国内におけるプラズマ・核融合研究のひろがりjasosx.ils.uec.ac.jp/jspf/jspf_text/jspf1996/jspf1996_01/...特別企画...

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特別企画 国内におけるプラズマ・核融合研究のひろがり 宇宙の星、太陽も含めて光の多くはプラズマの発光現象、さらに膨大なエネルギーも核融合反応より発生して います。こう考えるとプラズマ・核融合の分野は宇宙の根源に深く関わっており、広く深いことをあらためて感 じます。 我々の研究対象の荷電粒子、プラズマも多様な光を発し、若い研究者をその美しさで魅了します・昔・私も水 銀整流器の学生実験でちらちらと動き回る神秘的光に電気を直接見たと感激レたものです。今回、A4版化される 1月号の特別企画として、美しいプラズマ放電の写真さらに核融合開発分野の大型装置、関連機器の写真を一挙 に巻頭グラビアに掲載したいと写真を公募いたしました。はたして、大きな反響がありまして短期問にみなさま から多数の写真をお送りいただきました。どれも会員の秘蔵の写真のようで選ぶのに苦労いたしました。たいへ ん有り難く思っております。グラビア写真はプラズマの微妙な色合いを巧く出せるでしょうか心配しております。 微妙な色と言えば、いまごろの冬の夜、極北の空にオーロラの神秘な光が汚れない大地をそっと包んでいるの でしょうか?だんだん地球の磁場が弱くなっているそうで500年もすれば、日本にいてオーロラが見られるそう です。とても待てないので、この寒さの中、アラスカに出かけて一目、宇宙プラズマの神秘を見てみたいもので すQ 広大な宇宙のほとんどを占めるプラズマと核融合・エネルギーを学問の対象にしているのがプラズマ・核融合 学会です。発行する学会誌も、プラズマ理工学及び核融合科学にかかわる研究者・学生のみではなく、宇宙プラ ズマやプラズマ応用技術等に関心を持つ人々に広く読んでもらえる学会誌にしたいと思っております。 (編集委員長 嶋田隆一) 1圃 「ようこう」による太陽の軟X線画像 太陽コロナは、磁気ループと開いた磁場構造であるコロナルホー ルよりなっている。コロナループは、磁気リコネクションにより 頻繁に温度5百~3千万度に加熱されている。このほかに2~4百 万度のプラズマが定常的に存在するが、その加熱メカニズムは、 わかっていない。 「ようこう」により観測された1992年2月211日に発生した 巨大フレア このフレアは太陽の東縁に発生し、ループの高さ6万km、温度約 2千万度、プラズマ密度は1017πi3程度ある。ループ頂上の上空にあ る磁気中性面(見えていない)における磁気リコネクションによ りプラズマ加熱が起きている。 (東京大学理学部 常田佐久氏提供)

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Page 1: 国内におけるプラズマ・核融合研究のひろがりjasosx.ils.uec.ac.jp/JSPF/JSPF_TEXT/jspf1996/jspf1996_01/...特別企画 国内におけるプラズマ・核融合研究のひろがり

特別企画

国内におけるプラズマ・核融合研究のひろがり

 宇宙の星、太陽も含めて光の多くはプラズマの発光現象、さらに膨大なエネルギーも核融合反応より発生して

います。こう考えるとプラズマ・核融合の分野は宇宙の根源に深く関わっており、広く深いことをあらためて感

じます。

 我々の研究対象の荷電粒子、プラズマも多様な光を発し、若い研究者をその美しさで魅了します・昔・私も水

銀整流器の学生実験でちらちらと動き回る神秘的光に電気を直接見たと感激レたものです。今回、A4版化される

1月号の特別企画として、美しいプラズマ放電の写真さらに核融合開発分野の大型装置、関連機器の写真を一挙

に巻頭グラビアに掲載したいと写真を公募いたしました。はたして、大きな反響がありまして短期問にみなさま

から多数の写真をお送りいただきました。どれも会員の秘蔵の写真のようで選ぶのに苦労いたしました。たいへ

ん有り難く思っております。グラビア写真はプラズマの微妙な色合いを巧く出せるでしょうか心配しております。

 微妙な色と言えば、いまごろの冬の夜、極北の空にオーロラの神秘な光が汚れない大地をそっと包んでいるの

でしょうか?だんだん地球の磁場が弱くなっているそうで500年もすれば、日本にいてオーロラが見られるそう

です。とても待てないので、この寒さの中、アラスカに出かけて一目、宇宙プラズマの神秘を見てみたいもので

すQ

 広大な宇宙のほとんどを占めるプラズマと核融合・エネルギーを学問の対象にしているのがプラズマ・核融合

学会です。発行する学会誌も、プラズマ理工学及び核融合科学にかかわる研究者・学生のみではなく、宇宙プラ

ズマやプラズマ応用技術等に関心を持つ人々に広く読んでもらえる学会誌にしたいと思っております。

                                     (編集委員長 嶋田隆一)

1圃

「ようこう」による太陽の軟X線画像

太陽コロナは、磁気ループと開いた磁場構造であるコロナルホー

 ルよりなっている。コロナループは、磁気リコネクションにより

頻繁に温度5百~3千万度に加熱されている。このほかに2~4百万度のプラズマが定常的に存在するが、その加熱メカニズムは、

 わかっていない。

「ようこう」により観測された1992年2月211日に発生した

巨大フレア

 このフレアは太陽の東縁に発生し、ループの高さ6万km、温度約2千万度、プラズマ密度は1017πi3程度ある。ループ頂上の上空にあ

 る磁気中性面(見えていない)における磁気リコネクションによ

 りプラズマ加熱が起きている。

          (東京大学理学部 常田佐久氏提供)

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おうし座領域の分子ガス雲

 4メートル短ミリ波望遠鏡で観測されたCOからの回転スペクトル

 の強度分布。白→赤→黄ゆ緑→青の順に電波強度が弱くなる。電 波強度の強い部分に集中している赤丸および青丸は形成途中の若 い星を示す。

人工オーロラプラズマ

 太陽(写真右側の熱陰極電子銃)と地球(写真左側の永久磁石を 内蔵したアルミ球)からなるミニ宇宙におけるオーロラ再現実験。

 写真に垂直な方向に磁界を印加して太陽磁場を模擬し、地球磁気

 圏にオーロラリングを形成させた。

(名古屋大学理学部 天体物理学研究室 水野亮氏提供) (長崎大学工学部 藤山寛氏提供)

r〆

プラズマ中で観測される渦構造

 直線型装置で電子サイクロトロン波によって生成されたプラズマを、装置の一端より磁力線に沿って眺めたもの。中心部か

 ら2本の腕がスパイラル状に出ている渦構造を示す。プラズマはE×Bドリフトによる同心状の流れ場を形成しているが、ス パイラル構造は静止して観測される。銀河系における渦構造との関連が考えられる。

(核融合科学研究所 開発研究系 田中雅慶氏提供)

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微粒子プラズマ中のクーロン結晶

 低温プラズマ中で成長した微粒子(直径約1.7μm)

 が負に帯電して強結合状態となり、さらに下方のプ

 ラズマ・シース境界近傍からプラズマ側へ向かって

 結晶成長が進行している様子をアルゴンイオンレー ザー光の散乱を利用して側方より撮影(各点の大き

 さと微粒子の大きさとは直接には関係しない)。〔本

 誌の解説P70参照〕

(京都工芸繊維大学工芸学部 林康明氏提供〉

シリコン微粒亭の渦運動

 シランガスを用いた平行平板直流グロー放電プラズマに発生する微粒子の二次元空間分布をHe咽eレーザーのミー(Mie)

 散乱光により観測したもので、カソでドシース近傍にリング 状の微粒子が見られる。低周波の変調磁界を印加すると負に

 帯電した微粒子がゆっくりと渦状に回転する。

(長崎大学工学部 藤山寛氏提供)

大気圧卜一ラス形状プラズマ

 プラズマガス自身の旋回気流による気流安定化方式を採用し

 た、大気圧トーラス形状プラズヤの気流の可視化実験。開放 シャッターによって300μsごとの高圧パルスによる発光が旋

 回ガス流とともに移動する様子が撮影された6写真はトーラ

 ス放電管の小断面であり、実際のプラズマは写真中央部に生 成される。

(東京工業大学工学部 沖野晃俊氏提供)

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直線型装置(TPD)における直流プラズマ

 (左写真)ガスターゲットダイバータ模擬実験におけるdetached

 plasmaの発生。高熱流プラズマと中性ガスの相互作用により plasma detachmentが生じ、終端板への熱流は急峻に減少する。

(名古屋大学工学部 高村研究室 江角直道氏提供)

(下写真)高密度プラズマと中性ガスとの接触による再結合プラ

ズマは光球状となり激しく発光する。

(核融合科学研究所 佐藤国憲グループ 難波慎一氏提供)

0、001Torr

0、05Torr

0.005Torr

0.08Torr

0.01Torr

0.5Torr

高速回転プラズマと中性気体との相互作用

 プラズマ銃により高速回転Arプラズマを生成 し、Arガスを満たした一様磁場中に射出する・

 高速回転するプラズマと背景ガスとの相互作

 用による不安定性の成長と構造形成をフレー ミングカメラを用いて下流から撮影。露光時 問α1μs.

(茨城大学工学部 池畑隆氏提供)

ヘリカル系プラズマの計算機シミュレーション

 LHDをはじめとするヘリカル系プラズマは本質的 に3次元的な配位であり、その性質を予測するた めの理論解析は軸対称系と比べてより一層複雑な

 ものとなる。図は計算機シミュレーションで得ら れた周辺磁場構造を示す。

(核融合科学研究所 理論・シミュレーション

      研究センター 林隆也氏提供)

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JT-60Uプラズマの着火から消滅まで

 プラズマ着火後(左上)・フイードバック制御によっで内寄せのリミ

 タ配位を保ちながら電流を増大させ(左下)、ダイバータ配位を形成 する(右上)。最後は、プラズマ断面を小さくしながらプラズマ電流

 を安定に消滅させる(右下)。

               (日本原子力研究所那珂研究所提供)

囮 圃  圃  團 圃 匝圃 匝

50mm

圏→Pe闘et Flight

Direction

圏團

ヘリオトロンEプラズマヘの重水素ペレット入射

 ヘリオトロンE装置のNBIプラズマヘ2個の重水素ペレッ トを入射した場合における、高速カメラで捕らえたアブレ

 ーション(溶発)過程での各時刻の発光像を示す。ペレッ トの軌道が曲がる様子が見られる。

(京都大学ヘリオトロン核融合研究センター提供)

レーザー爆縮燃料ペレットの動的特性

X線フレーミングカメラ(上段)および新開発の

超高速X線フレーム画像法(下段)を用いて得られた、燃料爆縮の様子:

上段 露出時間80ps,こま閥隔100ps 下段 露出時間 9ps,こま間隔10ps

   中心の暗い部分が燃料領域

(大阪大学レーザー核融合研究センター提供)

(a》 圃 (b)

  丁

薩(G》

(c1) (c,)

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耐スエリングオ}ステナイト鋤の開発

核融合炉では中性子による材料のスエリングが大きな問題となる。写真はステンレス鋼にリンとチタンとを複合添

 加し、リン化物の形成を促進させることによって耐スエリング性が一層改良される様子を示す、中性子照射後の損 傷を受けた材料の電子顕微鏡像(ボイドがスエリングの元となる)。

(九州大学応用力学研究所 吉田直亮氏提供)

%〆

_鍵

捗     帯

                     搬響1灘

lTERモデル・コイル用の超伝導導体

 ITER実機コイルの実証試験のために製

 作された中心ソレノイド・モデル・コ イル。超伝導線としてNb、Snを利用し、

 最大13Tの高磁場を発生させる。

(日本原子力研究所那珂研究所提供)

1TER概念図

 日欧米露の4極の協力により設計が進められているトカマク型 の国際熱核融合実験炉。DTプラズマの制御された自己点火と 長時問燃焼の実証および関連工学技術の開発を目標とする。

(日本原子力研究所那珂研究所提供)

ブランケット

〆採、

ピット壁

中心ソレノイド

ポロイダル磁場コイル

卜ロイダル磁場

コイル

クライオスタット

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真空容器

騨・

卜qイダル磁気コイノレ

プラズマ

露・

大型ヘリカル装置(LHD)と大型ヘリカル実験棟

炉心プラズ々へ外挿可能な高温プラズマの定常保持を超伝導コイ

 ルを用いて目指す。液体ヘリウム温度の冷却対象は総重量820tに

 及ぶ。順調に建設が進行しており、平成9年度中に実験が開始さ れる。

                  (核融合科学研究所提供)

中性粒子入射

加熱装置

ポロダイル磁気コイル

トカマク型臨界プラズマ試験装置JT-60U

核融合積(1.1x102=keV・m}3・s)、イオン温度(41keV)、

非誘導電流駆動(3・6MA〉等において世界最高のプラズマ

性能を達成している。

          (日本原子力研究所那珂研究所提供)

真空排気般備

騨}、〆

撚難灘繕

響聾

卿 撫癖

激光XII号爆縮実験用真空チ土ンバー内部

 直径1.8m、肉厚8cmのステンレス真空チェンバーの中心に 燃料ペレットを支持し、12ビームレーザーで照射する。

(大阪大学レーザー核融合研究センター提供)

激光)q号ガラスレーザー装置一

 本装置は昭和58年に完成し、当初の設計値を上まわる世界最高の

 性能が実証された。

   レーザー出カエネルギー:30kJ(1ns,1ρ5μm)

   ピークパワー:55TW   ビーム数:12

   レーザー出力口径:35cm

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.大電流負イオンビーム

 JT-60U装置のNBI用に開発された負イオン源から引き 出された負イオンビーム。216個(9列×24列〉の電極

 孔から引き出されているが、ビームの収束性が極めて

 良いため、数m下流においてもそれぞれの電極孔から のビームを識別することができる・

(日本原子力研究所那珂研究所 NBI加熱研究室

             奥村義和氏提供)

マイクロ放電の集団発生現象

 オゾン発生器は、ガラス電極と金属電極の問

 に交流電圧を印加して放電させる方式が主流 である。写真は、金属電極が負極性のときに、

 シャッタ速度20nsのCCDカメラが捕らえた マイクロ放電の集団発生現象である。1つの マイクロ放電の発したUV光が後続のマイグ ロ放電を誘発し、集団発生現象を起こす。

                そ         (㈱東芝 重電妓術研究所

            村田隆昭氏提供)

シート状プラズマ

 電子サイクロトロン共鳴法によって生成された、半導

 体などのプロセス用プラズマ源としてのシート状のア ルゴンプラズマ源。補助放電装置を有しており、プラ ズマパラメータを自由に制御できる。

(宇都宮大学工学部 西田靖氏提供)