オートクチュール展 プレス...

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主催:三菱一号館美術館、日本テレビ放送網、ガリエラ宮パリ市立モード美術館、パリ・ミュゼ 2016年3月4日(金)~5月22日(日) 三菱一号館美術館

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  • 主催:三菱一号館美術館、日本テレビ放送網、ガリエラ宮パリ市立モード美術館、パリ・ミュゼ

    芸術は、着れる。

    2016年3月4日(金)~5月22日(日)

    三菱一号館美術館

  • パリ・モードの殿堂―ガリエラ宮パリ市立モード美術館が

    監修し、パリで人気を博したファッション展

    19世紀後半から現代までのオートクチュールの歴史を

    概観する一大ファッション史

    時代を映し出すシルエット、脈々と受け継がれる

    世界最高峰の刺繍・羽根細工・コサージュなどの職人技

    19世紀後半のパリで誕生したオートクチュール(Haute=「高い」「高級」・Couture=「縫製」「仕立て」の意)は、パリ・クチュール

    組合の承認する数少ないブランドにより、顧客の注文に合わせてデザイナー主導で仕立てる高級服として知られています。

    本展は、オートクチュールの始まりから現代に至る歴史を概観するもので、パリ・モードの殿堂―ガリエラ宮パリ市立モード

    美術館館長オリヴィエ・サイヤール氏監修のもと、2013年にパリ市庁舎で開催され、好評を博した展覧会を当館に合わせ

    再構成したものです。シャネル、クリスチャン・ディオール、バレンシアガ、ジヴァンシィ、イヴ・サンローラン、ジャン=ポール・

    ゴルチエ、クリスチャン・ラクロワ、アライアらが生み出してきた時代を映し出す美しいシルエットの数々、刺繍・羽根細工・

    コサージュなど脈々と受け継がれる世界最高峰の職人技を、ドレス、小物、デザイン画、写真など合わせておよそ130点により

    ご紹介します。

    展 覧 会 概 要

    見 ど こ ろ

    上)バレンシアガ

    イヴニング・ドレスとペティコートのアンサンブル

    1967年夏

    アブラハム社製ガザール織り、ナイロン・チュール、

    しわ加工の絹タフタとダチョウによる羽根の花飾り

    下)イヴ・サンローラン イヴニング・ドレス

    1970年

    ウールクレープ、絹のシャンティイ・レース

  • 展 覧 会 に 寄 せ て

    Q.19世紀後半の始まりから21世紀の今に続くパリ・オートクチュールの歴史を、パリ市立ガリエラ宮モード美術館のコレクションによって紹介する展覧会は、今回

    初めて日本で開催されます。展覧会を監修される立場から、本展覧会の魅力と展示の

    見どころを教えてください。

    A.作品はどれも二つとないものばかりで、デザイナーが時代に影響を及ぼすことのみならず、顧客の趣味が時代に反映されることもまた考慮に入れた上で選び出されて

    います。マドレーヌ・ヴィオネ、ポール・ポワレ、スキャパレリ、シャネル、ディオール、

    グレ、バレンシアガ、イヴ・サンローランのこれ以上ない貴重な作品は、オートクチュール

    の歴史に幾度か訪れた頂点を評価する道筋を示しているのです。もちろん、これは私

    たちのコレクションを基にした歴史的で主観的なひとつの見方です。ファッションの

    歴史は美術館のコレクションに応じていくつも存在するのです。私達がその業績を高く

    評価する偉大なデザイナーの中から、息を呑むような最高のデザインを選択しました。

    Q.19世紀、20世紀、21世紀と時代の移り変わりに伴って、オートクチュールが果たした役割や芸術的価値の違いを教えて頂けますか?

    A.19世紀から1950年代までのオートクチュールはライフスタイルそのものでした。顧客はたくさんのドレスを衣装部屋に持っていて、一日の内の時間帯や社交界で開かれる催しに応じて、その都度着ていくものを取り替えました。1960年代に

    現れた プレタポルテ(高級既製服)がこの様式と慣習を打ち破ることになります。ファッションとファッションの価格が広く

    一般的なものになったのは喜ぶべきことで、それは新しい衣服のクリエーションに誰もがアクセス可能になる一方で、オート

    クチュールは排他的だったのです。 1960年代以降オートクチュールのメゾン(ブランド店)数は減るばかりでしたが、人々は

    ジャン=ポール・ゴルチエのオートクチュール・コレクションの最初の発表(1997年)、クリスチャン・ラクロワの1987年のメ

    ゾン設立を目撃できましたし、現在の新しい世代にはプレタポルテよりも長い時間持つことのできるあつらえ(注文通りに

    作ってもらうこと)の技術に活路を見出している人もいます。 オートクチュールを着用することは、その人のためにあつ

    らえるひとつの作品という気持ちを抱くことであり、制作に向けて尽力するすべての手仕事に敬意の念を抱くことなのです。

    Q.サイヤールさんが感じる、オートクチュールの魅力をお聞かせください。A.奇妙なことに、私が惹かれるのはある種の慎み深さなのです。オートクチュールの作品は、サヴィル・ロウ(高級紳士服の仕立屋が並ぶロンドンのファッションストリート)で仕立てる男性用スーツのように、秘められたところの価値を高めて

    います。 グレ、バレンシアガあるいはアライアの作品は、こうしたオートクチュールの最も代表的なもので、遠くからは一つの

    色のように見えますが、近寄ると無限とも思える正確なカットが明らかになるのです。

    Q.なぜ今、展覧会のテーマにオートクチュールを選ばれたのでしょうか?また現代における意味とは何でしょうか?A.オートクチュールはフランス特有の優れた産業ですが、今日に至るまで回顧展のテーマとなったことはありませんでした。 ガリエラ宮モード美術館のコレクションを通して、私たちはシャルル=フレデリック・ウォルトの発明から現代まで

    のオートクチュールの歴史を辿りたいと思いました。職人技がそれ自身として芸術となるような、手作業で行われる仕事や

    独自の高度な技術を現代の人々に鑑賞してもらうことは、美術館が果たすべき義務です。我々は、日本の皆さんは高い技術

    とそれを受け継ぐという考え方について親しみ深く、洗練されていることを知っており、この展覧会を紹介できることを

    非常に誇りに思っています。

  • オ ート ク チュ ー ル の 始 まり

    ウォルト

    イヴニング・ケープ

    1898-1900年頃

    絹ベルベット、

    縄編みの絹リボンのアップリケ

    絹モスリン、機械レース

    ★1

    クリスチャン・ラクロワ

    イヴニング・アンサンブル

    《クー・ド・ルーリ》

    1991年秋冬

    ウールにシュニール糸、金ラメのニット、

    絹ジャカード、絹オーガンザ

    ★2

    19世紀後半のパリで、イギリス生まれのデザイナー、シャルル=フレデリック・ウォルト(1825-1895)が、年に2回の

    ファッションモデルを採用したコレクション発表、デザイナー主導で制作する高級仕立服の受注、衣服にデザイナーの署名

    入りタグを縫い付けることなど、オートクチュールの基礎を作りました。

    ナポレオン三世の皇妃ウージェニーら上流階級や、富を持ち始めた新興中産階級も顧客としたウォルトは、スカートの背部の

    ふくらみによって豪華な模様や高級生地を惜しみなく披露する「バッスルスタイル」を生み出しました。

    尚、20世紀後半から活躍しているクリスチャン・ラクロワ(1951-)はウォルトに敬意を捧げ、19世紀懐古趣味を織り交ぜた

    ドレスを手掛けています。

  • コ ル セット か ら の 解 放

    ランヴァン イヴニング・ドレス 《美しい鳥》 1928年

    絹タフタ、ラインストーンとパール・ビーズ、金属

    左)ポール・ポワレ 広告用の扇子 《ロジーヌの香水》

    1910年頃

    印刷紙、木製の骨組み

    右)ポール・ポワレ ロジーヌの香水瓶 《異国の花アーナ》

    1910年頃

    紙、ガラス、金属

    20世紀初頭に入ると、それまで支配的だったコルセットから女性の身体を解放し、直線的なラインのドレスを用いるポール・

    ポワレ(1879-1944)やマドレーヌ・ヴィオネ(1870-1975)らが登場します。

    生活に結び付く美を装飾芸術として顕彰するアール・デコの初期に、ポワレはデザイナーとして香水ブランドを立ち上げて

    先駆的な存在となりました。「狂気の時代」と呼ばれた1920年代の豊かさは過度なまでに豪華な刺繍を流行させました。

    一方で、1929年の経済恐慌を経た30年代は、ジャンヌ・ランヴァン(1867-1946)のようにシンプルかつカットに拘った

    モノクロのドレスを大量に生み出します。

    マドレーヌ・ヴィオネ イヴニング・ドレス 1924年

    絹モスリン、金属糸とパール・ビーズ、竹ビーズ、ラインストーンの刺繍

  • ア ート へ の 接 近 ― シュ ル レ アリス ム 、オ プ・ア ート

    スキャパレリ

    イヴニング・グローブ《爪》

    1936年頃

    スエード、金属の爪のアップリケ

    ★3

    スキャパレリ

    イヴニング・ケープ

    1938年頃 クレープデシン、

    スパンコールとラメ糸、金糸の刺繍

    ピエール・カルダン

    ドレス《的》

    1966年

    ウール・モスリン

    1930年代、エルザ・スキャパレリ(1890-1973)はシュルレアリスムの作家

    クリスチャン・ベラールのイラストをケープに刺繍することで同時代の芸術に

    接近しました。

    1960年代には、ピエール・カルダン(1922-)は、幾何学的で簡易な表現で

    知られるオプ・アートの模様をあしらったドレスを発表しています。

    デザイナーが常に最先端の衣装を追求する中で、アートも直接の参照源に

    なるのです。

  • 手 仕 事 ― 刺 繍 、コ サ ー ジュ 、素 材

    ジェローム イヴニング・ドレス 《楽園》

    1925年頃

    絹ツイル、金属糸、真珠とパールビーズ、ラインストーンの刺繍

    フウチョウの羽根飾り、絹タフタの花飾り

    ★5

    バレンシアガ イヴニング・ドレス 1951年秋冬

    ウール、絹サテン、絹モスリン ★4

    パコ・ラバンヌ ミニドレス 1968年

    シルバーコーティングのチェーン

    デザイナーはデザイン画を描き、裁断や縫製に指示を出しますが、実際に縫い仕事をするお針子の存在は不可欠で、オート

    クチュールは職人の手仕事こそが要です。仕立て、刺繍、羽根飾りやコサージュ(花飾り)の一つ一つを熟練した職人の手に

    より、長い時間をかけて一着のドレスを制作していきます。

    オートクチュールのドレスは、シルク、タフタ、ビーズやクリスタルといった素材が主流ですが、20世紀後半になるとプラス

    チックや金属といった新しい材料を用いる例も出てきました。クリストバル・バレンシアガ(1895-1972)は、こうしたドレス

    の制作手順を自身の手で一から手掛けることの出来た数少ない人物として知られています。

  • ディオ ー ル の ニュ ー ルック 、女 性 らし さ の 回 帰

    クリスチャン・ディオール イヴニング・ドレス 《パルミール》

    1952年秋冬

    絹サテン、パール・ビーズとスパンコール、ラインストーン、レーヨン糸、ラメ糸の刺繍

    ★6

    第二次世界大戦中はオートクチュールの顧客数が大幅に減少した上、街では女性も軍服のよう角張ったデザインの服

    を着ていました。しかし戦後すぐの1947年にクリスチャン・ディオール(1905-1957)が発表したコレクションは、

    それとは対照的に曲線を重視し、ウェストの部分を絞った、丸みを帯びたシルエットのドレスをもって「女性らしさ」を

    再度打ち出しました。

    ハーパース・バザー紙で「ニュールック」と呼ばれたこのスタイルは、瞬く間に流行しました。

  • オ ート ク チュ ー ル の 現 在

    ラフ・シモンズによるクリスチャン・ディオール

    イヴニング・ドレス

    2014年 春夏

    濃紺の絹ドレス、刺繍

    クリスチャン・ディオール 蔵

    カール・ラガーフェルドによるシャネル

    コートドレス

    1995年 秋冬

    ウール・ツイード

    1960年代以降の大量消費社会の中でプレタポルテ(高級既製服)が台頭し、多くのメゾンはオートクチュールから撤退

    します。しかし、現在においてもカール・ラガーフェルド(1938-)はシャネルの、ラフ・シモンズ(1968-)はディオール

    のデザイナーとしてそれぞれ活躍する一方で、アライアやゴルチエといった新しいデザイナーもまた、伝統を受け継ぎ

    ながらもさらに未知のクリエーションを求めて躍動し、オートクチュールを刷新し続けています。

  • 素 材 解 説

    ジヴァンシィ

    イヴニング・アンサンブル

    1971年

    プリントされた絹のオーガンジー

    【オーガンザ】・・・・・・・・・・・・薄く、透明で、張りのある平織物。オーガンジーよりも多少張りが強いのが特徴。

    【オーガンジー】・・・・・・・・・・薄く透き通った張りのある平織物。

    【ガザール】・・・・・・・・・・・・・・スイスのアブラハム社の張りがある絹織物。

    【クレープデシン】・・・・・・・・経糸に生糸、緯糸に強い撚りの生糸を2本交互に使用した平織物。フランス縮緬。

    【クレープ】・・・・・・・・・・・・・・布の表面にちぢみのような独特なしぼがでている織物。縮緬。

    【シャンティイ・レース】・・・パリ近郊のシャンティイでつくられたレース。細いコードで縁どった模様のあるボビン・レース

                のこと。黒絹のレースが有名。

    【ジャカード】・・・・・・・・・・・・・紋紙のパンチ穴に従って模様をつくる機械製の織物。

    【シュニール糸】・・・・・・・・・・装飾用の毛虫のような糸。

    【タフタ】・・・・・・・・・・・・・・・・経糸に諸撚り糸、緯糸に太い片撚りの精練糸を用いた細い横畝のある平織物。琥珀織り。

    【チュール 】・・・・・・・・・・・・・・絹や合成繊維でつくられる繊細な網状の布。

    【モスリン】・・・・・・・・・・・・・・目が細かく、軽くてやや透ける綿あるいはリネンの布。

    用語表は以下の文献を参照の上、できるだけ平易な表現で執筆した。

    『京都服飾文化研究財団コレクション ファッション 18世紀から現代まで』

    深井晃子監修、タッシェン、 2002年。

    『FASHION 世界服飾大図鑑』キャサリン・フランクリン監修、

    深井晃子日本語版監修、河出書房新社、2013年。

    『新・田中千代服飾事典』同文書院、1991年。

    たていと よこいと

  • 展 覧 会 情 報

    ■ タイトル : PARIS オートクチュール ―世界に一つだけの服

    ■ 会  期 : 2016年3月4日(金)~5月22日(日)

    ■ 主  催 : 三菱一号館美術館、日本テレビ放送網、ガリエラ宮パリ市立モード美術館、パリ・ミュゼ

    ■ 特別協力 : 公益財団法人 京都服飾文化研究財団

    ■ 後  援 : 在日フランス大使館/アンスティチュ・フランセ日本

    ■ 協  賛 : 大日本印刷

    ■ 協  力 : 三菱レイヨン株式会社、エールフランス、日本通運株式会社

    ■ 企画協力 : NTVヨーロッパ

    ■ 監  修 : オリヴィエ・サイヤール(ガリエラ宮パリ市立モード美術館館長)

    ■ 休 館 日 : 月曜日(但し、祝日と5月2日、16日は開館)

    ■ 開館時間 : 10:00~18:00(祝日を除く金曜日と会期最終週平日は20:00まで)

    ■ 会  場 : 三菱一号館美術館(東京・丸の内)

    〒100-0005 東京都千代田区丸の内2-6-2

    ■ 展覧会サイト: http://mimt.jp/paris-hc

    ■ 美術館サイト: http://mimt.jp

    ■ 入 館 料 : 当日券 一般―1,700円 高校・大学生―1,000円 小・中学生―500円

    前売券 一般―1,500円

    (10月10日からローソンチケット、チケットぴあ、セブンチケット、イープラス、ちけっとぽーと関東各店、

    三菱一号館美術館チケット購入サイトWEBKET、三菱一号館美術館Store1894にて販売)

    特別に表記のない作品は全て、ガリエラ宮パリ市立モード美術館蔵 Photograph: ©Katerina Jebb @ mfilomeno.com