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1 アメリカ合衆国 特許審査便覧(MPEP) 第 2100 章 特許性 第 9 版 2017 年 8 月 更新 2018 年 1 月版 目次 2101-2102 [保留] 2103 特許審査過程 [R-08.2017] 2104 特許性を有する発明 - 特許法第 101 条の要件 [R-08.2017] 2105 特許適格性を有する主題-生物の主題 [R-08.2017] 2106 特許主題の適格性 [R-08.2017] 2106.01 [保留] 2106.02 [保留] 2106.03 適格性段階1:法定主題の4のカテゴリー [R-08.2017] 2106.04 適格性段階2:クレームが判例法上の除外事項を対象としているか否か [R-08.2017] 2106.04(a) 抽象的概念 [R-08.2017] 2106.04(a)(1) 抽象的概念を対象としていないクレームの例 [R-08.2017] 2106.04(a)(2) 裁判所が抽象的概念として識別した概念の例 [R-08.2017] 2106.04(b) 自然法則,自然現象又は天然物 [R-08.2017] 2106.04(c) 著しく異なる特徴にかかわる解析 [R-08.2017] 2106.05 適格性段階2B:クレームが,判例上の除外事項を著しく上回る特徴を有するか否か [R-08.2017] 2106.05(a) コンピュータの機能又はその他の技術若しくは技術分野に対する改良 [R- 08.2017] 2106.05(b) 特定の機械 [R-08.2017] 2106.05(c) 特定な変換 [R-08.2017] 2106.05(d) 十分に理解された日常的,かつ,慣例的な活動 [R-08.2017] 2106.05(e) その他の有意義な限定 [R-08.2017] 2106.05(f) 除外事項を応用する単なる指示 [R-08.2017] 2106.05(g) 重要でない追加の解決活動 [R-08.2017] 2106.05(h) 使用分野及び技術的環境 [R-08.2017] 2106.06 能率化された解析 [R-08.2017] 2106.06(a) 適格性は,自明である [R-08.2017] 2106.06(b) 技術又はコンピュータ機能に対する明瞭な改良 [R-08.2017]

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  • 1

    アメリカ合衆国

    特許審査便覧(MPEP)

    第 2100 章 特許性

    第 9版 2017 年 8 月 更新

    2018年 1月版

    目次

    2101-2102 [保留]

    2103 特許審査過程 [R-08.2017]

    2104 特許性を有する発明 - 特許法第 101 条の要件 [R-08.2017]

    2105 特許適格性を有する主題-生物の主題 [R-08.2017]

    2106 特許主題の適格性 [R-08.2017]

    2106.01 [保留]

    2106.02 [保留]

    2106.03 適格性段階1:法定主題の4のカテゴリー [R-08.2017]

    2106.04 適格性段階2:クレームが判例法上の除外事項を対象としているか否か

    [R-08.2017]

    2106.04(a) 抽象的概念 [R-08.2017]

    2106.04(a)(1) 抽象的概念を対象としていないクレームの例 [R-08.2017]

    2106.04(a)(2) 裁判所が抽象的概念として識別した概念の例 [R-08.2017]

    2106.04(b) 自然法則,自然現象又は天然物 [R-08.2017]

    2106.04(c) 著しく異なる特徴にかかわる解析 [R-08.2017]

    2106.05 適格性段階2B:クレームが,判例上の除外事項を著しく上回る特徴を有するか否か

    [R-08.2017]

    2106.05(a) コンピュータの機能又はその他の技術若しくは技術分野に対する改良 [R-

    08.2017]

    2106.05(b) 特定の機械 [R-08.2017]

    2106.05(c) 特定な変換 [R-08.2017]

    2106.05(d) 十分に理解された日常的,かつ,慣例的な活動 [R-08.2017]

    2106.05(e) その他の有意義な限定 [R-08.2017]

    2106.05(f) 除外事項を応用する単なる指示 [R-08.2017]

    2106.05(g) 重要でない追加の解決活動 [R-08.2017]

    2106.05(h) 使用分野及び技術的環境 [R-08.2017]

    2106.06 能率化された解析 [R-08.2017]

    2106.06(a) 適格性は,自明である [R-08.2017]

    2106.06(b) 技術又はコンピュータ機能に対する明瞭な改良 [R-08.2017]

  • 2

    2106.07 主題の適格性欠如に対する拒絶の公式化及び裏付け [R-08.2017]

    2106.07(a) 主題の適格性欠如に対する拒絶の公式化 [R-08.2017]

    2106.07(b) 出願人による応答の評価 [R-08.2017]

    2106.07(c) 記録の明確化 [R-08.2017]

    2107 有用性要件に適合する出願の審査基準 [R-11.2013]

    2107.01 有用性要件による拒絶を律する一般原則 [R-11.2013]

    2107.02 有用性の欠如を理由とする拒絶について手続上考慮すべき事柄 [R-11.2013]

    2107.03 主張される治療的又は薬理学的有用性に関する特別な考慮 [R-08.2012]

    2108-2110 [保留]

    2111 クレームの解釈;最も広範な合理的解釈 [R-07.2015]

    2111.01 明白な意味 [R-07.2015]

    2111.02 前提部分の効力 [R-08.2012]

    2111.03 移行句 [R-08.2017]

    2111.04 「~に適している(Adapted to)」,「~に適している(Adapted for)」,「そこにお

    いて(Wherein)」, それによって(Whereby)」及び文節 [R-08.2017]

    2111.05 機能的及び非機能的な記述的材料 [R-08.2017]

    2112 潜在的特性に基づく拒絶の要件;立証責任 [R-07.2015]

    2112.01 組成物,製品及び装置のクレーム [R-07.2015]

    2112.02 方法のクレーム [R-07.2015]

    2113 プロダクト・バイ・プロセス・クレーム [R-08.2012]

    2114 装置及び物品のクレーム―機能的文言 [R-07.2015]

    2115 装置によって加工を受ける材料又は物品 [R-07.2015]

    2116 [保留]

    2116.01 新規な,自明でない出発材料又は最終製品 [R-08.2012]

    2117 マーカッシュ・クレーム [R-08.2017]

    2118-2120 [保留]

    2121 先行技術;一応の証明をするために必要な実施可能性の一般的水準 [R-08.2017]

    2121.01 実施可能性が問題となる拒絶での先行技術の使用 [R-08.2012]

    2121.02 化合物及び組成物―何が実施可能な先行技術を構成するか [R-08.2017]

    2121.03 植物遺伝学―何が実施可能な先行技術を構成するか [R-08.2012]

  • 3

    2121.04 装置及び物品―何が実施可能な先行技術を構成するか [R-08.2012]

    2122 先行技術の有用性の考察 [R-08.2017]

    2123 好ましい実施例に代わる先行技術の広範な開示による拒絶 [R-08.2012]

    2124 引用例の基準日は出願日に先行しなければならないとする規則に対する例外 [R-

    11.2013]

    2124.01 先行技術の範囲内とみなされる税金対策 [R-08.2012]

    2125 先行技術としての図面 [R-08.2012]

    2126 特許法第 102 条(a)又は改正前特許法第 102 条(a),(b)及び(d)に基づく拒絶において

    「特許」としての文書の利用可能性 [R-08.2017]

    2126.01 特許が引例として利用可能になる日付 [R-11.2013]

    2126.02 引例が「特許」であるが「刊行物」でない場合にクレームを拒絶するため使用し得

    る引例開示の範囲 [R-11.2013]

    2127 先行技術としての国内及び外国特許出願 [R-07.2015]

    2128 先行技術としての「印刷された刊行物」[R-08.2017]

    2128.01 必要とされる一般公開の水準 [R-07.2015]

    2128.02 刊行物が引例として利用可能になる日 [R-08.2012]

    2129 先行技術としての自認 [R-08.2012]

    2130 [保留]

    2131 新規性の欠如―特許法第 102 条の適用 [R-08.2017]

    2131.01 複数引例による特許法第 102条拒絶 [R-11.2013]

    2131.02 属-種の問題 [R-08.2017]

    2131.03 範囲に関する新規性の欠如 [R-08.2017]

    2131.04 副次的考察事項 [R-08.2012]

    2131.05 非類似又は非難する先行技術[R-08.2012]

    2132 改正前特許法第 102 条(a) [R-11.2013]

    2132.01 改正前特許法第 102条(a)の先行技術としての刊行物 [R-08.2017]

    2133 改正前特許法第 102 条(b) [R-07.2015]

    2133.01 一部継続(CIP)出願の拒絶 [R-11.2013]

    2133.02 刊行物及び特許による拒絶 [R-11.2013]

  • 4

    2133.03 「公用」又は「販売」による拒絶 [R-11.2013]

    2133.03(a) 「公用」[R-08.2017]

    2133.03(b) 「販売」[R-08.2017]

    2133.03(c) 「発明」[R-11.2013]

    2133.03(d) 「本国内」[R-11.2013]

    2133.03(e) 許される活動;試験的使用 [R-11.2013]

    2133.03(e)(1) 商業利用 [R-08.2017]

    2133.03(e)(2) 意図 [R-11.2013]

    2133.03(e)(3) 発明の「完全性」[R-11.2013]

    2133.03(e)(4) 試験目的を示す要因 [R-11.2013]

    2133.03(e)(5) 試験と監督及び支配の程度 [R-11.2013]

    2133.03(e)(6) 許される試験的行為及びテスト [R-11.2013]

    2133.03(e)(7) 独立した第三者である発明者の行為 [R-08.2017]

    2134 改正前特許法第 102 条(c) [R-11.2013]

    2135 改正前特許法第 102 条(d) [R-11.2013]

    2135.01 改正前特許法第 102条(d)の 4要件 [R-11.2013]

    2136 改正前特許法第 102 条(e) [R-11.2013]

    2136.01 引例としての米国出願の地位 [R-11.2013]

    2136.02 クレームに使用できる先行技術の内容 [R-08.2017]

    2136.03 引用例の基準日 [R-08.2017]

    2136.04 異なる発明主体;「他者による」の意味 [R-08.2017]

    2136.05 改正前特許法第 102条(e)に基づく拒絶の克服 [R-08.2017]

    2137 改正前特許法第 102 条(f) [R-08.2017]

    2137.01 発明者資格 [R-07.2015]

    2137.02 改正前特許法第 103条(c)の適用可能性 [R-11.2013]

    2138 改正前特許法第 102 条(g) [R-08.2017]

    2138.01 インターフェアレンス手続実務 [R-08.2017]

    2138.02 「発明は本国内でなされた」[R-11.2013]

    2138.03 「放棄,秘匿又は隠蔽していない他人による」[R-11.2013]

    2138.04 「着想」[R-08.2017]

    2138.05 「実施化」[R-08.2017]

    2138.06 「合理的勤勉性」[R-08.2017]

    2139-2140 [保留]

    2141 特許法第 103条に基づく自明性の判断に関する審査指針 [R-08.2017]

  • 5

    2141.01 先行技術の対象範囲及び内容 [R-11.2013]

    2141.01(a) 類似及び非類似技術 [R-08.2017]

    2141.02 先行技術とクレームの発明との相違点 [R-08.2017]

    2141.03 当該技術分野の当業者レベル [R-08.2012]

    2142 一応の自明性の法的概念 [R-07.2015]

    2143 一応の自明性の立証の基本的要件の例 [R-08.2017]

    2143.01 引例を修正するための示唆又は動機 [R-08.2017]

    2143.02 成功の合理的期待が必要とされる [R-08.2012]

    2143.03 すべてのクレーム限定は検討されねばならない [R-08.2017]

    2144 特許法第 103条に基づく拒絶の裏付け [R-07.2015]

    2144.01 黙示的開示[R-08.2012]

    2144.02 科学的理論への依存[R-08.2012]

    2144.03 当該技術分野の共通の知識又は「周知」先行技術への依存 [R-08.2017]

    2144.04 理論的根拠を裏付ける資料としての法的先例 [R-08.2017]

    2144.05 類似し,かつ,重複する範囲,量及び比率の自明性 [R-08.2017]

    2144.06 同一の目的のために等価であると認められる技術 [R-08.2012]

    2144.07 意図した目的のために適合すると認められる技術 [R-08.2012]

    2144.08 先行技術が属を教示する場合の種の自明性 [R-07.2015]

    2144.09 化合物(同族体,類似体,異性体)間の構造的同等性 [R-08.2017]

    2145 出願人の反論理由の検討 [R-08.2012]

    2146 改正前特許法第 103 条(c) [R-11.2013]

    2147-2149 [保留]

    2150 リーヒ・スミス合衆国発明法の先願規定によって改正された特許法第 102条及び第 103

    条に関する審査指針 [R-11.2013]

    2151 合衆国発明法における特許法第 102 条及び第 103 条の変更の概要 [R-08.2017]

    2152 改正特許法第 102条(a)及び(b)の詳細な論述 [R-11.2013]

    2152.01 クレームされた発明の有効出願日 [R-08.2017]

    2152.02 改正特許法第 102 条(a)(1)に基づく先行技術(特許され,印刷刊行物に記載され,

    又は公然使用され,販売され若しくはその他公衆の利用に供されていること) [R-08.2017]

    2152.02(a) 特許付与されていること [R-11.2013]

    2152.02(b) 印刷刊行物に記載されていること [R-11.2013]

    2152.02(c) 公然使用されていること [R-11.2013]

  • 6

    2152.02(d) 販売されていること [R-11.2013]

    2152.02(e) その他公衆の利用に供されていること [R-11.2013]

    2152.02(f) 「別の者による」の非要件 [R-11.2013]

    2152.03 自認 [R-11.2013]

    2152.04 「開示」の意味 [R-11.2013]

    2153 改正特許法第 102 条(a)(1)に対する特許法第 102 条(b)(1)に基づく先行技術の例外

    [R-11.2013]

    2153.01 改正特許法第 102 条(a)(1)に対する改正特許法第 102 条(b)(1)(A)に基づく先行技

    術の例外(猶予期間内の発明者による,又は発明者を発端とする開示の例外) [R-11.2013]

    2153.01(a) 猶予期間内の発明者による開示の例外 [R-11.2013]

    2153.01(b) 猶予期間内の発明者を発端とする開示の例外 [R-11.2013]

    2153.02 改正特許法第 102 条(a)(1)に記載された先行技術に対する改正特許法第 102 条

    (b)(1)(B)に基づく先行技術の例外 (発明者による又は発明者を発端とする先行開示の例外)

    [R-11.2013]

    2154 クレームされた発明の有効出願日前に有効に出願された合衆国特許又は出願における

    主題に該当する規定 [R-11.2013]

    2154.01 改正特許法第 102条(a)(2)に基づく先行技術「合衆国特許書類」 [R-11.2013]

    2154.01(a) WIPO 公開出願 [R-11.2013]

    2154.01(b) 主題が改正特許法第 102 条(d)に基づいて有効に出願されたときの判断 [R-

    08.2017]

    2154.01(c) 「別の発明者を記名する」要件 [R-11.2013]

    2154.02 改正特許法第 102 条(a)(2)に対する特許法第 102 条(b)(2)に基づく先行技術の例

    外 [R-11.2013]

    2154.02(a) 改正特許法第 102 条(a)(2)に対する改正特許法第 102 条(b)(2)(A)に基づく先

    行技術の例外(発明者を発端とする開示の例外) [R-11.2013]

    2154.02(b) 改正特許法第 102 条(a)(2)に対する改正特許法第 102 条(b)(2)(B)に基づく先

    行技術の例外(発明者による,又は発明者を発端とする公的開示の例外) [R-08.2017]

    2154.02(c) 改正特許法第 102 条(a)(2)に対する改正特許法第 102 条(b)(2)(C)に基づく先

    行技術の例外(共通の所有権又は譲渡義務) [R-11.2013]

    2155 先行技術拒絶を克服するための特許規則 1.130 に基づく宣誓供述書又は宣言書の使用

    [R-07.2015]

    2155.01 開示が発明者又は共同発明者によってなされたことを示すこと [R-11.2013]

    2155.02 開示された主題が,発明者又は共同発明者によって,先に公的開示されたことを示

    すこと [R-11.2015]

    2155.03 開示がなされたこと,又は開示された主題を発明者若しくは共同発明者から直接若

    しくは間接に取得した別の者よって当該主題が先に公的開示されたことを示すこと [R-

    11.2013]

    2155.04 実施可能性 [R-11.2013]

  • 7

    2155.05 特許規則 1.130 に基づいて宣誓供述書又は宣言書を提出できる者 [R-11.2013]

    2155.06 宣誓供述書又は宣言書が利用できない状況 [R-11.2013]

    2156 共同研究契約 [R-11.2013]

    2157 発明者の不適正な記名 [R-07.2015]

    2158 改正特許法第 103条 [R-08.2017]

    2159 適用性の日付についての規定及び出願が合衆国発明法の先願規定に従うことを条件と

    しているか否かの判断 [R-11.2013]

    2159.01 2013年 3月 16 日前に提出された出願 [R-11.2013]

    2159.02 2013年 3月 16 日以降に提出される出願 [R-11.2013]

    2159.03 合衆国発明法に従うことを条件としているが,2013年 3月 16日前の有効出願日を

    有するクレームされた発明も含んでいる出願 [R-11.2013]

    2159.04 2013 年 3月 16 日以降の有効出願日を有するクレームされた発明を含む経過出願に

    おける出願人による陳述 [R-11.2013]

    2160 [保留]

    2161 特許法第 112条(a)又は改正前特許法第 112条第 1段落に基づく明細書についての 3の

    独立した要件 [R-07.2015]

    2161.01 コンピュータプログラミング,コンピュータで実行される発明及び特許法第 112 条

    (a)又は改正前特許法第 112条第 1段落 [R-08.2017]

    2162 特許法第 112条(a)又は改正前特許法第 112条第 1段落の根拠を成す方針 [R-08.2017]

    2163 特許法第 112条(a)又は改正前特許法第 112 条第 1段落「書面による記載」要件に基づ

    く特許出願の審査指針 [R-08.2017]

    2163.01 開示におけるクレームされた主題の支持 [R-11.2013]

    2163.02 書面記載要件適合を判断するための基準 [R-11.2013]

    2163.03 書面記載の十分性が問題になる典型的状況 [R-07.2015]

    2163.04 書面記載要件に関する審査官の責任 [R-11.2013]

    2163.05 クレームの範囲の変更 [R-07.2015]

    2163.06 書面記載要件と新規事項との関係 [R-11.2013]

    2163.07 原明細書本文において裏付けられる出願への補正 [R-08.2017]

    2163.07(a) 潜在的な機能,理論又は利点 [R-08.2017]

    2163.07(b) 引例による挿入 [R-11.2013]

    2164 実施可能要件 [R-11.2013]

    2164.01 実施可能性の基準 [R-08.2012]

  • 8

    2164.01(a) 過度の実験の要因 [R-08.2012]

    2164.01(b) クレームされた発明の製造方法 [R-08.2012]

    2164.01(c) クレームされた発明の使用方法 [R-08.2017]

    2164.02 実践的な実施例 [R-11.2013]

    2164.03 当該技術の予測可能性と実施可能要件との関係 [R-08.2012]

    2164.04 実施可能要件に基づく審査官の責任 [R-08.2017]

    2164.05 証拠全体に基づく実施可能性の判断 [R-08.2017]

    2164.05(a) 明細書は出願日現在で実施可能でなければならない [R-08.2017]

    2164.05(b) 明細書は当該技術の熟練者に実施可能でなければならない [R-08.2017]

    2164.06 実験の数 [R-08.2012]

    2164.06(a) 実施可能性問題の例―情報の欠如 [R-08.2017]

    2164.06(b) 実施可能性問題の例―化学物質の場合 [R-08.2012]

    2164.06(c) 実施可能性問題の例―コンピュータプログラミングの場合 [R-08.2017]

    2164.07 実施可能性要件と特許法第 101 条の有用性要件との関係 [R-11.2013]

    2164.08 クレーム範囲と相応する実施可能性 [R-11.2013]

    2164.08(a) 単一ミーンズクレーム [R-11.2013]

    2164.08(b) 実施不可能な保護対象 [R-08.2012]

    2164.08(c) クレームされていない決定的に重要な特徴 [R-08.2012]

    2165 ベストモード要件 [R-08.2017]

    2165.01 ベストモードに関連した考慮事項 [R-11.2013]

    2165.02 実施可能性要件と比較したベストモード要件 [R-11.2013]

    2165.03 ベストモードの欠如による拒絶の要件 [R-11.2013]

    2165.04 隠蔽の証拠の例 [R-08.2017]

    2166-2170 [保留]

    2171 特許法第 112 条(b)又は改正前特許法第 112 条第 2 段落に基づく 2 の個別要件 [R-

    11.2013]

    2172 発明者又は共同発明者が自己の発明であると考える保護対象 [R-11.2013]

    2172.01 クレームされていない本質的事項 [R-11.2013]

    2173 クレームは発明を特定し,かつ明確に主張しなければならない [R-11.2013]

    2173.01 クレームの解釈 [R-08.2017]

    2173.02 クレーム文言が明確であるか否かについての判断 [R-08.2017]

    2173.03 明細書とクレームとの一致 [R-08.2017]

    2173.04 クレームの広範な範囲は不明確とはならない [R-07.2015]

    2173.05 特許法第 112 条(b)又は改正前特許法第 112 条第 2 段落に基づく争点に関連した特

    定の問題 [R-11.2013]

    2173.05(a) 新しい用語 [R-07.2015]

  • 9

    2173.05(b) 相対的な語 [R-08.2017]

    2173.05(c) 数値範囲及び量の限定 [R-11.2013]

    2173.05(d) 例示的なクレーム文言(「例えば(for example)」「といった(such as)」) [R-

    07.2015]

    2173.05(e) 先例による根拠の欠如 [R-08.2017]

    2173.05(f) 別のクレーム中の限定の参照 [R-11.2013]

    2173.05(g) 機能的限定 [R-08.2017]

    2173.05(h) 択一的限定 [R-08.2017]

    2173.05(i) 否定的限定 [R-08.2017]

    2173.05(j) 古いものの組み合わせ [R-11.2013]

    2173.05(k) 寄せ集め [R-08.2012]

    2173.05(l) [保留]

    2173.05(m) 冗長 [R-08.2012]

    2173.05(n) 多項化 [R-11.2013]

    2173.05(o) 二重包含 [R-08.2012]

    2173.05(p) プロダクト・バイ・プロセス・クレーム又は製品とプロセスを対象とするクレ

    ーム [R-08.2017]

    2173.05(q) 「Use(用途)」クレーム [R-11.2013]

    2173.05(r) オムニバスクレーム [R-11.2013]

    2173.05(s) 図面又は表の参照 [R-08.2012]

    2173.05(t) 化学式 [R-11.2013]

    2173.05(u) クレーム中の商標又は商号 [R-11.2013]

    2173.05(v) 機械の単なる機能 [R-11.2013]

    2173.06 実務の迅速な遂行 [R-07.2015]

    2174 特許法第 112 条(a)並びに(b)又は改正前特許法第 112 条第 1 段落要件並びに第 2 段落

    の要件の関係 [R-11.2013]

    2175-2180 [保留]

    2181 特許法第 112条(f)又は改正前特許法第 112 条第 6段落の限定を特定し,かつ解釈する

    [R-08.2017]

    2182 先行技術の調査及び特定 [R-08.2017]

    2183 均等の一応の証明 [R-08.2017]

    2184 一応の証明が行われた後,非均等性の立証責任を出願人が果たしたかどうかの判断

    [R-11.2013]

    2185 特許法第 112 条(a)又は(b)及び改正前特許法第 112 条第 1 段落又は第 2 段落に基づく

  • 10

    関連争点 [R-08.2017]

    2186 均等論との関係 [R-08.2017]

    2187-2189 [保留]

    2190 出願手続懈怠 [R-08.2012]

  • 11

    2101-2102 [保留]

    2103 特許審査過程 [R-08.2017]

    I. 出願人が発明し,かつ,特許を求めるものの決定

    特許出願人には,速やかであってしかも完全な出願審査を受けることが重要である。緻密な

    審査遂行の原則に従い,1 以上のクレームが一部の法定要件を欠如していることが見出され

    たとしても,出願の最初の検討において,各クレームは,あらゆる法定特許要件への適合性

    について,検討されなくてはならない。したがって,合衆国特許商標庁(USPTO)の審査官は,

    最初の拒絶理由通知において,クレームを拒絶するすべての理由及び根拠を陳述しなくては

    ならない。不備は,拒絶の根拠となる場合には,特に明確に説明されなければならない。審

    査官は,実施可能な場合には如何なるときでも,拒絶を克服し得る方法及び課題を解決し得

    る方法を示さなくてはならない。このアプローチに従わないことは,出願の審査遂行におい

    て,不要な遅延をもたらす可能性がある。

    審査官は,具体的な法定要件に的を絞る前に,出願人が正確には何を発明し,かつ,特許を

    求めているか,クレームはその発明にどのように関連し,かつ,その発明をどのように定義

    しているかを判断することによって審査を開始しなければならない。審査官は,発明の詳細

    な説明,開示された具体的実施例,クレーム及び当該発明について主張されている具体的,

    実質的,かつ,信頼できる実用性を含む完全明細書を審査する。

    審査官は,出願人が発明したものの理解を得た後に,先行技術の調査を実施し,かつ,クレ

    ームされている発明がすべての法定要件に適合しているか否かについて判断する。

    A. 発明に関する実用性の特定と理解

    全体としてクレームされている発明は,有用なものでなければならない。この要件の目的は,

    特許保護を,構想や概念以外の何ものでもない,又は将来の研究若しくは調査の単なる起点

    となる主題に対して,「現実世界」の一定水準の価値を所有する発明に制限することである

    (Brenner v. Manson, 383 U.S. 519, 528-36, 148 USPQ 689, 693-96 (1966); Fisher, 421

    F.3d 1365, 76 USPQ2d 1225 (Fed. Cir. 2005); Ziegler, 992 F.2d 1197, 1200-03, 26

    USPQ2d 1600, 1603-06 (Fed. Cir. 1993))。

    審査官は,主張された実用性を特定するために,出願を検討しなくてはならない。出願人は,

    発明が有用なものであると確信される理由を説明できる最も有利な立場にある。したがって,

    完全な開示には,クレームされている発明に関する実際的な応用にかかわる一部の示唆,す

    なわち,そのクレームされている発明が有用であると出願人が確信する理由が含まれていな

    くてはならない。そのような陳述は,通常は,発明の目的又は発明がどのように使用される

    か(例えば,化合物は,特定疾患の治療に有用であると信じられる)ということについて,説

    明することになる。それは,実用性の陳述の様式にかかわらず,クレームされている発明が

    有用であると出願人が確信する理由を,当該技術において通常の知識を有する者が理解する

    ことを可能とするものでなければならない。実用性の審査指針については,MPEP§2107参照。

    出願人は,1以上の実用性及び実際的応用を主張できるが,1のみが必要である。別の方法で

    は,出願人は,クレームされている発明が十分に確立された実用性を有することを提示する

    ために,同時存在の技術に依拠することができる。

    B. 出願人が発明したものを理解するための発明の詳細な開示及び具体的実施例の検討

    書面による説明は,発明の具現化,当該発明の先行技術とのかかわり方の説明及び当該発明

  • 12

    の様々な特徴についての相対的有意性の説明を行う事によって,出願人による発明の最も明

    瞭な説明となる。したがって,審査官は,次に掲げる行為をもってそれらの評価を継続しな

    くてはならない

    (A) 発明の機能,すなわち,発明は何をするもので,いつ開示されたとおりに使われるかに

    ついて,判断すること(例えば,プログラム化されたコンピュータの機能性);及び

    (B) 少なくとも 1の主張されている実際的応用を成し遂げるために必要な特徴を判断するこ

    と。

    特許出願人は,発明のこれらの様相を明瞭に記載した出願を調製することによって,USPTOを

    支援することができる。

    C. クレームの検討

    クレームは特許によって提供される所有権を定義し,よって,注意深い精査を必要とする。

    クレーム解析の目標は,出願人によって求められる保護の境界を特定し,また,当該クレー

    ムが,出願人によって示される発明に関するものにどのように関連し,かつ,定義している

    かということについて理解することである。審査官は,クレームが特許性に関する各法定特

    許要件を満たしているか否かの判断を下す前に,第 1 に,当該クレームの文言を徹底的に解

    析することによってクレームの範囲を判定しなければならない。Hiniker Co., 150 F.3d 1362,

    1369, 47 USPQ2d 1523, 1529 (Fed. Cir. 1998)(「ゲームの名称が,クレームである。」)参

    照。

    審査官は,各クレームの制限を特定し,かつ,評価することにより,クレームの解析を開始

    しなくてはならない。方法については,クレーム限定は,実施されるべき工程又は行為を定

    義する。物については,クレーム限定は,個別の物理的構造又は材料を定義する。物のクレ

    ームは,機械,製造物又は物質の組成物の何れかに関するクレームである。

    審査官は,各々のクレームの制限を,クレーム限定を記載している開示のすべての部分と関

    連付けるべきである。このことは,クレームされている発明が,ミーンズ(又はステップ)・

    プラス・ファンクションの文言を用いて定義されているかということに関係なく,すべての

    場合においてなされるべきである。相関ステップは,審査官が,明細書から見て各々のクレ

    ームの制限を正しく解釈することを保証する。

    適正に解釈されるクレームの主題は,最も広い合理的な解釈を与えた場合のクレームの範囲

    を制限する用語によって定義される。審査されなければならないのは,この主題である。一

    般的な事項として,クレームに用いられ,当該技術の通常の知識を有する者が理解できる文

    法及び用語の明白な意味は,その文言がクレーム範囲を制限するか否か及び制限の程度を定

    めることになる。クレームの文言の明白な意味についての更なる情報は,MPEP§2111.01を参

    照。実施されるべきステップを要件としない,若しくはクレームを特定構造に制限しない文

    言は,クレーム範囲又はクレーム限定を制限しない。

    機能またはステップを示唆又は任意ではあるが、当該機能またはステップを必要としない文

    言は、最も合理的なクレーム解釈に基づくクレームの範囲を制限しません

    次に掲げるクレームの文言の形式は,その文言の制限効果に関して,問題を提起する可能性

    のある:

    (A) 前提部分の目的又は意図した使用の記述を含む,意図した用途又は使用分野の記述,

    (B) 「~に適している(adapted to))」又は「~に適している(adapted for)」節,

    (C) 「それにおいて(wherein)」節 又は「それによって(whereby)」,

  • 13

    (D) 偶発的制限,

    (E) 印刷物,又は

    (F) 関連する機能的文言を含む用語。

    この一覧の例は,網羅的なものではない。特定の文言がクレームにおける限定であるか否か

    の判断は,当該事例の具体的な事実に依存する。例えば,Griffin v.Bertina, 285 F.3d 1029,

    1034, 62 USPQ2d 1431(Fed. Cir. 2002)(「それにおいて」節が,「操作的な工程に対して意

    義及び目的」を与える場合に,方法のクレームを限定したことに関する発見)参照。これらの

    形式のクレーム文言及びクレームの範囲に限定的な影響があるかどうかの判断方法について

    の詳細は,MPEP§2111.02 から MPEP§2111.05を参照。審査官は,裏付ける開示からみて,最

    も広い合理的な解釈を,クレームに対して,与えるべきである。MPEP§2111 参照。その開示

    は,明示的,暗示的又は潜在的であり得る。

    審査官は,クレームされているミーンズ(又はステップ)・プラス・ファンクションの限定

    に,明細書に記載されている,対応するすべての構造(材料又は行為)及びそれらの等価物と

    合致した,最も広く合理的な解釈を与えるべきである。 In re Aoyama, 656 F.3d 1293, 1297,

    99 USPQ2d 1936, 1939 (fed. Cir. 2011) 参照。等価物の範囲を解釈するうえでの指針は,

    MPEP§2181 から MPEP§2186 までに提示されている。

    用語の意味について出願人が意図することを判断するために,明細書を用いることは適切で

    はあるが,クレーム自体がその限定を課していない当該クレームに,積極的な制限を明細書

    から解読することはできない。 MPEP§2111.01,II を参照。 MPEP§2111iに解説されている

    ように,審査手続中においてクレームに最も広い合理的な解釈を与えることは,発行時のク

    レームが,正当化された範囲よりも広範に解釈される可能性を減少させることになる。

    最後に,クレームの範囲を評価する際に,そのクレームにおけるあらゆる限定が検討されね

    ばならない。審査官は,クレームされている発明を個別の要素に解体し,次いで,その要素

    を個々に評価することはできない。その代わりに,クレームは全体として検討されなければ

    ならない。例えば,Diamond v. Diehr, 450 U.S. 175, 188-89, 209 USPQ 1, 9 (1981)(「特

    許法第 101 条に基づく特許保護に関する被控訴人によるクレームされた方法の適格性を判断

    する際に,クレームは全体として検討されなければならない。クレームを新旧の要素に解体

    し,次いで,解析において旧要素の存在を無視することは不適切である。これは,方法にお

    ける新たな工程の組合せが,その組合せのすべての構成要素が十分に周知されており,かつ,

    当該組合せがなされる前に常用されていたとしても,特許可能であるので,方法のクレーム

    においては特に真実となる。」)参照。

    II. 徹底的な先行技術調査の実施

    クレームされている発明の特許性を評価する前に,審査官には,徹底的な先行技術調査を実

    施することが期待される。先行技術調査の仕方についての詳細は MPEP§904 から MPEP§

    904.03を参照。多くの場合,そのような調査の結果は,審査官が当該発明を理解することに

    対して貢献する。クレームされていない態様が後日にクレームされる可能性があるという合

    理的予測が存在する場合には,明細書に記載された発明のクレームされている態様及びクレ

    ームされていない態様の両方が,共に,調査されるべきである。調査は,明細書に記載され

    ている構造又は材料並びに特許法第 112 条(f)及び MPEP§2181 から MPEP§2186 までに従っ

    て,クレームされているミーンズ(又はステップ)・プラス・ファンクションの限定に対応す

  • 14

    る等価物を,考慮しなければならない。

    III. クレームされている発明が特許法第 101 条に適合するか否かの判定

    A. 支配法に基づく特許法第 101 条の範囲の検討

    特許法第 101条は,次のとおり,規定している:

    新規かつ有用な方法,機械,製造物若しくは物質の組成物又はそれらの新規かつ有用な改良

    を発明又は発見した者は,如何なる者でも,本法の条件及び要件に従うことを条件として,

    それらについて特許を取得することができる。

    特許法第 101条では,以下の 4の要件を課すものと解釈されている:

    (i) 発明は,1の特許のみに付与される;

    (ii) 発明者は、2012 年 9月 16日以降に提出された出願において特定されるか、2012 年 9月

    16 日以前に提出された出願の出願人でなければならない;

    (iii) クレームされた発明は特許適格性を有していなければならない;及び

    (iv) クレームされた発明は有用でなければならない。

    4 つの要件についての論述は MPEP§2104 を,適格性についての論述は MPEP§2106 を,及び

    有用性審査の運用指針については MPEP§2107 をそれぞれ参照。

    特許法第 101 条に基づく特許適格性の有無考察は,当該有無考察の 1 項目である。クレーム

    された発明が特許法第 101 条に基づいて適格な主題としての資格を有しているとしても,特

    許法に規定された,新規性(特許法第 102 条),非自明性(特許法第 103 条)及び適切な説明と

    明確な主張(特許法第 112 条)ついての要件を含む他の条件及び要件も満たしていなければな

    らない。Bilski v. Kappos, 561 U.S. 593, 602, 95 USPQ2d 1001, 1006 (2010)参照。

    したがって,審査官は,特許法第 102 条,特許法第 103 条及び特許法第 112 条の要件との適

    合性に関する出願の検討を害する虞を抱いてまで,特許法第 101 条に基づく特許適格性の課

    題に集中することを回避すべきであり,また,最も極端な場合を除いて,特許法第 101 条に

    基づく特許適格性のみに基づいて,出願を取り扱うことを回避すべきである。

    IV. 特許法第 112条との適合性に関する出願の評価

    A. クレームされている発明が特許法第 112 条(b)又は改正前特許法第 112 条,第 2段落の要

    件に適合するか否かの判断

    特許法第 112条(b)は,別々の明確に区別された次の 2の要件を含む:

    (A)クレームは,出願人が発明とみなす主題を記載すること,及び

    (B)クレームは,発明を特定的に指摘し,かつ,明確にクレームすること。

    出願は,出願時の願書を除く,自白を含む証拠が,出願人が当該発明をクレームされたもの

    とは異なるものと考えると述べたことを示している場合,特許法第 112条(b)の第 1要件に基

    づいて不備なものとなる。(MPEP§2171から MPEP§2172.01 まで参照)。

    出願は,クレームが合理的な程度の正確さと特定性を持って当該発明を記載しておらず,か

    つ,定義していない場合には,特許法第 112条(b)の第 2要件に適合しない。その際,当該文

    言の明確性は他と切り離さず,当業者によって解釈されるように,必ず開示内容を踏まえて

    分析されねばならない。開示に照らして解釈される出願人のクレームは,当該技術の熟練者

    に無理なく伝わらなければならない。

    特許法第 112条(f)を行使した制限の範囲は,明細書及びクレームされた機能を実行するその

  • 15

    等価物において本発明者によって示された対応する構造又は物質として定義される。MPEP§

    2181 から MPEP§2186まで参照。クレームは,発明を特定的に指摘し,かつ,明確にクレーム

    することとする特許法第 112 条(b)の要件に該当する様々な課題に関する論述については,

    MPEP§2173 以下を参照。

    B. クレームされている発明が特許法第 112 条(a)又は特許法第 112 条,第 1 段落の要件に適

    合するか否かの判断

    特許法第 112条(a)は,別々の明確に区別された次の 3の要件を含む:

    (A) 適切な書面による説明

    (B) 実施可能性,及び

    (C) ベストモード

    1. 適切な書面による説明

    書面による説明の要件について,出願人による明細書は,同出願人が発明の日付時点で,ク

    レームされた発明を所有していたことを,当該技術の熟練者に妥当に伝えるものでなければ

    ならない。書面による説明の要件との適合性に関する特許出願の評価の更なる指針について

    は,MPEP§2163参照。

    2. 実施可能な開示

    出願人による明細書は,当該技術の熟練者が過度の実験をすることなく,クレームされてい

    る発明を実施し,使用することを可能とするものでなければならない。しかしながら,実験

    が複雑であるという事実があっても,当該技術の熟練者が一般的にかかる複雑な実験に従事

    している場合は,当該実験を過度なものとはならない。

    特許法第 112条(a)の実施可能要件に関する詳細な指針については,MPEP§2164以下を参照。

    3. ベストモード

    ベストモード要件に適合するかどうかの判断は,次の 2点から成る要件による:

    (1) 出願が提出された時点において,発明者は,当該発明を実施するためのベストモードを

    有していたか;及び

    (2) 発明者がベストモードを所有していた場合,書面による説明は,当該技術の熟練者が当

    該態様を実施できるようなベストモードを開示しているか。

    補足的な指針については,MPEP§2165以降を参照。クレームされている発明を実施するため

    のベストモードの開示に関連する不備には,そのような不備を裏付ける証拠はほとんど記録

    に存在しないので,出願の審査中には通常は遭遇しない。Fonar Corp. v. General Elec.Co.,

    107 F.3d 1543, 1548-49, 41 USPQ2d at 1804-05。

    V. クレームされている発明が特許法第 102 条及び第 103 条に適合するか否かの判断

    クレームされた発明の特許法第 102 条及び第 103 条適合性についての審査は,クレームされ

    た保護対象の先行技術として知られているものとの比較から開始する。特許法第 102 条及び

    特許法第 103条に基づく特許性の判断の具体的審査指針については,MPEP§2131 から MPEP§

    2146 及び MPEP§2150から MPEP§2159までを参照。クレームされている発明と先行技術との

    間に差異が見出されない場合は,そのクレームされている発明は新規性に欠け,よって,特

    許法第 102 条に基づき審査官によって拒絶されるべきである。クレームされている発明と先

    行技術との間に差異が識別されると,それらの差異は当該技術の熟練者が有する知識に照ら

    して評価され,解決されなければならない。この状況を踏まえ,発明が当該技術の熟練者に

  • 16

    とって自明となったか否かを判断しなければならない。自明とならなかった場合には,クレ

    ームされている発明は,特許法第 103条を満足している。

    VI. 認定,終結及びそれらの根拠を明確に通知する

    審査官は,特許法第 101 条,第 112 条,第 102 条及び第 103 条を含めすべての法規定に基づ

    き,クレームされている発明の上記の分析を終結させた時点で,予定される拒絶及びその根

    拠をすべて検討し,特許性欠如の一応の証明を示すことができることを確認しなくてはなら

    ない。そうすることによって初めて拒絶は庁通知として課されることとなる。庁通知は,明

    確に認定,終結及びそれらを裏付ける理由を通知しなくてはならない。

  • 17

    2104 特許性を有する発明 - 特許法第 101条の要件 [R-08.2017]

    特許法第 101 条 特許を受けることができる発明

    新規かつ有用な方法,機械,製造物若しくは物質の組成物又はそれについての新規かつ有用

    な改良を発明又は発見した者は,如何なる者でも,本法の条件及び要件に従うことを条件と

    して,それについて特許を取得することができる。

    特許法第 101条は,次の 4の要件を課すものとして,解釈されている。

    第 1に,適格な発明を発明又は発見した者は,如何なる者でも,それについて,1のみの特許

    を取得することができる。この要件は,2の出願が同一の発明をクレームし,すなわち,同一

    の主題をクレームするときに,法定的な二重特許付与の拒絶に関する根拠を形成する。二重

    特許付与に対する禁止にかかわる十分な論述については,MPEP§804 参照。

    第 2に,発明者は(改正前特許規則 1.41(b)に別段の定めがある場合を除き)2012年 9月 16 日

    前に提出された出願においては出願人でなければならず,また,2012 年 9 月 16 日以降に提

    出された出願においては,発明者又は各々の共同発明者が識別されなければならない。発明

    者資格の詳細な論述については MPEP§2137.01 参照,発明者資格の訂正に関する詳細につい

    ては MPEP§602.01(c)以降参照,また,適正な発明者資格の記述の不履行を理由とする特許法

    第 101条及び第 115条に基づく拒絶については MPEP§706.03(a),IV(及び改正前特許法第 102

    条に従うことを条件とする出願については改正前特許法第 102 条(f))参照。

    第 3に,クレームされている発明は,特許付与のための適格性を有していなければならない。

    MPEP§2106 に説明されているとおり,主題の適格性を判断するための 2つの基準がある。

    (a) 第 1に,クレームされた発明は,発明の 4の法定カテゴリー,すなわち,方法,機械,

    製造物又は物質の組成の 1内に属さなければならない。及び

    (b) 第 2に,クレームされた発明は,判例上の例外でなく,特許適格性を有する主題に向け

    られていなければならない(クレーム全体として,例外よりも大幅に多い追加の制限が含まれ

    ていない限り)。主題の適格性要件の詳細な論述については MPEP§2106 を,また,生物の主

    題に関する特別な検討については MPEP§2105 を参照。

    第 4 に,クレームされている発明は有用であり又は具体的,実質的及び信頼できる実用性を

    有していなければならない。実用性の要件の詳細な論述については,MPEP§2107 参照。

  • 18

    2105 特許適格性を有する主題-生物の主題 [R-08.2017]

    I. 序文

    1980 年よりも前には,生物に関する主題は,当該主題が法定カテゴリーに属さないとして,

    又は,判例法上の除外事項として,特許適格性を有していないと広く信じられていた。しか

    しながら,Diamond v. Chakrabarty, 447 U.S. 303, 206 USPQ 193 (1980)事件における最高

    裁判所の判決は,生物を含む発明が特許適格性の課題に該当するか否かの問題を明らかにし

    た。しかしながら,議会は,人体を対象としている,又は包含しているクレームを特許適格

    性から排除したことに留意のこと。リーヒ・スミス合衆国発明法(AIA),公法 112-29, sec.

    33(a), 125 Stat. 284(2011 年 9月 16日)参照。

    II. 生物の主題は特許適格性を有することができる

    A. 生物の主題は,法定的なカテゴリーの対象となり得る

    Chakrabarty 事件において,最高裁判所は遺伝子操作された細菌についてのクレームは 4 の

    法定的カテゴリーのうちの少なくとも 1 の対象であり,その理由は,細菌が「製造物」及び

    /物質の組成物」であると支持した。

    この意見について,裁判所は,包括的な「如何なる(any)」という用語で修飾される「製造物」

    及び「物質の組成物」のような拡張語の使用を考慮して特許法第 101 条の立案を決定したた

    め,「議会は,特許法が広範な範囲を与えることを明白に予期していた。」と述べた。 447

    U.S. at 308, 206 USPQ at 197 参照。

    裁判所はまた、生物と無生物の区別は主題の適格性には無関係と判断した。447 U.S. at 313,

    206 USPQ at 199 参照。したがって、裁判所は、遺伝子工学によって得られたクレームされた

    細菌など、自然界で発見されたものとは著しく異なる特徴を持つ生物は、特許法第 101 条に

    規定された特許保護から除外されないことを支持した。447 U.S. at 310, 206 USPQ at 197

    参照。

    1. 「これらの解釈基準を手掛かりに,本法廷は,特許法第 101条における「製造物」という

    用語は,辞書の定義に従って「手仕事によるか,機械によるかを問わず,原材料に新たな形

    態,品質,特性又はそれらの組合せを与えることによって,当該原材料又は調製された材料

    からの使用のための物品の生産物」を意味すると解釈した。」

    2. 「議会は,包括的な「如何なる(any)」という用語で修飾される「製造物」及び「物質の組

    成物」のような拡張語を選択する際に,特許法が広範な範囲を与えられることを明白に予期

    していた。」

    3. 「特許法は,「発明の才は惜しみない奨励を受けるべき」というジェファーソン哲学を具

    現化した。」5 Writings of Thomas Jefferson, 75-76 Washington ed. 1871)。Graham v.

    John Deere Co., 383 U.S. 1, 7-10,148 USPQ 459, 462-464 (1966)参照。後続する 1836年,

    1870 年及び 1874 年の特許法規は,この同じ広範な文言を採用した。1952 年に,特許法が再

    編纂された際,議会は,「技術(art)」を「方法(process)」に用語置換したが,その他はジェ

    ファーソンの文言をそのまま残した。1952 年法に付随する委員会報告書は,我々に対して,

    議会が法定的主題に,「人によって作られるありとあらゆるものを含める」ことを意図した

    ことについて,説明するものである。S. Rep. No. 1979,82d Cong., 2d Sess., 5 (1952);

    H. R. Rep. No.1923, 82d Cong., 2d Sess., 6 (1952)」

    4. 「よって,議会は,該当する区別は,生物と無生物との間ではなく,生物であるか否かに

  • 19

    かかわらず,天然物と,人間がなした発明との間に存在すると,認めた。本件では,被告の微

    生物は,人間の知恵と研究の成果である。」

    Chakrabarty事件全体の見解とともに,上記の記述にかかわる検討は,裁判所が,その判決を

    遺伝子操作された生体に限定しなかったこと,並びに裁判所が,特許法第 101 条における「製

    造物」及び「物質の組成物」に関する非常に広範な解釈を言明したことを明らかにする。

    Chakrabarty事件における論拠に従って,特許審判インターフェアレンス部は,動物は特許法

    第 101 条に基づく特許を受けることができる主題であると判定した。Ex parte Allen, 2

    USPQ2d 1425 (Bd. Pat. App. & Inter. 1987)において,同部は,天然には存在しない倍数体

    の真牡蠣は,特許性に関するすべての基準を満たした場合には,特許法第 101 条に基づく特

    許の適正な対象となり得ると判定した。 Allen 事件の判定のすぐ後で,特許商標庁(以下

    「USPTO」)長官は,動物を含む,非自然的に発生する非ヒト多細胞生体が特許法第 101条の

    範囲内の特許を受けることができる主題であると USPTO がみなす内容の通知(動物―特許性,

    1077 O.G. 24, April 21, 1987)を発行した。

    植物の主題に関して,最高裁判所は,植物特許法(特許法第 161 条から第 164 条まで)及び植

    物変種保護法(7 U.S.C.(米連邦法規集)2321 以降)に基づいて,植物保護を受けることができ

    るものの,特許法第 101 条に基づいて特許を受けることができる主題が,新たに開発された

    植物育種を含むことを支持した。J.E.M. Ag Supply, Inc. v. Pioneer Hi-Bred Int’l, Inc.,

    534 U.S. 124, 143-46, 122 S.Ct. 593,605-06, 60 USPQ2d 1865, 1874 (2001)(特許法第 101

    条の対象範囲は植物特許法又は植物新品種保護法によって制限されない;各々の法規は,そ

    の相違する要件及び保護を理由として,有効であるとみなすことができる)。

    法定主題のカテゴリーの論述については,MPEP§2106.03参照。

    B. 生物の主題は特許保護の適格性を有することができる

    Chakrabarty において最高裁判所は,遺伝子操作された細菌についてのクレームは適格性を

    有し,その理由は,クレームされた細菌が「天然の産物」の例外ではないことを支持した。

    裁判所が説明したように、特許のクレームは「これまで未知の自然現象」ではなく、「自然界

    に見られるものとは著しく異なる特徴(追加のプラスミドとその結果としての油分解能力の

    ため)」を有しており、当該改変細菌は特許性がある。447 U.S. at 309-10, 206 USPQ at 197

    参照。その後の司法判決により、Chakrabarty における最高裁判所の判決は、自然に基づく生

    産物に関する適格性調査の「主要な」ものであることが明らかになった。例えば,Association

    for Molecular Pathology v. Myriad Genetics, Inc., 569 U.S. _, 133 S. Ct. 2107, 2116,

    106 USPQ2d 1972, 1979 (2013)を参照。たとえば、連邦巡回控訴裁判所は、「「自然界で発

    見されたものとは著しく異なる特徴」を有する発見は...特許保護について適格である」と指

    摘した。Chakrabarty, 447 U.S. at 310,206 USPQ2d at 197 を引用する Roslin Institute

    (Edinburgh), 750 F.3d 1333, 1336,110 USPQ2d 1668, 1671 (Fed. Cir. 2014)参照。Roslin

    事件において,クレームされた発明は,ウシ,ヒツジ,ブタ及びヤギから選択された以前か

    ら存在している非胚性ドナー哺乳動物の生産クロ-ンであった。クレームされた発明の実施態

    様は,裁判所が,「過去に成体の体細胞からクローン化した最初の哺乳動物」であると述べた

    有名なヒツジのドリー(Dolly)であった。裁判所は,クレームされたクローンの創造のために

    使用された方法が「科学的発見における進展をなした」ことについての認知に関係なく,「ド

    リー自身が別のヒツジの正確な遺伝子複製であって,「自然界で発見された何らかの[家畜]

    から著しく異なる特徴」を有していない」ことを理由として,クレームが不適格なものであ

  • 20

    ることを支持するに際して Chakrabarty 判決に依拠した。Roslin, 750 F.3d at 1337,110

    USPQ2d at 1671。一般的な司法上の例外について議論は、MPEP§2106.04を参照,自然の生産

    物に関する議論は,MPEP§2106.04(b),IIを参照,及び審査官が生体物質などの自然に基づ

    く生産物が特許保護の適格性を有するか否かを判断するために使用する必要がある著しく異

    なる特徴分析についての議論は,MPEP§2106.04(c)を参照。

    III. 人体は非法定主題である

    議会は,人体を対象としている,又は包含しているクレームを特許可能性から除外している。

    リーヒ・スミス合衆国発明法(AIA),公法 112-29, sec. 33(a), 125 Stat. 284 は,次のとお

    り記述している:

    法律の他の如何なる規定にも拘らず,人体を対象としている,又は包含しているクレームに

    対しては特許を発行することができない。

    合衆国発明法の立法経緯は,本規定の意味を明確にする次の記述を含む:

    合衆国特許商標庁(以下「USPTO」)は,遺伝子,幹細胞,ヒト遺伝子を有する動物及びヒトに

    よって用いられる非生物の宿主について,既に特許を発行したが,ヒトの胚及び胎児を含む

    人体を対象としたクレームについては,特許を発行していない。補正は前者には影響を及ぼ

    さず,後者を実際に肯定する。

    157 Cong. Rec. E1177-04(統合予算法,2004, 公法 108-199, 634, 118 Stat. 3, 101 に関し

    て前以て提示され,かつ,合衆国発明法に関して後日に再提出された代表者 Dave Weldonの

    証言;149 Cong. Rec. E2417-01参照)。よって,合衆国発明法第 33条(a)は,人体が特許適

    格性のない主題であるという実在する USPTO の政策を成文化している。

    クレームされている発明全体の最も広範な合理的解釈が人体を包含する場合,そのクレーム

    されている発明が人体を対象とし,よって,非法定主題であることを示して,特許法第 101条

    及び合衆国発明法第 33 条(a)に基づく拒絶がなされなければならない。様式文例 7.04.03 が

    使用されるべきである;MPEP§706.03(a)参照。さらに,クレームされている発明は,特許性

    に該当するすべての課題に関して審査されなければならならず,また,特許法第 102 条,第

    103 条又は第 112 条に基づく如何なる適用可能な拒絶もなされなければならない。

  • 21

    2106 特許主題の適格性 [R-08.2017]

    I. 主題の適格性に関する2の基準

    第1に,クレームされている発明は,4の法定カテゴリーの1を対象としなければならない。

    特許法第101条は,議会が適切な特許の主題であるとみなす発明の4のカテゴリー:方法,機

    械,製造物及び物質の組成物について定義している。後者の3のカテゴリーは「物」又は「製

    品」を定義しているのに対し,最初のカテゴリーは「行為」(すなわち,実施されるべき一連

    の工程又は行為からなる発明)を定義している。特許法第100条(b)参照(「「方法(process)」

    という用語は,方法,技法又は手法を意味し,かつ,既知の方法,機械,製造物,物質の組成

    物又は材料の新規な用途を意味する。」)。4のカテゴリーの詳細な情報については,MPEP§

    2106.03参照。

    第2に,クレームされている発明は,特許適格性を有する主題としても適格でなければならな

    い。すなわち,クレームは,判例法上の除外事項を対象としてはならない。ただし,クレーム

    が,全体として除外事項を著しく上回る付加的限定を含む場合は除く。判例法上の除外事項

    (「判例法上で認知された除外事項」又は単に「除外事項」とも称される)は,裁判所が,発明

    の4の法定カテゴリー外である,又は当該カテゴリーに対する除外事項であると認定する主題

    であり,かつ,(天然物を含む)抽象的概念,自然法則及び自然現象(天然物を含む)に限定さ

    れる。Alice Corp. Pty. Ltd. v. CLS Bank Int'l, 573 U.S., 134 S. Ct. 2347, 2354, 110

    USPQ2d 1976, 1980 (2014)(Ass'n for Molecular Pathology v. Myriad Genetics, Inc.,

    569 U.S., 133 S. Ct. 2107, 2116, 106 USPQ2d 1972, 1979 (2013)を引用)。判例法上の除

    外事項の詳細な情報については,MPEP§2106.04参照。

    抽象的概念,自然法則及び自然現象は,「科学的及び技術的な創作物の基本手段である」の

    で,最高裁判所は,特許権を付与することによりこれらの手段に独占権を与えることは,革

    新を促進するよりもむしろ,妨げる可能性があることについて懸念を表明した。Alice Corp.,

    134 S. Ct. at 2354,110 USPQ2d at 1980;Mayo Collaborative Servs. v. Prometheus Labs.,

    Inc., 566 U.S. 66, 71, 101 USPQ2d 1961, 1965 (2012)参照。しかしながら,裁判所は,発

    明は単に判例法上の除外事項を包含することを理由として,特許不適格とみなされることは

    ないことも強調した。Alice Corp., 134 S. Ct. at 2354, 110 USPQ2d at 1980-81(Diamond

    v. Diehr, 450 U.S. 175, 187, 209 USPQ1, 8 (1981)を引用)。Thales Visionix Inc. v.

    United States, 850 F.3d. 1343, 1349, 121 USPQ2d 1898, 1902 (Fed. Cir. 2017)(「クレ

    ームされている方法及びシステムを完全なものとするために数学的方程式が要件とされるこ

    とは,クレームを抽象化に到らすものではない。」)も参照。したがって,裁判所は,抽象的

    概念,自然法則又は自然現象の応用は,特許保護の適格性を有し得ると述べた。Alice Corp.,

    134 S. Ct. at 2354, 110 USPQ2d at 1980 (Gottschalk v. Benson, 409 U.S. 63, 67, 175

    USPQ 673, 675 (1972)を引用)。

    最高裁判所は,Mayo事件において,出願人が判例法上の除外事項それ自体に特許付与を求め

    ているか,又は判例法上の除外事項にかかわる特許適格性を有する応用に特許付与を求めて

    いるかについて判断するための枠組みを設けた。Alice Corp., 134 S. Ct. at 2355, 110

    USPQ2d at 1981 (Mayo, 566 U.S. 66, 101 USPQ2d 1961を引用)参照。Mayoテスト又はAlice

    /Mayoテストと呼ばれるこの枠組みについては,下記のIIIに更に詳細に論述されている。

    Mayoテストの第1部は,クレームが抽象的概念,自然法則又は自然現象(すなわち,判例法上の

    除外事項)を対象としているか否かの判断に関する。同文献。クレームが判例法上の除外事項

  • 22

    を対象としている場合,Mayoテストの第2部は,クレームが判例法上の除外事項を著しく上回

    るほどの付加的な要素を詳述しているか否かの判断に関する。同文献(Mayo, 566 U.S. at 72-

    73, 101 USPQ2d at 1966を引用)。最高裁判所は,テストの第2部を,「「発明概念」につい

    ての調査」として記述した。Alice Corp., 134 S. Ct. at 2355,110 USPQ2d at 1981 (Mayo,

    566 U.S. at 72-73, 101 USPQ2d at 1966を引用)。

    Alice/Mayoの2部のテストは,審査中のクレームの適格性を評価するために用いられるべき

    唯一のテストである。機械・変換テスト(machine-or-transformation test)は,適格性の糸

    口にとって重要なものではあるが,適格性にかかわる別個のテストとして使用されてはなら

    ず,それどころか,Alice/Mayoテストにおける「著しく上回る」判定の一部として考えられ

    るべきである。Bilski v. Kappos, 561 U.S. 593, 605, 95 USPQ2d 1001, 1007 (2010)。

    機械・変換テストが,如何にして,Alice/Mayoにおける2部の枠組みに当てはめられるかと

    いうことに関する更なる情報については,MPEP§2106.05(b)及びMPEP§2106.05(c)参照。同

    様に,このテストが取って代わられているので,適格性は,クレームが,「有用で,具体的

    で,かつ,目に見える成果」を詳述しているか否かということに基づいて,評価されてはな

    らない。State Street Bank, 149 F.3d 1368, 1374, 47 USPQ2d 1596, (Fed. Cir. 1998)

    (Alappat, 33 F.3d 1526, 1544, 31 USPQ2d 1545, (Fed. Cir. 1994)を引用)。Bilski, 545

    F.3d 943, 959-60, 88 USPQ2d 1385, 1394-95 (Fed. Cir. 2008)(大法廷),aff'd by Bilski

    v. Kappos, 561 U.S. 593, 95 USPQ2d 1001 (2010)参照。TLI Communications LLC v. AV

    Automotive LLC, 823 F.3d 607, 613, 118 USPQ2d 1744, 1748 (Fed. Cir. 2016)(「具体的

    で,かつ,目に見える構成要素についての単なる詳述は,別の賢明な抽象的概念に対して特

    許適格性を付与するのには不十分であることは十分に確立している」)も参照。Alappat, 33

    F.3d 1526, 31 USPQ2d 1545 (Fed. Cir. 1994)の事件における,プログラム化されたコンピ

    ュータ又は「特別な目的のコンピュータ」のテスト(すなわち,その他の形態の不適格なアル

    ゴリズム又はソフトウェアは,当該アルゴリズム又はソフトウェアを実行する「特別な目的」

    についてのクレームに,汎用コンピュータを単に追加することにより,特許適格にできたと

    いう理論的根拠)も,最高裁判所のBilski及びAlice Corp.にかかわる判決に取って代わられ

    た。Eon Corp. IP Holdings LLC v. AT&T Mobility LLC, 785 F.3d 616, 623, 114 USPQ2d

    1711, 1715 (Fed. Cir. 2015)(「我々は,Alappatが,Bilski, 561 U.S. at 605–06,及び

    Alice Corp. v. CLS Bank Int’l, 134 S. Ct. 2347 (2014)に取って代わられたことに着目

    している」);Intellectual Ventures I LLC v. Capital One Bank (USA), N.A.,792 F.3d

    1363, 1366, 115 USPQ2d 1636, 1639 (Fed. Cir. 2015)(「抽象的概念は,発明を,インター

    ネット[又は]コンピュータのような特定の使用分野又は技術的環境に限定することによって,

    非抽象的になることはない」)。最後に,適格性は,クレームされている発明が実用性を有し

    ているか否かに基づいて評価されてはならず,それは,「実用性とは,特許適格な主題につ

    いてのテストではない」ことを理由としている。Genetic Techs. Ltd. v. Merial LLC, 818

    F.3d 1369, 1380, 118 USPQ2d 1541, 1548 (Fed. Cir. 2016)。

    審査官は,特許法第101条が,特許性を判断するための唯一の手段ではないことについて留意

    する;特許法第112条,特許法第102条及び特許法第103条は,クレームが特許性の条件に適合

    することを確証するための付加的な手段を提供することになる。最高裁判所は,Bilski, 561

    U.S. at 602, 95 USPQ2d at 1006の事件において,次を明らかにした:

    特許法第101条特許適格性の調査は,特許性を判断するための試験項目の一つにすぎない。 発

  • 23

    明が方法,機械,製造物又は物質の組成物として適格性を有するとしても,特許法の保護を

    受けるためには,クレームされている発明は,「本法の条件及び要件」も満たさなければな

    らない。特許法第101条。それらの要件は,発明が新規であること,§102参照,非自明性であ

    ること,§103参照,及び十分,かつ,特定的に記載されていること,§112参照,を含む。

    II. クレーム全体の最も広範な合理的解釈の設定

    クレームの最も広範な合理的解釈(BRI)が,適格性についてクレームを審査する前に,設定さ

    れることが必須である。 BRIは,クレームによって求められる保護対象の境界を設定し,か

    つ,クレームが4の法定カテゴリーを超える主題の保護を求めているか,又は除外事項内に属

    する主題を包含するかということについて影響を及ぼすことになる。 BRIに基づいて適格性

    を評価することは,特許法第101条に基づく特許適格性が,単に起草者の技術に依拠しないこ

    とも確証する。Alice, 134 S. Ct. at 2359, 2360, 110 USPQ2d at 1984, 1985 (Parker v.

    Flook, 437 U.S. 584, 593, 198 USPQ 193, 198 (1978)及び Mayo, 566 U.S. at 72, 101

    USPQ2d at 1966)を引用)。BRIの判断に関する更なる情報については,MPEP§2111参照。

    クレーム解釈は,適格性に関する両方の基準の評価に影響を及ぼす。例えば,Mentor Graphics

    v. EVE-USA, Inc., 851 F.3d 1275, 112 USPQ2d 1120 (Fed. Cir. 2017)の事件において,ク

    レーム解釈は,「機械可読媒体」に対するクレームは法定カテゴリーのものではないとした,

    裁判所の判断にとって重要であった。Mentor Graphics事件では,裁判所は,ランダムアクセ

    スメモリ及びキャリア波を含む「何らかのデータ記憶装置」を包含するとして媒体を明示的

    に定義していた明細書から見て,クレームを解釈した。ランダムアクセスメモリ及び磁気テ

    ープは法定的な媒体であるが,キャリア波は,Nuijten. 851 F.3d at 1294, 112 USPQ2d at

    1133 (Nuijten, 500 F.3d 1346, 84 USPQ2d 1495 (Fed. Cir. 2007)を引用)の事件において

    非法定的と判示された一時的な伝播信号に類似する信号であるので,法定的な媒体ではない。

    したがって,クレームのBRIは,法定カテゴリーに属する主題(ランダムアクセスメモリ)及び

    法定カテゴリーに属さない主題(キャリア波)の両方を保護対象としたため,クレーム全体は,

    法定カテゴリーのものとはならず,よって,適格性に関する第1の基準を満たさなかった。

    適格性に関する第2の基準について,Alice/Mayoテストでは,クレーム解釈は,当該テスト

    の第1部(クレームが,判例法上の除外事項を対象としているか否か)に影響を及ぼし得る。例

    えば,Synopsys事件における特許権者は,論理回路設計についてクレームされている方法は,

    コンピュータベースの設計ツールに関連して使用することを意図したものであり,よって,

    心理的過程ではないとの意見を具申した。Synopsys, Inc. v. Mentor Graphics Corp., 839

    F.3d 1138, 1147-49, 120 USPQ2d 1473, 1480-81 (Fed. Cir. 2016)。裁判所は,クレーム

    は,コンピュータの実装を要件とする如何なる限定も含んでいないので,当該クレームは,

    純粋な心理的過程以外の如何なるものも包含していない(よって,抽象的概念である)ものと

    解釈されるということを理由として,同意しなかった。これとは対照的に,Enfish事件にお

    ける特許権者は,クレームされているコンピュータデータベースに関する自己参照テーブル

    は,既存の技術の改良であり,よって,抽象的概念を対象とはしていないとの意見を具申し

    た。Enfish, LLC v. Microsoft Corp., 822 F.3d 1327, 1336-37, 118 USPQ2d 1684, 1689-

    90 (Fed. Cir. 2016)。裁判所は,クレームされている「構成手段」を,表形式データを単に

    保存する形態に対立する,改良を達成した4段階のアルゴリズムを要件とする,特許法第112

    条(f)に基づく解釈に基づいて,当該特許権者の意見に同意した。 McRO, Inc. v. Bandai

  • 24

    Namco Games America, Inc. 837 F.3d 1299, 1314, 120 USPQ2d 1091, 1102 (Fed. Cir.

    2016)(クレームの解釈は,既存の技術的過程を改良した特別な形式のルールを取り込んだも

    のである)も参照。クレーム解釈は,Alice/Mayoテストの第2部(クレームが判例法上の除外

    事項を著しく上回るほどの付加的な要素を詳述しているか)にも影響を及ぼし得る。例えば,

    Amdocs (Israel) Ltd. v. Openet Telecom, Inc.の事件では,裁判所は,クレームが,技術

    的課題に対する非慣例的な技術的解決策を必然的に伴うことを判断するために,用語「促進

    する(enhance)」(分散した様式で多数の分野促進の適用を必要とすること)の解釈に依拠した。

    841 F.3d 1288, 1300-01, 120 USPQ2d 1527, 1537 (Fed. Cir. 2016)。

    III. 解析及びフローチャートの概要

    審査官は,クレームを以下のフローチャートに従って評価することにより,当該クレームが

    主題の適格性に関する基準を満たしているか否かについて判断すべきである。フローチャー

    トは,審査中に,クレームが特許適格な主題に設定されているか否かを評価するために使用

    される,製品及び方法に関する主題適格性の解析の諸段階を図示する。支配する判例の下で,

    同一の最終成果を依然として達成することになる主題適格性についての解析の正確な輪郭に

    おいて変更が存在し得ることが認識されている。ここでいう解析は,あらゆる技術を横断す

    る審査の効率及び一貫性を促す。

    フローチャートに示されているように,段階1は,法定カテゴリーに関連し,かつ,クレーム

    が,発明の4の法定カテゴリーのうちの1に属することを確認することにより,第1の条件が適

    えられることを確証する。段階1に関する更なる情報については,MPEP§2106.03参照。段階2

    は,最高裁判所におけるAlice/Mayoテストであり,判例法上の除外事項を対象とするクレー

    ムを識別し(段階2A),次いで,当該クレームが判例法上の除外事項を著しく上回るほどの付

    加的な要素を詳述しているか否かを評価する(段階2B)ための2部テストである。段階2Aに関す

    る更なる情報についてはMPEP§2106.04及び段階 2Bに関する更なる情報については

    MPEP§2106.05参照。

    フローチャートは,適格性に対する以下の3の経路(A,B及びC)も示している:

    経路A:全体として法定カテゴリーに属し(段階1:YES),かつ,判例法上の除外事項を詳述し

    得る又はし得ないが,それ自体の適格性が自明であるクレームは,能率化された解析を用い

    る経路Aにおいて,適格であると認定できる。この経路及び自明な適格性に関する更なる情報

    については,MPEP§2106.06参照。

    経路B:全体として法定カテゴリーに属し(段階1:YES),かつ,判例法上の除外事項を対象と

    していない(段階2A:NO)クレームは,経路Bにおいて,適格である。これらのクレームは,段

    階2Bに進む必要はない。この経路及び段階2Aに関する更なる情報については,MPEP§2106.04

    参照。

    経路C:全体として法定カテゴリーに属し(段階1:YES),判例法上の除外事項を対象とし(段

    階2A:YES),かつ,判例法上の除外事項を著しく上回るほどの付加的な要素を,個別又は順

    序付けられた組合せの何れかで詳述している(段階2B:YES)のクレームは,経路Cにおいて,

    適格である。この経路及び段階2Bに関する更なる情報については,MPEP§2106.05参照。

    経路A(効率化解析)において適格と認められる可能性があるが,段階2A又は2Bにおいて更なる

    解析を受けるクレームは,最終的には,経路B又はCにおいて,適格であると認定されること

    になる。したがって,審査官が能率化された解析が適切であるか否かについて不確かである

  • 25

    場合には,同審査官は,完全な適格性の解析を実施することを奨励される。ただし,クレー

    ムが経路A,B又はCの何れにおいても適格でないと認められる場合は,当該クレームは,特許

    不適格であり,特許法第101条に基づいて拒絶されるべきである。

    特許法第101条に基づく拒絶がなされるか否かに拘わらず,あらゆるクレームについて,他の

    特許性要件の各々に基づいて,完全な審査が行われるべきである:特許法第102条,第103条,

    第112条及び第101条(実用性,発明者資格及び二重特許付与)並びに非法定二重特許付与。

    MPEP§2103。

    2106.01 [保留]

    2106.02 [保留]

    2106.03 適格性段階1:法定主題の4のカテゴリー[R-08.2017]

    I. 4のカテゴリー

    特許法第101条は,議会が特許について適切な主題であるとみなす以下の4の主題のカテゴリ

    ーを列挙している:方法,機械,製造物及び物質の組成物。裁判所の説明によると,これらの

    「4のカテゴリーは,共に,特許性のある主題の排他的範囲について記載している。クレーム

    が4の法定カテゴリーの何れにも認定されていない材料を対象としている場合には,当該クレ

    ームは,主題が別の形態で新規,かつ,有用であっても,特許法第101条において明確に表現

    された範囲外に属する。」Nuijten, 500 F.3d 1346, 1354, 84 USPQ2d 1495, 1500 (Fed. Cir.

    2007)。

    方法は,「行為」,すなわち,行為若しくは工程として,又は一連の行為若しくは工程として

    クレームされている発明を定義している。最高裁判所の説明によると,「方法」とは,「所定

    の成果を生むための一定の材料の処理態様である。それは,異なる状態又は物に変換され,

    かつ,還元される主題に対して実施される行為又は一連の行為である。」Gottschalk v.

    Benson, 409 U.S. 63, 70, 175 USPQ 673, 676 (1972)(イタリック体を追加)(Cochrane v.

    Deener, 94 U.S. 780, 788, 24 L. Ed. 139, 141 (1876)を引用)。Accord Nuijten, 500 F.3d

    at 1355, 84 USPQ2d at 1501(「最高裁判所及び本裁判所は,法定用語「方法(process)」と

    は行為を要件とするものであると一貫して解釈してきた」);NTP, Inc. v. Research in

    Motion, Ltd., 418 F.3d 1282, 1316, 75 USPQ2d 1763, 1791 (Fed. Cir. 2005)(「方法と

    は,一連の行為である。」)(Minton v. Natl. Ass’n. of Securities Dealers, 336 F.3d

    1373, 1378, 67 USPQ2d 1614, 1681 (Fed. Cir. 2003)を引用)。特許法第100条(b)に定めら

    れているように,用語「方法(process)」は,「手法(method)」と同義である。

    その他の3のカテゴリー(機械,製造物及び物質の組成物)は,議会が特許付与に適切とみなし

    た物理的又は有形な「物」又は「製品」の型式を定義している。Digitech Image Techs. v.

    Electronics for Imaging, 758 F.3d 1344, 1348, 111 USPQ2d 1717, 1719 (Fed. Cir.

    2014)(「方法クレームを除くすべてのカテゴリーについては,適格な主題が,何らかの物理

    的又は有形な形態で存在していなければならない。」)。したがって,審査官は,クレームさ

    れている発明がこれらの3のカテゴリーのうちの1に属しているか否かについて判断する際に,

    発明が以下の諸カテゴリーの少なくとも1に属し,かつ,物理的又は有形な形態でクレームさ

    れていることを検証すべきである。

  • 26

    ・機械とは,「部品又は所定の装置及び当該装置の組合せからなる具体的な物」である。

    Digitech, 758 F.3d at 1348-49, 111 USPQ2d at 1719(Burr v. Duryee, 68 U.S. 531, 570,

    17 L. Ed. 650, 657 (1863)を引用)。このカテゴリーは,「何らかの機能を実施し,かつ,

    一定の効果又は成果を生じる,あらゆる機械的装置又は機械的動力及び装置の組合せを含む。」

    Nuijten, 500 F.3d at 1355, 84 USPQ2d at 1501(Corning v. Burden, 56 U.S. 252, 267,

    14L. Ed. 683, 690 (1854)を引用)。

    ・製造物とは,「人造の又は人工的な手段を通じて,新たな形態,品質,特性又はそれらの組

    合せに与えられる有形な物品」である。Digitech, 758 F.3d at 1349, 111 USPQ2d at 1719-

    20(Diamond v. Chakrabarty, 447 U.S. 303, 308, 206 USPQ 193, 197 (1980)を引用)。裁判

    所の説明によると,製造物とは,製造プロセスから生じる物品であり,すなわち,「手仕事に

    よるか,機械によるかを問わず,原材料又は調製材料に新たな形態,品質,特性又はそれら

    の組合せを与えることによって,それらの材料から」生産されたものである。Samsung

    Electronics Co. v. Apple Inc., 580 U.S. , 137 S. Ct. 429, 435, 120 USPQ2d 1749,

    1752-3 (2016)(Diamond v. Chakrabarty, 447 U. S. 303, 308, 206 USPQ 193, 196-97

    (1980)を引用);Nuijten, 500 F.3d at 1356-57, 84 USPQ2d at 1502。製造物は,「機械そ

    れ自体とは別個であるとみなされる機械の部品」も含む。Samsung Electronics, 137 S. Ct.

    at 435, 120 USPQ2d at 1753(1 W. Robinson, The Law of Patents for Useful

    Inventions§183, p. 270(1890)を引用)。

    ・物質の組成物とは,「2以上の物質の組合せであって,すべての複合物を含む。」Digitech,

    758 F.3d at 1348-49, 111 USPQ2d at 1719(引用例省略)。このカテゴリーは,「化学的結合

    若しくは機械的混合の成果であるか否かを問わず,又は,気体,流体,粉末若しくは固体で

    あるか否かを問わず」,2以上の物質のすべての組成物及びすべての複合物を含む。

    Chakrabarty, 447 U.S. at 308, 206 USPQ at 197(Shell Dev. Co. v. Watson, 149 F. Supp.

    279, 280 (D.D.C. 1957);遺伝子組換え微生物を製造物又は物質の組成物であると判決して

    いる同文献at 310を引用)。

    クレームが少なくとも1のカテゴリーに属していることが明瞭である限り,クレームが属する

    単一のカテゴリーを識別する必要はない。例えば,マイクロプロセッサは一般的には製造物

    と理解されているので,マイクロプロセッサ又はマイクロプロセッサを含むシステムに係る

    製品クレームは,当該クレームが,(機械のような)その他の法定カテゴリーに属しているか

    否かに拘わらず,段階1を満たす。多くの場合において,クレームされている発明が属してい

    るカテゴリーについては明瞭になるが,クレームは2以上のカテゴリーの要件を満たす可能性

    があるので,クレームが属する「正確な」カテゴリーを識別する必要もない。例えば,自転車

    は,具体的で,かつ,フレーム及び車輪のような部品からなる有形な製品であり(よって,機

    械のカテゴリーを満たす),また,アルミニウム鉱石及び液体ゴムのような原材料に新たな形

    態を付与することにより,当該原材料から生産した物品である(よって,製造物のカテゴリー

    を満たす)ので,機械及び製造物の両方のカテゴリーを満たすものである。同様に,遺伝子組

    換え細菌は,物質の組成物及び製造物の両方のカテゴリーを満たすものであるが,その理由

    としては,遺伝子組換え細菌は,タンパク質,炭水化物及びその他の化学物質のような2以上

    の物質の組合せである有形な製品であり(よって,物質の組成物のカテゴリーを満たし),ま

    た,人間によって,多数種の炭化水素を消化する能力のような新たな特性を持つように遺伝

    子組換えがなされた物品である(よって,製造物のカテゴリーを満たす)からである。

  • 27

    法定カテゴリーの何れも対象としないクレームの非制限例は,次のとおりである:

    ・情報(しばしば,「データ自体」と称される)又はコンピュータプログラム自体(しばしば,

    「ソフトウェア自体」と称される)のような物理的又は有形な形態を持たない製品であって,

    構造的な詳述なしで製品としてクレームされているもの;

    ・伝播する電気信号若しくは電磁信号又はキャリア波のような一時的形態の信号送信(しば

    しば,「信号自体」と称される);及び

    ・リーヒ・スミス合衆国発明法(AIA),公法112-29, sec. 33, 125 Stat. 284(2011年9月16日)

    に基づいて除外されるヒト自体のような,法令が特許付与されることを明示的に禁止してい

    る主題。

    機械,製造物及び物質の組成物にかかわる裁判所の定義が示すように,製品は,これらの法

    定カテゴリーの1に属すために,物理的又は有形な形態を持つものでなければならない。

    Digitech, 758 F.3d at 1348, 111 USPQ2d at 1719。したがって,連邦巡回控訴裁判所は,

    目に見えない情報の収集についての製品クレームは,人力によって創造されたものであって

    も,如何なる法定カテゴリーにも属さないと判示した。Digitech, 758 F.3d at 1350, 111

    USPQ2d at 1720(2セットのデータを含むクレームされている「装置プロファイル」は,方法

    でも,有形な製品でもないので,何れのカテゴリーも満たさなかった)。同様に,コード又は

    媒体から分離された1セットの指示として表現されたソフトウェアは,物理的な実施形態を持

    たないアイデアである。Microsoft Corp. v. AT&T Corp., 550 U.S. 437, 449, 82 USPQ2d

    1400, 1407 (2007)参照;Benson, 409 U.S. 67, 175 USPQ2d 675(「アイデア」は,特許適格

    性を有さない)も参照。したがって,少なくとも1の(「ミーンズ・プラス・ファンクション」の

    限定のような)構造的限定も含有しないソフトウェアプログラムについての製品クレームは,

    物理的又は有形な形態を持たず,よって,如何なる法定カテゴリーにも属さない。法定カテ

    ゴリーに属さない目に見えない製品の別の例は,マーケティング会社用のパラダイム又はビ

    ジネスモデルである。Ferguson, 558 F.3d 1359, 1364, 90 USPQ2d 1035, 1039-40 (Fed.

    Cir. 2009)参照。

    製品が物理的及び有形な形態を持っている場合であっても,当該製品が,法定カテゴリーに

    属さない可能性がある。例えば,一時的な信号は,物理的かつ現実的なものであるが,機械

    の定義に基づく装置又は部品の資格を有する具体的な構造を有さず,(人造され,かつ,物理

    的なものであって,実世界に存在し,かつ,目に見える原因と結果を有するものであるとし

    ても)製造物の定義に基づく有形な物品又は商品ではなく,また,物質の組成物としての資格

    を有するような物質から構成されてはいない