キャリア教育への 経済産業省の取組み - jasso · 設備の老朽化...

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− 41 − − 41 − 製品や技術の ライフサイクルの短縮化 仕事の 多様化・複雑化・高度化 ビジネスのグローバル化 マーケットのボーダーレス化 <これからの社会人に求められること> 間断なき変化に対し、学び続けること 自ら考え、選択し、行動すること 多様な価値観や文化に対応すること 語学力(特に英語)を高めること 今、我が国産業は大きな変化の渦中に! 我が国の人材育成の課題 1 キャリア教育への 経済産業省の取組み 2015616経済産業省 経済産業政策局 産業人材政策室 室長補佐 近田 高志

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−41−− 41−

製品や技術の ライフサイクルの短縮化

仕事の 多様化・複雑化・高度化

ビジネスのグローバル化 マーケットのボーダーレス化

<これからの社会人に求められること>

・間断なき変化に対し、学び続けること

・自ら考え、選択し、行動すること

・多様な価値観や文化に対応すること

・語学力(特に英語)を高めること

今、我が国産業は大きな変化の渦中に!

我が国の人材育成の課題

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キャリア教育への 経済産業省の取組み

2015年6月16日

経済産業省 経済産業政策局 産業人材政策室

室長補佐 近田 高志

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日本の経済的地位の低下

世界のGDPに占める 日本のシェア

1990年 2014年

10.0% 5.3%

IMD国際競争力 ランキング推移

1990年 2014年

1位 21位 出典:IMD “World Competitiveness Yearbook 2014”

一人当たりのGDP(名目) 世界ランキング推移

2000年 2013年

3位 24位 出典:IMF“World Economic Outlook Database, April 2014”

日本の一人当たりGDPは、2000年の3位から2013年の24位へと大きく後退。 世界のGDPに占める日本のシェアは1990年の10.0%から2014年の5.3%へ、 国際競争力ランキングは1990年の1位から2014年21位へと大きく低下。 日本の低成長と新興国の台頭が、国際社会における日本の経済的地位を相対的に低下させている。

3

平成24年推計値(日本の将来推計人口)

実績値(国勢調査等)

人口(万人)

生産年齢人口割合

50.9%

高齢化率39.9%

合計特殊出生率1.35

0

2,000

4,000

6,000

8,000

10,000

12,000

14,000

1950 1960 1970 1980 1990 2000 2010 2020 2030 2040 2050 2060

生産年齢人口(15~64歳)割合

高齢化率(65歳以上人口割合)

合計特殊出生率

15~64歳人口

14歳以下人口

65歳以上人口

63.8%(2010)

23.0%(2010)

1.39(2010)

12,806万人

11,662

3,685

6,773

1,204

8,674

3,464

4,418

791

(出所) 総務省「国勢調査」及び「人口推計」、国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口(平成24年1月推計):出生中位・死亡中位推計」(各年10月1日現在人口) 厚生労働省「人口動態統計」

日本の人口の推移 日本の人口は少子化により、人口減少局面を迎えている。このままで行けば2060年には総人口が9000万人を割り込み、高齢化率(65歳以上)は40%近い水準になると推計されている。

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継続的な学びの必要性と仕事の高度化 IT化の進展等により、単純な作業は急速に機械化され、若者の「仕事の質」が 高度化しているだけでなく、製品や技術のライフサイクル短縮化により「持続的な 学び」の必要性が増大している。

7.7

30.8

9.6

9.6

28.9

30.8

65.4

44.2

0 10 20 30 40 50 60 70

出典:独立行政法人労働政策研究・研究機構 「ビジネス・レーバー・モニター調査」(平成16年)

若年層の負荷の内容(事業主による回答)

仕事の分量が増加

仕事の質が高度化

仕事の責任が拡大

労働時間が増大

昇進・昇格の遅れ

研修機会(Off-JT)の減少

精神的負担の増大(メンタルヘルス)

その他

5

出典:中小企業研究所「製造業販売活動実態調査」(平成16年11月) (注)1.ヒット商品の定義は、自社にとって売れ筋商品のことをヒット商品としている。 2.ここでは、かつてヒットしていたが、現在は売れなくなった諸品を集計している。

売れ筋商品のヒット期間

世界市場における日本製品シェアの急降下

0

50

100

150

200

250

300

350

400

450

500

1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007

カーナビ

DRAMメモリー

DVDプレーヤー

リチウムイオン電池

0102030405060708090

100

世界シェア(%)

液晶パネル

リチウムイオン電池カーナビ

DRAMメモリー

DVDプレーヤー

1988年:74%

出典: DVDレコーダー:JEITA「主要電子機器の世界生産状況」 DRAMメモリー : WSTS 携帯電話 : JEITA「主要電子機器の世界生産状況」 リチウムイオン電池 :IT総研資料を加工 カーナビ : JEITA「主要電子機器の世界生産状況」

出典:小川紘一「プロダクト・イノベーションからビジネス・イノベーションへ」 (IAM Discussion Paper Series #1) JEITA「主要電子機器の世界生産状況」 IT総研資料を加工

世界市場の伸び(2000年を100とした場合) 日本の世界市場シェア

世界市場は伸びているものの、日本の世界市場シェアは年々低下している。技術力等の保有能力を活かし、グローバルマーケットに貢献(発揮)する力の強化が必要

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IoTとセンサー技術の進化 AI (artificial intelligence : 人工知能)の進化

IoT(Internet of Things:センサーや機械類など“モノ”をインターネットに接続する技術)の各産業への 浸透は深化し、随所で新たなビジネスモデルを輩出。

また、従来浸透していなかった製造業を含め、全ての産業において、既存のビジネスモデルや産業構造の大変革が不可避に。

センサー技術の発達とIoTの進化がもたらすもの

VS

カメラやセンサーによる監視 ヒトによる点検

交通 情報

設備の老朽化データに加え、自然・気象現象、人の行動などがセンサーで取得可能。

公共インフラや工場における点検・組立ても、センサー技術やロボット技術の進歩により機械に置き換わる可能性。

VS 話し言葉を認識す

る AI型コンピュータ

クイズ王 (人間) あなたはおそらく急性胃腸炎よ。

人間

急性胃腸炎:97.3%。 サルモネラ腸炎:2.1%。

類似症状から腎炎に発展:5.3%

膨大な医療データに接続した AI型コンピュータ(会話可能)

AIの進化がもたらすもの

高度な知的労働において AIがパートナーに。

自らカイゼンを考える工場の出現 自動運転 医療 第4次産業革命 (IT+ロボット技術による新たな産業革命)を、「関連技術の国際標準化」と「技術開発支援( 「考える工場」プロジェクト:2億ユーロ)」で狙う。

センサーやインターネット等から、車両位置、標識、白線のデータ、過去の事故の場所や原因データ等を入手し、AIが運転方法を 決定する自動運転車 を開発中。

リアルタイムの生態情報を センサーで入手し、遺伝子 情報等を含めAIが分析。 予防医療やオーダーメード 治療が可能に。 ロボット技術と組み合わせ 全自動手術も。

経済社会構造の革新的変化(IoT・AIの影響)

(例:人間とコンピュータの医療での協働)

人間と コンピュータの連携

+ (協働)

人間より強いコンピュータ

VS

今後、「製造業・建設業」の就業者数が減少する一方で、「情報・サービス業」の就業者数が増加することが予想されており、その中では特に「医療・福祉」の増加が予想されている。

0

500

1,000

1,500

2,000

2,500

3,000

3,500

1990 1995 2000 2005 2010 2015 2020

製造業・建設業 情報・サービス業 流通業

金融・保険・不動産業 農林水産業

情報・サービス業3,098万人

1,962万人製造業・建設業

1,149万人

2,099万人

(万人)

資料:リクルート進学総研ホームページ (注)1.1990~2010年は、総務省統計局「労働力調査」(基本集計) 2.予測方法:産業全体の経済成長率予測の前提の下で、産業ごとに2002~2009年における就業者の動向を2020年まで延長することで予測した。産業全体の経済成長率予測は、日本経済研究センターが2011年6月に発表した2011年から2015年は平均0.4%、2016年から2020年は同0.6%を用いた。 (出典)リクルートワークス研究所「2020年の「働く」を展望する 成熟期のパラダイムシフト」 3.足下の復興需要及びオリンピック特需は試算には反映されていない。

産業別就業者数の変化・予測

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(1)産学協働によるキャリア教育の推進

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「コーディネーター」を置いたキャリア教育支援のイメージ

仲介役

キャリア教育コーディネー

ター

学校教育 小学校 中学校 高校

大学

地域の教育資源 ・企業技術者 ・OB人材 ・教育NPO ・自治体 ・PTA

・公民館

協力依頼

連携

◆外部講師の確保・派遣 ◆受入事業所の確保 ◆体験学習先の提供 等

◆実施校との日程調整 ◆授業時間の確保 ◆教育プログラムの策定 等

文部科学省 連携 経済産業省

地域・社会の持つ教育資源の活用のため、地域・社会と学校との仲介役として「キャリア教育コーディネーター」の育成を支援(平成17~22年度)。 コーディネーターの育成・認定等を担う民間団体として「一般社団法人キャリア教育コーディネーターネットワーク協議会」( http://www.human-edu.jp/ccec )が設立(平成23年1月)され、現在約240名のコーディネーターが全国で活動を行っている。

キャリア教育への経済産業省の取組

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(1)産学協働によるキャリア教育の推進 (2)インターンシップの促進 (3)社会人基礎力育成の浸透

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(2)インターンシップの促進

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企業におけるインターンシップの実施状況や課題についてのアンケート調査を行うとともに、シンポジウムを開催。 調査結果などを取りまとめた小冊子を作成し、企業のインターンシップの受入れ拡大に向けた啓発に取り組んだ。

教育的効果の高いインターンシップの普及のあり方についての調査を行うとともに、企業においてインターンシップを実施する際に使用する書式類や、 企業と教育機関や地域を繋げるコーディネータの育成に向けたガイドブックを作成した。

インターンシップの質的・量的拡大に向けて、産学連携によるインターンシップのあり方を調査・提言するとともに、企業における実践事例を取り上げた活用ガイドを作成した。

http://www.meti.go.jp/policy/economy/jinzai/intern/intern.html

平成 24年度

平成 25年度

平成 26年度

キャリア教育推進に向けた表彰・シンポジウム

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学校・家庭・地域・産業界が一体となって、キャリア教育を推進していこうとする気運を高め、キャリア教育の意義の普及・啓発と推進に資することを目的として、平成24年度より文部科学省、厚生労働省、経済産業省の3省合同で開催。「キャリア教育アワード」「文部科学大臣表彰」「キャリア教育推進連携表彰」の3つの表彰を行い、各団体からグッドプラクティスを紹介していただくとともにパネルディスカッションを行い、議論を深めている。 ※平成26年度のシンポジウムの様子→ http://www.meti.go.jp/policy/economy/jinzai/career-education/h26sympo.html

「第5回キャリア教育アワード」受賞結果 ※応募総数77件

経済産業大臣賞 <大企業の部> MSD株式会社 「サイエンススクール~『科学者たちのルール』の授業」 <中小企業第1部(単独の部)> 特定非営利活動法人 地域活動支援センターぷろぼの 「障害を持った高校生に向けたキャリア教育プログラム『スコラ システム』」 <中小企業第2部(協働の部)> かわさきマイスター友の会 「川崎市内最高峰の匠が教える『ものづくり』の素晴らしさと子供達の秘めたる可能性」 <コーディネーターの部> 特定非営利活動法人 アスクネット 「高校生を対象にしたインターンシッププログラム~マイチャレンジインターンシップ」

「第4回キャリア推進連携表彰」受賞結果 ※応募総数39件

【最優秀賞】 川口若手ものづくり人材育成プロジェクト 【優秀賞】 京都市スチューデントシティ・ファイナンスパーク運営推進委員会 特定非営利活動法人ひょうご知的障害者自立就業支援ネット協生 グッジョブおきなわ推進事業局 【審査委員会特別賞】 石巻‘まるっと’高高連携応援団

※平成26年度の受賞結果の内容: http://www.meti.go.jp/policy/economy/jinzai/career-education/award.html

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必要な能力に関する企業・学生の意識のズレ

13 出典:経済産業省「大学生の『社会人観』の把握と『社会人基礎力』の認知度向上実証に関する調査」平成21年度

「社会に出て活躍するために必要な能力」の認識については、大きな相違はない。 しかし、「不足していると思う能力」の認識には、企業と学生の間にギャップが見られる。 <企業>学生には「主体性」「粘り強さ」「コミュニケーション力」が不足 <学生>自分には「語学力」「業界に関する専門知識」「簿記」「PCスキル」が不足 産業界が期待している能力の『リアリティ』を知ることが必要。

社会に出て活躍するために必要な能力 自分に(学生に)不足していると思う能力

(3)社会人基礎力育成の浸透

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<3つの能力/12の能力要素>

「どのような仕事に就いても求められる能力」を明示化し、産学双方で「目標」として共有し、意識的に行動する

職場や地域社会で多様な人々と仕事をしていくために必要な基礎的な力を、「社会人基礎力(=3つの能力(12の能力要素) )」として、産学有識者により平成18年2月に定義。

大学教育を通して「社会人基礎力」を育成・評価する体系的な教育カリキュラム(企業や行政と連携して課題提供を行う「PBL(Project Based Learning)」を導入した実践型学習等)と、その取組を学内に広げる仕組を構築するモデル事業を展開(社会人基礎力育成・評価モデル事業(平成19~21年度))。

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(ご参考)「社会人基礎力育成グランプリ2015」での受賞事例 男女が共に働き、共に育む社会へ ~学生の学生による学生のための情報サイト、イクメン通信簿プロジェクト~ 男性の育児参加による女性の社会進出の活性化をテーマに活動を実施。企業・行政・NPO法人の計43名にインタビューを行い、課題を抽出した。その解決策として、東証1部上場1812社の男性の育児参加状況や各社の取組を通信簿という形でデータベース化し、ホームページで公開した。 学生の視点を活かしながら、1812社の取組をデータベース化するという難しい目標に対して、高いモチベーションを維持し、達成したことが評価された。また、個々の強い想いを活動に反映し、困難を乗り越えたことが社会人基礎力の育成に繋った。

創 価 大 学

大 阪 工 業 大 学

福 岡 女 学 院 大 学

イクメン商品で自社ブランドを立ち上げる! ~知財力を活かしたマーケティング戦略の展開~ 自社ブランドを立ち上げるべく商品開発を開始した中小企業からの相談を受け、学生達が大学で学んだ知識をもとに, 知的財産活動のサポートを行うこととなった。商標登録や特許出願を経て商品の発売も確定したが,市場開拓や商品のシリーズ展開などさらなる課題が提示された。 活動意欲の低下から解散の危機に直面したが,社長の商品への情熱を共有し活動の意義を再確認することで新たな決意で立ち上がった。

大学生の授業改革 近頃問題となっている大学の授業 ・・・地方女子大生がアクティブラーニングの授業改善へ挑む

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困難な状況にも試行錯誤を続け、危機的な状況からチームの立て直しを実現したことが評価された。 また、企業を巻き込み、当事者意識をもち、活動を続けたことが社会人基礎力の向上に繋がった。

“学内のキャリア形成に関する授業の運営”という課題を自ら選択し、チームとして12回行われる授業運営に取り組んだ。開始当初は講師として招く企業人の話を聞く授業であったが、受講生、講師共に満足度が低かった。そこで課題を洗い出し、受講生が主体的に参加できる授業のスタイルに変更した。結果、受講生、講師の満足度がり、受講生の態度や質問の質も大きくに向上した。 教室という身近な場で、自身の問題意識をベースに課題解決を行ったことで、考え抜く力が向上しただけでなく、受講生や講師と共に授業を作り上げた行動力が評価された。

社会人基礎力の目指すもの:「対話による教育」

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自ら主体的目標を持って望むことで、日常のあらゆる活動が有効な”学びの場”となる。

成長目標を“言葉”にし、意識して取り組むこと。周囲に共有しフィードバックをもらうこと。振り返り(自ら見つめ直し)、新たな目標につなげることが大切。

教員に求められるのは”支援的関与”(学生に考えさせ、主体的に行動させるためのCoach、Facilitation、Communication)

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【問い合わせ先】 経済産業省産業人材政策室 TEL:03-3501-2259

ご清聴ありがとうございました。

産業人材政策に関する情報はこちらをご覧ください http://www.meti.go.jp/policy/economy/jinzai/index.html

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(ご参考)留学生の就職支援のための仕組み ○経済産業省が平成19~24年度に実施した「アジア人財資金構想事業」で培った留学生就職支援の経験、ノウハウを継承し、25年10月に「一般社団法人 留学生支援ネットワーク」が設立。 ○大学における外国人留学生の就職支援のサポートを目的とした「留学生就職支援ネットワークシステム」 を運用している。(http://www.issn.or.jp/index.html) 「留学生就職支援ネットワークシステム」の概要

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留学生就職支援ネットワーク 一般社団法人 留学生支援ネットワーク

<運営>

留学生就職支援 ネットワーク加入大学

国公立大学 39校 私立大学 20校

情報提供企業 約250社

※数値は平成27年1月現在