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ポスターセッションの会 11月13日(火)5・6限 1年生 経緯 この学年の教員集団は昨年度まですでに2年間,この指定研究のプロトタイプに相当する取組 (2年生への指導)から昨年度の指定1年次(3年生への指導)にかけて,本校で先進的に取り 組んできた。そして本年度は,入学時からの指導となる。 昨年度までの研究・実践の評価を踏まえこの学年では,入学後の授業開きの段階から国語科で 「書くこと」と区別して「話すこと・聞くこと」指導を行った。つまり,「書くこと」指導として 原稿を用意しそれを音読したり覚えて声に出したりするのではなく,思いを直接 音声言語で伝え る,話すスキルの定着を図った。話し手が生き生きと話すことで,自ずと聞き手の態度は良くな る。ただ,交流・学び合いで大切な質問と応答などのやりとりはさらに積極的に行うように指導 する必要があった。 新聞を入口に社会に目を向けさせる点は昨年度の3年生での取組と同様となっており,発達段 階やレディネスが異なることから,本当に内容を理解して進められるか心配があったが,3年生 が社説を対象としていたのに対して,1年生では社説以外の多様な記事から選択させたことによ り,一人一人の生徒が自分の関心に基づいて学習を進めることができた。 この単元で新聞を扱う前に,1学期,記事を読んで意見をもつ,投書するといった学習をし, 新聞というメディアに親しむとともに,自分が社会と無関係でいず目を向け,さらに振り返りを 通して,自分も社会に向けて発信する・関わっていくことの大切さを理解できるようにした。 国語科で身に付けた話すスキルのいっそうの定 着・向上,さらにやりとりのスキルを身に付けさせ るために,1学期末にビブリオバトルに取り組ませ た。そのルール上,原稿を用意せずに話す点や,質 疑応答の時間があること,チャンプ本を選ぶという 見かけ上の目標が設定されていて魅力的なことな ど,ビブリオバトルは本来の価値と併せて,自分の 理解したことをまとめ,順序や語彙を準備して話す スキルを高めてくれる学習活動だと言える。 指導の流れ「一人一人が大切にされる社会を目指して」 8月末のⅡ学期開始時から,新聞の記事に関心をもつようにとの指導は始まっていた。そして, 9月中旬の第1時に学習に見通しをもたせるために次のようなプリントを使って指導を開始した。 ポスターセッションに向けて ◎目的 『一人一人が大切にされる社会を作る一員になるために考え,実践できる人になる』 ◎目標 ① 世の中の出来事に対する疑問(関心)を持つことができる。 *ここが,一番大切です。世の中の出来事に対して多くの人が無関心であると,世の 中は決してよくなりません。

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ポスターセッションの会 11月13日(火)5・6限 1年生

経緯

この学年の教員集団は昨年度まですでに2年間,この指定研究のプロトタイプに相当する取組

(2年生への指導)から昨年度の指定1年次(3年生への指導)にかけて,本校で先進的に取り

組んできた。そして本年度は,入学時からの指導となる。

昨年度までの研究・実践の評価を踏まえこの学年では,入学後の授業開きの段階から国語科で

「書くこと」と区別して「話すこと・聞くこと」指導を行った。つまり,「書くこと」指導として

原稿を用意しそれを音読したり覚えて声に出したりするのではなく,思いを直接 音声言語で伝え

る,話すスキルの定着を図った。話し手が生き生きと話すことで,自ずと聞き手の態度は良くな

る。ただ,交流・学び合いで大切な質問と応答などのやりとりはさらに積極的に行うように指導

する必要があった。

新聞を入口に社会に目を向けさせる点は昨年度の3年生での取組と同様となっており,発達段

階やレディネスが異なることから,本当に内容を理解して進められるか心配があったが,3年生

が社説を対象としていたのに対して,1年生では社説以外の多様な記事から選択させたことによ

り,一人一人の生徒が自分の関心に基づいて学習を進めることができた。

この単元で新聞を扱う前に,1学期,記事を読んで意見をもつ,投書するといった学習をし,

新聞というメディアに親しむとともに,自分が社会と無関係でいず目を向け,さらに振り返りを

通して,自分も社会に向けて発信する・関わっていくことの大切さを理解できるようにした。

国語科で身に付けた話すスキルのいっそうの定

着・向上,さらにやりとりのスキルを身に付けさせ

るために,1学期末にビブリオバトルに取り組ませ

た。そのルール上,原稿を用意せずに話す点や,質

疑応答の時間があること,チャンプ本を選ぶという

見かけ上の目標が設定されていて魅力的なことな

ど,ビブリオバトルは本来の価値と併せて,自分の

理解したことをまとめ,順序や語彙を準備して話す

スキルを高めてくれる学習活動だと言える。

指導の流れ「一人一人が大切にされる社会を目指して」

8月末のⅡ学期開始時から,新聞の記事に関心をもつようにとの指導は始まっていた。そして,

9月中旬の第1時に学習に見通しをもたせるために次のようなプリントを使って指導を開始した。

ポスターセッションに向けて

◎目的 『一人一人が大切にされる社会を作る一員になるために考え,実践できる人になる』

◎目標 ① 世の中の出来事に対する疑問(関心)を持つことができる。

*ここが,一番大切です。世の中の出来事に対して多くの人が無関心であると,世の

中は決してよくなりません。

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② 疑問(関心)を持ったことに対して,分からないことを調べることができる。

③ 調べたことを基にして,一人一人が大切にされる社会にするためにはどうすればよ

いか自分の意見を持つことができる。

④ 自分の意見を,他者に分かりやすく伝えることができ他者の意見にも耳を傾け,尊

重することができる。

⑤ 様々な考えのあることを認め,参考にしながらながら,自らが疑問(関心)をもっ

たことがらに対して,一人一人が大切にされる社会にするために提言としてまとめる。

◎取り組み

8 月下旬~9 月中旬 ・自己を見つめる

8 月 27 日(月)~9 月 13 日(木) ・ポスターセッション用記事決定

10 月 9 日(火)より毎週火曜日の総合 ・ポスターセッション取り組み開始

11 月 13 日(火)ポスターセッション本番

新聞記事は係の教員が予め様々な分野のものを選択した。望むらくは各生徒が広く新聞等を読

み主体的に選んでくることであるが,指導時数の制約や,インターネットではなく新聞というメ

ディアに触れさせるには各家庭の機会が異なることを考慮し,教員が準備することにした。選択

させるための資料の見出しは次ページのとおりである。関心事ごとに類別した表を示し,生徒は

見出しから内容を想像し,休憩時間に,各教室に1機のパソコンで,センターサーバに保存して

ある記事のデータファイルを開いて内容を確かめて選択した。記事を読んでみて別の記事にした

くなればさらに探せばよいこととし,以降の学習活動に関心をもって取り組めるように配慮した。

表に続いて,生徒が選んだ記事を列挙した。(学級内で重複するものはできるだけ省いたので,

記事数と生徒数は一致しない。)

・記事一覧表の記事は,学習系に入っています。 参考にしてください。

・これ以外の記事でも構いません

・本を用意する関係で,13 日には決定すること

・10 月中に,ポスターに出来るようにまず冊子を完成していきます。

・選んだ記事に関する本は,図書室司書さんにお願いしていますが,

自分でも調べていきましょう。

・11 月に入ると,ポスター制作・発表練習になります。

・保護者の方はもちろん,地域の方,堀川高校の先生方等多くの人が

参観(参加)に来られる予定です。

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生徒が選んだ記事の見出し

「18歳成人」に思う 社会の一員,自覚促す

「アナ雪」再現,新施設で

東京ディズニーシー拡張

「アナ雪」など世界再現 巨額投資で

混雑緩和も 東京ディズニーシー拡張

「男は」「女は」思い込みに気づける?

運転手は夫,保育士は妻?

「無意識の偏見」学ぶ

「帰りたくない」SOS届かず

目黒 5歳死亡 児相・警察に何度も通報

「ゲーム障害」新疾病に WHO依存症に追加

スマホ普及背景 日常生活に支障

「ゲーム障害」新疾病に追加

未成年の依存,各国で問題

「子ども食堂」枠を超え

「来られない」家庭支援

「差別」引退 揺れる独社会

勝てばドイツ人,負ければ移民

「好き」極めるプロゲーマー 公認資格者 110 人

「万引き家族」最高賞 是枝監督「うわぁ」感激

『野球くじ』見送りか 条件面で隔たり大きく

6 人に 1人トラブル 府内の大学・短大生アルバイト

PTA抜けたら息子退所 「ひとり親家庭」削除 学童保育相次ぐトラブル

R-1ぐらんぷり優勝 濱田祐太郎さん 「見えない日常」笑いに

SNSデマ広がる 大阪震度6弱 差別扇動や「電車脱線」

悪質タックル 日大選手への配慮要請 顔出し会見どう対応

汗と涙の高校野球漫画 スポ根・リアル路線 時代とともに多様化

イエニスタ神戸入り 「チーム助け日本サッカー発展を」

命決めたラブレター 人生悔いなし終末期治療いらぬ

今伝えたい 原爆から73年 使命感に燃えた祖父 女優 戸田 菜穂

インドの教科書 消された偉人 ネール・ガンジー歴史書き換え

受け継がれるペンキ絵 銭湯百景

オウム松本死刑囚ら 7人刑執行 決着「平成のうちに」 退位・五輪など行事にらみ決定

お化け雑誌次の飛躍は 週刊少年ジャンプ 50周年

仮想通貨もうけ話のワナ LINEで勧誘消えた 100 万円

家族会議で別れの準備

気温上昇 1.5 度と 2度 影響は大差 生息域半減の昆虫 3 倍

黒谷和紙 植物の生命力を糧に

京阪,全席指定列車を増発 9月から京都にも拡大

ごみ減量ペース鈍化 観光客数増が要因

差別のない社会目指す もう二度と 相模原殺傷事件 2 年

しつけ?教育虐待かも 識者「どの家庭も起こりうる」

女児「もう食べられない」 死亡数日前衰弱母に訴え 目黒虐待

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女性の運転解禁 サウジ喜びの声 「歴史的な日」「誇り」

スタバ,ストローやめます 使い捨てプラ製 海洋汚染に配慮

スマホ中毒対処で制限機能 iPone 上限や時間帯設定も

スマホっ子の風景 「出会い」のきっかけネットから

スマホっ子の風景 「ネットで小遣い」親から反響

世界の飢餓 命の危機「1億 2400 万人」

セリーナシードに物議 産休考慮で「不公平」の声 ウィンブルドン女子

戦火の証し 破片爆弾 1945 年 6 月 5 日神戸市須磨区

直径 3センチに詰まる少年の心 はまりました牛乳瓶のふた

通信制高校 夢の咲く場所 「自分らしく成長できる」 不登校経験,モデル活動両立

動画投稿で新しい自分 95 歳のインスタモデル

透明飲料人気色濃く 健康的/職場で飲みやすい

ドーピング「公平」の価値見失わず

特攻映像隊員を特定 「兄は最後,どんな気持ちやったろか」

トビとんだ京の新名物 鴨川中心 20 年で倍増

投げ続け伝える 日本復帰の松坂 故障に苦闘の 3年

波音や星空無上の演出 野外映画祭のススメ

なるほドリ エルサレムどんな場所? 3 宗教の聖地 各国は首都と認めず

新潟高3自殺 SNSで中傷 学校側いじめ認め謝罪

日大アメフット悪質タックル 「社会問題化され残念」

日本の味スシロー台湾へ 回転・店構えそのまま

望まぬ治療でも「生きて」

パスパスパスの 600 秒 ひきょうか戦略か 日本決勝トーナメント進出

母へ悔いと感謝 85 歳初めて語る被ばく

引き出しに 4歳死なす 北九州 殺人容疑で父逮捕

フェイクニュース淘汰する仕組み ウィキペディア

部活どう休む模索 日曜は「家庭の日」文化部も対象 「日数減ったら焦る」困惑

プラスチックごみの海洋汚染 危機感ない日本政府

包装ごみ欧州追放へ 海洋汚染で規制加速 家庭から変える仏

ポケモン禁止の国も 「万物の創造者は神」に矛盾

ホタル 高瀬川に再び 「子どもたちと見たい」

胸に響く在日の現実 映画『焼肉ドラゴン』

もっとできるようにするから もうおねがい ゆるして 5 歳結愛ちゃん悲痛な文章残す

野党「ムソリーニ政権想起」 伊内相「ロマ人口調査」

よりよい「校風」とは 最大限に多様性を認めよう 前川 喜平(前文部事務次官)

ロバート・ケネディ暗殺 結束の希望だった

私も闘病ブログで発信 小林麻央さん死去 1 年「書くこと」注目集める

次ページからは,関心をもった新聞記事を選んでからの学習活動に見通しをもたせ,自分が考

えをもち,他者の声も聞き入れて学び広げ・学び深めが実現するようにと作成したワークシート

集である(一部,写真を交えた)。記述欄を小さく変形して掲載する。実際の記述例はレポート末

に掲載する。

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~一人一人が大切にされる社会を目指して~

☆身に付けたい力◇世の中の出来事に関心を持つことができる。

→多くの人が世の中の事に無関心になってしまうと,決して一人一人が大切にされる社会に

はなりません。これが,第 1 歩です。

◇ 世の中で起きていることに対して,自分の感想・意見を伝えることができ

る。

→自分の意見を持てる力は大切です。その力がないと,多くの人が言っている事だから正し

いことなんだと何となく思ってしまいます。

◇ 分からないことを自ら進んで調べることができる。

→記事を読む中で,分からない言葉や興味のある言葉などが出てくると思います。それらの

言葉を分からないままに終わらせることなく,積極的に調べていきましょう。さらに自分

の考えが深まると思います。

ただし,インターネットで調べる際は,その情報が間違った情報でないか慎重に調べてく

ださい。

◇ 他者からの意見にも耳を傾けることができる。

→自分と考えが異なる人の意見も聴くことができる人になりましょう。そうした人と話し合

いを通してお互い納得して生活できる人になっていきましょう。

◇ 一人一人が大切にされる社会を作ることを考えられる社会人になること

をめざす。

→「〇〇ファースト」「保護貿易主義」等,自分さえよければいい,あるいは自分の国さえよ

ければいいという考えを多くの人が盛んに言っています。それが,誰もが大切にされる社会

をつくることに繋がっていくのか考えられるひとになりましょう。

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[その1]記事を選んだ動機をまとめてみよう

☆私の動機記述欄

[その2]記事を読んだ感想を書こう。

☆私の感想記述欄

[その3]記事を読んで分からないことを調べよう。

◇先生の動機

先生が小学校時代(昭和 40 年代~50 年代)は,家が裕福でないせいもありましたがほとんどの家

庭が,クジラの肉を食べていました。行商の魚売りのおばさんからよく買っていました。とても

安く庶民の味方でした。また,給食でも鯨は,子どもたちの人気メニューでした。とてもおいし

かったのを覚えています。食べられるものならもう一度食べたいです。

この記事を見て,そんなことを思い出しこの記事を選びました。

◇先生の感想

当時,全く知りませんでした。現在,「マグロの解体ショー」が様々な所で行われていますがそん

な感じかなと思いました。ただ,大きさが全然ちがうので迫力は絶対鯨の方があったと思います。

また,童話「ピノキオ」で,ピノキオは鯨に飲み込まれたことを思い出し,解体ショーでは鯨の

胃袋も解体するのかなと興味がわきました。

とにかく昔は,それが商売として成り立っていたぐらい鯨は,日本人に愛されていたんだと改めて

思いました。

◇先生が調べたこと

記事の写真に写っていたコビレゴンドウ鯨を調べました。鯨はよく食べていましたが,鯨の名前

はあまり知らないことに気が付きました。コブレゴンドウ鯨と言う名前も初めてききました。

調べてみると,あまり大きな鯨でなくイルカのようだと思いました。当時は肉の塊しか見ていなか

ったのでなんとも思いませんでしたが,あの顔を見ると確かにマグロよりかわいいなと思いました。

少しだけ,鯨を食べることを反対する人の気持ちが分かりました。

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☆ 私 が 調 べ た こ と

[ ]記述欄

[その4]記事から思いつき調べたこと

☆私が思いつき調べた事記述欄

[その5]他者の意見を聞いて思うこと

◇先生が思いついたこと

昔,アグネスチャンが日本に来て,一番驚いた事として「ハトが公園にたくさんいて,だれも取っ

て食べないこと」と言っていたのを思い出し,鯨を食べない国の人も,ひょっとしたら日本人が

信じられない動物を食べているんじゃないかと思い調べてみました。

ポスターには,私がこんな動物を食べる国があるのか驚いたものを載せています。カンガルーを

食べる国があることは一番の驚きでした。

ちなみに,何も知らずにもし食べたら結構おいしいんじゃないかなと思いました。

・聞くポイント

できれば,自分の友達だけでなく,家族の人にも聴いてみましょう。

自分の意見と異なる意見の人がいれば,より積極的に聴いてみましょう。

*ちなみに先生は,投書を採用しました。先生より年配の方があのような意見を持っていることに

驚きました。直接お話しできていないので,あくまでも想像ですが小さいころに鯨の肉をいやと

いうほど食べてしまったのではないかと思ってしまいました。

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☆他者の意見[ さんに聴きました]記述欄

交流は必ずしも単元末で行うだけが効果的であるわけではないことが知られているが,こうし

て自分の意見形成の途中で交流し,学び広げ,学び深めを図った。

[その6]提言

☆私の提言記述欄

[その7]自由に使ってください記述欄

このワークシートを用いるかたちで11月中旬までの総合的な学習の時間を進めた。

1年の学年教員はこの一連の授業を「ポスターセッション(をする)」と呼んでいたが,初めの

ページにあるように,悪しき活動主義に陥らないよう,付けたい力を明確に生徒に伝え,授業者

自身や生徒が,発表行事を行うこと自体を目的にしないよう戒めている。そして,付けたい力に

対応するようにそれぞれ

のページの課題が設定さ

れており,また,先生が

生徒になりきってそれぞ

れの課題に取り組むよう

に例があり,それが他者

の意見を引き出すように

書かれている。

ポスターの作成につい

・一人一人が大切にされる社会とは,どんな社会でしょうか。今回の学習を通して,私の提言として

まとめてみましょう。

・先生の提言

クジラの肉のおいしさを若い世代に伝えていくことが大事だと改めて思いました。そのためには,

やはり,学校給食での採用が一番だと思います。若い世代が鯨のおいしさを知り,現在の状況に

対して疑問に思って欲しいと思います。

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てもそれ自体が目的化しないよう,内容を伝えるために,飾らず簡潔なものとすることや,ある

程度ポスター全体の構成が統一されるよう前ページのように説明を行い,配置や色使いを工夫し

てしまうなど,付けたい力にあまり関係しない要素を除くよう心掛けた。

前々日に,ポスターだけを手がか

りに自分が今まで考えてきたこと

を話せるよう学級内で練習し,当日,

体育館での会に臨んだ。

当日は,保護者,他校教員のほか,

京都市教育委員会生涯学習部・京都

はぐくみネットワーク主催の「ふれ

あいトーク」に参加する保護者・地

域の方々も30人程度が来校され,

多くの方が生徒に質問もされ,大人

のボリュームの大きい会となった。

生徒たちの伝え方は培ってきたことを存分に発揮

するものであった。また,ポスターセッションでよく

強調される質疑応答の大切さであるが,必ず質問,と

いった義務化よりも,説明の途中で「ここまでのとこ

ろで質問はありますか」と1,2度尋ねるよう工夫す

ることで,その時疑問に思ったことを尋ねやすくして

一定の実現を見た。京都市立堀川高等学校から講師を

お招きし,参観・

参加,「話し手の

表情を確かめな

がら説明を進め

るともっとよく

なる」との指導助

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言をいただいている。

1年生は小学校でこうした交流の活動は体験していなかったが,教員集団が指導にある程度経

験があったため,これからの向上の余地はまだまだあるが,ひとまず「当日の姿としては」目指

したものとなっていたと言ってよいのではないだろうか。

評価

当日の姿は,考えを話して伝え,質問を受けてやりとりするといった力が身に付いていること

を示しているが,この単元で付けたい力はワークシート集の初めに生徒にも示されたように下の

ようなものであり,評価もこれらの視点で行わなければならない。

①世の中の出来事に関心を持つことができる。

②世の中で起きていることに対して,自分の感想・意見を伝えることができる。

③分からないことを自ら進んで調べることができる。

④他者からの意見にも耳を傾けることができる。

⑤一人一人が大切にされる社会を作ることを考えられる社会人になることをめざす。

①は新聞記事を主体的に選んだことで達成されていると見てよいと思われる。⑤は向上目標で

あり,必ずしもこの単元の期間中に達成されねばならないものではないと考えられる。

次に、②③④はどうであったのかを確かめるために,次に生徒の記述の典型を示す。

まず,全員がこのようになればいいと思われるような、達成できたと見てよい例である。

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これらのワークシートは,「私の動機」「私の感想」「私が調べたこと」「私が思いつき調べたこ

と」「他者の意見[〇〇さんに聴きました]」「私の提言」のように,短くかつ,主体が誰なのか,

何を書けばいいのかががわかるようなタイトルにして,生徒が考えを広め深めることを導くよう

に考えられている。上のような生徒の場合,例えば「他者の意見」では4人の生徒それぞれの意

見を聞き取ってメモできており,さらに自ら..

〈自分の考え〉欄を設け,聞いた意見をどう受け止

めたのかを記している。②③④ともに達成できていると言ってよいだろう。

多くの生徒がこのような思考の跡を残せたとしたら,このワークシート集は十分効果的であっ

たと言えよう。

しかし,次に別の群の生徒を見ると,そうだとは言えない。より多くの生徒が目標を概ね達成

するためには,例えば③の後に「調べたことを考え合わせて,自分の考えはこう変わった」,④の

後に,「他者の意見を聞いたことで,自分の考えはこう変わった」,さらに「今の私の見解」とい

ったステップをいわば強制的にたどらせるような工夫が必要だったのではないか。

授業の場面では,授業者が毎時末にワークシートの記述を確かめてその授業の生徒の学習内

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容・活動の仕方について評価・講評する場面があまり見られなかった。あるいは,授業後にワー

クシートの記述を読み取って次時の初めに注意を促したり活動の仕方の修正を求めたりすること

も然りである(進度については,遅れている,あと何時間だ,といった忠告はよくされていたが)。

また、④の達成のためには国語科で聞くスキルを重視する必要があった。これまで話すスキル

を身に付けさせてきたことは間違いないが,聞きながら要点をメモさせることにあまり重点を置

いてこなかった。他校で,聞くときの学習活動として,音声について相互評価させ一言感想を書

かせるといった評価シートに取り組ませる例を見るが,そうした活動よりもまず内容を聞き取る

力を高めるために,今後,要点をメモさせることを国語科の授業で取り組むとよい。

(左の内容を,使うページを間違えて書き始めた。)

これらはB群の生徒のものである。学習活動

の中で全ての生徒が他者の意見に耳を傾けて

いたことは確かであるが,必ずしも全員がその

跡を残すことができておらず,さらにそれらを

踏まえて自分の考えを変容させられているか

どうかは,いわば本人次第になってしまってい

る。

次ページはC群の生徒のもので,B群の例よ

りも記述は多い点で努力が認められ,他者の意

見に「影響を受けている」ようにも読み取れる。

この単元で1年生は,熱心に活動していた。そして,伝え合う姿勢やスキルはすばらしい姿を

見せてくれた。

ただ今後は,一人一人が新たな情報や知識,他者の影響を受けながら自分を更新していけるよ

う,単元の学習活動のつながり方や,各時の問いかけ・課題(の文言)を改良するとともに,そ

の基礎となるスキルを,国語科を中心に身に付けさせていく必要がある。

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