ギガンジウム 子宮頚癌予防ワクチン接種開始 1年を...

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子宮頚癌予防ワクチン接種開始 1 年を経過して ギガンジウム 産婦人科部長 中村 正雄 我が国では毎年多くの人が癌で亡くなっています(死亡 率の第1位)。なかでも子宮頸癌は、我が国において毎年 15,000 人の方が罹患(8,000 人は初期癌)し、昨年は 2,486 人の方が亡くなっています。これは 20 ~ 40 歳代の若年女 性の中では乳癌に次ぐ第2位の死亡率であります。またか つては 40 歳代に罹患のピークがありましたが、近年は 20 ~ 30 歳代の若年層の罹患が多くなっており、出産年齢と重 複する年代である点に大きな問題が生じています。 また、長野県においては毎年長野県健康づくり事業団が長 野県の各地に出向いて「バス検診」を行っています。その 結果平成 23 年には 20 歳代から 80 歳代までの 17,287 名の 方が検診を行い、5例の初期癌(30 歳代、40 歳代が2例ず つ、60 歳代が1例)が発見されました。 子宮頸癌の発症原因は、ヒトパピマローマウイルス(HPV と略)による持続感染が原因であることが近年判明しまし た。この HPV は 100 以上の遺伝子を有しており、中でも発 癌性のある高リスクのものは 16 型、18 型による発症が最も 多く(約 70%)、次いで 52 型、58 型による発症が多くみら れます。この HPV は特殊なものではなく、性交渉のある女 性であれば誰でも感染したことがあると考えられるごくあり ふれたものであります。しかし、たとえ HPV に感染しても 約 90% の人は自然にウイルスが排除され、残り約 10% の人 が排除されず長期化しますが、ウイルス感染から癌発症ま でには 10 年以上かかります。 子宮頸癌予防ワクチンは、日本では 2009 年12 月に認可(欧 米では 2006 年)され、2011 年2月より各市町村の公費負担 による接種が始まりました。対象者は性交渉開始前(?)の 中学1年生から高校1年生までの生徒を中心に行っており、 接種回数は計3回(最初の接種から1ヶ月後、6ヶ月後)で あり、当院では主として飯山市、野沢温泉村、木島平村在 住の女子生徒(中学1年生から高校2年生の一部)計 218 名に接種しました。接種前には必ず体温を測定し、予診で はその日の体調や過去の予防接種の副作用の有無、前回の 接種後の副作用などを聞き取り、問題なければ接種を行い ます。今回の接種後異常を来し入院を余儀なくされ、接種 中断を行わなければならなかった症例は1例(重い気管支 喘息発作)のみでありました。 本年度も公費負担により予防接種を行いますが、昨年度 は最も発症率の高い2価(遺伝子番号№ 16 と 18)のみの 注射でしたが、本年はこれまでの№ 16 と 18 のほか良性の HPV 感染である尖圭コンジローマ(№6と 11)をも予防す るワクチンであります。接種は昨年同様3回ですが、異な る点は2回目の接種時期が初回から2ヶ月後という点のみで す。 子宮頸癌は予防接種を行ったから決して病気にはならない という訳ではありません。最も発症率の高い№ 16 と 18 に よる癌を予防するのみで、他の№ 52 や 58 などを予防して いる訳ではありません(これらの予防ワクチンは開発中)。 予防接種をしているからといって安心しないでください。子 宮頸癌は他の癌に比べ予防接種が可能となり、またたとえ 罹患しても症状も現れやすく、検診さえ受ければ簡単な検 査で発見しやすい癌であり、決して治らない癌ではありま せん。 予防接種を行うとともに、20 歳を過ぎたら年1度の検診を 併せて行うことを希望します。

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子宮頚癌予防ワクチン接種開始 1 年を経過してギガンジウム

産婦人科部長 中村 正雄

 我が国では毎年多くの人が癌で亡くなっています(死亡率の第1位)。なかでも子宮頸癌は、我が国において毎年15,000 人の方が罹患(8,000 人は初期癌)し、昨年は 2,486人の方が亡くなっています。これは 20 ~ 40 歳代の若年女性の中では乳癌に次ぐ第2位の死亡率であります。またかつては 40 歳代に罹患のピークがありましたが、近年は 20~ 30 歳代の若年層の罹患が多くなっており、出産年齢と重複する年代である点に大きな問題が生じています。 また、長野県においては毎年長野県健康づくり事業団が長野県の各地に出向いて「バス検診」を行っています。その結果平成 23 年には 20 歳代から 80 歳代までの 17,287 名の方が検診を行い、5例の初期癌(30 歳代、40 歳代が2例ずつ、60 歳代が1例)が発見されました。 子宮頸癌の発症原因は、ヒトパピマローマウイルス(HPVと略)による持続感染が原因であることが近年判明しました。この HPV は 100 以上の遺伝子を有しており、中でも発癌性のある高リスクのものは 16 型、18 型による発症が最も多く(約 70%)、次いで 52 型、58 型による発症が多くみられます。この HPV は特殊なものではなく、性交渉のある女性であれば誰でも感染したことがあると考えられるごくありふれたものであります。しかし、たとえ HPV に感染しても約 90% の人は自然にウイルスが排除され、残り約 10% の人が排除されず長期化しますが、ウイルス感染から癌発症までには 10 年以上かかります。 子宮頸癌予防ワクチンは、日本では 2009 年 12 月に認可(欧米では 2006 年)され、2011 年2月より各市町村の公費負担による接種が始まりました。対象者は性交渉開始前(?)の中学1年生から高校1年生までの生徒を中心に行っており、

接種回数は計3回(最初の接種から1ヶ月後、6ヶ月後)であり、当院では主として飯山市、野沢温泉村、木島平村在住の女子生徒(中学1年生から高校2年生の一部)計 218名に接種しました。接種前には必ず体温を測定し、予診ではその日の体調や過去の予防接種の副作用の有無、前回の接種後の副作用などを聞き取り、問題なければ接種を行います。今回の接種後異常を来し入院を余儀なくされ、接種中断を行わなければならなかった症例は1例(重い気管支喘息発作)のみでありました。 本年度も公費負担により予防接種を行いますが、昨年度は最も発症率の高い2価(遺伝子番号№ 16 と 18)のみの注射でしたが、本年はこれまでの№ 16 と 18 のほか良性のHPV 感染である尖圭コンジローマ(№6と 11)をも予防するワクチンであります。接種は昨年同様3回ですが、異なる点は2回目の接種時期が初回から2ヶ月後という点のみです。 子宮頸癌は予防接種を行ったから決して病気にはならないという訳ではありません。最も発症率の高い№ 16 と 18 による癌を予防するのみで、他の№ 52 や 58 などを予防している訳ではありません(これらの予防ワクチンは開発中)。予防接種をしているからといって安心しないでください。子宮頸癌は他の癌に比べ予防接種が可能となり、またたとえ罹患しても症状も現れやすく、検診さえ受ければ簡単な検査で発見しやすい癌であり、決して治らない癌ではありません。 予防接種を行うとともに、20 歳を過ぎたら年1度の検診を併せて行うことを希望します。

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雪椿かわら版● 24年6月 57号

 赤十字講習会のご案内

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雪椿かわら版● 24年6月 57号

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雪椿かわら版● 24年6月 57号

飯山日赤も化学療法委員会・緩和ケアチームが中心となり参加します。

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雪椿かわら版● 24年6月 57号

 当科に受診される患者さんは99.99%女性であり、0歳から 102 歳までの患者さんが受診されます。スタッフは医師ひとり、看護師ひとり、看護助手ひとりの3人体制で診療を行い、また毎週火曜日と金曜日は助産師外来を行っており、病棟の助産師が交代で行っています。 飯山市を中心とする奥信濃において当院産婦人科は唯一の医療機関であり、その責任は大きく、地域の患者さんの期待に応えられるように皆とともにがんばっています。 また当科の診療内容は、一般の産科、婦人科とともにドックをはじめとする婦人科検診、また1年前より中高生を中心に始まった子宮頸癌予防ワクチンの接種を行い、子宮頸癌発症予防の啓蒙活動にも力を注いでいます。

診療内容について【産科部門】年間分娩数は約 130 例前後でありますが、奥信濃には分娩対象となる 20~30 歳代の方が少なく、年々分娩数の減少傾向がみられます。その反面帰省分娩を希望される方が多くみられ、当地域の過疎化を肌で感じています。この地域への企業誘致などにより活性化がすすみ、多くの若い世代の方が

増え、分娩件数も増加することを望んでいます。【婦人科部門】若年者の患者さんが少ない分高齢者の受診者が多くみられます。当院では婦人科疾患一般を診療していますが、特に子宮頸癌、体癌、卵巣癌をはじめとする悪性疾患の早期発見と早期治療を行い、また子宮筋腫や卵巣腫瘍などの良性疾患は、できる限り患者さんへの負担の少ない腹腔鏡を用いた手術を行うようにしています。この手術は開腹手術に比し腫瘍の大きさなどに限界がありますが、術後の回復も早く、美容的にも腹部に傷跡が目立たない、社会復帰が早いなどという利点があり、多くのの患者さんには喜ばれています。さらに子宮内膜症治療においてはホルモン治療のほか、腹腔鏡下手術にて症状の軽減化と根治的治療を行っています。また高齢者に多い子宮脱をはじめとする骨盤臓器脱の手術も数多く手がけ、50 歳前後の更年期症状を訴える中高年の方には、漢方治療やホルモン補充療法など患者さん個々にあった治療を行っています。【助産師外来】産科診療の一環として、助産師を中心にファミリー学級を月2

回行い、また分娩に際し直接関わりあう助産師が妊婦検診を通して、個別に妊娠中の過ごし方、腰痛などのトラブルの対処(骨盤ケア)、母乳について、お産に関してのことなどについてお話させていただいています。また妊婦さんの心配事や家族を含めてどのようなお産を希望しているかなどの相談にのり、妊娠、出産が不安なく、快適に過ごされるように支援しています。また産後は乳房のトラブルや授乳の相談、新生児の体重や黄疸などの相談にも対応しています。 私どもは妊娠、出産という貴重な体験が『素晴らしい宝物』となるようにお手伝いさせていただいています。 当院のホームページの中に「妊婦さん、褥婦さんのご質問/ご感想コーナー」が開設されていますのでご利用ください。

産婦人科部長 中村 正雄産婦人科の紹介

像は、デジタル化されたことにより、光ケーブルを通り病院から病院、病院から診療所へと送られ、かかりつけでない病院や診療所へ行っても自分の画像を見れる時代になりつつあります。 便利になるということはその分リスクも高くなる場合が多いですが、いい方向に向かって行くといいですね。

 当院もようやくフィルムが無くなりモニターで画像をみることができるようになりました。 時代の流れですね、レントゲン写真はフィルムが一番きれいに見れるといいますが、環境問題やいろいろな問題でフィルムを使わずモニターで見る時代になりました。 乳腺の X線写真(マンモグラフィー)は特にフィルムでないといけないという感じでしたが徐々にモニターに変わりつつあります。フィルムが一番と言いましたが、CTやMRIの精度が向上したためモニターでも十分に診断ができるようになってきたということで

しょうか。 振り返りますと、私が入社した頃はフィルムが現像液を通り次に定着液を通り水洗から乾燥を通って写真として出てくるものでした。これはカメラで言うとネガフィルムでアナログの時代です。今の子供たちはそのネガフィルムを知らないのではないでしょうか。 そして時代はデジタルカメラの時代へと変わり、パソコンから写真を印刷するようになり、紙ではなくパソコンの画面で写真を見るようになったのが、フィルムレスのモニター診断です。 レントゲン CT MRI などの画

お 知 ら せ

せら知

最近レントゲンフィルム見ないですね!

平成18年10月より「iネット情報局」にて飯山赤十字病院に関する情報の放映をしていただいておりましたが、平成24年 3月で終了となりましたのでお知らせいたします。

放射線課長 高澤 茂正

産婦人科

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