オープンデータに関する欧州最新動向...psiの利活用により、第三者のサービス提供者がより良いサービスを提供...
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オープンデータに関する欧州最新動向
2012年3月29日 株式会社NTTデータ
第21回電子行政タスクフォース 資料
資料1-2
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本日の内容
オープンデータの概要
オープンデータの概要と目的
欧州各国のオープンデータ・ポータルサイト
基本的なモデル
公共データを活用した民間サービスの例
欧州の政策動向
欧州各国の取り組み経緯
各国のデータポータル比較
EUレベルの政策動向
国別政策紹介(英国、フランス、ドイツ)
オープンデータの経済効果
日本への示唆
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オープンデータの概要と目的
“加盟国は、公的機関が保有する情報の再利用が可能な場合には、商業・非商業の目的を問わずこれらの情報が再利用可能であることを確保しなければならない”
- EU指令2003/98/EC
“公共データの再利用を無料で簡単に行えるようにすることで、政府の透明性を高め、公共サービスの質を上げることができる。また公共データを開放することで、情報経済を発展させ、イノベーションを促進し、成長と雇用をもたらすことができる”
- フランス政府、Council of Ministers on August 31, 2011
“公共セクターの情報・コンテンツの、より広範囲で効果的な活用と、新たな活用方法を生み出すためのフレームワークを作るにあたり、以下の原則(※)を十分に考慮することを勧告する”
※公開性、透明性、資産リスト、品質、整合性、長期保存、著作権、価格、競争、丌服申し立て、官民協働、国際利用、ベストプラクティス
- OECD勧告、2008年
公共データの公開・民間での再利用による、透明性の向上、経済の活性化、公共サービスの向上 (PSI:Public Sector Information) (Re-use)
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欧州各国のオープンデータ・ポータルサイト
英国 フランス ベルリン http://data.gov.uk http://data.gouv.fr http://daten.berlin.de
世界のオープンデータサイト開設国
世界30ヵ国が開設済み OECD、国連など国際機関もデータポータルを開設。EUも開設予定。
Source: data.gov(US)
欧米諸国では公共データを公開するポータルサイトが整備されつつある。自治体での取り組みも多い。
パリ市 http://opendata.paris.fr
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基本的なモデル
データ保有機関からローデータを取得し、ポータルサイトに掲載。民間はポータルからデータを取得して自由にサービスを開発、提供している。
省庁A
省庁B
外郭団体C
ポータル http://data.gov.XX
データセット
データセット
データセット
データセット
データのアップロードまたはリンク付け
地図情報
環境情報
交通情報
データセット
データセット
London Cycle Hire LIVE (レンタル自転車のロケーション情報)
London Transport (公共交通機関を含めた乗換案内)
EnviroFIND 企業向け環境情報提供サービス
企業A
企業B
企業C
利活用データの選定・提供 集約、ポータルでの提供 データの組み合わせ、サービスの提供
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公共データを活用した民間サービスの例
郵便番号から地図を検索するサービス。
イギリス政府のデータ(有償)を活用。
2人で創業→120人に拡大、マイクロソフトへ売却。
現在はマイクロソフトの地図サービスBingに組み込まれている。
Multimap Next Bus London for iPhone
ロンドンのバス運行情報を利用したサービス。
バスの現在地を地図上に表示したり、停留所ごとに次のバスが来るまでの時間を表示する。
ロンドンでは町中に自転車のシェアリングシステムがある。(通称ボリス・バイク)
このレンタル用自転車の空き状況をリアルタイムで検索できるサービス。
London Cycle Hire LIVE Open Data Cloud
教育、スキル関連のデータをdata.gov.ukなどから集め、クラウド上に集約するサービス。
エンドユーザ向けサービスではなく、データを整理するサービス。
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オープンガバメント・ライセンスの制定2010.9.30
欧州各国の取り組み経緯
EUレベル 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012
●
PSI利活用に関するEU指令(PSIの原則公開) 2003
●
INSPIRE指令(空間情報の提供) 2007.3.14
マルメ宣言(データの第三者利用) 2009.11.18
●
グラナダ宣言(European Digital Agenda) 2010.4.19
●
欧州オープンデータ戦略 2011.12
●
EU指令の 改定作業中
英国
フランス
ドイツ (ベルリン)
2003年のEU指令発表後も断続的に閣僚級で戦略を提示
英国は時間をかけて取り組んできたが、データ公開に関しては2010年に大きな進展があった。
フランス、ベルリンは2010~2011年に急速に取り組みが加速。
特に英国・フランスでは政治的リーダーシップが特徴的
Office of PSIがNational Archives傘下に。推進体制の確立2006.10
キャメロン首相による「透明性アジェンダ」の発表2010.5
Transparency Board設立2010.6
透明性原則の制定
data.gov.uk開設 2009
Etalabの設立に関する閣議決定2010.11.24
data.gouv.frに関する首相演説 2011.11.30
単一ポータルによるPSI提供指針2011.5.26
独自ライセンスの制定2011.10
オープンデータに関するサルコジ大統領演説2011.4.27
data.gouv.fr開設2011.12
オープンデータ・ アジェンダの制定
daten.berlin.de開設2011.9.14
ニーズ調査、定期的なラウンドテーブル開催
Berlin Open Data Day 2011.5.18
Re-use of PSI Regulations 2005 2005.7
●
2003年のEU指令が欧州全体のオープンデータ指針の役割を果たしており、2010年以降に各国取り組みに大きな進展があった。
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各国のデータポータル比較
英国 フランス ドイツ
サイト data.gov.uk data.gouv.fr opendata.paris.fr daten.berlin.de
開設年 2009年 2011年 2011年 2011年
関連戦略・法令
• Re-use of PSI regulations 2005,
• Transparency Agenda, • Transparency Principles, • IFTS(Information Fair
Trader Scheme)等
• Etalabの設立に関する閣議決定
• 単一ポータルによるPSI提供指針
• 市議会における決議 • Berliner Open Data
Agenda
データセット数 7,900 352,000 43 57
登録アプリ数 196 - 78* 8
データの著作権
独自ライセンス (Open Government License)
独自ライセンス (Open License)
Open Data Commons – Open Database Lisence
Creative Commons Open Data Commons
データ例 交通(バス、レンタル自転車)、環境情報(大気、水
質等)、人口等
人口、雇用、住宅、交通、教育等
街路樹、地図、名前、図書館の貸出状況統計、公
園等
都市計画情報、自転車道、ごみ処分情報、雇用情報
等
調査年月日 2012/2/8 2012/2/10 2012/2/10
*iPhone用アプリのみの総数。公共データ利活用以外も含む可能性
2012/2/10
ODC-BY ODbL-Paris
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EUレベルのオープンデータ政策動向(詳細)
民間が政府保有の情報を利活用することを容易にした最初の指令であり、英国等の取り組みへ大きな影響を与えた。
2003年 PSI利活用に関するEU指令
空間情報インフラ(Infrastructure for Spatial Information in the European Community:INSPIRE)の構築に関するEU指令。環境保護政策の立案・実施のため、EU域内の空間情報・環境情報の共有を推進する。
2007年 空間情報インフラ構築に関するEU指令 INSPIRE directive 2007/2/EC
PSIの利活用により、第三者のサービス提供者がより良いサービスを提供することを推進する。
2009年 電子政府に関する閣僚宣言 [マルメ宣言]
ヨーロッパの単一デジタル市場の創設(規制等の撤廃)、文化資産のデジタル化と配布、PSI利活用の重要性の確認。 2010年
欧州デジタルアジェンダに関する閣僚宣言[グラナダ宣言]
概要 年 政策
2020年を目標としたEUの戦略とアクションプラン。デジタル著作権の単純化、国境を越えたライセンシングの仕組み構築、2012年までのPSI指令(2003)の改定などをアクションプランに設定。
2010年 欧州デジタルアジェンダ
欧州委員会のオープンデータへの取り組みを定義。オープンデータは欧州で毎年400億ユーロの経済効果があると述べ、以下の3つの施策を推進。①EUのデータポータルの開設(2012年春予定)、②EU域内の公平な条件の確保、③データ処理技術の研究開発のための1億ユーロの支援。
2011年 欧州オープンデータ戦略
以下の点を中心に修正協議中。①PSIの再利用を原則とする、②限界コストでの提供(実質無償化)、③マシンリーダブルな提供、④図書館、美術館、アーカイブへの対象の拡大。
2012年 (予定)
PSI利活用に関するEU指令の アップデート
2003年のPSI活用指令に始まり、閣僚級の合意形成と、欧州委員会による法制化が進んでいる。
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各国のオープンデータ政策(英国)
推進体制の確立(Office of PSI) (2006)
• 政府が著作権を持つ情報を英国では「Crown copyright」、「Crown database rights」と呼ぶ。これらの情報を管理する主体として、Office of PSI (Ministry of JusticeのNational Archives内)を位置づけている。
キャメロン首相による「透明性アジェンダ」の発表(2010)
• 「政府全体にわたる透明性の向上は、我々が共有しているコミットメントの中心となるものだ。それによって国民が、政治家や公的機関に説明責任を果たさせ、赤字を減らし、公的支出における費用対効果の高いサービスを提供させることができる。また、ビジネスやNPOが公共データを活用して、革新的なアプリケーションやウェブサイトを作ることで、大きな経済的利益を実現することができる。」(キャメロン首相、2010年5月)
Transparency Boardの設立(2010)
• 政府の透明性アジェンダを実現するための有識者会議。
• 透明性原則の制定
• 公共データは再利用可能で、マシンリーダブルな形式で公開されること
• 公共データは同一のオープンライセンスのもとで公開され、営利目的も含めて自由に利活用できること。
• 公共データは単一の使いやすいオンラインのアクセスポイント(data.gov.uk)で入手可能で、簡単に見つけること
ができること。など
オープンガバメント・ライセンスの制定(2010)
データベース権への対応、法律的な簡素化ため、独自のライセンス体系を制定している。
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各国のオープンデータ政策(フランス)
推進組織(Etalab)の設立に関する閣議決定 (2010.11.24)
PSIの利活用に関する指針[サーキュラー](2011.5.26)
• 各省庁に、Etalabとの調整を行う担当官の設置を義務付け。組織間の業務分担やデータのフォーマット等についても規定。
オープンデータに関するサルコジ大統領演説(2011.4.27)
• 「公共データの公開は、開発者とスタートアップ企業のエコシステムを作り、市民のための新しいサービスを生み出す。我々はインターネットの起業家によって、国がまだ提供していないサービスを創造する。」
独自ライセンス(Open License)の制定(2011.10)
data.gouv.fr開設(2011.12.5)
首相直下のタスクフォースとして設置され、各府省との調整を行う。
Etalabが各省庁と会合を重ね、また民間(業界団体、コミュニティなど)と相談しながら、どのデータをオープンにするかを決定。府省が出しやすいものや、重点分野に関するデータを集めている。
クリエイティブ・コモンズ、オープンデータ・コモンズなどのライセンスとの相互運用性を確保。免責事項を追加し、データに過誤があった場合でも政府に責任がないことを明記している。
市民団体や専門家など、利用者コミュニティとの意見交換やワークショップを開催しながら、プラットフォームのあり方を議論してきた。開設後も、情報の再利用を促すイベントを一年通して開催する予定。(Dataconnexions)
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各国のオープンデータ政策(ドイツ)
ベルリン
公共データの民間利用ニーズに関する調査
「ラウンドテーブル」を月1回開催(行政、市民社会、専門家、企業等)
アプリケーションのコンテスト
「Berlin Open Data Day」開催
ベルリン・オープンデータ・アジェンダの制定
オープンデータ・ポータルの開発・開設
ドイツ連邦政府
政府の戦略「Government Programme: Network-Based and Transparent Administration」
• オープンデータについては、内務省が統計と地図情報についてパイロットプロジェクトを行うことが明記。
• オープンデータ戦略は別途検討中
公共データの現状、プロトタイプの開発など調査研究を実施中。
Apps for Germanyの開催 http://apps4deutschland.de/
出来上がったアプリケーションだけでなく、アイデアだけでも表彰している。コンテストで優勝したアプリケーションは、建築計画をARでiPhoneに映し出すアプリケーション。(ベルリンでは再開発が多くの場所で行われており、建築データは関心が高い。)
政府にとっての最大の壁は、データを公開してからでなければ、どのように利用されるかわからないという点。そのためニーズ調査やラウンドテーブルなど、民間と協議を重ねながらステップ・バイ・ステップでの検討を行ってきている。
Berlin Open Data Agenda
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オープンデータの経済効果
推計結果 出典 対象国 対象年 対象地域の 人口(2010)
対象地域のGDP(2010)
推計方法 日本の場合(GDP比、億円)
市場規模
270億ユーロ MEPSIR, 2006
EU27+ノルウェー
2006 5億0599万人 12兆2407億ユーロ
アンケート調査と収入分析の平均による 10,295
680億ユーロ (経済価値)
PIRA, 2000 EU15 2000 3億2417万人
11兆0864億ユーロ PSIに関わる全ての産業を対象としたマクロ分析
28,625
280億ユーロ Vickery, 2011
EU27 2008 5億0113万人 11兆9819億ユーロ オランダ、オーストラリアの地理空間データ市場から算出。GDP,コンピュータ出費、政府ICT投資の比率からEUに展開。(市場規模)
10,907
320億ユーロ
Vickery, 2011
EU27 2010 5億0113万人 11兆9819億ユーロ 年率7%成長を仮定して上記から算出(市場規模)
12,465
経済効果
400億ユーロ Vickery, 2011
EU27 2009 5億0113万人 11兆9819億ユーロ データ使用料について限界コスト化による経済効果(経済効果①)
15,582
1400億ユーロ Vickery, 2011
EU27 2008 5億0113万人 11兆9819億ユーロ 直接・間接を含めた経済効果。オーストラリアの推計結果からEU27ヵ国に展開?(経済効果②)
54,536
出典:Vickery, G.(2011) Review of recent studies on PSI re-use and related market developments 人口、GDPはEurostatによる。日本のGDP比は2010年名目値(内閣府)による。1EUR=103円にて計算。
欧州を対象に様々な市場規模・経済効果の試算がある。GDP比から日本に置き換えると、市場規模は約1兆円~1.5兆円、経済波及効果を含めると5兆円程度となる。
但し、市場規模の推定には課題も多い。多くの国が異なるデータセットを、異なる品質で提供しているため、単純な横展開は難しい。欧州各国では、①イノベーションとスタートアップ企業の創出、②それに伴う雇用の創出、③税収の拡大というサイクルを想定している。
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市場規模の考え方
政府系データ(PSI)公開による効果は多岐にわたり、どこまでを対象とするかにより市場規模・経済効果は異なる。
アプリ構築市場 (サービス提供に必要なシステム・アプリの開発市場:官民含む)
新サービス市場 (民間分野で新たに提供されるサービスによる売上)
サービス利用者の効率化、産業競争力向上 (同様の情報を取るのにかかるコスト、時間の節約等)
政策形成の効率化
経済波及効果
経済効果①
市場規模
産業の高度化、雇用の創出
280/320億ユーロ
400億ユーロ
経済効果② 1400億ユーロ
図中の数字は前頁の先行研究における試算との対応を示す。
データの公開
民間におけるアプリケーション構築 新サービスの提供
エンドユーザ(個人・企業)による サービス利用
政策形成過程への活用
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日本への示唆
推進体制
• フランス、英国では各省と調整してデータ公開を主導する機関を設置している。また、政治的なサポートの重要性についての声も聴かれた。データ公開を主導する推進体制をどのように整理するか。
プログラムマネージメント
• 民間ニーズが高いデータや、公開が容易なデータは国によって異なる。ニーズ調査やデータ保有機関との調整、民間ニーズの掘り起こしなど、長期的なスパンで戦略的に取り組むステップ・バイ・ステップのアプローチが必要ではないか。(右図参照)
スモールスタート&横展開
• 政府保有データの公開という原則は重要であるが、実際のデータ公開にあたっては、公開が容易なものや、ニーズが明確なものから公開していき、活用事例を積み上げながら横展開してはどうか。
ライセンス
• 日本政府として何を重視するかを検討するとともに、利活用推進の観点から、最適なライセンスを採用、または独自に作成する必要がある。
大方針の確認 推進体制の確立
ニーズ調査 イベントの開催
ポータルの整備 データ公開
著作権の整理
内部処理 制度化検討
対象データの選定
オープンデータのプロセスマネージメント(仮説)
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