グラフェンを利用した 大容量・高速充放電キャパシ …...graphene carbon...
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グラフェンを利用した大容量・高速充放電キャパシター
物質・材料研究機構
先端材料プロセスユニット
一次元ナノ材料グループ
グループリーダー 唐 捷
JST-ALCA連携新技術説明会,JST東京本部別館,平成27年2⽉24⽇
グラフェンを用いたキャパシターの特徴
*グラフェンの大きな比表面積及び高導電性を利用したグラフェンキャパシターはエネルギー密度及び出力密度を飛躍的に増大できる。
*キャパシターの自動車への応用の特徴
1)高い加速性能2)実行電力が100%使える(電池は容量の80%程度まで)
3)無限寿命(充放電回数)、急速充電
4)制動エネルギーの回生に優れエネルギー効率が高まる
ラゴンプロット
グラフェンキャパシターの実用性
グラフェンはグラファイトから低コストで量産できる。
低コスト
リチウムとは異なり安全であるので、実用性・市場性が高い。
安全
*グラフェンキャパシターは出力密度の最高値が255kW/kgと高いので、高出力を必要とする応用、ハイブリッド車、レーシングカーなどの蓄電器に適する。
*電気自動車用とするには、エネルギー密度を現在の194Wh/kgから300Wh/kg程度とする必要があり、現在開発を進めている。
高出力
グラフェンとは
グラフェン
グラフェンが積層されたものが黒鉛(グラファイト)である
低コストのグラフェンは黒鉛から化学的処理等により剥離して得られる
炭素原子1個の厚さのグラフェンは弱いファンデルワース力により結合
グラフェンの特徴とキャパシター応用の利点
*グラフェンの特徴は下の表に示されるように比表面積が大きく、
高導電性である。
*グラフェンは比表面積がどの物質よりも大きいため、電極に用いれ
ば、エネルギー密度を大きくすることができる。
*高導電性であるため、出力密度を大きくすることができる
*グラフェンはグラファイトから化学処理により作製されるため、
低コスト&量産可能である。
*グラフェンの特性コストは現時点では、カーボン
ナノチューブの1/200以下。
*グラフェンの利用には素材
作製から取り組む必要
電極材料 比 表 面 積(m2/g)
導 電 性(S/cm)
グラフェン 2630 106
カ ー ボ ン ナ ノチューブ
120~500 104~105
活性炭素粉末 300~2200 >300
グラフェンの低コスト量産プロセスを開発
グラファイト 酸化グラフェン グラフェン
改良ハンマー法
化学的還元
グラファイトの層間の酸化物による膨張により酸化グラフェンを剥離、ヒドラジンにより還元してグラフェンを作製剥離性、導電性がよく、親溶液性のグラフェンの作製に成功
グラフェンの重なり枚数を2枚程度とすることに成功
電極用のグラフェン積層を開発
グラフェン表面の電極反応のため、電解液イオンがグラフェン間に流出入可能とするため、カーボンナノチューブ(CNT)をスペーサーとする。
電極用グラフェン積層の構造
グラフェン積層を用いたコインセルキャパシター
*写真に示すグラフェン積層を含む溶液をスピンコート法によりシート化し、重ね合わせて電極を作製した。
*電解液にはイオン液体を用い、下図に示すコインセルキャパシターを作製し、キャパシター性能を調べた。
グラフェン積層の電顕写真、
カーボンナノチューブがグラフェン積層スペーサー及び結合の役割
実験用グラフェンコインセルキャパシターの構成図
グラフェンキャパシター性能例 1
チャージ・ディスチャージ特性 高速放電でのキャパシタンス
電圧3.7Vにおける特性エネルギー密度: 123Wh/kg出力密度: 255kW/kg
電流密度が増えても、キャパシタンスは維持される
3.0V3.5V 3.7V
試作したグラフェンキャパシターの性能例 2
0 500 1000 1500 2000 2500 3000 3500 40000.0
0.5
1.0
1.5
2.0
2.5
3.0
3.5
4.0
364.0 F/g242.9 F/g4.0V3.5V
Pot
entia
l (V
)
T ime (s)
190mA/g
3.0V194.6 F/g
チャージ・ディスチャージ特性 繰り返し安定性
5000回100% 10000回
94%
*4.0Vではエネルギー密度194Wh/kg, 出力密度163kW/kgを示すが、レドックス反応が見られる。
*繰り返し寿命が優れ、10000回繰り返し後も劣化は少ない。
グラフェンキャパシターの世界の研究現状
Materials Year Voltage (V)
Specific capacitance(F/g)
Energydensity (Wh/kg)
Power density (kW/kg)
Lifespan(Cycles) Ref.
Chemical reduced graphene 2008 2 99 (1M BMIMBF4/AN) 14 - -
Meryl D et al,Nano Letters, 2008, 8: 3498Cited: 2557
Chemical reduced graphene 2009 1 205 F/g (6M KOH) 7 10 1200
Wang et al,J. Phys. Chem. C 2009,113: 13103Cited: 786
Curved graphene 2010 4 245 F/g (EMIMBF4) 136 10 -Liu et al,Nano Letters. 2010, 10:4863Cited: 569
Activated graphene 2011 3.5 200 F/g (EMITFSI) 85 75 -Zhu et al,Science, 2011, 332: 6037Cited: 856
Laser reued graphene oxide 2012 4 276 F/g (EMIMBF4) 153 - 10000
EI-Kady et al,Science, 2012, 335: 6074Cited: 383
Our Group
Graphene carbon nanotube composite materials
2011 3 280 F/g (EMITFSI) 63 59 1300Cheng et al, Phys. Chem. Chem. Phys., 2011, 13: 17615Cited: 96
Co-reduced graphenecarbon nanotube composite materials
2013 4 364F/g (EMITFSI) 261 123 5000Zhang et al,Chemical Physics Letters, 2013, 584: 124
開発したグラフェンキャパシターと蓄電池等との比較
開発したグラフェンキャパシターのエネルギー密度はリチウムイオン電池に次ぐが、出力密度は圧倒的に大きい。エネルギー密度の性能アップ(300Wh/kg)を進めている。
(活性炭)
グラフェンキャパシター実用化に向けた現在の研究
*グラフェン積層体溶液(1㍑)の作製・保存技術の確立
*グラフェン/CNTシートの作製、幅15cm、長さ50cm以上、体積エネルギー密度を大とする
*キャパシターシステム、構成の確立
*1kWhのベンチスケールキャパシターの設計・試作
*ベンチスケールキャパシターの性能確認
*高出力密度キャパシターの応用の検討、スマートグリッド・自然エネルギー用など
グラフェン/CNTシートのイメージ
想定される用途
*高出力密度(200kW/kg)、高エネルギー密度(150Wh/kg)グラ
フェンキャパシターは、ハイブリッド車、レーシングカー、クレーン車、スマートグリッドなどの蓄電器に最適である。
*高エネルギー密度(300Wh/kg)グラフェンキャパシターは、電気自動車用として開発を進めている。航続距離200km、充電時間数分を目指している。
*高出力密度(200kW/kg)小型グラフェンキャパシターは、短時間充電(5分程度)で長期間使用できるため、モバイル蓄電器等に最適である。
*グラフェンはグラファイトから化学的処理により量産するため、
低コストであり、キャパシターは安全で長時間繰り返し使用可能である。
グラフェンキャパシター応用の検討
*エネルギー密度300Wh/kgを達成して電気自動車グラフェンキャパシターとする。
(現在194Wh/kg)*エネルギー密度300Wh/kgと出力密度
100kW/kgの組み合わせは、長航続距離
と短時間充電、ブレーキエネルギーの回収に優れ、都市型自動車に最適。
高エネルギー密度グラフェンキャパシタ
電気自動車(日産リーフ)
高出力密度グラフェンキャパシタ
燃料電池車(トヨタMIRAI)
*出力密度200kW/kgを達成してお
り、大出力密度キャパシターの応用として、燃料電池車、F1車、スマートグリッド補助電源などを検討。
*耐久性、劣化が少なく、汎用性に優れる。
電極材料 エネルギー密度(Wh/kg)
出力密度(kW/kg)
グラフェンキャパシター(電極重量)
300 200
活性炭素粉末電極(セル重量)
10 5
リチウムイオン二次電池(セル重量)
150 2.5
グラフェンキャパシターの電気自動車応用による温室効果ガス削減
CO2削減計算根拠グラフェンキャパシターの性能
*エネルギー密度300Wh/kg達成できれば、走行距離200km、充電時間は数分となり、電気自動車の普及可能となる。
*電気自動車の普及により、CO2排出量を0.8億トン削減
*ブレーキエネルギー回収は90%以上、CO2削減効果は30%とみこまれる。リチウムイオン電池のエネルギー回収率は16.6%以下
算出根拠項目 用いた値
ガソリン車のCO2排出量(環境省) 95~97g/km
電気自動車のCO2排出量発電に伴うCO2排出量(東電)電力消費量(三菱i-MiEV)
47.6g/km0.38kg/kWh0.125Wh/km
自動車保有台数年間CO2排出量
8千万台2トン/1台
実用化に向けた課題
*高出力密度キャパシターについては、実験室レベルで
は基本技術をクリアーしており、具体的な応用を決め、基本設計に基づき、大型化と量産化のための技術開発が課題となる。
*電気自動車用等の高エネルギー密度グラフェンキャパシターについては、エネルギー密度を現在の194Wh/kgを300Wh/kgに高性能化させる必要がある。並行して、大型化と量産化が課題となる。
*共通的課題として、キャパシターようの質の高いグラフェンの低コスト量産プロセスの確立が必要となる。
企業への期待
*グラフェンキャパシターの出力密度、200kW/kg以上の応
用については、基本技術は開発済みなので、大型化、生産技術、応用化開発について企業と共同開発を希望。
*電気自動車用の300Wh/kgのグラフェンキャパシターに
ついては、まだ研究開発中であるので、グラフェンキャパシター研究開発は当方で引き続き行い、大型化及び応用化研究を企業に分担していただく共同研究開発を希望。
*エネルギー密度(150Wh/kg)、出力密度(200kW/kg)は達
しているので、これらの応用・実用化には、本技術の導入が有効で、共同開発を希望。
グラフェンキャパシターに関する唐グループ特許
1) 「水熱生成グラフェン/CNT複合体エアロゲルの作成方法、水熱生成グラフェン/CNT複合体エアロゲル及びUA、DA、AA分離検出電極」、特願2013-216801、2013年10月17日;
2) 「板状金属水酸化物含有シート状電極、その製造方法及び板状金属水酸化物含有キャパシター」、特願2013-155384、2013年7月26日
3) 「Co(OH)2垂直配向グラフェン/CNT複合体、その製造方法、Co(OH)2垂直配向グラフェン/CNT複合体電極及びCo(OH)2垂直配向グラフェン/CNT複合体キャパシター」、特願2013-148218、2013年7月17日
4) 「グラフェン球状中空体の作成方法、グラフェン球状中空体及びグラフェン球状中空体集積キャパシター」、特願2013-104557、2013年5月16日
5) 「剥離グラフェンの製造方法」、特願2013-47318、出願日:2013年3月8日6) 「グラフェン超薄片、その作製装置・作製方法、グラフェン超薄片キャパシター及びそのキャパシ
ター作製方法」、特願2012-234271、2012年10月24日7) 「グラフェン電極フィルム、その製造方法及びグラフェンキャパシター」、特願2012-194833、
2012年9月5日8) 「部分還元グラフェン階層体-連結体、その製造方法、その含有粉末及びフィルム」、特願2012-
194792、2012年9月5日9) 「薄層黒鉛または薄層黒鉛化合物の製造方法」、特願2012-149565、出願日:2012年7月3日10) 「グラフェンシート集積体、その製造方法及びグラフェンシートキャパシター」、PCT-JP2011-077651、
2011年11月30日
産学連携の経歴
• 2011年‐現在: JST・ALCA研究開発課題に応募し、「グラフェンの特異性とナノ積層による300Wh/kgキャパシター」が採択され、研究開発実施中
• 2011年‐2012年: 上記課題で、筑波大学とグラフェンナノ構造について共同研究実施
• 2011年‐現在: 上記課題で、ハリマ化成株式会社とキャパシター用グラフェン開発で共同研究実施中
お問い合わせ先
独立行政法人物質・材料研究機構
先端材料プロセスユニット
一次元材料グループ
グループリーダー 唐 捷
TEL 029-859 - 2728
FAX 029-859 - 2301
e-mail: [email protected]