アトピー性皮膚炎における血清lgeと末梢血 fceレセプター陽...

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日皮会誌:100 (4), 477-485, 1990 (平2) アトピー性皮膚炎における血清lgEと末梢血 FcEレセプター陽性細胞の動態 一気道アトピー素因との関係についてー アトピー性皮膚炎(AD)における血清lgE値および lgE産生誘導に関与すると考えられる末梢血Fc£R2+ 細胞につき気道アトピーの既往または家族歴の有無に より, Pure ADとCombined AD に分けて検討した. lgEはAsthma combined AD, Rhinitis combined AD, Pure AD の順に高値を示し, IgE高値(>2501U/ m1)の症例の割合はそれぞれ95.8%, 72.2%, 63.2% であり,合併する気道アトピー素因ことに喘息の関与 が大きいと思われた.ADの重症度と血清lgE値は Pure AD およびRhinitis combined AD では相関はな かったのに対し, Asthma combined AD では有意な相 関をみた. FcとR2゛細胞数はAD全体でlgEとのあいだに弱い ながら正の相関を示し,ADにおいてもlgE産生に関 与していることか示唆された.またFcER2+細胞は Combined ADで有意な増加を示したが,重症度との 間に相関はなかった.これに対しPure ADでは FcER2+細胞の増加は認めなかった. これらの結果からADにおけるlgEおよびFc£R2+ 細胞の増加は,ADそのものではなく合併する気道ア トピー素因,ことに喘息を反映するものと思われた. しかしながらAsthma combined ADではlgEがAD の重症度と相関することから,このグループではIgE が皮疹に対してもなんらかの関与をしている可能性は 否定できない.I型アレルギーに関しては合併する気 道アlヽピー素因の関与が少なくないことから今後AD の病因を検討する上で,少なくともPure ADと Asthma combined ADとは分けて検討すべきである と考えた. 東京女子医科大学皮膚科学教室(主任:肥田野 信教 授) 平成元年9月22日受付,平成元年12月6日掲載決定 別刷請求先:(〒162)東京都新宿区河田町8-1 京女子医科大学皮膚科学教室 檜垣祐子 多くのアトピー性皮膚炎(AD)患者において,血清 lgEが高値を示すことは周知であり,その頻度はAD 患者の70~80%とされる1)2)また,血清lgE値は気道 アトピー(喘息,アレルギ一性鼻炎)を合併する症例 で,より高値になることはほぼ一致した見解であ る3)~5)しかしながら, IgEがADの皮疹そのものにど のように関与しているかという点では,皮膚炎の消長 や重症度と血清lgE値が必ずしも相関しないこと1)‘)6) などから,否定的な考えもあり一定の結論に至ってい ない.ひとつには重症度との相関を検討する上で,こ れまでの報告では患者背景に気道アトピー合併の有無 がほとんど考慮されていないことがあげられよう. ところで,IgEの産生過程に関しては,最近の細胞免 疫学的研究により, IgEのFc部分に対するレセプ ター(FceR)を有するリンパ球がlgE産生誘導に深く 関わっていることが明らかになってきた7)-9)このレ セプターは肥満細胞や,好塩基球の表面に発現されて いる高親和性FceRCFceRl)に対し,低親和性FceR (Fc£R2)と呼ばれ,リンパ球,単球等で発現されてい ることが知られている10)すでにアトピー性疾患患者 末梢血リンパ球に関しロゼット形成試験やモノクp- ナル抗体を用いたFACS解析が試みられ,アトピー性 疾患においてFc£R2゛ B細胞が増加していることが 示されているn)~i3)が,ADを含め個々のアトピー性疾 患別の検討はほとんど行われていない.また,最近河 合はADの末梢血Fc£R2+細胞にっき検討し,ADの 重症度とともに上昇すると報告しているが,患者の気 道アトピー素因の関与については言及されていな しj4). 著者はADを3つのグループ,すなわち気道アト ピーを既往歴,家族歴にも有さないPure ADと既往歴 又は家族歴に気道アトピーを有するCombined AD に分け,さらに後者をアレルギー性鼻炎のみ有するグ ループ, Rhinitis combined AD と喘息も有するグルー プ, Asthma combined AD に二分し,より詳細な検討

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日皮会誌:100 (4), 477-485, 1990 (平2)

アトピー性皮膚炎における血清lgEと末梢血

   FcEレセプター陽性細胞の動態

   一気道アトピー素因との関係についてー

       檜 垣  祐 子

           要  旨

 アトピー性皮膚炎(AD)における血清lgE値および

lgE産生誘導に関与すると考えられる末梢血Fc£R2+

細胞につき気道アトピーの既往または家族歴の有無に

より, Pure ADとCombined AD に分けて検討した.

lgEはAsthma combined AD, Rhinitis combined

AD, Pure AD の順に高値を示し, IgE高値(>2501U/

m1)の症例の割合はそれぞれ95.8%, 72.2%, 63.2%

であり,合併する気道アトピー素因ことに喘息の関与

が大きいと思われた.ADの重症度と血清lgE値は

Pure AD およびRhinitis combined AD では相関はな

かったのに対し, Asthma combined AD では有意な相

関をみた.

 FcとR2゛細胞数はAD全体でlgEとのあいだに弱い

ながら正の相関を示し,ADにおいてもlgE産生に関

与していることか示唆された.またFcER2+細胞は

Combined ADで有意な増加を示したが,重症度との

間に相関はなかった.これに対しPure ADでは

FcER2+細胞の増加は認めなかった.

 これらの結果からADにおけるlgEおよびFc£R2+

細胞の増加は,ADそのものではなく合併する気道ア

トピー素因,ことに喘息を反映するものと思われた.

しかしながらAsthma combined ADではlgEがAD

の重症度と相関することから,このグループではIgE

が皮疹に対してもなんらかの関与をしている可能性は

否定できない.I型アレルギーに関しては合併する気

道アlヽピー素因の関与が少なくないことから今後AD

の病因を検討する上で,少なくともPure ADと

Asthma combined ADとは分けて検討すべきである

と考えた.

東京女子医科大学皮膚科学教室(主任:肥田野 信教

 授)

平成元年9月22日受付,平成元年12月6日掲載決定

別刷請求先:(〒162)東京都新宿区河田町8-1 東

 京女子医科大学皮膚科学教室 檜垣祐子

          緒  言

 多くのアトピー性皮膚炎(AD)患者において,血清

lgEが高値を示すことは周知であり,その頻度はAD

患者の70~80%とされる1)2)また,血清lgE値は気道

アトピー(喘息,アレルギ一性鼻炎)を合併する症例

で,より高値になることはほぼ一致した見解であ

る3)~5)しかしながら, IgEがADの皮疹そのものにど

のように関与しているかという点では,皮膚炎の消長

や重症度と血清lgE値が必ずしも相関しないこと1)‘)6)

などから,否定的な考えもあり一定の結論に至ってい

ない.ひとつには重症度との相関を検討する上で,こ

れまでの報告では患者背景に気道アトピー合併の有無

がほとんど考慮されていないことがあげられよう.

 ところで,IgEの産生過程に関しては,最近の細胞免

疫学的研究により, IgEのFc部分に対するレセプ

ター(FceR)を有するリンパ球がlgE産生誘導に深く

関わっていることが明らかになってきた7)-9)このレ

セプターは肥満細胞や,好塩基球の表面に発現されて

いる高親和性FceRCFceRl)に対し,低親和性FceR

(Fc£R2)と呼ばれ,リンパ球,単球等で発現されてい

ることが知られている10)すでにアトピー性疾患患者

末梢血リンパ球に関しロゼット形成試験やモノクp-

ナル抗体を用いたFACS解析が試みられ,アトピー性

疾患においてFc£R2゛ B細胞が増加していることが

示されているn)~i3)が,ADを含め個々のアトピー性疾

患別の検討はほとんど行われていない.また,最近河

合はADの末梢血Fc£R2+細胞にっき検討し,ADの

重症度とともに上昇すると報告しているが,患者の気

道アトピー素因の関与については言及されていな

しj4).

 著者はADを3つのグループ,すなわち気道アト

ピーを既往歴,家族歴にも有さないPure ADと既往歴

又は家族歴に気道アトピーを有するCombined AD と

に分け,さらに後者をアレルギー性鼻炎のみ有するグ

ループ, Rhinitis combined AD と喘息も有するグルー

プ, Asthma combined AD に二分し,より詳細な検討

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478 檜垣 祐子

を加えた.すなわちこれら3グループの患者血清IgE

値について,皮膚炎の重症度との関係を検討するとと

もに, Fc£R2に対するモノクローナル抗体である

CD231s)を用いて末梢血リンパ球におけるFc£R2の発

現をFACSにより解析し,血清lgE値,ADの重症度

とFceR2+細胞との関係につき比較検討した.その結

果, Pure AD とCombined AD ことにAsthma com-

bined AD とでは異なる傾向を認めたので報告する.

          対象と方法

 1)対象

 グループ1(表1):当科を受診した小児,成人AD

患者で, Hani日n & Raikaの診断基準16)に合致した62

名を,問診により喘息またはアレルギー性鼻炎を既往

歴,家族歴にも認めないPure AD 19名とアレルギー

性鼻炎のみを有するRhinitis combined AD 18名と喘

息を有するAsthma combined AD 25名とに分げた.

 採血時のADの重症度は,既に報告したスコア化に

よる方法17)を一部変更して用いた.すなわち皮膚症状

の強さintensityと皮疹の範囲extentにわげ,両者の

合計したスロアを重症度severityとみなした. Inten-

sityは紅斑,浮腫,丘疹,痴皮,表皮剥離,鱗屑,苔癖

化,色素沈着,癈緑,睡眠障害の10項目につき,それ

ぞれo(なし)から7(極めて著しい)までで点数化

し, extentは皮膚炎が全身に汎発した場合を30として

点数化し,両者の合計スコアをもってseverityとし

た.またO~24を軽症,25~49を中等症,50~100を重

症とした.

 グループ2:非アトピー性の湿疹,壽麻疹患者で喘

息,アレルギー性鼻炎のいずれも合併しないもの,35

名(11~74歳,平均34.1歳.男12名,女23名).

 グループ3:健康人49名(9~77歳,平均37.6歳.

男27名,女22名).

 血清lgE値はグループ1の全例およびグループ2

の一部で測定, FACS解析は全例に行った.

 2)方法

 血清lgE値の測定:lgEキット「第一JS(第一RI)

を用いて二抗体法によるradioimmunoassay法に

よった.値は一部を除き対数評価とした.正常値;≦

2.41og IU/ml (≦250IU/ml).

 FACS解析:ヘパリン化した静脈血100μ1を採取,

洗浄後1%BSAおよび1 %NaN3加リソ酸緩衝液

(PBS)50μl中に再浮遊させ,5μ1のモノクローナル抗

体を加え4℃で1時間イソキュベートしたのち遠沈

し, 1%BSA加PBS 50μI中に再浮遊させ,二次抗体

表1 アトピー性皮膚炎の患者背景

患者数(人) 男 女 年齢(歳)(平均)

AD

Pure AD

軽症(O~24)

中等症(25~49)

重症(50~100)

Rhinitis

combined AD

軽症(0~24)

中等症(25~49)

Asthma

combined AD

軽症(O~24)

中等症(25~49)

重症(50~100)

62

19

12

 6

 1

18

11

 7

25

 7

 9

 9

24

 6

 3

 2

 1

 7

 4

 3

11

38

13

 9

 4

 0

 7

 4

14

3~53 (20.7)

7~39- (21.3)

7~39 (21.7)

15~26 (19.8)

 25 (25.0)

13~27 (20.2)

13~28 (20.3)

14~27 (20.1)

10~53 (20.5)

13~29 (18.4)

10~26 (18.4)

11~53 (24.6)

としてFITC標識F(ab')2 fragmentヤギ抗マウス

lgG(TAGO社)を40倍希釈し50μ1加え,4℃で30分

反応させた.遠沈後, 2mlの0.8%NH4Clで溶血させ

FACS(SPECTRUM Ill : Ortho 社)を用いて解析し

た.モノクローナル抗体はFc£R2に対しCD23'^'を,B

細胞に対しCD20(いずれもCoulter Clone 社)を用い

た.

 統計処理:有意差検定はStudent's t-testを用い,

p<0.05をもって有意差ありとした.

          結  果

 1)各疾患群におけるlgE値(表2)

 lgEの平均値および標準偏差は対数評価で示した.

AD全体でlgE値は2.85と上昇していた. Pure ADで

も2.45と上昇していた. Rhinitis combined ADでは

2.82とより上昇がみられ, Asthma combined ADは

3.30と最も高値を示し, Pure ADに比し有意な上昇を

示した(pく0.01).これに対し,非アトピー性の湿疹,

聶麻疹では1.80と正常範囲にとどまっていた.また

lgE高値(>2501U/ml)を示す患者の割合はAD全体

では75.8%であり, Pure ADでは63.2%とCombined

ADに比し低値であった.

 2)ADにおける血清lgE値と重症度の関係(表2,

図1)

 AD全体では, IgE値(対数評価)は重症例ほど高値

の傾向があり(表2),重症度との相関はintensity,

extent, severityのいずれとも有意で,ことにextent

がより高い相関を示していた(図1う九 ところが,

Pure ADおよびRhinitis combine ADに関してみる

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アトピー性皮膚炎における血清lgEと末梢血

表2 各疾患群における血清lgE値

グループ 患者数 (人)

平均士SD

 lgE高値(>250IU/ml)

患者数 %

1 AD

  軽症

  中等症

  重症

i Pure AD

  軽症

  中等症

  重症

ii Rhinitis

  combined AD

  軽症

  中等症

iii Asthma

  combined AD

  軽症

  中等症

2非アトピー性  湿疹,聶麻疹

62

30

22

10

19

12

 6

 1

18

n

 7

25

 7

 9

23

2,85士0.86

2.66士0.79

2.89土0.86

3.65士0.62

2.45士0.85

2.48士0.96

2.40士0.78

2.45  -

2.82士0.85

2.75土0.71

2.96土1.09

3.30*士0.68

2.82士0.63

3.16士0.62

1.80士0.61

47

21

19

10

12

 8

 2

 1

13

 8

 5

24

 5

 9

 5

 75.8

 70.0

 86.4

100.0

 63.2

 66.7

 33.3

100.0

 72.2

 72.7

 71.4

 95.8

 83.3

100.0

 21.7

 ・Pure AD に対して, p<0,01

と,いずれも全く相関していなかった(図1-ii, iii).

一方, Asthma combined AD ではintensity, eχtent.

severityのいずれとも有意な相関があったが,特に

extentとの間に比較的高い相関がみられた(図1

-iv).

 3)各疾患群におけるFcER2+細胞(表3, 4)

 B細胞(CD20)についてはAD(グループ1),非ア

トピー性の湿疹,薄麻疹(グループ2)とも健康人(グ

ループ3)との間に差は認められなかったが,FcER2+

細胞(CD23)についてみると,AD全体では8.9%と健

康人(6.3%)ならびに非アトピー性湿疹,皮膚炎患者

(5.9%)に比較して有意な上昇を示した(p<0.01).

特にRhinitis combined AD とAsthma combined AD

ではそれぞれ9.5%, 9.1%とかなり上昇していた.そ

れに対しPure ADでは有意な上昇は認められなかっ

た(表3).

 なお健康人6名に約2ヵ月の間隔をおいて2回測定

したところ,表4の如くNo. 3でやや変動があったも

ののおおむね同様の結果を得,本検査法の再現性が示

された.

 4) ADにおけるFceR2+細胞と血清lgE値との関

係(図2, 3)

 lgEが正常範囲のADではCombined ADでも

Fc£R2+細胞の有意な増加はな<, IgE高値(>2501U/

(iui/ni)aBi 601

(iiu/nDaei 601

j    (iiu/noaBi Boi

○ ○

OO

479

r =0.4228

P<O.OI

0   10   20   30   40

             intensity

8○○

 ○

Y = 2.31127 + .O510117X

「= 0.4873

P<0.01

10  15  20  25  30      extent

Y = 2.15398十.0239121X

○「= 0.4731

Pく0.01

10 20 30 40 50 60 70        severity

図1う ADにおける血清lgE値と重症度の関係

表3 各疾患群における末梢血リンパ球のCD23

 (Fc£R2)およびCD20 (B細胞)の発現

グループ B細胞(%) FcER2+細胞(%)

1 AD

i Pure AD

ii Rhinitis

  combined AD

iii Asthma

  combined AD

2非アトピー性

  湿疹,聶麻疹

3健康人

13.0士5,l(n=59)

12.9土5.5(n=19)

14.4土4.5(n = 17)

11.9土5.3(nニ23)

12.2士4.6(n=35)

13.4士3.9(n=49)

8.9*士4.4(n=62)

8.1 士4.7(n = 19)

9.5*土3.9(n = 18)

9.1"士4.7(n = 25)

5.9 土3.7(n = 35)

6.3 土3.4(n=49)

・p<0.01 ・p<0.05

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480

(一E/ni)361 601

(一E`コー)S一ao一

(一E/ni)3B| eo|

Y = 2.11313 + .0224843X

r = 0,1887

N.S.

檜垣 祐子

5  10  15  20  25  30           intensity

Y = 2.40612 + .0057107X

(一E/ni)361 601

(一E/ni)3B| Boi

(一E/ni)361 601

Y = 2.58262 + .0149421X

r = 0.0854

                         N.S.

10   15   20   25   30

           intensity

Y = 2.23393 + .0786713X

r = 0.3416

N.S.r = 0.0439

N.S.

5   10  15  20  25

            extent

Y = 2.25132 + 8.52259E-03X

r = 0.1279

N.S.

10  20  30  40  50          severity

図1-ii Pure ADにおける血清lgE値と重症度の

 関係

mDの例ではFc£R2゛細胞の有意な増加を示した.

Pure ADではlgE高値の場合でも有意差は認めな

かった(図2).

 AD全体で血清lgE値(対数評価)とFceR2+細胞と

の間に弱いながら有意な正の相関が認められた(図

3).

 5)ADにおけるFcER2+細胞と重症度の関係(表

5)

 FcER2゛細胞は中等症または軽症のCombined AD

で有意な上昇をみたが,重症度との相関はなかった(表

extent

Y = 2.09671十.0306634X

/C O

                  O

  O  O

                O      「= 0.2453                           N.S,

15  20  25  30  35  40

           severity

図1-iii Rhinitis combined ADにおける血清IgE

 値と重症度の関係

5). B細胞は重症例で減少する傾向があり,その影響

を考えてFceR2+細胞/B細胞比で評価しても重症度

との間に相関は認めなかった.

          考  按

 1) IgEと重症度,気道アトピー素因について

 血清lgE値に関してはAsthma combined AD,

Rhinitis combined AD, Pure AD の順に高値を示し,

従来の報告3)~5)と同様に,気道アトピー素因を有する

例でlgEはより高値を示したバ

占める割合はPure ADでは63.2%であり,約40%は

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(一E/ni)36r 601

(r>u/ni)381 601

(一E`⊃・)S一ao一

アトピー性皮膚炎における血清lgEと末梢血

Y = 2.59272 + .0277987X

        O ○○  ○

481

表4 健康人におけるCD23 (Fc£R2゛細胞)および

 CD20 (B細胞)の発現の変動

r=0.4473

Pく0.05

10 15 20 25 30 35 40 45

            intensity

Y = 2.51962十.0496884X

r = 0.6858

P<0.01

5  10  15  20  25  30

           eχtent

Y = 2.44545十.0208132X

                         「= 0.5889

                         P<0.01

10  20 30 40  50  60 70

             severity

図1-iv Asthma combined ADにおける血清IgE

 値と重症度の関係

lgEが正常範囲にとどまっていた.これに対し

Asthma combined ADではほぼ全例がlgE高値を示

し, Rhinitis combined AD においても72.2%がlgE高

値であった.これらの結果からlgEはADそのものの

発症にはあまり関係がなく,合併する気道アトピー素

因ことに喘息に深く関わっていることが示唆される.

このことは, Pure AD やRhinitis combined AD で,

ADの重症度とlgEとの間には有意な相関は全く認め

られなかったことからも支持されよう.しかしながら

Asthma combined ADでは重症度とlgEはよく相関

No 年齢(歳) 性 FcER2゛細胞(%) B細胞(%)

23

22

34

29

56

31

4.33.2

3.74.9

6.34.3

1.71,7

4.24.0

4.45.5

8.77.9

7.610.9

12.918.0

 7.2 6.1

14.015.3

10.410.5

留棄十=a30d

    gooVd

QV

psuiqujoo eujuisw

    IDOVd

av

pauiqiuoo

auuuu

       avalコa

lgE≦250lU/ml ←laE>250iu/mi

図2 アトピー性皮膚炎(AD)における血清lgE値と

 Fc£R2^細胞の関係

し,ことに皮疹の範囲(extent)とは強く相関していた

(相関係数= 0.6858)ことは,このグループにおいては

ADの皮疹に対してlgEが全く関与しないとはいいき

れない可能性がある.このことから少なくともPure

ADとAsthma combined AD とは,皮疹形成における

lgEの関与の可能性からみると異なるグループである

可能性がある.

 2) Fc£R2゛細胞とlgEについて

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482

恂20  15  10  5

1   祀車~£QQt

Y = 3.26948+1.89575X

○○

檜垣 祐子

  r =0.3628

0Pく0.01

1。0 1、5 2.0 2.5 3.0 3.5 4.0        109 igE(lU/ml)

図3 アトピー性皮膚炎(AD)におけるlgEと

 Fc£R2+細胞の関係

表5 ADにおけるFc£R2+細胞およびB細胞と重

 症度の関係

重症 度 B細胞(%) Fc 6 R2'細胞(%)

1 AD

 軽症

 中等症

 重症

2 Pure AD

 軽症

 中等症

 重症

3 Rhinitis

 combined AD

 軽症

 中等症

4 Asthma

 combined AD

 軽症

 中等症

 重症

13.8 士5.7(n=29)

12.7 士4.4(n=21)

10.4**士4.7(n= 9)

14.0 士5.9(n = 12)

11.7 士4.6(n=6)

 7.2  -(n=1)

15.0 土5.3(n= ll)

13.3 土2.4(n= 6)

11.3 土6.3(n = 6)

13.0 士5.6(nニ9)

10.8 士4.9(n= 8)

9.3"士5、0(nニ30)

8.8 土3.8(n = 22)

7.8 士4.3(nニ10)

9.1 土5.4(n = 12)

6.3 土2.8(n = 6)

6.7  -(n=1)

9.8' ±4.7(n=ll)

9.1"士2.6(n = 7)

8.9 士5.5(n = 7)

10.3*士4.6(n = 9)

 7.9 士4.5(n=9)

p<0.01 **p<0.05

 FceR2+細胞のlgE産生過程での関与は種々の細胞

免疫学的研究によって明らかになりつっある.たとえ

ば末梢血リンパ球によるin vitroでのlgE産生の系

で, IgE産生に先立って,B細胞にFc£R2が発現され

ること7)8)細胞外に放出された可溶性のFc6R2,すな

わちlgE結合因子を加えることでlgE産生が増強す

ること9),さらに抗FceR2抗体によりこのlgE産生か

抑制されること7)18)などから, Fc£R2がlgE産生機序

に必須の役割を担っている可能性が高い.

 アトピー性疾患においては, FceR2+細胞が増加し,

lgEとある程度相関することがすでに報告されている

が11)~13)アトピー性疾患の中にはAD,喘息,アレル

ギー性鼻炎等が含まれており,疾患ごとの検討はほと

んどなされていない.またADに関する検討でも合併

する気道アトピー素因の関与については充分明らかに

されていない14)

 今回ADにおけるFc£R2・細胞数を検討した結果,

AD全体で健康人に比しFCER2-←細胞数が増加してい

た.この増加は血清lgE値と関係し, IgEが正常範囲

の症例はFc£R2+細胞は増加しないが, IgEが高値(>

250IU/ml)の症例では, Combined AD で有意な増加

を示し, Pure ADでもかなりの増加を示した.さらに

血清lgE値とFceR2+細胞の間に弱いながら有意な相

関があったことは,FcER2+細胞がADにおいても血

清lgEの産生に関与していることを示唆する.

 3) Fc£R2‘←細胞と気道アトピー素因について

 Pure ADではFc£R2リ田胞の増加がないのに対し,

Rhinitis combined AD およびAsthma combined AD

ではそれぞれ9.5%, 9.1%とかなり高かった.この結

果からFcER2+細胞はCombined AD におけるlgEの

著明な上昇に関与していること,ADにおいてはその

合併する気道アトピーを反映して高値を示すと思われ

た.

 4) FceR2+細胞とB細胞

 Fc£R2+細胞はB細胞の分化抗原としての側面を持

ち,B細胞がクラススイッチする前の成熟B細胞に発

現され,末梢血,扁桃において一部のB細胞表面に陽

性となる19)今回の検討で,同時に測定したB細胞の

結果から算定すると,健康人ではFceR2・細胞はB細

胞の約47.0%を占めるのに対し,ADでは, Asthma

combined AD 76.5%, Rhinitis combined AD 66.0%,

Pure AD 62.8%の順に高くlgE値の傾向と一致した.

末梢血B細胞におけるその発現頻度につき, Suemura

ら13)は喘息を含むアトピー性疾患で検討し,ほぼ100%

と報告しているが,今回の検討結果との差は対象の違

いによるものであろう.彼らは健康人に関しては50%

と報告しており今回の結果はこれに一致している.

 5) Fc£R2*細胞と重症度との関係

 Fc£R2゛細胞は中等症又は軽症のCombined ADに

おいて有意な増加を示し,いずれのADにおいても,

FcER2゛細胞とADの重症度とは相関しなかった.重

症例におけるB細胞自体の減少を考慮しFc£R2り田

胞/B細胞の比として検討しても重症度との間に相関

は認められなかった.このことから,FcER2+細胞は

ADそのものよりも合併する気道アトピー素因や血清

lgEと深く関連していると思われる.重症例で

FceR2+細胞の上昇がみられないのはB細胞の減少に

加え, FceR2の発現を抑えるような機序が作用してい

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アトピー性皮膚炎における血清lgEと末梢血

るのかも知れない.

 6) Combined AD とPure AD の違いについて

 最近, Ueharaら2o)はAD患者におけるI型アレル

ギーの関与につきコナヒョウヒダユの抗原を用いたプ

リックテストおよび特異lgEを検討し,既往歴,家族

歴に気道アトピーを有する場合に両者が高率に陽性と

なり,気道アトピー素因の有無によりその結果が解離

することを示した.このことは少なくともコナヒョウ

ヒダユに関しては,I型反応はADそのものよりも,

気道アトピー素因と深く関係していることを示唆す

る.

 今回のlgEとFc£R2+細胞に関する検討結果から

も, Pure ADとAsthma combined AD とは少なくと

も別のグループである可能性が示された.

 lgEは気道アトピー素因ことに喘息の合併により上

昇し, Pure ADにおいてはlgEが正常範囲のものが

40%に達すること, FceR2゛細胞の増加はないことか

ら,ADそのものにはlgEはあまり関与しないように

思われる.またPure ADのみならず, Rhinitis com-

bined AD でもIgE, Fc£R2+細胞の上昇はあるが, AD

の重症度とは相関しないことからも,この考えは支持

されると思われる.それに対しAsthma combined AD

では, IgEと皮疹の重症度は有意に相関しており, IgE

の皮疹との関連をうかがわせ,I型アレルギーが合併

する喘息の素因のみならずADそのものにも関係し

ている可能性は否定できない.

 I型アレルギーがAsthma combined ADの皮疹に

なんらかの関与をしているか否かは今後さらに検討す

べき問題であるが,少なくとも今回の検討でAsthma

combined ADにおいてもADの重症度とFcER2+細

胞の上昇が相関していないことから, Fc R2+細胞の

変動がlgEを介して皮疹に関与するという機序は考

えにくい.

 ADの比較的長期の皮疹寛解後にlgEの正常化をみ

るとの報告があり6),今後ADの重症度のIgE,

FcsR2゛細胞の変動を長期にわたって観察する必要か

あろ‰

 加えて,ADの皮膚症状自体には気道アトピーの有

無による明らかな違いは認められないが, Pure ADと

Asthma combined ADとは異なるグループである可

                        文

  1) Juhlin L, Johansson SGO, Bennich H, Hogman

   C, Thyresson N: Immunoglobulin E in der-

   matoses―Levels in atopic dermatitis and

483

能性があり,ADの発症機序や増悪因子,ことにI型ア

レルギー反応の関与を検討する上で両者を区別して取

り扱う必要があることを強調したい.

          まとめ

 1)ADにおける血清lgE値と末梢血FceR2+細胞

の動態を,既往歴,家族歴ともに気道アトピーのない

Pure AD と既往歴又は家族歴に気道アトピーを有す

るCombined ADに分けて検討した. Combined AD

はさらにRhinitis combined ADと, Asthma com-

bined ADに二分した.

 2) IgEの上昇は,AD全体の75.8%, Pure ADの

63.2%, Rhinitis combined ADの72.2%, Asthma

combined ADの95.8%でみられた.

 3) IgEの上昇の程度は, Asthma combined AD,

Rhinitis combined AD, Pure AD順に高かった.

 4) Pure AD, Rhinitis combined. ではADの重症

度とlgEの間には相関はなかったが, Asthma com-

bined ADではlgEは重症度とよく相関した.

 5)AD全体では, IgEとlgE産生に関与すると考え

られるFC6R2+細胞数との間に弱いながらも正の相関

がみられた.

 6) Rc£R2-'“細胞数の増加は, Pure ADではみられ

ず, Combined ADでのみ認められた.

          結  語

 1) IgE, FceR2+細胞の上昇はADそのものよりも

合併する気道アトピー素因を反映するものと考えられ

た.

 2)しかしながら, Asthma combined AD において

はlgEが皮疹になんらかの関与を有する可能性か示

唆された.

 3) IgE, Fc£R2゛細胞の動態からみると,少なくとも

Pure AD とAsthma combined AD とは異なるグルー

プである可能性があり,ADの発症機序,増悪因子を検

討する上で,両者は区別して取り扱うべきものと思わ

れた.

 本稿の要旨は日本皮膚科学会第658回研究東京地方会で

報告した.

 稿を終えるにあたり御校閲,御指導下さいました肥田野

信教授に深く感謝したします.

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484

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アトピー性皮膚炎における血清lgEと末梢血

Serum IgE and Fc£ Receptor Positive Lymphocytes in Atopic Dermatitis

      ―Relation to the Background of Respiratory Atopy―

                   Yuko Higaki

        Department of Dermatology, Tokyo Women's Medical College

      (Received September 22,1989; accepted for pubication December 6,1989)

485

  The serum IgE level and the population of Fc£R2^ lymphocytes in peripheral blood of 62 patients with atopic

dermatitis (AD) were studied.

  IgE was increased in the majority of the patients with personal or family history of asthma and/or allergic

rhinitis (combined AD). On the contrary, only 63.2% of the patients ・who have solely AD (pure AD) showed less

elevation of IgE. There was no correlation between IgE and the severity of dermatitis in pure AD and rhinitis

combined AD. However, asthma combined AD showed a significant positive correlation between igE and the

severity of dermatitis.

  In AD, the population of FceR2* lymphocytes significantly correlated with IgE, suggesting that Fc£R2*

lymphocytes may play arole in the enhanced synthesis of IgE. However, the increase ofFCER2゛lymphocytes was

found only in combined AD, but not in pure AD.

  These results suggest that elevated IgE and Fc£R2丿ymphocytes reflect combined rむspiratory atopy rather

than AD itself, although there remains the possibility that IgE may influence the formation or exacerbation of

dermatitis in asthma combined AD.

  As far as the participation of IgE is concerned, pure AD and asthma combined AD could be different groups and

should be investigated separately.

  Opn J Dermatol 100: 477~485,1990)

Key words: atopic dermatitis, IgE, Fcとreceptor, respiratory atopy