セラミックスnagayama/2014年度 2年生火曜2限(大宮... · 2014 年 5 月 13...
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セラミックス
2014 年 5 月 13 日(火)
材料工学科 教授 永山 勝久
第 4 回目 補足資料
第 5,6 回目
( 2号館 2301教室 )
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①集積回路IC(Integrated Circuit)
:半導体で構成された電子回路 複数の回路が複数の端子を有する
小型パッケージに封入されている
(・・・多数の素子を一つにまとめた
電子部品)
②大規模集積回路LSI (Large Scale Integration)
:1970年代に開発されたコンピュータ
のメインメモリ用電子部品
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③超大規模集積回路:VLSI
(Very Large Scale Integration)
:1980年代に開発され始めた大規模な集積回路
10万~1000万個程度のトランジスタ素子
が集積されたマイクロプロセッサ
『応用例』
:CCDセンサ(Charge Coupled
Device Image Sensor)
CMOSセンサ(Complementary
Metal Oxide Semiconductor)
・・・デジタルカメラ,
ビデオカメラ用固体撮画像用半導体センサ
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パソコン,携帯電話,デジタル家電,カメラ用
各種電子機器用セラミックス製基板とICパッケージ
(超小型電子回路保護用材料,左:基板、右:パッケージ)
多層セラミック回路基板 (スーパーコンピュータ用)
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光ファイバー用セラミックス材料 石英ガラス(SiO2)製光ファイバーは、1秒間に地球を5周程度回る速度(秒速約20万km)で大容量のデジタル信号を高速伝送し、損失量は1kmで数%程度と極めて小さい
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レーザー素子用セラミックス材料 1.医療用・・・歯科口腔内・外科治療用レーザー
①歯肉切開や歯周治療など軟組織用メス
②歯や骨などの硬組織・外科手術用メス
2.情報・家電用・・・光ディスクCD,DVD,MO等の
記憶データ・情報読み出し用レーザー素子
レーザーマウス,レーザーポインター,LED
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ルビーレーザー (Ruby laser)
ルビー:Al2O3 (アルミナ)中の Alを 0.01~0.5%程度、発光原子Crで置換
ネオジムヤグ (Nd:YAG) レーザー
エルビウムヤグ (Er:YAG) レーザー
YAG:イットリウム・アルミニウム・ ガーネット(Yttrium Aluminum Garnet) :YとAlの複合酸化物(Y3Al5O12)から 成るガーネット構造の結晶
ルビー(人工宝石)
①医療用、②情報・家電用以外にも、白色,赤色等 発光ダイオードLEDの蛍光体や人工宝石としても多様 (セラミックス固体結晶を用いた固体レーザ-発振素子)
サファイア(Sapphire)は純粋なAl2O3)
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高温高強度セラミックス材料 - 金属に代わる次世代構造材料 -
1.自動車用材料
①排ガス浄化用セラミックス
HC(炭化水素),CO(一酸化炭素),
NOx,SOx(窒素,硫黄酸化物) 等
を吸蔵させる触媒用セラミックス担体(吸着フィルター)
②排気ガス測定センサー用
③スパークプラブ
(ガソリン着火素子
・・・自動車への
最初の応用)
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④エンジン用セラミックス
・・・高温・高強度・活性雰囲気
・冷却不要な高性能エンジン
⑤ターボチャージャー
・・・高温・高強度・軽量特性を
有する高性能ターボチャジャー
(窒化珪素Si3N4)
『セラミックエンジン』 :エンジン部品(シリンダ、ピストン、ターボチャージャー等) にセラミックを使用することにより性能向上を目指し展開中 ⇒ 今後のさらなる研究開発が急務
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酸化物系高温超伝導材料 (High-temperature Superconductivity) 1986年にスイスIBM
研究所のベルノルツと
ミューラーによって、
La-Ba-Cu-O酸化物系
酸化物系高温超電導体
の発見・・・1987年に
ノーベル物理学賞受賞
↓
Y-Ba-Cu-O系
Bi-Sr-Ca-Cu-O系 ・・・
の発見によるTc増大
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超伝導物質発見の推移位
①BCS(金属)系(Hg⇒MgB2), ②銅酸化物系(1986年 La-Ba-Cu-O⇒)
③2008年 鉄ニクタイド系(2008年 LaFeAsO,東工大 細野 秀雄)
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① リニアモーターカー :磁気浮上式リニア(JRマグレ ブ MLX01-2) 試験走行として世界最高の581km/hを記録 JR東海では、現在,開発中
の『磁気浮上式鉄道』のことを「JRマグレブ(JR-Maglev)」と呼んでいる。"Maglev"は磁気浮上式鉄道を意味する ⇒ 『中央新幹線・リニア』 (首都圏-中京圏,290km 2025年運転開始予定)
磁気浮上式リニア(上海トランスラピッド) - 世界最高速の営業運転(430km/h)走行中
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② 超電導材料を利用した電力貯蔵システム
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生体バイオ関連セラミックス 『生体材料(バイオマテリアル:biomaterial)』
:医学・歯学分野において、主にヒトの生体に移植
することを目的とした材料(人工関節,口腔内歯科用
インプラント,人工骨,人工血管用材料など)
『生体材料の要件』・・・生体組織との反応がない
(良好な生体組織適合性)
『例)人工骨の主要材料』・・・・Ca10(PO4)6(OH)2
(水酸化アパタイト:リン酸カリシウム)
※ ステンレス製の骨材とは異なり、徐々に骨組織へ
置換され、骨の再生を促す等の利点を有する
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整形外科用人工骨材料の構造 (人間の骨の主成分:リン酸カリシウムCa10(PO4)6(OH)2)
Al2O3, ZrO2製人工歯
Al2O3および水酸化アパタイト製 セラミックス製人工歯根
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Al2O3, ZrO2セラミックス製 人工関節
水酸化アパタイト製 (リン酸カルシウム系化合物) 各種人工骨補充材料
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燃料電池(fuel cell) 電気化学反応によって電力を取り出す装置 :-極の水素と+極の空気中酸素等を常温または高温環境 で反応させることにより、継続的に電力を取り出すことがで
きる発電装置 ⇒ 水素を補充することで連続的発電が可能
『燃料電池の種類』 1 固体高分子形燃料電池 (PEFC)
2 りん酸形燃料電池 (PAFC)
3 溶融炭酸塩形燃料電池 (MCFC)
4 固体酸化物形燃料電池 (SOFC)・・・セラミックス燃料電池
5 アルカリ電解質形燃料電池 (AFC)
6 直接形燃料電池 (DFC)
7 バイオ燃料電池
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燃料電池 『固体酸化物形燃料電池(SOFC,Solid Oxide Fuel Cell)』
電解質に酸化物イオンの透過性が高い安定化ジルコニア
ZrO2 等の『ペロブスカイト酸化物イオン伝導性セラミックス』
を用い、空気極で生成した酸素オンO2-が電解質を透過し、
燃料極で水素と反応させ、電気エネルギーを発生させる
水素だけではなく天然ガスや石炭ガス等も燃料として用い
ることが可能で、発電効率も高く、すでに56.1%LHVを達成
し、家庭用・業務用の1kW-10kW級としても開発されている
電極材としては導電性セラミックスを用い、火力発電所の
代替などの用途が期待されている
日本では2009年6月世界最高レベルの63%の発電効率を達成している
注)LHV(低位発熱量基準):燃料が燃焼した時に発生するエネルギー
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愛知万博シャトルバス (トヨタ・日野・FCHV) 燃料電池自動車トヨタ・FCHV
ホンダ・FCXクラリティ FCX・・・ホンダ・開発車
FCHV・・・トヨタ・開発車 Fuel Cell Hybrid Vehicle
(燃料電池複合型自動車)
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原子力関連セラミックス材料
原子力発電所で使用する原子炉の炉心・核燃料UO2
①核燃料(MOx:M=U,Pu・・・),②原子炉・炉心材料, ②核分裂反応制御材料,④中性子遮蔽材料 など 原子力発電所で使用する全ての材料に使用
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次世代航空機用セラミックス材料 - 次世代航空機機体用複合材料 - ①炭素繊維強化・複合材料・・・C/Cコンポジット) ②ガラス繊維強化・複合材料・・・GFRP ・・・民間航空機への複合材料の利用は、1940年に レーダードームの『GFRP:ガラス繊維強化プラスチ ック化』から開始。 1975年には、NASAが研究的 にB727やB737のエレベーター(昇降舵)、DC10の 尾翼(垂直安定板)等に複合材を利用し金属構造に 対して約30%の軽量化に成功 この研究成果を量産機に採用したのは、米国ボー イング社のB757とB767のラダー(方向舵)が最初
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この研究成果を量産機に採用したのは、アメリカ・
ボーイング社のB757及びB767のラダー(方向舵)が最初。 これとほぼ同時にB767のエレベーター、スポ
イラー、アウトボードエルロン、翼胴フェアリング、前・
主脚扉、主・尾翼トレイリングエッジパネル、垂直・水
平安定板リブ等の2次構造材料として機体重量の3%
程度の『CFRP(炭素繊維強化プラスチック)』などの
の複合材が使用された
1994年に初飛行に成功した、米国ボーイング社の
B777には、損傷許容性が重視される1次構造材とし
て、垂直・水平尾翼安定板とフロアービームに高靭性
CFRPが採用された
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また、エアバス社においては1988年に就航した
A320には、動翼・エンジンナセル等の2次構造材の
他に、世界で初めて1次構造材として尾翼にCFRP
(炭素繊維強化プラスチック)が採用され、その後、
A330とA340にも全重量の約12%に複合材料が採用
されている
◆ 「航空機用途の今後の動向」
エアバスの次期大型旅客機(A380)やボーイングの
次期旅客機(B787)では、より広汎にCFRPの採用が
計画されており、航空機機体構造材料へのCFRPの
利用は、益々拡大する!
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H-IIAロケットとCFRP(炭素繊維強化プラスチック) 黒い部分(中間部)・・・全面CFRPサンドイッチ構造 白い部分(上部)・・・人工衛星搭載部(炭素繊維複合材料) 白い部分(下部)・・・固体ロケットブースターケース(CFRP)
技術水準・経済性ともに世界のトップレベル 日本の主力大型ロケット・H-IIA
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スペースシャトル
STS-120におけるディスカバリー号の発射
スペースシャトル(Space Shuttle)は、アメリカ合衆国のNASAが宇宙輸送システム(Space Transportation System, STS)の一環として有人宇宙飛行のために使用している宇宙船である。 初飛行は1981年、2回目の飛行は1982年で、総計135回の発射が行われた後、2011年6月に退役
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スペースシャトル機体用セラミックス製耐熱タイル :高純度シリカ製タイル ⇒ 全体で3万枚が使用 (SiO2,99.7%ガラス=アモルファス繊維製タイル)
スペースシャトルが地球に帰還する際、 大気との摩擦により1万度を超える場合も あるため、超高温から機体を保護するため 機体表面に耐熱シリカSiO2製タイルを使用
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月面基地 (2006年12月にアメリカ航空宇宙局 NASAが発表した月面基地の建設構想図)
2020年までに建設開始、2024年頃には長期滞在を予定 米国 2020年~:建設開始, 2024年~:長期滞在を予定
日本 2020年:月面着陸, 2030年~:月面基地建設構想
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イオン結合と共有結合
『セラミックスの結合様式』
(1)イオン結合・・・
(2)共有結合 ・・・
陰イオンと陽イオン間での静電気力(ク-ロン力),すなわち,正と負の電荷(を有する2つのイオン)が電気的引力によって生じる結合様式 隣接原子が互いに電子を出し合って、安定スピン 結合状態 (↑↓) を形成し、スピンを共有することに よって生じる結合様式[配位結合(隣接原子間での 最外核電子間の交換結合・・・半導体Siの結合様式 ]
イオン結合性結晶・・・酸化物系セラミックス 共有結合性結晶 ・・・非酸化物系セラミックス (半金属-非金属:Si3N4,BN, SiC ,金属-非金属:AlN,TiC,TiB2など)
共有結合力 > イオン結合力 ∴ 『共有結合性結晶 』は焼結性が困難(←粒同士の反応性に欠ける) なため、 通常,焼結性向上を目的として焼結助剤を添加したり、ある いは、高圧下での焼結法(ホットプレス,HIP法など)が行われている
【定義】
※半金属-半金属
※金属-半金属
価電子 ⇒
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材料の性質を規定する 化学結合 [ 物性を規定する基礎的因子 ]
化学結合 ① 金属結合 ② イオン結合 ③ 共有結合 ④ ファンデル・ワールス結合 ( 気体 分子間結合 ) (4つの形式)
セラミックスの結合様式
融点 電気伝導性 透明度 水溶性
イオン結合 高い 比較的良い 透明 可溶
共有結合 高い 悪い 普通は透明 難溶
金属結合 比較的高い 極めて良い 不透明 普通は不溶
分子結合 低い 悪い 透明 ―
金属光沢
表1 化学結合の種類と主な特徴
◎化学結合= 材料の性質(物性)を支配 材料 現象論的特徴
(1)金属 ①金属光沢を示す,②電気,熱の良導体
③塑性加工が可能(展延性に富む)
(2)無機 ①絶縁性に富む,②断熱性が大
(セラミックス) ③塑性加工が困難(脆性)
(3)高分子 ①絶縁性,断熱性が大
(繊維,プラスチック) ②加工が容易
【金属結合】
【イオン結合,共有結合】
【共有結合,分子間結合】
ex.Al2O3
融点:2072℃
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(1) 金属結合 <・・・金属の特徴の起源>
【定義】: 原子の最外殻の価電子が原子核(陽子=正電荷)の拘束を離れ [ ・・・『金属原子の自由電子放出に伴う陽イオン化』 ]、自由電子 と して,結晶全体の金属陽イオン (原子) に共有されて,これを媒介 として原子(=“ 陽イオン ”)どうしを結合する化学結合様式
① 自由電子・・・熱や電気の伝導媒体
③ 自由電子・・・金属陽イオン間における結合に自由度を寄与 <結合の手が無数存在するために破壊は生じにくい>
② 自由電子・・・光により励起 【光(=電磁波) のエネルギーにより遷移】
金属は熱や電気の良導体
金属特有の光沢 ( 金属光沢 )
『金属の特徴』
自由電子に依存
=
金属の塑性変形 ( 展延特性 ) + + + + + + + +
+ + + + 自由電子
金属陽イオン
金属結晶 の概念図
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(2)無機材料 【半金属B,Si,C・・・,酸化物,窒化物,ホウ化物,塩化物】 の結合形式
“セラミックス”
(単一元素)
◎ 「イオン結合」 ⇒陽(+)イオンと陰(-)イオン間の電気的引力に起因
代表例):NaCl = Na+ - Cl- (静電引力 = クーロン力)
[ 定義 ]
する化学結合様式 ◎ 「共有結合」
2つの 結合形式
11Na:1s22s22p6 3s1 e-
17Cl:1s22s22p63s2 3p5 [Ne]
[Ar]
※
○ イオン間に働く力
1) 陽イオン-陰イオン : 引力 2) 陽イオン-陽イオン : 斥力 ( 反発力 ) 3) 陰イオン-陰イオン : 斥力 ( 反発力 )
◎3つのクーロン力・・・ 同種イオン間
イオン性結晶 ・・・ 全体として引力が斥力よりも大きくなる
: +,- イオン間のクーロン引力 ( 静電引力 ) により,結晶を形成する
( 図1,図2参照)
結晶を構成
(引力=斥力)
-
0
100
-100
-200
2 4 6 8 10 12 ∞
-e2/r 結合力=引力
弱い
(両イオン間の 距離が遠い)
クーロン引力: 2
2
r
eF
ポテンシャルエネルギー :
r
eF
r2
0
e : 電荷 r : イオン間距離
Naのイオン化 ポテンシャル
Clの電子 親和力
( イオン間距離 )
NaCl結晶のイオン間距離
最適距離
引力≧斥力
ポテンシャルエネルギー
kc
al/
mo
l
イオン間距離が極端に近くな ると,両原子(両イオン) が 有する電子と原子核の陽電 荷間におけるクーロン引力が 増大し,ポテンシャルエネル ギーは急激に増大する
(核外電子全て)
図1 Na+とCl-との クーロン引力によるポテンシャルエネルギー
ポテンシャルエネルギー
図2 イオン間距離と 引力 ,斥力 の関係 (- 引力と斥力の平衡関係 -)
引力
斥力
陽イオン,陰イオンがくっついている
陽イオン,陰イオンの電子雲が重なり合う
陽イオン,陰イオンが離れている
(同種イオン間のポテンシャルエネルギー)
r (:イオン間距離)
引力と斥力の 合成
ポテンシャル エネルギー
・最も安定な位置
= イオン間距離
合成ポテンシャルエネルギーの 極小値 =
“イオン間距離”
・・・ 引力と斥力の最適距離 (安定)
・斥力+ 引力の最小値=
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イオン結合の特徴(:熱伝導機構) ( 高熱伝導性セラミックスと非熱伝導性セラミックス )
◎イオン結合性結晶(セラミックス) の熱伝導機構
熱伝導媒体 ・・・ 『フォノン(phonon)』
○結晶中で規則配列する原子を “格子” と考え,格子位置での 原子の振動エネルギーを 「フォノン」 と定義
( フォノン ・・・ “格子の振動” をエネルギーを持った 粒子 と仮定)
=
“振動子” 『量子』 熱伝導機構 ・・・ 「 アインシュタイン・モデル(バネ・モデル)」
(図3 参照) ① 物体の端面(片側)を 加熱 ② 加熱面での原子振動の増大 (軽元素ほど大きい) ③ 隣接正負イオン間でのイオン結合を介して,格子振動が伝播 ( ⇒ フォノンの伝播) ・・・ “ 格子振動による伝播 ”
◎ 軽元素ほど格子振動は大きく、その伝播は容易
熱伝導率 : Al2O3 (約20W/m・K,Al原子量 : 27 ) ZrO2 (約 4W/m・K Zr原子量 : 91 ) 5分の1
cf. 金属材料
自由電子が
熱の伝導体
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端面
加熱
端面
加熱
バネ
バネ
軽元素 ・・・ 格子振動は大
熱伝導は容易 重元素 ・・・ 格子振動は小
(a) (b)
図3 熱伝導のモデル (アインシュタイン・モデル) : 結晶の左端から右端への加熱に伴う格子振動による熱伝導現象の説明
<熱伝導率 : 小>
(a) 軽元素 (振動大,高熱伝導性) , (b) 重元素 (振動小)
『アインシュタイン・モデル(イオン結合性結晶の熱伝導機構)』
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共有結合 (最も強固な化学結合)
◎ 共有結合 ・・・ 1つの原子が所有する孤立電子 (不対電子) と,周囲の隣接原子 が有する孤立電子との間で,スピンの向きを逆にして安定な電子 対を形成することによって生じる化学結合形成
隣接原子間で
[定義] 半導体, 非酸化物系 セラミックスの 結合様式
・窒化物 ・ホウ化物 ・炭化物
Si
Si
Si Si
Si
Si
Si
Si
Si
Si
Si
Si
安定な電子対(+,-のスピン の結合)
=
=
N S
N S
スピン
電子 磁気 双極子
Si4+ : 4価
周囲に4個のSi原子
電子を共有する 図2 Si結晶の共有結合
反平行スピン = (安定な電子対)
平行スピン = (不安定電子対)
異極結合 安定
←電子雲どうしの結合
電子雲どうし の反発
=
安定結合 = 「共有結合」
同極結合 不安定(反発)
図 反平行(a),平行(b)スピン間における2原子(電子)間の電子密度分布
(a)
(b)
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共有結合の特徴 : 特定の原子・原子間 での強い結合力であるため、方向によって 結合力は異なる(・・・異方性が大きい結合力)
共有結合>イオン結合,金属結合
【 共有結合性結晶の特徴 】 : ① 融点が高い ② 硬度が大きい ③ 高強度 ④ 原子間結合に異方性があるため,特定面で割れる ⑤ 拡散係数が小さい(・・・物質中の原子移動が困難)
【 代表的な共有結合性物質 】 ・・・ Ⅳ族元素 : C,Si,Ge,Sn
原子配列 : ダイヤモンド構造 [ : 図4 参照 ] ・・・一つの原子の周囲に4つの原子が存在し,正四面体を形成 中心の原子と四面体頂点の各原子が互いに4個の外核電子を出し合って, かつ,スピンが逆向きの電子対を形成 = 『sp3混成軌道』 [ :図5 参照 ]
図4 ダイヤモンド構造
sp sp2 sp3 sp3d sp3d2 sp3d3
配位数 2 3 4 5 6 7
図5 sp3 混成軌道 (配位数と幾何学的な原子結合状態)
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ダイヤモンド構造 と グラファイト(黒鉛)構造 (炭素C の 第1形態 と 第2形態 の構造)
sp3混成軌道を形成 (最も安定な電子対を形成)
C原子同士がsp2混成軌道を形成 正六角形の平面構造,六方晶構造 (・・・層と層の間(面間)は 弱いファンデルワールス結合)
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( :Ⅲ族原子位置, :Ⅴ族原子位置 )
半導体物質 ← (共有結合性物質の代表)
◎半導体の推移
共有結合性結晶
・最初のトランジスタ : Ge(Ⅳ族元素) : Ge4+
・現在の半導体 : Si(Ⅳ族元素) : Si4+
・今後の半導体 : GaSb, GaAs,InSb, InP, GaN
(Ⅲ‐Ⅴ族化合物半導体) Ga,In ・・・ 3族元素 As,P,N・・・ 5族元素
平均の原子価 : 4価 ⇒ Ge,Siと同様
GaSb, GaAs,・・・ 立方硫化亜鉛 ZnS 構造(閃亜鉛鉱型) <4面体構造を4つ有する>
InSb, InP・・・ (四面体構造を構成要素にもつ,立方晶型結晶) =
ダイヤモンド結晶に類似
共有結合性結晶
四面体構造 が構成要素
“4配位構造”
図6 立方硫化亜鉛構造 (・・・Ga,In) (・・・Sb,As,P)
注)GaN(窒化物系 化合物半導体) :ウルツ鉱構造 格子定数 a軸 3.18 Å c軸 5.17 Å
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単位胞中にsp3混成軌道 (正四面体構造)が4つ存在
1Å=10−10 m = 0.1 nm
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『ニューセラミックスの概要』
『ニュ-セラミックス』・・・金属,プラスチックスに次ぐ第3の工業素材
歴史的背景:伝統的セラミックスからニュ-セラミックスへの変革[:図1.1参照]
① 伝統的セラミックス・・・『セラミックスの石器時代』 :石器(:地球が作った天然のセラミックス)→土器(:火の発見(~800万年前)に 起因して人間が人工的に作った最初のセラミックス) → 陶磁器( 窯業製品、珪酸塩工業製品 )
② ニュ-セラミックス(ファインセラミックス)・・・『ニュ-石器時代(現代社会)』
① と ② の決定的相異点 [:表1.1参照] ・・・伝統的セラミックス・・・天然原料, ニュ-セラミックス・・・人工原料 『ニュ-セラミックスの概念的定義』 精製,精密に調整された化学組成かつ微細均一粒子からなる人工原料を 使って、高度に制御された成形法及び焼結法による焼成品 新しい機能を有する次世代高機能材料(構造的特性,機能的特性)に発展
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伝統的 ニューセラミックス セラミックス
原 料 天然 天然 人工
熱処理(焼成)加 工(製品化)
石 器
人工人工
人工 人工天然
天然
表1.1 ニュ-セラミックスとオールドセラミックスの比較
図1.1 伝統的セラミックスから ニュ-セラミックスへの変革
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『セラミックス』 の学術的定義 ・・・ 『非金属無機固体材料』[:表1.2参照]
【元素の分類】:(1)金属性元素 (ex.Al,Zr,Ti,Pb など) (2)半金属性元素(ex.B,C,Si など) (3)非金属性元素(ex.O,N,F,S,Cl など)
『非金属無機固体材料の定義と分類』 :①半金属性元素により構成される物質 (ex.ダイヤモンド,半導体Si,カ-ボン繊維,炭化ケイ素SiC, フラーレンC60, カーボンナノチューブ など) ②半金属性元素と金属元素及び 半金属元素と非金属性元素間の化合物 (ex.炭化チタンTiC,窒化ケイ素Si3N4, 窒化ホウ素BN など) ③金属性元素と非金属性元素間の化合物[:表1.3参照] (ex.アルミナAl2O3,ジルコニアZrO2, シリカSiO2, チタニアTiO2,MOx(M=U,Pu), 窒化アルミAlN など)
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呼 称 材 料 原子間結合
金 属 金 属 金属結合
プラスチック非金属・有機物
共有結合ファンデルワールス結
合イオン結合
共有結合セラミックス
非金属・無機物・固体
表1.2 金属,プラスチックス,セラミックスの比較
表1.3 金属とセラミックスの物性比較例
物性 融点 電気比抵抗材料 [℃] [Ω cm]
アルミニウムAl
アルミナAl2O3
金属
セラミックス
660
2,030
モース硬度
1014以上
2.8×10-8 3以下
9