【キーワード】 3d生体内歯軸・歯列の新規自動決 …...重心(center of gravity:...

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医学部 保健学科 放射線技術科学専攻 教授 坂本 信 ■概要 ・コーンビーム CT CBCT )画像から 3 次元再構成した上下 顎骨の特徴点からワールド座標系を構築し,上下顎前歯の 歯軸と歯列の 3 次元絶対位置を自動的に求める手法を提案 する. 歯の 3 次元モデルに対し, 3 次元主成分分析法により歯の 長軸方向の主成分である歯軸および 3 次元物体形状重心を 計算により求めた. さらに,歯列を評価するために,下顎の両側オトガイ孔前方 と上顎の切歯管の 3 点を特徴点として三次元ワールド座標系 を定め,歯の形状重心による三次元歯列を表現することがで きる. 本手法は自動計算的に前歯部の 3 次元歯軸と上下顎歯列 が同時に獲得できるきわめて有効な手段である. 3D生体内歯軸・歯列の新規自動決定法 A novel automatic method for in vivo determination of three-dimensional tooth axis and tooth alignment 【キーワード】 歯学 コーンビームCT 3D顎歯モデル 3D歯軸 3D歯列 歯軸 3Dモデルと口腔内 ワールド座標系 ■詳細 41 31 42 32 43 33 44 34 45 35 46 36 47 37 48 38 First premolar Maxillary teeth (Upper teeth) 上顎歯 12 22 11 21 13 23 14 24 15 25 16 26 17 27 18 28 Second premolar First molar Second molar Third molar Central incisor Lateral incisor Canine Third molar Second molar First molar Second premolar First premolar Canine Lateral incisor Central incisor Mandibular teeth (Lower teeth) 下顎歯 Right Left FDI形式による歯の表示 CBCT装置を用いて上下顎と歯を撮影する (バイトピース:2 mmを噛む状態) 3D医用画像構築ソフトを使用して,歯および 上下顎骨の3Dモデルを作成 作成した各歯の三次元モデルに対し,3D成分分析法により歯の長軸方向の主成分で ある歯軸(Principal Component analysis-Axis: PC-Aおよび3D物体形状 重心(Center Of Gravity: COG)を計算に より求める

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Page 1: 【キーワード】 3D生体内歯軸・歯列の新規自動決 …...重心(Center Of Gravity: COG )を計算に より求める 各 歯 軸 は 対 応 し た 歯 に つ

医学部 保健学科 放射線技術科学専攻教授 坂本 信

■概要

・コーンビームCT(CBCT)画像から3次元再構成した上下顎骨の特徴点からワールド座標系を構築し,上下顎前歯の歯軸と歯列の3次元絶対位置を自動的に求める手法を提案する.歯の3次元モデルに対し,3次元主成分分析法により歯の長軸方向の主成分である歯軸および3次元物体形状重心を計算により求めた.さらに,歯列を評価するために,下顎の両側オトガイ孔前方と上顎の切歯管の3点を特徴点として三次元ワールド座標系を定め,歯の形状重心による三次元歯列を表現することができる.本手法は自動計算的に前歯部の3次元歯軸と上下顎歯列が同時に獲得できるきわめて有効な手段である.

3D生体内歯軸・歯列の新規自動決定法A novel automatic method for in vivo determination of

three-dimensional tooth axis and tooth alignment

【キーワード】 歯学 コーンビームCT 3D顎歯モデル 3D歯軸 3D歯列

歯軸

3Dモデルと口腔内ワールド座標系■詳細

41 3142 3243 33

44 34

45 35

46 36

47 37

48 38

First premolarMaxillary teeth(Upper teeth)上顎歯

12 2211 21

13 23

14 24

15 25

16 26

17 27

18 28

Second premolar

First molar

Second molar

Third molar

Central incisor

Lateral incisor

Canine

Third molar

Second molar

First molar

Second premolar

First premolar

Canine

Lateral incisor

Central incisor

Mandibular teeth(Lower teeth)下顎歯

Right Left

FDI形式による歯の表示

CBCT装置を用いて上下顎と歯を撮影する(バイトピース:2 mmを噛む状態)

3D医用画像構築ソフトを使用して,歯および上下顎骨の3Dモデルを作成

作成した各歯の三次元モデルに対し,3D主成分分析法により歯の長軸方向の主成分である歯軸(Principal Component

analysis-Axis: PC-A)および3D物体形状重心(Center Of Gravity: COG)を計算により求める

各歯軸は対応した歯について個別に設定され

たローカル座標系で表された三次元ベクトル

Page 2: 【キーワード】 3D生体内歯軸・歯列の新規自動決 …...重心(Center Of Gravity: COG )を計算に より求める 各 歯 軸 は 対 応 し た 歯 に つ

医学部 保健学科 放射線技術科学専攻教授 坂本 信

本技術の問い合わせ先 新潟大学 地域創生推進機構TEL:025-262-7554 FAX:025-262-7513 E-mail:[email protected]

○競合研究に対する優位性

・これまでの3次元歯軸は手動によるものが多く,歯列はキャスティング等により歯表面形状を型取りしたものから求めており,客観性や精度に問題があった.本技術は,これらを解決する新規技術である.(特許出願中:歯科用の画像処理装置,歯科用の撮影システム,歯科用の画像処理方法及びプログラム,出願番号:特願2017-204342,出願日:平成29年10月23日)

○想定される実施例,応用例・個人特有の歯列(歯並びの特徴)を3次元的に正確に求めることができる.・歯科矯正時の歯の移動量を3次元的に求めることができる.・歯科インプラントの手術前計画をコンピュータ上の3次元画像で立案できる.

○今後の課題,展望

・本手法で現段階で歯根と顎骨の分離部分が手動である.歯根と顎骨の分離が自動化できれば,本法はすべて自動計算により歯軸と歯列が求められる.また,歯冠部分に金属等が存在する場合のCT画像のハレーションを解決する必要がある.

■応用を期待する分野

・歯科関連の企業(ソフトウェア企業を含む)であれば,本手法は広く利用できるものと考えています.

下顎骨の左右オトガイ孔(神経,動脈,静脈が通る)

上顎切歯管

オトガイ孔中点から2/3の位置を原点Oとして定義

上顎歯の歯軸と歯列 (# 3)

下顎歯の歯軸と歯列 (# 3)

-25

-20

-15

-10

-5

0

-20 -15 -10 -5 0 5 10 15 20

Z [

mm

]

X [ mm ]

COG

PC-A

Quadratic function

Cubic function

Fourth-order function

4342413132

33

上顎歯の歯軸角度

-30

-20

-10

0

10

20

30

#1 #2 #3 #4 #5 #6

aX

Y[

]

Maxillary teeth

23 22 21 11 12 13

-20

-10

0

10

20

30

#1 #2 #3 #4 #5 #6

aX

Z[

]

Maxillary teeth

23 22 21 11 12 13

下顎歯の歯軸角度

-20-10

01020

#1 #2 #3 #4 #5 #6aX

Z[

]

Mandibular teeth

33 32 31 41 42 43

-20

-10

0

10

20

30

40

50

60

70

#1 #2 #3 #4 #5 #6

aX

Y[

]

Mandibular teeth

33 32 31 41 42 43

左側オトガイ孔から右側オトガイ孔へのベクトルを仮X軸と定義

両側のオトガイ孔の中点から上顎切歯管を通るベクトルをZ軸として定義し,オトガイ孔中点から2/3の位置を原点Oとして定義

Y軸はZ軸と仮X軸との外積として定義

X軸はY軸とZ軸との外積から決定することで3D直交座標系Σwが決定

歯のCOGの絶対座標値と歯軸の3D方向が決定

3D口腔内ワールド座標系の構築3D歯軸と歯列のX-Y,X-Z平

面への投影表示例

被検者6名のX-Y,X-Z平面での歯軸の角度

被検者6名の同一モデル内での検者間の座標系構築精度は,検者3名による原点の平均誤差が0.45 ± 0.20 mmであることから,座標構築の再現性は十分である.さらに,個人の歯1本ごとの3Dにおける位置・方向が定量的に明らかになっている.