ドイツの改革事例から読み解く 日本の電力市...

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ドイツの改革事例から読み解く日本の電力市場の将来

June 2014

PricewaterhouseCoopers AG

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PwCJune 2014

PwCドイツ ユーティリティ&レギュレーショングループ

• エネルギー業界をはじめ、さまざまな公益業界に対して1930年よりコンサルティングサービスの提供

• コンサルタント150名を擁するグループ

• 電力、ガス、通信、水道、廃棄物処理事業、公共交通機関における専門性

• 戦略策定、組織再編(会社分離)、料金設定、規制、法規制管理、効率性ベンチマーキング(事業者間の経営効率性の比較)に関するソリューションサービス

• 会計分離、第三者アクセス、系統料金、インセンティブ規制に関する法規制管理

• 注力しているエネルギーコンサルティングサービスとして

- サプライチェーン全てを網羅したコンサルティングサービス

- 効率性ベンチマーキングのためのデータプール

(ドイツDSO450社における効率性ベンチマーキングプロジェクト)

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関連する専門領域・経験

略歴

クラウス・ゲルデス - パートナーKlaus Gerdes

クラウス・ゲルデスは、PwCドイツ法人のファイナンス&レギュレーショ

ンプラクティスのユーティリティ&レギュレーション部門のリーダーであり、エネルギー・通信業界に対して20年以上のコンサルティング経験を有しています。

クラウスは、エネルギー・通信業界の規制や原価管理に関する深い知識をもっており、規制改革に関する幅広いノウハウを活用し、欧州エネルギー業界のさまざまな企業を支援してきました。

現在、クラウスは、ドイツおよび欧州のエネルギー関連規制に関するコンサルティングサービスをリードしています。

主な経験:

• 規制関連

• 系統原価管理

• 規制デューデリジェンス

専門業界:

• エネルギー事業 (電気・ガス)

• 公益事業

• 通信事業

関連するプロジェクト経験

• 欧州の大手ガス会社をご支援:

北西欧における新たな料金制度に関するアドバイス

系統運用機関(TSO)に対し、ガスパイプラインインフラ・プロジェクトおよびEUまたは各国レベルの規制改革に関するアドバイス

• 260社におよぶ自治体運営の電力会社に対する規制対応に関するアドバイス

• ドイツの大手系統運用機関(TSO)がドイツ規制当局へ提出する事業計画試算に関するアドバイス

• Deutsche Telekom社に対して、規制対応プロジェクト、原価計算関連プロジェクトにおけるアドバイス

• ドイツの送配電事業者(DSO)各社のデータをプールし、事業の効率性を相対的に評価するベンチーマーキングサービスをリード

• トルコの規制当局に対し、規制に関するトレーニング実施

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関連する専門領域・経験

略歴

ヤン-フレデリック・ツォクラー -ディレクターJan-Frederik Zöckler

ヤン-フレデリック・ツォクラーは、PwCドイツ法人のファイナンス&レギュレー

ションプラクティスのディレクターであり、主にエネルギー規制に関わるサービスを担当しています。

ヤンは、ドイツの電力自由化後、約9年間、エネルギー関連企業が規制上の要件を満たすために行ってきた改革を支援してきました。

特に、インセンティブ規制と、その法的分離・機能分離への影響に関する専門性を有しており、ドイツ規制当局と折衝する送配電事業者(DSO)および系統運用機関(TSO)を支援してきました。

ヤンは、欧州エネルギー規制機関(ACER)の担当窓口としてプロジェクト

リーダーを任されています。また、ドイツエネルギー・水道事業連合会(BDEW)に対する支援も行っています。

主な経験:

• 規制関連

• 系統原価管理

• 規制デューデリジェンス

• ネットワーク事業許認可

専門業界:

• エネルギー事業 (電気・ガス)

• 公益事業

関連するプロジェクト経験

• ドイツの系統運用機関(TSO)に対して、系統料金制度、インセンティブ規制、規制当局との折衝に関するアドバイス

• 投資予算運用に関するアドバイス

• 送配電事業者(DSO)に対して、系統料金申請承認に関するアドバイス

• ドイツの送配電事業者(DSO)に対して、インセンティブ規制下における需要予測と最適な投資計画に関するアドバイス

• 送配電事業者(DSO)に対して、規制全般に関するアドバイス

• ドイツの送配電事業者(DSO)各社のデータをプールし、事業の効率性に関するベンチマーキングを実施

• ドイツの公益事業連合会のカンファレンスにて多数講演

• 系統運営機関(TSO)、送配電事業者(DSO)、中国の発電事業者、およびトルコ規制当局等さまざまな機関に対して、規制に関するトレーニング実施

• 50Hertz社、Thyssengas社、ENI社/TENP社の事業売却において、買い手のためのデューデリジェンスを支援

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アジェンダPage

1 電力自由化の経緯 1

2 ドイツ電力市場の状況 5

2.1 発送電分離 8

2.2 規制状況 13

3 エネルギーヴェンデ – エネルギー転換 17

3.1 エネルギー転換の目標 18

3.2 変動する電力供給を伴う系統安定化 23

3.3 “エネルギー転換”のコストと課題 28

4 事例紹介-ビジネスモデル 33

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電力自由化の経緯

1

セクション 1

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EU諸国による域内電力市場の自由化推進

• 1996年より欧州エネルギー市場自由化を推し進めるため、さまざまな法改正が行われてきた

• 自由化実現に向けた主な手法:古くから続いている独占的なエネルギー業界の規制

• 中心的な規制手法:

- 独占事業のアンバンドリング(発送電分離)

- 送配電系統利用における差別的取扱いの禁止

- 系統料金規制

• 第三次エネルギー法令パッケージにて発送電分離など、新たに多くの規制を立法

2

セクション 1 – 電力自由化の経緯

1996/1998

第一次欧州指令 (EU域

内における統一エネルギー市場の創出)

2003

第二次エネルギー法令パッケージ

(電力自由化を加速させるための指令改正)

2009

第三次エネルギー法令パッケージ

(統一エネルギー市場のための立法)

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ドイツ電力自由化における歴史的な経緯

フェーズ1: 1998年まで

• 送配電網に第3者がアクセスできず、電力の発電、供給において自由化されていない状況下、公益事業会社が独占状態で運営

フェーズ2: 1998年-2005年

• 独占的保護規制の廃止

• 競争促進のために、ネットワーク(系統、配電)部門と自由化部門の会計分離を実施、ネットワークへの第3者アクセス付与

フェーズ 3: 2005年-現在

• 国内規制当局の設置(例:連邦ネットワーク庁(BNetzA))、系統料金の事前承認

• 発送電分離のための高度な規制の実施

3

セクション 1 – 電力自由化の経緯

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欧州全体で規制に関する共通的な取り組みを推進

• 欧州エネルギー市場全体の目標(例えば、統一エネルギー市場創出、越境電力取引活性化)を達成するために、欧州ではエネルギー問題に対して共通のアプローチが採られている。

• 欧州全体における組織・規制機関の統合

- ENTSO-E & ENTSO-G(送電・送ガスシステム運用者のグループ)

- 各国規制機関が協調することを目的とした欧州エネルギー規制機関(ACER)

- 欧州委員会

• エネルギー戦略や規制は欧州全体での取り組みとなっている。例えば、欧州エネルギー規制機関は欧州の共通利益プロジェクト(Projects ofCommon Interest(PCI))を選定した。

4

セクション 1 – 電力自由化の経緯

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ドイツ電力市場の状況セクション 2

5

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ドイツにおける新たなエネルギー市場エネルギー転換を推進

発電電力卸と

トレーディング

送配電

電力供給

規制部門 –自然独占

系統料金、第三者アクセスの規制系統料金のインセンティブ規制

(レベニューキャップ)

自由化部門

ただし、再生可能エネルギー法(EEG)により規制:固定価格買取

6

セクション 2 – ドイツ電力市場の状況

自由化部門

電力小売事業者を変更する選択肢

デフォルト事業者による電力供給の保障(非規制の基本料金)

自由化部門

欧州エネルギー取引所(EEX)

店頭取引(OTC)

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ドイツ電力市場の構造

7

セクション 2 – ドイツ電力市場の状況

E.ON、RWEVattenfall

EnBW

自治体運営公益事業

e.g. EWE、MVV

電力メジャー

Regional

Local

電力消費純量 522 TWh

Local

237 TWh=45% 140 TWh = 27% 120 TWh=23% 25 TWh=5%

電力小売業者から需要家へ

商業、公的機関

一般家庭産業 その他

出所: BDEW, Bundesverband der Energie- und Wasserwirtschaft e.V., 2008

4

≈ 60

≈ 1.000

独立系新電力供給

事業者(例:

Natur-strom,

TelDaFax)

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発送電分離セクション 2.1

8

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送電系統運用機関(TSO)における電力ドイツにおける関連TSO4社

• 電力需要と供給の不均衡に起因する電力供給網の不安定性の管理

• 調整のために利用される発電所(例えば、揚水式発電所)における短期的な電力需給調整

エネルギー

管理

• ドイツの需給調整地域は4つのバランシンググループに分割

• 電力供給と需要の差異を認識

• 制御が要求されるエネルギーに関する微調整

バランシング

グループ

による需給調整

9

セクション 2.1 – 発送電分離

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発送電分離におけるTSOTSOとドイツ電力エネルギー市場への影響

• 発送電分離におけるTSOは、以下の3つの企業形態がとられている。

10

セクション 2.1 – 発送電分離

統括会社

厳格な規制のもと送電部門を所有する企業形態

発電

独立系送電運用者Independent

TransmissionOperator (ITO)

電力小売

統括会社

送電部門に対する支配力は持たず所有する企業形態

発電

独立系統運用機関Independent

SystemsOperator (ISO)

電力小売

統括会社

送電部門の所有を完全に分離した

企業形態

発電

所有権分離Full Ownership

Un-bundling(FOU)

電力小売

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発送電分離における配電事業者(DSO)各DSOが4地域のうち2地域において運営

送配電系統運用機関は、他の第3者がアクセスできる送配電網を提供している。電力供給事業者は、天然ガスや電力を需要家に提供している。

11

セクション 2.1 – 発送電分離

ドイツエネルギー事業法 EnWG (第3次エネルギー法令パッケージを反映)

会計分離

• 送配電部門会計を発電・小売部門から分離

• 配送電部門の年次会計報告書も分離

• 相互に内部補助を禁止することが目的

機能分離(部門間連携)

• 送配電部門が、他部門へ商業的機密情報を公開することを禁止

機能分離(管理体制)

• 送配電部門の人員を専任化

• 送配電部門の運用を独立

• 決定権の独立

• 個別の社内ルール規定

法的分離

• 送配電部門を別会社化

全ての垂直統合事業者 中規模事業者(10万人以上の需要家)

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ドイツにおける配電事業者 (DSO)約1000社に及ぶドイツのDSO

• 配電網の電力は低中圧で保持されている。一部、高圧で保持されている

• 需要家への配電に責任を持つ

• 配電網により公共的な用地を利用するため、自治体へ土地使用権に対する賦課金を支払う

エネルギー

供給

• 配電事業者は地域電力会社(自治体運営の公営事業)もしくはメジャー電力会社へ属している

• いくつかの自治体では、配電網、ガス導管網を買い戻すことを計画中(“再市営化”)

特色

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セクション 2.1 – 発送電分離

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規制状況セクション 2.2

13

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コストベースにより決定される規制期間のレベニュー

2009年にインセンティブ規制が導入された。

• レベニューキャップは規制期間(5年間)単位で決定される

• レベニューキャップの水準は、基準年のコストにより決まる

• DSOとTSOのベンチマーキングにより、第二次規制期間(2014年-2018年)に非効率性を削減することが求められる

• 通例、規制期間内におけるレベニューキャップの調整は実施されない

• 第二次規制期間(2014年-2018年)の基準年は2011年に設定されている

14

セクション 2.2 – 規制状況

06 07 08 09 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19

第3期

電力

第1期

基準年

第2期

基準年

基準年

第2期第1期

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コストベースには発生費用および期間帰属費用が反映される

• コストは系統料金規制からの要請により決定される

• 送電もしくは配電それぞれの監査された財務会計に基づき決定される

• 発生費用に相当する事業運営コストは、原料、人件費、外注費等を含む

• 送配電事業からのレベニュー(系統利用料金以外)は、コスト控除のために充当される

• もし、事業運営に必要ないコストであれると規制当局が判断すれば、料金算定のためのコストとは認められない(例:広告宣伝等)

15

セクション 2.2 – 規制状況

配送電網コスト/

送配電網レベニュー

=発生費用

に相当するコスト

+期間帰属の費用

+事業運営コスト

+ 減価償却費

+負債利息

費用-

建設補助金充当分の

減価償却費

+ その他税金 +株主資本に対する利益

-その他収入

+ 営業税

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レベニューキャップ算定式

tttttt

btvnbtdnbt SVKVKQEFPFVPI

VPIKAVKAKAEO

)()1( 0

0

0,0,,

効率化対象外のコスト

効率的なコスト

非効率なコスト

削減すべき非効率の割合

消費者物価指数の上昇率

生産性向上率

拡張係数

電力品質(2013年からすぐに開始)

差額調整金(2013年から開始)

永続的に管理不能なコスト(KAdnb)

一時的に管理不能なコスト(KAvnb)

管理可能なコスト(KAb)

ベンチマーキングにより算出

変動コスト

セクション 2.2 – 規制状況

16

レベニューキャップ

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エネルギーヴェンデ – エネルギー転換セクション 3

17

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エネルギー転換の目標セクション 3.1

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ドイツにおける原子力発電所日本における原発事故を受けて

2011年3月14日メルケル首相は、原子力モラトリアム(3カ月間)を宣言した。前年に可決された原子炉の稼働年数の延長措置も凍結することを発表

2011年6月30日 ドイツ連邦議会および連邦参議院が、2022年までにすべての原子力発電所を停止することを決議

いくつかの原子力発電所は直ちに停止

19

セクション 3.1 – エネルギー転換の目標

閉鎖2015-2022*

閉鎖2011

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エネルギー転換エネルギー供給の変化

目標:

• 2022年: ドイツの原子力発電所の停止における最遅期限

• 2050年: 二酸化炭素排出量削減 80% - 90% (1990年比)

• 再生可能エネルギー比率をエネルギー全体消費量の60%、電力消費量の80%に拡大

• 2050年: 一次エネルギー消費量を50%削減、電力消費量を25%削減(2008年比)

• 輸送部門でのエネルギー消費量を40%削減(2005年比)

• 建築物の省エネ化改修工事を年間1%から2%へ倍増

• 電力系統網の拡大と蓄電技術における研究を優先的に対応

20

セクション 3.1 – エネルギー転換の目標

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2013年時点で電力全体の約23%は再生可能エネルギー

21

セクション 3.1 – エネルギー転換の目標

電力発電量全体2012年: 617 billion KWh

出所:BDEW, AG Energiebilanzen, status: 01/2014

天然ガス

10,5%石炭

19,7 %5,2%

23,4%

再生可能エネルギー

15,4%

原子力

25,8%

褐炭

3,4%

6,8%

7,9%

4,5%

バイオマス

0,8%

太陽光発電

風力発電

都市廃棄物

水力発電

燃料油,揚水,その他

• 2011年、原子力発電の停止

措置により8.4GW分減少

• 再生可能エネルギーおよび

石炭(特に、褐炭)により

原子力発電削減容量を補完

• 再生可能エネルギー(水力

を除く)の設置済発電容量は

72 GWに相当

• 低稼働率、廉価な石炭、低

い炭素価格、高い天然ガス

価格により、天然ガスは殆ど

収益性見込めず

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PwCJune 2014

再生可能エネルギー法(EEG)基本方針

EEGによる規制:

• 20年間、固定価格買取制を実施

• 再生可能エネルギーによる電力供給が優遇

• テイク・アンド・ペイによる買取りが義務付け

• 送配電網へ供給することをTSO、DSOに対して義務付け

22

セクション 3.1 – エネルギー転換の目標

EEGサーチャージ

• 再生可能エネルギーからの発電へ資金

投資する結果、費用と料金収入に逆ザヤが発生する

• TSOは、欧州エネルギー取引所(EEX)で

再生可能エネルギーを販売する(発電者によって直接販売されない場合)

• 電力多消費産業へのEEGサーチャージは国際的な競争優位性の観点から低く設定

されるが、国内市場における競争に歪みを生じさせる

• EU国家補助禁止条項違反の疑いで調査結果として、EEGサーチャージの下限増加

0

1

2

3

4

5

6

7

8

2010 2011 2012 2013 2014 2015

TSO: upper limit

PwC

TSO: lower limit

EEGサーチャージの推移

ct/

kW

h

(Forecast)

上限

下限

(予測)

推計値

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PwCJune 2014

変動する電力供給の安定化セクション 3.2

23

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PwCJune 2014

不安定な再生可能エネルギーを統合する取組みが主な課題

24

セクション 3.2 – 変動する電力供給を伴う系統安定化

ドイツにおける発電設備容量 (GW)

出所:BNetzA 2011; PwC Research 2012

97 87 85

69

130

175

0

50

100

150

200

250

300

2012 2022 2032

従来型の発電容量 再生可能エネルギー発電容量

その他 2.9 GW

水力発電 4.9 GW

バイオマス 9.4 GW

太陽光発電 65.0 GW

洋上風力発電 28.0 GW

陸上風力発電 64.5 GW

EEG 改定

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PwCJune 2014

送電網開発計画 - 2014系統運用機関による策定と連邦ネットワーク庁(BNetzA)の監視

• 再生可能エネルギーの拡大に伴い、エネルギー供給が不安定となっている

• エネルギー転換前は、電源の多くが南部に設置されており、需要地域の近辺に存在した

• 近年、風力発電所(陸上、洋上)の多くは北方に設置されている

• 南部へ送電するために、新たな送電線を設置する必要がある

25

セクション 3.2 – 変動する電力供給を伴う系統安定化

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PwCJune 2014

課題解決のためのアプローチ:変動する電力供給の安定化と残差需要の考え方による電力供給

26

セクション 3.2 – 変動する電力供給を伴う系統安定化

基礎的な条件: 分散型電源のさらなる浸透. . .

発電容量確保のためのバックアップ電源と再生可能エネルギーは連携されなければならない

再生可能エネルギー供給

送電線の拡張柔軟性が高い

発電容量確保電力貯蔵(蓄電)

デマンドサイド

マネジメント

… 安定化され需給調整されなければならない

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PwCJune 2014

従来型の火力発電容量安定的な電力容量はどれぐらい必要となるか?

27

セクション 3.2 – 変動する電力供給を伴う系統安定化

93 GW

78 GW 71 GW

0

20

40

60

80

100

2012 2022 2032

安定的な電力容量[GW] • さらなる供給力確保が必要(2022年までに5GW、32年までに12GW)

• (想定) 2032年に必要とされる発電所:

35 CCGTs(400 MW) または

13 石炭火力発電所(1,000 MW)

不確かな電力市場環境

投資不足が懸念される

• 現在、適切な容量確保メカニズムが存在しない

• 2017年まで、連邦ネットワーク庁(BNetzA)は発電所の停止を禁止することが認められている(戦略的予備電力)

出所: BNetzA 2011、Dena 2010、PwC Research 2012

5 GWの差異 12 GWの

差異

電力需要:確保された電力容量(83 GW)

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PwCJune 2014

“エネルギー転換”のコストと課題セクション 3.3

28

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PwCJune 2014

ドイツ産業需要家における2010年時点と2013年時点での電力価格構成の違い

29

セクション 3.3 – “エネルギー転換”のコストと課題

2010年時点での電力価格 (€ct/kWh) 2013年時点での電力価格 (€ct/kWh)

産業用電力価格の構成 (Ct/kWh)年間消費量 15 GWh フル稼働時間 5434時間

6.50

1.14

1.45

2.05

2.05

0

1

2

3

4

5

6

7

8

9

10

11

12

13

14

15

16

€c

t/k

Wh Metering

Electricity Tax

CHP Surcharge

EEG Surcharge

Concession Fee

Capacity Price (Grid)

Grid Usage Charge

Electricity Commodity Price

5.50

1.06

1.67

5.28

2.05

0

1

2

3

4

5

6

7

8

9

10

11

12

13

14

15

16

€c

t/k

Wh

Metering

Electricity Tax

Offshore Liability Surcharge

§ 19 NEV Levy

CHP Surcharge

EEG Surcharge

Concession Fee

Capacity Price (Grid)

Grid Usage Charge

Electricity Commodity Price

出所: PwC Research

検針

電力税

CHPサーチャージ

EEGサーチャージ

利用権料

容量料金(系統)

系統利用料

原料価格

洋上義務サーチャージ

NEV19条税

CHPサーチャージ

EEGサーチャージ

利用権料

容量料金(系統)

系統利用料

原料価格

検針

電力税

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家庭用電力価格と産業用電力価格の国別比較他国に比べ、すでに不利な立場に置かれるドイツ

30

セクション 3.3 – “エネルギー転換”のコストと課題

産業用電力価格 (€ct/kWh) - 年間電力消費量 500 MWh– 2,000 MWh

一般家庭用電力価格(€ct/kWh) - 年間電力消費量 2,500 kWh/a – 5,000 kWh

5,2

9,9 9,07,4

15.2

11.6

4.5

9.0 9.1 10.5

22.8

11.58.1

0.00

5.00

10.00

15.00

20.00

25.00

USA Chile Mexico NZ Japan Germany Norway Poland France Great Britan Italy Portugal Denmark

9,314,5

7,1

18,121,6

26,51)

10.614.9 13.7

17.322.5 20.4

30.0

0.00

10.00

20.00

30.00

40.00

USA Chile Mexico NZ Japan Germany Norway Poland France Great Britan Italy Portugal Denmark

1) BDO International Business Compass for Germany: 29,36 Cent in 2013出所: BDEW/ IEA (2012)

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従来型のバリューチェーンが解体され、デジタル・インテリジェンスにより水平的に統合

31

セクション 3.3 – “エネルギー転換”のコストと課題

小売/発電

発電全体の柔軟性

現在の置かれている状況:需給のミスマッチエネルギーシステムは …

... バランシング・エージェント (新たな役割)によりコンピューター等を活用して

電力供給状況の監視、需給調整を行う

負荷フローの流れは双方向性になる

… スマートマーケット/スマートエネルギーシステム/スマートソリューションへ革新する必要性

(デジタル・インテリジェンス化の必要性)新たなサービスプロバイダー

需要/負荷

デマンドサイドマネジメント

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ドイツにて現在、議論されている再生可能エネルギー法(EEG)に関する主要な課題

32

セクション 3.3 – “エネルギー転換”のコストと課題

1EURO

脱原発と従来型発電所の資金不足に起因する供給容量ギャップ

電力市場価格が低下する中、需要家に対する電力価格は上昇

送配電網への投資は効果的に規制され、スマートグリッド、スマートマーケットの発展が必要

テクノロジー種別に依存する固定価格買取制

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事例紹介-ビジネスモデルセクション 4

33

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BM 1 – アグリゲータ—/ マーケター例:Clean Energy Sourcing社、Energy2Market社、Green Energy Desk社

34

セクション 4 – 事例紹介-ビジネスモデル

ビジネスモデル

アグリゲータ―/ マーケター

小規模発電(化石燃料由来)

(小規模)再生可能エネルギー

SMEと産業商品取引

• 小売・卸市場ならびに商品取引に関する十分な専門知識

• 卸市場および商品取引へのアクセス• 販売・取引事務

必要となる専門性

• 初期参入者は特に高い収益をあげる• ドイツ市場のプレーヤーは30以上

• 当初は新興企業が主だったが大手企業による参入や買収も見られる

収益性の評価

家庭需要家

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BM 2 – プロジェクトデベロッパー例:WPD社、juwi社、EnBW社、Prokon社

35

セクション 4 – 事例紹介-ビジネスモデル

ビジネスモデル

プロジェクトデベロッパー

風力発電 太陽光発電

民間投資家 SMEと産業公益事業体

Co

• プロジェクトマネジメントの深い知見• 十分なプロジェクトファイナンス能力• プロジェクト構築ノウハウ• 販売事務• (戦略的パートナー)

必要となる専門性

• 初期参入者がブランド確立した場合、特に高い収益をあげる

• ドイツでは成功/失敗事例が混在。新規参入者(Prokon社)が失敗し大きな損失を被った事例もあり

収益性の評価

その他

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BM 3 – ガスおよび電力の卸・小売企業例:Teldafax社、Goldgas社

36

セクション 4 – 事例紹介-ビジネスモデル

ガスおよび電力の卸・小売企業

取引所/ OTC 発電設備なし

家庭需要家 SMEと産業卸電力会社や公益事業体

Co

• 卸・小売市場ならびに商品取引に関する十分な経験

• 卸市場および商品取引へのアクセス• 販売および取引事務

必要となる専門性

• 初期参入者である場合中期的な収益性が見込まれる

• ドイツでは成功/失敗事例が混在。新規市場参入者(Teldafax社、Goldgas社)が大きな損失を被った事例もあり

収益性の評価

長期契約なし

ビジネスモデル

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