工場ルポ no.318 ネジ節鉄筋のカラー識別塗装 共英製鋼株式...

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工場ルポ No.318 ネジ節鉄筋のカラー識別塗装 共英製鋼株式会社 名古屋事業所

〒490-1443

愛知県海部郡飛島村大字新政成字未之切809-1

TEL(0567)55-1088 / FAX(0567)55-2380

1.会社の沿革

今回の工場ルポは、コンクリート補強用棒鋼のトップメーカーであり、鉄鋼事業を中核とした資源

循環型事業を展開する共英製鋼㈱名古屋事業所を訪問した。

同社は、昭和 14 年に大阪市城東区において鍛工業を目的として設立した共英鍛工所を母体として、

昭和 22 年に前身の共栄製鉄㈱を創業。翌年に共英製鋼㈱に社名変更し、現在に至る。

2.名古屋事業所の概要

名古屋事業所では、高層建築物や道路・鉄道橋脚などに広く使用される、鉄筋コンクリート用棒鋼

(異形棒鋼)と鉄筋をつないで造られるあらゆる構造物に対応する、高強度ネジ節鉄筋の製鋼から圧延

までの一貫生産体制を敷いている。

同事業所では、月産 3万 5000t の鉄筋(その内、ネジ節鉄筋は 7000~8000t)を生産している。

取材では、今年 3月に導入されたネジ節鉄筋の鋼種・サイズを識別するために行うカラー識別塗装の

概要と鉄筋の製造工程を紹介する。

(1) 鉄筋の製造工程

① 原料装入

中部・関西地区から集められた鉄スクラップは、外観・形状・厚みなどにより細かく分類され、

危険な密閉物や銅などの非鉄を除去した後、日本で 初に導入したコンスチール製鋼法(鉄

スクラップを特殊なコンベヤーに移し、これを少しずつ連続的に移動しながら電気炉の側壁より投入

する)により電気炉に投入されていく。この製法は、従来の方法に比べ、生産性および原料・副原料

の歩留まりが向上すると共に、騒音,粉塵(ふんじん)の発生を大幅に軽減できる。

② 溶解・精錬

投入された鉄スクラップは、アーク熱で 1600℃以上に昇温可能な電気炉で溶解し、合金鉄や加炭材

を加え、規格に沿った鉄の性質を決める成分調整(精錬)を行う。

③ 連続鋳造(CCM)

精錬された溶鋼は、加熱済みの取鍋に移され、ビレット(150mm 角)と呼ばれる半製品に造形する

ための連続鋳造機に投入される。

④ 圧延

ビレットは約 5m の長さに切断された後、再加熱するための加熱炉に投入される。約 1000℃に均等

に加熱されたビレットは、回転する円筒状の金属製のロールの間を次々と通過していくことで、所定

の鉄鋼製品を造形していく。

約 100m 程度に圧延された鉄筋は、120m ある冷却床にて冷却される。この際、サンプリングされ寸法・

外観・機械的特性などの検査が行われる。

その後、指定の長さに切断された鉄筋はカラー識別塗装を行うエリアに進んでいく。

(2) カラー識別塗装の概要

建設現場において、建造物の柱などに鉄筋が設計通りに挿入されているかの確認が困難である場合が

多い。特に、ネジ節鉄筋は節がネジ状になっており、それ自体に識別数字を打ち込むことができない。

従来は、鉄筋の鋼種,サイズを識別しにくかったので、構造物の柱や梁(はり)などに設計通りに鉄筋を

正確に組み込むために、識別の確認にかなりの時間を要していた。そのため、建築業界から瞬時にかつ

正確に鋼種,サイズの確認ができる方法を要望されていた。そこで同事業所では、こうした要望に応

(こた)えるべく、製造ラインにカラーマーキング自動塗装設備を設置し、カラー識別表示品の生産を

開始した。

塗装エリアには、 長 15m の製品に対応できるように 14 箇所の塗装エリアを設けている。製品長さ

1.5m ごとに 1箇所,鋼種とサイズの識別色(第 1表参照)を、それぞれ製品の全周に近接した位置に塗装

する。表示幅は約 30mm,間隔は 50mm である。1 箇所につき、スプレーガン AG32(旭サナック㈱)は、

4 基(上下 2基ずつ)稼動しており、合計 56 基のガンが装着してある。

塗料は、塗装の段階でも約 350℃の熱を持つ鉄筋に確実に塗装するために、独自に開発された水性

塗料(合成樹脂エマルション塗料)を使用している。色替えは 1 日に 3~4 回行われている。水性塗料や

高粘度塗料を安定供給できる、ベローズシールポンプ BP360S(旭サナック㈱)により塗料を常に循環

させており、色替えはコンピュータ制御により簡単に行うことができる。

マーキングを終えた製品は、結束された後、引っ張り試験を経て出荷される。

3.今後の展開

同社では、環境リサイクル事業にも力を入れている。電気炉の高熱を利用して処理の難しい感染性

医療廃棄物をはじめ、さまざまな産業廃棄物を安全かつ適切に完全無害化溶解する処理方法を独自に

開発・展開している。また、震災以降の防災対策見直しによる防波堤などの防災対策事業に積極的に

参画し、鉄鋼メーカーとして何らかの貢献ができないかと考えている。

本号の取材に当たっては、同社取締役・執行役員名古屋事業所長松田良弘氏,製造部長兼生産管理

部長・環境リサイクル部長才野尚文氏をはじめ、現場スタッフの方々に大変お世話になりました。厚く

御礼を申し上げます。 (町)

カラー識別(マーキング)塗装エリアの概要

1 箇所につきスプレーガン(AG32)が上下 2基ずつ計 4基装備されている▲

▲カラー識別塗装エリア(14 箇所設置)

▲塗料供給装置(ポンプは BP360S)