イーサネットによる長距離リアルタイム動画伝送システムmoving picture is...

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イーサネットによる リアルタイム システム イーサネットによる長距離リアルタイム動画伝送システム Long-distance Real-time Moving Picture Communications System on the Ethernet Network ,シングルモード ファイバケーブルに対 した,イーサネットによる リアルタイム シス テムを した。 システム ,シングルモード ファイバケーブルに対 した いて, LANLocal Area Networkあるイーサネット ネットワークを し,ネットワーク MPEG2 によりデジタル圧 した データを IP マルチキャストにより する。閲 したい ,カメラ てディスプレ GUIGraphic User Interface)を いて い, えるように っている。 システム ネットワーク ,システムを する について ,システムについて う。 キーワード: イーサネット,MPEG2ファイバ,IP マルチキャスト Summary We have developed a long-distance real-time moving picture communications system on the Ethernet network. Moving picture is transmitted through the Ethernet network, a LAN (Local Area Network) which is most widely used. On this system, moving picture is encoded by MPEG2 (Moving Picture Experts Group 2), and multicast through the Ethernet network consisting of SMF (Single Mode Optical Fiber) and communication equipment. This system has easy access to moving picture by GUI (Graphic User Interface). This paper describes the network architecture and the function of device. Key wordsEthernet, MPEG2, Moving picture transmission, Long-distance transmission, Optical fiber, IP multi- cast *1  ケーブル システム営 *2  ネットワーク *3  システム *1 栄 永  *2 *2 S. Mihara K. Einaga N. Moriyama *1 井  *3 *2 K. Tsuji N. Sakai T. Hirashima 1.まえがき イーサネット されている LANLocal Area Networkあるが,QoS あるためリアルタイム されるデータ, データ しい されていた。 しかし,イーサネット すよう して おり,これを きれ メリット に大き る。 ( いため コスト )IP ネットワークに対する *システム + , 格によるオープンシステム - システムに対 そこ ネットワーク し, する“イーサネットによる リアルタイム システム”を した する。 システム ネットワーク ,システムを する について ,システムについて う。 2.ネットワーク構成 システム ネットワークを する各 について す。 2.1 ネットワーク構成概要 2.1.1 システム構成 システム システム Fig. 1 す。

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Page 1: イーサネットによる長距離リアルタイム動画伝送システムMoving picture is transmitted through the Ethernet network, a LAN (Local Area Network) which is most widely

イーサネットによる長距離リアルタイム動画伝送システム

イーサネットによる長距離リアルタイム動画伝送システムLong-distance Real-time Moving Picture Communications System on the Ethernet Network

要  約

我々は,シングルモード光ファイバケーブルに対応した,イーサネットによる長距離リアルタイム動画伝送システムを開発した。本システムでは,シングルモード光ファイバケーブルに対応した通信機器を用いて,最も汎用的な LAN(Local

Area Network)であるイーサネットでネットワークを構築し,ネットワーク上でMPEG2方式によりデジタル圧縮した動画データを IPマルチキャストにより伝送する。閲覧したい動画の選択,カメラの操作などは全てディスプレイ上のGUI(Graphic User Interface)を用いて行い,手軽に動画の閲覧が行えるようになっている。

本報では本システムのネットワークの構成,システムを構成する機器について述べ,システムについての概説を行う。キーワード:イーサネット,MPEG2,動画伝送,長距離伝送,光ファイバ,IPマルチキャスト

Summary

We have developed a long-distance real-time moving picture communications system on the Ethernet network.

Moving picture is transmitted through the Ethernet network, a LAN (Local Area Network) which is most widely used.

On this system, moving picture is encoded by MPEG2 (Moving Picture Experts Group 2), and multicast through the

Ethernet network consisting of SMF (Single Mode Optical Fiber) and communication equipment.

This system has easy access to moving picture by GUI (Graphic User Interface).

This paper describes the network architecture and the function of device.

Key words:Ethernet, MPEG2, Moving picture transmission, Long-distance transmission, Optical fiber, IP multi-

cast

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*1 電線ケーブル事業本部 公共システム営業部  *2 光・電子事業部 ネットワーク機器部*3 光・電子事業部 通信システム部

三 原 慎一郎*1   栄 永 清 志*2   守 山 直 志*2

S. Mihara K. Einaga N. Moriyama

辻   貢 司*1   酒 井 直 人*3   平 嶋 利 洋*2

K. Tsuji N. Sakai T. Hirashima

1.まえがき

イーサネットは全世界で使用されている最も汎用的なLAN(Local Area Network)であるが,QoSを保証しない

伝送方式であるためリアルタイム性を要求されるデータ,特に動画データの伝送には対応が難しいとされていた。しかし,イーサネットは以下に示すような特長を有して

おり,これを動画伝送に適用できればそのメリットは非常に大きなものとなる。�汎用性が高いため低コスト

�IPネットワークに対する適用度が非常に高い�システムの増設が容易�技術進歩が最も速い

�世界標準の統一規格によるオープンシステム�分散型システムに対応

そこで我々は,当社のネットワーク技術を応用し,上記特長を有する“イーサネットによる長距離リアルタイム動

画伝送システム”を開発したので報告する。本報では本システムのネットワークの構成,システムを

構成する機器について述べ,システムについての概説を行

う。

2.ネットワーク構成

本システムのネットワークを構成する各機能について以下に示す。

2.1 ネットワーク構成概要

2.1.1 システム構成

本システムのシステム構成を Fig. 1に示す。

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三 菱 電 線 工 業 時 報 第97号 平成13年1月

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動画を撮像するカメラの信号は通常,NTSC相当のアナ

ログ信号であるため,イーサネット・ネットワーク上を伝送するためには信号の符号化(デジタル化)が必要となる。そこで本システムでは符号化の方法として,動画性能,画

質などを考慮しMPEG2方式を採用した。従って,動画映像はMPEG2方式によりデジタル信号に

符号化されてネットワーク上を伝送され,閲覧する場所に

おいてNTSC相当のアナログ信号に復号化されTVモニタに出力される。システム構成としては,現地の動画を撮像するカメラを

符号化装置である“MPEG2エンコーダユニット”を通じて,また撮像した動画を閲覧するTVモニタは復号化装置である“MPEG2デコーダユニット”を通じてそれぞれイーサ

ネット・ネットワークに接続するシステム構成とした。また,撮像した動画データを蓄積する動画サーバは独自

にイーサネット・ネットワークに接続する。

2.1.2 システム伝送容量

イーサネット・ネットワークの伝送容量は,現状の段階

で10Mbps,100Mbps,1Gbpsの3種類の選択肢がある。 本システムでは,システムを構成する通信機器のコスト,性能,実績,伝送容量などを考慮して100Mbps(ファスト・

イーサネット)を採用した。

2.1.3 長距離対応

イーサネットでは全 2重通信が行える媒体占有型の通信機器(スイッチングハブ)に100BASE-FXの光インタフェースを適用することにより長距離伝送が可能となる。

100BASE-FXでは長距離伝送に関する規格を定めていないが,使用する光部品の仕様を長距離伝送に適応するものにすることにより,イーサネットによる長距離伝送が可能に

なる。そこで,イーサネットのデータ信号仕様(IEEE802.3),

光インタフェース(100BASE-FX)にそれぞれ適合し,シ

ングルモード光ファイバに対応した長距離通信が可能な通信機器である“データ送受信ユニット”を開発し,本システムに採用した。

2.2 ネットワーク形態

本システムのネットワーク形態を Fig. 2に示す。

ネットワーク形態は,将来,システムの増設が容易に行

えるよう,通信機器(データ送受信ユニット)をカスケード接続することで構成するバス型を採用した。

2.3 動画データの伝送

本システムでは,収集した動画データを効率良く配信するために動画データの伝送に I P マルチキャスト技術を適

用した。通常のデータ通信は,ユニキャストと呼ばれ,電話あるいはファックスに見られるような 1対 1の通信を基本としている。このため,複数の受信を希望する配信先に

データを送るためには,同じデータを複数回送信する必要があり,配信先数の増加は通信帯域の増加につながる。このような方式で,動画のように大きな帯域を必要とする

データを配信する場合,リアルタイムの通信は困難となり,ファイル転送のような方式を採用せざるを得なくなる。本システムで採用した IPマルチキャスト技術は,放送

に見られるような通信方式で,ユニキャストにみられるような配信先の増加に伴う通信帯域の増加が無くなり,将来のシステム拡張に対応した柔軟なシステム構成が可能と

なる。Fig. 3に IPマルチキャストのイメージ図を示す。

Fig. 1 System configuration

システム構成

エンコーダユニット

エンコーダユニット

エンコーダユニット

CCTVカメラ

MPEG2エンコーダユニット

MPEG2デコーダユニット

MPEG2デコーダユニット

MPEG2デコーダユニット

イーサネット・ネットワーク

CCTVカメラ

MPEG2エンコーダユニット

CCTVカメラ

MPEG2エンコーダユニット

TVモニタ

TVモニタ

TVモニタ

動画サーバ

Fig. 3 Multicast

マルチキャスト

エンコーダユニット

イーサネット・ネットワーク

MPEG2(動画)マルチキャストデータ

MPEG2エンコーダ�ユニット

MPEG2デコーダユニット

MPEG2デコーダユニット

MPEG2デコーダユニット

CCTVカメラ

MPEG2エンコーダユニット

データ送受信ユニット

データ送受信ユニット

データ送受信ユニット

データ送受信ユニット

データ送受信ユニット

MPEG2エンコーダユニット

MPEG2エンコーダユニット

MPEG2エンコーダユニット

MPEG2エンコーダユニット

CCTVカメラ

CCTVカメラ

CCTVカメラ

CCTVカメラ

ネットワーク構成部分

シングルモード光ファイバ

Fig. 2 Network topology

ネットワーク形態

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イーサネットによる長距離リアルタイム動画伝送システム

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I P マルチキャストは,一斉同報型の通信方式となるため,本技術を適用し,ネットワーク上に全動画データ

(MPEG2データ)を常時配信することにより,ネットワーク上の位置,接続する動画閲覧端末(MPEG2デコーダユニット)の数量に制限を受けることなく,どの動画閲覧端

末からでも全カメラの動画が閲覧可能なシステムが実現できる。

2.4 伝送データの分散

イーサネットでは伝送する各データの帯域を保証しない。しかし,本システムで取り扱うデータは動画データで

あるため,本データの容量がネットワークの許容容量を超えると,データのリアルタイム性の欠如,パケットの損失などが生じ,正常なシステム運用ができなくなる。

そこで,本システムではシステム設計の段階から,以下に示す方法で伝送データの分散を計り,ネットワーク中のデータ伝送容量が,許容容量を超えないような設計を行っ

た。

2.4.1 動画系とデータ系のネットワーク分割

ネットワークを,動画データが伝送される動画系ネットワークと,カメラ,MPEG2エンコーダユニットなどの各機器を操作する信号が伝送されるデータ系ネットワークに

分割する。データ系ネットワークでは,本システムで取り扱う以外

のデータ(例えば,音声信号,センサ信号,静止画信号な

ど)も伝送でき,システム全体としてマルチメディア伝送を達成する。

Fig. 4に分割したネットワークに伝送する各データの伝

送経路を示す。

2.4.2 動画データの圧縮レートの固定と動画系ネット

ワークの分割

MPEG2方式では動画データの圧縮レートを,1画像当た

り2~30Mbps程度の範囲で設定できる。本システムでは,ネットワーク容量,画質などを考慮し,復号化した際にNTSC相当の画質を得ることができる6Mbpsを圧縮レート

として採用した。本システムでは常時全ての動画データを伝送すること

を基本としているため,ネットワークに接続するカメラの

台数が多い場合,動画データの伝送容量が,ネットワークの許容伝送容量を超えてしまう。

そこで,1つのネットワーク(系統)内を伝送する最大動画データ数を 6画像(カメラ 6台)と制限し,画像数が増えるごとにネットワーク(系統)を増やし,動画閲覧場所

でこれらを束ねる構成とした。Fig. 5に動画系ネットワークの構成を示す。

なお,最大動画データ数(6画像)は,イーサネット・ネットワークが快適に使用できるデータ伝送容量が総伝送容量の 40%(本システムの場合,40Mbps)であることを基

準とし,以下の式より算出した。40(Mbps)÷ 6(Mbps/画像)≧ 6(画像)

2.5 ネットワーク構成例

Fig. 6に上述の項目を考慮して設計したシステムのネットワーク構成を示す。

カメラ 12台により撮像を行い,監視所のTVモニタ 2台で動画の閲覧を行う。TVモニタはそれぞれ全カメラの動画

を選択して閲覧でき,閲覧しているカメラの操作が行える。

Fig. 4 Transmission route

各データの伝送経路

エンコーダユニット

MPEG2エンコーダユニット MPEG2

デコーダユニット

動画(MPEG2)データ

動画系ネットワーク

カメラ操作信号

データ系ネットワーク

Fig. 5 Configuration of moving picture network

動画系ネットワークの構成

カメラ�

カメラ�カメラ�カメラ�カメラ�

MPEG2�デコーダ�ユニット�

動画データ�配信装置�

動画系ネットワーク�カメラ(動画):6台�

動画系ネットワーク�カメラ(動画):6台�

動画系ネットワーク�カメラ(動画):6台�

動画系ネットワーク�カメラ(動画):6台�

カメラ�

Fig. 6 Configuration of network

ネットワーク構成例

監視所

監視所

観測地

映像系ネットワーク

データ系ネットワーク

凡例

TV

TV

TV

TVモニタ

CCTVCM ENC

DATA

DATA

CCTV

CCTV CCTVカメラ運台

LAN配信装置

動画データ配信装置

動画サーバ

DATA

DATA

DATA

DATA

DEC

DEC

DEC

ENC

LAN-A

LAN-A

LAN-B

LAN-B

LAN-B

M-SV

M-SV

CM

CM ENCDATA

DATA

CCTVCM ENC

DATA

DATA

CCTVCM ENC

DATA

DATA

CCTVCM ENC

DATA

DATA

CCTVCM ENC

DATA

DATA

CCTVCM ENC

DATA

DATA

CCTVCM ENC

DATA

DATA

CCTVCM ENC

DATA

DATA

CCTVCM ENC

DATA

DATA

CCTVCM ENC

DATA

DATA

CCTVCM ENC

DATA

DATA

データ送受信ユニット

MPEG2デコーダユニット

MPEG2エンコーダユニット

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三 菱 電 線 工 業 時 報 第97号 平成13年1月

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3.システム構成機器

本システムを構成する機器の概要を以下に示す。

3.1 データ送受信ユニット

Fig. 7, Table 1にそれぞれデータ送受信ユニットの外観および主仕様を示す。

データ送受信ユニットは,本システムにおいてイーサ

ネット・ネットワークを構築する通信機の機能を保持している。本装置は全2重通信の媒体占有型の通信機器であり,光インタフェースがシングルモード光ファイバにおける

光通信に適応し,イーサネット形式によるデータの長距離伝送を実現する。

10BASE-T/100BASE-TXインタフェース部分にMPEG2

エンコーダユニットなどの現地機器を接続し,シングルモード光ファイバへは100BASE-FXインタフェースを用いて接続する。

個々のシステム要求に応じて,VLAN,スパニングツリー・アルゴリズムなどの機能を使い分け,ネットワーク上を伝送するデータの流れを制限する。

3.2 動画データ配信装置

Fig. 8, Table 2にそれぞれ動画データ配信装置の外観お

よび主仕様を示す。動画データ配信装置は,分割された動画系ネットワーク

を束ね,MPEG2デコーダに対して必要な動画データを選

択して伝送する機能を保持している。それぞれのネットワークが接続されている各ポートの開閉をデコーダユニットからの指令に従い能動的に行うことにより,デコー

ダユニットに伝送される動画データ数を調整する。

3.3 MPEG2エンコーダユニット

Fig. 9, Table 3にそれぞれエンコーダユニットの外観および主仕様を示す。

MPEG2エンコーダユニットは,FA用PCベースのマシーンにMPEG2方式での符号化などの各種機能を付加したもので,カメラなどから出力されるNTSC相当のアナログ信

Fig. 7 Appearance of the communication unit

データ送受信ユニット 外観

Table 1 Specification of the communication unit

データ送受信ユニット 主仕様

項目

適合規格

データ伝送速度

ポート構成

適合ケーブル

通信モード

光送信,光受信レベル

最大許容伝送路損失

管理プロトコル

その他機能

外形寸法,質量

動作温度範囲

駆動電源,消費電力

仕様

ANSI/IEEE Std. 802.3 10BASE-T

ANSI/IEEE Std. 802.3 u 100BASE-TX

ANSI/IEEE Std. 802.3 u 100BASE-FX

10Mbps,100Mbps

10BASE-T/100BASE-TX:6ポート

100BASE-FX:2ポート

10BASE-T/100BASE-TX:UTPケーブル

100BASE-FX:シングルモード光ファイバ

半 2重通信,全 2重通信

- 5dBm以上,- 35dBm~ 0dBm

30dB

SNMP,TELNET

VLAN,スパニングツリー・アルゴリズム

440(W)× 64(H)× 305(D)mm,5.5kg

0~ 40°C

100V,80W以下

Fig. 8 Appearance of the data distributor

動画データ配信装置 外観

Table 2 Specification of the data distributor

動画データ配信装置 主仕様

項目

適合規格

データ伝送速度

ポート構成

適合ケーブル

通信モード

管理プロトコル

その他機能

外形寸法,質量

動作温度範囲

駆動電源,消費電力

仕様

ANSI/IEEE Std. 802.3 10BASE-T

ANSI/IEEE Std. 802.3 u 100BASE-TX

10Mbps,100Mbps

10BASE-T/100BASE-TX:8ポート

10BASE-T/100BASE-TX:UTPケーブル

半 2重通信,全 2重通信

SNMP,TELNET

VLAN

440(W)× 64(H)× 305(D)mm,5.5kg

0~ 40°C

100V,80W以下

Fig. 9 Appearance of the MPEG2 encoder unit

MPEG2エンコーダユニット 外観

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イーサネットによる長距離リアルタイム動画伝送システム

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号をMPEG2方式によりデジタル圧縮し,イーサネット・ネットワークに適合したデータ形式で I P マルチキャスト配信を行う装置である。

さらに,MPEG2デコーダユニットからのカメラ操作信号をカメラ側に中継する機能も備えている。また,動画データの符号化と同時に,常時蓄積,上書き

を行う機能を装備することができ,さらに外部からの制御信号を受信することで,常時蓄積,上書きを繰り返しているデータについて,制御信号受信時から以降の保存を行う

ことができる。MPEG2エンコーダユニットは専用のソフトウェアによっ

て制御され,WindowsNTをベースに以下に示す機能を備え

ている。

�MPEG2ストリーム制御

MPEG2エンコーダカードを制御して,動画の符号化(エンコード)を行い,作成された動画ストリームの蓄積および送信の制御を行う。

MPEG2ストリームは蓄積と同時にネットワークへ IPマルチキャストされ,放送型配信システムを実現している。

�遠隔監視制御サービス本システムは長距離に対応したシステムとなるため,遠

隔監視制御機能は,必須のものとなる。そのため遠隔監視

制御を行うプロトコルとして,今回のシステムでは,TCP/

I P 通信で一般的な監視管理プロトコルとして利用されている SNMP(Simple Network Management Protocol)を

採用した。TCP/IP標準の SNMPを採用したことで,SNMP管理装

置を用いて,通信機器(LAN機器)の管理手法と同様の手

Table 3 Specification of the MPEG2 encoder unit

MPEG2エンコーダユニット 主仕様

項目

エンコード機能

伝送方式

外部インタフェース

中央処理装置

その他機能

適用OS

外形寸法,質量

動作温度範囲

駆動電源,消費電力

仕様

MPEG2ビデオ ISO/IEC 13818-2 MP@ML準拠

MPEG1オーディオ レイヤ2 ISO/IEC 11172-3準拠

MPEG2 SYSTEM ISO/IEC 13818-1準拠

720(pel)× 480(line)/ 352× 480

トランスポートストリーム

入力信号:NTSCコンポジット,S映像 

UDP,IPマルチキャスト

10BASE-T:1ポート,100BASE-TX:1ポート

RS232C:2ポート,接点信号(I/O):16点

CPU:Pentium-Ⅱ 350MHz以上

メインメモリ:265MB以上

ハードディスク空き容量:3.0GB以上

遠隔操作対応機能

カメラ操作機能

動画データ蓄積機能

自己診断機能

Windows-NT

431(W)× 176(H)× 416(D)mm,20kg

0~ 40°C

100V,150W以下

法で,エンコーダユニットの稼動管理,構成管理,障害解析などを行なうことが可能となった。従って,ネットワー

クを構成する通信機器,エンコーダユニットなどを含めたシステム全体を一括管理することが可能となっている。

FTPファイル転送制御ファイル転送は,TCP/IPで一般的なFTP(File Transfer

Protocol)を採用し,蓄積したファイルをファイルサーバな

どへ転送する機能を付加している。さらに,本機能をデコーダユニットなどから遠隔操作で

制御できるようにし,蓄積ファイルの回収を,ネットワー

クを介して実行できるようになっている。

カメラ制御

R S 2 3 2 インタフェース経由でカメラおよびカメラ旋回台を制御する機能を備えている。本機能は,デコーダユニット上の管理ソフトウェアから利用可能で,デコーダユ

ニットでカメラ映像を確認しながら,カメラ姿勢や照明などが遠隔操作可能となっている。

�蓄積制御デコーダユニットからの遠隔制御および外部信号に

よって録画を開始する機能を備えている。例えば,侵入セ

ンサや警報信号をエンコーダユニットに送ることで,センサ連動録画を行なうことができる。録画時間は,標準で1時間としているが,ハードディスク容量に合わせて変更可能

となっており,さらに長時間の録画も行なえるシステムとなっている。また,ストリームの蓄積と送信を同時に行なうことが可

能となっているので,エンコーダユニットは,標準で 1分間の常時録画を行なっている。この機能により,録画開始を指示した時点よりも前の画像を確認できる。例えば,セ

ンサ連動により録画を行なった場合,センサが働く前の状況とセンサが働いた時点,そしてセンサが働いた後の状況を記録できることになる。常時録画の画像は,デジタル方

式なので繰返し録画を行なっても全く劣化がなく,常に安定した画質の動画を記録できる。

�リダンダントハードディスク制御FA用PCをベースとしていることから,ハードディスク

が故障すると致命的な障害となる。この対策としてエン

コーダユニットは,ミラーディスク構成(RAID0)を用いてハードディスク故障時の耐障害性を高めている。さらに,シリコンディスク版のエンコーダユニットも開

発済みであり,エンコーダ自身で蓄積を行なわないシステムの場合,ディスクレス型のエンコーダを提供している。

Fig.10にMPEG2エンコーダユニットのソフトウエア構

成を示す。

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三 菱 電 線 工 業 時 報 第97号 平成13年1月

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Table 4 Specification of the MPEG2 decoder unit

MPEG2デコーダユニット 主仕様

項目

デコード機能

伝送方式

外部インタフェース

中央処理装置

その他機能

適用OS

外形寸法,質量

動作温度範囲

駆動電源,消費電力

仕様

MPEG2ビデオ ISO/IEC 13818-2 MP@ML準拠

MPEG1オーディオ レイヤ2 ISO/IEC 11172-3準拠

MPEG2 SYSTEM ISO/IEC 13818-1準拠

720(pel)× 480(line)/ 352× 480

トランスポートストリーム

出力信号:NTSCコンポジット,S映像 

UDP,IPマルチキャスト

10BASE-T:1ポート,100BASE-TX:1ポート

RS232C:2ポート

CPU:Pentium-Ⅱ 350MHz以上

メインメモリ:265MB以上

ハードディスク空き容量:3.0GB以上

遠隔操作対応機能

カメラ操作機能

エンコーダ操作機能,デコーダ操作機能

自己診断機能

Windows-NT

431(W)× 176(H)× 416(D)mm,17kg

0~ 40°C

100V,150W以下

3.4 MPEG2デコーダユニット

Fig.11, Table 4にMPEG2デコーダユニットの外観およ

び主仕様を示す。

MPEG2デコーダユニットは,FA用PCベースのマシーンにMPEG2データの復号化などの各種機能を付加したもの

で,ネットワーク上を伝送するMPEG2形式のIPマルチキャストデータを,選択的に取り込み,復号化してNTSC相当のアナログ動画信号を出力する装置である。動画データの

選択は動画データ配信装置と連動して行い,動画データ配信装置が選択した数個の動画データの中から任意の 1 画像を抽出し復号化する。

さらに,カメラ操作信号をネットワーク上に送信し,閲覧している動画データを撮像しているカメラおよびそれに付随するMPEG2エンコーダユニットの操作を行う機能も

備えている。MPEG2デコーダユニットの操作は専用ディスプレイ上

のGUI(Graphic User Interface)により行う。Fig.12に

MPEG2デコーダユニットの操作画面例を示す。

図中のカメラ選択部で地図上のカメラを選択する。選択されたカメラが撮像する動画は,ディスプレイ上に表示される。また,動画は別途,NTSC相当のアナログ信号が外部

出力される。さらに,選択しているカメラはカメラ制御部により操作が可能である。デコーダユニット上では,「MPEG動画監視システムコン

ソール」と呼ばれる統合型の操作用ウィンドウと動画表示ウィンドウの 2 つを使用してカメラ映像の選択とカメラ遠隔操作,動画蓄積遠隔制御,蓄積ファイル転送遠隔制御など

を行なっている。動画表示機能を独立したソフトウェアとして作成し,遠隔制御可能な構成とすることでデコーダユニットの遠隔操作を可能としている。

3.5 LAN配信装置

Fig.13に LAN配信装置例の外観を示す。

Fig.11 Appearance of the MPEG2 decoder unit

MPEG2デコーダユニット 外観

Fig.12 Example of monitor display

MPEG2デコーダユニットの操作画面例

カメラ選択部� カメラ制御部�

カメラ�アイコン�

Fig.10 Software architecture

MPEG2エンコーダユニットのソフトウェア構成

エンコーダカード

動画蓄積制御 カメラ制御

外部アラーム検知

制御データ

ストリーム

IPマルチキャストサービスファイル転送制御

エンコード制御

遠隔制御サービスRAID制御

FTP SNMP

TCP/UDP

IP

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イーサネットによる長距離リアルタイム動画伝送システム

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Table 5 Specification of the height-end LAN-SW

LAN配信装置 主仕様

項目

適合規格

データ伝送速度

ポート構成

適合ケーブル

管理プロトコル

VLAN機能

その他機能

外形寸法,質量

動作温度範囲

駆動電源,消費電力

仕様

ANSI/IEEE Std. 802.3 10BASE-T

ANSI/IEEE Std. 802.3 u 100BASE-TX

10Mbps,100Mbps

10BASE-T/100BASE-TX:36ポート

10BASE-T/100BASE-TX:UTPケーブル

SNMP,TELNET

ポート,MACアドレス,レイヤ 3,プロトコル

マルチキャスト

ユーザ定義による決定

スパニングツリー・アルゴリズム

管理部(制御部),電源部の 2重化(冗長機能)

436(W)× 312(H)× 340(D)mm,25kg

0~ 40°C

100V,250W以下

三原慎一郎(みはら しんいちろう)

電線ケーブル事業本部 公共システム営業部 システ

ム技術グループ

ネットワーク・システムの設計・開発に従事

栄永清志(えいなが きよし)

光・電子事業部 ネットワーク機器部 LAN機器課

LAN(イーサネット)機器および応用システムの設

計・開発に従事

守山直志(もりやま なおし)

光・電子事業部 ネットワーク機器部 LAN機器課

LAN・MPEG2 画像伝送システム(イーサネット方式)

の研究・開発に従事

早稲田電気工学会会員

辻 貢司(つじ こうじ)

電線ケーブル事業本部 公共システム営業部 システ

ム技術グループ

ネットワーク・システムの総合的提案に従事

平嶋利洋(ひらしま としひろ)

光・電子事業部 ネットワーク機器部

ネットワーク機器の開発および技術統括に従事

電子情報通信学会会員

LAN配信装置は,ネットワーク上を伝送される動画データを選択して動画サーバに送る,W A N(W i d e A r e a

Network)または他のLANネットワークに選択したデータを送るなどの機能を保持する装置であるが,個々のシステムに要求される仕様によりその機能は大きく異なるため,

各システムによって使用する機器を変更する。従って,ここでは代表的な装置の仕様について述べる。装置としては,高機能で多様なフィルタリング機能,高

速伝送,プロトコル変換などを求められるので,レイヤ3に対応するハイエンド LANスイッチが望ましい。Table 5に代表的な装置の仕様を示す。

4.む す び

以上,我々が開発した“イーサネットによる長距離リアルタイム動画伝送システム”の概要について述べた。本システムはイーサネットの特長を有し,なおかつ長距離リア

ルタイム伝送を実現している。また,用途として広域監視システム,遠隔映像配信システム,などへの幅広い適用が考えられ,すでに実機を出荷・納入し,運用も行われてい

Fig.13 Appearance of the height-end LAN-SW

LAN配信装置 外観

る。今後の課題として,以下に示すようなものがあり,これ

らの開発を行っていく予定である。�大容量伝送(ギガビット・イーサネットへの移行)�MPEG2方式での符号・復号化の高速化(低遅延)

�無線化�耐環境性(高温,多湿など)の強化�低容量の符号化技術(MPEG4など)の取り込み

次の名称は,それぞれの会社の登録商標です。イーサネット: 富士ゼロックス社

Ethernet : 米国ゼロックス社Windows : 米国マイクロソフト社

酒井直人(さかい なおと)

光・電子事業部 通信システム部 通信システム第三

ネットワーク設計・提案から機器インストール業務に

従事