バイオマスのエネルギー利用技術 の研究 -...

23
平成21年第1回教育研究集会 ー研究紹介ー バイオマスのエネルギー利用技術 の研究 20099月14工学部機械工学科・新技術創成研究所 村上信明

Upload: others

Post on 13-Jul-2020

0 views

Category:

Documents


0 download

TRANSCRIPT

Page 1: バイオマスのエネルギー利用技術 の研究 - NiASバイオマスのエネルギー利用 草や木の持つエネルギーを(石炭や石油と同じように) 利用。CO2は生成するが、使う分植物が成長すれば大気中のC

平成21年第1回教育研究集会ー研究紹介ー

バイオマスのエネルギー利用技術の研究

2009年9月14日工学部機械工学科・新技術創成研究所

村上信明

Page 2: バイオマスのエネルギー利用技術 の研究 - NiASバイオマスのエネルギー利用 草や木の持つエネルギーを(石炭や石油と同じように) 利用。CO2は生成するが、使う分植物が成長すれば大気中のC

内容

1)なぜ今「バイオマス」か?

2)現在の研究内容はどのようなものか?

3)本学の方式は何故注目されているのか?

4)いつ実用化されるのか?(何が課題なのか?)

Page 3: バイオマスのエネルギー利用技術 の研究 - NiASバイオマスのエネルギー利用 草や木の持つエネルギーを(石炭や石油と同じように) 利用。CO2は生成するが、使う分植物が成長すれば大気中のC

背景 1)化石燃料の涸渇への対応

西暦0~3000年の時間軸で予測されている石炭と石油の消費動向

0 500 1000 1500 2000 2500 3000年

石油

石炭

・化石燃料を高々500年間の世代が独占していいか?・化石燃料は「いつなくなるか」より「ついにいく道」の認識

燃料消費量

M.ベルーツ(中馬一郎訳),科学はいま,p.62,共立出版社(1991))

Page 4: バイオマスのエネルギー利用技術 の研究 - NiASバイオマスのエネルギー利用 草や木の持つエネルギーを(石炭や石油と同じように) 利用。CO2は生成するが、使う分植物が成長すれば大気中のC

NPO法人CASA資料集より

2)CO2による地球温暖化への対応過去1万年のCO2濃度の変化

Page 5: バイオマスのエネルギー利用技術 の研究 - NiASバイオマスのエネルギー利用 草や木の持つエネルギーを(石炭や石油と同じように) 利用。CO2は生成するが、使う分植物が成長すれば大気中のC

今、なぜバイオマスか?ー再生可能エネルギー開発の意義ー

将来,石油・天然ガスがなくなれば,石炭を主幹とし,そ

れも乏しくなれば原子力(増殖炉,核融合)で,電力・自動

車用液体燃料をまかなう。

<大きなものがたりの破綻>

CO2地球温暖化,原子力の停滞,環境問題の激化

石油に代わる「量」をカバーできるもの

再生可能エネルギー

太陽光、風力、バイオマスなど

Page 6: バイオマスのエネルギー利用技術 の研究 - NiASバイオマスのエネルギー利用 草や木の持つエネルギーを(石炭や石油と同じように) 利用。CO2は生成するが、使う分植物が成長すれば大気中のC

世界の再生可能エネルギーの賦存量

賦存量:経済的技術的

に利用可能な資源量。

unit:1018 joule/年

森林57.8

エネルギー作物37.2地熱

7.4

太陽光30.1

風力27.5

水力48.7

全体 バイオマス

バイオマス138.7 廃棄物

43.7

APEX Asian People’s Exchange より作成世界の利用再生可能エネルギーのうち、約60%はバイオマス。

Page 7: バイオマスのエネルギー利用技術 の研究 - NiASバイオマスのエネルギー利用 草や木の持つエネルギーを(石炭や石油と同じように) 利用。CO2は生成するが、使う分植物が成長すれば大気中のC

バイオマスのエネルギー利用

○ 草や木の持つエネルギーを(石炭や石油と同じように)

利用。CO2は生成するが、使う分植物が成長すれば大気中のCO2は増えない。

○ 資源量としては膨大。山の多い日本では一箇所に

大量に集めるのが難しい。

また、熱より電気・液体燃料の要請が強く、独

自の小型プラントの開発が必要。

バイオマス;Bio (生物資源) Mass(量)

Page 8: バイオマスのエネルギー利用技術 の研究 - NiASバイオマスのエネルギー利用 草や木の持つエネルギーを(石炭や石油と同じように) 利用。CO2は生成するが、使う分植物が成長すれば大気中のC

バイオマス利用の利点(カーボンニュートラル)

二酸化炭素の放出

バイオマス燃料

光合成により、二酸化炭素と水がバイオマスとなり、酸素を放出

木などの植物

CO2が発生

工場、車などで化石燃料を使用してエネルギー利用

化石燃料を使用するとCO2が増える一方であるが、バイオマス

燃料を使用しても、燃料を消費する際に出される二酸化炭素が、木などの植物の光合成により実質的な自然界全体でのCO2の

増減はない。 →カーボンニュートラル(炭素中立)

Page 9: バイオマスのエネルギー利用技術 の研究 - NiASバイオマスのエネルギー利用 草や木の持つエネルギーを(石炭や石油と同じように) 利用。CO2は生成するが、使う分植物が成長すれば大気中のC

バイオマス利用のいろいろ

東京書籍 現代社会 P19

Page 10: バイオマスのエネルギー利用技術 の研究 - NiASバイオマスのエネルギー利用 草や木の持つエネルギーを(石炭や石油と同じように) 利用。CO2は生成するが、使う分植物が成長すれば大気中のC

バイオマスのエネルギー(燃料)利用技術

+O2直接燃焼熱+CO2+H2O

メタン発酵,ガス化CH4+CO2 CO+H2

バイオマス アルコール発酵C2H5OH(エタノール)

油脂のエステル交換R-COOCH3(BDF)

分解

分解

搾汁

+H2O熱化学法H2,CO,CH4

◎ ガス燃料

液体燃料合成

Page 11: バイオマスのエネルギー利用技術 の研究 - NiASバイオマスのエネルギー利用 草や木の持つエネルギーを(石炭や石油と同じように) 利用。CO2は生成するが、使う分植物が成長すれば大気中のC

(1)反応管

(メタル温度800℃以上)

(2)原料微粉バイオマス

(3)水蒸気

二次ガス化

タールすす分解

一次ガス化

反応時間:0.1~0.7s

生成ガス

輻射

バイオマス粉体全量(有機物)が水蒸気によってガス化される

外熱(熱ガス、テストは電気)

ガス化反応管内部模式図

浮遊外熱式高カロリーガス化法

Page 12: バイオマスのエネルギー利用技術 の研究 - NiASバイオマスのエネルギー利用 草や木の持つエネルギーを(石炭や石油と同じように) 利用。CO2は生成するが、使う分植物が成長すれば大気中のC

バイオマスガス化基礎実験装置

P

窒素ガス

フィルター (1)反応管 水タンク

熱電対

電気炉

熱電対

ドレインビン

電気ヒーター

(ID53 mm,L900mm )

P

窒素ガス

フィルター

(2)原料粉体フィーダ水タンク

熱電対

ドレインビン

生成ガス

バーナー

コンデンサー

電気ヒーター

(ID53 mm,L900mm )

(電気炉)

(3)水蒸気発生装置

バイオマス供給量 約1g/分

Page 13: バイオマスのエネルギー利用技術 の研究 - NiASバイオマスのエネルギー利用 草や木の持つエネルギーを(石炭や石油と同じように) 利用。CO2は生成するが、使う分植物が成長すれば大気中のC

多種のバイオマスが原料となる

ネピアグラス サトウキビ スギ

稲わら 竹 杉バーク

Page 14: バイオマスのエネルギー利用技術 の研究 - NiASバイオマスのエネルギー利用 草や木の持つエネルギーを(石炭や石油と同じように) 利用。CO2は生成するが、使う分植物が成長すれば大気中のC

稲わらを原料として得られる生成ガスの炎

稲わらMJ/kg 12.89

C % 36.9H % 4.7O % 32.5N % 0.3T-CL % 0.08T-S % 0.06

% 15

析灰分

バイオマスサンプル高位発熱量

H2 CO CH4 C2H4 CO2 Total

44.9 28.2 7.6 2.8 16.5 100vol%

Page 15: バイオマスのエネルギー利用技術 の研究 - NiASバイオマスのエネルギー利用 草や木の持つエネルギーを(石炭や石油と同じように) 利用。CO2は生成するが、使う分植物が成長すれば大気中のC

浮遊外熱式高カロリーガス化法バイオマス(固体)をうまくガス(CO,H2など)にできれば、あとは基本的には既存技術

タールをほとんど含まないクリーンなガスを作る。

バイオマス+水蒸気

外熱(CO,H2 , CH4 など )

特徴

(1)粉体バイオマスを用いる。

(2)ガス化剤は水蒸気。

(3)反応管を外部より加熱。

(4)高温でのガス化:800~1000℃、常圧。

・メタノール合成・ガスエンジン発電など

Page 16: バイオマスのエネルギー利用技術 の研究 - NiASバイオマスのエネルギー利用 草や木の持つエネルギーを(石炭や石油と同じように) 利用。CO2は生成するが、使う分植物が成長すれば大気中のC

高カロリーガス化ガスの多様な用途

出 力出 力熱ガス発生炉

粉砕設備

チップ

反応水

排気

脱水装置

ガスタンク

FT, DME

ガスエンジン

メタノール合成

電 気

ガソリン

DME

燃料ガス

メタノール

バイオマス

原料 粉体

ガス化反応装置

熱ガス

Page 17: バイオマスのエネルギー利用技術 の研究 - NiASバイオマスのエネルギー利用 草や木の持つエネルギーを(石炭や石油と同じように) 利用。CO2は生成するが、使う分植物が成長すれば大気中のC

実証機「農林バイオマス3号機」(諫早)の構成

メタノール合成

電力

廃材バーク

稲わら

粉砕

粉体

チップ

空気

ホッパ

※過熱水蒸気

ガス化反応炉

給水

煙突※過熱水蒸気

排気

熱回収ボイラ

ガスエンジン発電熱ガス発生

燃焼炉

ガス燃料タンク

ガス燃料

14(A)

(B)

(C)

(D)

Page 18: バイオマスのエネルギー利用技術 の研究 - NiASバイオマスのエネルギー利用 草や木の持つエネルギーを(石炭や石油と同じように) 利用。CO2は生成するが、使う分植物が成長すれば大気中のC

50kW発電で実験使用の原料バイオマス

チップ 粉体

Page 19: バイオマスのエネルギー利用技術 の研究 - NiASバイオマスのエネルギー利用 草や木の持つエネルギーを(石炭や石油と同じように) 利用。CO2は生成するが、使う分植物が成長すれば大気中のC

50kWガスエンジン発電ライト出力

ガスエンジンと電気出力

Page 20: バイオマスのエネルギー利用技術 の研究 - NiASバイオマスのエネルギー利用 草や木の持つエネルギーを(石炭や石油と同じように) 利用。CO2は生成するが、使う分植物が成長すれば大気中のC

(有効なガス)

バイオマスからのメタノール製造方法外熱

H

C有機物

H2O蒸気ガス化

800~1000℃

(バイオマス)

(ガス化剤)

外熱

メタノール合成

200~300℃

COH2

H2H2

COCH4

2H2+CO CH3OH

ガス化以降は現状の天然ガス原料の場合と殆ど同一

メタノール(液体)

CH3OH

Page 21: バイオマスのエネルギー利用技術 の研究 - NiASバイオマスのエネルギー利用 草や木の持つエネルギーを(石炭や石油と同じように) 利用。CO2は生成するが、使う分植物が成長すれば大気中のC

BDF(Bio Diesel Fuel)バス

廃油を原料に使った通学用シャトルバス(長崎総合科学大学)

Page 22: バイオマスのエネルギー利用技術 の研究 - NiASバイオマスのエネルギー利用 草や木の持つエネルギーを(石炭や石油と同じように) 利用。CO2は生成するが、使う分植物が成長すれば大気中のC

FFV(Flexible Fuel Vehicle )ガソリン、エタノール、メタノールおよびそれらの混合燃料でも走行可能な車

フォード・モーターが発売した新型FFV

GM社も販売を行っている。

http://www.carview.co.jp/news/2/id5569

Page 23: バイオマスのエネルギー利用技術 の研究 - NiASバイオマスのエネルギー利用 草や木の持つエネルギーを(石炭や石油と同じように) 利用。CO2は生成するが、使う分植物が成長すれば大気中のC

まとめ;バイオマスエネルギー普及への課題

1) コストの点では、現状では一般的には「化石燃料」に太刀打ちできない(当然のこと。その必要もない)。 国としての大きな方針・優遇措置が必要。

2) 廃棄または未利用バイオマスを原料とする場合、或いは離島など特殊な条件の場合には、現在でも成り立つところがあり、まずはこのような所から広めていく (これにしても量としては多大)

3) 今後、化石燃料価格が高騰すれば、コスト的にも成り立つ場合がひろがっていく。

4) 将来的には(21世紀を越えても)、石油・化石燃料に替って、人類が必ず一定割合を頼っていかざるを得ない大切なエネルギーである。