コンクリート用再生骨材の品質基準・規格について -...
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1.はじめに
現在、コンクリート解体材の発生量は年間約3,500万トンにも及んでいるが、その大半は再生砕石としてリサイクルされ、路盤材や裏込め材などの道路用骨材に利用されている。 しかし図-1に示すとおり、今後は道路用骨材としての需要が高い水準で望めないことに加え、高度経済成長期に多量に建造された構造物の取り壊しにより、コンクリート解体材の発生量が増加することが予測されている。このため、路盤材などに使用する従来のリサイクルだけではコンクリート解体材が余剰状態となり、現在懸念されている最終処分場の不足に拍車をかける可能性がある。 このため、コンクリート解体材から製造された再生骨材を再びコンクリート用骨材として再資源化することを目的に各機関で研究が行われている。しかし、後述するような再生骨材の品質上の問題からコンクリート用骨材として利用された事例はまだ数少ない。そこで現在、その普及に向け様々な品質基準・規格が制定されている。 以上の背景から、本稿ではコンクリートのリサイクルの現状とコンクリート用再生骨材の利用拡大に向けた各種品質基準・規格の概要、さらには当研究所の取り組みについて述べる。
2.リサイクルの現状
平成12年「特定工事に関わる資材の再資源化等に関する法律」、いわゆる建設リサイクル法が公布された。これにより、コンクリートは特定建設資材に指定され、コンクリート解体材のリサイクルが義務づけられた。 さらに翌年に公布された建設リサイクル法基本方針により「特定建設資材の再資源化率を平成22年度までに95%とする」という目標が掲げられ、これを達成するための再資源化促進方策が定められた。コンクリート解体材に関しては破砕・選別・混合物除去等の適正な処理を行い、路盤に使用される再生砕石などの再生骨材として再資源化を促進するとされている。 一方、コンクリート解体材から品質の良い再生骨材
を製造するには、品質を確保する技術や処理コストの面で問題が多く残っていた。このような背景を踏まえ、国土交通省では、再生骨材を強度・耐久性を必要としない部位や舗装用の路盤などにおいて積極的に利用するとした方針を公表している。 図-2に平成14年度の建設副産物実態調査により得られたコンクリート解体材の再資源化フローを示す。これによると3,594万トン発生したコンクリート解体材のほとんどが、国土交通省の方針通り再生砕石として再資源化されており、その再資源化率は建設リサイクル法基本方針に定められた目標値95%を上回る97%を達成している。 今後もこの再資源化率を維持していくことは、最終処分場の不足や天然資源である砕石・砂利の消費抑制と言った観点から見ても大変重要である。 しかし冒頭でも述べたように、コンクリート解体材の発生量は年々増加する傾向にあるため、今後はコンクリート解体材の新たな活用方法が必要とされる。
コンクリート用再生骨材の品質基準・規格について
耐寒材料チーム
0
2
4
6
8
10
1950 2000 2050 2100
年度
数
量
億
t
/
年
骨材総需要量(①+②)
コンクリート用骨材需要量(①)
道路用骨材需要量(②)
コンクリート解体材発生量
図-1 骨材需要量とコンクリート解体材発生量の将来予測1)
図-2 コンクリート解体材の再資源化フロー(H14)2)
③再資源化施設へ3,325
CO※
発生量3,594
①CO※搬出量3,512
再資源化施設CO※破砕
②工事間利用100 2.8%
最終処分場
④最終処分 872.5%
アスファルト廃棄物より再生砕石等1,412
再生コンクリート砂499
砕石(新材)746(再生砕石の粒度調整等として)
⑤砕石(新材)14,686
現場内利用82
⑥再生砕石5,125
⑦鉱さい 608
⑧砕石類利用料20,419
再資源化率 =97%(②+③)①
3.0%
25.1%
71.9%
94.7%
単位:万トン
③再資源化施設へ3,325
CO※
発生量3,594
①CO※搬出量3,512
再資源化施設CO※破砕
②工事間利用100 2.8%
最終処分場
④最終処分 872.5%
アスファルト廃棄物より再生砕石等1,412
再生コンクリート砂499
砕石(新材)746(再生砕石の粒度調整等として)
⑤砕石(新材)14,686
現場内利用82
⑥再生砕石5,125
⑦鉱さい 608
⑧砕石類利用料20,419
再資源化率 =97%(②+③)①
3.0%
25.1%
71.9%
94.7%
単位:万トン
③再資源化施設へ3,325
CO※
発生量3,594
①CO※搬出量3,512
再資源化施設CO※破砕
②工事間利用100 2.8%
最終処分場
④最終処分 872.5%
アスファルト廃棄物より再生砕石等1,412
再生コンクリート砂499
砕石(新材)746(再生砕石の粒度調整等として)
⑤砕石(新材)14,686
現場内利用82
⑥再生砕石5,125
⑦鉱さい 608
⑧砕石類利用料20,419
再資源化率 =97%(②+③)①
再資源化率 =97%(②+③)①
(②+③)①
3.0%
25.1%
71.9%
94.7%
単位:万トン
解 説
56 寒地土木研究所月報 №642 2006年11月
3.コンクリート用再生骨材の問題点
コンクリート解体材の新たなリサイクル用途として、解体材から製造された再生骨材を再びコンクリート用骨材として再資源化することが挙げられる。 コンクリート用再生骨材は図-3に示すように、コンクリート構造物を取り壊して発生したコンクリート解体材を原料とし、破砕・摩砕等の処理を行うことで解体材に使用されていた骨材(原骨材)を取り出したものである。また、処理で取り除ききれなかったコンクリート解体材のモルタル分は図-3に示すように原骨材の周囲に付着する形で残る(以下、付着モルタル分と呼ぶ)。 再生骨材中に占める付着モルタル分の割合(付着モルタル率)が多いと、再生骨材は低品質になる傾向がある。一例として図-4に再生骨材の吸水率と付着モルタル率の関係を示すが、付着モルタル率が多くなるにつれ、吸水率が大きくなる傾向が見られる。
一般のコンクリート用骨材の品質規格としては、JIS A 5005「コンクリート用砕石及び砕砂」4)と JIS A 5308 付属書1「レディーミクストコンクリート用骨材」5)が定められている。このうち一例として表
-1に JIS A 5308 付属書1の品質基準を示すが、再生骨材はこの品質を満足しないケースが多い。この基準を満足する再生骨材を製造するには、適切に付着モルタル分を除去する処理技術が必要とされる。
表-1 コンクリート用骨材の品質
(JIS A 5308 付属書1レディーミクストコンクリート用骨材5))
しかし、処理技術を確立し、安定した品質を確保出来ても、処理コストや処理によって発生する微粉末の再資源化などの問題が生じる。 このような問題を抱えるコンクリート用再生骨材の普及に向け、各機関により様々な研究が行われている。
4.再生骨材の品質基準・規格
コンクリート用再生骨材の普及にあたっては様々な方針の下、大小のプロジェクトや研究・技術開発がなされており、また現在までに多くの品質基準・規格が提案されている。これまで制定された品質基準・規格のうち主なものについてその概要を以下①~⑧に紹介する。
①「コンクリート副産物の再利用に関する用途別暫定
品質基準(案)6)」
この基準は、1992年より旧建設省を中心に行われた総合技術開発プロジェクト「建設副産物の発生抑制・再利用技術の開発」の成果を反映して策定され、1994年建設省により通知された。 本基準では、表-2に示すように再生骨材の品質に応じて粗骨材が3種別・細骨材が2種別に分類され、更にコンクリートの用途別に使用できる再生骨材が限定されている。鉄筋コンクリートに使用できる再生骨材としては,前項 表-1と同じ厳しい品質が要求されている。
図―3 コンクリート用再生骨材の製造フロー
図-4 吸水率と付着モルタル率の関係3)
項目 粗骨材 細骨材
絶乾密度 g/cm3 2.5以上 2.5以上
吸水率 % 3.0以下 3.5以下
微粒分量 % 1.0以下 3.0以下
安定性損失量 % 12以下 10以下
塩化物量(NaCl) % - 0.04以下
原骨
原骨
コ ン ク リ ー ト
解 体 材
摩砕
処理等付着モルタル
付着モルタル
破砕
処理等
寒地土木研究所月報 №642 2006年11月 57
②「建築構造用再生骨材認定基準(新建築技術認定)7)」
この基準は、(財)日本建築センターが新しい建築技術の研究・開発を推し進めるために実施している「新建築技術認定」事業の一環として,規定の品質を備えた再生骨材の製造技術を認定することを目的に、1999年に制定された。 認定基準としては表-3に示す品質が定められており、再生細骨材の微粒分量が7.0%以下に緩和されているものの、それ以外は前述の表-1と同等の基準になっている。
表-3 再生骨材の品質
(建築構造用再生骨材認定基準7))
同基準を満足する骨材製造技術例としては、加熱すりもみ方式(加熱により付着モルタル分を脆弱化させ、すりもみ処理を行う方式)や偏心ローター方式(偏心回転する内筒と外筒の間にコンクリート解体材を投入し、すりもみ処理を行う方式)などがある。
③ 「標準情報 TR A 0006 再生骨材を用いたコンクリート8)」
この基準は、(社)日本コンクリート工学協会から提案を受け、2000年通商産業大臣より将来 JIS 化できる可能性がある基準として公表された。コンクリート用再生骨材を主に高い強度や乾燥収縮・凍結融解に対する耐久性が要求されない部材(捨てコンクリート等)に限定的・効果的に用いるという方針を元にまとめられたものである。その品質は表-4に示すとおりで、前述の表-1に示す品質と比較すると吸水率・微粒分量ともに大きく緩和されている。
表-4 再生骨材の品質
(TR A 0006 再生骨材を用いたコンクリート8))
また、この再生骨材を使用したコンクリート(再生骨材コンクリート)は、要求される品質に応じて以下a)~ c)の3種類に分類されている。a)標準品:呼び強度12N/ ㎜2の再生骨材コンクリート。 現状では、不特定多数の現場で発生したコンクリート解体材が不規則に持ち込まれている。このような解体材を原料とした再生骨材コンクリートでも、
注)凍結融解耐久性を考慮しない場合
再生骨材コンクリート
の種類 Ⅰ種 Ⅱ種 Ⅲ種
種別 1種 2種 3種
吸水率(%) 3.0以下 3.0以下 5.0以下 7.0以下
40.0以下 12.0以下
再 生
粗骨材 安定性損失量(%) 12.0以下
(40.0以下) 注) -
種別 - 1種 2種
吸水率(%) - 5以下 10.0以下 再 生
細骨材 安定性損失量(%) - 10以下 ‑
鉄筋コンクリート 使用用途
無筋コンクリート等 無筋コンクリート等 捨てコンクリート等
適用構造物の例 橋梁下部、擁壁、トンネルラ
イニング等
コンクリートブロック、道路付属物基礎、
側溝、集水桝基礎、重力式擁壁、
重力式橋台、法枠、中埋めコンクリ
ート、砂防ダム及びその付帯工
捨てコンクリート、均しコンクリート、強
度の必要のない裏込めコンクリー
ト、土間コンクリート、その他建設物
の非構造体
設計基準強度の目安 18~21N/mm2 16~18N/mm2 16N/mm2未満
表-2 再生骨材の品質
(コンクリート副産物の再利用に関する用途別暫定品質基準(案)6))
項目 再生粗骨材 再生細骨材
絶乾密度 g/cm3 2.5以上 2.5以上
吸水率 % 3.0以下 3.5以下
微粒分量 % 1.0以下 7.0以下
塩化物量(NaCl) % - 0.04以下
項目 再生粗骨材 再生細骨材
吸 水 率 (%) 7.0以下 10.0以下
微粒分量 (%) 2.0以下 10.0以下
58 寒地土木研究所月報 №642 2006年11月
確保することが出来る最低レベルの強度としてこの呼び強度が定められた。b)塩分規制品:標準品の品質を満足し、フレッシュコンクリート中の塩化物イオン含有量を0.3㎏ /m3
以下とする再生骨材コンクリート。 適用範囲は標準品と同様だが、適用構造物中に鉄筋を有し、発錆を抑制したい場合に用いられる。c)特注品:強度・塩化物イオン含有量等について購入者と生産者らが協議し、購入者がその品質を定める再生骨材コンクリートで、呼び強度18N/ ㎜2が上限とされている。
当時の JIS A 5308「レディーミクストコンクリート」9)に規定されている最小呼び強度は16 N/㎜2
であり、捨てコンクリートに使用される場合でも、この程度の強度が要求されるケースを想定して定められた。「購入者らが再生骨材の使用にあたり十分な知識と理解を有していること」を条件とし、その使用を認めている。
④「プレキャスト無筋コンクリート用再生粗骨材の品
質規格(案)10)」
「再生粗骨材を用いたプレキャスト無筋コンクリー
ト及びその材料と製造に関する規格(案)10)」
この規格(案)は、(社)日本コンクリート工学協会北海道支部リサイクル研究委員会が凍結融解作用を受ける北海道のような寒冷地で、再生骨材をコンクリートに適用することを目的に行った研究・調査等を取りまとめ、2002年に発行されたものである。 再生骨材の品質としては、表-5に示すものが定められている。ただしコンクリートに使用する際、耐凍害性を確保したい場合には、普通粗骨材と混合するなどして使用骨材の吸水率を3%以下にすることが実験結果などから併せて定められている。
表-5 再生粗骨材の品質
(プレキャスト無筋コンクリート用再生粗骨材の品質規格(案)10))
なお本規格(案)では、適用範囲をプレキャスト無筋コンクリートに、また、使用できる骨材を再生粗骨材に限定しているが、これは以下の理由による。・研究段階でプレキャスト製品に用いられる蒸気養生
が凍結融解抵抗性に有効であることが判明した。・再生骨材を鉄筋コンクリートに使用した場合、再生骨材が鉄筋腐食にどういった影響を与えるかが不明確である。
・再生細骨材をコンクリートに使用した際の力学・耐久性能(特に凍結融解抵抗性)に関するデータが不十分である。
⑤「JIS A 5021 コンクリート用再生骨材 H11)」
この規格は、経済産業省が(社)日本コンクリート工学協会に委託した「建設廃棄物コンクリート塊の再資源化 JIS 開発調査研究」の成果を取りまとめたもので、2005年3月に制定された。今後は現在の JIS A 5308「レディーミクストコンクリート」に組み込まれ、構造用コンクリートに適用されていくことが見込まれている。 この規格で定義されている再生骨材Hとは、コンクリート解体材に摩砕・分級等の処理を施して製造される高品質再生骨材を示す。その品質は表-6に示すとおりで、再生細骨材の微粒分量が7.0%に緩和されている以外は前述の表-1と同等の品質が要求されている。
表-6 再生骨材 Hの品質
(JIS A 5021 コンクリート用再生骨材 H11))
また、再生骨材Hの適用範囲は鉄筋コンクリートを含む一般用途のコンクリート構造物であることから、安定した品質の確保が要求される。そのためには原料となるコンクリート解体材がどのようなコンクリートで、またその中に含まれる原骨材がどのような品質・種類のものかを特定する必要がある。 しかし、前述したとおり不特定多数の現場で発生したコンクリート解体材が不規則に持ち込まれている現状では、これらの特定が困難である。 その対策として、設計図書等によりコンクリート解体材および原骨材の品質を確認することが義務づけられた。また設計図書等が残っていない場合には、取り壊し前の状態か、もしくは製造された再生骨材について綿密な観察・試験を行うことが定められた。
項目 再生粗骨材
吸水率 % 7.0以下
微粒分量 % 2.0以下
項目 再生粗骨材 再生細骨材
絶乾密度 g/cm3 2.5以上 2.5以上
吸水率 % 3.0以下 3.5以下
微粒分量 % 1.0以下 7.0以下
塩化物量(NaCl) % 0.04以下 0.04以下
寒地土木研究所月報 №642 2006年11月 59
⑥「JIS A 5023 再生骨材 Lを用いた再生骨材コンク
リート12)」
この規格は、前述の⑤と同じく「建設廃棄物コンクリート塊の再資源化 JIS 開発調査研究」の成果を取りまとめたもので、2006年3月に制定された。 前述の③「標準情報TR A 0006 再生骨材を用いたコンクリート」の流れを引き継ぎ、適用範囲が高い強度・耐久性が要求されない部材に限定されている。再生骨材 Lの品質は表-7に示すとおりで、前述の表
-4と比較すると再生細骨材の吸水率がさらに緩和されている。
表-7 再生骨材 Lの品質
(JIS A 5023 再生骨材 Lを用いた再生骨材コンクリート12))
また、前述の⑤は既存の規格(JIS A 5308)に組み込まれる形でコンクリートに適用される予定だが、再生骨材 Lを用いたコンクリート(以下、再生骨材コンクリート L)はスランプ・空気量などの品質管理値が、一般のレディーミクストコンクリートと異なる。よってこの規格では再生骨材コンクリート Lとしての品質も別に定められている。 再生骨材コンクリート Lは、前述の③と同様に標準品・塩分規制品・仕様発注品(前述の③ c)特注品に該当)の3種類に分類される。 ③においては a)標準品・b)塩分規制品の呼び強度が12N/ ㎜2だったが、現在の JIS A 5308に定められている最小呼び強度に合わせ、18N/ ㎜2に改められた。 また、特注品を仕様発注品とし、呼び強度の上限を24N/ ㎜2に改められた。仕様発注品を使用する際の条件としては「購入者らが再生骨材(再生骨材L)の使用にあたり十分な知識と理解を有する」ことに加え、「購入者自らの責任によって発注する」ことが追加されている。
⑦日本工業規格(素案)「再生骨材 M を用いた再生骨
材コンクリート13)」
この規格(素案)は、再生骨材Hおよび再生骨材Lの中間的な品質である再生骨材Mについて規定するもので、その品質としては表-8に示すものが考えられている。 適用範囲は、杭・基礎梁など乾燥収縮や凍結融解などの耐久性が要求されない部材を想定しているおり、
品質的には前述の表-1に比べ、各基準値が緩和されている。 また、再生骨材 Lと同様に再生骨材Mを用いたコンクリート(以下、再生骨材コンクリートM)も一般のレディーミクストコンクリートとは異なる品質管理値が考えられており、再生骨材コンクリートMとしての品質も別に定められている。その品質としては最大呼び強度36N/ ㎜2、塩化物イオン含有量0.3㎏ /m3
以下が考えられている。 再生骨材Mに関しては、今後この素案を元に規格化される予定である。
⑧「電力施設解体コンクリートを用いた再生骨材コン
クリートの設計施工指針(案)3)」
この指針(案)は電力11社からの委託を受けた土木学会により2005年6月に発行された。再生骨材の原料となるコンクリート解体材を電力施設の解体によって発生するコンクリート解体材に限定したもので、前述の表-7と同じ表-9に示す品質が定められている。
表-9 再生骨材の品質
(電力施設解体コンクリートを用いた再生骨材コンクリート
の設計施工指針(案)3))
また、電力施設解体コンクリート塊には、a)同一箇所から大量に発生する、b)不純物が少ない、c)コンクリート解体材の種類毎に分別収集が可能であるといった特徴がある。よって品質の安定したコンクリート解体材が同一箇所から大量に収集できる。 このような理由から、本指針(案)は前述の⑤と同じ鉄筋コンクリートを含む一般用途のコンクリートに適用できるものとされている。 また c)の特徴を生かし、コンクリート解体材の強度や劣化状態、使用骨材などを観察することで再生骨
項目 再生粗骨材 再生細骨材
吸水率 % 7.0以下 13.0以下
微粒分量 % 2.0以下 10.0以下
項目 再生粗骨材 再生細骨材
絶乾密度 g/cm3 2.3以上 2.3以上
吸水率 % 5.0以下 7.0以下
微粒分量 % 1.5以下 7.0以下
表-8 再生骨材 Mの品質
(日本工業規格 (素案)再生骨材 Mを用いた
再生骨材コンクリート13))
項目 再生粗骨材 再生細骨材
吸水率 % 7.0以下 13.0以下
微粒分量 % 2.0以下 10.0以下
60 寒地土木研究所月報 №642 2006年11月
材の原料として使用可能かを判定することが定められている。
5.当研究所の取り組みと今後の課題
以上のように、これまでにコンクリート用再生骨材に関する品質基準・規格は数多く制定されている。またその基準・規格には各機関の実験・研究・調査等の結果が反映されている。 当研究所でも、同様に再生骨材に関する研究に取り組んでいる。その2001年度からの研究経緯を図-5に示す。いずれも再生粗骨材を対象とし、再生粗骨材の品質及び再生粗骨材を用いたコンクリート(以下、再生粗骨材コンクリート)の強度特性および耐久性について検討を行っている。特に積雪寒冷地である北海道において重要とされる凍結融解抵抗性に重点をおいた研究を進めてきた。これまでの成果は前項の④「プレキャスト無筋コンクリート用再生粗骨材の品質規格(案)」に反映されており、この規格(案)に準拠した再生骨材コンクリート縁石の追跡調査を行っている。 また、現在重点をおいているのは、2003年度から実施している「再生粗骨材コンクリートの塩害に関する検討」である。 北海道地区は長い海岸線を有し、また内陸部では凍結防止剤(主にNaCl)の散布が行われている。このため北海道地区のコンクリート構造物は設置された地理的位置(沿岸部・内陸部)に関係なく、塩害を受けているケースが多い。このようなコンクリートの解体材を再生骨材の原料とする場合、再生骨材に塩分が残存している可能性がある。 この塩分が残存した再生骨材を、新規に鉄筋コンクリート構造物に適用した場合、鋼材腐食を生じることが懸念されるため、再生骨材の含有塩分量と鋼材腐食の関係について検証することを目的に試験を実施している。 この研究の具体的例として、再生骨材を使用した鉄筋コンクリート供試体を用いて実施した鉄筋の促進腐食試験の結果について紹介する。 まず、使用した再生骨材の品質を表-10に示す。2種類の再生粗骨材は、厳しい塩害環境にある北海道日本海側で30年間供用された後に撤去された橋桁の解体材を原料としている。再生粗骨材Aは破砕処理のみを施して製造された再生骨材(前項の⑥再生骨材L程度の品質)、また、再生骨材Bは破砕処理に加え、摩砕・比重選別処理を施して製造された再生骨材(前項の⑤
再生骨材H程度の品質)であり、分析の結果いずれも塩分を含んでいることが判明した。 この2種類の再生骨材を使用して鉄筋コンクリート供試体を作製し、促進腐食試験を実施したところ、再生骨材Aを使用した供試体中の鉄筋に図-6左に示すような腐食が確認された。また、この供試体断面について EPMAによる塩化物イオン濃度のマッピングを行ったところ、図-6右に示すように塩化物イオンが断面全体に均一に分布していることが分かった。 以上の結果から、再生骨材に含まれる塩分が新規モルタル中に移動し、鉄筋の発錆の要因となったことが推測される14)。 今後は、さらに再生粗骨材に含まれる発錆限界塩分量を特定し、厳しい塩害環境にある北海道地区で発生したコンクリート解体材から、一般コンクリート構造物用再生骨材の原料として使用できるよう規格等に反映していく予定である。
(文責:下谷 裕司)
項目 再生粗骨材 A 再生粗骨材 B
絶乾比重 % 2.24 2.52
吸水率 % 7.84 3.34
微粒分量 % 0.7 0.2
塩化物量(NaCl) % 0.244 0.084
図-5 当研究所の研究経緯
図-6 促進腐食試験結果
(左:鋼材の腐食状況 右:EPMA 元素マッピング結果)
表-10 製造した再生骨材の品質
寒地土木研究所月報 №642 2006年11月 61
参考文献
1)社団法人日本コンクリート工学協会北海道支部:再生骨材コンクリートの実用化への課題と展望リサイクル研究委員会報告書 p. 6、2005年5月
2)経済産業省ホームページ http://www.meti.go.jp/policy/recycle/main/data/research/h16fy/161111-7_jmari_4.pdf
3)土木学会:電力施設解体コンクリートを用いた再生骨材コンクリートの設計施工指針(案)、2005年6月
4)財団法人日本規格協会:2005年制定コンクリート標準示方書〔規準編〕JIS 規格集 p.78 ~ p.83、2005年2月
5)財団法人日本規格協会:2005年制定コンクリート標準示方書〔規準編〕JIS 規格集 p.460 ~ p.464、2005年2月
6)建設省技調発第88号:コンクリート副産物の再利用に関する用途別暫定品質基準(案)、1994年6月
7)財団法人日本建築センターホームページ http://www.bcj.or.jp/c02/a09/src/CS-1.pdf8)財団法人日本規格協会:再生骨材を用いたコンクリート TR A 0006、2000年11月
9)土木学会:平成8年制定コンクリート標準示方書〔規準編〕 p.521 ~ p.525、1996年3月
10)社団法人日本コンクリート工学協会北海道支部:リサイクル研究委員会報告書、2002年4月
11)財団法人日本規格協会:JIS A 5021コンクリート用再生骨材H、2005年3月
12)財団法人日本規格協会:JIS A 5023再生骨材 Lを用いた再生骨材コンクリート2006年3月
13)経済産業省ホームページ http://www.meti.go.jp/policy/recycle/main/data/research/h16fy/160401-121_jci_ap3.pdf
14)財団法人北海道開発協会:第49回 北海道開発局技術研究発表会 表彰論文集(平成17年度)p.109 ~ 116、2006年5月
62 寒地土木研究所月報 №642 2006年11月