カリフォルニア大学 デイビス校への留学を終えて留 学 体 験 記 3 tokyo...

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1 Tokyo University of Science Hiroyuki Kunieda 留学以前の私 私は親の仕事の都合から、9歳から12歳まで アメリカのケンタッキー州のある町に滞在してい た。アメリカから日本に帰ってきて2、3年までは 英語は難なく話せていたが、6、7年も経つと全く 話せなくなってしまった。そんな自分が最も効率 的に英語が話せるようになるには、どうすれば いいかと考えた。こんなときカリフォルニア大学 1年留学プログラムの記事が目に留まった。 進学先で悩んでいたときに、このカリフォルニ ア大学1年留学プログラムがあるのを知り、東京 理科大学に進学し、このプログラムに応募する ことを決意した。留学に必要なTOEFLテストは 入学直後から勉強し、夏休みが終わるころには 留学に必要な点数を超えることができた。 留学中の住まい 私は留学生活中に2回の引っ越しをした。最 初のホームステイ先に3か月、次の家に2か月、 その次の家に7か月住んだ。 最初のホームステイ先の家は、馬を4、5頭 飼っていたり、自動開閉式の門があったりする ほどの豪邸だった。また、私の他にも3、4人ほど 留学生がホームステイしていたので、暇な時間 にはその留学生と時間を潰していた。とても良 いホストファミリーだったが、いろいろな経験をし たいと考えるようになり、3か月ほどでホームス テイをやめることを決心した。 次の家では現地の大学生とハウスシェア (個々の部屋はあるが他人と同じ家に住むこと) をした。新しい住まいはカリフォルニア大学が運 営するFacebookのページで探し、ハウスメイト とネット上で連絡を取って決めた。住む直前は、 かなり不安だったが、実際会ってみるととても気 私は東京理科大学の留学プログラムに応募し、アメリカのカリ フォルニア州デイビス市にあるカリフォルニア大学デイビス校 (通称UC Davis)に、1年間留学をした。そこで、留学中の一年 間を振り返ってみた。 国枝宏之 東京理科大学 基礎工学部生物工学科 留学期間:平成26年3月末~平成27年3月末 カリフォルニア大学デイビス校 カリフォルニア大学 デイビス校への留学を終えて Life in Davis, California

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Page 1: カリフォルニア大学 デイビス校への留学を終えて留 学 体 験 記 3 Tokyo University of Science Hiroyuki Kunieda terという大学内にある英語を学ぶ施設に、約3

留 学 体 験 記

1

Tokyo University of Science

Hiroyuki Kunieda

留学以前の私

私は親の仕事の都合から、9歳から12歳まで

アメリカのケンタッキー州のある町に滞在してい

た。アメリカから日本に帰ってきて2、3年までは

英語は難なく話せていたが、6、7年も経つと全く

話せなくなってしまった。そんな自分が最も効率

的に英語が話せるようになるには、どうすれば

いいかと考えた。こんなときカリフォルニア大学

1年留学プログラムの記事が目に留まった。

進学先で悩んでいたときに、このカリフォルニ

ア大学1年留学プログラムがあるのを知り、東京

理科大学に進学し、このプログラムに応募する

ことを決意した。留学に必要なTOEFLテストは

入学直後から勉強し、夏休みが終わるころには

留学に必要な点数を超えることができた。

留学中の住まい

私は留学生活中に2回の引っ越しをした。最

初のホームステイ先に3か月、次の家に2か月、

その次の家に7か月住んだ。

最初のホームステイ先の家は、馬を4、5頭

飼っていたり、自動開閉式の門があったりする

ほどの豪邸だった。また、私の他にも3、4人ほど

留学生がホームステイしていたので、暇な時間

にはその留学生と時間を潰していた。とても良

いホストファミリーだったが、いろいろな経験をし

たいと考えるようになり、3か月ほどでホームス

テイをやめることを決心した。

次の家では現地の大学生とハウスシェア

(個々の部屋はあるが他人と同じ家に住むこと)

をした。新しい住まいはカリフォルニア大学が運

営するFacebookのページで探し、ハウスメイト

とネット上で連絡を取って決めた。住む直前は、

かなり不安だったが、実際会ってみるととても気

私は東京理科大学の留学プログラムに応募し、アメリカのカリ

フォルニア州デイビス市にあるカリフォルニア大学デイビス校

(通称UC Davis)に、1年間留学をした。そこで、留学中の一年

間を振り返ってみた。

国枝宏之

東京理科大学

基礎工学部生物工学科

留学期間:平成26年3月末~平成27年3月末

カリフォルニア大学デイビス校

カリフォルニア大学

デイビス校への留学を終えて

Life in Davis, California

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留 学 体 験 記

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Tokyo University of Science

Hiroyuki Kunieda

さくな人で、すぐに仲良くなった。しかし、9月に

なり、アメリカでの新学期になると同時に心機一

転し、再び家を変えることを決断した。

次の家ではハウスシェアではなく、ルーム

シェア(同じ部屋に他人と住むこと)をすること

にした。ルームメイトはインド系アメリカ人で、偶

然にも彼は日本語の授業を受けるほど日本に

興味があり、日本のことを教えてあげることで非

常に仲良くなった。

食生活

私の生活習慣は最初の3か月間と次の9か

月間で大きく異なっていた。

最初の3か月間はホームステイをし、さらに

Extension centerという英語を学ぶ施設で授

業を受けた。ある程度はホストファミリーの生活

習慣に合わせる必要があったためか、食事以外

は健康な生活を送っていた。またExtension

centerでの授業は、本キャンパスでの授業と比

べると課題の量が少なく、難易度も低かったの

で、遊ぶ時間も十分にあった。この時期にたくさ

んのイベントに参加したり、スポーツをして遊ん

だりと、楽しい時間を過ごすことができた。

アメリカ生活3か月が過ぎた時に引っ越し、さ

らに夏学期に入り本キャンパスでの授業も始

まった。まず、ホームステイをやめてしまったため

食事は全て外食になった。朝ご飯は食べず、昼

ご飯はピザ、夜ご飯はハンバーガーか中華料

理か、みたいな食事を9か月間続けていた。

引っ越しと同時に、本キャンパスでの授業が

始まり、食生活だけでなく睡眠の習慣も劣悪に

なってきた。課題を終わらせるために、図書館内

にある24時間空いている勉強部屋に毎日通

い、深夜まで勉強した。しかし、課題が多く出さ

れなかった週にはイベントに参加したりテニスを

したり、勉強の息抜きはしっかりできた。また長

期休暇中は友達と旅行したり、家でくつろいだ

りした。

留学生仲間との交流

私が現地の学生や留学生の友達を作るため

にしたこととは、多くのイベントに参加すること

だった。大学自体が行うイベント、留学生同士が

行うパーティ、日本人の友達が主催するパー

ティなど、さまざまなイベントに参加した。

他にも私はテニスを通じて多くの友達を作っ

た。留学当初は、テニスをする相手がいなかっ

たが、留学生に声をかけてテニスに誘い、テニス

仲間を増やしていった。その結果、多くの人がテ

ニスの集まりに参加してくれるようになり、週1、2

回の頻度でテニスを楽しむことができた。テニ

スは帰国するまでの10ヵ月間ずっと続け、その

ことを通じて知り合った友達とは、今でも交流が

ある。

留学先での勉強

[Extension center] 3月下旬~6月下旬

留学生活が始まるとすぐにExtension cen-

平均的な?夜ご飯

留学初日のサンフランシスコ空港にて

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留 学 体 験 記

3

Tokyo University of Science

Hiroyuki Kunieda

terという大学内にある英語を学ぶ施設に、約3

か月間通った。Extension centerにはさまざま

な国から来た留学生がいて、私が通っていた春

学期の留学生の比率は、アジアから5割、ブラ

ジルから2割、ヨーロッパから1割、その他が2割

ぐらいだった。日本の学校でも習うリスニングや

リーディングやグラマーの授業に加えて、ライ

ティングやスピーキングの授業もあった。さら

に、TOEFL対策授業、ビジネス英語の授業、映

画鑑賞の授業などの選択の授業もあった。

Extension centerでは、留学生同士の交流を

深めるためにも、各週でバレーボールや卓球な

どさまざまなイベントが開催され、私も頻繁に参

加した。

[本キャンパス] 7月上旬~3月下旬

3か月のExtension centerの授業の後に、

本キャンパスで現地の学生と混じって大学の講

義を受けた。講義内容はすべて理科大の材料

工学科で学ぶ内容と一致するものだった。例え

ば、材料の物性、熱力学、量子力学、有機化学

など専門的な分野を学んだ。

積極的に授業に取り組む教授と生徒は刺激

し合えるとてもいい関係になったが、私は言語

の壁や大量の課題に苦労した。授業の講義、テ

スト、実験レポート、使用したソフトウェアはすべ

て英語を使用するので、ありとあらゆる作業に時

間がかかった。また、学生実験では日本と比べ

て学生同士の自主性を重んじる傾向にあり、あ

る程度は学生が実験内容を決めた。そのため、

実験班の班員に自分の考えやその理由を伝え

ることが必要で、自分の英語力では不十分だっ

たので図式などを使って必死に説明した。

アメリカの大学の授業風景

9か月のデイビス校での授業を通して、面白

いと思ったことをいくつか挙げてみる。

まず、授業中に学生はノートをとるのではな

く、パソコンやタブレットに書き込んだり、タイピ

ングしたりする人が多く見受けられた。教授も板

書ではなくスライドを映し出す先生が大半だっ

た。また、講義のスライドの確認や宿題の提出

は、大学が管理するサイトで行う。そのためアメ

リカの大学生活においてパソコンは必要不可欠

である。

また、アメリカの大学の授業では、教授が講

義をしている最中でも、頻繁に学生が手を挙げ

て質問をする。そして教授も頻繁に、学生がきち

Extension center前で竹内教授と

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留 学 体 験 記

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Tokyo University of Science

Hiroyuki Kunieda

んと理解しているか確認する。それほど教授と

学生は真剣に授業に取り組んでいる。

さらに、学生やTAの授業態度は自由だった。

学生は講義の最中でも平然と昼食をとり始め、

授業の内容に関することであれば、学生同士の

会話も許されていた。中には、パソコンでオンラ

インゲームに没頭する猛者もいたが、音を立て

すぎたため、さすがにこの学生は注意された。

精神的な変化

アメリカでの生活を通して変化したことは、ま

ず勉強をすることが楽しくなったことだ。英語で

理系の勉強をすると興味深い事実が見えてく

る。カタカナで表記される理系単語の意味を知

らなくても、予測できるようになったり、英語を介

して他の単語との繋がりが分かるようになったり

してきた。このように日本で勉強を学ぶだけで

は、分からない視点があることに気付くようにな

り、勉強に対する興味が一層湧いてきた。

次にアメリカだけでなく、他の国への興味も湧

いてきた。デイビス校には多種多様な人が学ん

でいたので、さまざまな思想や信条を持つ人の

話を聞く機会があった。例えば、キリスト教、イス

ラム教、ヒンドゥー教を信条にする人たちの話を

聞いたりして、本当にいろいろな考え方がある

のだと実感させられた。

加えて、精神的にタフになったと断言できる。

アメリカで生活する上で重要なことは自分から

積極的に動かなければ何も起こらない。そこで

私は弱腰になりながらも、声をかけ、何とか会話

力を伸ばそうと必死になった。そのように努めた

からこそ、他人の目など気にしても無駄だと思う

ようになり、新しいことに挑戦できるたくましい自

分がつくられていった。

留学を考えている人へのメッセージ

私はこの1年間の留学を通して、期待してい

たほどの英語力は身につかなかったし、留学先

で学んだ専門分野の英語もすぐに何かの役に

立つとは思わない。しかし、現地で英語のシャ

ワーを浴びたことや専門分野を英語で学ぶこと

で、学ぶ意欲がでてきた。もっと会話や論文の

読み書きができるようになりたいという向上心

が得られた。実際に私は、留学が終わった現在

でも英語の勉強は続けている。英語は常に使わ

ないと退化してしまうので、英語のシャワーを体

験した今は、シャワーをもっと受けたいと欲する

ようになってきた。

また留学に対して物怖じする人は多くいる

が、留学すればどんな環境であれ自然と新しい

環境に順応できるようになる。留学体験をする

前から、あれこれ考えてマイナス思考をしてしま

うことはない。どの国に生まれても一人の人間

として素晴らしい感動を共有し合える。

試しに一歩を踏み出してみることを勧めたい。

日本人と韓国人の友達でグランドキャニオンに旅行

毎日通っていた24時間

空いている勉強部屋