ベストプラクティス double v...
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D O U B LE V I S I O Nデジタルツインを使用すれば,製品の動作性能を再現して,エンジニアリングの新しいレベルの理解を深めることができます.
現在では,ほとんどの製品開発チームがエンジニアリングシミュレーションを利用してイノベーションを推進し,自社製品を迅速かつコスト効率よく市場に投入しています.エンジニアは,低コストでリスク
フリーのデジタル環境で様々な力を仮想的に設計に加えることによって,性能の最適化,製品の市場投入期間の短縮,投資額の大幅な削減を図ることができます.これまで,シミュレーションは主にこうした製品開発分野で重要な役割を果たしてきました.しかし,デジタルツインを使用すれば,シミュレーションによってもたらされる価値を製品開発だけでなく,製品のライフサイクル全体で活かすことが可能となり,製品独自の稼
働環境における実際の動作条件下で製品を調査できるようになります.エンジニアは,デジタル環境で実際の製品システムのレプリカを作成することで,問題が発生する前に性能上およびメンテナンス上の潜在的な問題を予測し,対応策を講じることができます.また,こうしたデジタルツインによって収集したリアルタイムかつ現実的な知見を利用して,将来的な設計反復を迅速化し,製品を継続的に改善していくことも可能です.
Eric Bantegnie(ANSYS,ANSYSシステム事業部 担当副社長兼統括マネージャー),Sudhir Sharma
(ANSYS,ハイテク業界マーケティング 担当ディレクター)
ダブルビジョン
ベストプラクティス
4 ANSYS ADVANTAGE ISSUE 1 | 2017
「ANSYSは,デジタルツイン革命のリーダーとパートナーシップを
構築しています.」
© 2017 ANSYS, INC. ANSYS ADVANTAGE 5
デジタルツインとは?デジタルツインは,企業が特定の製品に関して所有しているすべてのデジタル情報と,稼働中の製品か
らライブで送られてくる運用データを組み合わせたものです.物理学に基づく知識とアナリティクスを融合させれば,デジタルツインの真の価値を明らかにする知見を得ることができます.
エンジニアは,こうした知見を利用することで,製品の動作不良モードの把握,予定外のダウンタイムの回避,製品の性能向上,次世代製品の開発に取り組むことができます.
デジタルツインでは,詳細な 3 次元物理モデルから次数低減モデル(ROM)までの幅広い精度のシミュレーションを行って,シミュレーション時間を短縮しつつ,製品性能上の重要な面を確認することができます.たとえば,発電所に設置されるガスタービンのデジタルツインは,エネルギー効率,排気ガス,タービンブレードの摩耗,または顧客と製品開発チームにとって特に重要な他の要素を強調するように設計することができます.
エンジニアは,デジタルツインを調査することで,性能問題の根本原因の特定,出力の改善,予知保全のスケジューリング,様々な制御方式の評価を行うことができるほか,製品性能の最適化と稼働コストの大幅な削減にほぼリアルタイムで取り組むことができます.これは,顧客が製品を買う時代から成果を買う時代へと変化し,製品開発者が性能リスクを負うようになるにつれて,ますます重要になっています.
GE Digital 社の Predix® アナリティクスプラットフォーム担当チーフアーキテクトである Marc-Thomas Schmidt 氏は次のように述べています.「デジタルツインの最もエキサイティングな側面は,風力タービンなどの個々の製品システムを調査し,1 つの製品だけを切り離して考えることができることにあります.ここで言うタービンとは,一般的なタービンではなく,特定の 1 つのタービンのことです.当社では,このタービンに影響を及ぼす天候パターン,タービンブレードの角度,タービンのエネルギー出力を調べて,この 1 台の機械を最適化することができます.現場にあるすべての当社製品システムを対象にこれを行った場合に,製品全体の性能に及ぶ影響がどれほどになるか想像してみてください.これは明らかに製品エンジニアリングの変革を意味します.」
IOT を活用デジタルツインは,シミュレーションソフトウェア,ハー
ドウェア,処理速度の向上などの様々な技術開発によって実現されてきました.この実現に最も大きく寄与したのが「モノのインターネット(IoT)」の出現です.IoT が私たちの日常生活に与える影響は十分に立証されており,コンシューマー向け機器の普及率が上昇しています.実際,2025 年にはインターネット接続機器の年間売り上げが 11 兆ドルに達すると予想されています.
しかし,工業部門では IoT の導入が遅れていました.IoTは,初めのうちは 1 台の装置の電源をオンオフするといったかなり単純な用途に利用されていただけでしたが,現在では,戦略的に大きな可能性を持つリアルタイムデータを収集できる IoT 機器の巨大な可能性をビジネス界が認識し始めています.
エンジニアは,現場で使用されている製品に比較的低コストで小型のセンサーを取り付けることによって,日々の性能データを大量に収集しています.エンジニアリングチームは,こうした新しい情報と,物理ベースのシミュレーションのパワーを融合させることで,性能問題の調査と対応,製品の保守・修理の必要性の予測を行うとともに,製品を日常の動作条件に合わせて最適化してバージョンアップすることができます.
D O U B L E V I S I O N (続き)
6 ANSYS ADVANTAGE ISSUE 1 | 2017
PTC 社の CTO である Andrew Timm 氏は次のように述べています.「ANSYS 社は,不具合をシミュレーションできるエキサイティングな機能を提供しています.シミュレーションは,アップフロントエンジニアリングと,実際に稼働している現場の両方で利用されていて,アップフロントエンジニアリングでは,デジタルツインにより,何かが壊れる前に応力レベルや壁の薄さに関する情報などが提供されます.もし何かが壊れた場合には,可能性のある解決策をシミュレーションモデルでテストしてから,この情報をフィードバックして問題を解決することができます.」
ビジョンを実現デジタルツインは主に,複雑な製品システムを扱う大規模なメーカーによって使用されていますが,技
術の継続的な進歩により,多くの企業の様々な製品にこのベストプラクティスが利用されるようになっています.
ANSYS は,デジタルツイン機能をすべての製品開発チームに提供するため,デジタルツイン革命のリーダーとパートナーシップを構築しています.たとえば,ANSYS は GE 社と緊密に協力して,業界をリードする当社のシミュレーションソフトウェアと,GE 社がインダストリアルデータおよびアナリティクス専用に設計したクラウドベースプラットフォーム「Predix」を統合しました.このコラボレーションは,日々の運用データと強力なアナリティクスを融合させ,戦略的な知見を確実に生み出しています.こうした知見は,エンジニアリングシミュレーションによって可視化し,すぐに利用することができます.
ANSYS は,リモートセンサーとシミュレーションソフトウェア間のゲートウェイとして動作する IoTプラットフォーム「ThingWorx®」を開発した PTC 社とも緊密に連携しています.PTC 社では,機械学習と拡張現実を利用し,IoT から収集された重要な知見を表示するとともに,このデータを ANSYS のソフトウェアとリンクさせています.
また,ANSYS のシミュレーションプラットフォームはカスタマイズ性に優れており,他の IoT プラットフォームや,市場にまだ出ていないプラットフォームとの統合にも対応しています.
ANSYS では,シミュレーションソフトウェアの今後のバージョンアップで他のコア技術とシームレスに統合できるよう機能強化し,デジタルツインの低コスト化,利便性のアップ,習得しやすさの向上を図り,製品開発チームを支援していきたいと考えています.デジタルツインが大きな可能性を秘めていることに疑問の余地はありません.この可能性を活かす機会をあらゆる ANSYS ユーザーに提供することがANSYS の使命であると信じています.
「エンジニアは,製品の 動作不良モードの把握,予定外のダウンタイムの回避, 製品の性能向上,次世代製品の開発に 取り組むことができます.」
Webページ:デジタルツインansys.com/digital-twin
© 2017 ANSYS, INC. ANSYS ADVANTAGE 7