廃棄物処分場と地質

鹿児島大学理学部地球環境科学科 岩松 暉

廃棄物の種類

一般廃棄物

産業廃棄物

ごみ

し尿

産業廃棄物

特別管理産業廃棄物

家庭系ごみ

事業系ごみ OA用紙など

一般廃棄物排出量

平成11年版環境白書

産業廃棄物総排出量

平成11年版環境白書

貝塚＝元祖廃棄物処分場

集団生活をするからには処分場は不可欠 トイレのない家はない

天保山，残土捨て場

岩永三五郎 甲突川の浚渫

土砂を捨てた 潮流の上流側

河口は問題 天保山砲台跡

産廃問題の原点，ボタ山

九州の古くて新しい問題

鉱害=元祖産廃問題 地すべり 酸性浸出水など

石炭産業の衰退 ほぼ解決済み？ いや，まだある？

ゴミが降る島，豊島

不法投棄(1983-1990) 自動車・家電製品の粉砕物，廃油など50万t以上 ＰＣＢ・水銀などの有害物質検出→業者摘発 産廃残る→公害調停→香川県が処理(1997)

豊島

茨城県城取清掃工場

ダイオキシン汚染で有名 ガン死亡率43.7%（平均28.5% ）

ここは焼却灰の埋立地現在はモトクロス場 !!

麓では農地が客土中

青森岩手県境不法投棄(1)

全国一の規模（27ha, 820,000m3） 対策費数100億円超す（処理業者自殺）

青森岩手県境不法投棄(2)

遮水壁で拡散防止→撤去

産廃処分場の種類

遮断型（左上） 管理型（左下） 安定型（右上）

この順に厳しい

処分場の立地適正 政治的経済的理由最優先は問題

人里離れ（住民の反対少ない），地価が安く，運搬に便利で，造成しやすい

結局，都市近郊丘陵地（軟岩）の谷埋め

何よりも先ず環境汚染リスクアセスメント 地質・土質・地形・土地利用・利水・地下水・

自然環境などすべてを考慮 環境地質図の整備が先決

土砂災害の危険多い 地下水涵養源

処分場適正評価基準 立 地 特 性

立地条件

埋立効率 埋立容量/埋立面積>10 覆土用土の入手 現地で全量入手可能 搬入道路延長 公道から2km未満 跡地利用計画 75%以上の平坦地確保

環

境

特

性

自然条件

地質 1km以内活断層・崩壊地なし 動植物 2km以内に貴重種なし 植生 植生自然度1-3

社会条件

土地利用 植林地・耕地<1/3 文化財 1km以内指定文化財なし 住居 1km以内住居なし

環境条件 利水状況 放流先河川利用していない 悪臭・騒音・振動 1km以内集落なし

経済性 経済条件 建設費・維持管理費 ○○円未満

ドイツの回避地図

地下水が水源 循環経済・廃棄物法 ネガティブエリア

住宅地・水質保全地域など回避地

ポジティブエリア 地質条件からの適地

候補エリア 適地の中で回避地を

除く

九州における処分場立地

火山性堆積物多い 多孔質→漏水対策

豪雨・多雨地帯→土砂災害全国一 崩壊対策の重要性

高い平均気温 腐敗・臭気対策

離島（琉球石灰岩）多い 飲料水に直接影響

地質調査所(1996)

九州地域の管理型最終処分場

11→12

6→4

8→6 8→5

1→2

1→3

0 → 0 5 → 5

1997年→2001年

管理型処分場がないのは鹿児島県だけ

鹿児島県のゴミ問題

他県からの搬入より他県への搬出が多い 川崎のゴミ搬入阻止事件（1997年4月串良町）

• 自分たちは他県に押しつけているのに

公共関与型でも住民ノー（1997年9月鹿屋市）

焼酎カス（澱粉カス）の海洋投棄 家畜糞尿の林地不法投棄

河川汚染頻発

不法ミニ処分場が多数 安定型に指定品目以外の危険物質

鹿児島県のゴミ処理

3%

60%

33%

4%

自家処理 焼却 埋立 その他

2%

75%

18% 5%

自家処理 し尿処理施設 海洋投入 農地還元

ごみ

処理量732,575t

し尿

総排出量752,416t

（1996年度）

鹿県産廃発生量

家畜糞尿 6,533 汚泥 919 瓦礫類 777 動植物性残さ 315 その他 673 総発生量 9,217

72%

10%

8% 3% 7%

家畜糞尿 汚泥 瓦礫類 動植物性残さ その他

（1998年度）

単位：1,000t

鹿県産廃処理状況(1)

48%

17%

35%

再利用

中間処理 （焼却・脱水などによる減量化）

最終処分

産廃(389t

)

1993年（家畜糞尿を除く）

鹿県産廃処理状況(2)

1998年

鹿県産廃種類別移動量

種 類 搬入(t) 割合(%)

搬出(t) 割合(%)

汚 泥 5,890 22.3 8,091 24.8 動植物性残滓 1,617 6.1 動物の糞尿 1,122 4.3 7,439 22.9 廃酸・廃アルカリ 4,321 16.4 3,633 11.1 廃プラスティック類 12,918 49.0 368 1.1 廃 油 492 1.9 1,287 3.9 ガラスくず等 4 0.0 11,669 35.8 その他 10 0.0 128 0.4 合 計 26,374 100.0 32,615 100.0

(1991)

鹿県産廃処理基本方針

産業廃棄物の減量化・リサイクルの推進

県内完結型の産業廃棄物処理の推進 県内処理体制の整備

等 • 安定型最終処分場の

整備促進 • 管理型最終処分場の

整備促進 • 中間処理施設の整備

促進

• ミニ処分場の適正化 • 最終処分を目的とした

県外産業廃棄物搬入の抑制

産業廃棄物処理の適正化

排出事業者処理責任の確立

不法投棄対策の推進

普及啓発及び産業廃棄物処理施設に関する情報公開の推進

(1997)

鹿児島市ゴミ排出量

一般廃棄物処理基本計画(2000-2019) 市民の責務と役割

• ゴミ排出抑制（使い捨て自粛・ノー包装・再利用容器） • ゴミ減量化資源化・地域の清潔保持 • 資源の有効利用（再生品の使用）

鹿児島市産廃街道

埋立処分場

埋立処分場跡地

焼却施設

破砕施設

入戸火砕流 阿多火砕流 加久藤火砕流

市営処分場

産廃街道点描(1)

建設廃材→ ↓自動車・タイヤ

産廃街道点描(2) 何故かどこも高塀を巡らせている

どう猛な犬の放し飼いも普通とか

産廃街道点描(3)

狭い道なので，個人の不法投棄か

脇道には不法投棄跡を絶たず

シラス地帯の処分場(1)

鹿児島市営横井処分場

横井処分場の構造

横井処分場の現状

1986.09第1工区竣工 1998.12道路面（左上） 2000.07満杯（右上） サンドイッチ工法（左

下）；ゴミ3m・土50cm

市営新処分場

横井処分場第二工区工事中(2001.1) 排水溝，グラベルドレイン，遮水工施工中 寿命27年と予想 （遠方煙突は北部清掃工場）

遮水工

横井処分場のマット（ゴムシートは

1.5mm） 産廃管理型最終処分場と市町村の一般廃棄物処分場とは同一構造

鹿児島市北部清掃工場

ゴミ焼却の流れ

処理能力：150t/日×3基，燃焼温度950℃

処分場閉鎖後の廃水

細田口元処分場の調整池

シラスの降雨浸透特性

晴天～小雨→緩慢な浸透 1.3-3.0mm/d 先行降雨→ローム層飽和 後続降雨→急速な浸透 5m/h

和田・他(1995)による

シラス地帯処分場の問題点

シラスの下には降下軽石（透水層）と不整合面がある

シラス地帯の処分場(2)

シラスと建設廃材の混合物で盛り立てる

法面工事は緑化のみ 宅造と異なり，転圧な

どもしていない 平成5年8月豪雨で大

崩壊 その後も雨の度に小

崩壊繰り返す 大木公彦氏撮影

シラス地帯の処分場(3)

簡単なダムを築いただけの谷埋め投棄 建設廃材よりも崩壊しやすい一般廃棄物

谷埋め造成と災害 谷頭の処分場は谷埋

め造成地と同じ 入来町愛宕団地の例

1993年6月梅雨前線豪雨で地すべり

1997年3月鹿児島県北西部地震で液状化

ゴミ処分は宅造より防災対策ずさん 震災や地すべりの恐れ

マサ土地帯処分場の崩壊

マサ＝花崗岩の深層風化したもの

シラス地帯の処分場と同じ 施工が楽 安価に造成できる

崩壊しやすい ゴムシート破損

水源脅かす産廃

「水と空気はタダ」は昔の話 ミネラルウオーターの取水源

は地下水→危機的状況

堆積学の原理と処分場

谷埋めは堆積学の原理に反する 自然は現状を回復した

がる→崩壊 谷頭は水源地

河川・地下水汚染の恐れ

海に堆積するのが帰結 人工島（夢の島）方式が

ベター？ ただし海洋汚染注意

東京都中央防波堤埋立処分場

1992年現在（1977年には手前の外側処分場はなかった）

東京都のゴミ

A4コピー紙

8,800m

1992年度

地方は東京のゴミ捨て場？

海岸埋立処分場の構造

浸出水による海洋汚染・地下水汚染防止 鋼管矢板による二重の地中連壁

人工地層（ゴミ地盤）

ゴミと覆土との互層 浪費時代の指示層

示準化石はカルピスの瓶とか

自然界との遮断

物理的バリアー コンクリート

• 劣化（セメントの方解石化など）

ゴムシート • 破損・変質（温度上昇・酸

などによる化学変化）

地質学的バリアー 不透水層（粘土層） ベントナイトの性質

• 膨潤性・吸着性

元来自然界に存在

浸出水処理

第一排水処理場

生物処理

物理化学処理

処分場跡地の利用

海岸埋立の負の影響

朝日新聞(2001.1.23)

離島におけるずさんなゴミ処理

往年の生活習慣 海岸投棄 素掘り・野焼き

近年プラスティック製品や化学物質多い 浸出水・環境汚染 琉球石灰岩・閉鎖水系 命の水＝屋川（ヤゴー） 致命的被害の恐れ

野焼き現場と黒い滲出水

宮古島処分場火災

朝日新聞(2002.3.27)

迷惑施設と住民

総論賛成 県内処理当然

各論反対 自宅周辺はイヤ

（行政も懸命にPR）

日の出アピール

私たちは，ごみを作らない，出さない，燃やさない，埋め立てない，資源循環型ごみ処理行政への抜本的転換を求めていきます。

全国の処分場問題の象徴的存在ともいえる日の出処分場問題の平和的解決のため，トラスト共有地への代執行は無用であることを認識されるよう，石原東京都知事に求めていきます。

背景 1992年遮水用ゴムシートの破損

による汚水漏れ疑惑が発覚 反対派約2,800人が第二処分場

予定地に，トラスト地を確保，建設差し止めを求めた

2000年都収用委員会強制収用の裁決

市街地地下の処分場（住民案）

日の出の森トラスト運動

飽食ニッポン

農水省食品ロス統計調査（残飯調査） 一般家庭8% 外食産業5% 結婚式披露

宴24% 世界には飢

えた子が多数いるのに！

南日本新聞(2001.3.7)

食料輸入の意味

食糧輸入 土壌と水の輸入を意味 輸出国の土壌疲弊

日本 循環すべきものを廃棄 海洋の富栄養化→赤潮

城ヶ島沖

循環型社会の形成

循環型社会形成推進基本法 廃棄物処理法改正法 資源有効利用促進法 建設リサイクル法 食品リサイクル法 グリーン購入法

いずれも2000年5月制定

ゼロエミッションとリサイクル

鹿児島県パンフ

廃棄物ゼロの実験

朝日新聞(2001.1.19)

川辺町清掃センター

容器包装リサイクル法

1995年6月制定 消費者

リターナブル容器・リサイクル製品の使用

分別排出 行政→分別収集 事業者→再商品

化

建設廃材のリサイクル

鹿児島県リサイクル事業協同組合再骨材プラント

家電リサイクル法施行(2001) 消費者

費用負担 • 収集運搬 • リサイクル

家電小売店 回収，メー

カーに運搬

家電メーカー 再商品化

ケータイ使い捨ての是非

生命の水を守ろう

ゴミを出さないライフスタイル

出たゴミはなるべくリサイクルし，最小限に抑える

が，処分場は不可欠 環境を汚染しない安

全な処分場の選定は地質屋の責務

与論島の屋川（ヤゴー）

ところで皆さんは？

2000年鹿大祭・宴の跡（堀田満名誉教授提供）

ストッピーが泣いている！

The End

質問・疑問はありませんか。 これから大いに討論しましょう。