バイオマス混焼排ガス向脱硝触媒の耐久性向上に関 …...2015/07/09  · 29 ol no...

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29 Vol. 66 No.7 ●  地球温暖化対策の一つとして取り組みが進められている石炭焚ユニットでのバイオマス燃料混焼 について,バイオマス燃料中に含まれる代表的な触媒劣化成分であるカリウム,カルシウム,リン に着目して脱硝触媒の劣化メカニズムを調べた。また,劣化メカニズムに基づき改良した改良型脱 硝触媒は,模擬排ガスによる強制劣化試験の結果,従来型触媒よりもバイオマス混焼排ガスに対し て高い耐久性を示すことが確認された。 In order to improve the catalyst durability in biomass and coal co-firing flue gas, a degradation mechanism of DeNOx catalyst by deactivation components such as potassium, calcium, and phosphorous contained in biomass co-firing flue gas was investigated. The concept for the advanced catalyst with high durability in biomass co-firing flue gas was introduced. The accelerated degradation tests indicated the higher durability of the advanced catalyst compared to the conventional catalyst. ●  1.はじめに バイオマスを燃焼することによって放出されるCO 2 は,生物の成長過程で光合成により大気中から吸収した CO 2 であることから,バイオマスは大気中の CO 2 を増加 させない「カーボンニュートラル」なエネルギーとして 位置付けられており (1) ,昨今では既設石炭焚火力などで のバイオマス混焼運用が広く普及している。また,今後 はより一層のCO 2 排出低減が求められることから,バ イオマス混焼率増加の方向に進むものと予想され,この 様な運用に対応するボイラ構成機器の改良技術の確立が 進められている (2) バイオマス混焼排ガスを処理する脱硝装置において は,バイオマス燃料(主には植物系の木質系ペレットや チップなど)中に含まれるアルカリ金属(Na,K),ア ルカリ土類金属(Ca),リン(P)などの各種成分によ る脱硝触媒の活性低下(性能低下)が懸念されるため, 式(1)で表される脱硝反応に対する,これら成分の影 響を把握することが重要となっている (3), (4) NO + NH 3 +1/4O 2 → N 2 +3/2 H 2 O  (1)  本報告では,バイオマス混焼ユニットへの脱硝触媒の 適用を想定した触媒劣化メカニズムを強制劣化試験から 考察し,バイオマス混焼排ガスへの適用を考慮した改良 触媒の開発について,その検討結果を報告する。 2.バイオマス燃料性状 石炭焚ボイラにおいて混燃されるバイオマス燃料とし ては,植物系の木質系ペレット(ホワイトペレット,ブ ラックペレットなど)やチップが適用される場合が多く, 瀝青炭に比べてアルカリ金属(Na, K)やアルカリ土類 金属(Ca)の成分濃度が高く,硫黄分や灰分濃度は少 なめとなる燃料性状を有している(表1)。 443 バイオマス混焼排ガス向脱硝触媒の耐久性向上に関する研究 (Improvement of DeNOx Catalyst Durability for Coal and Biomass Co-fired Boiler) 幸 村 明 憲 *1 ・鎌 田 博 之 *1 ・足 立 健太郎 *2 ・内 田 浩 司 *2 (A. Yukimura) (H. Kamata)    (K. Adachi) (K. Uchida)   *1 株式会社 IHI *2 日揮触媒化成株式会社 (IHI Corporation) (JGC Catalysts and Chemicals Ltd.) 原稿受付 平成27年4月24日 写真1 石炭とバイオマス燃料 石炭 木質チップ 表1 バイオマス燃料性状 硫黄分 灰分 アルカリ金属 アルカリ 土類金属 瀝青炭 ベース ベース ベース ベース 亜瀝青炭 やや低い やや低い 高い(Na)高い(Ca) バイオマス燃料 低い 低い 高い(K) 高い(Ca)

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  • バイオマス混焼排ガス向脱硝触媒の耐久性向上に関する研究(幸村 明憲・鎌田 博之・足立 健太郎・内田 浩司)

    29

    Vol. 66 No.7

        ●    

    地球温暖化対策の一つとして取り組みが進められている石炭焚ユニットでのバイオマス燃料混焼

    について,バイオマス燃料中に含まれる代表的な触媒劣化成分であるカリウム,カルシウム,リン

    に着目して脱硝触媒の劣化メカニズムを調べた。また,劣化メカニズムに基づき改良した改良型脱

    硝触媒は,模擬排ガスによる強制劣化試験の結果,従来型触媒よりもバイオマス混焼排ガスに対し

    て高い耐久性を示すことが確認された。

    In order to improve the catalyst durability in biomass and coal co-firing flue gas, a degradation mechanism of DeNOx catalyst by deactivation components such as potassium, calcium, and phosphorous contained in biomass co-firing flue gas was investigated. The concept for the advanced catalyst with high durability in biomass co-firing flue gas was introduced. The accelerated degradation tests indicated the higher durability of the advanced catalyst compared to the conventional catalyst.    ●    

    1.はじめに

     バイオマスを燃焼することによって放出されるCO2 

    は,生物の成長過程で光合成により大気中から吸収した

    CO2であることから,バイオマスは大気中のCO2を増加

    させない「カーボンニュートラル」なエネルギーとして

    位置付けられており(1),昨今では既設石炭焚火力などで

    のバイオマス混焼運用が広く普及している。また,今後

    はより一層のCO2排出低減が求められることから,バ

    イオマス混焼率増加の方向に進むものと予想され,この

    様な運用に対応するボイラ構成機器の改良技術の確立が

    進められている(2)。

     バイオマス混焼排ガスを処理する脱硝装置において

    は,バイオマス燃料(主には植物系の木質系ペレットや

    チップなど)中に含まれるアルカリ金属(Na,K),ア

    ルカリ土類金属(Ca),リン(P)などの各種成分によ

    る脱硝触媒の活性低下(性能低下)が懸念されるため,

    式(1)で表される脱硝反応に対する,これら成分の影

    響を把握することが重要となっている(3),(4)。

      NO + NH3+1/4O2  → N2+3/2 H2O  (1) 

     本報告では,バイオマス混焼ユニットへの脱硝触媒の

    適用を想定した触媒劣化メカニズムを強制劣化試験から

    考察し,バイオマス混焼排ガスへの適用を考慮した改良

    触媒の開発について,その検討結果を報告する。

    2.バイオマス燃料性状

     石炭焚ボイラにおいて混燃されるバイオマス燃料とし

    ては,植物系の木質系ペレット(ホワイトペレット,ブ

    ラックペレットなど)やチップが適用される場合が多く,

    瀝青炭に比べてアルカリ金属(Na, K)やアルカリ土類

    金属(Ca)の成分濃度が高く,硫黄分や灰分濃度は少

    なめとなる燃料性状を有している(表1)。

    443

    バイオマス混焼排ガス向脱硝触媒の耐久性向上に関する研究(Improvement of DeNOx Catalyst Durability for Coal and Biomass Co-fired Boiler)

    幸 村 明 憲*1・鎌 田 博 之*1・足 立 健太郎*2・内 田 浩 司*2(A. Yukimura)    (H. Kamata)    (K. Adachi)     (K. Uchida)  

    *1株式会社IHI *2日揮触媒化成株式会社(IHI Corporation) (JGC Catalysts and Chemicals Ltd.) 原稿受付 平成27年4月24日

    写真1 石炭とバイオマス燃料

    石炭 木質チップ

    表1 バイオマス燃料性状

    硫黄分 灰分 アルカリ金属 アルカリ土類金属瀝青炭 ベース ベース ベース ベース

    亜瀝青炭 やや低い やや低い 高い(Na)高い(Ca)バイオマス燃料 低い 低い 高い(K) 高い(Ca)

  • 火 力 原 子 力 発 電

    30

    Jul. 2015

     表2にバイオマスを含む各種ボイラ燃料と一般的な触

    媒性能劣化要因の相関を示す。バイオマス混燃下におい

    ては,油焚燃料の主要劣化要因である化学的要因(活性

    点被毒)と石炭焚燃料の主要劣化要因である物理的要因

    (表面閉塞・被覆)の双方が触媒性能低下に影響するも

    のと考えられており,これら劣化要因を考慮した脱硝触

    媒の改良開発が要望されている。

    表2 各種ボイラ燃料と触媒性能劣化要因◎主劣化要因 ○劣化要因

    熱的要因(Sintering)

    化学的要因(Poisonning)

    物理的要因(Plugging & Masking)

    ガス ◎ - -油 ○ ◎ -

    石炭 バイオマス混焼 ○ ◎ ◎石炭専焼 ○ ○ ◎

    物理的要因(Plugging & Masking)

    熱的要因(Sintering)

    化学的要因(Poisonning)

    触媒粒子

    被毒成分

    3.バイオマス混焼排ガス向け触媒の開発

    3.1 ラボ強制劣化試験

     バイオマス燃料に由来する代表的な触媒性能劣化成分

    であるK,Ca,Pが,触媒表面にどのように蓄積されて

    いるのかを調べるために,ラボ試験装置を用いた強制劣

    化試験を実施した。図1に試験装置の構成を示す。触媒

    の強制劣化試験は,所定の寸法に切り出した脱硝触媒を,

    バイオマス由来の劣化成分であるK,Ca,Pを含む微粒

    子もしくは,それらの成分を含む蒸気に暴露させること

    で行った。

     所定濃度のKClまたはCaCl2,もしくはH3PO4水溶液

    を触媒の上流に設置した二流体ノズル(マイクロスプ

    レーノズル)にそれぞれ供給し,微細な液滴が触媒上流

    で加熱,蒸発し微粒子もしくは蒸気となり,触媒に供給

    されるようにした。この時,模擬劣化物質とともに,実

    機排ガスを模擬してSO2,O2,N2および水蒸気の混合

    ガスを供給した。模擬劣化物質に暴露した後,触媒の表

    面および断面の分析を行い,K,Ca,Pの堆積状態を調

    べた。表3に強制劣化試験の条件を示す。

    表3 ラボ強制劣化条件

    触媒種類 V2O5/TiO2系ハニカム触媒触媒寸法 2x2セル,107㎜L

    劣化成分水溶液 KCl CaCl2 H3PO4劣化成分濃度(wt%) 1.0 0.5 1.0供給速度(ml/s) 0.72暴露温度(℃) 320暴露時間(h) 24

     図2に,K,Ca,Pを含む模擬排ガス中に24h暴露し

    た後の触媒断面のSEMおよびEDS分析の結果を示す。

     分析の結果,KClの場合は,触媒の表面から200μm

    程度の深さまでKが分布していることがわかった。一方

    で,CaCl2の場合は,主に触媒の表面近傍にCaが存在

    しており,触媒の内部への分布は少ない。また,表面に

    Ca由来の堆積物の結晶が析出していることも確認され

    た。H3PO4の場合もKと同様に触媒の内部までPが広く

    分布している。

     Kは触媒活性成分であるV2O5を被毒することが知ら

    れている(5)。従って,本強制劣化中に触媒の表面だけで

    なく,触媒の内部のV2O5もKにより被毒されているこ

    とが考えられる。Caは主に触媒の表面近傍に存在する

    ことから,表面付近での触媒細孔のプラッギング(閉塞)

    やマスキング(被覆)が引き起こされていると推察され

    る。つまり,触媒表面のV2O5活性点がCa由来の化合

    物で被覆されているか,反応ガスが触媒内部に拡散し難

    いため触媒性能が低下することが予想される。Pによる

    触媒性能の低下は,より複雑であり,H3PO4やリン酸化

    物による触媒細孔のプラッギングの他,化学的な被毒な

    ども性能低下の要因として考えられている(6)。本強制

    劣化試験では,触媒内部の広い範囲でPが分布している

    ため,表面近傍のプラッギングやマスキングだけでなく,

    内部での触媒被毒も進行していることが予想される。

    444

    図1 ラボ試験装置構成

    NOx分析計

    N2N2

    イオン交換水

    SO2O2 NO NH3N2

    質量流量計

    ポンプ

    電気炉

    脱硝触媒

    二流体ノズル

    (排気)

    模擬劣化物質水溶液

    気化器

  • バイオマス混焼排ガス向脱硝触媒の耐久性向上に関する研究(幸村 明憲・鎌田 博之・足立 健太郎・内田 浩司)

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    Vol. 66 No.7

    3.2 触媒微細構造の最適化

     触媒の表面がマスキングされたり,細孔がプラッギン

    グされたりすると,反応に供される活性点の数が減少し

    たり,反応ガスの拡散が阻害されて脱硝反応の効率が低

    下する。Caのように触媒表面においてマスキングやプ

    ラッギングを引き起こしたりする触媒劣化成分の場合,

    触媒の細孔構造をマスキングやプラッギングが起こり難

    いように最適化させることが劣化防止に対して有効な手

    段となり得る。本研究では,活性元素の種類と触媒組成

    は同じで,触媒細孔構造のみが異なる改良型触媒を試作

    して,従来型触媒に対する性能劣化要因別の耐久性につ

    いて評価を行った。また,細孔構造の違いによる効果を

    確認するために,触媒活性成分であるV2O5の相持量や

    ハニカム目ピッチや壁厚などの形状は,従来型触媒と同

    一の形状仕様とした。

     図3に,従来型触媒と改良型触媒の触媒表面のSEM

    写真を示す。改良型触媒は,触媒表面に存在する幅数

    μm,長さ数100μmの比較的大きなクラックの数,お

    よび容積が従来型触媒よりも多くなるように設計した。

    この様な大きなクラックの他に,よりミクロなスケール

    においては,改良型触媒は,細孔径が100nm以上のマ

    クロ細孔の容積が従来型触媒よりも大きくなるよう設計

    されている。触媒の細孔構造を,幅数μmオーダーのク

    ラックと細孔径が100nm程度のマクロ細孔の両方のス

    ケールで最適化することにより,触媒のマスキングやプ

    ラッギングによる触媒性能の低下を抑制することができ

    ると考える。

    図3 従来型および改良型脱硝触媒の表面SEM写真(a)従来型触媒,(b)改良型触媒

    3.3 脱硝性能評価

     触媒を模擬劣化物質に所定時間暴露させた後,模擬排

    ガスとして所定濃度のNO,NH3,SO2,O2,N2,水蒸

    気をラボ試験装置に供給し,模擬劣化物質暴露前後の触

    媒性能を確認した。表4に,脱硝性能評価条件を示す。

    表4 脱硝性能評価条件

    ガス組成 NO 180 ppmNH3 180 ppmSO2 500 ppmO2 7 %

    H2O 10 %N2 Balance

    反応温度 320℃

     脱硝率ηは,式(2)により定義した。

      η=(CNOin-CNOout)/CNOin×100  (2) 

     ここで,CNOin,CNOoutは,それぞれ,触媒入口NO濃

    度[ppm],出口NO濃度[ppm]である。また,脱硝

    反応がNO濃度に対して1次であると近似すると,反応

    445

    図2 強制劣化試験後の触媒断面上段:KCl噴霧,中段:CaCl2噴霧,下段:H3PO4噴霧後のサンプル

    (各元素の線分析は図中の直線に沿って実施した)

  • 火 力 原 子 力 発 電

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    Jul. 2015

    速度定数k [m3N/m2h]は,式(3)で定義される。

      k =-F/(V×Ap)×ln(1-η/100)

       =-SV/Ap×ln(1-η/100)  (3) 

     ここで,F,V,Ap,SVは,それぞれ,ガス流量[m3N/

    h],触媒容積[m3],触媒単位容積当たりの触媒表面積 

    [m2/m3],空塔速度F/V[m3N/m3h]である。この時,

    触媒の劣化度合いは,新品触媒(フレッシュ)の反応速

    度定数k0と劣化後の速度定数kの相対値k/k0として表

    すことができる。

     従来型触媒および改良型触媒について,CaCl2を含む

    模擬排ガスに一定時間暴露した後の脱硝率を評価したと

    ころ,図4に示す通り,従来型,改良型触媒共に暴露時

    間とともに脱硝率が低下した。ただし,改良型触媒は従

    来型触媒に比べて初期の性能低下が小さいことから,改

    良型触媒はCaに対して耐久性が高いといえる。

    図4 脱硝率と暴露時間の関係(模擬劣化物質:CaCl2)

    0

    10

    20

    30

    40

    50

    60

    0 10 20 30

    脱硝

    率(

    %)

    暴露時間(h)

    従来型触媒

    改良型触媒

     また,図5に,K,Ca,Pをそれぞれ含む模擬排ガス

    に暴露した際の触媒の劣化度合いを反応速度定数比(k/

    k0)として示す。CaCl2の場合は,24h暴露後の従来型

    触媒のk/k0が0.3程度であるのに対し,改良型触媒は0.5

    程度であることから,改良触媒の方が劣化の度合いが小

    さいことがわかった。一方で,KCl,H3PO4では,従来

    型触媒,改良型触媒ともに,k/k0は0.2以下となり,劣

    化の度合いは同程度であった。この結果より,改良型触

    媒は,KやPのように触媒の内部に拡散し触媒被毒を引

    き起こすような劣化物質ではなく,触媒の表面に堆積し

    てプラッギングやマスキングを引き起こす劣化物質に対

    して有効であることが確認された。

    図5 各劣化成分による触媒強制劣化状況(暴露時間:24h)

    0.0

    0.2

    0.4

    0.6

    0.8

    1.0

    KCl CaCl2    H3PO4

    k/k 0

    従来型触媒

    改良型触媒

     図6に,従来型触媒と改良型触媒の触媒断面の構造を

    模式的に示す。改良型触媒は,従来型触媒に比べて,幅

    数μmのクラックの他,細孔径100nm以上のマクロ細

    孔が多いため,触媒表面近傍および内部への反応ガスの

    拡散が促進されていると考えられる。その結果,改良型

    触媒では,触媒のより内部まで反応が有効に進行してい

    ると考えられる。

    図6 石炭焚触媒劣化メカニズム

    NONONH3

    NONH3×

    NH3

    ×NO

    NH3

    従来型触媒 改良型触媒

    NONH3

    NONH3

    NO

    NH3

    NO

    NH3

    Ca微粒子

    Ca微粒子

    初期 劣化後 初期 劣化後

    NONH3

     触媒表面にCaSO4などのようなCaを含む微粒子の

    堆積が進むと,従来型触媒では,触媒表面近傍の活性点

    がマスキングにより失活するとともに,細孔のプラッギ

    ングにより触媒内部に反応ガスが拡散し難くなるため,

    触媒性能の低下が進行する。一方で,改良型触媒では,

    表面のクラックやマクロ細孔の存在により,微粒子によ

    るプラッギングが進みにくく,また触媒の内部も反応に

    有効な活性点として寄与するため,微粒子の堆積による

    影響を受け難く,耐久性を向上できたものと考える。

    4.おわりに

     バイオマス混焼排ガス向脱硝触媒の改良にあたり,触

    446

  • バイオマス混焼排ガス向脱硝触媒の耐久性向上に関する研究(幸村 明憲・鎌田 博之・足立 健太郎・内田 浩司)

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    Vol. 66 No.7

    媒被毒成分であるアルカリ金属(K),アルカリ土類金

    属(Ca)及びリン(P)成分に脱硝触媒の劣化挙動を

    調べ,従来型触媒に比較してバイオマス混焼排ガスに対

    して耐久性の高い改良型触媒の開発指針を見いだすこと

    ができた。今後は,本開発指針にもとづき実用触媒製作

    及び実機排ガスでの暴露試験などを通じて,本改良型触

    媒の耐久性と信頼性を実証し,バイオマス混焼石炭焚ユ

    ニットへの適用に向けた取り組みを進めていく所存であ

    る。

    参 考 文 献

    (1)P. Basu et al., Biomass co-firing options on 

    the emission reduction and electricity generation 

    costs  in  coal-fired power plants, Renewable 

    energy, 36(2011)282-288.

    (2)L.  Baxter,  Biomass-coal  co-combustion: 

    opportunity  for affordable  renewable  energy, 

    Fuel 84(2005)1295-1302.

    (3)Y. Zheng et al., Deactivation of V2O5-WO3-

    TiO2 SCR catalyst at biomass-fired combined 

    heat and power plant, Applied Catal. B: Environ., 

    60(2005)253-264.

    (4)足立ら,石炭火力発電におけるバイオマス混焼に

    よるSCR脱硝触媒の劣化特性,日本エネルギー学会

    関西支部 第59回研究発表会,No.13,2014年,京

    (5)J.P. Chen et al., Deactivation of  the vanadia 

    catalyst in the selective reduction process, J. Air 

    Waste Manage. Assoc., 40(1990)1403- 1409

    (6)J. Beck et al., Effect of sewage sludge and 

    meat and bone meal  co-combustion on SCR 

    catalysts, Applied Catal. E: Environ., 49(2004)

    15-25.

    447