アプリケーション開発ツール -...

4
24 ビジネスコミュニケーション 2012 Vol.49 No.6 NTT-AT は、IP メディアサーバ開発用のビデオ/音 声コーデック及び FAX、モデムをサポートした Surf Communication Solutions 社(以下、SURF 社)の高集 積マルチメディア処理ボードを提供している。本製品は、 モジュールデザインのSurfDocker により、ボードに搭載 するDSP の能力及び数を選択できるのが大きな特長だ。 PCI Express フォームファクタの「SurfExpress」と AMC フォームファクタの「SurfRider AMC」の2 種類 があり、どちらもIP ネットワーク上でのビデオ/音声 サーバ、会議サーバ、ビデオストリーミングサーバ等 の開発に最適なマルチメディア処理ボードである。 また、 SURF社の新製品として「SurfMotion」がある。 これは前述のような各種サーバ機能を容易に実現でき るハイレベルAPI だ。実際、100 行程度のPerl スクリプ トで簡単なMCU機能が実現できる。さらにSURF 社は スマートフォンやノート PC をターゲットに、TV 会議 用の低価格MCU ORION-MCU」を提供している。 HD品質の映像コミュニケーションサービスの開発ツ ールとして注目を集めているのが「RADVISION BEEHD」だ。グローバルプロダクツ事業本部メディア コミュニケーションプロダクツビジネスユニットの村 重彰部長は、「TI DSP に最適化したハイエンド用に 加え、最近では Windows/Mac 応版や Android HD 品質の双方向 ビデオ端末機能を 簡単に付加できる バージョンも提供 しています」と述 べている。 Dialogic PowerMedia HMPHost Media Processing Software)」は、音声とビデオ処理のためのIP メディア サーバ開発用のソフトウェアだ。これにより汎用サー バ上で、ビデオポータル、テレビ会議など革新的な音 声&ビデオソリューションを構築できる。本製品は VMware など仮想化にも対応している。 米国 Reality Mobile 社の「RealityVision」は、現 場と各地に分散しているチームメンバー間をスマー トフォンや PC で繋ぎ、現場からの映像をリアルタイ ムで共有して状況を把握したり、指令室から資料や 保存映像をプッシュすることによる協働作業により、 迅速な意思決定・対応を支援するモバイルビデオコ スマートフォンやタブレット端末などモバイルデバイスの進化に伴い、映像を中心としたリッチメディア・アプリケーション市場 が急拡大している。NTT-AT は、開発ツールからアプリケーションまで、リッチメディア・アプリケーション関連プロダクツを幅 広く提供している。以下では、代表的なアプリケーション開発ツール及び市場で注目を集めているアプリケーションを紹介する。 グローバルプロダクツ事業本部 メディアコミュニケーション プロダクツビジネスユニット 担当部長 村重 彰3 SurfExpress/SurfRider AMC/ SurfMotion アプリケーション開発ツール スマホで現場をリアルタイムに可視・共有化 する「RealityVision」 RADVISION BEEHD ソリューション Dialogic PowerMedia HMP アプリケーション

Upload: others

Post on 08-Oct-2020

0 views

Category:

Documents


0 download

TRANSCRIPT

Page 1: アプリケーション開発ツール - NTT-ATNTT-ATは、開発ツールからアプリケーションまで、リッチメディア・アプリケーション関連プロダクツを幅

24 ビジネスコミュニケーション 2012 Vol.49 No.6

NTT-ATは、IPメディアサーバ開発用のビデオ/音

声コーデック及びFAX、モデムをサポートしたSurf

Communication Solutions社(以下、SURF社)の高集

積マルチメディア処理ボードを提供している。本製品は、

モジュールデザインのSurfDockerにより、ボードに搭載

するDSPの能力及び数を選択できるのが大きな特長だ。

PCI Expressフォームファクタの「SurfExpress」と

AMCフォームファクタの「SurfRider AMC」の2種類

があり、どちらもIPネットワーク上でのビデオ/音声

サーバ、会議サーバ、ビデオストリーミングサーバ等

の開発に最適なマルチメディア処理ボードである。

また、SURF社の新製品として「SurfMotion」がある。

これは前述のような各種サーバ機能を容易に実現でき

るハイレベルAPIだ。実際、100行程度のPerlスクリプ

トで簡単なMCU機能が実現できる。さらにSURF社は

スマートフォンやノートPCをターゲットに、TV会議

用の低価格MCU「ORION-MCU」を提供している。

HD品質の映像コミュニケーションサービスの開発ツ

ールとして注目を集めているのが「RADVISION

BEEHD」だ。グローバルプロダクツ事業本部メディア

コミュニケーションプロダクツビジネスユニットの村

重彰部長は、「TIのDSPに最適化したハイエンド用に

加え、最近では

Windows/Mac対

応版やAndroidで

HD品質の双方向

ビデオ端末機能を

簡単に付加できる

バージョンも提供

しています」と述

べている。

「Dialogic PowerMedia HMP(Host Media Processing

Software)」は、音声とビデオ処理のためのIPメディア

サーバ開発用のソフトウェアだ。これにより汎用サー

バ上で、ビデオポータル、テレビ会議など革新的な音

声&ビデオソリューションを構築できる。本製品は

VMwareなど仮想化にも対応している。

米国Reality Mobile社の「RealityVision」は、現

場と各地に分散しているチームメンバー間をスマー

トフォンやPCで繋ぎ、現場からの映像をリアルタイ

ムで共有して状況を把握したり、指令室から資料や

保存映像をプッシュすることによる協働作業により、

迅速な意思決定・対応を支援するモバイルビデオコ

スマートフォンやタブレット端末などモバイルデバイスの進化に伴い、映像を中心としたリッチメディア・アプリケーション市場が急拡大している。NTT-ATは、開発ツールからアプリケーションまで、リッチメディア・アプリケーション関連プロダクツを幅広く提供している。以下では、代表的なアプリケーション開発ツール及び市場で注目を集めているアプリケーションを紹介する。

グローバルプロダクツ事業本部メディアコミュニケーションプロダクツビジネスユニット

担当部長 村重彰氏

3

SurfExpress/SurfRider AMC/SurfMotion

アプリケーション開発ツール

スマホで現場をリアルタイムに可視・共有化する「RealityVision」

RADVISION BEEHDソリューション

DialogicPowerMediaHMP

アプリケーション

Page 2: アプリケーション開発ツール - NTT-ATNTT-ATは、開発ツールからアプリケーションまで、リッチメディア・アプリケーション関連プロダクツを幅

ラボレーションシステムだ。

Rality Mobile社では政府関係機関、自治体、また売

上規模全米上位500社に入る大企業で、災害時や保守

作業などのリアルタイムの映像中継・共有システムな

どとして多くの導入実績を持っている。NTT-ATでは、

昨年5月より販売を開始し、1年後の本年5月10日か

ら最新版「RealityVision 3.2」を販売している。

「最新版では、別々の場所にいる作業者同士のモバイ

ル端末間で直接、映像の配信・共有が行える機能を追

加した他、クライアント用アプリは、Android4.0、

iPhone 4/iPhone 4S/iPad/iPad2に完全対応しました」

(村重部長)。

「RealityVision」は、

①RealityVision server software

②RealityVision management console

③RealityVision Mobileクライアント

④RealityVision PCクライアント

⑤RealityVision Screencast

の5つのアプリケーションで構成される。各アプリケーシ

ョン間の通信はユーザー認証とSSL暗号化で保護される。

システムの構成例を図1に示すが、構築には市販の定

点カメラ、サーバ、パソコン、スマートフォンが使用で

き、通信ネットワークにはインターネット/携帯電話

網/Wi-Fi網/衛星通信網を利用できるため、特別な準

備は不要だ。またGPS情報を基に、Google Maps/

Microsoft Bing Maps上にスマートフォンカメラの現地映

像と合わせて、位置情報の追跡表示が可能である。

なお、独自の映像システムの構築や既存の映像監

視システムとの統合が簡単に行える開発キットも用

意されている。

Cisco、Polycom、Sonyの製品を中心にわが国のビ

デオ会議システム市場を牽引するNTT-AT グローバ

ルプロダクツ事業本部。メディアコミュニケーショ

ンプロダクツビジネスユニットの原浩人部長は、「写

真1に教育現場におけるPolycom社のHDXシリーズ

の活用例を示しますが、最近、国内でも医療・教育

分野でのビデオ会議システムの導入が加速していま

す。このような状況を踏まえ私どもは今年度、業界

特化型提案と、付加価値型提案の2本柱で、ビデオ

会議システムのビジネスを拡大していきたいと考え

ています」と語る。

付加価値型提案では、これまでの豊富な経験と技

術により、NTT-ATならではの付加価値を付けて営業

展開するというものだ。

付加価値型提案の1つが、ビデオ会議システムの

モバイル展開だ。「スマートフォンやタブレット端末

などモバイルデバイスの急速な拡大に伴い、モバイル

25ビジネスコミュニケーション 2012 Vol.49 No.6

RealityVisionサーバ

(指揮者) 監視室 (現場作業員)スマートフォン

屋外 (線路設備、沿線)

地図情報サービス (GoogleMaps/Bing Maps)

鉄道会社 (監視室、指令所など)

(専門家) 保守センタ

鉄道会社 (駅構内、踏切など)

定点監視カメラ

社内 LAN

事故

VPN接続

Microsoft/Googleクラウド サービス

インターネット

3G/LTE

3G/LTE

図1 「RealityVision」による現場状況可視化・映像コラボレーションシステムの構成例

グローバルプロダクツ事業本部メディアコミュニケーションプロダクツビジネスユニット

担当部長 原浩人氏

ビデオ会議システムのモバイル展開を加速

Page 3: アプリケーション開発ツール - NTT-ATNTT-ATは、開発ツールからアプリケーションまで、リッチメディア・アプリケーション関連プロダクツを幅

を利用したビデオコミュニケーションは、今後急成長

すると思われます。米国の製薬会社では2500台のタブ

レット端末をビデオ会議用として導入していますし、

米国の多くの企業でBYOD(私物端末の業務利用)の

導入を検討しています。こういったトレンドに合わせ

て、私どももビデオ会議システムのモバイル展開を加

速していきたいと思います」(原部長)。

Polycom社では、PCインストール型ビデオ会議ソフ

ト「CMA Desktop」に加え、「RealPresence Mobile

(iOS用/Android用)」を提供している。これは、タブ

レットデバイスに、PolycomのHD 品質のビデオコラボ

レーションソリューションを提供するもので、社内だ

けでなく外出先からも多地点会議への参加、HD 品質

の映像および音声でのコミュニケーションが可能だ。

もう1つが、ビデオ会議とセンサ付きホワイドボ

ードを組み合わせた教育現場向けシステムだ。先生

がホワイトボードに書いたものを、遠隔の生徒がビ

デオ会議モニターで見て、質問等のやりとりができ、

距離を感じさせない遠隔授業を実現するものだ。

「R-Talk」シリーズは、「日本を代表するクオリテ

ィを持った、スマートなビジネスツール」をテーマ

に、NTT-ATがグローバルブランドとして展開する音

声会議用マイク・スピーカーシリーズだ。

「Real」「all-Round」「Right now」の3つの「R」

をコンセプトに開

発 さ れ た 「 R -

Talk 800EX」は、

音声は高品質かつ

クリア、しかも回

線を問わずいつで

もどこでも使え

て、面倒な設定も

必要ない。

アプリケーシ

ョンソリューシ

ョン事業本部情

報機器テクノロジセンタの小林和則課長は、「従来の

据置型の音声会議用マイク・スピーカーと違って、

携帯性に優れ、スマートフォンや携帯電話との接続

性をかなり意識して製品開発しました。実際、スマ

ートフォンや携帯電話とつないで音声会議をされる

お客様が多いです。新しい利用形態を示したことで、

音声会議の市場が拡大するのではないと期待してい

ます。実際、昨年12月の発売以降、従来製品にはな

かった販売の手応えを感じています」と語る。

スリム&コンパクトで携帯性に優れた「R-Talk

800EX」は、以下の特長を持つ。

①電話回線の種別を問わず、Web会議にも対応

ビジネスホン(ア

ナログ/デジタル/

IP)に加え、携帯電

話/スマートフォン

(オーディオケーブ

ル/Bluetooth)、PC

(USB接続でWeb会

議)で、簡単に接続

できるため、すぐに

音声会議が行える。

②持ち運びに便利、

電池駆動も可能

A5判サイズのス

リムボディ。電池駆

26 ビジネスコミュニケーション 2012 Vol.49 No.6

写真1 教育現場での「Polycom HDX」シリーズ活用例

アプリケーションソリューション事業本部情報機器テクノロジセンタ

担当課長 工学博士 小林和則氏

写真2抜群の携帯性を誇る小型・軽量、A5サイズの

「R-Talk 800EX」

音声会議のニュースタンダード「R-Talk」

Polycom, Inc c

Page 4: アプリケーション開発ツール - NTT-ATNTT-ATは、開発ツールからアプリケーションまで、リッチメディア・アプリケーション関連プロダクツを幅

動(単3電池4本、充電池も利用可能)やUSBバス

パワー給電で、電源がない場所でも使用できるため、

コンセントの確保や電源コードの取り回しも不要。

携帯電話/スマートフォンと組み合わせれば、場所

を選ばず音声会議が行える。

③クリアな音声、多人数にも対応

話し手の声のボリュームを自動調整して送信する自

動音声調整機能や、周囲の雑音を適切にカットするノ

イズリダクションなど、NTT研究所の優れた音響処理

技術を基盤に、「RealTalk」シリーズで実績を積んだ安

心の音声品質で、快適な音声会議が実現できる。

また、専用の拡張マイクを最大4台まで接続するこ

とで10人程度の会議にも対応でき、会議テーブルの形

状や人数構成に合わせ、柔軟な配置が可能である。

なお、「Bluetooth」と「ハンドセット」接続機能

を省略した「R-Talk 800PC」は、Web会議やTV会

議での利用を主なターゲットとした廉価版だ。

今後の展開について、小林課長は「現行製品の販売

拡大に加え、R-Talkシリーズのラインナップも増やし

ていきたいと考えています」と抱負を述べている。

NTT研究所の先進技術をベースにNTT-ATが商品

化した「JPEG 2000リアルタイムコーデック」は、

フルハイビジョン(HD)の4倍以上の超高解像度の

映像をリアルタイムで、JPEG 2000符号化方式によ

り世界中に IPネットワークで配信できるコーデック

だ。JPEG 2000符号化方式は時間圧縮ではなくフレ

ーム単位で符号化するのでMPEG方式に比べ圧縮率

は劣るものの、帯域を絞ってもブロックノイズが出

ず、フレーム単位の編集が可能で、デジタルシネマ

等高品質が要求される4K映像の符号圧縮に最適だ。

本製品は、4Kコンテンツのライブ配信や録画・再生

機能を活用したVOD再生が可能で、コンサートやス

ポーツ等のイベント中継、4Kモニタリングによる遠

隔医療、高臨場テレプレゼンス、遠隔での映像制作

コラボレーションをはじめ多様な用途へ広がりつつ

ある。NTT-ATの

ネットワークシ

ステム事業本部

システム開発ビ

ジネスユニット

の松岡伸治主幹

部長は、「全世界

の映画館は急速

にデジタル化が

進みつつあり、

製作から上映ま

でデジタル化

されてきてい

ます。アナロ

グの35mmフィ

ルムと同レベ

ルの品質には

4Kが必要にな

ります。去る

4月 16日~ 19

日まで米国・

LVCCで開催さ

れ た “ N A B

Show 2012”で

は、カメラや

編集機材を含め4K対応製品が数多く出てきました。

本製品を“NAB Show 2012”のプレゼンテーション

ルームで説明し、非常に好評でした」と語る。

シネマ業界では、既存のフィルムコンテンツのデ

ジタル化は喫緊の課題であり、その変換にも「JPEG

2000リアルタイムコーデック」は適している。

最後に松岡主幹部長は、「ここへ来て急速に4Kのニ

ーズが高まり、それに対応して4K対応のカメラを初

め、その周辺機器が市場に出揃ってきています。出

揃いつつある機器を活用し、ニーズのある市場のワ

ークフローに入り込んだトータルソリューションを

展開していきます」と述べている。

27ビジネスコミュニケーション 2012 Vol.49 No.6

ネットワークシステム事業本部システム開発ビジネスユニット

主幹部長 松岡伸治氏

写真3 「NAB Show 2012」では、プレゼンルームで説明

世界が認めた4K/2K対応「JPEG2000リアルタイムコーデック」