イノベーション破壊と共鳴 -...

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2007/09/19 Copyright © 2007 Prof. YAMAGUCHI Eiichi, Doshisha University 1 200 2007/09/19 15H15 7/09/19 15H15- 17H00 17H00 筑波大学講演会 筑波大学講演会 筑波大学数理物質科学研究科 筑波大学数理物質科学研究科 山口栄一 山口栄一 YAMAGUCHI Eiichi YAMAGUCHI Eiichi URL: URL: www.doshisha www.doshisha- u.jp/~ey u.jp/~ey/ 同志社大学大学院 同志社大学大学院 Doshisha University Doshisha University イノベーション 破壊と共鳴 物理学者は社会貢献できるのか 参考図書 1. 「イノベーション 破壊と共鳴」 NTT出版 200632. JR福知山線事故の本質ー企業の社会的責任を科学から捉える」 NTT出版 20075Copyright © 2007 Prof. YAMAGUCHI Eiichi, Doshisha University 1 0 0.1 0.2 0.3 0.4 1975 1980 1985 1990 1995 2000 2005 学術論文寄与度=(学術論文数/全学術論文数) / % 暦年 NTT 日立 東芝 NEC 富士通 三菱電機 松下電器 ソニー サムスン キヤノン 企業の学術論文寄与度の経年変化 (5-6)

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    2002007/09/19 15H157/09/19 15H15--17H0017H00筑波大学講演会筑波大学講演会

    於於 筑波大学数理物質科学研究科筑波大学数理物質科学研究科

    山口栄一山口栄一YAMAGUCHI EiichiYAMAGUCHI Eiichi

    URL: URL: www.doshishawww.doshisha--u.jp/~eyu.jp/~ey//

    同志社大学大学院同志社大学大学院Doshisha UniversityDoshisha University

    イノベーション破壊と共鳴- 物理学者は社会貢献できるのか

    参考図書

    1. 「イノベーション破壊と共鳴」 NTT出版 2006年3月

    2. 「JR福知山線事故の本質ー企業の社会的責任を科学から捉える」NTT出版 2007年5月

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    0

    0.1

    0.2

    0.3

    0.4

    1975 1980 1985 1990 1995 2000 2005

    学術論文寄与度=(学術論文数/全学術論文数) / %

    暦年

    NTT

    日立

    東芝

    NEC

    富士通

    三菱電機

    松下電器

    ソニー

    サムスン

    キヤノン

    企業の学術論文寄与度の経年変化 (図5-6)

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    目 次

    1. Christensenの破壊的イノベーション2. パラダイム破壊型イノベーション3. ケーススタディ -青色発光ダイオード4. 21世紀の産業モデル5. 科学的精神の欠落がもたらしたもの

    -JR福知山線事故を教訓にして

    1. Christensenの破壊的イノベーション2. パラダイム破壊型イノベーション3. ケーススタディ -青色発光ダイオード4. 21世紀の産業モデル5. 科学的精神の欠落がもたらしたもの

    -JR福知山線事故を教訓にして

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    ハード・ディスク

    「イノベーションのジレンマ」より

    破壊的イノベーション

    Christensenの破壊的イノベーション

    8インチ 5.25インチ

    3.5インチ

    持続的イノベーション

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    「イノベーションのジレンマ」より

    持続的イノベーションによる進歩

    持続的イノベーションによる進歩

    市場のハイエンドで求められる性能

    市場のローエンドで求められる性能

    時間

    製品の性能

    破壊的イノベーション

    Christensenの破壊的イノベーション

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    持続的 破壊的

    -小型ディスク・ドライブ(大型ディスク・ドライブ)

    -薄膜ヘッド,MRヘッド(フェライト・ヘッド)

    性能持続型 性能破壊型

    -トランジスタ(真空管) ?

    イノベーションの1次元構造

    “Transistors were disruptive technologies relative to vacuum tubes. …”Introduction, P. xvii, The innovator’s dilemma.

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    -トランジスタ(真空管)

    -MOSFET(接合型トランジスタ)

    -HEMT(Si-MOSFET)

    -青色発光デバイス(他のすべての発光デバイス)

    -トランジスタ(真空管)

    パラダイム破壊型

    パラダイム持続型

    持続的 破壊的

    -小型ディスク・ドライブ(大型ディスク・ドライブ)

    -薄膜ヘッド,MRヘッド(フェライト・ヘッド)

    性能持続型 性能破壊型

    パラダイム破壊型イノベーション

    定義により存在しない

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    目 次

    1. Christensenの破壊的イノベーション2. パラダイム破壊型イノベーション3. ケーススタディ -青色発光ダイオード4. 21世紀の産業モデル5. 科学的精神の欠落がもたらしたもの

    -JR福知山線事故を教訓にして

    1. Christensenの破壊的イノベーション2. パラダイム破壊型イノベーション3. ケーススタディ -青色発光ダイオード4. 21世紀の産業モデル5. 科学的精神の欠落がもたらしたもの

    -JR福知山線事故を教訓にして

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    Question 1

    科学とは何ですか。

    研究とは何ですか。

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    研究とは何か 開発とは何か

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    Question 2

    技術とは何ですか。

    開発とは何ですか。

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    研究とは何か 開発とは何か

    研究とは何か

    ⇒ 知の創造

    ⇒ 科学のすべて

    開発とは何か⇒ 知の具現化 (価値の創造)

    ⇒ 技術の大部分

    , 技術の一部

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    Question 3

    イノベーションとは何ですか。

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    Joseph A. Schumpeter (1883-1950)

    「いくら郵便馬車を連ねても、それによって決して鉄道を得ることはできない」

    イノベーションとは、経済活動の中で生産手段や資源やそして労働力などを今までとは異なる仕方で「新結合」すること

    (1) 未知の新商品や新品質の開発(2) 未知の生産方法の開発(3) 新市場の開拓(4) ものの新しい供給源の獲得(5) 新組織の実現

    イノベーションとは何か

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    技術イノベーション

    経営イノベーション

    イノベーションとは何か?

    アイステシス・イノベーションAisthesis innovation

    イノベーション

    イノベーションとは、経済的・社会的価値を生み出すあらゆる改革行為のこと。

    = 技術革新

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    土壌

    知の創造 (研究)

    知の具現化(開発)

    イノベーション・ダイヤグラム (ID)

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    土壌

    磁気テープ

    フロッピー・ディスク

    ハード・ディスク

    -Customer driven

    -De-fact driven

    亜鉛の精錬技術

    加藤・武井:フェライトの発見 / 1930

    テクノロジー・イノベーションよりも、

    ビジネス・イノベーションと

    アイステシス・イノベーション

    によって生死が決まる。死んだ技術

    イノベーション・ダイヤグラム (ID)

    知の創造 (研究)

    知の具現化(開発)

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    目 次

    1. Christensenの破壊的イノベーション2. パラダイム破壊型イノベーション3. ケーススタディ -青色発光ダイオード4. 21世紀の産業モデル5. 科学的精神の欠落がもたらしたもの

    -JR福知山線事故を教訓にして

    1. Christensenの破壊的イノベーション2. パラダイム破壊型イノベーション3. ケーススタディ -青色発光ダイオード4. 21世紀の産業モデル5. 科学的精神の欠落がもたらしたもの

    -JR福知山線事故を教訓にして

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    高すぎる?安すぎる? 青色LED発明の対価

    1-1) 青色発光ダイオードの発明者、中村修二氏が、かつて勤務していた日亜化学工業から得るべき発明の対価は、604億3006万円。

    1-2) 日亜化学は、中村氏に請求額200億円を支払え。

    1. 第一審(東京地裁)判決 ( 2004年1月30日 )

    2. 第二審(東京高裁)和解 ( 2005年1月11日 )2-1) 中村修二氏が発明したすべての特許の対価は、

    6億0857万円。2-2) 遅延損害金は、年利5%とし、1990年から起算して、

    2億3534万円。 合計 8億4391万円

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    格子整合系の結晶成長

    ZnSeLED

    既存のLD(赤外, 赤)

    青色発光ダイオードのイノベーション・ダイヤグラム

    知の創造

    知の具現化

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    InP

    Ge

    SiGaAs

    GaP AlAs

    AlSb

    ZnS

    ZnTeAlP

    GaSb

    InSbInAs

    ZnSe

    2.52原子間距離 / Å

    発生する光のエネルギー

    / eV

    非発光発光

    赤外線

    橙黄

    紫外線

    0

    1

    2

    3

    4

    5

    6

    1

    0.5

    発生する光の波長

    / µm

    0.60.70.8

    0.4

    2

    0.3

    0.2

    3∞

    ダイヤモンドのように硬い

    せんべいのように脆く軟らかい

    DVD

    光通信

    半導体のバンドギャップと原子間距離

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    InP

    Ge

    SiGaAs

    GaP AlAs

    AlSb

    ZnTeAlP

    GaSb

    InSbInAs

    GaN

    InN

    AlN

    ZnO

    SiC

    2.52原子間距離 / Å

    発生する光のエネルギー

    / eV

    非発光発光

    ZnSe

    赤外線

    橙黄

    紫外線

    0

    1

    2

    3

    4

    5

    6

    1

    0.5

    発生する光の波長

    / µm

    0.60.70.8

    0.4

    2

    0.3

    0.2

    3∞

    ダイヤモンドのように硬い

    せんべいのように脆く軟らかい

    ZnS

    半導体のバンドギャップと原子間距離次世代半導体

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    発光ダイオードは、なぜ光るか?

    伝導帯

    価電子帯

    アクセプタ準位

    Fermi準位

    p-GaAs

    (例 GaAs:Zn)

    ドナー準位

    伝導帯

    価電子帯

    Fermi準位

    接合 (原子レベルで結合ができている)

    n-GaAs

    (例 GaAs:Si)

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    伝導帯

    価電子帯

    アクセプタ準位

    Fermi準位

    ドナー準位

    伝導帯

    価電子帯

    Fermi準位

    +は、バンドを下げる

    + に帯電

    - に帯電

    -は、バンドを上げる

    低温で…

    発光ダイオードは、なぜ光るか?

    p-GaAs

    (例 GaAs:Zn)

    n-GaAs

    (例 GaAs:Si)

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    ドナー準位

    アクセプタ準位 +++ +

    --

    伝導帯

    価電子帯

    Fermi準位

    バンドギャップ

    空間電荷層 space charge layer

    空乏層 depletion layer

    p-GaAs

    (例 GaAs:Zn)

    n-GaAs

    (例 GaAs:Si)

    低温で…

    発光ダイオードは、なぜ光るか?

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    ドナー準位

    アクセプタ準位 +++ +

    --

    伝導帯

    価電子帯

    Fermi準位自由電子

    自由正孔

    室温で…

    バンドギャップ

    p-GaAs

    (例 GaAs:Zn)

    n-GaAs

    (例 GaAs:Si)

    発光ダイオードは、なぜ光るか?

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    ドナー準位

    アクセプタ準位 +++ +

    --

    伝導帯

    価電子帯

    Fermi準位

    自由正孔

    室温で…

    自由電子

    V

    バンドギャップ

    eV

    発光ダイオードは、なぜ光るか?

    p-GaAs

    (例 GaAs:Zn)

    n-GaAs

    (例 GaAs:Si)

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    伝導帯

    価電子帯

    Fermi準位

    バンドギャップ E

    自由正孔

    室温・順バイアスで

    V

    自由電子

    eV

    電圧

    電流

    eV

    p-GaAs

    (例 GaAs:Zn)

    n-GaAs

    (例 GaAs:Si)

    E hν=

    発光ダイオードは、なぜ光るか?

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    結晶

    成長学

    赤﨑:サファイヤ上のGaNの結晶成長

    (格子不整合系)への挑戦 /1970s

    天野・赤﨑:p-GaNの実現(LEEBI法)/1988

    格子整合系の結晶成長

    ZnSeLED

    天野・赤﨑:単結晶GaNの実現(AlNバッファ層法)

    /1985赤﨑:GaNのp型化への挑戦

    既存のLD(赤外, 赤)

    青色発光ダイオードのイノベーション・ダイヤグラム

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    赤﨑 勇

    (現・名城大学教授)

    天野 浩

    (現・名城大学教授)

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    Copyright © 2007 Prof. YAMAGUCHI Eiichi, Doshisha University 30

    結晶

    成長学

    赤﨑:サファイヤ上のGaNの結晶成長

    (格子不整合系)への挑戦 /1970s

    天野・赤﨑:p-GaNの実現(LEEBI法)/1988

    松岡ら・長友ら:InGaNの結晶成長への挑戦

    松岡ら:単結晶InGaNの実現/1989

    格子整合系の結晶成長

    ZnSeLED

    天野・赤﨑:単結晶GaNの実現(AlNバッファ層法)

    /1985

    中村:GaN成長

    /1989

    赤﨑:GaNのp型化への挑戦

    既存のLD(赤外, 赤)

    青色発光ダイオードのイノベーション・ダイヤグラム

    Copyright © 2007 Prof. YAMAGUCHI Eiichi, Doshisha University 31

    「私はこの青色への挑戦を思い立った時、当時の小川社長に予算と同時にもう一つ希望を出した。それは、アメリカへの留学だった。予算については、当時の日亜化学の売り上げの1.5パーセントに相当する3億円という破格の金額を出してもらえることになった。また留学についても、フロリダ大学に1年間留学することになったのである。私はここで、青色発光ダイオードの開発には是非とも必要とされていた有機金属化学気相成長法(MOCVD法)の勉強をすることになるのである。」

    中村修二「考える力、やり抜く力、私の方法」 p. 128

    「結局、中村氏は1988年4月から1989年3月までの1年間をフロリダ大学で過ごし、酒井氏から気相結晶成長法に関する基礎を学んだ。一方、日亜化学では中村氏の帰国に合わせてMOCVD装置と呼ばれる気相結晶成長法の導入準備が進められ、酒井氏の指導のもと付帯装置や実験室などの整備も急ピッチで進められた。」

    テーミス編集部「青色発光ダイオード」 p. 81

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    結晶

    成長学

    赤﨑:サファイヤ上のGaNの結晶成長

    (格子不整合系)への挑戦 /1970s

    天野・赤﨑:p-GaNの実現(LEEBI法)/1988

    松岡ら・長友ら:InGaNの結晶成長への挑戦

    松岡ら:単結晶InGaNの実現/1989

    格子整合系の結晶成長

    ZnSeLED

    天野・赤﨑:単結晶GaNの実現(AlNバッファ層法)

    /1985

    中村:2フロー法を発明

    /1990

    中村:単結晶GaNの実現( GaNバッファ層法)/1991

    中村・岩佐:p-GaNの実現(アニール法)/1991

    中村:GaN成長

    /1989

    赤﨑:GaNのp型化への挑戦

    既存のLD(赤外, 赤)

    青色発光ダイオードのイノベーション・ダイヤグラム

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    「私はこの方法(電子線で照射するという方法)をやってみた。そして、電子線を照射すると窒化ガリウムの結晶の表面温度が高くなることを観察し、温度変化のデータを研究した。(中略) それなら、電子線で照射するなどという時間のかかる方法でなく、ヒーターで熱しても同じではないか ― 私はそう考えたのだ。そして、摂氏800度くらいまで熱したところ、誰も成功しなかった高品質のp型窒化ガリウムが完成したのだ。(中略) とにかく、ここでも“人真似”を避けて、実験結果を深く考え抜き、自分のノウハウが詰まった装置を駆使することで、私は独創力を発揮できたのだ。」

    中村修二「考える力、やり抜く力、私の方法」 p. 159-160

    「岩佐氏は摂氏500度から同800度までの間でアニールを試みたが、アニール温度が上昇するにつれサンプル(マグネシウムをドープした窒化ガリウム)の発光強度が上昇することを発見し、その結果、『摂氏600度前後でアニールすれば、たとえ電子線を照射しなくても、アニールそのものだけでp型化が起こるのではないか』を推測するに至ったのである。(中略)岩佐氏から実験結果の報告を受けた中村氏はまったく懐疑的だった。」

    テーミス編集部「青色発光ダイオード」 p. 92-93

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    結晶

    成長学

    赤﨑:サファイヤ上のGaNの結晶成長

    (格子不整合系)への挑戦 /1970s

    天野・赤﨑:p-GaNの実現(LEEBI法)/1988

    松岡ら・長友ら:InGaNの結晶成長への挑戦

    松岡ら:単結晶InGaNの実現/1989

    格子整合系の結晶成長

    ZnSeLED

    天野・赤﨑:単結晶GaNの実現(AlNバッファ層法)

    /1985

    中村:2フロー法を発明

    /1990

    中村:単結晶GaNの実現( GaNバッファ層法)/1991

    中村・岩佐:p-GaNの実現(アニール法)/1991

    中村:GaN成長

    /1989

    赤﨑:GaNのp型化への挑戦

    既存のLD(赤外, 赤)

    青色発光ダイオードのイノベーション・ダイヤグラム

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    「(前略) (1991年)当時誰もこのインジウム・ガリウム窒素結晶膜の成長に成功していなかった。他で報告されたインジウム・ガリウム窒素は、結晶性がアモルファス状(原子の配列に規則性がない状態)であり、室温ではほとんど光らない結晶性だったのである。しかし、この室温でよく光るインジウム・ガリウム窒素の成長にも、私はツーフロー方式のMOCVD装置を駆使することにより、世界ではじめて成功したのである。」

    中村修二「考える力、やり抜く力、私の方法」 p. 166

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    中村 修二

    (現・カリフォルニア大学サンタバーバラ校教授)

    松岡 隆志

    (現・東北大学教授)

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    結晶

    成長学

    赤﨑:サファイヤ上のGaNの結晶成長

    (格子不整合系)への挑戦 /1970s

    天野・赤﨑:p-GaNの実現(LEEBI法)/1988

    中村ら:InGaNLEDの実用化/1992

    中村ら:統合

    松岡ら・長友ら:InGaNの結晶成長への挑戦

    松岡ら:単結晶InGaNの実現/1989

    格子整合系の結晶成長

    ZnSeLED

    天野・赤﨑:単結晶GaNの実現(AlNバッファ層法)

    /1985

    中村:2フロー法を発明

    /1990

    中村:単結晶GaNの実現( GaNバッファ層法)/1991

    中村・岩佐:p-GaNの実現(アニール法)/1991

    中村:GaN成長

    /1989

    赤﨑:GaNのp型化への挑戦

    既存のLD(赤外, 赤)

    大企業すべて撤退/1995-1997

    清水ら:蛍光体との融合/1996

    白色LED小川:事業化の決断/1993

    青色発光ダイオードのイノベーション・ダイヤグラム

  • 2007/09/19

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    目 次

    1. Christensenの破壊的イノベーション2. パラダイム破壊型イノベーション3. ケーススタディ -青色発光ダイオード4. 21世紀の産業モデル5. 科学的精神の欠落がもたらしたもの

    -JR福知山線事故を教訓にして

    1. Christensenの破壊的イノベーション2. パラダイム破壊型イノベーション3. ケーススタディ -青色発光ダイオード4. 21世紀の産業モデル5. 科学的精神の欠落がもたらしたもの

    -JR福知山線事故を教訓にして

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    Hoerni :プレーナー法

    /1959

    選択拡散法/1955

    Kahn&Attala:Si-SiO2界面物理の研究

    Noyce :バイポーラIC/1959

    Shockley :固体への置換:失敗/1946

    De Forest :3極真空管

    /1906

    増幅効果発見/1947

    Bardeen&Brattain :表面準位の研究

    Ge点接触型トランジスタ/1947

    合金法で実現

    /1951表面の量子力学

    /1947

    選択拡散法/1955

    Bardeen :なぜ失敗?科学的解明

    Shockley :pn接合の量子力学

    Ge接合型トランジスタ予言/1949

    Teal :SiのCZ成長

    Si接合型トランジスタ/1953

    トランジスタとMOSFETのID

    Kahn&Attala:Si-MOSFET

    /1960

    Noyce:MOS-IC/1965

    Si-SiO2界面の電界効果発見/1960

    MPU RAM

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    冷水:MBE

    三村 &冷水:HEMT /1980

    福田:マイクロ波応用で市場創造 /1986

    HEMTのID

    2DEGの量子力学

    Störmer :Wigner格子の研究

    三村:GaAs「反転層」を発見/1979

    三村:HEMT概念への到達

    /1979

    GaAs-MOSFETを模索。が挫折

    /1978

    Si-MOSFET

    Störmer :Modulation

    dopingの発明/1978

    Tsui & Störmer :希薄濃度2DEG研究

    Tsui & Störmer :分数量子ホール効果の発見/1981

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    結晶

    成長学

    赤﨑:サファイヤ上のGaNの結晶成長

    (格子不整合系)への挑戦 /1970s

    天野・赤﨑:p-GaNの実現(LEEBI法)/1988

    中村ら:InGaNLEDの実用化/1992

    中村ら:統合

    松岡ら・長友ら:InGaNの結晶成長への挑戦

    松岡ら:単結晶InGaNの実現/1989

    格子整合系の結晶成長

    ZnSeLED

    天野・赤﨑:単結晶GaNの実現(AlNバッファ層法)

    /1985

    中村:2フロー法を発明

    /1990

    中村:単結晶GaNの実現( GaNバッファ層法)/1991

    中村・岩佐:p-GaNの実現(アニール法)/1991

    中村:GaN成長

    /1989

    赤﨑:GaNのp型化への挑戦

    既存のLD(赤外, 赤)

    大企業すべて撤退/1995-1997

    清水ら:蛍光体との融合/1996

    白色LED小川:事業化の決断/1993

    青色発光ダイオードのID

  • 2007/09/19

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    Dig into science

    既存技術

    夜の科学研究

    パラダイム破壊

    行詰まり

    共鳴場

    つまり!

    ゴール

    ブレークスルー

    知の創造

    知の具現化

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    パラダイム破壊型イノベーションの法則と共鳴場

    1. 既存技術 A の外挿線上に,求めるイノベーションの解は存在しない。

    2. 既存技術を成立させている科学的知見 S にまで下りていって初めて,新しいパラダイム P が発見され、新技術A*が生まれる。

    「 S の研究をやっていれば,自然に新しい技術A*を創造できる」という考え(線形モデル)は,誤り。

    3. 一連のプロセスA→S→P→A*を行なったチームの中に,事業を最終的に成功させる責任者が中核として存在していて,そのプロセスに関わる暗黙知を共有している。

    ⇒ 暗黙知の「共鳴場」 をどう育むかが,企業にとって最重要。

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    目 次

    1. Christensenの破壊的イノベーション2. パラダイム破壊型イノベーション3. ケーススタディ -青色発光ダイオード4. 21世紀の産業モデル5. 科学的精神の欠落がもたらしたもの

    -JR福知山線事故を教訓にして

    1. Christensenの破壊的イノベーション2. パラダイム破壊型イノベーション3. ケーススタディ -青色発光ダイオード4. 21世紀の産業モデル5. 科学的精神の欠落がもたらしたもの

    -JR福知山線事故を教訓にして

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    上り線線路1996年以前の曲線

    上り線線路1996年以後の曲線

    300m

    R304

    R600

    尼崎IC

    名神高速道路

    塚口

    尼崎

    マンション

    JR福知山線上り

    至大阪

    至神戸

    JR東海道線上り

    事故現場の線路の曲線 (145ページ 図2-4)

    写真

    R600

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    事故現場から塚口方面を望んだ写真 (8ページ 図2a)

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    危険率D

    1

    x

    y車両の重心

    車両にかかる力の合成ベクトル

    原点 x =0カント

    報告書の値 JRの値

    hG* = 車両重心の高さ (m) 1.896 1.457

    μ = 台車質量 / 車体質量0.378 0.493

    α = 横振動加速度 (g) 0.10 0.00

    G = 車輪接触点間隔 (m) 1.120 1.067

    hGT = 台車重心高さ (m) 0.490 0.490

    R = 曲線半径 (m) 304.0 304.0

    c = カント (m) 0.097 0.097

    * 2

    *

    21

    1G

    G

    GTh hv cDG Rg G h

    µαµ

    ⎧ ⎫⎛ ⎞⎪ ⎪= − + −⎜ ⎟⎨ ⎬⎜ ⎟+⎪ ⎪⎝ ⎠⎩ ⎭

    国枝方程式 (1972)

    空車と仮定

    科学的誤り

    ケアレスミス

    遠心力

    カントによる

    遠心力減少

    横振動力

  • 2007/09/19

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    国枝方程式を用いて求めた転覆限界速度 (140ページ 図2-3)

    80

    90

    100

    110

    120

    130

    140

    150

    160

    170

    180

    0 50 100 150 200 250 300

    転覆限界速度 (km/時)

    人数 (体重と重心位置は全員同じと仮定)

    R=304 m

    R=600 m

    JRが出した値R=304 m とし、横振動を無視

    93人乗車

    106 km/時

    148 km/時

    実際の事故

    直線部の制限速度

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    5のまとめ

    1. 国枝方程式によれば、半径304mにおける転覆限界速度(1両目 93人乗車時)は、106km/h(実際の転覆速度にほぼ等しい)。したがって伊丹駅から事故現場直前までの直線区間(制限速度は120km/h)のどこかで運転士が人事不省ないし錯誤に陥れば、この転覆事故はかならず起きた。

    2. 元来、この右カーブは、半径600mだった。1996年に付け替えた際、この右カーブの半径を等しく600mに設計していれば、転覆限界速度は148km/hとなって、この転覆事故が起きることは絶対になかった。しかも半径600mの線路は現場に無理なく設置できた。

    3. では、なぜ半径600mの上り線路を半径304mに付け替えたかといえば、科学的に転覆の限界速度を分析することなく、もともとあった下り線の横に安易に設置したからである。

    4. よって科学に立脚すれば、この転覆事故は100%予見可能だった。組織活動が科学に立脚することは当然。よって、JR西日本の社会的責任(Schuld=罪)は、きわめて重い。

  • 2007/09/19

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    本事故は、本件運転士のブレーキ使用が遅れたため、本件列車が半径304㍍の右曲線に制限速度70㌔を大幅に超える約116㌔で進入し、1両目が左へ転倒するように脱線し、続いて2両目から5両目が脱線したことによるものと推定される。

    本件運転士のブレーキ使用が遅れたことについては、虚偽報告を求める車内電話を切られたと思い本件車掌と輸送司令員との交信に特段の注意を払っていたことなどから、注意が運転からそれたことによるものと考えられる。

    本件運転士が虚偽報告を求める車内電話をかけたこと及び注意が運転からそれたことについては、インシデント等を発生させた運転士にペナルティであると受け取られることのある日勤教育又は懲戒処分等を行い、その報告を怠り又は虚偽報告を行った運転士にはより厳しい日勤教育又は懲戒処分等を行うという同社の運転士管理方法が関与した可能性が考えられる。

    事故調査委員会委員長 後藤 昇弘氏

    araic.assistmicro.co.jp/より

    事故調査委員会

    最終報告書

    20072007年年66月月2828日に公開日に公開

    原因

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    全体のまとめ

    1.1. 研究と開発、科学と技術という研究と開発、科学と技術という22つの知的営為のつの知的営為の本質的なちがいを、人間の実存的欲求から出発し本質的なちがいを、人間の実存的欲求から出発して捉えなおすことて捉えなおすこと。

    2. イノベーションは、常に常に「知の創造」と「知の具現化」の連鎖から起こる。この連鎖のかなめが共鳴場。

    3. 10年後の産業の的確な予測は、イノベーション・ダイヤグラムの「知の創造」軸を分析することによって可能。