シンクロトロン光を利用した...

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13:30–14:45 シンクロトロン光を利用した 粉末X線回折 井田 隆 1,2 1 名古屋工業大学 先進セラミックス研究センター 2 科学技術交流財団 シンクロトロン光センター 平成 26 年度シンクロトロン光利用者研究会 第 4 XRD グループ 201535() あいちシンクロトロン光センター 2F 会議室

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  • 13:30–14:45

    シンクロトロン光を利用した粉末X線回折

    井田隆 1,2 1 名古屋工業大学 先進セラミックス研究センター 2 科学技術交流財団 シンクロトロン光センター

    平成 26 年度シンクロトロン光利用者研究会第 4 回 XRD グループ2015年3月5日(木) あいちシンクロトロン光センター 2F 会議室

  • 内容  はじめに シンクロトロン光とは   利用施設,シンクロトロン光(放射光)とは,AichiSR,   放射光利用の効果,装置

     実験室回折計   Bragg-Brentano 型粉末回折計,畳み込み,逆畳み込み

     AichiSR BL5S2 粉末回折ビームライン   X線源の特徴,試料交換ロボット,温度制御,二種類の二次元検出器

     シンクロトロン光粉末回折の新展開 さいゆうすいてい

       背景,最尤推定構造解析

     まとめ

  • はじめに  研究の経歴

    1984~1999超高圧下における有機電荷移動錯体の分光研究,金属と無機ナノ粒子集合体の磁性・分光特性・イオン伝導性(東大理・分子研・兵庫県立大)

    1998~2001実験室粉末回折計の装置関数と畳み込みによる実測ピーク形状のモデル化

    2000~ 軌道放射光粉末回折の方法論研究

    2002~ 逆畳み込み計算による粉末回折装置収差の除去

    2003 粉末回折ピーク形状分析による結晶粒径分布評価(< 0.2 μm)

    2005~2010 検出器の数え落としの影響を受けた計数統計

    2009~ 粉末回折強度の統計解析による結晶粒径分布評価(> 数 μm)

    2011~ 粉末回折強度データ解析への最尤推定法の適用

  • SPring-8

    高エネルギー加速器研究機構 KEK

    PF

    Linimo 陶磁資料館南駅

    AichiSR

    4

    N

    A04

    D33

    B09B

    08B0

    6 B05

    B04B

    03

    A36 A

    35A33

    A34A32

    A31

    B01

    B02

    B10

    B11

    A30

    B07

    A23A22A12

    A08

    A05

    A06

    A03

    A15A17A16 A14 A13

    D29

    D34

    A24 A21 A18

    A09A10

    A02A01

    D31D30

    A29 A28

    D28

    D32

    A11

    A2A20

    A25A26A27

    A07

    D21D

    20 D19

    D22

    D27

    D3

    D01

    D02

    D03D04

    D05D06

    D07D08

    D09

    D10

    D11

    D12

    D13D

    14D

    1561

    DD17

    D18

    D23D

    24D

    25D

    26

    2D

    D1

    A

    A1

    A3

    Long Beamlines

    Medium-longBeamlines

    Medium-longBeamlines

    A19

    BL04B2BL05SSBL07IS

    BL08W

    BL08B2

    BL09XU

    BL10XU

    BL11XU

    BL12

    XU

    BL12

    B2

    BL13

    XU

    BL14

    B1

    BL14

    B2BL

    15XU

    BL16

    XUBL

    16B2

    BL17

    SU

    3BB2

    B1

    B4C1 C2

    0 20 40 60 80 100 m

    BL19

    LXU

    BL19

    B2

    BL20

    XU

    BL20

    B2

    BL21

    IN

    BL22XUBL22B2

    BL23SU BL24XU BL25SU BL26B1BL26B2

    BL27SUBL28INBL28B2 BL29B2

    BL29XU

    BL31IS

    BL32INBL32B2

    BL33IN

    BL33LEP

    BL34IN

    BL35XU

    BL36

    IN

    BL37

    XUBL

    38B1B

    L38B

    2BL3

    9XU

    BL40

    XUBL

    40B2B

    L41X

    U

    BL43IR

    BL44XU

    BL45XU BL44B2

    BL46XU

    BL47XU

    BL48IN

    BL01B1

    BL02B1

    BL02B2

    BL03 INBL04 B1

    B12

    B13

    B14

    B15

    B16

    B17

    B18

    B19

    B20

    B21

    B22

    B23

    B24

    B25

    B26

    B27

    B28

    C01C02C03C04C05C06C07C08C09 C11C12C13

    C14C15

    西播磨 SPring-8 8 GeV 周長 1436 m (1997)

    筑波 KEK-PF 2.5 GeV 周長 187 m (1982)

    瀬戸瀬戸 AichiSR, 1.2 GeV 周長周長 72 m (2012)

    岡崎 UV-SOR, 0.75 GeV 周長 53.2 m (1983)

    シンクロトロン光利用施設

  • 5

    シンクロトロン光(放射光)とは

    軌道放射光

    電子軌道!

    "

    相対論的な荷電粒子(電子や陽電子など)が磁場で曲げられるとき、その進行方向に放射される電磁波

    特徴:白色,高輝度,高指向性

    シンクロトロン軌道放射光軌道放射光ともよばれる

  • 実験ホール 

    線形加速器:50 MeV まで加速

    ブースターシンクロトロン:1.2 GeV まで加速

    蓄積リング:角丸多角形状に電子を周回させる

    BL5S2 粉末回折実験ハッチ超伝導偏向磁石(4箇所)1.2 GeV でも X 線が使える

    AichiSR

  • 7

    加速電圧 V 電子の速度 v (m/s) 電子の速度 v /光速 c

    40 kV 112,140,313 37.4% (実験室型X線)

    200 kV 208,450,037 69.5% (透過電顕)

    1.2 GV 299,792,431 99.999991% (AichiSR)

    2.5 GV 299,792,452 99.999998% (KEK-PF)

    8 GV 299,792,457 99.9999998% (SPring-8)

    相対論的荷電粒子(電子)?

    e = 1.60217657 ×10−19 C

    c = 299,792,458 m s-1

    m = 9.10938291×10−31 kg

    v = c 1− 1

    1+ eVmc2

    ⎛⎝⎜

    ⎞⎠⎟2 →eV≪mc2

    2eVm

  • 8

    放射光利用の効果  X線吸収分光 XAFS(←白色性)  ⇒ 特定元素の周囲の局所構造(触媒など)

     小角X線散乱 SAXS(←高指向性)  ⇒ 高分子,微粒子,多孔質,…

     X線蛍光分析 XRF(←偏光,高輝度)  ⇒ 微量元素分析,微小部分析

     粉末回折 PXRD(←大強度,高輝度)  ⇒ 微量試料,迅速測定,高分解能測定(?)

      *実験室回折計に比べて高精度なデータが得られるというわけではない。  *実験も解析もラク。XRD に不慣れな人に向いている。  *温度制御実験では迅速測定が有効

  • 放射光粉末回折測定装置

    1

    2

    3

    456

    MC

    VPx-ray

    SSCAVP

    ES AF

    SC

    ○分解能 △バックグラウンド × 測定時間

    IP camera (カメラ)

    PILATUS(半導体検出器)

    △分解能 × バックグラウンド ○測定時間

    マルチアナライザー(高分解能)型

    BL-4B2BL5S2

    位置敏感検出器(迅速測定)型

    x-ray

  • 10

    実験室系との比較

    項目 実験室系 放射光 (高分解能型)放射光

    (迅速測定型)

    測定時間 3 h ~ 12h 5 ~ 12 h 5 ~ 20 min

    試料の量 0.1 ~ 0.5 g0.1 ~ 0.5 g (*)

    5 ~ 20 mg (**)1 ~ 10 mg

    角度分解能 ~0.1º 0.01º~0.02º 0.01º~0.07º

    バックグラウンド ○ △ ×

    (*) 平板反射法, (**) キャピラリ透過法

  • 実験室型粉末回折計

    集中法光学系

    ローランド円

    ゴニオメータ円

  • 実験室型粉末回折計

    集中法光学系

    ローランド円ゴニオメータ円

  • 実験室型粉末回折計

    集中法光学系

    ローランド円ゴニオメータ円

    検出器を角度 2" 回転させるとき,連動させて試料を角度 " 回転させる。Bragg 条件を満たす回折ビームは,ゴニオメータ円に沿って移動する検出器の直前で焦点を結ぶので,ここに細いスリット(受光スリット)を設置すれば,試料位置で回折条件を満たす散乱ビームのみを効果的に抽出できる。

  • XRD ピーク形状の特徴:  

    積分強度       

    ピーク位置       

    幅      

    非対称性      

    尖り具合      

    要因:

    原子位置,占有率,熱振動,相組成,配向性

    単位胞の寸法,結晶学的な対称性

    結晶子の平均サイズ

    結晶子のサイズ分布

    構造欠陥,歪み,転位,積層不整

    装置収差 決定的に重要!

    粉末回折ピーク形状の特徴とその要因

  • X線源(線焦点)

    入射ビーム側ソーラースリット

    発散スリット散乱スリット

    試料 回折ビーム側ソーラースリット

    受光スリット

    ゴニオメーター軸

    集中法型(Bragg-Brentano)粉末回折計

      集中法型粉末回折計の装置関数を求める試み  1.X線源の分光特性     (特性X線のスペクトルに由来)  2.軸発散収差       (垂直方向へのビーム発散に由来)  3.平板試料収差 (水平方向へのビーム発散とローランド条件からのずれに由来)  4.試料透過性効果    (X線が試料の内部に侵入することによる) が系統誤差を与える主な要因として指摘されていた。    実測ピーク形状が個々の装置収差の多重の畳み込みで表現されるという発想

    分光特性の装置関数,平板試料収差の装置関数,試料透過性の装置関数は解くのが簡単。ソーラースリットによる制限を受けた軸発散収差の装置関数は解かれていなかった...

    実験室型粉末回折計の装置関数

  •   軸発散収差の装置関数(ビームの軸方向へのずれの2次まで展開):

      

    wA (x;ΦA ,2θ ) =

    4ΦA2 −

    (1+ ut 2 ) 3t + 1− u(1− t 2 )( )2 1+ t 1− u (1− t 2 )( )

    + 1− 1+ t2

    2u

    ⎝ ⎜

    ⎠ ⎟ ln1+ 1− u(1− t 2 )

    −u (1+ t)

    ⎢ ⎢

    ⎥ ⎥

    for −ΦA2

    t≤ x ≤ −ΦA

    2 (1− t 2 )4 t

    ,

    4ΦA2

    −(1− u) 3 + t 1− u(1− t 2 )( )2 t + 1− u (1− t 2 )( )

    + ut + 2 −u(1− t 2 ) + ln 1+ 1− u (1− t2 )

    −u (1+ t )

    ⎢ ⎢

    +1+ t2

    2u ln

    (1− t) 1+ 1− u (1− t 2 )( )−u (1+ t )2

    ⎥ ⎥ for −

    ΦA2 (1− t 2 )4t

    < x < 0,

    4ΦA2

    −(1− u) 3 + t 1− u(1− t 2 )( )2 t + 1− u (1− t 2 )( )

    + 1+ 1+ t2

    2u

    ⎝ ⎜

    ⎠ ⎟ ln1+ 1− u(1− t 2 )

    u (1+ t)

    ⎢ ⎢

    ⎥ ⎥

    for 0 ≤ x ≤ΦA2 t,

    0 elsewhere

    ⎪ ⎪ ⎪ ⎪ ⎪ ⎪ ⎪ ⎪ ⎪ ⎪ ⎪

    ⎪ ⎪ ⎪ ⎪ ⎪ ⎪ ⎪ ⎪ ⎪ ⎪ ⎪

     ただし,

    x はピーク位置からのずれ,

    ΦAは軸発散の半値全幅,

    2θは回折角,

    t ≡ tanθ ,

    u ≡ xΦ2t

    軸発散収差の装置関数(実験室型回折計)

  •   軸発散収差の装置関数の近似形式:

    ��

    wA (x;!A ,2" ) #2

    $%Aexp t & 1

    t'�(�)�

    *�+�,�x% A

    '�

    (�)�

    *�

    +�,�K0 t +

    1t

    '�(�)�

    *�+�,�x% A

    '�

    (�)�

    *�

    +�,�

    ただし,

    ��

    !Aは軸発散の半値全幅,

    ��

    2"は回折角,

    ��

    t - tan" ,

    ��

    % A -!A2

    4 ln 2,

    ��

    K0(x )は第2種変形ベッセル関数

      分光特性の装置関数:

    ��

    wX (x;2! ) ="

    2tan!f "x2tan!#�$�%�

    &�'�(�

    ただし,

    ��

    " はピーク波長,

    ��

    f ()")は分光強度分布

      平板試料収差の装置関数:

    ��

    wF (x;!F ,2" ) =12# F

    $ x# F

    %�

    &�'�

    (�

    )�*�$12

    for $# F < x < 0,

    0 elsewhere

    +�

    ,�-�

    .�-�

    ただし,

    ��

    !Fは面内発散の幅,

    ��

    # F /!F2

    2 tan"

      試料透過性収差の装置関数:

    ��

    wT (x;µ ,R,T ,2! ) =1" Texp x

    " T

    #�

    $�%�

    &�

    '�(� for )xT < x < 0,

    0 elsewhere

    *�

    +�,�

    -�,�

    ただし,

    ��

    µ と

    ��

    T は試料の線吸収係数と厚さ,

    ��

    R はゴニオメータ半径,

    ��

    " T .sin 2!2µR

    ,

    ��

    xT .2T cos!

    R

      実測のピーク形状:

    ��

    Pobs (x ) = P0 (x )* w1 (x)*!* wN (x)

    ただし,

    ��

    P0 (x )は本来のピーク形状,

    ��

    w j (x)は装置関数,

    ��

    f (x )* g(x) は

    畳み込み

    ��

    f (x )* g(x) ! f (x " y)g(y )dy"#

    #

    $

    どのように計算するかが大問題

    畳み込みピーク形状モデルの現実的な問題

  •   求積法(数値積分)による  畳み込み計算:関数

    ��

    f (x ) と

    ��

    g(x ) が

    ��

    x = 0 にピークを持つ関数のとき,畳み込み:

    ��

    f (x )* g(x) ! f (x " y)g(y )dy"#

    #

    $

    を数値積分で計算してもうまくいかない。

    畳み込みを評価するための効率の良い計算法

    被積分関数

    ��

    f (x ! y )g(y ) は

    ��

    y = 0 と

    ��

    y = xでピークを持つ。

    ��

    g(y ) が装置関数のとき,

    ��

    y = 0 では特異性を持つことも多い。

    関数

    ��

    f (x ) と

    ��

    g(x ) の原始関数の近似形

    ��

    F(x ) ! f (x)dx" ,

    ��

    G(x ) ! g(x)dx"がわかっているとき,これを利用できる。

    変数変換:

    ��

    ! " F(x )#F(0)x

    Gx F(x)#F (x # y )( )

    F (x)#F (0)$�

    %�&�

    '�

    (�)�

    ��

    y : #* + *! : , + -

    とする置換積分。厳密に

    ��

    f (x )* g(x) = f (x # y)g(y)d!

    F ' (x # y)G'x F(x)#F(x # y)( )

    F(x)#F (0)$�

    %�&�

    '�

    (�)�,

    -

    .

    である。

    被積分関数が1に近い滑らかな関数になるので,求積法により高精度に積分を評価できる。

    畳み込みピーク形状の高効率計算アルゴリズム

  • * = ?図解:

    0

    peak

    f(x)

    x 0

    singular

    g(x)

    x

    0y

    peak singular

    f(x-y) g(y)

    x

    変数変換

    -1

    0

    0xy

    -1 0

    f(x-y) g(y) dy/d!

    !

    粗い刻みの求積法でも良い結果が得られ,刻みを細かくすれば厳密解に近付く。原始関数の粗い近似を使っても効果があり,精密な近似を使うほど効果的。

    畳み込みピーク形状の高効率計算アルゴリズム

  • その効果のほどは...(1)畳み込みにより表現されるあるピーク形状関数を3項の数値積分で評価した結果:

    0.250.200.150.100.050.00

    -10 -5 0 5 10x

    !L = 1!F = 5 exact solution Howard (1982)

    0.250.200.150.100.050.00

    -10 -5 0 5 10x

    !L = 1!F = 5 exact solution Howard (1982)

    van Laar & Yelon (1984)

    0.250.200.150.100.050.00

    -10 -5 0 5 10x

    !L = 1!F = 5 exact solution Howard (1982)

    van Laar & Yelon (1984) Finger et al. (1994)

    0.250.200.150.100.050.00

    -10 -5 0 5 10x

    !L = 1!F = 5 exact solution Howard (1982)

    van Laar & Yelon (1984) Finger et al. (1994) Ida (1998)

    たった3項の数値積分で,厳密解と見た目で区別がつかないくらい正確な結果が得られる。余計な波打ちが生じないので,Newton 法を応用した最適化計算の収束性も良好である。

    畳み込みピーク形状の高効率計算アルゴリズム

  •  その効果のほどは...(2)

    1200080004000

    0

    21.521.02 Θ ( º )

    0

    8000

    4000

    00

    µ-1 = 0.34 mm

    µ-1 = 1.19 mm

    LaB6/starch 100

    2000

    1000

    0

    88.488.087.62 Θ ( º )

    01200

    800

    400

    00

    321

    µ-1 = 1.19 mm

    µ-1 = 0.34 mm

    LaB6 をデンプンで希釈した試料;実測ピーク形状が計算ピーク形状とぴったり一致した。正しい積分強度と本来のピーク位置を求めるのにも有効であることがわかる。

    畳み込みピーク形状の高効率計算アルゴリズム

    ここで示した計算曲線の形状は可変ではなく,LaB6/デンプン混合比と粉末の充填率,装置関数から先験的 a priori な計算で予想したもの。

  • ?ある画像にフィルターを畳込んだもの

    Image created byconvolution with

    a filter

    The Birth of Venus(Uffizi musium)Botticelli (Sandro Filipepi, called il) (Florence 1445-1510):

    逆畳み込み(デコンボリューション)deconvolution

    畳み込み→逆畳み込み

  • 実験室粉末回折データの逆畳み込み処理 (Ida, 2002)

    -8000

    -6000

    -4000

    -2000

    0

    2000

    4000

    21.621.220.8

    -1000

    -500

    0

    500

    88.588.087.587.0

    -1000

    -500

    0

    500

    143.0142.0141.0

    511321100

    -10000

    -5000

    0

    5000

    140120100806040202Θ (º)

    100110

    111 200 210 211220 300 310 311 222 320 321 400 410 411 331 420 421 332 422 500 510 511

    LaB6 実験室粉末回折生データ

    逆畳み込み処理後データ

  • AichiSR BL5S2 粉末回折 ビームライン

    SPring-8 BL19B2 産業利用 ビームライン

    発光源 超伝導偏向磁石 偏向磁石

    光子エネルギー 5 ~ 23 keV 5 ~ 72 keV

    光子数 1.4!1011 photons / s

    @ 12 keV (1 ") ~109 photons / s (*)

    分解能 (E / ΔE) 7,000 @ 12 keV ~10,000 (*)

    ビームサイズ幅 0.35 mm 高さ 0.21 mm

    幅 2.5 mm高さ 0.14 mm

    (*) http://www.spring8.or.jp/wkg/BL19B2

    BL5S2 ビームラインの 光源(1)特性

    http://www.spring8.or.jp/wkg/BL19B2

  • BL5S2 ビームラインの 光源(2)入射ビームの断面強度プロファイル

    -2

    -1

    0

    1

    2

    Y (m

    m)

    -2 -1 0 1 2X (mm)

    -2

    -1

    0

    1

    2

    Y (m

    m)

    -2 -1 0 1 2X (mm)

    -2

    -1

    0

    1

    2

    Y (m

    m)

    Y (m

    m)

    Y

    -2 -1 0 1 2X (mm)X (mm)X

    -2

    -1

    0

    1

    2

    Y (m

    m)

    Y (m

    m)

    Y

    -2 -1 0 1 2X (mm)X (mm)X

    AichiSR BL5S2 SPring-8 BL19B2

  • 試料まわり(1)試料ステージ

    キャピリ試料用5軸ステージ自動調整可能連続回転測定可能

    巨大試料用汎用架台100 mm 程度の試料設置可能

    !今後の課題:揺動機構, 位置合わせ機構の整備

    陶磁器片設置例

  • 試料まわり(2)キャピラリ試料交換/調整ロボット

     AichiSR BL5S2 キャピラリ試料交換/調整ロボット動画(8倍速,2分)

  • 試料まわり(3)高温/低温窒素ガス吹き付け装置

    高温ガス吹き付けノズル室温 ~ 800 K

    低温ガス吹き付けノズル140 K ~ 室温

  • X線検出器(1)湾曲 IP カメラ

    IP フィルム

    300

    200

    100

    0Y

    (mm

    )150100500

    X (mm)

    7060

    5040

    3020

    100

    2! (º

    )

    10 mm 幅,12 mm ステップ 最大 15 試料の連続自動測定 12 試料の測定例

  • 300

    200

    100

    0Y

    (mm

    )

    150100500X (mm)

    7060

    5040

    3020

    100

    2Θ (º

    )

    X線検出器(1)湾曲 IP カメラ1500010000

    50000

    60402002θ (º)400003000020000100000

    60402002θ (º)20000

    100000

    60402002θ (º)40000

    200000

    60402002θ (º)60000

    4000020000

    06040200

    2θ (º)

    解析ソフトウェア

     フィルム取付角度補正機能

  • 300

    200

    100

    0Y

    (mm

    )

    150100500X (mm)

    7060

    5040

    3020

    100

    2! (º

    )

    X線検出器(1)湾曲 IP カメラ

    解析ソフトウェア

     任意スリット幅対応

    390385380375

    70605040302010

    252015105

    70605040302010

  • X線検出器(1)湾曲 IP カメラAichiSR BL5S2 SPring-8 BL19B2

    カメラ半径 286.5 mm 286.5 mm

    カメラスリット幅 10 ~ 30 mm 可変 10 mm 固定

    強度積算幅 9 mm~ 29 mm 可変 2.5 mm 固定

    像角度/歪み補正 可能 対応しない

    強度積算方向 デバイ環状 直線状

    軸発散収差 無視しうる 無視できない

    統計誤差推定 可能 対応しない

  • AichiSR BL5S2 SPring-8 BL19B2

    カメラ半径 286.5 mm 286.5 mm

    カメラスリット幅 10 ~ 30 mm 可変 10 mm 固定

    強度積算幅 9 mm~ 29 mm 可変 2.5 mm 固定

    像角度/歪み補正 可能 対応しない

    強度積算方向 デバイ環状 直線状

    軸発散収差補正 不要 必要

    統計誤差推定 可能 対応しない

    X線検出器(1)湾曲 IP カメラ

    操作が容易,確実

    精密な解析の容易なきれいなデータ

    信頼性が高い

    明るさ 4~12 倍

  • 実験と解析  PILATUS 強度データのマッピング

    積算強度

    積算ピクセル数

    6000000

    4000000

    2000000

    0

    Sum

    of I

    nten

    sitie

    s

    2826242θ (º)

    300

    200

    100

    0

    Num

    ber o

    f pix

    els

    2826242θ (º)

    150100

    500

    Y (p

    ixel

    )

    4003002001000X (pixel)

    PILATUS100K, BL5S2@AichiSR

     487×195 pixel2, 0.172 mm/pixelX線波長 λ = 1.00058 Å

    カメラ中心距離 R = 284.19 mm

    (カメラ中心位置での分解能 0.035º)

    カメラ中心角度 2Θ = 25.4º

    試料 Quartz (

  • X線検出器(2)ピクセル型平面半導体検出器 PILATUS

    PILATUS

  • X線検出器(2)ピクセル型平面半導体検出器 PILATUS

    解析ソフトウェア

     不良ピクセル排除

     検出器設置角度誤差推定

     検出器距離推定

     カメラ長/斜入射補正

     偏光補正(整備予定)

     デバイ環に沿った強度積算

     ステップ走査データ自動処理150

    150

    0

    0Y (pixel)

    400

    400

    300

    300

    200

    200

    100

    100

    00X

    (pix

    el)

    150

    150

    0

    0Y (pixel)

    400

    400

    300

    300

    200

    200

    100

    100

    00X

    (pix

    el)

    40000

    20000

    036343230282624

    2! (º)

    110 102111 200 201

    112

    003202103

    2Θ: 25.4º 2Θ: 31.8º

    石英粉末試料,回折画像とピクセ

    ル平均粉末回折強度図形。画像中

    赤点は不良ピクセル位置

  • X線検出器(2)ピクセル型平面半導体検出器 PILATUS

    2Θ: 25.4º 2Θ: 31.8º

    150

    150

    0

    0Y (pixel)

    400

    400

    300

    300

    200

    200

    100

    100

    00X

    (pix

    el)

    150

    150

    0

    0Y (pixel)

    400

    400

    300

    300

    200

    200

    100

    100

    00X

    (pix

    el)

    2Θ: 25.4º 2Θ: 31.8º

    40000

    20000

    036343230282624

    2! (º)

    110 102111 200 201

    112

    003202103

    10000

    029.329.229.129.0

    2! (º)

    2! = 25.4º 2! = 31.8º 201

    解析ソフトウェア

     不良ピクセル排除

     検出器設置角度誤差推定

     検出器距離推定

     カメラ長/斜入射補正

     偏光補正(整備予定)

     デバイ環に沿った強度積算

     ステップ走査データ自動処理

  • 新展開 背景 測定誤差とデータ解析

     粉末回折測定の系統誤差   → 概ね解決されてきた。 粉末回折測定の統計誤差   → 大強度,高分解能,微量試料測定ほど誤差評価が困難

     最小二乗法の粉末回折データ解析への応用 [Rietveld, 1969]:  放射光粉末回折データでは構造パラメータの誤差が過小評価される傾向 さいゆう  最尤推定法の粉末回折データ解析への応用 [Ida & Izumi, 2011]:  統計誤差モデルが未知パラメータを含んでも  観測されたデータから統計モデルを最適化できる。  構造パラメータの誤差を正しく推定しうる。

      誤差モデルが正しくなければ無意味かもしれない。

     二次元検出器を使えば観測強度の統計的な変動を実測しうる。  → 最小二乗法でも最尤構造推定が可能?

  • 実験と解析  PILATUS 強度データのマッピング

    積算強度

    積算ピクセル数

    6000000

    4000000

    2000000

    0

    Sum

    of I

    nten

    sitie

    s

    2826242θ (º)

    300

    200

    100

    0

    Num

    ber o

    f pix

    els

    2826242θ (º)

    150100

    500

    Y (p

    ixel

    )

    4003002001000X (pixel)

    PILATUS100K, BL5S2@AichiSR

     487×195 pixel2, 0.172 mm/pixelX線波長 λ = 1.00058 Å

    カメラ中心距離 R = 284.19 mm

    (カメラ中心位置での分解能 0.035º)

    カメラ中心角度 2Θ = 25.4º

    試料 Quartz (

  • 実験と解析  ピクセル平均強度の標準偏差の算出

    平均強度

    平均強度の標準偏差

    25000

    20000

    15000

    10000

    5000

    0

    Aver

    age

    inte

    nsity

    26.025.825.625.425.225.02θ (º)

    300

    200

    100

    0

    Stan

    dard

    dev

    iatio

    n

    26.025.825.625.425.225.02θ (º)

  • 実験と解析  ピクセル平均強度の標準偏差の算出

    平均強度

    平均強度の標準偏差

    25000

    20000

    15000

    10000

    5000

    0

    Aver

    age

    inte

    nsity

    26.025.825.625.425.225.02θ (º)

    300

    200

    100

    0

    Stan

    dard

    dev

    iatio

    n

    26.025.825.625.425.225.02θ (º)

    微分の絶対値

    400000

    300000

    200000

    100000

    026.025.825.625.425.225.0

    2θ (º)

    ΔIΔ2θ

    Δ2θ ~ 0.001º 程度の誤差が伝播した値に相当する。ピクセルサイズは 0.035º 相当だが,平均化処理により実効的な誤差が抑えられているとみなせる。

  • 実験と解析  誤差の逆数の重みつきをつけた最小二乗法によるフィッティング

    RIETAN-FP (Izumi & Momma, 2007)

    プロファイル:対称擬 Voigt 関数

    ピークシフト:定数シフトピーク幅:Caglioti et al. (1958)バックグラウンド:11 次多項式石英, trigonal, P3121 (S.G. #152) 原子散乱因子:中性原子分散補正:Cromer & Liberman (1981)等方性原子変位因子

    誤差 実験値 平均強度平方根RwP (%) 0.86 2.81

    RP (%) 2.93 1.88

    RB (%) 3.61 3.14

    S 2.98 1.08

    a (Å) 4.9307(4) 4.93026(9)

    c (Å) 5.4236(2) 5.42342(6)

    40000

    20000

    0Intensity

    363432302826242θ (º)

    ← 有効数字少なめ

  • まとめ  シンクロトロン光を使った粉末X線回折測定は不慣れなユーザーに向いている。

    二次元X線検出器を用いた強度マッピングにより ほぼ左右対称なピーク形状が得られる。 平均観測強度の誤差を推定できる。

    最小二乗法に基づく「リートベルト解析」は多くの場合最尤構造推定(さいゆうこうぞうすいてい;最ももっともらしい構造の推定)にはなっていないが,二次元粉末回折図形データの統計処理により算出された誤差を用いれば,リートベルト解析でも最尤構造推定が可能になる。

    導出される格子寸法の有効数字が異常に多くなる状況を回避しうる。

  • 補足(1)湾曲 IP カメラ全画面回折像測定

    300

    300

    200

    200

    100

    100

    0

    0 Y (mm)10

    050

    0-5

    0X

    (mm

    )

    10000

    5000

    0706050403020100

    2! (º)

    Sericite

    明るさ 80 倍

    AichiSR BL5S2

    SPring-8 BL19B2

    corridorupward

    0.35 mm0.21 mm

    upward corridor

    2.5 mm0.14 mm