ポテンシャルの高いガス開発に力を入れており、スーパー ... · 2018. 2....

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更新日:2009/10/27 調査部:市原 路子 企業トレンド:ガスシフトと石油シフト Shell, ExxonMobil, EnCana 等ホームページ他) スーパーメジャーは「石油メジャー」から「ガスメジャー」へ進化しつつある。需要及び埋蔵量の点で ポテンシャルの高いガス開発に力を入れており、スーパーメジャーのガス資産は埋蔵量ベースで 5 割近くに達している。 一方、中堅企業においては、加 EnCana が「ガス」と「石油」で分社化する方針、また、Petro-Canada を買収した同 Suncor 社が石油一貫操業会社を志向する動き、さらに、米国 Chsapeake や XTO Energy 社といったシェールガス企業が出現するなど、ガスと石油それぞれに特化させた戦略構築 の動きが目立つ。 1.企業動向、ガスシフトと石油シフト カナダの最大上流企業 EnCana は、一時金融危機で見合わせていた「石油」と「ガス」の分社化を 11 末に行うことが正式に発表された。また、同じくカナダで、オイルサンドを中心に拡大している Suncor が、同国一貫操業会社の Petro-Canada を今年 8 月に買収・統合して、オイルサンド開発及び精製の「石油」 事業をコアとする企業に生まれ変わろうと始動した。 最近の成長企業としては、 Chesapeake 社や XTO Energy 社という米国の中堅企業が思いつくが、これら 企業は、ここ数年間で埋蔵量規模、生産規模ともに倍増し、すでに 40 boe/d の生産量に達する中堅企業 である。かれらの保有資産は、大半が国内のガス資産で、しかも非在来ガスに特化したビジネスモデルで急 成長を実現させている。 一方、生産規模 200 boe/d を超えるスーパーメジャーについては、石油の下流部門(製油所、販売設備) の売却が目立ち、上流案件は LNG(受入施設を含めて)を中心にしたガス開発案件に傾倒しているようで ある。「石油メジャー」から「ガスメジャー」への転換が進んでいる。 また、スーパーメジャーより一回り小さな地域メジャーであるイタリア Eni やスペイン Repsol-YPF は地 域性が高く、地元国内のインフラ保有や販売シェアも高いのが特徴的である。生産が伸び悩む Repsol-YPF (生産量 90 boe/d)は、最近は、ロシアや中国の石油企業からの買収・株式取得のうわさが続いている企 業である。イタリアのメジャーEni は、企業に改革を求めて価値を高めたい投資家から「オイル(上流、精 製、販売)」と「ガス・パワー(特に、国内の発電部門)」事業の分社化が提案され、話題に上っている。 これまで在来型油・ガス田開発が主軸のため石油とガスを区別されて戦略立案されることは少なかったが、 昨今は、開発技術の面、価格の面において両者の関係性が著しく低下しており、上流事業における「石油」 と「ガス」のシナジー効果が一部で期待できない分野も出てきたため、それらを背景に、企業によってはガ Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含ま れるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの 投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責 任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。

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Page 1: ポテンシャルの高いガス開発に力を入れており、スーパー ... · 2018. 2. 16. · Petro-Canada (2009/8) Nexen Woodside Talisman Marathon Hess Apache AnadarkoOccidental

更新日:2009/10/27

調査部:市原 路子

企業トレンド:ガスシフトと石油シフト

(Shell, ExxonMobil, EnCana等ホームページ他)

スーパーメジャーは「石油メジャー」から「ガスメジャー」へ進化しつつある。需要及び埋蔵量の点で

ポテンシャルの高いガス開発に力を入れており、スーパーメジャーのガス資産は埋蔵量ベースで 5

割近くに達している。

一方、中堅企業においては、加 EnCana が「ガス」と「石油」で分社化する方針、また、Petro-Canada

を買収した同 Suncor 社が石油一貫操業会社を志向する動き、さらに、米国 Chsapeake や XTO

Energy 社といったシェールガス企業が出現するなど、ガスと石油それぞれに特化させた戦略構築

の動きが目立つ。

1. 企業動向、ガスシフトと石油シフト

カナダの最大上流企業EnCanaは、一時金融危機で見合わせていた「石油」と「ガス」の分社化を11月

末に行うことが正式に発表された。また、同じくカナダで、オイルサンドを中心に拡大している Suncor 社

が、同国一貫操業会社のPetro-Canadaを今年8月に買収・統合して、オイルサンド開発及び精製の「石油」

事業をコアとする企業に生まれ変わろうと始動した。

最近の成長企業としては、Chesapeake社やXTO Energy社という米国の中堅企業が思いつくが、これら

企業は、ここ数年間で埋蔵量規模、生産規模ともに倍増し、すでに 40 万 boe/d の生産量に達する中堅企業

である。かれらの保有資産は、大半が国内のガス資産で、しかも非在来ガスに特化したビジネスモデルで急

成長を実現させている。

一方、生産規模200万boe/dを超えるスーパーメジャーについては、石油の下流部門(製油所、販売設備)

の売却が目立ち、上流案件は LNG(受入施設を含めて)を中心にしたガス開発案件に傾倒しているようで

ある。「石油メジャー」から「ガスメジャー」への転換が進んでいる。

また、スーパーメジャーより一回り小さな地域メジャーであるイタリアEniやスペインRepsol-YPFは地

域性が高く、地元国内のインフラ保有や販売シェアも高いのが特徴的である。生産が伸び悩む Repsol-YPF

(生産量90万boe/d)は、最近は、ロシアや中国の石油企業からの買収・株式取得のうわさが続いている企

業である。イタリアのメジャーEni は、企業に改革を求めて価値を高めたい投資家から「オイル(上流、精

製、販売)」と「ガス・パワー(特に、国内の発電部門)」事業の分社化が提案され、話題に上っている。

これまで在来型油・ガス田開発が主軸のため石油とガスを区別されて戦略立案されることは少なかったが、

昨今は、開発技術の面、価格の面において両者の関係性が著しく低下しており、上流事業における「石油」

と「ガス」のシナジー効果が一部で期待できない分野も出てきたため、それらを背景に、企業によってはガGlobal Disclaimer(免責事項)

本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含ま

れるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの

投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責

任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。

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ス特化あるいは石油特化といった戦略的なアプローチで成功を収めたり、または、企業価値を高めるために

「ガス」か「石油」かを選択して戦略再考を図るところも出ている。

石油企業の規模比較 2007年度末(縦軸:生産量, 横軸:埋蔵量)

ExxonMobil

BP

Shell

ConocoPhillipsChevron

PetrobrasTotal

EniStatoilHydro

Repsol-YPFEnCana

0

500

1,000

1,500

2,000

2,500

3,000

3,500

4,000

4,500

0 10,000 20,000 30,000 40,000埋蔵量(百万boe)

生産

量(千

boe/d)

埋蔵量/生産量=10年

スーパーメジャー

中堅企業

EnCana分社化後とSuncor統合後のポジション

ChesapeakeXTO Energy

Petro-

Canada(2009/8)

NexenWoodside

Talisman

MarathonHess

ApacheOccidentalAnadarko

BGDevon

EnCanaガスと石油に分社化

(2009/11末)

0

200

400

600

800

1,000

0 1,000 2,000 3,000 4,000 5,000

埋蔵量(百万boe)

生産

量(千

Boe/d)

*埋蔵量及び生産量は2007年末。*EnCanaを分社化した新EnCana及びCenovusは、発表されている分社計画資料より。Petro-Canada買収後の新Suncorの埋蔵量及び生産量は2008年末の各社の埋蔵量、及び2009年第2四半期の各社生産量を単純に加算したもの。

新EnCana(ガス)

Cenovus(石油)

新Suncor

図1.スーパーメジャー及び中堅企業の規模比較 Global Disclaimer(免責事項)

本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含ま

れるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの

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任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。

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生産量に占めるガス比率

BP

Chevron

ConocoPhillips

ExxonMobil

Shell

Total

6社全体

25%

30%

35%

40%

45%

50%

2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008

BP

Chevron

ConocoPhillips

ExxonMobil

Shell

Total

6社全体

埋蔵量に占めるガス比率

BP

Chevron

ConocoPhillips

ExxonMobil

Shell

Total

6社全体

20%

25%

30%

35%

40%

45%

50%

55%

60%

65%

2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008

BP

Chevron

ConocoPhillips

ExxonMobil

Shell

Total

6社全体

図2.確認埋蔵量(SEC基準)1に占めるガス比率 図3.生産量に占めるガス比率

2. スーパーメジャー:ガス上流資産が5割に近づく(図2)

スーパーメジャー6 社全体では、確認埋蔵量(SEC 基準)のガス比率は上昇傾向で、2008 年末現在で5

割近くまで上昇している。一方で、生産量のガス比率は現在のところ40%程度で、企業によっては上昇傾

向である。今後、計上されたガスの確認埋蔵量が生産段階に移行すると、生産量に占めるガス比率は増加す

ることが予想される。

6社のうちガスシフトが進んでいるのは、Shell、次いでExxonMobilである。Shellは、1990年代終わり

以降、ガスシフトの意向を明らかにして、ガス開発及びトレーディングを行う企業として成長を目指してき

た。その結果、シェルは2000年に石油埋蔵量100億バレル程度保有していたが、2008年末の石油埋蔵量は

44億バレルと66%の減少。そのうち4分の1がオイルサンド埋蔵量である。一方で、ガスの埋蔵量は70億

BOE レベルを維持している(Shell は石油ガス合計での追加埋蔵量が乏しく、年々減少傾向にある)。

ExxonMobil は、同社が主要事業者であるカタール LNG 分のガス埋蔵量追加で埋蔵量ガス比率が増加して

1 Chevron以外の埋蔵量データは、オイルサンドを含む数字。SEC(米国証券取引委員会)の現行基準ではオイルサンドの埋蔵量は合

算が認められていない。なお、Chevronはオイルサンド事業分の埋蔵量(2007年末 436百万バレル)を記載してきたが、2008年末

の埋蔵量値では採算性への懸念から記載を見送っている(同社アニュアルレポート参照)。

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いる。そのほか、Chevron, Total, ConocoPhillipsは、ShellやExxnMobilを追走するように、近年、顕著

なガスシフトがみられる。(図2.図3.図5、図6)

一方で、2003年までガス比率がShellに次いで高かったBPは、埋蔵量や生産量ベースにおいて他のスー

パーメジャーのようなガスシフトの傾向が見受けられない。ChevronオペレーターのアンゴラLNGで13%

の権益を保有するほか、トリニダードトバゴLNG、タングーLNG事業に続く大規模なLNGオペレーター

案件がない。2003年に石油資産の多いTNK-BPに出資を行って石油埋蔵量・生産量を追加したこと、また、

石油開発ポテンシャルが高い米国メキシコ湾大水深で新規発見及び開発が進捗しているため、石油比率が高

まっている。

一方で、総じてスーパーメジャーは、石油の下流資産を中心に石油一貫操業を縮小する動きがみられる。

特に、最近は価格高騰を受けて下流部門の収益性が悪化しており、BP や ExxonMobil などは主要拠点であ

る北米において、精製部門の売却、及びサービスステーションのフランチャイズ化や資産売却を行って成熟

化した販売市場から撤退しつつある。2008 年の精製量でみると、ExxonMobil は2005 年比で 5%減で日量

540 万バレル、BP は同10%減で日量220 バレル、Shell も同15%減で日量310 万バレル。2008 年の石油

販売量もExxonMobil は 2005 年比で 10%減、BP は同 3%減、同 Shell も同7%減で規模の縮小が進んで

いる。

これまで石油供給において、開発から精製、販売までの一貫操業で安定した売り上げと収益を上げてきた

スーパーメジャーは、徐々にガスの一貫操業ビジネスに転換を行っている。シェルに続き、ガスシフトが鮮

明なExxonMobilは、米国や欧州でのLNG受入基地を建設して、LNG開発とともにLNGトレーディング

を手がけていく方向である。

企業 参加国・プロジェクト名 Shell ナイジェリア、オマーン、サハリン 2、カタールガス 4、

ゴーゴン、マレーシア、ブルネイ、NWS Exxon カタールガスⅡ、ラスガスⅡ、ラスガスⅢ、サハリン1、

ゴーゴン、インドネシア(アルン、ボンタン) Total ナイジェリア、イエメン、カタールガスⅡ、アンゴラ、ノ

ルウェー BP トリニダード、インドネシア(タングー)、アンゴラ、ア

ブダビ Chevron アンゴラ、ゴーゴン、NWS ConocoPhillips ダーウィン(豪)、カタールガスⅢ

図4.開発中及び生産中の主要参画LNG事業

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図5.ExxonMobil 「ExxonMobilの2009年3月投資家セミナー」2009年3月 資料

図6. ShellのLNGポートフォリオ 2009年3月 資料

3. 「ガス」と「石油」の選択 -メジャークラス以下の個別具体的な事例を通して‐

1) EnCanaの分割戦略:

EnCanaは、北米内の非在来資源開発を行う上流専業会社である。カナダ最大の上流企業で、スーパーメ

ジャーのConocoPhillipsに次ぐ北米最大の企業でもある。同社は、昨年5月、「ガス」部門と「石油」部門

に分割する方針を発表したが、その後の金融危機のため計画を一時延期、今年9月に、11月末に当初予定の

分社化を行うことを正式に発表した。これにより、EnCanaは非在来ガス開発を専業とする企業として再出

発し、新しく設立するCenovos社はオイルサンド開発から精製を行う一貫操業の石油会社を目指す。 Global Disclaimer(免責事項)

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北米ではガス価格と石油価格の価格差が広がっていたことから、EnCanaの経営陣は他の同業者に比較し

てオイルサンド事業部門が過小評価されていると判断し石油とガスを分離することで企業評価を高める方針。

もともとEnCanaは、非在来資源を開発することを企業戦略として成長しており、北米にオイルサンド資

産や非在来ガス資産(米国BarnettシェールやカナダHorn Riverシェールなどのガス資産)を保有する企

業。上流案件のオイルサンド開発と非在来ガス開発のシナジー効果が乏しいこと、石油とガスの価格差が拡

大していることなどから、「石油」「ガス」別でポートフォリオを再構築することにより、企業価値の最大

化を目指す。石油分離に伴い、EnCana の収益性の低いノンコアガス資産について年間 5 百万ドル‐10 億

ドル規模で売却していくことも経営陣から示されている。

図7.2社に分割される資産

非在来ガス企業 新EnCana(GasCo)社と非在来石油開発案件をコ

アとする石油一貫企業Cenovus社に分割する。

背景:石油価格とガス価格が広がり株価の過小評価に陥っている。

目的:長期的な企業価値を向上させるため。

・ それぞれの戦略に沿って資産ポートフォリオを構築。

・ 石油の一貫操業を強化する。

・ 企業ポテンシャルを評価しやすくする。

2)Suncor、オイルサンドに集中

今年3月に加Suncor社(26万boe./d)は、同一貫操業会社Petro-Canada2(420万boe/d)を買収する

ことを発表。すでに8月1日付けに統合。前述の通り、EnCanaが分社化して規模縮小を予定してい

ることから、同社はカナダ最大の上流企業になると見込まれる。現在の生産量は68万boe/d。

SuncorのCEOであるRick Georges氏は、オイルサンド事業を上流開発のコアとして精製・販売ま

でを行う、石油一貫操業会社を目指す戦略(図8)を発表している。統合後、まずは開発案件の優

先順位を明確にして、その中でノンコア資産は売却してポートフォリオの組み直しを行う。中でも

旧Petro-Canadaが保有していた北海、リビア、シリアなどの国外資産は評価によっては売却を行

う方針が示されている。 2 Petro-Canadaは元国営企業。90年代に株式売却により部分民営化が始まり、2004年に完全民営化。石油天然ガ

スレビュー 2009年3月号参照 小熊氏「Petro-Canada の軌跡」。また、2009年3月の統合発表時の内容は、

「カナダ:Suncor/Petro-Canada統合, “世界競争力を有すエネルギー統合企業”を目指す(短報)」をご参照く

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旧Suncor社は、オイルサンド事業として、露天掘り事業を大規模に推し進め、またSAGD法(不

深層からのビチューメン回収法の一つ)によりFirebag事業, Christina Lake事業の生産・開発事業

をオペレーターとして推進している。旧Petro-Canadaは、露天掘りSyncrude事業に参画し、SAGD

法ではMacKay River生産・開発事業、FortHills開発事業を推進している。

図8.新Suncor社の企業戦略(オイルサンドをコアにした一貫操業企業):Suncor社資料を元に作成

図9.統合前後のSuncor社の生産量 Suncor社資料より

ださい。 Global Disclaimer(免責事項)

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3)シェールガスで急成長する米国中堅企業

次に、シェールガスなどの非在来ガス資源開発に特化して成功している米国2企業をご紹介したい。昨今

のシェールガス開発において、米国中堅企業であるChesapeake、XTO Energy, Devon, EnCana, Anadarko

などが操業面でのパイオニア的存在として各地のシェールガスエリアでの開発に深く携わるが、中でも、

Chesapeake とXTO Energyはシェールガス開発事業に特化して急成長している。両社は、2000年に入っ

てから鉱区買収と探鉱で急成長を続け、現在では、Chesapeake(本社:オクラホマ)は、2000年時の6倍

の40万boe/d弱、埋蔵量で12TCF(約20億バレル)の中堅企業である(図10)。XTO Energy(本社:Fort

Worth)も同様で、直近 4 年間で約 2.5 倍に埋蔵量及び生産量を増大させており、非在来資源のタイトサン

ド、シェールガス、コールベットメタンの開発に特化する企業である。

図10.急成長するChesapeake社の埋蔵量と生産量

2009 年第 2 四半期ガ

ス米国生産量(百万

cf/d)

2008 年末米国ガス

埋蔵量(bcf)

1. XTO Energy 2,352 11,803 2. BP 2,339 14,532 3. Anadarko 2,336 8,105 4. Chesapeake 2,245 11,327 5. Devon 2,129 8,369 6. ConocoPhillips 2,095 10,920 7. EnCana 1,581 5,831 8. Chevron 1,395 2,709 9. ExxonMobil 1,243 11,778 10. Williams 1,180 4,339 図11.米国ガス生産量のランキングとガス埋蔵量

現在、両者は米国のガス企業として同国ランキングの上位を占める。XTO Energyは、米国最大の生産Global Disclaimer(免責事項)

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者であり、次いでBP、Anadarko, Chesapeake、Devonと続く(図11)。ガス埋蔵量ベースでも、第1位

のBPに次いで、第2位がXTO Energy、第3位にExxnMobil,第4位にChesapeake、第5位にConocoPhillips

である。

なお、XTO Energyの戦略(アニュアルレポート2008より)は、1)非在来ガスをコアエリアとして、

探鉱・開発及び長期的視野での買収を繰り返すことで埋蔵量及び生産量を拡大すること。さらに、2)十分

なキャッシュフローを確保するために、一定量の価格ヘッジングを行うこと、3)コアエリアである非在来

ガス(タイトガス、CBM、シェールガス)開発や、シェールオイル開発に精通した熟練技術スタッフ及びマ

ネージメントスタッフの雇用維持。これらの戦略に沿って、ガス価格が下落した 2009 年においても同社は

ガス生産量目標として前年比20%増の2.8bcf/d(約47万boe/d)を目指している。

4)Eniの「ガス&パワー」分離提案

ニューヨークのアセットマネージメント企業Knight Vinke社のEric Knight社長は、2009年9月、ENI

に対して企業価値の増大を図ることに繋がるとして「ガス&パワー(主に発電部門)」を分離することを提

案した。10月初めには、ミラノで本件に関するプレゼンテーションを開催している。

同氏の試算によると、ENIの現行時価総額は、約500億ユーロ分の過小評価の状態であると指摘。資金調

達の面でも制約を受けており、昨今の配当減額にも繋がっていると指摘。また、上流事業の評価・成長の足

かせになっていると評価。さらに、現体制でのエネルギーセキュリティの追求は、雇用面でも制約を与えて

いる可能性があると指摘する。

同氏はEniの1%株を所有する株主であり、保有企業に企業改革を提案する。同氏は、以前にもShellに

対して英国とオランダの2拠点体制を見直すよう提言したことでも有名である。

Eric Knight氏は、すでにEniの経営陣と本件について議論を行ったようで、CEOのScaroni氏からは、

投資家からの提案に対してオープンであるものの、このままの体制でさらに強靭な企業を目指すと分離を否

定している。また、イタリア政府が30%の株主であることから、政府が分割に同意する可能性はないとみる

向きが強く、Knight氏の提案は報じられているものの、進展の可能性は低いとみられる。

Eni は、上流事業を国外で展開する一方で、イタリアの向けの輸入パイプライン及び国内のパイプライン

網を有しており、あわせてガス販売を欧州内で広く行っている。あわせて石油についても、国内及び欧州内

に製油所を保有し、国内を中心に SS 販売を行う一貫操業会社でもある。上流部門では、国内外での上流・

LNGのほかに、Saipemという子会社を通じて海洋開発に関するエンジニアリング部門を有する点も特徴的

である(図12)。

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投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責

任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。

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図12.【Eniの概要】

Global Disclaimer(免責事項)

本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含ま

れるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの

投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責

任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。

上流E&P ガス&パワー 精製・販売 エンジ・建設

・石油天然ガス探鉱、開発、生

産。 ・主に、イタリア国内、北海、

メキシコ湾、南米、豪州、その

ほか、カスピ海、中東、極東、

インド、ロシア、アラスカ。

・ガスの供給(LNG を含む)、再ガ

ス化、輸送、貯蔵、配給、販売事業。

・発電(7ヶ所)、売電事業。 ・欧州を中心とした統合型ガスビジ

ネスを展開。 ・供給インフラ:ロシア、アルジェ

リア、北海、リビアからのイタリア

向け輸入PL, 及び国内PLネットワ

ーク、国内ガス貯蔵施設。

・石油の精製及び販売。 主に欧州地域。 ・イタリア国内及び欧州で精製を行

い、イタリアでの最大の製品供給者。

・主に、海底パイプライン

敷設、プラットフォームの

建設、掘削サービス、及び

石油化学プラントの EPC事業、

・AgipブランドでのSS販売。

・大型沖合開発。

部門収益:€80億 投資額:€122億 生産:179boe/d 埋蔵量:66億バレル 従業員:11,194人

部門収益:€27億 投資額:€33億 ガス販売:104.23bcm 売電:29.93TWh 従業員:11,389人

部門収益:€5億 投資額:€10億 精製:72万boe/d 欧州内の卸売:25万boe/d Agip SS数:5956ヶ所 従業員:8,327人

部門収益:€80億 投資額:€20億 受注額:€139億 従業員:35,629人

純利益 €102億 投資額:€189億 キャッシュフロー:€218億 従業員 78,880人 (2008年末)

4. まとめ

最近の傾向として、石油開発技術とガス開発技術(特に非在来資源開発において)、石油供給インフラと

ガス(LNG)供給インフラ、販売価格、それぞれにおいて非関連性が高まっていることから、「石油」「ガ

ス」の特性にあった戦略立案を目指す動きが目立っている。

スーパーメジャーは、企業によっては「石油メジャー」から「ガスメジャーへ」に変身する転換期にあり、

また、地域メジャーや中堅企業にとっても事業が多様化する中で事業の絞込みやポートフォリオの組み直し

などを通じて、新しいビジネスモデルに変革を迫られている企業がある。特に、この動きは非在来資源開発

が先進している北米地域で顕著である。

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【参考】背景:「ガス」と「石油」との比較

1) 需要への期待が大きい天然ガス(参考1.参考2)

国際エネルギー機関 IEA の 2008 年に発表された長期見通しでは、2030 年までに石油 1.0%、ガス

1.8%の年率で需要が増加するとみている。また、ExxonMobil の長期見通しでも同様に、石油 0.9%、

ガス 1.8%の増加が見込まれている。石油は輸送用燃料としての利用に特化し、ガスは環境面からも発

電用や産業用、民生用としての利用が高まるとの見通しである。

参考1.国際エネルギー機関の長期見通し「World Energy Outlook 2008」

石油 

ガス 

参考2.ExxonMobil発表の2030年までの長期見通し(2008年同社アニュアルレポートより) Global Disclaimer(免責事項)

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2) 埋蔵量の面でもポテンシャルが高い天然ガス (参考3)

天然ガスは、中東、ロシアのほか、アジア太平洋、極地(アラスカ、カナダ、ノルウェー、ロシアなど)

での埋蔵量が豊富である。各地に残存している点でも石油資源よりアクセス性が高いと考えられている。

石油鉱業連盟の発表によると、2005年末の埋蔵量評価は、石油が確認埋蔵量1.02兆バレルで可採年数38

年分に相当し、ガスは確認埋蔵量 6,137TCF で、可採年数は 51 年である。そのほかに、埋蔵量成長、未発

見資源の確認が進めば、さらに埋蔵量は増えることが見込まれている。これらに加えて、オイルサンド、オ

イルシェールなどの非在来石油及びシェールガス、CBM などの非在来ガスが賦存することが確認されてお

り、そのうち一部が経済的に開発されている。

参考3.石油及びガスの資源量評価(石油鉱業連盟:2005年末評価)

-

1,000

2,000

3,000

4,000

5,000

6,000

7,000

(TCF)

既生産量 確認埋蔵量(51年) 埋蔵量成長(30年) 未発見資源量(17年)

2005年末の世界のガス資源量評価(出所:石油鉱業連盟2007)

北米

ラテンアメリカ

アジア太平洋

東欧

西欧

アフリカ

中東

旧ソ連

()内は可採年数

-

2,000

4,000

6,000

8,000

10,000

12,000

(億バレル)

既生産量 確認埋蔵量(38年) 埋蔵量成長(16年) 未発見資源量(14年)

2005年末の世界の石油資源量評価(出所:石油鉱業連盟 2007)北米

ラテンアメリカ

アジア太平洋

東欧

西欧

アフリカ

中東

旧ソ連

()内は可採年数

3) 開発技術の高度化/特殊化

石油・ガスの非在来資源開発が進展している。それぞれ資源の賦存状況に応じて開発方法が異なり、技術

の高度化/特殊化が進んでいる。

原油の流動性が低い重質油開発、流動性のないオイルサンドの開発、成熟度が足りないケロジェンが貯留

するオイルシェールの開発など、取り出しにくい原油を開発するための投資が増えてきている。オイルサン

ド開発やオイルシェール開発では、露天掘りなどの古典的な生産方法だけでなく、深層にある資源を取り出

すための坑内回収法の開発を中心にそれぞれの分野で発展している。たとえば、オイルシェールは、コロラ

ド州やユタ州などロッキーエリアに膨大に賦存しており、スーパーメジャーの Shell は、米国エネルギー省

の実証研究用の鉱区リース付与を受けて当地で In-Situ回収法の実証研究を進めているが、それらの技術を、

ヨルダンでのオイルシェール開発に適用することを計画している。

ガス開発に関して、その推進には、大水深など難易度の高いロケーションでの開発とともに、かつ LNG

(天然ガス液化事業)開発を推進する能力が求められている。LNG開発のコンセプト(メガトレインLNG、

FLNG化)も多様化し始めている。一方、陸上においては、北米を中心にシェールガス(頁岩)やコールベ

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ットメタン(石炭層)など非常に浸透性の悪い地層に貯留しているガスを開発する事業が増えている。水平

坑井を多数掘削し、坑井にフラクチャリングを的確に施し、効率的にガスを取り出す一連のノウハウ(参考

4)は一部の先行企業により蓄積・進展している。

〈参考4.シェールガス生産技術〉

4) 市場性との関連

市場供給を幅広く可能とするため、上流開発は精製とセットとなった新たな開発モデルを要する事業も増

えている。

たとえば、ガス分野では、ガス開発ととともにガス供給インフラの整備が求められる。これまで国内パイ

プライン網による供給が主流であったが、世界的なガス需要の高まりにより、ガス需給ギャップが広がって

いる地域が増えている。LNGによる輸入には、受け入れ側にLNG気化施設の設置が必要である。石油の分

野では、たとえば、カナダでのオイルサンド開発において、採取されたビチューメンを現地で高品位の合成

油に精製して各地の製油所に供給するケースや、その

ままビチューメンで処理可能な製油所に供給するケー

スがあり、下流設備への投資が必要である。

原油及びガス価格

0

20

40

60

80

100

120

140

2001

年1月

2001

年7月

2002

年1月

2002

年7月

2003

年1月

2003

年7月

2004

年1月

2004

年7月

2005

年1月

2005

年7月

2006

年1月

2006

年7月

2007

年1月

2007

年7月

2008

年1月

2008

年7月

2009

年1月

2009

年7月

データ出所:米国エネルギー省ホームページ

(石油:ドル/バレル)

0

5

10

15

20

25

(ガス価格:ドル/百万

BTU)

米国WTI原油価格

米国の天然ガス価格(ヘンリーハブ価格)

別途、ガス開発方法の一つとして、GTLなどガスを

石油製品化して市場に供給する商業化もある。

参考5.原油価格とガス価格

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5) ガス価格と石油価格の非連動性(参考5)

近年、ガス価格(米国)と石油価格(米国及び国際市場)の価格差や非連動性が顕著である。2008年の価

格スパーク時は両者の連動性はあるが、その価格差が広がっていた。2009年は、米国ガス価格が下落傾向で

あるが、原油価格は上昇基調を示しており、連動性が乏しい状況である。

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