スポーツ場面における動作分析の 視覚的フィード...

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スポーツ場面における動作分析の 視覚的フィードバックの有効性について 平成 19 年度 國學院大學「特色ある教育研究」成果報告書 部 スポーツ・身体文化研究室 研究代表者 一 正 孝 山 田 佳 弘

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スポーツ場面における動作分析の

視覚的フィードバックの有効性について

平成 19年度 國學院大學「特色ある教育研究」成果報告書 文 学 部 スポーツ・身体文化研究室

研究代表者 一 正 孝

山 田 佳 弘

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< 目 次 > Ⅰ.本研究の背景 ・・・・・・・・・・・・・ P2

Ⅱ.目 的 ・・・・・・・・・・・・・・・・ P2

Ⅲ.特 色 ・・・・・・・・・・・・・・・・ P3

Ⅳ.方 法 ・・・・・・・・・・・・・・・・ P4

Ⅴ.結 果 ・・・・・・・・・・・・・・・・ P6

Ⅵ.考 察 ・・・・・・・・・・・・・・・・ P10

Ⅶ.将来展望 ・・・・・・・・・・・・・・・ P11 Ⅷ.資 料 ・・・・・・・・・・・・・・・・ P 13

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Ⅰ.本研究の背景 身近にあるスポーツをいかに楽しむかは、その運動特性を理解し、それを活かした技術

をいかに的確かつスムーズに習得できるかということにかかっている。しかしながら、そ

れを掴むまでに時間がかかるケースもある。これには本人の実動作と動作イメージとの大

きな隔たりが原因として考えられる。 そのため、多くのスポーツ指導現場では、指導者が学習者に対し、言葉による指導、手

本を見せる指導、手で触れて行う指導など、様々な方法により運動技術の獲得をさせよう

と工夫している。これらの指導の中でも学習者自身の動作映像を見せることは極めて有効

であることが分かっている。自身の実動作と動作イメージとの相違点を客観的に映像から

認識することは、大いに役に立つ有効な情報といえる。 このことから、指導現場では昔からカメラや 16mm・8mm カメラが導入されてきたが、これらの機器には撮影後すぐその場で画像もしくは映像を学習者に提供できないといった

欠点があり、学習者に必ずしも有効に働いていなかったのである。しかし時代が進み、デ

ジタル化が進んだことで、映像も画像もデジタルビデオカメラやデジタルカメラにより、

撮影後すぐに映像を確認できるようになった。さらにデジタル化により得られた映像を加

工処理できるようにもなり、学習者へ二次的に加工された情報も提供できるようになって

きた。 さらに時代は進み近年では、指導者はもっと有益でビジュアル的な情報を学習者に提供

し、技術獲得に貢献できる指導法を求め、学習者もより早く、よりスムーズに、より納得

できるような指導を受けたいという欲求が高まってきている。当然、大学の授業において

も同じことが言える。スポーツ・身体文化Ⅰならびにスポーツ・身体文化Ⅱの授業におい

ても、受講生がある種目のスポーツを楽しむ幅を広げるためには、歴史やルール、審判法

などの知識と同様に、その種目の動作特性の理解とある程度の技術習得が不可欠といえる。

われわれ教員は学生に魅力ある授業内容を提供するためにもさらなる指導法の工夫をしな

ければならないのである。 Ⅱ.目 的 大学などの正課授業における指導環境は、その他のスポーツ指導環境とは大きく異なる

点がある。すなわち、授業は1回/週の頻度で 1回の授業時間は 90分と決められ、授業前後の着替えや教材の準備を考慮すると実質的には 60分強といったところであろう。さらに受講生は 40名近くと多く、集団よる指導形態をとっている。よって各受講生のスムーズな技術習得は他の指導環境と比べて困難な点が多い。 そこで前でも触れたが、学習者へ自身の動作映像情報を提供することに高い有効性が認

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められることに着目し、それを最大限に活用することにした。すなわち、スポーツの動作

や姿勢などの動きの違いを撮影されたビデオ映像をベースに比較・分析し、よりスポーツ科

学的視点から受講学生たちへ動作情報を大きな時間差なく、ビジュアル的に還元できるフ

ィードバックシステムの導入である。 そこで本研究では、大学の実習授業における弓道の射法学習初期段階の指導を対象に、

事故の映像を見ながら練習をすることの効果について検討し、実際の指導場面において有

効な指導法を構築するための基礎資料を得ることを目的とした。 Ⅲ.特 色 授業現場における運動技術の指導に補助的に利用

されてきたのは、カメラ(近年ではデジタルカメラ)

やビデオカメラの単体としての利用であり、撮影さ

れた映像や画像を液晶画面によって確認しながら指

導者が改善点を指摘していたにすぎない。この利用

方法としても指導効果は間違いなくあり、学習者も

自身の動作を客観的に観察できるのでそれなりに意

味があることは間違いない。しかし、現場で指導す

る者の多くがこれらの機材の操作方法と使用方法に

不満を感じていたはずである。その不満要因とは、

再生するためのテープの巻き戻し作業や再生画面の

検索に懸かる時間や、指導者が画面を見ながら解説

していても学習者へ細かなニュアンスまでがうまく

伝えきれないことであろう。 これらのもどかしさを解消してくれるのが、今回

導入したシステムである。今回のシステムの中心は、

様々な動作解析を可能とする動作解析ソフトウェア

「ダート・フィッシュ」である。このソフトウェアは、

図1に示すとおり、「映像合成」と「軌道分析」が最

大の特徴であり、理想のフォームとの比較や動作を

分解した 1枚のイメージ映像の連続写真として一連の動きが即座に理解でき、解像度の高い映像資料から実際の肉眼では捉えることのできな

い運動状況を解り易く表示できる点でも指導者と学習者の双方にメリットがある。このシ

ステムは、使用環境を選ばずに授業現場における素早い分析データのフィードバックだけ

に止まらず、web授業での活用やメールに添付してデータを送受信することも可能で、

図1 ダートフィッシュによる分析映像

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授業前後の復習・予習にも活用できる。すなわち本学の「k-smapy」により活用の幅が拡がり、多くのスポーツ・身体文化系科目の受講生へも大いに還元できると考える。

Ⅳ.方 法

本システムは、様々な運動形態のスポーツ種目において活用が可能である。すなわちス

ポーツ・身体文化系科目で取り扱っている種目やその他のスポーツは全てが対象となる。

その中でも、被写体となる受講生がポジションを大きく移動させることなく動作を行うこ

とのできる種目が本システムを一番簡単に活用できると予備実験から実感した。種目や動

作で挙げると、ゴルフや野球のスイング、テニスやバレー・バドミントンのサーブ、バス

ケットボールのフリースロー、サッカーのフリーキック、弓道やアーチェリーの弓射フォ

ームなどである。 そこで本研究では、手始めに弓道を取り扱ったスポーツ・身体文化Ⅱにおいて本システ

ムを導入し、有効な活用方法を検討してみた。弓道の授業はほとんどの受講生が未経験者

である。よってフォームを理解するのに他種目以上に時間がかかる。弓道はフォームが悪

いとパフォーマンスに結びつきにくく、さらには危険でもある。いかに受講生に安全で合

理的なフォームを学習させるかが大きな課題となっていた。 1)システムの配置 受講生には撮影場所を固定して弓射動作をしてもらうために、的まで通常距離(28m)

は離れた射場の射位に、予めビニールテープによって立つ位置を示してある。

図2に示す通り、家庭用ビデオカメラ2台を用意し、受講生の正面映像(カメラA)と

右側面映像(カメラB)が得られるように三脚によって固定されている。2台のビデオ

図 2 測定機材の配置図ならびに測定風景

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カメラより得られた映像データはIEEE1394ケーブルによりノートパソコンに取り込まれる。

取り込まれた映像は、動作解析ソフトであるDart Trainer Pro(ダートフィッシュ社製)によ

り、時間的に同期された映像としてノートパソコンモニターの同一画面上にリアルタイ

ムで確認することができる。それと同時にノートパソコンからプロジェクターを介して

スクリーン上に大きな映像として受講生がポジションを移動することなく自身の弓射

動作を確認することができる。

2)測定方法 受講生には自身のペースで弓射動作を実施してもらう。その動作を動画分析ソフトに

より映像をパソコン内に取り込む。(図3) 動作終了後に右前方にあるスクリーンに

よって自身の動作映像を見ながら、教員からのアドバイスをもらい、指導後として2回

目の弓射動作を引き

続き同じポジション

で実施してもらった。

さらに、2回目の弓射

動作が終了した後に、

2回目の動作を1回目

の動作と解析ソフト

によって比較し、様々

な視点から弓射動作

の問題点の洗い出し

を実施した。

図3a 動作分析ソフトによる映像取り込み画面

図3b スクリーンに投影された映像を見る受講生

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Ⅴ.結 果 1) 映像に指導情報を書き込む指導

パソコンに取り込まれた映像は、図4の

ように画面上において様々なツールを利

用して加工することができる。その中でも

一番簡単で効果的な方法は、画面上に移っ

ている受講生の体に手書きツールや矢印

ツール、垂直線・水平線ツールなどを利用

して伝えたい指導内容を言葉だけではな

く、視覚的に訴えることができるので受講

生も改善点のポイントを理解しやすい。 2) 2方向の映像による指導 受講生はパソコンにそれぞれ取り込まれた 2 つのビデオカメラ映像を図5のように時間を同期させた動画として、動作終了後にスクリーンで確認することができる。正面

と側面からの映像から自身の動作を確認することができるので、立体的に動作情報を得

ることができる。特に側面からの映像では矢の狙いが正しいかも確認ができる。

図4 書込みツールを使用した指導画面

図5 2方向の映像の合成画面

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つぎに図6に示すように画面上へ垂直線の挿入や、角度を測定できるツールや直線記入

の機能を活用することによって、受講生にフォームの改善点のポイント明確にすること

ができた。

3) 複数回映像の比較指導

同一人物が指導を受けていく中でのフォームの改善具合を確認することは、受講生自

身にとって正しいフォームに向かって改善が進んでいるかどうかを確認する意味にお

いても重要なことである。そこで何回かの動作の映像を同一画面上に並べて確認する機

能を利用して、図 7のとおり受講生へフォームの変化をアドバイスした。その際に角度測定ツールを使用することによってより的確にフォームが変化していることを受講生

へ理解させることができた。

1回目 4回目

図7 指導前後の映像比較の画像

図6 2方向映像の合成画面に指導内容を書き込んだ画面

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4) 他者とのフォーム比較指導

受講生自身が手本となるモデルと、どの程度フォームに違いがあるのかを認識するこ

ともフォーム改善には重要な情報といえる。そこで受講生と教員の映像とを同一画面上

に呼び出し、動作進行を合わせながら比較して指導した。その際には違いを明確にする

ために、図8に示すように画面上で体の上にフォームの乱れが目立つように鉛筆ツール

を利用して受講生が理解しやすいように加工した。

5) リピート機能および残像機能による指導

映像を見ながらの指導には動作の全

体像を把握するのに大きな効果をもた

らすことは間違いない。しかし、見終え

た映像はイメージとして記憶に残るだ

けのため、詳細な点までは記憶にとどめ

られないのが現状である。この点を、採

取した映像をパソコンのハードディス

クに格納しているため、リピート機能を

使用すればビデオテープのように巻き

戻す必要もなく繰り返し見ることがで

きるので、受講生にとっては記憶に強く刻むことができる。 さらに、図 9のように、残像機能を使用することによって、重要なポイントとなる姿勢を静止画像として映像の中にとどめることができる。この機能によって、重要なポイ

ントを記憶ではなく画像として確認することができて、受講生は理解を深めやすくなる。

図8 他者とのフォーム比較

図9 残像機能を使用した合成画面

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6) ビデオ映像遅延再生機能(In The Action: Live Delay)の活用 この機能は、撮影された映像が任意で設定された時間が経過した後にパソコンの画面

上に映し出されるものである。この機能を使用すれば、撮影が終了した受講生が指導を

受けにパソコンの前に来る頃に映像が映し始められるので、ビデオテープの巻き戻しな

どの作業や操作時間を気にせずに効率的に指導が行えるのである。当然、次に弓を引く

受講生の映像がパソコンの画面上に出てくるまでの時間を指導時間に充当でき、その間

に次の受講者はビデオカメラの前で弓を引いておいていいのである。30~45秒ほどの時間を設定していれば、スムーズに受講生が順番を長く待たずに動作の実施と映像確認が

できることがわかった。 この機能は、最初に設定すれば停止操作をしないかぎり継続し続けるので、面倒な操

作はなく撮影は自動的に行われるので教員はパソコン画面に映る受講生の動作の指導

に専念できるのである。 7) 体験した受講生の反応

本システムを体験した受講生の全員が、本システムによる指導に対してその効果を認

めていた。特に、言葉による指導や説明だけではなく、映像に指導内容を線や矢印、残

像機能によっても視覚的に訴えてくれたので理解がしやすく、指導後の弓射動作に問題

意識を持って意欲的に取り組むことができたと述べていた。 さらに、さまざまな映像と比較することができたのが自身の動作を客観的に見ること

ができたことがよかったそうである。

図 10 動画分析システムを使用した指導風景

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Ⅵ.考 察 弓道の授業では、他の種目と比べて受講生のほとんどが未経験者である。受講生の予備

知識は、テレビや雑誌などによる映像や画像による限られた情報だけである。さらに、弓

道は弓を撓ませてその復元力を利用して 28m離れた的に矢を飛ばす身体運動である。弓の復元力に対応するように筋力を発揮しながら動作を進行させなければならないという特徴

がある。さらにこの弓を引くという動作は、「射法八節」と呼ばれる決められた法則に合わ

せて姿勢や動きを行うことが決められているため、他の種目のように自身のパフォーマン

スが出しやすいようにフォームを自由にアレンジすることができない。 こういう特徴の

ある弓射動作のため、初心者の受講生は弓力と格闘しながら決められた弓を引く際の姿勢

や動きを理解習得することに悪戦苦闘するのである。なおさら授業は 1 回/週のペースで実質 60 分強の時間、半期 13 回ほどの回数しかないので上達のペースには個人差が大きく出てくる。 そのため、授業では理解を助けるために昔からカメラやビデオカメラによる画像と映像

の情報提供を行い、少しでも自身のフォームの現状を理解し、改善していう方向性を示す

指導を行ってきた。当然であるが、この視覚的フィードバック法は他の種目と同様に一定

の効果を得ることができていた。 しかしながら、1回の授業時間が 60分強と限られている環境では、画像や映像を使った丁寧な指導はなかなか難しく時間的に効率的ではなかった。40 名程の受講生を指導している現場では 1 名に丁寧に指導すると他の受講生に目が届かなくなり、丁寧になればなるほどほかの問題も出てくる。 この指導内容の充実と指導時間の効率化という 2 つの要因を改善してくれるものが、本研究課題で導入した指導システムである。この 2 つの課題が動作分析ソフトをパソコンにより活用することで大きく改善された。 まず、今まで用紙に現像していた写真やデジタルカメラの液晶画面に映し出された画像

により口頭、または指で図示して指導していた指導法が、パソコンの画面上に映し出され

ている画像もしくは映像に対し直接的に線や矢印、角度計などのツール機能を駆使して言

葉による指導内容を補うことができるようになった。これにより、受講生はより視覚的に

指導内容を理解することができ、改善点を明確に捉えることができるのである。さらに動

作分析ソフトの機能により、パソコン内に蓄積している様々な映像データを使って自身の

フォームを比較することが可能となるので、他者との相違点を確認することもできる。 2つ目の課題である指導時間の効率化でも、パソコン内のハードディスクに撮影された映像データが逐一保存されていくので、ビデオテープの巻き戻しや再生場面の検索など、煩

雑な作業によって時間のロスをすることがなくなり改善された。また「ビデオ映像遅延再

生機能」を活用することによっても時間のロスが改善されることが確認された。すなわち、

ビデオカメラを使用していた時には、映像を再生して指導している時間帯は次の受講生の

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撮影は不可能であり、撮影待機をさせることとなってしまった。この課題がこのシステム

のお陰で撮影された映像を見ながら指導をしている間に次の受講生が弓射動作を撮影する

ことが可能となったのである。「撮影する」→「指導を受ける」→「撮影する」→「指導を受

ける」というサイクルが構築され、時間のロスがなくなり制限時間内に多くの受講生を指

導することができることが確認された。特に弓道の場合には、撮影場所を固定することが

できるのでこのサイクルを構築しやすいといえる。 このシステムを活用して詳しい指導をすることが可能であることは確認できたが、教員

がこのシステムに取り掛かりっぱなしになる利用方法だけではない。授業現場においては、

直接的に受講者のフォームを指導する指導法も重要である。受講生の弓や弦を掴んでの誘

導や、体に触れて姿勢を修正することによって、その時の筋肉や関節などの感覚の変化を

覚えさせることも大切だからである。すなわち最終的には正しいフォームを自身の感覚を

頼りに構築しなければならないからである。 そのため、本システムに教員が噛り付くわけにもいかない現状から、先程のビデオ映像

遅延再生機能を活用する。パソコンへの映像録画はせずに、映像だけをパソコンに 1 分程度の遅延再生指定をして映し出すことにするのである。遅延再生設定さえしておけば、弓

射動作終了後の受講生は教員からの指導は受けられなくとも、自身の映像を確認して現状

把握はできるのである。要するに受講生自身が能動的に本システムを利用できる自習型シ

ステムを提供できることになる。 これらだけではなく、アイデア次第で様々な活用方法がまだまだ可能であると考えられ

る。 Ⅶ.将来展望 本年度は、本システムの活用が比較的簡単な被写体がポジションを大きく移動しない種

目から導入してみた。さらに屋内種目であるため、様々な面からシステムを稼動させやす

い条件が整っていた。これを様々な種目に拡大していきながら本システムの更なる活用方

法を検討していきたい。 たとえば、屋外種目による場面では、撮影用ビデオカメラとパソコンを別々に設置して

映像を解析する形式、すなわち被写体や機材を固定して映像を撮影し分析するのが一般的

な形態である。しかしビデオカメラとパソコン、電源バッテリーなどの付属機器を接続し

てキャスターの付いたラックに全て搭載してしまうのである。一体型移動式ラックに設置

してしまえば、様々なポジションから被写体の映像を撮影することが可能となるのである。

野球場やテニスコート、体育館内の床張り施設においてはその機動性能を発揮しやすくな

る。この方式を今後検討して実現させたい。 さらに、本システムで得たデータを受講生へフィードバックする手段を検討したい。

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というのは、本システムに「マ

ルチシステムファイル」という

映像・静止画・テキスト・音声を

ひとつのビューアにまとめる

機能がある。(図 11) このファイルはCD-Rメディアだけ

ではなく、電子メールに添付す

ることもできる。しかしながら

ファイル容量が 1 試技あたり約 7MB前後と大きいことが問題点である。KEAN 利用ガイドによると4MB が限度とある。受講生へのフィードバック

としてはベストの資料である

が、KEAN システムを利用して大容量の電子メールを発信できるのかといった問題を解決しなければならない。また現在、K-SMAPY では教材としてデジタル資料がアップロードできるが、本システムにより作成されたマルチシステムファイルを従来同様にアップロー

ドできるのかも検討しなければならない。 本システムのセールスポイントは、指導現場で迅速に情報をフィードバックするだけで

はなく、後日にもマルチメディファイルとして復習できる正確な資料を提供できる点であ

る。 この両方のフィードバックができて受講生へ指導が深まると考えられる。これを可能と

するには、KEANシステムの協力が必要となろう。 また、全 1 年次生に実施している体力測定においても利用価値があると考える。各測定種目の測定方法や注意点を盛り込んだ資料をマルチメディアファイルとして作製し、測定

場所にノートパソコンを設置してリピート機能を利用して受講生にいつでも見られるよう

にするのである。そのほかにも各種案内情報の提供として活用できると考える。 さらに、本システムは演習系科目においても活用できると考える。受講生たち自らがプ

ランを立て、自らが測定し分析までするのである。いくつかのグループによる利用とはな

るが、受講生自らがシステムを活用して動作分析をおこない、発表やレポート作製まで実

施するのである。 来年度以降も本システムの活用法を様々な視点から検討し、教育と研究の現場に活かし

ていきたい。

図 11 マルチメディアファイル画面

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Ⅷ.資 料 <ダートフィッシュ パンフレット>

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<ダートフィッシュ・ジャパン パンフレット資料①>

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<ダートフィッシュ・ジャパン パンフレット資料②>

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<トレーニングジャーナル 2005年 10月号>

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