データセンター間を接続するネットワークへ超大容 …ntt技術ジャーナル...

3
NTT技術ジャーナル 2017.6 65 NTTコミュニケーションズ(NTT Com)は,グロー バル展開しているデータセンターの間を接続するネット ワークに,大容量伝送かつ省スペース,省電力な400G 伝送装置を,2017年 4 月14日より順次導入しました. これによりNTT Comの基幹網は,従来の 2 倍以上と なる19 Tbit/s以上の伝送容量を 1 光ファイバ当りで確 保できることとなります.NTT Comは,IoTの本格的 普及などに伴い増加し続けるトラフィックの流通に対し て柔軟 ・ 迅速に対応するICT基盤を引き続き提供してい きます. なお,本装置に用いられている400G伝送技術は, NTTの研究成果であるデジタル信号処理技術を活用し たものです. ■背 景 近年の映像データの流通拡大やクラウド技術の進展に 伴う基幹光通信網におけるトラフィックの急激な増大に 対応するため,NTT Comは世界に先駆けて,デジタル コヒーレント光伝送技術を用いた 1 チャネル当り100G の光伝送システムを導入しました. 一方で,4K/8Kなどの高解像映像の流通拡大,IoTの 本格普及,ビッグデータ解析の進展などにより,今後ネッ トワークを流通するデータはさらに高速 ・ 大容量になる ことが想定されているため,NTT Comは400G伝送技術 の実用化に向けた検討を進めてきました. 光増幅 光増幅 (4)ディスアグリゲーションアーキテクチャ SDN コントローラ OTN(OTU4/OTU2/2e) 400GbE (将来対応予定) 100GbE, 10GbE など (3)新たなインタフェース 種別提供 新400G伝送装置 400G伝送 (16 QAMx2 ch) 光増幅 合分波 トランス ポンダ トランス ポンダ 合分波 クライアント インタフェース トランスポンダ内機能部 DSP E/O 0ch 光mod (1),(2) デジタル信号処理技術 DSP:Digital Signal Processor 図 1  新規導入装置の特長 データセンター間を接続するネットワークへ超大容量400ギガビット伝送装置を導入

Upload: others

Post on 13-Mar-2020

0 views

Category:

Documents


0 download

TRANSCRIPT

Page 1: データセンター間を接続するネットワークへ超大容 …NTT技術ジャーナル 2017.6 65 NTTコミュニケーションズ(NTT Com)は,グロー バル展開しているデータセンターの間を接続するネット

NTT技術ジャーナル 2017.6 65

NTTコミュニケーションズ(NTT Com)は,グローバル展開しているデータセンターの間を接続するネットワークに,大容量伝送かつ省スペース,省電力な400G伝送装置を,2017年 4 月14日より順次導入しました.

これによりNTT Comの基幹網は,従来の 2 倍以上となる19 Tbit/s以上の伝送容量を 1 光ファイバ当りで確保できることとなります.NTT Comは,IoTの本格的普及などに伴い増加し続けるトラフィックの流通に対して柔軟 ・ 迅速に対応するICT基盤を引き続き提供していきます.

な お, 本 装 置 に 用 い ら れ て い る400G伝 送 技 術 は,NTTの研究成果であるデジタル信号処理技術を活用したものです.

■背 景近年の映像データの流通拡大やクラウド技術の進展に

伴う基幹光通信網におけるトラフィックの急激な増大に対応するため,NTT Comは世界に先駆けて,デジタルコヒーレント光伝送技術を用いた 1 チャネル当り100Gの光伝送システムを導入しました.

一方で,4K/8Kなどの高解像映像の流通拡大,IoTの本格普及,ビッグデータ解析の進展などにより,今後ネットワークを流通するデータはさらに高速 ・ 大容量になることが想定されているため,NTT Comは400G伝送技術の実用化に向けた検討を進めてきました.

光増幅光増幅

(4)ディスアグリゲーションアーキテクチャSDN

コントローラ

OTN(OTU4/OTU2/2e)

400GbE(将来対応予定)

100GbE,10GbE など

(3)新たなインタフェース種別提供

新400G伝送装置

400G伝送(16 QAMx2 ch)

光増幅 合分波

……

トランスポンダ

トランスポンダ 合分波

クライアントインタフェース トランスポンダ内機能部

DSP E/O 0ch

光mod

(1),(2) デジタル信号処理技術

DSP:Digital Signal Processor

図 1  新規導入装置の特長

データセンター間を接続するネットワークへ超大容量400ギガビット伝送装置を導入

Page 2: データセンター間を接続するネットワークへ超大容 …NTT技術ジャーナル 2017.6 65 NTTコミュニケーションズ(NTT Com)は,グロー バル展開しているデータセンターの間を接続するネット

NTT技術ジャーナル 2017.666

■本装置の主な特長(図 1)(1) 世界最高水準の省電力 ・ 省スペースを実現(図 2)NTTの研究成果であるデジタル信号処理技術と16 nm

CMOS技術の相乗効果により,ビット当りの消費電力を約75%削減(従来装置比),またビット当りの装置占有スペースを約80%削減(従来装置比)しました.面積などにゆとりのないデータセンターにも迅速なサービス提供が可能となります.

(2) 従来の 2 倍の伝送容量を確保NTTは,400G光信号生成に関する研究において,光

の位相と振幅の両方に情報を重畳させる16 QAM変調信号とサブキャリア多重を実現しました.この成果が用いられている本装置では, 1 光ファイバ当り,従来システムの 2 倍以上の伝送容量を実現できます.

(3) 幅広いニーズにこたえるための新インタフェース(OTNインタフェース)提供

近年ホールセール事業者やデータセンター利用者を中心にニーズが増加しているOTNインタフェース(OTU2/OTU2e/OTU4)を,またNTTの研究成果であるOTUCn対応フレーミング技術を活用した400GbEインタフェースを,NTT Comの法人向けネットワークサービスのオプションとして,順次提供開始します.

(4) 柔軟かつ迅速な機能拡張が可能なディスアグリゲーションアーキテクチャ

従来の高機能なオールインワン型の専用装置ではなく,必要な機能部 ・ モジュールごとに再配置が可能となるディスアグリゲーションアーキテクチャとSDN技術を組み合わせることにより,NTT Comは柔軟 ・ 迅速に,新たなサービスや機能を提供することが可能となります.

◆問い合わせ先NTTコミュニケーションズ 広報室TEL 03-6700-4010E-mail hodo-cp ntt.comURL http://www.ntt.com/about-us/press-releases/news/

article/2017/0407.html

NTT情報ネットワーク総合研究所 企画部 広報担当TEL 0422-59-3663E-mail inlg-pr lab.ntt.co.jpURL http://www.ntt.co.jp/news2017/1704/170407a.html

(a) 消費電力(ビット当り) (b) 占有スペース(ビット当り)

1

0.25

1

0.2

既存装置 新規導入装置

既存装置 新規導入装置

75% 80%

図 2  新規導入装置による省電力・省スペース効果

Page 3: データセンター間を接続するネットワークへ超大容 …NTT技術ジャーナル 2017.6 65 NTTコミュニケーションズ(NTT Com)は,グロー バル展開しているデータセンターの間を接続するネット

NTT技術ジャーナル 2017.6 67

NTTネットワークサービスシステム研究所では,光伝送ネットワークをターゲットとして,光伝送システムおよびキーデバイスの研究開発に取り組んでいます.近年,スマートフォンや4K/8Kの普及等により通信トラフィック容量が増加していることから,通信を支える光伝送ネットワークにおいても高速大容量化が求められています.

今回NTTコミュニケーションズにて商用導入された400G光伝送装置には,NTT未来ねっと研究所と連携して開発したDSP(Digital Signal Processor)というデバイスが使用されています.このDSPデバイスは,光伝送装置内にてリアルタイムでデジタル信号処理を行うLSIであり,100 Gbit/s以上の光伝送においてキー技術を担っています.今回用いられているDSPデバイスでは,データセンターでの使用もターゲットとしていることから,低消費電力化が求められていました.そこで,100 Gbit/sを超える信号入出力に対応させるためのOTN

(Optical Transport Network)フレーミング技術を開発することでデバイス当りの容量拡大を行った一方,回路規模を削減することなどにより消費電力の大幅削減を実現しました.

DSPデバイスの研究開発は,NTTの他研究所やグループ会社等,多くの協力があって実現しています.これからも,日本および世界の光伝送に対する要望・動向にアンテナを高く張るとともに,安定性と信頼性を持つ光ネットワークを構築することで,安心・安全なコミュニケーションの実現に貢献したいです.

安定性と信頼性を持つ光ネットワークの実現をめざして

横田 昌宏NTTネットワークサービスシステム研究所ネットワーク伝送基盤プロジェクト 超高速光リンクDP

研究者紹介研究者紹介

いつでも,どこでもインターネットを介してさまざまなサービスを楽しむことができるようになった現在,ネットワーク上を流通するデータの量(トラフィック)は増加の一途をたどっています.そのような中,経済的かつ安定的なネットワークを迅速に構築し,お客さまへ提供することは通信事業会社の大事な使命の1つです.

この使命を果たすために,私たちは長距離で大容量の通信が可能な光伝送装置を用いたネットワークを構築しています.他の技術分野に負けず,光通信の分野においても技術の進展は著しく,その性能や運用性を向上させています.しかし,ただ最先端の装置を用いるだけでは装置の性能を100%引き出すことはできません.性能をフルに発揮させるために,その装置を用いてどのようなネットワークを構築するのか,また保守していくのか,といったさまざまな運用上のルールを決めることが私たちのミッションです.今回の装置は,従来の装置と比べて性能が飛躍的に向上しているだけでなく,新しいアーキテクチャを採用したこともあり,装置の導入は非常にチャレンジングな取り組みとなりました.幸い社内にはネットワーク構築や保守運用のスペシャリストが多数在籍しております.そういった方々ととことん議論を重ね,今回の装置は導入に至りました.

今後も最新技術の潮流を見極め,よりお客さまに安心してご利用いただけるネットワークづくりに貢献していきたいと考えています.

最新技術をどこよりも早く! 光通信基盤に革新を!

新宅 健吾NTTコミュニケーションズカスタマサービス部

担当者紹介担当者紹介