データの分析と情報提供 -...

13
50 規格(9001)の 2000 年改定にあたり, 1998 年に発表 されたその中間案(CD1)では,現在 8.3 項に記述され ている不適合製品の管理は 7 章に入っていて,8 章の構 成は次のとおりであった。 8 測定・分析及び改善 8.1 一般 8.2 測定(8.2.1 システムのパフォーマンスの測定, 8.2.2 プロセスの測定,8.2.3 製品の測定,8.2.4 測定装置の管理) 8.3 データの分析 8.4 改善(8.4.1 是正処置,8.4.2 予防処置,8.4.3 善のプロセス) これを見ると「データの分析」の位置づけがよく理解 できるであろう。すなわち, ①システム,プロセス,製品について,監視のための測 定を行う(データを得る) ②「データ」を分析して,システム等がなんらかの改善 を必要とする状況にあるかどうか,それを判断するた めの「情報」を得る ③情報にもとづいて,必要な範囲内で改善を行う という図式である。 データの分析は「日常の管理」と「改善活動」の中間 にあって,その橋渡しをする役どころになる。前号でプ ロセスの監視や測定は「組織のあらゆるところで日常茶 飯に行われているべき活動である」と書いたが,データ の分析もまた「監視や測定に付随して行われる日常茶飯 的な活動」なのである。 品質マネジメントシステムの基本機能は「不適合製品 の発生を予防する」ことである。そのために品質計画を 立て,計画にしたがってプロセスを管理するのだが,現 実にはプロセスには管理上の不適合,また製品そのもの にも時として不適合が発生するので,そのような事象を 契機としたシステム,あるいはプロセスの「是正処置」 が必要になる。ここで是正(corrective)という用語が 使われる意味は,本来「計画」や「管理」が正しく行わ れていればそのような不適合が発生するはずがないので, 不適合が発生したのは「どこかが間違っていた」と考え るからである。この状況は SQC(統計的品質管理)で, 管理図上で管理外れが発見された場合は工程のどこかで 必ず異常が発生していると考え,その原因を探し出して 処置をとるのと同じである。工程が管理状態にあれば, ステップアップ ISO 9001 ISO 認証取得の資源投入をムダにしない QMS の運用と審査- データの分析と情報提供 規格解説 講師は語る -8.4 データ分析のポイント- エム・アンド・エス・クオリティーガーデン 福田 渚沙男 91.データ分析の役どころ 2.工程が「管理状態にない」場合

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50

連 載 /ステップアップ ISO 9001

規格(9001)の 2000 年改定にあたり,1998 年に発表

されたその中間案(CD1)では,現在 8.3 項に記述され

ている不適合製品の管理は 7 章に入っていて,8 章の構

成は次のとおりであった。 8 測定・分析及び改善 8.1 一般 8.2 測定(8.2.1 システムのパフォーマンスの測定,

8.2.2 プロセスの測定,8.2.3 製品の測定,8.2.4測定装置の管理)

8.3 データの分析 8.4 改善(8.4.1 是正処置,8.4.2 予防処置,8.4.3 改

善のプロセス) これを見ると「データの分析」の位置づけがよく理解

できるであろう。すなわち, ①システム,プロセス,製品について,監視のための測

定を行う(データを得る) ②「データ」を分析して,システム等がなんらかの改善

を必要とする状況にあるかどうか,それを判断するた

めの「情報」を得る ③情報にもとづいて,必要な範囲内で改善を行う という図式である。

データの分析は「日常の管理」と「改善活動」の中間

にあって,その橋渡しをする役どころになる。前号でプ

ロセスの監視や測定は「組織のあらゆるところで日常茶

飯に行われているべき活動である」と書いたが,データ

の分析もまた「監視や測定に付随して行われる日常茶飯

的な活動」なのである。

品質マネジメントシステムの基本機能は「不適合製品

の発生を予防する」ことである。そのために品質計画を

立て,計画にしたがってプロセスを管理するのだが,現

実にはプロセスには管理上の不適合,また製品そのもの

にも時として不適合が発生するので,そのような事象を

契機としたシステム,あるいはプロセスの「是正処置」

が必要になる。ここで是正(corrective)という用語が

使われる意味は,本来「計画」や「管理」が正しく行わ

れていればそのような不適合が発生するはずがないので,

不適合が発生したのは「どこかが間違っていた」と考え

るからである。この状況は SQC(統計的品質管理)で,

管理図上で管理外れが発見された場合は工程のどこかで

必ず異常が発生していると考え,その原因を探し出して

処置をとるのと同じである。工程が管理状態にあれば,

連 載 ステップアップ ISO 9001

-ISO認証取得の資源投入をムダにしないQMSの運用と審査-

データの分析と情報提供

規格解説 講師は語る

-8.4 データ分析のポイント-

エム・アンド・エス・クオリティーガーデン

福田 渚沙男

第9回

1.データ分析の役どころ

2.工程が「管理状態にない」場合

51

異常が発生してもその原因を突き止めることは比較的容

易なので,重点は「異常があればそれを間違いなく検出

する」という部分,つまり規格(9001)がいう「データ

の分析」に置かれる。 しかし,実際には「工程はまだ管理された状態になっ

ていない」ことが多く,その場合には異常は非常に多く

の原因がからみあって発生している可能性があり,一般

には問題解決はそれほど容易ではない。SQC はこのよう

なケースでの問題を解決するために,実験をするなどし

てさまざまなデータをとり,それを解析(統計的解析,

あるいはデータ解析)して「改善の手がかりとなる情報」

を得るための手法を豊富に用意しているのだが,ISO は

「そういうことはすでに終わっている」というところか

ら出発しているので,このあたりのことについてはほと

んど何も述べていない。この点はよくよく注意しておく

必要がある。

割り切ったいい方をすれば,データを入力し,システ

ムやプロセスに関して修正,是正などの「処置が必要な

状況になっている」という情報を出力するのが規格 8.4項の「データ分析」のプロセスである。データを入力し,

システムやプロセスの異常が何を原因として起きている

か,その状況を明らかにした情報を出力させるのが SQCでいう「データ解析」のプロセスである。前者の機能は

主に「評価」であり,後者のそれは「研究」である。英

語はどちらも analysis であるが,「分析」と「解析」と

では使うデータが質的にも量的にも異なってくることが

多い。 規格 8.4 項(analysis of data)は主には「データの分

析」について要求しているのだが,多くの場合はその前

に,あるいはそれに付随して「データの解析」も必要に

なるのだということを強調しておきたい。 (Susao FUKUDA)

品質マネジメントシステム(以降,QMS と呼ぶ)を

改善するには,データの分析が重要である。データ分析

によって問題のあるプロセスを明らかにし,根本原因を

特定し有効な改善策を講じなければならない。以下,プ

ロセスを事例中心に解説する。

(1) y=f(x)

データ分析するには,y=f (x)という考え方を理解して

いただきたい。ここで y は結果指標を,x は管理項目を

意味する。QMS の重要な結果指標を定め,改善するに

は根本原因となる管理項目を特定しなければならない。

さもないと対策は効果を発揮しない。図 1 に y=f (x)の関係をダイアグラム形式にした図を示す。企業の重要な

経営指標の利益が,さまざまな管理項目で構成されてい

ることがわかる。また f であるが,これは関数を意味す

る。つまり,結果指標と管理項目の関係を関数で表現で

きるくらいに,きちんと因果関係を把握することを表し

ている。

実践ガイド

データの分析で有効な情報を得る

龍谷大学 経営学部 非常勤講師 今野 勤

1.データ分析の考え方

3.「データの分析」と「データの解析」

52

連 載 /ステップアップ ISO 9001

(2) 解析手法

QMS において,問題解決をするにはさまざまなステ

ップと手法がある。TQM(Total Quality Management)では QC ストーリー,シックスシグマでは DMAIC(Define Measure Analyze Improve Control)がある。

筆者は拙著[1]で,両方の利点を合わせた問題解決のステ

ップを紹介した。いずれも,前者の 2 つと本質的な違い

はない。この問題解決のステップで,よく使われる QC手法を 28 厳選して紹介する。これが表 1 である。この

中でハッチングした部分が,統計的手法である。これら

を有効に使うことで,QMS プロセスの改善ができる。

QMS プロセスを統計的手法で改善する例を示す。初

歩的な手法を活用した例であるので参考にしていただき

たい。

(1) プロセスマップ

業務のプロセスを図にしたものを,プロセスマップと

いう。QMS において,問題のあるプロセスをプロセス

2.統計的手法の活用

Y

Y1

X111 X112 X121 X211 X221 X222 X311 X321 X322 X421 X422X411

Y3 Y4Y2

Y11 Y12 Y21 Y22 Y31 Y32 Y41 Y42

出所:参考文献[1],P.20

図 1 y=f(x)ダイアグラム

表 1 問題解決のステップと手法

問題解決のステップ 対応する手法

プロセスマップ

y=f(x)ダイアグラム

パレート図 問題の定義

プロジェクトチャーター

ヒストグラム

ランチャート

クレームデータ解析 問題の測定

品質表

PDPC 法 問題解決の計画

ガントチャート

FMEA

因果マトリックス

平均値の差の検定

分散比の検定

不良率の差の検定

相関・回帰分析

重回帰分析

数量化Ⅰ類

原因の解析

望目特性の解析

系統図法

マトリックス図法

発想法 問題解決の対策

重み付け評価法

インタビュー

アンケート 対策効果の確認

累積ハザード解析

QC 工程表 管理の定着

管理図

出所:参考文献[1],P.10

53

マップで表す。図 2 に参考例を示す。ここで,品質指標

など改善したい結果目標と,関係しそうな管理項目を選

択する。

(2) データの収集

この例は,あるメーカーで開発した商品のクレーム件

数を結果指標に,関係のありそうな管理項目のデータを

開発品のナンバーごとにまとめたものである(表 2)。

(3) データ解析

この例では問題プロセスを特定するために,相関・回

帰分析を用いた。これは相関係数が,結果と原因の間の

因果関係の有無を示す。さらに回帰分析をすることによ

って寄与率,回帰係数によって原因の結果への影響度合

いを知ることができる。表 3 に相関係数一覧表を,図 3

に回帰分析の結果を示す。この結果から,試作時の問題

点が多い案件ほど,クレームが多いことがわかる。詳細

については参考文献[1][2][3][4]を参考にしていただきたい。

P

D

C

A

出所:参考文献[1],P.18

図 2 プロセスマップの例

54

連 載 /ステップアップ ISO 9001

表 2 クレームデータ

NO 新規設計 図面枚数

設計変更 図面枚数

試作時 問題点数

デザイン レビュー 問題点数

開発 遅延日数

試作時 テスト項目数

クレーム 件数

1 66 30 25 95 89 10 42

2 64 27 22 96 88 8 37

3 61 19 27 124 90 13 37

4 54 25 20 97 87 8 28

5 56 24 14 121 87 10 18

6 61 26 14 86 87 8 18

7 56 25 12 99 93 14 19

8 56 27 16 142 93 12 20

9 54 17 14 125 87 8 15

10 53 21 3 128 80 6 14

11 58 20 9 137 89 6 14

12 49 20 7 76 88 13 13

13 52 19 5 84 82 10 11

14 59 20 8 117 93 11 12

15 48 16 7 87 89 13 8

16 49 17 11 110 86 14 7

17 47 20 10 84 72 12 8

18 50 22 5 107 79 15 8

19 54 24 6 107 80 11 9

20 56 19 11 123 82 9 15

21 64 20 11 110 91 12 15

表 3 相関係数一覧表

新規設計 図面枚数

設計変更 図面枚数

試作時 問題点数

デザイン レビュー 問題点数

開発遅延日数 試作時 テスト項目数

クレーム件数

新規設計 図面枚数

1.000

設計変更 図面枚数

0.544 1.000

試作時 問題点数

0.631 0.479 1.000

デザイン レビュー 問題点数

0.226 -0.069 0.076 1.000

開発遅延日数 0.531 0.189 0.410 0.236 1.000

試作時 テスト項目数

-0.337 -0.177 -0.086 -0.262 0.068 1.000

クレーム件数 0.733 0.612 0.909 0.034 0.400 -0.235 1.000

55

表 3,図 3 の結果から,試作とその前後のプロセスに

問題が潜んでいる可能性があることがわかる。そこで,

以下の 2 つの仮説が考えられる。 仮説 1:試作で問題点が発見されても,対策とその検証

が不十分なまま開発が終了している。 仮説 2:試作の前のプロセス,たとえば図面作成で,新

規図面枚数,設計変更を極力抑えた設計をする

と,試作で指摘される問題が少ない。 仮説 1 を検証するためには,トラブルの多かった開発

案件をピックアップし,対策とその検証の方法をチェッ

クしてみれば,真の問題点が明らかになる。仮説 2 は図

面の共通化について,どのような評価をしているかを検

証することによって,問題がより鮮明にわかる。いずれ

にせよ,データ分析をし問題のプロセスを特定すること

により,焦点を絞って効果的な対策を講じることができ

る。データ分析をしない場合は,原因が特定できないの

で,実効のあがる対策を打てない場合がある。

(1) FMEA

プロセス改善に役立つ手法に FMEA(Failure Mode and Effect Analysis)がある。とくに製品設計,工程設

計の段階でトラブルを予測し,改善策を講じる手法であ

る。過去のトラブル経験は,企業にとって貴重な情報で

ある。組織で情報を共有化する必要がある。設計者は自

分で経験した内容についてはよく覚えているが,ほかの

人の経験にはうといのがふつうである。そこで,このよ

うなツールを用いて情報を共有化し,トラブルを未然に

防ぐのである。図 4 にセラミック部品の工程設計の例を

示す。優先度リスクが 175 点以上の項目について事前に

対策し,優先度リスクを下げたことがわかる。FMEA も

3.改善

図 3 回帰分析の結果

プ ロ セ ス 行 動 結 果

項目別 プロセス ステップ

潜在的 故障モード

故障の 潜在的影響

重大度

故障の 潜在的原因

発生度

現行管理 検出度

リスク

優先度

推奨措置 責任者 目標 達成日

重大度

発生度

検出度

リスク

優先度

流出率

加工中に部品が赤熱

マイクロクラック→耐冷熱強度低下

9 砥石の磨耗 5 部品加工数の確認(許容上限値以内)

7 315 砥石寿命の長い 砥 石 の 探索・選定

○○○○ 2004.8 末 9 3 7 189 0.32

同上 マイクロクラック→耐冷熱強度低下

9 同上 3 同上 3 81

9 3 3 81 0.16

加工中に部品が赤熱

マイクロクラック→耐冷熱強度低下

9 砥石の磨耗 5 部品加工数の確認(許容上限値以内)

7 315

砥石磨耗量測定方法の開発および磨耗量上限値の設定

□□□□ 2004.9 末 9 3 1 27 0.08

部品セット

部品が斜めにセット

直角度不良 7 部品平行度悪い 3 平行度測定 1 21 7 3 1 21 0.08

芯出し位置がズレている

円筒度不良 7 芯出し用ケガキ線のズレ

5 ケガキ作業の標準化

5 175 芯出し治具の考案・作製・精度確認

△△△△ 2004.8 末 7 1 1 7 0.04

砥石送り速度が遅い

部品欠け (チッピング)

5 砥石送り速度の設定ミス

3 部品品番別設定値一覧表確認

3 45 5 3 3 45 0.16

同上 同上 5 部品チャック面が凹凸

3 平面度測定 1 15 5 3 1 15 0.08

砥石加工

部品がガタツク

外観不良 (加工段差)

5 チャック力不足 1 油圧ポンプ 油量チェック

3 15 5 1 3 15 0.08

出所:参考文献[1],P.60図 4 FMEA の例

56

連 載 /ステップアップ ISO 9001

数値によらないデータ分析の有効な手法である。詳細に

ついては参考文献[1]を参考にしていただきたい。 (Tsutomu KONNO)

参考文献 [1] 今野勤,安部有正,池田光司,鈴木英昭(2004):『実務に直

結!エクセルによる即効問題解決』,日科技連出版社。

[2] 今野勤,畠中伸敏,久保田健二 (2002):『ISO 9000 顧客満

足システムの構築』,日科技連出版社。 [3] 今野勤ほか(2003):『成功事例に学ぶ CRM 実践手法』,日科

技連出版社。 [4] 今野勤(2005):『データ解析による顧客満足の向上と創造』,

日科技連出版社。

記事訂正とお詫び

本連載 9 月号において以下のとおり誤りがありました。執筆者ならびに読者の皆様にお詫びして訂正いたします。

講師は語る -8.2.3 プロセスの監視および測定のポイント- p.43 右段 19 行

誤:(略)形式的に「プロセスを無視して → 正:(略)形式的に「プロセスを監視して

ISO 14001:2004

日科技連・環境マネジメントシステム審査登録組織のお知らせ 日科技連・ISO 審査登録センターは,環境マネジメントシステム審査により下記組織の新規登録を決定しました。

<8月度新規登録>

組織名 事業所名 所在地 登録番号 適用規格 審査登録範囲 発効日

美松電気㈱ 本社・栗東営業所・甲賀営業所

滋賀県湖南市平松北二丁目 3番地,他

JUSE-EG-238 JIS Q 14001:2004

電気工事,管工事,水道施設工事及びこれらに関する土木工事 2005/8/25

日科技連・ISO 審査登録センターは,次の組織の審査登録を取り消します。取り消しの理由については,当該組織に直接お問い

合わせいただくか,当センターへお問い合わせください。

JUSE-EG-032 ㈱大橋商会 適用規格 JIS Q 14001:1996 お問合せ先:(財)日本科学技術連盟・ISO 審査登録センター 環境登録業務課 〒151-0051 東京都渋谷区千駄ヶ谷 5-10-11 TEL.03-5379-1326 FAX.03-5379-1220

ISMS

日科技連・情報セキュリティマネジメントシステム審査登録組織のお知らせ 日科技連・ISO 審査登録センターは,情報セキュリティマネジメントシステム審査により下記組織の新規登録を決定しました。 <8月度新規登録>

組織名 事業所名 所在地 登録番号 適用規格 審査登録範囲 発効日

㈱オネスト 山梨県甲府市古上条町 506-3 JUSE-IR-041 JIPDEC

ISMS 認証基準 (Ver.2.0)

1)ソフトウェア開発,及び付帯サービス 2)情報システムの運用,保守サービス及び付帯サービス 3)ホームページ及びコンテンツの制作 4)データ入力,加工,出力及び付帯サービス 5)社内ネットワークを含みネットワーク構築 6)機器販売,情報システムの販売,設置工事及び付帯サービス

2005/8/24

㈱エクサ 鉄鋼システム事業 部 SYSOPセンター

非公開 JUSE-IR-042 JIPDEC

ISMS 認証基準 (Ver.2.0)

・システムインフラ(システム基盤ソフト,ハード,付帯設備)の企画/設計からの運用保守

・適用業務システムの運用業務

2005/8/24

お問合せ先:(財)日本科学技術連盟・ISO 審査登録センター 情報セキュリティ登録業務課 〒151-0051 東京都渋谷区千駄ヶ谷 5-10-11 TEL.03-5379-1284 FAX.03-5379-1959

57

H.T まず皆さんの会社でデータ分析をどのようにして

いるか,紹介してください。 N.K 当社ではお客様情報を品質,包装,異物などに分

類して,データベース化しています。しかし,それを十

分に生かせず,分析ではなく評価にとどまってしまって

います。 お客様の声を日常的に監視して,潜在するクレームも

危険予知をして開発にフィードバックし,早い段階で食

い止める必要性があるのではないかと感じています。 N.S 当社で収集しているデータは,たとえば購買部門

は購買品の受入品質のデータ,製造部門ではとくに成形

インジェクションとかバリ,ウェルドというような個々

のデータとその蓄積,最終アッセンブリーラインでは工

程の個々の不良と出荷検査のデータなどです。顧客から

のクレームデータも件数や内容をとっています。 そういった生データを各工程,職場ごとに整理し,全

社で月次的に見られるようにしています。それをもとに

月に 1 回,検討会を実施しています。 K.A 当社でもデータを集め,QC 七つ道具などの手法

を使って分析をしていますが,データの集め方も重要だ

と思います。当社ではパートタイムの従業員や年齢が若

い社員が多く,遠慮があるのか,データが出てこないこ

とがあります。それでは社内で不具合があっても,潜在

化してしまう。積極的にデータを出してもらい,それを

データ分析につなげたい。そこで,現場でのデータ収集

は簡単な書類 1 つにして,書く習慣をつけてもらうよう

にしました。それを担当部門で分析しています。 A.S 当社は建設コンサルタント業です。今いわれてい

たようなメーカー共通のイメージが出てこない。分析以

前に,データとはまず何かに悩みました。いろいろ試行

錯誤して,クレームが貴重なデータと思い至り,その分

析に取り組みました。 当社の事業は測量業務,地質調査業務,設計業務の 3

つに分かれていますが,顧客のクレームを見ると,地質

調査業務と測量業務については対地権者,現場での問題

が多いのです。たとえば切ってはいけない枝を切ってし

まったとか,測量の予定の連絡がいっていなかったとか,

あるいはボーリングをした穴を埋め忘れて,ケガ人が出

たなどの苦情です。測量や地質調査はあるものをあるが

ままに測ればいいので,技術的なことに関するクレーム

はあまりありません。 S.N ケガ人が出たというと大きな問題ですし,大きな

データです。そういうデータにもとづいて,次のアクシ

ョンをどう展開されていますか。 A.S 対地権者マニュアルを整備して,協力会社にも徹

底したことで,クレームが減りました。しかし,こうい

うあとから出てくることではなく,進行中の仕事の良し

悪しの判断ができるデータはないのか。お客様との打合

せの時に確認が入るようなものをまとめてみようかと考

えています。 設計では,数値が違うとか,あるいは仕様書にのっと

っていないというクレームが多くあります。これもチェ

ックリストを整備し,スクリーニングをしていくことで

対応しました。しかし,設計は発注者対担当者という仕

事になります。担当者が代わると,指針やマニュアルは

あっても,アプローチの仕方も選択する仕様も少しずつ

違ってきます。 もっと有効的な情報の集め方があるのではないか。使

えるデータとは何か。収集したデータをどう分析し,会

社に役立てていけばいいのか。

データの分析をディスカッションする

データ分析の効果は出ているか

ISO推進者会議

ディスカッションメンバー

H.T (システム開発業) テーマリーダー

N.K (食品メーカー) Y.A (通信機器メーカー)

N.S (精密部品メーカー) Y.K (電子機器,事務機器メーカー)

K.A (食品メーカー) M.H (衣類・肌着メーカー)

A.S (建設コンサルタント業) T.S (建設業)

S.N (エンジニアリング業)

58

連 載 /ステップアップ ISO 9001

Y.A 当社でも購入品の受入不合格率,工程内の不良発

生率,是正処置の件数,また出荷後の顧客クレームの件

数,無償修理の金額などを中心にデータを収集していま

す。これを分析してグラフ化し,イントラネットで全社

に公開していますが,それが実際に会社全体の改善につ

ながるところまではいっていません。 各事業部で自部門の製品のデータ分析をして,それが

品質保証部門に報告され,そこで全社的な弱み・強みを

見ています。しかし,こちらは QMS のプロセスそのも

のを改善したいのに,向こうは自部門の製品のことだけ

に固執して,なかなかうまくいかない。 H.T 製品の改善に対してのデータはきちんと取って,

それなりに活用できている。しかしシステム改善とかプ

ロセスの改善には,うまくつなげられていない,これが

共通の悩みでしょうか。 必要なデータをきちんと取れているのか。うまく活用

し,効果をあげているのか。プロセスを重視して考えて

みましょう。

Y.K システム全体の指標,結果系の指標にはどんなも

のがあるのでしょうか。クレーム,品質損失コストなど

が考えられますが,ほかにどんなものがあるでしょう。 皆さんの会社では,プロセスの話とシステム全体の話

は定義されていますか。うちの会社はそれがなく,製品

の改良はしても,プロセスの改善,システムの改善とい

うと,みんな下を向いてしまう。 N.S 個々の製品単位でのプロセス変更は簡単です。た

とえばある製品の工程管理で必要な変更をすることはで

きます。しかし,手順書を改定するという程度のことで

すが。 Y.K すると,違う製品で同じ失敗を繰り返してしまう。

結局はプロセス改善に結びついていないためでしょう。 S.N 今,われわれは全社で,品質ロスの構造の顕在化

に取り組んでいます。ロスコスト,市場での不具合,購

買品の受入れの不適合,そして工程内検査での不適合の

データも含まれます。問題は購入品です。品質データを

サプライチェーンの中で要求しても,なかなか出てこな

い。しかし,われわれがどう評価するのか,非常に苦し

いところです。 こういうことを 1 つひとつ検証し分析しながら,継続

的改善につなげていくことが,データを顕在化させるた

めの大きな目的だと思います。 Y.K 供給する側の問題もあるでしょうが,購入する側

として,工程改善に結びついたことはありますか。 S.N 購買についての要求事項を購買規格という文書に

し,それに沿って購入する仕組みにしました。 N.S あとはデータ自体と,それの評価能力という部分

の話でしょう。 たとえば,ある部品を A,B の 2 社から購買している。

品質保証部門で検査して,A 社製も B 社製も使用してい

いという。しかし,A 社のものを使用した製品は,お客

様に納めるとノイズがうるさいというクレームが出る。

お客様のレベルでの評価能力を生かしきっていないので

す。 K.A 当社は食品メーカーなので,使ってみなければ良

し悪しがわからないものもあります。調味料などもそう

ですが,何かを測って数字で出ることではなく,現場で

使ってみると使いにくいとか,不具合が出てくるのです。

しかし,きちんとデータとして表れたものを分析して出

さないと,購買先を変えるなどの対応はしてくれない。 受入れ検査をしていても,表面化しない部分はたしか

にあります。実際に現場で現れていることがデータとし

なぜ失敗は繰り返されるのか

59

てきちんと表現できることが重要ではないでしょうか。 S.N 現場で使いにくくても,機能は発揮するのだから,

製品としてお客様に渡ってしまう。「使いにくい」という

データは PDCA サイクルに反映されない。 Y.K 使用しづらいけれど,機能,性能に問題はない。

しかし,それを使うと工程内の不良率や製造原価に差が

あるなど,どこかに表れているのではないでしょうか。

最終品質に影響がなくても,作業の能率が下がれば会社

の利益に影響します。使いやすいロットと使いにくいロ

ットのデータを分析して,プロセスの改善につなげる。 どちらを使っても同じ品質の製品ができるように,A社とこちらとが一緒になって工程改善をして,工程内不

良率を下げる。Win-Win の関係で取り組むことが,2000年版が要求している形でしょう。 K.A それが理想的です。しかし,自社より規模が大き

いとか,歴史も古い企業が相手では,現実的にはむずか

しいこともあります。 Y.K 当社では逆のケースがありました。社内の工程内

不良率が悪く,原因となる装置を特定して,そのメーカ

ーにデータを示しました。しかし,その会社は品質管理

にきちんと取り組んでいて,実はこちらの使い方が悪い

ために不良率が高いのだと教えられました。問題提起を

したら,こちらに返ってきた。Win-Win の関係になった

ということです。 N.S 重要な外部コミュニケーションですね。要求品質

はお互いのキャッチボールですから。購買が買うだけ,

入れるだけではなく,技術品質の購買能力があると強い

ですね。 N.K 私は以前,工場の資材調達部門にいて,2 社購入

もありました。それを 1 つのラインにかけると,現場か

ら片方は機械適正がよくないと苦情がある。なんとか対

応していくため,交代でつかってみたこともあります。

B 社のほうがよければ,B 社の製品を A 社にサンプルと

して渡したり,実際に現場で機械を見て設計を見直して

もらったり,いろいろ工夫してみましたが,むずかしい

ものはあります。 H.T そういうデータは,きちんと取れるものでしょう

か。 N.K 稼働率などですね。 H.T 部門が違うと,データがきちんと取れるかどうか

も問題ですね。 N.K 製造工程で不良が見つかれば,工場で資材クレー

ムとしてデータをまとめ,購買部門にあげて購買評価に

つなげる。重大クレームが決められた件数に達すると,

その業者にアプローチするというシステムでした。 しかし不良のデータも,プラントによって感度が違う。

少しの傷でも不良とするか,これならかまわないのか。

データの正当性も少し疑いたいところもあります。 N.S 改善に結びつく分析をしようにも,QC 七つ道具

を使いこなせない。私はヒストグラムを描いてみせ,関

数電卓では計算しないようにいっています。分布とばら

つき範囲がよくわかるからです。それから処置が決まり

ます S.N われわれの世代は,小集団活動が活発な昭和 50年から 60 年代に,QC 七つ道具や新 QC 七つ道具を使い

ながら,職場の改善,製品の改善に取り組んでいました。

しかし,当社は 20 年ほど前から現場での改善活動をや

めてしまいました。そのため社員にそういう文化や QC七つ道具のようなツールがうまく伝承できず,いい風土

が途切れてしまったように思います。データを集めても,

どういう問題があるのかを分析できない,真の原因に行

き着けない。 Y.K 最近は地道に事実にもとづいて分析をして,答え

を見出して改善していくという活動ができない傾向があ

ります。今,当社ではもう一度原点に戻ろうと,きちん

とデータを見る習慣をつけようとしています。日本企業

の大半に起きている問題ではないでしょうか。

N.K お客様の声をデータとして重大と取るか,取らな

いかというところもあると思います。当社では今は件数

のカウントだけに終わってしまっていますが,同じ意見

が増える傾向が見えたら問題を察知して,それが設計の

データが示す真実を見る

60

連 載 /ステップアップ ISO 9001

時の検討課題項目に入っていたかどうかを確認すること

が必要です。 M.H お客様がどんな商品を期待しているか,当社でも

いろいろなデータを取っています。当社の商品は女性用

です。販売員の女性にも意見を聞きますが,データを分

析して,最終判断をする販売担当の役員は男性でした。

自分で着けるものではないのに判断するから,ユーザー

の期待とはかけ離れたものが結果として生まれて,失敗

してしまう。あとから女性たちに意見を聞くと,「ダメだ

と思っていた」といわれました。 今は女性の役職者を育成中です。今後はそういう人に

判断をさせたいと思っています。 S.N データをもとに,プロセスを改善した事例ですね。 M.H 今野先生のガイドで,「試作時の問題点が多い案

件ほどクレームが多い」という記述がありました。実は

わが社で,このとおりのことがあったのです。試作時点

で多くの問題があったのにそのまま商品化して,結果的

にリコールになった。たとえ発売が決まっていても,デ

ータ分析で問題が見えれば後戻りできる仕組みでなくて

はいけない。多くの人,お金をかけてデータを集めても,

結果的には何の役にも立たないことになる。当社はこの

リコールで大きな損害をこうむったので,データ分析の

重要性を強く感じています。 当社でも売上データ,クレームデータ,顧客アンケー

トの評価,検査データや作業能率などをはじめ,さまざ

まなデータを集めて分析しています。しかし,「データを

取るためにデータを取っていた」のです。

T.S 改善の役に立つことが大切ですね。当社では審査

のための数字合せになっている感があります。当社は建

設業で,家 1 軒の施工で,お客様と 1 対 1 で対応してい

ます。しかし,社員に対して明確な目的を示し,「お客様

にこう説明してアンケートを取りなさい」といえない。

これではデータ分析も生きてこない。 今はコンピュータでいろいろな分析ができる。簡単に

グラフをつくれるソフトウェアもある。しかし,つくっ

ても活用できない。 Y.K 日本企業全体として課題解決型の取組みが重視さ

れ,コンセプチュアルな仕事に向く人が多くなっていま

す。そのせいか,こうしたデータ分析などはなおざりに

なっているようです。 私は ISO 9000 の社内教育の講師も担当しています。

そこでは,データ分析をする前にもう一度データ,事実

を見るということを強調しています。たとえば,X と Yのペアの 11 のデータがあります。もとのデータはバラ

バラですが,平均値,シグマ,相関係数を計算すると,

同じになる。しかし,いろいろ計算する前に,実際のデ

ータがどのようになっているかを見ることが必要です。

簡単な演習をして,X と Y のデータをグラフに表してみ

ると,まったく形の違うグラフになります。私がいいた

いことは「計算結果を見て,平均値もシグマも相関係数

もみんな同じだからと,十把ひとからげで仕事をしてい

ませんか」ということです。「まず事実を見てください」

ということです。 調理の仕方,必要な道具は知っている。しかし,調理

しようとしている素材をよく知らなければ,おいしい料

理はできません。 M.H 福田さんの解説を読んで,反省点がたくさんあり

ます。1 つは,「日常管理と改善活動の中間」ということ

です。もっと積極的にやりなさいということかと思いま

す。また,データを入力して,是正が必要な状態である

かどうかを出力しなさいということ。 当社は創業 50 年になりますが,創業時は守備範囲に

関係なく,誰でもいろいろなことをやらなくてはならな

かった。しかし,会社が成長し,社内の体制が整うと,

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野球のようにサードはサード,レフトはレフトとなって,

その間が抜けてしまう。私は,そのすき間をもう 1 度埋

めなくてはならないと感じています。 今回のリコールにかぎらず,過去を見直してみると,

同じようなことで何件かのクレームが出ていたのです。

そこがうちの弱みということだから,そこを見直してい

けばいい。そういう単純なことでもいいのではないか。

何がわかるのかはっきりしないようなデータを集めるよ

り,過去の失敗例を洗い出すだけでいい。たとえば売上

データをわざわざ数字で出さなくても,販売担当はその

商品が売れているかどうか肌で感じています。ISO の要

求事項の真意はわかりませんが,その程度でいいのでは

ないかと思います。 これまでリコールなど夢にも思わなかったため,デー

タを活用する目的がわからなかったのです。しかし,今

はリコールするようなこと,クレームが出るようなこと

になってはいけないという目的ができました。そのため

に必要なデータだけを収集し,分析していく。 N.S 私も重点攻撃型でデータを見直し,整備していけ

ばいいと思います。重点的にデータを取り,予測可能な

問題を防ぐために分析する。 Y.A 私はこれまで,統計的な分析にばかり目が行きす

ぎていたようです。各事業部の傾向を見ようとすると,

統計的な分析をせざるをえない。最終的に出た統計デー

タで話をしてしまいがちです。そうすると,その中の個々

の不安定要素が見えなくなる。やはり個々のデータも見

なければならない。そして,不具合を発見したらすぐに

当該部門に行って話し合う。今後はそうしていきたいと

思います。 N.S 小さな生データから話がつながっていく,そうい

う風土が社内にできればいいですね。

ISO 推進者会議(IPC:ISO Promoter committee)へのご入会は随時受け付けています (会期は 8 月から翌年 7 月までの 1 ヵ年,年会費:30,000 円/1 名)

お問合せ先:日科技連・ISO 研修事業部 IPC 担当:波田野 崇(TEL.03-5379-1233) 今回のテーマは,規格 8.4 項「データの分析」です。 規格の要求事項は「組織は,品質マネジメントシステ

ムの適切性及び有効性を実証するため,また,品質マネ

ジメントシステムの有効性の継続的改善の可能性を評価

するために適切なデータを明確にし,それらのデータを

収集し,分析すること」となっています。この要求事項

だけを読むと,何をやっても規格から外れることはない

ような気もします。ということは,逆に何をしたらよい

か,非常にむずかしい要求事項かもしれません。

◆◆◆ ディスカッションを読んでいると,QC 七つ道具など

手法についての議論もありますが,筆者はデータの分析

は手法の問題ではなく,データの分析をして何をするか

の問題と考えています。 データの分析の目的は何でしょうか? 規格では,4 項目 「a)顧客満足,b)製品要求事項へ

の適合,c)予防処置の機会を得ることを含む,プロセス

と製品の特性及び傾向,d)供給者に関連する情報を提

一口アドバイス

QMS 主任審査員 篠原 健雄((財)日本科学技術連盟 嘱託)

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連 載 /ステップアップ ISO 9001

供すること」となっています。 目的とは,これらの情報をして,どのようなアクショ

ンをとるかです。その目的に応じて,どのようなデータ

が必要で,どのように分析するかが決まるのではないで

しょうか。審査に行って,8.4 項を審査することがよく

ありますが,半分くらいの組織では,このデータの分析

があまり役に立っていないように思われます。そのよう

な意味で,この 8.4 項を審査する時に往々にしてフラス

トレーションがたまることがあります。一番大きな原因

は,目的がはっきりしていないこと,いい換えると「デ

ータを分析すること」を目的にしていることです。 一例として,顧客満足に関するデータ分析について考

えてみましょう。組織の審査をした時にもっと多いのが,

顧客にアンケートをとってその結果をまとめる,といっ

たデータ分析を行い,それを情報として提供している組

織です。アンケートをとること自体はまったく問題あり

ませんが,顧客満足に関する“どのような”情報を提供

するのか,あるいは,情報を利用する側がどのような情

報を必要としているのか,が明確になっているかどうか

が問題です。たとえば,特定の顧客の満足度に関する情

報がほしいのか――満足している内容を知りたいのか,

不満足な内容を知りたいのか,顧客全体の情報を知りた

いのか,瞬時的な情報を知りたいのか,時系列的な情報

(満足度の変化)を知りたいのか――など,いろいろと

あるはずです。これらの目的によって,まずどのような

データを集めるべきかが決まります。とくに時系列的な

情報を提供するためには,データを集める際に毎回同じ

カテゴリーのデータを収集しておく必要があります。ま

た,提供する情報の目的は,毎回変化してもよいと思い

ます。 データの分析に関する要求事項では,ほかにも b),c),

d)で要求されている項目があります。いずれも製品の

管理につながるデータです。すなわち,データの分析で

は,現状の製品がどの程度管理された状態であるかにつ

いての事実を明確にすること,および継続的改善に向け

てどのようなことが可能かを見極めるための情報として,

十分に生かせる情報を提供することが大事でしょう。 この 4 項目以外にも,当然のことながら,データを分

析して管理や改善に結びつけるべきです。管理の活動で

も改善の活動でも,まず事実を正確に把握して現状を確

認し,問題点や改善点を見出して問題解決を図っていき,

対策を打ったあと,そのフォローアップをして継続的改

善につなげる,といった QC 的な問題解決法も視野に入

れて,このデータの分析の要求事項を実行するのがよい

と思っています。 ◆◆◆

「データの分析」の要求事項そのものの目的は何でし

ょうか。上述したように管理と改善のための要求事項で

あり,次の 8.5 項の継続的改善,是正処置,予防処置に

つながるプロセスと思っています。とくに,予防処置に

対してこのデータの分析は効果的であり,QMS が安定

してきたら,予防処置を積極的に実行するためにデータ

の分析をぜひ有効に役立ててください。 (Takeo SHINOHARA)