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SVD2
( )( )
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svd20l4_bwpin_x&y_firstref_l4bw3deg
bddycr
def_x=-240.985mm
10 m
Y
X
( 4 )
Z
(DSSD)
IC
SVD2 layer3
2
SVD
(A5083)70GPa0.33
+240/160GPa0.27
SVD SVD2
CDCBW FW
SVD
0.1mm/10kg0.2mm
0.16mm
( )
据付SVD構造体とBelle測定器との隙間は約2mmしかありません。また、SVDの据付時に自重以外の大きな力は与えないことの要求を実現するために、SVD構造体をソリに乗せて樋と呼ばれるレール上を滑らせて設置する方法を考案しました。SVD構造体が載るソリの厚さは、構造解析による計算により厚さ0.8mmのステンレス鋼材(SUS)を半円筒状に曲げてリブの補強をし、設置作業時のそりの最大変形量を0.2mm以下に抑えることが得られ、その板厚さと形状に決定しました。
Belle
SVD2
SVD ( ) SVD2
Belle
SVD2
計画そりにのせられたSVD構造体は、さらにガイト(樋)の上を移動します。SVDの最終据付位置では、0.5mm程度そりからSVD構造体が浮くようになっており、SVDからそりを抜き易くしています。SVD構造体、ビームパイプの順に上部で別々に固定し、SVDに加わる力を抑えた設置が実現できました。
KEKB
SVD
e− e+
B
B
950mm
200mm
950mm
SVD2
ノーベル賞を支える最先端機械工作技術 物質のなぞ-CP対称性の破れを探る シリコンバーテックス検出器(SVD)の開発
高エネルギー加速器研究機構 機械工学センター
設計コンセプト軽い材料、2分割で片持ちでの精密加工が達成できること、±20μmの精度が可能な構造体であることです。
達成すべき技術要件○ 電子・陽電子衝突点に一番近いことから、通過する粒子の散乱を避けるために、物質量を可能な限り減らす必要がある。○ ビームパイプを後から組み込むため、ビーム軸方向に2分割できる構造にする必要がある。○ SVDラダーを固定する面及びピン穴位置には高い精度±20 mが必要。○ SVDラダーを固定する面は、ラダーからの発熱を冷却する必要がある○ 直径20mmの円筒状の範囲にビームパイプ、測定器、冷却管、信号線が配置され、その他の空いたスペースのみが構造体として利用できる。
シリコンバーテックス検出器(SVD)衝突点にもっとも近いところにあってB中間子のこわれた位置を正確に測定します。その精度はおよそ0.08mmです。シリコン基板上に、集積回路の技術を使って、微細な検出素子や電極を配置した半導体検出器です。下の図のように素粒子の通過位置(小さい丸印)を測定し、それを線でつないで延長し、素粒子の発生点を求めます。
SVDの役割•粒子の通過位置を50μm程度の精度で測定•通過位置をつないで、粒子の軌跡を求める•複数の粒子の軌跡より親粒子の崩壊位置を±50μm以下の精度で測定
BファクトリーとBelle測定器
BファクトリーとBelle検出器
要素開発
据付
宇宙はビッグバンと呼ばれる大爆発で始まったといわれています。その時には「物質」と「反物質」が同じ量だけ作られたはずです。でも、地球上のものはすべて物質からできています。太陽も星も銀河も、すべて物質からできているようです。反物質はどこへ消えたのでしょうか。1973年小林誠先生と益川敏英先生は、粒子と反粒子の性質の違い――CP対称性の破れ――については、物質の最小単位であるクォークが6種類あれば、その理由が説明できることを理論的に証明しました。この理論の裏づけとして、B中間子と反B中間子という素粒子を用いてCP対称性の破れ、粒子の性質の違いを測定する実験を高エネルギー加速器研究機構は、行なってきました。この実験の計測装置部をBelle実験装置といいます。その中心の衝突点(電子陽電子を衝突させます)のもっとも近いところにあって、B中間子のこわれた位置を正確に測定する装置が、SVD(シリコンバーテックスディテクタ)です。2001年にBelle実験によってB中間子のCP対称性の破れは発見されました。
素粒子物理の研究者と機械工学センターが、SVD構造体の設計を1995年から開始しています。2003年までにSVD1シリーズ4台、SVD2を2台(それぞれ試作を含む)製作しました。この装置を完成するまでには、構造体の設計、構造体の製作・加工、ラダーの接着組み立て技術の確立、外部への作業指導、構造体へのラダー取り付け、ビームパイプの組み込み、Belle測定器への設置方法、及び設置作業等多くの解決すべき課題がありました。開発者のチームワークと総意工夫によりこれらの課題を解決し、成果を上げることができました。
軽くて強度が高い材料として、炭素繊維を用いたCFRP材を強度が必要な主要部分に使用し、精密加工を必要とする部分にはアルミ材を使用しました。強度上の検証には、有限要素法を用いて強度安全性を確認しています。
SVDラダーを載せる面の加工は、ダイアモンドエンドミルよって切込み10μmで仕上げを行いました。精密加工の目的からダイヤモンドを工具として使用しています。切削抵抗が小さくアルミの溶着が生じにくい加工ができるようになりました。 SVDラダーの構成を左上図
に示します。中央部にシリコン検出器(DSSD)が配置され、フレックスに接着剤により接合されます。さらに補強のためのサポートリブとリブを支えるブリッジ部品を接着します。ワイヤーボンディングによって検出器回路へ接続されるフレックスを用いたことがSVDラダーの特徴です。薄いフレックスを貼り付けるSVDラダーでは接着治具の構造の検討から始め、接着剤
の量はできるだけ少なくかつ気泡が混入しない技術を確立しました。この為に専用の接着治具を開発しました(右上図)。
アウターカバー
エンドリング ラダー
ラダーの構成図 ラダーの組立治具
ラダーの接着テスト
ラダーの完成品