今後の予定本稿において我々は光てこの原理と,柔軟な反射面を用

    いた新しい方式による触覚センサを提案した.光てこを用

    いることにより変形を精度よく検出し,変形可能な鏡面と

    して透明なシリコンゴムを用いることで,カメラの解像度

    を十分に生かした,反射像を利用した触覚センサを構成し

    た.構成された触覚センサにおける幾何光学と適切な近似

    により,得られる画像からの反射面の復元が可能なことを

    シミュレーションにより示し,垂直,水平についての変位

    を定式化した.また,実際にシリコンゴムによる試作機を

    制作し,反射面の形状復元が可能なことを示した.

    これらの知見をもとに,以後はアクティブパターンを生

    成する方式を検討する.我々の目指すアクティブパターン

    とは,計測される変位量に基づいて表示するパターンを変

    更することにより,より精度のよい計測や,ロバストな計

    測を可能とするものである.今回は図 15に示す装置を用い

    ることとした.発表ではこの液晶ディスプレイを用いたア

    クティブパターン生成について議論したい.

    図 15: LCDを用いた計測

    参考文献

    [1] Nitta Corporation. Flexi force.

    http://www.nitta.co.jp/product/mechasen/

    sensor/tactile_top.html.

    [2] Kazuto Kamiyama, Kevin Vlack, Hiroyuki Kajimoto,

    Naoki Kawakami, and Susumu Tachi. Vision-Based

    Sensor for Real-Time Measuring of Surface Traction

    Fields. IEEE Computer Graphics & Applications

    Magazine, pp. 68–75, 2005.

    [3] Shin-Etsu Chemical Co., Ltd. 2 liquid type RTV rub-

    ber KE109.

    [4] Kouichi Yamada, Kenji Goto, Yoshiki Nakajima,

    Nobuyoshi Koshida, and Hiroyuki Shinoda. A sen-

    sor skin using wire-free tactile sensing elements based

    on optical connection. In SICE 2002. Proceedings of

    the 41st SICE Annual Conference. Soc. Instrument &

    Control Eng. (SICE), Tokyo, Japan.

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    http://www.nitta.co.jp/product/mechasen/sensor/tactile_top.htmlhttp://www.nitta.co.jp/product/mechasen/sensor/tactile_top.html