クリアランスレベル以下にするための 低放射化設計 …...2017/07/19  · [7]...

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革新的実用原子力技術開発費補助事業 平成19年度成果報告書概要版 Innovative and Viable Nuclear Energy Technology (IVNET) Development Project クリアランスレベル以下にするための 低放射化設計法に関する技術開発 平成20年3月 東北大学 東北電力 株式会社 株式会社 東芝 日立 GE ニュークリア・エナジー株式会社 三菱重工業 株式会社 株式会社 フジタ 太平洋セメント 株式会社 電気化学工業 株式会社 株式会社 日鐵テクノリサーチ

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Page 1: クリアランスレベル以下にするための 低放射化設計 …...2017/07/19  · [7] Uematsu M. et al. “Low-Activation Reinforced Concrete Design Methodology (3)-ΣD/C

革新的実用原子力技術開発費補助事業

平成19年度成果報告書概要版 Innovative and Viable Nuclear Energy Technology (IVNET)

Development Project

クリアランスレベル以下にするための

低放射化設計法に関する技術開発

平成20年3月

東北大学

東北電力 株式会社

株式会社 東芝

日立 GE ニュークリア・エナジー株式会社

三菱重工業 株式会社

株式会社 フジタ

太平洋セメント 株式会社

電気化学工業 株式会社

株式会社 日鐵テクノリサーチ

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本報告書は、東北大学、東北電力株式会社、株式会社東芝、日立 GE ニュークリア・エ

ナジー株式会社、三菱重工業株式会社、株式会社フジタ、太平洋セメント株式会社、電気

化学工業株式会社と株式会社日鐵テクノリサーチが連携して経済産業省からの補助金を受

けて実施した技術開発の成果報告書であり、その著作権は上記連携機関に属します。本報

告書の一部または全部について使用・転載する場合には、事前に許可を受けることが必要

です。

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クリアランスレベル以下にするための低放射化設計法

に関する技術開発(平成 19 年度) Development of Low-Activation Design Method for Reduction of Radioactive Waste below Clearance Level

東北大学 長谷川 晃、東北電力㈱ 齋藤 実、㈱東芝 上松 幹夫、

日立 GE ニュークリア・エナジー㈱ 林 克己、三菱重工業㈱ 中田 幹裕、㈱フジタ 金野 正晴

太平洋セメント㈱ 田野崎 隆雄、電気化学工業㈱ 吉野 亮悦、㈱日鐵テクノリサーチ 佐藤満

クリアランスレベル以下にするための低放射化設計法に関する技術開発を平成 17 年度より開始した。本報告では平成 19 年度に得た成果について報告する。

キーワード:原子力発電所、ライフサイクルコスト低減、低放射化設計法、クリアランスレベル、 廃止措置、低放射化コンクリート、低放射化鉄筋、低放射化セメント

1. 目的

原子炉施設の高βγ低レベル廃棄物(L1)、低レベル放射性廃棄物(L2)、極低レベル放射性廃棄

物(L3)、クリアランスの各区分判断用の広範な材料データベースおよびマップを作成し、低放射化

材料の置換で有益になる範囲を明確にし、それらの部位に適用するコンクリート系低放射化材料およ

び低放射化鉄筋を開発する。このことにより、廃止措置時における廃棄物中の残留放射能を大幅に低

減させる設計法を提供する。すなわち低放射化設計法の基礎を新しく確立する。

2. 技術開発成果

(1)原子力施設用の低放射化コンクリートの実用化開発

ABWR 原子炉遮蔽壁(RSW)については、現状の L2 区分を全て L3 区分以下にするために、1/300*1低放射化重量モルタルの施工性の改善、材料分離抵抗性の向上、水和熱のさらなる抑制、耐久性評

価などの試験を行った。その結果、昨年度に開発した低放射化 CAS*2 系混和材を使用した重量モル

タルは、ハイアルミナセメントモルタルで課題としていた流動性を改善し、水和発熱を低減すること

ができ、実用化へ向けて前進した。ABWR 生体遮蔽壁(BSW)については、低放射化混和材を使用

した 1/50 低放射化コンクリートの代替で、BSW 部位のほぼ全てをクリアランスレベル以下にできる

ことがわかった。 APWR原子炉周りの遮蔽壁については、低放射化CAS系混和材の中性化に対する抵抗性を評価し、

この混和材を使用したセメントは普通セメントに比べて中性化が早く、中性化抑制策が必要であるこ

とを明らかにした。また、L2→L3 用低放射化コンクリートとして、アルミナ系骨材を使用したコン

クリートが有力候補となった。 コスト低減効果の評価システム開発では、2 次元モデルに基づく詳細評価の結果、低放射化コンク

リートを適用した場合の放射性廃棄物量及び処分コスト削減効果が試算された。 *1∑D/C が普通モルタル比 1/300。以下、1/10○○の場合は普通の○○材料比 1/10 の意。*2カルシウムアルミネートシリケート

(2)低放射化材料の創製

低放射化セメントの開発については、石灰石原料以外の 適化も行い、実用化にあたっての課題抽

出およびその対策などについて検討した。併せて、試製セメントの評価を行い、標準化や規格化に向

けて品質のバラツキに対応した検討を行った。また低放射化型低熱ポルトランドセメントの製造試験

に関しては、JIS 低熱セメントの規格内に納めることができ、コンクリート試験ができる量(2トン

程度)の試製に成功した。ハイアルミナセメントに関しては、低放射化 CAS 系混和材添加で多くの

課題が解決できるということがわかったので、混和材のさらなる組成や粒度の 適化ならびに実機製

造(8 トン)を行い量産時の問題点を整理するとともに、モルタル試験で流動性の改善や収縮量の低

減を確認した。低放射化中性子遮蔽材料の創製については、B4C 添加によるコンクリート試験とボロ

ン溶出試験を行い、ボロン入りコンクリートとしての基本的な健全性を確認した。

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低放射化鉄筋開発のため、製造プロセスにおけるマスバランス調査と低 Co 鉄筋の材質特性調査を

継続して行なった。その結果、合金元素の選択により Co の混入を抑制できる事を確認した。また、

接合性能にも問題の無い事を確認でき、極低 Co 鋼の鉄筋としての使用性能は現用されている鉄筋と

変わることなく、同様の状態で施工可能なことが明らかとなった。 (3)低放射化設計法の開発

材料データベースの構築と連携し、化学組成データ等を更新するとともに、材料組合せによる放射

化のシミュレーション機能を付加し、原材料の成因によるデータのばらつきを調査した。区分マップ

作成システムに関しては、選択した材料(コンクリート、鉄筋ごとに)について、廃棄物レベル区分

を迅速に評価するシステムを作成した。

(4)クリアランスなどの区分判断用材料データベースの構築

低放射化設計法を確立するための基礎データとして、コンクリート材料など約 500 種類の材料につ

いて、放射化分析、ICP-AES、ICP-MS などで分析し、材料データベースの拡充をはかった。また、

難測定核種に関しては、129I(加速器質量分析)および 41Ca の評価試験を行った。14C および 36Clについては、測定のための前処理確認とブランクテストを行った。

3. まとめ

平成 19 年度は所定の技術開発を実施するとともに開発成果を公表した 1-45。本研究は平成 20 年度

まで実施していく計画としており、データベース構築と低放射化材料創製により、放射化廃棄物を大

幅に低減させる低放射化設計法を確立する。

[1] Kitamura S. et al. “Technology to Produce Low-activation Steel for the Reduction of Radioactive Waste”,

Proceedings of AISTech2007,2,1297-1304,USA,Indianapolis,AIST(2007).

[2]長谷川,他,コンクリートの放射化低減技術開発の現状-原子力発電所のリプレースに備える-,原子力 eye,

Vol.53, No.6, p.60-63, (2007).

[3]田野崎,他:コンクリート系低放射化材料の開発,コンクリート工学協会年次論文集,Vol.29, p81-86, (2007).

[4]藤倉他:低放射化コンクリートのマスコンクリート部材への適用性の検討,コンクリート工学協会年次論文集,

Vol.29, p.433-438, (2007).

[5] Hasegawa A. et al. ”Low-Activation Reinforced Concrete Design Methodology (1)- Overview of the project-

“, Transactions, 19th International Conference on Structural Mechanics in Reactor Technology, Toronto,

Canada, Paper# F02/4,(2007).

[6] Hayashi K. et al. “Low-Activation Reinforced Concrete Design Methodology (2)- Multi-group X-Sec. Library

for Precise Activation Analysis-“, Transactions, 19th International Conference on Structural Mechanics in

Reactor Technology, Toronto, Canada, Paper# HW2/1, (2007).

[7] Uematsu M. et al. “Low-Activation Reinforced Concrete Design Methodology (3)-ΣD/C value reduction by

utilizing Low-Activation Concrete-“, Transactions, 19th International Conference on Structural Mechanics in Reactor Technology, Toronto, Canada, Paper# F02/4, (2007).

[8] Ogata T. et al. “Low-Activation Reinforced Concrete Design Methodology (4)-Classification System for

Radioactive Waste Disposal-“, Transactions, 19th International Conference on Structural Mechanics in Reactor

Technology, Toronto, Canada, Paper# HW2/3, (2007).

[9] Kakinuma N. et al. “Low-Activation Reinforced Concrete Design Methodology (5) Low-Activation Material

Development Support System-“, Transactions, 19th International Conference on Structural Mechanics in Reactor

Technology, Toronto, Canada, Paper# HW01/1, (2007).

[10] Ichitsubo K. et al. “Low-Activation Reinforced Concrete Design Methodology (LARC)(6)- Development of

Low-Activation Cement -“, Transactions, 19th International Conference on Structural Mechanics in Reactor

Technology, Toronto, Canada, Paper# HW1/2, (2007).

[11] Yoshino R. et al. “Development of Low-Activation Design Method for Reduction of Radioactive Waste below

Clearance Level (7)-Application of High Alumina Cement for Low-Activation mortar -“, Transactions, 19th

International Conference on Structural Mechanics in Reactor Technology, Toronto, Canada, Paper# HW1/3,

(2007).

[12] Kimura K. et al. “Low-Activation Reinforced Concrete Design Methodology (8)-Fundamental Investigation

for Various Types of Low-Activation Concrete -“, Transactions, 19th International Conference on Structural

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Mechanics in Reactor Technology, Toronto, Canada, Paper# F02/6, (2007).

[13] Kinno M. et al. “Low-Activation Reinforced Concrete Design Methodology (9)- Low-Activation Concrete

Based on Limestone Aggregates and White Cement -“, Transactions, 19th International Conference on Structural

Mechanics in Reactor Technology, Toronto, Canada, Paper# HW1/4, (2007).

[14] Kinno M. et al. “Low-Activation Reinforced Concrete Design Methodology (10)- Low-Activation Concrete

Based on Fused Alumina Aggregates and High Alumina Cement -“, Transactions, 19th International Conference

on Structural Mechanics in Reactor Technology, Toronto, Canada, Paper# HW1/5, (2007).

[15] Fujikura Y. et al. “Low-Activation Reinforced Concrete Design Methodology (11)- Preliminary FEM Analysis

of Thermal Stress for Reference Low-Activation Concrete -“ , Transactions, 19th International Conference

on Structural Mechanics in Reactor Technology, Toronto, Canada, Paper# F02/5, (2007). [16] Kinno M. et al. “Low-Activation Reinforced Concrete Design Methodology (12)-Measurement of Residual

Radionuclides in Irradiated Low-Activation Concrete“, Transactions, 19th International Conference on

Structural Mechanics in Reactor Technology, Toronto, Canada, Paper# HW2/4, (2007).

[17] Kitamura S. et al. “Low Activation Reinforced Concrete Design Methodology (13)- Technology to Produce

Low Activation Steel Reinforcing Bars -, Transactions, 19th International Conference on Structural Mechanics in Reactor Technology, Toronto, Canada, Paper# HW2/5, (2007). [18]木村,他:クリアランスレベル以下にするための低放射化設計法に関する技術開発Ⅰ 低放射化コンクリートの

概要,2007 年日本建築学会大会,1580,p.1175-1176, (2007).

[19] 田野崎,他:クリアランスレベル以下にするための低放射化設計法に関する技術開発Ⅱ 低放射化セメント,2007

年日本建築学会大会,1581,p.1177-1178, (2007).

[20] 野崎,他:クリアランスレベル以下にするための低放射化設計法に関する技術開発Ⅲ 石灰石性状調査,2007

年日本建築学会大会,1582,p.1179-1180, (2007).

[21] 瀧本,他:クリアランスレベル以下にするための低放射化設計法に関する技術開発Ⅳ 混和材性状調査,2007

年日本建築学会大会,1583,p.1181-1182, (2007).

[22] 藤倉,他:混和材を使用した低放射化コンクリートの低発熱化の効果,土木学会第 62 回年次学術講演会講演概

要集第 5部,p.411-412,(2007).

[23]北村,他:製鋼工程における Co の混入源と挙動 低放射化鉄鋼材料の製造技術(2),日本鉄鋼協会第 154 回秋季

講演大会,日本,岐阜,(2007.9.19-2007.9.20)

[24] 長谷川,他:クリアランスレベル以下にするための低放射化設計法に関する技術開発(28)-研究成果の概要-,日

本原子力学会 2007 年秋の大会, F27, p.328, 北九州国際会議場他,(2007).

[25] 金野,他:クリアランスレベル以下にするための低放射化設計法に関する技術開発(29)-中性子吸収材入り低放

射化コンクリート-,日本原子力学会 2007 年秋の大会, F28, p.329, 北九州国際会議場他,(2007).

[26] 瀧本,他:クリアランスレベル以下にするための低放射化設計法に関する技術開発(30)-石灰石のキャラクタリ

ゼーションⅡ-,日本原子力学会 2007 年秋の大会, F29, p.330, 北九州国際会議場他,(2007).

[27] 田野崎,他:クリアランスレベル以下にするための低放射化設計法に関する技術開発(31)-低放射化セメントの

試製Ⅱ-,日本原子力学会 2007 年秋の大会, F30, p.331, 北九州国際会議場他,(2007).

[28] 森,他:クリアランスレベル以下にするための低放射化設計法に関する技術開発(32)-低放射化混和材の開発-,

日本原子力学会 2007 年秋の大会, F31, p.332, 北九州国際会議場他,(2007).

[29] 林,他:クリアランスレベル以下にするための低放射化設計法に関する技術開発-(33)熱中性子多群化による ABWR

モデルプラント中性子束詳細評価-,日本原子力学会 2007 年秋の大会, F32, p.333, 北九州国際会議場他,(2007).

[30] 尾方,他:クリアランスレベル以下にするための低放射化設計法に関する技術開発-(34)熱中性子多群化による

APWR モデルプラント中性子束詳細評価-,日本原子力学会 2007 年秋の大会, F33, p.334, 北九州国際会議場他,(2007).

[31] 鈴木,他:クリアランスレベル以下にするための低放射化設計法に関する技術開発(35)3 次元モンテカルロ法に

よる BWR 格納容器の放射化率詳細評価,日本原子力学会 2007 年秋の大会, F34, p.335, 北九州国際会議場他,(2007).

[32] 山口,他:クリアランスレベル以下にするための低放射化設計法に関する技術開発(36)-放射化した廃棄物の処

理処分区分マップ作成システムの開発-,日本原子力学会2007年秋の大会, F35, p.336, 北九州国際会議場他,(2007).

[33] Kitamura S, et al. :”Behavior of cobalt in iron- and steel-making processes”, ISIJ International,

47(12), 1818-1828, (2007).

[34]一坪,他:低放射化セメント-低放射化コンクリートの新たな展開-,CEM’S, 太平洋セメント㈱,P25-30,(2008).

[35]一坪,他:低放射化セメントの創製(低熱白熱セメントの創製),2007 セメント協会論文集,2008.2.20 刊,(2008).

[36] 長谷川,他:クリアランスレベル以下にするための低放射化設計法に関する技術開発(37)研究成果の概要,日本

原子力学会 2008 年春の年会, C1, 大阪大学,(2008).

[37] 上松,他:クリアランスレベル以下にするための低放射化設計法に関する技術開発-(38)熱中性子多群化による

ABWR 内放射化量 2次元分布の詳細評価-,日本原子力学会 2008 年春の年会, C2, 大阪大学,(2008).

[38] 尾方,他:クリアランスレベル以下にするための低放射化設計法に関する技術開発-(39)熱中性子多群化による

APWR モデルプラント内放射化量 2次元分布の詳細評価-,日本原子力学会 2008 年春の年会, C3, 大阪大学,(2008).

[39] 山口,他:クリアランスレベル以下にするための低放射化設計法に関する技術開発(40)区分マップシステムの

JPDR への適用,日本原子力学会 2008 年春の年会, C4, 大阪大学,(2008).

[40] 金野,他:クリアランスレベル以下にするための低放射化設計法に関する技術開発(41)中性子吸収材入り低放射

化コンクリート,その 2,日本原子力学会 2008 年春の年会, C5, 大阪大学,(2008).

[41] 田野崎,他:クリアランスレベル以下にするための低放射化設計法に関する技術開発-(42)低放射化セメントの

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試製Ⅲ-,日本原子力学会 2008 年春の年会, C6, 大阪大学,(2008).

[42] 瀧本,他:クリアランスレベル以下にするための低放射化設計法に関する技術開発-(43)石灰石のキャラクタリ

ゼーションⅢ-,日本原子力学会 2008 年春の年会, C7, 大阪大学,(2008).

[43] 森,他:クリアランスレベル以下にするための低放射化設計法に関する技術開発-(44)低放射化混和材の水和反

応に与える比表面積の影響-,日本原子力学会 2008 年春の年会, C8, 大阪大学,(2008).

[44] 榊原,他:クリアランスレベル以下にするための低放射化設計法に関する技術開発-(45)低放射化鉄筋の接合性

評価-,日本原子力学会 2008 年春の年会, C9, 大阪大学,(2008).

[45] 佐藤,他:クリアランスレベル以下にするための低放射化設計法に関する技術開発(46)材料データベースと材料

選定評価システム,日本原子力学会 2008 年春の年会, C10, 大阪大学,(2008).

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Development of Low-Activation Design Method for Reduction of Radioactive Waste below Clearance Level

Tohoku University: Akira Hasegawa, Tohoku Electric Power Co., Inc.: Minoru Saito,

Toshiba Corporation:Mikio Uematsu, Hitachi-GE Nuclear Energy, Ltd.: Katsumi Hayashi, Mitsubishi Heavy Industries, Ltd.: Mikihiro Nakata, Fujita Corporation: Masaharu Kinno,

Taiheiyo Cement Co.: Takao Tanosaki, Denki Kagaku Kogyo K.K.: Ryoetsu Yoshino, Nippon Steel Technoresearch Co.: Mitsuru Sato

The development project of low-activation design method for reduction of radioactive waste below clearance level has been started since 2005. In this report, the results during 2007 fiscal year are summarized.

Keyword: Nuclear power plant, Reduction of Radioactive Waste, Low-activation design, Clearance level, Decommissioning, Low-activation concrete, Low-activation re-bar, Low-activation cement 1. Objective:

The objectives of the project are to develop materials database and map to use judgment of divisions such as high beta and gamma emitter low level waste (L1), low level radioactive waste (L2), very low level radioactive waste (L3) and clearance level from nuclear power plants, to clarify useful position in the nuclear plants for substitution low-activation materials, to produce low-activation concrete and reinforcing steel rod applying to the positions. Through the project, design methodology to largely reduce residual radioactivity in waste from nuclear plant decommission. In other words, basics of the low-activation design method will be established. 2. Progress and status (1) Development of low-activation concrete and application to nuclear plants

As for reactor shielding wall (RSW) in ABWR, examination of 1/300-low-activation* heavy mortar in terms of execution, material separation resistance, hydration heat and durability was carried out to reduce radioactivity of the components below L3 level, which was currently considered as L2 level. Remarkable progress was shown in low-activation heavy mortar which developed in last year, because of improvement in fluidity and reduction of hydration heat by use of low-activation calcium-aluminate-silicate(CAS) type mixing material. As for biological shielding wall (BSW) in ABWR, it was found that most of the BSW could be below clearance level when it replaced by 1/50-low-activation concrete with low-activation mixing materials.

As for shielding wall in APWR, resistance to the neutralization of the low-activation CAS type mixing material was evaluated. It was shown that neutralization of the cement using the mixing material occurred earlier than standard cement. It was found the candidate concrete which reduce radioactivity from L2 to L3 level was that using alumina type aggregate.

As for development of evaluation system of cost reduction by the low-activation design, results from detailed evaluation of two-dimensional model indicated that radio-active waste and the cost were reduced by use of low-activation concrete. * “1/300-low-activation” denotes that the activity reduction rate to ordinary concrete is designed to be 1/300. (2) Development of low-activation materials

As for development of low-activation cement, optimization of raw materials including lime stones for the low activation cement was carried out. Evaluation of cement made by a trial was performed in terms of the scattering of the quality which will be needed for standardization. As for production examination of the low-heat Portland cement which satisfied standard of JIS, about two tons of cement was successfully obtained. As for modification of high-alumina cement, it was found that the low-activation CAS-type mixing material was effective to solve most of

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issues. Optimization of the mixing material was carried out. About 8 tons of cement production was demonstrated. As for development of low-activation neutron shielding material, examination and evaluation of elution of boron for the concrete containing B4C were carried out.

As for the development of low-activation reinforcing steel rod, investigations about the mass balance in the production process and the mechanical properties of the steel rods were continued. The contamination of Co can be avoided by the proper selection of alloying materials. The mechanical properties of the welded part were almost the same as the commercial products. It was clarified that the low Co containing steel rod can be used as the same welding condition. (3) Design and evaluation methods for low-activation system

Connecting to the development of materials database, data scattering due to the origin of raw materials was studied. The database of chemical compositions was updated and a simulation function of the radio-activation for the materials combination was added to the system. A mapping system to use judgment of the divisions of the waste was developed. The system had a capability to evaluated waste level division quickly for selected materials (each concrete or reinforcing rod). (4) Database to use judgment of the waste divisions

Materials database to use for establishment of the low-activation design method was expanded for over 500 samples including the low-activation concrete developed in this project by means of neutron activation method, ICP-AES and ICP-MS. About the difficulty measurement nuclides, such as 129I (Accelerator mass spectrometry), 41Ca, 14C and 36Cl, preliminarily measurements were carried out. 3. Summary

In 2007, predetermined technology development was carried out and the results were published1-45. This project is as a plan carrying out in four years until 2009. Material database will be created and low-activation material will be developed, low-activation design method will be established so that nuclear waste will be largely reduced through this projects. References

[1] Kitamura S. et al., ”Technology to Produce Low-activation Steel for the Reduction of Radioactive Waste”, Proceedings of AISTech2007, 2, pp.1297-1304, USA, Indianapolis, AIST, (2007). [2] Hasegawa A. et al., ”Present state of Low-Activation Technology & Development for Concrete – Preparation for Replacement of Nuclear Power Plant”, Nuclear Viewpoints, Vol. 53, No.6, pp.60-63, (2007). [3] Tanosaki T., et al., ”Low radioactive concrete material”, Proceedings of Japan Concrete Institute, vol. 29, pp.81-86, (2007). [4] Fujikura Y., ”Application of Low-Activation Concrete for Massive Concrete”, Proceedings of Japan Concrete Institute, Vol.29, pp.433-438, (2007). [5] Hasegawa A. et al., ”Low-Activation Reinforced Concrete Design Methodology (1)- Overview of the project-“, Transactions, 19th International Conference on Structural Mechanics in Reactor Technology, Toronto, Canada, Paper# F02/4,(2007). [6] Hayashi K. et al., ”Low-Activation Reinforced Concrete Design Methodology (2)- Multi-group X-Sec. Library for Precise Activation Analysis-“, Transactions, 19th International Conference on Structural Mechanics in Reactor Technology, Toronto, Canada, Paper# HW2/1, (2007). [7] Uematsu M. et al., ”Low-Activation Reinforced Concrete Design Methodology (3)-ΣD/C value reduction by utilizing Low-Activation Concrete-“, Transactions, 19th International Conference on Structural Mechanics in Reactor Technology, Toronto, Canada, Paper# F02/4, (2007). [8] Ogata T. et al. , ”Low-Activation Reinforced Concrete Design Methodology (4)-Classification System for Radioactive Waste Disposal-“, Transactions, 19th International Conference on Structural Mechanics in Reactor Technology, Toronto, Canada, Paper# HW2/3, (2007).

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[9] Kakinuma N. et al., ”Low-Activation Reinforced Concrete Design Methodology (5) Low-Activation Material Development Support System-“, Transactions, 19th International Conference on Structural Mechanics in Reactor Technology, Toronto, Canada, Paper# HW01/1, (2007). [10] Ichitsubo K. et al., ”Low-Activation Reinforced Concrete Design Methodology (LARC)(6)- Development of Low-Activation Cement -“, Transactions, 19th International Conference on Structural Mechanics in Reactor Technology, Toronto, Canada, Paper# HW1/2, (2007). [11] Yoshino R. et al., ”Development of Low-Activation Design Method for Reduction of Radioactive Waste below Clearance Level (7)-Application of High Alumina Cement for Low-Activation mortar -“, Transactions, 19th International Conference on Structural Mechanics in Reactor Technology, Toronto, Canada, Paper# HW1/3, (2007). [12] Kimura K. et al., ”Low-Activation Reinforced Concrete Design Methodology (8)-Fundamental Investigation for Various Types of Low-Activation Concrete -“, Transactions, 19th International Conference on Structural Mechanics in Reactor Technology, Toronto, Canada, Paper# F02/6, (2007). [13] Kinno M. et al., “Low-Activation Reinforced Concrete Design Methodology (9)- Low-Activation Concrete Based on Limestone Aggregates and White Cement -“, Transactions, 19th International Conference on Structural Mechanics in Reactor Technology, Toronto, Canada, Paper# HW1/4, (2007). [14] Kinno M. et al., “Low-Activation Reinforced Concrete Design Methodology (10)- Low-Activation Concrete Based on Fused Alumina Aggregates and High Alumina Cement -“, Transactions, 19th International Conference on Structural Mechanics in Reactor Technology, Toronto, Canada, Paper# HW1/5, (2007). [15] Fujikura Y. et al., “Low-Activation Reinforced Concrete Design Methodology (11)- Preliminary FEM Analysis of Thermal Stress for Reference Low-Activation Concrete -“ , Transactions, 19th International Conference on Structural Mechanics in Reactor Technology, Toronto, Canada, Paper# F02/5, (2007). [16] Kinno M. et al., “Low-Activation Reinforced Concrete Design Methodology (12)-Measurement of Residual Radionuclides in Irradiated Low-Activation Concrete“, Transactions, 19th International Conference on Structural Mechanics in Reactor Technology, Toronto, Canada, Paper# HW2/4, (2007). [17] Kitamura S. et al., “Low Activation Reinforced Concrete Design Methodology (13)- Technology to Produce Low Activation Steel Reinforcing Bars -, Transactions, 19th International Conference on Structural Mechanics in Reactor Technology, Toronto, Canada, Paper# HW2/5, (2007). [18] Kimura K., et al., “Development of Low-Activation Design Method for Reduction of Radioactive Waste below Clearance Level Ⅰ- Review of Low-Activation Concrete”, Proceedings of 2007 Meeting of Architectural Institute of Japan, 1580,pp.1175-1176, (2007). [19] Tanosaki T., et al., “Development of Low-Activation Design Method for Reduction of Radioactive Waste below Clearance Level Ⅱ - Low Activation Cement”, Proceedings of 2007 Meeting of Architectural Institute of Japan, 1581, pp.1177-1178, (2007). [20] Nozaki K., et al., “Development of Low-Activation Design Method for Reduction of Radioactive Waste below Clearance Level Ⅲ - Research of Limestone”, Proceedings of 2007 Meeting of Architectural Institute of Japan, 1582, pp.1179-1180,(2007). [21] Takimoto M., et al., “Development of Low-Activation Design Method for Reduction of Radioactive Waste below Clearance Level Ⅳ- Research of Admixture in Concrete”, Proceedings of 2007 Meeting of Architectural Institute of Japan, 1583, pp.1181-1182, (2007). [22] Fujikura, Y., et al., “Low-Heat Hydration Effect of Low-Activation Concrete using Low-Activation Additives”,Summaries of Technical Papers of 62 th Annual Meeting, Japan Society of Civil Engineers,5-206, pp.411-412, (2007). [23] Kitamura S., et al., "Mixture Source and Behavior of Co in Steelmaking Process- Technology to Produce Low Activation Steel (2)", 154th ISIJ Meeting, Japan, Gifu, (2007.9.19-2007.9.20) [24] Hasegawa A., et al., “Development of Low-Activation Design Method for Reduction of Radioactive Waste below Clearance Level (28) Overview”, Preprints 2007 Fall Mtg., Atomic Energy Society of Japan, Kitakyushu, F27, p.328, (2007). [25] Kinno M., et al., “Development of Low-Activation Design Method for Reduction of Radioactive Waste below Clearance Level (29) Neutron Absorber Admixed Low-Activation Concrete”, Preprints 2007 Fall Mtg., Atomic Energy Society of Japan, Kitakyushu, F28, p.329, (2007). [26] Takimoto M., et al., “Development of Low-Activation Design Method for Reduction of Radioactive Waste below Clearance Level (30) Characterization of Limestone II”, Preprints 2007 Fall Mtg., Atomic Energy Society of Japan, Kitakyushu, F29, p.330, (2007). [27] Tanosaki T., et al., “Development of Low-Activation Design Method for Reduction of Radioactive Waste

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below Clearance Level (31) Manufacture of the Low-Activation Cement II”, Preprints 2007 Fall Mtg., Atomic Energy Society of Japan, Kitakyushu, F30, p.331, (2007). [28] Mori T., et al., “Development of Low-Activation Design Method for Reduction of Radioactive Waste below Clearance Level (32) Development of Low-Activation Additives”, Preprints 2007 Fall Mtg., Atomic Energy Society of Japan, Kitakyushu, F31, p.332, (2007). [29] Hayashi K., et al., “Development of Low-Activation Design Method for Reduction of Radioactive Waste below Clearance Level (33) Development of Low-Activation Additives”, Preprints 2007 Fall Mtg., Atomic Energy Society of Japan, Kitakyushu, F32, p.333, (2007). [30] Ogata T., et al., “Development of Low-Activation Design Method for Reduction of Radioactive Waste below Clearance Level (34) Precise Neutron Flux Estimation of APWR Model Plant using Multi-group Thermal Cross Section”, Preprints 2007 Fall Mtg., Atomic Energy Society of Japan, Kitakyushu, F33, p. 334, (2007). [31] Suzuki M., et al., “Development of Low-Activation Design Method for Reduction of Radioactive Waste below Clearance Level (35) Detail Evaluation of Activation Rate for BWR Reactor Containment by Monte Carlo Method”, Preprints 2007 Fall Mtg., Atomic Energy Society of Japan, Kitakyushu, F34, p. 335, (2007). [32] Yamaguchi K., et al., “Development of Low-Activation Design Method for Reduction of Radioactive Waste below Clearance Level (36) Development of Classification-Mapping System for Radioactive Waste”, Preprints 2007 Fall Mtg., Atomic Energy Society of Japan, Kitakyushu, F35, p.336, (2007). [33] Kitamura S, et al., ”Behavior of cobalt in iron- and steel-making processes”, ISIJ International, 47(12), pp.1818-1828, (2007). [34]Ichitsubo K., et al., “Development of low activation concrete CEM’S”, pp.25-30, (2008). [35]Ichitsubo K., et al., “Development of low activation cement- Development of Low Heat White Cement-“, Proceedings of Japan cement association meeting No61, (2008). [36] Hasegawa A., et al., “Development of Low-Activation Design Method for Reduction of Radioactive Waste below Clearance Level (37) Overview”, Preprints 2008 Spring Mtg., Atomic Energy Society of Japan, Osaka University, C1, (2008). [37] Uematsu M., et al., “Development of Low-Activation Design Method for Reduction of Radioactive Waste below Clearance Level (38) Precise Analysis of Radio activities in ABWR Model Plant using Multigroup Thermal Cross Section Library”, Preprints 2008 Spring Mtg., Atomic Energy Society of Japan, Osaka University, C2, (2008). [38] Ogata T., et al., “Development of Low-Activation Design Method for Reduction of Radioactive Waste below Clearance Level (39) Precise Two-Dimensional Activation Estimation of APWR Model Plant using Multigroup Thermal Cross Section Library”, Preprints 2008 Spring Mtg., Atomic Energy Society of Japan, Osaka University, C3, (2008). [39] Yamaguchi K., et al., “Development of Low-Activation Design Method for Reduction of Radioactive Waste below Clearance Level (40) Application of Classification-Mapping System to JPDR”, Preprints 2008 Spring Mtg., Atomic Energy Society of Japan, Osaka University, C4, (2008). [40] Kinno M., et al., “Development of Low-Activation Design Method for Reduction of Radioactive Waste below Clearance Level (41) Low-Activation Concrete Admixed with Neutron Absorber, Part 2”, Preprints 2008 Spring Mtg., Atomic Energy Society of Japan, Osaka University, C5, (2008). [41] Tanosaki T., et al., “Development of Low activation Design Method for Reduction of Radioactive Waste below Clearance Level(42) Low activation cement III”, Preprints 2008 Spring Mtg., Atomic Energy Society of Japan, Osaka University, C6, (2008). [42] Takimoto M., et al., “Development of Low-Activation Design Method for Reduction of Radioactive Waste below Clearance Level (43) Characterization of Limestone III”, Preprints 2008 Spring Mtg., Atomic Energy Society of Japan, Osaka University, C7, (2008). [43] Mori T., et al., “Development of Low-Activation Design Method for Reduction of Radioactive Waste below Clearance Level (44) Influence of Specific Surface Area on Hydration of Low-Activation Additive”, Preprints 2008 Spring Mtg., Atomic Energy Society of Japan, Osaka University, C8, (2008). [44] Sakakibara M., et al., “Development of Low-Activation Design Method for Reduction of Radioactive Waste below Clearance Level (45) Evaluation of the Weldability of Low Activation Reinforcing Steel Rod, Preprints 2008 Spring Mtg., Atomic Energy Society of Japan, Osaka University, C9, (2008). [45] Satou M., et al., “Development of Low-Activation Design Method for Reduction of Radioactive Waste below Clearance Level (46) Material Database and Material Selection Support System”, Preprints 2008 Spring Mtg., Atomic Energy Society of Japan, Osaka University, C10, (2008).

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目 次

1. はじめに 1 1.1 背景 1 1.2 目的 1 1.3 目標 1

2. 技術開発計画 1

2.1 技術開発の位置付け 1 2.2 技術開発の実施計画 2 2.2.1 原子力施設用の低放射化コンクリート実用化開発 2 2.2.2 低放射化材料の創製 2 2.2.3 低放射化設計法の開発 2 2.2.4 クリアランスなどの区分判断用材料データベースの構築 2 2.3 技術開発の実施工程 3 2.4 技術開発の実施体制 3 3. 平成 19 年度技術開発成果の概要 4 3.1 原子力施設用の低放射化コンクリート実用化開発 4 3.1.1 ABWR 遮蔽壁への適用を目指した開発 4 (1) ABWR 原子炉遮蔽壁への適用を目指した開発 4 (2) ABWR 生体遮蔽壁への適用を目指した開発 7 3.1.2 APWR 遮蔽壁への適用を目指した開発 9 3.1.3 低放射化材料適用によるコスト低減効果の評価 12 3.2 低放射化材料の創製 15 3.2.1 低放射化セメントの創製 15 (1) 低放射化型低熱ポルトランドセメントの創製 15 (2) ハイアルミナセメント用低放射化 CAS 系混和材の創製 21 3.2.2 低放射化鉄筋の創製 24 3.2.3 低放射化中性子遮蔽材料の創製 27 3.3 低放射化設計法の開発 28 3.3.1 放射化した廃棄物の処理処分区分マップ作成システムの開発 28 3.3.2 材料選定評価システムの開発 30 3.4 クリアランスなどの区分判断用材料データベースの構築 30 3.4.1 データベースの拡充 31 3.4.2 サンプリングおよび元素分析 31

3.4.3 難測定核種の検討 32 4. 平成 19 年度技術開発成果のまとめ 33 4.1 全体のまとめ 33 4.2 今後の計画 34 4.3 得られた成果に関する自己評価 36

ix

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1. はじめに

1.1 背景

原子炉周りの遮蔽コンクリート、鋼材、配管の多くは、原子炉廃止時においては長半減期残留放射能の

存在により低レベルの放射性廃棄物となる。その中にはクリアランスレベルより少し高いレベルのものが

ある。これらをクリアランスレベル以下にして再利用可能なものにすること、あるいはより低い埋設区分

に落とすことは、処分場の長寿命化や資源の有効活用、そしてライフサイクルコスト低減などの観点から

有益である。現在、放射性医薬品製造用の小型陽子加速器においては、部分的に低放射化のコンクリート

が適用されつつある。しかし、軽水炉の場合、陽子加速器とは発生する中性子エネルギースペクトルが異

なり、さらに施設の規模が桁違いに大きく、使用されている材料が多種多様で、生成する長半減期残留放

射能も異なる。また、軽水炉に対応した∑D/C マップを作成するための基礎データや放射化で重要な標的

核種の含有量に関する基礎データが少なく、軽水炉用各種低放射化材料に関する情報も不足している。

1.2 目的

本開発は、原子炉施設の高βγ低レベル廃棄物(L1)、低レベル放射性廃棄物(L2)、極低レベル放射

性廃棄物(L3)、クリアランスの各区分判断用の広範な材料データベースおよびマップを作成し、低放射

化材料の置換で有益になる範囲を明確にし、それらの部位に適用するコンクリート系低放射化材料および

低放射化鉄筋を開発し、実用化を目指した規模で試作する。このことにより、廃止措置時における廃棄物

中の残留放射能を大幅に低減させる設計法を実現する。すなわち、低放射化設計法の基礎を新しく確立す

ることを目的としている。

1.3 目標

本技術開発の最終目標は低放射化設計法の確立であり、その具体的な目標は以下の 3 つである。

① 今後建設する原子力発電所の廃止措置時に放射化した放射性廃棄物の総重量を大幅に減らすこと。

② コンクリート構造体(鉄筋を含む)のほとんどをクリアランスレベル以下にすること。

③ クリアランスなどの区分判断用材料データベースの構築により現存プラントにも使用できる判定

ツールの開発。

2. 技術開発計画

2.1 技術開発の位置付け

本技術開発の位置づけを図 2.1-1 に示す。本技術開発においては低放射化システムの設計のためのデー

タベースの作成と、それに基づく低放射化セメントおよび鉄筋材料の創製を行う(STEP1)。さらにこれら

が一般の構造部材として適用できるレベルである JASS 5 に対応するものとなることを基本性能評価試験

によって確認する(STEP2)。これと並行して、低放射化マップを作成し、原子炉における低放射化設計の

指針を作成するところまでを目標とする。本技術開発の終了時点における実用化に向けた成果の一つとし

て、構造部材ではない ABWR 原子炉遮蔽壁への低放射化モルタルの適用が考えられる。

さらに原子炉の主要構造部材である ABWR の生体遮蔽壁や APWR の遮蔽壁への低放射化コンクリー

トの適用のためには、JASS 5N に対応することを検証試験(STEP3)によって示さなければならないが、

これはさらに確証試験のための時間と資金が必要となるので、本計画に続く実用化プロセスで実施するこ

1

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とを想定している。一方、本計画で得られるであろうデータベースと低放射化設計のための指針は、今後

の原子炉周辺部材の放射性廃棄物低減に向けた国際的な規格作成への第一歩となることが期待される。

基本性能評価試験 検証試験

JASS 5Nに追加

STEP 1 STEP 2 STEP 3

本実用化開発の範囲 (平成17~20年度)

材料創製試験

実用化レベル2 JASS 5N対応 原子炉施設の構造部材として適用できるレ

ベル 1.ABWR生体遮蔽壁への低放射化コンクリート 2.APWR遮蔽壁への低放射化コンクリート

実用化レベル1 JASS 5対応 一般の構造部材として適用

できるレベル ABWR原子炉遮蔽壁用低放

射化モルタル

原子炉リプレースの時期

低放射化設計

日本が主導する国

際規格

低放射化材料の設

計・提案

データベースの作成、放射化マップシステムの

ための基本ツール開発

平成19年度

製造試験,小規模ラインでの試

作,評価試験

図 2.1-1 位置付け

2.2 技術開発の実施計画

本技術開発の全体(4 ヵ年計画、平成 17 年度~20 年度)の実施内容は次のとおりである。

2.2.1 原子力施設用の低放射化コンクリートの実用化開発

低放射化設計の具体例として、低放射化コンクリートの ABWR 原子炉遮蔽壁、生体遮蔽壁および

APWR 原子炉遮蔽壁等への適用を目指し、それぞれについて検討項目を抽出し、製造試験および基本性

能評価試験を行ない、基本仕様を作成する。

2.2.2 低放射化材料の創製

低放射化設計の具体例として、強度部材用低放射化セメント、低放射化の鉄筋および低放射化中性子遮

蔽材料を開発する。この結果は上記 2.2.1 の開発に反映させる。

2.2.3 低放射化設計法の開発

廃止時の原子力施設の各代表部位における L1、L2、L3、クリアランスの各区分マップ作成システムお

よび低放射化材料の選定と放射化評価手法を開発し、放射性廃棄物総量を半減するための低放射化設計の

基礎を確立する。

2.2.4 クリアランスなどの区分判断用材料データベースの構築

現存施設構成材料および低放射化材料開発を視野に入れた原料のクリアランスなどの区分判断用材料

データベース(約 1,000 種類)を作成する。特に放射化で重要な標的元素の分析を行ない、低放射化設計

法のための基礎データを構築する。

2

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2.3 技術開発の実施工程

第 3 年度である平成 19 年度は、以下の内容を実施した(主な技術開発項目を表 2.3-1 に示す)。

表 2.3-1 工程表

技術開発項目 平成 19 年 第 1 四半期

平成 19 年 第2四半期

平成 19 年 第3四半期

平成 19 年 第 4 四半期

1. 原子力施設への低放射化コンクリートの実用化開発 1.1 ABWR 遮蔽壁への適用を目指した開発

(1) ABWR 原子炉遮蔽壁への適用を目指した開発 (2) ABWR 生体遮蔽壁への適用を目指した開発

1.2 APWR 遮蔽壁への適用を目指した開発 1.3 低放射化材料適用によるコスト低減効果の評価

2. 低放射化材料の創製 2.1 低放射化セメントの創製

(1) 低放射化低熱ポルトランドセメントの創製 (2) ハイアルミナセメント用低放射化CAS 系混和材 の創製

2.2 低放射化鉄筋の創製 2.3 低放射化中性子遮蔽材料の創製

3. 低放射化設計法の開発 3.1 放射化廃棄物処理処分マップ作成システムの開発 3.2 材料選定評価システムの開発

4. クリアランスなどの区分判断用材料データベースの構築

2.4 技術開発の実施体制

本技術開発は東北大学、東北電力㈱、㈱東芝、日立 GE ニュークリア・エナジー㈱、三菱重工業㈱、㈱

フジタ、太平洋セメント㈱、電気化学工業㈱、㈱日鐵テクノリサーチが連携して実施する。実施体制の全

体構成および各機関の分担する開発事項を図 2.4-1 に示す。総括代表は東北大学・長谷川晃が担当し、事

務運営については東北大学がこれを補佐する。

図 2.4-1 実施体制

3

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4

3. 平成 19 年度技術開発成果の概要 3.1 原子力施設用の低放射化コンクリート実用化開発 3.1.1 ABWR 遮蔽壁への適用を目指した開発 (1) ABWR 原子炉遮蔽壁への適用を目指した開発 平成 19 年度は、前年度までの検討結果をもとに、図 3.1.1(1)-1 に示す 3 つの開発案のうち、開発案①,

③に関して開発試験を行い、諸性能を調査した。新規に開発した混和材を使用した重量モルタルは、材料

不分離性に課題は残るものの、ΣD/C を普通コンクリートの 1/83 まで低減できることを実証した。

図 3.1.1(1)-1 ABWR 原子炉遮蔽壁の開発 平成 18 年度は、カルシウムアルミネートシリケート系混和材(以下、CAS 系混和材と略)を使用する

ことで、ハイアルミナセメントのチクソトロピー性や水和熱を抑制できることを明らかにした。そこで平

成 19 年度は、3.2.1(3)「ハイアルミナセメントの収縮防止技術等の開発」で実機製造した低放射化 CAS系混和材を用いて重量モルタルを試製し、諸性能を評価した。表 3.1.1(1)-1 に、試製した低放射化重量モ

ルタル、リファレンスとして平成 18 年度に試製したハイアルミナセメントモルタル、現行重量モルタル

の調合を示す。

表 3.1.1(1)-1 試製した 1/300 低放射化重量モルタルの調合 単位量(kg/m3)

調合名 水結合材比 (%)

混和材 置換率(%)

設計練上り

密度(kg/m3) 水 セメント 混和材 細骨材 混和剤 CAS70 モルタル 40 70 2.77 325 244*1 570 1,627 0.815 HAC モルタル 30 30 2.76 251 586*2 251 1,674 1.674

現行重量モルタル1) 42 - 2.39 294 2,100 水:水道水、セメント:ハイアルミナセメント、混和材:*1 CAS 系低放射化混和材 *2 溶融シリカ、細骨材:電融アルミナ、 混和剤:ポリカルボン酸系高性能減水剤 1) セメントに普通ポルトランドセメントを使用。

ABWR 原子炉

圧力容器

現状、L2 区分(重量モルタル)⇒ 全てL3 区分以下にする(大部分はクリアランス)。

開発案①1/300 低放射化重量モルタル(電融アルミナ骨材+ハイアルミナセメント)の適用で全て

L3 区分以下を目指す。但し、低放射化セメントの 1 つであるアルミナセメントには、相転移に

よる強度低下、収縮が大きい、という課題があるため、相転移抑制策、収縮防止策の開発が必

要。 開発案②より安価な(電融アルミナ骨材+低放射化低熱ポルトランドセメント or 低熱白色セメン

ト)でL3 区分を目指す。但し、低放射化低熱ポルトランドセメントの開発あるいは低 発熱白色セメントの開発後に検討。

開発案③ハイアルミナセメント用低放射化混和材(最終候補)の開発

開発案④上記①,②,③にボロンを入れた低放射化コンクリートの検討(全てクリアランスの可能性あり) 開発案⑤最適な組合せの提案 開発案⑥コスト低減効果の評価

生体遮蔽壁(BSW)

Φ

原子炉遮蔽壁 (RSW)

平成 18 年

度は開発案

①の遂行

平成 17 年

度は検討

平成 19 年

度は開発案

① ,②,③の

遂行 平成 20 年

度は総合検

討,まとめ

RSW 表面の熱中性子束の測

定 例 : 2.3×107nthcm-2s-1, Nakai, M. et al., Proc. of 6 th Int. Conf. on Radiation Shielding, Tokyo, Vol.2, p.938, (1983).

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試製したモルタルは、流動性、材料不分離性の評価、単位容量質量、圧縮強度、微量元素分析およびΣ

D/C 値の算出などを行った。 a. 施工性

HAC モルタルで課題であった流動性を評価した。表 3.1.1(1)-2 に示すように、CAS60 モルタルは現行 表 3.1.1(1)-2 試製モルタルのフロー性状(流動性評価)

CAS70 モルタル HAC モルタル 現行重量モルタル

チクソトロピー なし あり なし ブリージング なし あり なし

打設 上部

打設 下部

(a) CAS70 モルタル (b) HAC モルタル (c) 現行重量モルタル

図 3.1.1(1)-2 試製した低放射化重量モルタルの切断面(斑点状に観察されるのは骨材) 重量モルタルと同等の流動性を有し、チクソトロ

ピー(揺変性)やブリージングは認められなかった。

しかし、図 3.1.1(1)-2 に示すように、硬化体となっ

たときに材料分離が確認されており、これら課題は

砂セメント比や骨材の粗粒率の変更によって改善す

る必要がある。 図 3.1.1(1)-3 に各モルタルの簡易断熱温度曲線を

示すが、低放射化 CAS 系混和材を使用することで、

温度上昇値は現行重量モルタルより低く抑えられる

ことを確認した。 b. 硬化性状 図3.1.1(1)-3 試製モルタルの簡易断熱温度曲線

0

20

40

60

80

100

0 20 40 60時間(hr)

温度

(℃

HACモルタル

現行重量モルタル

CAS70モルタル

図3.1.1(1)-3 試製モルタルの簡易断熱温度曲線

0

20

40

60

80

100

0 20 40 60時間(hr)

温度

(℃

HACモルタル

現行重量モルタル

CAS70モルタル

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6

表 3.1.1(1)-3 に示すように、試製モルタルの単位容量質量は現行重量モルタルとほぼ同等であり、遮蔽

性能としては問題ないレベルと考えられる。JASS 5N では、遮蔽性能の評価指標として乾燥単位容量質

量が規定されており、今後はモルタル調合が固まった段階で評価する予定である。また、図 3.1.1(1)-4

表 3.1.1(1)-3 試製重量モルタルの単位

容量質量(アルキメデス法による) 調合名 単位容量質量(g/cm3)

CAS70 モルタル 2.33 HAC モルタル 2.65

現行重量モルタル 2.36 0

50

100

150

0 20 40 60 80 100材齢(日)

圧縮強度(

N/m

m2 )

目標強度:30N/mm2

HACモルタル

現行重量モルタル

CAS70モルタル

図3.1.1(1)-4 試製モルタルの圧縮強度  (20℃水中養生)

0

50

100

150

0 20 40 60 80 100材齢(日)

圧縮強度(

N/m

m2 )

目標強度:30N/mm2

HACモルタル

現行重量モルタル

CAS70モルタル

図3.1.1(1)-4 試製モルタルの圧縮強度  (20℃水中養生)

に示すように、20℃で水中養生した試製 CAS70 モルタルの材齢 91 日強度は約 91N/mm2 であり、目標

強度である 30N/mm2を超える高い値を示した。 c. 低放射化性能 表 3.1.1(1)-4 に示すように、CAS70 モルタルのΣD/C は 0.23 であり、現行重量モルタルに対しては約

1/35、フィージビリティスタディで比較用として用意した普通コンクリート(安山岩コンクリート)に対

しては約 1/82 に低減できることがわかった。なお、CAS70 モルタル(振動ミル粉砕品)で使用した低放

射化 CAS 系混和材は、微量元素の汚染が多い振動ミルで粉砕したものである。したがって、アルミナ製

ボールミル粉砕品を使用すれば、ΣD/C をさらに低減できると考えられ、現在、モルタルを製造して評

価中である。

表 3.1.1(1)-4 試製モルタルに含まれる微量元素量とΣD/C の計算結果 調合名 Sc

ppb Fe

ppm Co ppb

Cs ppb

Eu ppb

Th ppb ΣD/C1)

CAS70 モルタル 200 350 140 <8 14 320 0.23 HAC モルタル 104 800 158 5 9.5 175 0.16

現行重量モルタル 9,000 12,400 12,800 400 320 2,800 8.10 1) 熱中性子束(En<0.4eV)2.0×105ncm-2s-1 のみとして仮定して計算した。日本の原子炉に対するクリアランスレベ

ルとしては、2005.12.1 施行のものを使用し、55Fe、60Co、134Cs、152Eu、154Eu で評価した。

平成 20 年度は、①充填モルタルの調合完成と見極め、②遮蔽壁モックアップの製造と性能評価、を行

う予定である。

[1] Yoshino R. et al. “Development of Low-Activation Design Method for Reduction of Radioactive Waste below Clearance Level (7)-Application of High Alumina Cement for Low-Activation mortar -“, Transactions, 19th International Conference on Structural Mechanics in Reactor Technology, Toronto, Canada, Paper# HW1/3, (2007).

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7

(2) ABWR 生体遮蔽壁への適用を目指した開発

平成 19 年度は、前年度行った検討結果を基に、図 3.1.1(2)-1 に示す 4 つのパスについて試験した。特

に、低熱ポルトランドセメント、普通ポルトランドセメントおよび前年度に開発した低放射化型低熱ポル

トランドセメントを使用した 1/10*1 低放射化コンクリート、並びに白色セメントおよび本年度に開発し

た低放射化型低熱ポルトランドセメントを使用した 1/30 低放射化コンクリートに関して、合計 20 数種

類の調合に関し開発試験を繰り返し、1/10、1/20、1/30、1/50 の各種低放射化コンクリートの製造試験 1)

~3)を行い、基本性能を調べた。1/10~1/20 低放射化コンクリートに B4C の砂および粉体を入れた場合に

ついても検討した 4), 5)。ABWR 生体遮蔽壁用としては 1/50 低放射化コンクリートが有力な候補となった。 *1(注)∑D/C が普通コンクリート比で 1/10。

図 3.1.1(2)-1 ABWR 原子炉遮蔽壁の開発 1/10、1/20、1/30、1/50 の各種低放射化コンクリートの調合設計を表 3.1.1(2)-1 に、調合表および∑

D/C を表 3.1.1(2)-2 に示す。

表 3.1.1(2)-1 1/10、1/20、1/30、1/50 の各低放射化コンクリートの調合設計 粗骨材の最大寸法 20 mm 設計基準強度 33 N/mm2(材齢 91 日) スランプ 12 ±2.5 cm 空気量 乾燥密度 水素含有量

∑D/C

4 ±1% 2.15 以上

現状コンクリート以上(/cc) 1/10, 1/20, 1/30, 1/50

ABWR 原子炉

圧力容器

生体遮蔽壁(BSW)

Φ

原子炉遮蔽壁 (RSW)

BSW 表面の熱中性子束の

評価例:2×105nthcm-2s-1, 出口朗、火力原子力発電、Vol.44, No.1, (1993).

現状、L3 区分(普通コンクリート)⇒ 全てクリアランスにする。

開発案①1/30 低放射化コンクリート(石灰岩+低放射化低熱ポルトランドセメント or 低放射化非

ポルトランドセメント)の適用で全てをクリアランスレベル以下にする。 低放射化低熱ポルトランドセメントの試作をテストキルンにて行った。成果品であるクリ ンカーの放射化分析を行い、その製造可能性を見出した。 開発案②1/30 低放射化コンクリート(石灰岩+白色セメント+混和材)で全てをクリアランスに する。発熱低減と放射化低減のため、低放射化タンカル、低放射化シリカ フュームを置換し、1/50 低放射化コンクリートの開発試験を行った。 開発案③上記に加えてより安価かつ弾力的な設計を可能にするため、1/10 低放射化コンクリート(石灰岩 +低熱ポルトランドセメント or 普通ポルトランドセメント)に低放射化タンカル、低放射化シ シリカフュームを置換し、1/20 低放射化コンクリートの開発試験を行った。 開発案④1/50 低放射化コンクリート(新セメント使用を含む)の開発。 開発案⑤(1/10~1/30 低放射化コンクリート)+B4C 砂・粉体、の検討。

開発案⑥最適な組合せの提案 開発案⑦コスト低減効果の評価

平成 18 年

度は開発案

①,②,③の開

発試験

平成 17 年

度は検討

平成 19 年

度は絞り込

み開発試験

平成 20 年

度は総合検

討,まとめ

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試験結果をまとめると以下のようになる。 ABWR 生体遮蔽壁は L3 区分であり、これを全てクリアランス以下にするために、1/10~1/50 低放射

化に的を絞って試作試験を行い、これに成功した。前年度に開発した 06 年低放射化型低熱ポルトランド

セメントを使用した 1/10 低放射化コンクリートおよび本年度に開発した 07 年低放射化型低熱ポルトラ

ンドセメントを使用した 1/30 低放射化コンクリート試験も併行して行い、これらの性能を確認した。ま

た、1/10~1/30 低放射化コンクリートに B4C の粉体や砂を入れた場合についても検討した。ABWR 生体

遮蔽壁を全てクリアランス以下にするためには、次のような組合せが候補であるが、1/50 低放射化コン

クリートが最も有力な候補である。 a. 低放射化型低熱ポルトランドセメント+石灰岩骨材 b. 白色セメント+石灰岩骨材+低放射化混和材 c. 1/10~1/30 低放射化コンクリートに B4C の粉体や砂を入れた低放射化コンクリート

平成 20 年度は、主に低放射化型低熱ポルトランドセメントを用いた 1/50 低放射化コンクリートなど

の性能評価試験などを行い、それらの有用性を確認するとともに、仕様作成に向けたデータを取得蓄積し、

これまでの成果をまとめる予定である。

1) 藤倉他:低放射化コンクリートのマスコンクリート部材への適用性の検討,コンクリート工学協会年次論文集,Vol.29, p.433-438, (2007).

2) 藤倉,他:混和材を使用した低放射化コンクリートの低発熱化の効果,土木学会第 62 回年次学術講演会講演概要集第 5 部,p.411-412,(2007).

3) 藤倉他:混和材を用いた低放射化コンクリートの耐久性に関する検討,コンクリート工学協会年次論文集, (2008). 4) 金野,他:クリアランスレベル以下にするための低放射化設計法に関する技術開発(29)-中性子吸収材入り低放射化コンクリート-,日

本原子力学会 2007 年秋の大会, F28, p.329, 北九州国際会議場他,(2007). 5) 金野,他:クリアランスレベル以下にするための低放射化設計法に関する技術開発(41)中性子吸収材入り低放射化コンクリート,そ

の 2,日本原子力学会 2008 年春の年会,大阪大学,(2008).

表 3.1.1(2)-2 1/10、1/20、1/30、1/50 の各低放射化コンクリートの調合表および∑D/C1) (例)

W/C s/a 単位量(kg/m3) SL Air CT T ∑D/C名 称

% % W C B4C P SF S G cm % ℃ ℃ 比率 2)

普通ポルトランドセメント型 1/10低放射化コンクリート 50 50 175 350 - - - 861 947 12.5 5.3 21.1 19.6 1/10

普通ポルトランドセメント型 1/20低放射化コンクリート 42.9 50 160 133 - 140 100 879 892 19.0 3.0 19.3 22.9 1/21

低熱ポルトランドセメント型 1/10低放射化コンクリート 50 50 175 350 - - - 899 913 13.0 4.6 19.3 18.7 1/20

低熱ポルトランドセメント型 1/20低放射化コンクリート 42.7 47 150 176 - 150 25 864 985 18.0 4.9 20.0 20.0 1/37

06 年低放射化低熱ポルトラン

ドセメント型 1/10 低放射化コンク

リート 50 47 150 300 - - - 896 1026 16.1 3.9 19.3 19.1 1/33

白色セメント型 1/30 低放射化コ

ンクリート(WT-1) 50 46 158 316 - - - 855 1018 11.5 4.0 18.1 20.0 1/31

白色セメント型 1/50 低放射化コ

ンクリート(WT-4) 42.9 46 150 200 - 100 50 838 998 16.5 2.5 21.0 20.8 1/48

白色セメント型 1/50 低放射化コ

ンクリート(WT-16) 42.9 46 160 80 - 93 200 794 946 16.5 4.5 20.7 20.0 1/64

07 年低放射化低熱ポルトラン

ドセメント型 1/30 低放射化コンク

リート(B4C 添加) 45 47 150 333 23.6 - - 874 994 18.0 4.5 19.1 20.5 -

W:水, C:セメント, P:タンカル, SF:シリカフューム, S:細骨材, G:粗骨材, SL:スランプ, Air:空気量, CT:コンクリート練上り温度, T:試験室温度 1)熱中性子束(En<0.4eV)2.0×105ncm-2s-1のみと仮定して計算した。日本の原子炉に対するクリアランスレベルとしては、2005.12.1

施行を使用し、40 年運転、6 年冷却として、55Fe, 60Co, 134Cs, 152Eu, 154Eu で評価した。2) 安山岩コンクリートを 1 とした場合の計算値

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3.1.2 APWR 遮蔽壁への適用を目指した開発 平成 19 年度は、前年度までに行った検討結果をもとに、図 3.1.2-1 に示す 5 つの開発案について検討

した。有力な候補である開発案①の 1/300 低放射化コンクリートに関しては、開発した低放射化カルシウ

ムアルミネートシリケート系混和材(以下、低放射化 CAS 系混和材と略)の中性化に対する抵抗性評価

を行ない、このコンクリートを供用する上での注意点を明らかにした。②~⑤の 1/100~1/10,000 の低放

射化コンクリート、L2→L3 用低放射化コンクリートについても、それぞれ試作試験を行い、基礎的な性

能が調べられた。L2→L3 用低放射化コンクリートとしてアルミナ系骨材を使用したコンクリートが有力

な候補となった。

図 3.1.2-1 APWR 一次遮蔽壁の開発 (1) 1/300 低放射化コンクリートの開発 a.1/300 低放射化コンクリート用低放射化混和材の中性化に対する抵抗性評価 一般に、コンクリートは大気中の二酸化炭素によって中性化し、pH が 10~11 以下になると鉄筋の保護

作用が失われて腐食が生じて構造耐力の低下を招く。そこで、ハイアルミナセメントや、それに低放射化

CAS 系混和材を用いたセメントの中性化に対する抵抗性を評価した。表 3.1.2-1 は、中性化材齢 28 日の

モルタル断面にフェノールフタレイン指示薬(pH≦7.8:無色、pH≧10.0:紅色)を噴霧したときの変

色具合と、中心部の pH 値をまとめたものである。これより、低放射化 CAS 系混和材を使用したモルタ

APWR原子炉容

一次遮蔽壁(鋼板コンクリート)

Φ

現状L2 区分(普通コンクリート)⇒ 全てL3 区分以下にする(大部分はクリアランス)。 開発案①1/300 低放射化コンクリート(電融アルミナ+ハイアルミナセメント)の適用でL3 区分 以下にする。但し、鋼板コンクリートとして適用するには収縮防止技術の開発が必要で、 構造材料として適用するには相転移抑制策、水和熱低減化策が必要。新混和材の開発。 開発案②より安価なものを追求し、低発熱型の(電融アルミナ+白色セメント)系低放射化コンク リートの適用でL3 区分にする。低放射化シリカフュームなどを置換して低発熱化を検討 する。 開発案③放射化量が少ない部位については、1/100 低放射化コンクリート(石灰岩 or 珪石+ハイ アルミナセメント)あるいは 1/30 低放射化コンクリート(石灰岩+低放射化低熱ポルト ランドセメント or 低発熱白色セメント)でクリアランスレベル以下にする。低放射化低 低熱ポルトランドセメントの開発、低発熱白色セメントの開発と併行してこれらの低放射 化コンクリートの開発を行う。 開発案④上記に加えて、より安価かつ弾力的な設計を可能にするため、カンラン岩骨材などを使っ たL2→L3 用の低放射化コンクリートについても検討する。これらの低放射化コンクリー トの総合的な検討を行う。 開発案⑤各種低放射化コンクリートにB4C の粉体や砂を入れたコンクリートの検討

開発案⑥最適な組合せの提案 開発案⑦コスト低減効果の評価

平成 18 年度

は開発案①

の試験及び

開発案② ③ ④の検討

平成 17 年度

は検討

平成 20 年度

は最適組合

せの提案

平成 19 年度

は絞り込み

の開発試験

一次遮蔽体表面の熱中

性 子 束 の 測 定 例 :

2.7×108nthcm-2s-1, 西川

他, 原子力学会予稿集, 春の年会 A43, (1987).

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ルは、置換率の増加とともに中性化が早いことがわかった。得られた結果をもとに、中性化の予測式の一

つである√t の法則(C=A√t、C:中性化深さ、A:係数、t:中性化の期間)を求めると、低放射化

CAS 系混和材で 50%置換したモルタルでは、60 年供用した場合に表面から約 20cm の位置まで中性化が

進み、普通セメントの 50 倍近く中性化が早いことがわかった。図 3.1.2-2 に中性化にともなう圧縮強度

の推移を示すが、低放射化 CAS 系混和材を使用したモルタルでは強度低下が認められなかった。また、

図 3.1.2-3 に中性化にともなう長さ変化率の推移を示すが、低放射化 CAS 系混和材を使用したモルタル

の収縮は、普通セメントモルタルと同等であった。 以上をまとめると、低放射化 CAS 系混和材を 1/300 低放射化コンクリートとして使用するには、一般

に知られるコンクリートの中性化抑制対策(①水セメント比を低くして単位容量が少ないコンクリートを

製造する方法、②表面被覆材を使用する方法、など)を施す必要があると結論付けた。

表 3.1.2-1 中性化材齢 28 日のモルタル断面、中性化深さ、pH CAS 混和材 0%置換 CAS 混和材 50%置換 CAS 混和材 70%置換 普通セメント

中性化深さ 0 mm 7.1 mm ≧20.0 mm 0 mm 中心部の pH 11 11 ≦10 12 (試験方法)JIS R5201 に準じてモルタル(水結合材比=40%)を作製し、材齢 1 日で脱型後、28 日まで 20℃水中養生した。材齢 28 日経

過後、モルタルを 20℃、相対湿度(R.H,)60%、CO2濃度 5%の環境下で 28 日間、中性化養生した。

図3.1.2-2 中性化にともなう圧縮強度の推移 

0

20

40

60

80

100

120

0 10 20 30中性化材齢(日)

圧縮

強度

(N

/mm

2 )

CAS 0%置換

CAS 50%置換

CAS 70%置換

NPC

図3.1.2-2 中性化にともなう圧縮強度の推移 

0

20

40

60

80

100

120

0 10 20 30中性化材齢(日)

圧縮

強度

(N

/mm

2 )

CAS 0%置換

CAS 50%置換

CAS 70%置換

NPC

-500

-400

-300

-200

-100

0

100

0 10 20 30

中性化材齢(日)

長さ

変化

率(

×10-6

CAS 70%置換

CAS 0%置換

CAS 50%置換

NPC

図3.1.2-3 中性化にともなう長さ変化率の推移 

-500

-400

-300

-200

-100

0

100

0 10 20 30

中性化材齢(日)

長さ

変化

率(

×10-6

CAS 70%置換

CAS 0%置換

CAS 50%置換

NPC

図3.1.2-3 中性化にともなう長さ変化率の推移  b.電融アルミナ粗骨材の特性評価 電融アルミナ粗骨材の特性を、JIS A 1110「粗骨材の密度及び吸水率試験方法」に準じて評価した。結

果を表 3.1.2-2 に示す。電融アルミナ粗骨材の絶乾密度は 3.29 であり、一般に放射線遮蔽用コンクリー

トとして使用されている重量骨材の絶乾密度とほぼ同等であった。骨材粒内部の空げきの割合を示す吸水

率は 1.0%であり、普通粗骨材とほぼ同等であった。 平成 20 年度は以上の成果をもとに、a. 中性化抑制対策(水セメント比の影響)の検討と見極め、b.

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1/300 低放射化コンクリートの製造と性能評価、を行う予定である。

表 3.1.2-2 電融アルミナ粗骨材の特性評価 評価項目 JASS 5N 規格値 電融アルミナ粗骨材 普通粗骨材

外 観 -

絶乾密度 2.5 g/cm3以上 3.29 g/cm3 2.65 g/cm3 吸水率 2.0 %以下 1.0 % 0.9 %

(2)1/100、1/1000、1/3,000、1/10,000 の低放射化コンクリートおよび L2→L3 用低放射化コンクリー

トの開発 1/100~1/10,000 の低放射化コンクリートの組合せはかなりあるが、石灰岩骨材 or 電融アルミナ骨材

+ハイアルミナセメント+低放射化 CAS 系混和材のケースと L2→L3 用低放射化コンクリートのケース

を表 3.1.2-3 に示す。APWR 原子炉遮蔽壁の内側部は L2 レベルに分類されているので、3H, 152Eu, 41Caなどの生成量を抑制することが重要である。候補の骨材としては、電融アルミナ、石灰岩、カンラン岩な

どが挙げられ、セメントの候補としては、白色セメント、ハイアルミナセメント、低放射化型低熱ポルト

ランドセメントが挙げられ、混和材の候補としては開発した低放射化 CAS 系混和材など、が挙げられる。

L2 レベルから L3 レベル以下に落とすには、セメントの選択よりも骨材の選択が重要で、特に電融アル

ミナなどのような骨材の選択が重要である。B4C を入れた場合についても試作試験を行った。カンラン

岩骨材と白色セメントのような組合せでも D/CL3<1 にできる可能性がある。平成 20 年度は、本年度の

成果を基に、総合検討して、最適仕様案を提案する予定である。

表 3.1.2-3 1/100 低放射化コンクリートおよびL2→L3 用低放射化コンクリートの調合(例)

W/C s/a 単位量(kg/m3) SL Air CT T 名 称

% % W C DL B4C S G cm % ℃ ℃ 生比重

g/cc 1/100 低放射化コンクリート(ハイ

アルミナセメント+低放射化CAS系混和材+石灰岩骨材)

40 47 160 160 240 - 837 954 21.0 2.9 20.0 20.0 2.40

1/3,000 低放射化コンクリート(ハ

イアルミナセメント+低放射化CAS系混和材+石灰岩骨材

+B4C)

100 47 160 160 240 23.6 825 941 21.0 2.5 19.6 20.0 2.35

1/10,000 低放射化コンクリート

(ハイアルミナセメント+低放射化

CAS 系混和材+電融アルミナ

骨材+B4C)

100 60 250 250 375 23.6 1156 755 600 4.0 19.2 20.0 2.81

L2→L3 用低放射化コンクリート

(白色セメント+電融アルミナ骨

材) 50 60 230 460 - - 1352 883 - - - - 2.93

L2→L3 用低放射化コンクリート

(白色セメント+カンラン岩骨材) 50 46 175 350 - - 789 963 11.0 4.8 20.9 21.0 2.28

L2→L3 用低放射化コンクリート

(白色セメント+カンラン岩骨材+

B4C) 50 46 175 350 - 23.6 778 949 21.5 2.4 21.1 21.0 2.28

W:水, C:セメント, DL:低放射化CAS 系混和材, SF:シリカフューム, S:細骨材, G:粗骨材, SL:スランプ, Air:空気量, CT:コンクリート練上り温度, T:試験室温度

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12

3.1.3 低放射化材料適用によるコスト低減効果の評価 (1)概 要

平成 19 年度は,中性子 183 群放射化断面積ライブラリ及び放射化計算システムを ABWR並びに APWR のモデルプラントの放射化放射能評価に適用することを目的として,2 次元

モデルに基づく炉心周り中性子束評価及び放射化評価を行った。現状の材料および低放射

化コンクリートの放射性廃棄物処分区分の比較から,放射性廃棄物量の減少により 1 基あ

たりおよそ 10~20 億円の処分コスト削減が期待できる。 (2)ABWR の低減効果の検討

a. ABWR モデルプラント中性子束評価 135 万 kW 級 ABWR の径方向中性子束分布を、2 次元輸送計算コード DORT を使用して

計算した。計算には平成 17 年度成果である JENDLE3.3 に基づく 183 群(熱中性子 10 群)の輸送計算用ライブラリを使用した。得られた熱中性子束分布を図 A-1 に示す。

b. ABWR モデルプラント炉心周り放射化評価 135 万 kW 級 ABWR の 2 次元中性子輸送計算の結果に基き、生体遮蔽(BSW)に生成する

放射能の評価を行い、コンクリートの種類による ΣD/C の比較を行った。放射化計算には

ORIGEN-79 コードを用いているが、ORIGEN-79 用断面積としては JENDL-3.3 に基く中

性子 183 群の放射化断面積を生体遮蔽内 183 群中性子スペクトルで 3 群に縮約したものを

用いた。安山岩コンクリートと 1/50 低放射化コンクリートについて求めた BSW 内の ΣD/C分布を図 A-2 に示す。安山岩コンクリートなどの現状の材料の場合、約 2000 トンのコンク

リートが L3 廃棄物となることが推定されるが、1/50 低放射化コンクリートを使用した場合、

BSW のほぼ全域がクリアランスレベル以下になる見通しを得た。また、RSW についても

現状の重量モルタルから電融アルミナモルタルにすることで全域が L2 区分から L3 区分に

移行することを確認した。1 基あたりおよそ 20 億円の処分コスト削減が期待できる。 (3)APWR の低減効果の検討

a. APWR モデルプラント中性子束評価 ABWR と同様,APWR モデルプラントに対し,MATXSLIB-J33T10 を用いて DORTによる 2 次元輸送計算を行った。原子炉周り遮へいコンクリートの放射化反応に影響する

熱中性子の分布を図 A-3 に示す。 b. APWR モデルプラント炉心周り放射化評価

中性子束分布評価結果をもとに,廃止措置時(40 年運転,6 年冷却)の原子炉周りの遮

へいコンクリートに低放射化材料(1/300 低放射化コンクリート)を使用した場合の放射

化分布を,ORIGEN2 コードを用いて評価した。なお,コスト低減効果の評価のため,一

般の安山岩コンクリートとの比較を行った。放射化評価結果である∑D/C の結果を図 A-4に示すが,低放射化材料を採用することで,クリアランスレベル以下である領域が遮へい

コンクリートの大半を占めるようになることが確認された。また,L2 区分のほとんどの領

域が L3 区分へ移行することが確認された。 c. APWR モデルプラントコスト低減効果の検討

放射化評価結果より,低放射化材料を用いた場合の廃止措置における処分コストの低減

効果は物量にして L2→L3 が 160m3,L3→CL が 180m3移行し,放射性廃棄物の低減が期

待でき,処分場の長寿命化及びおよそ 10 億円の処分コスト削減効果が期待できる。

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13

図 A-1. ABWR モデルプラント 2 次元計算体系と DORT コードによる熱中性子束分布

図 A-2. 183 群断面積(JENDL3.3)に基づく ABWR モデルプラントの ΣD/C 分布評価結果

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14

1.0 10-1 10-2 10-3 10-4 10-5 10-6 10-7 10-8 10-9 10-10 10-11 10-12 10-13 10-14 10-15 10-16 10-17 10-18

図 A-3 183 群断面積(JENDL3.3)に基づく APWR モデルプラントの ΣD/C 分布評価

安山岩コンクリート 1/300 低放射化コンクリート

原子炉建屋断面計画図(参考図)の引用:

原子力百科事典 ARTMICA http://atomica.nucpal.gr.jp/atomica/pict/02/02080204/08.gif

図 A-3 APWR モデルプラントの炉心周り遮へいコンクリートの熱中性子束分布

CL

L3

L2 L3 CL

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15

3.2 低放射化材料の創製 3.2.1低放射化セメントの創製 (1) 低放射化型低熱ポルトランドセメントの創製

a. 原料の選定 前年度は石灰石の分析を行ったので、平成19年度では石灰石以外の原料を分析した。表3.2.(1)-1に分析結果の

一部を示す。60Coを生成するおそれのあるCo含有量は、図3.2.1(1)-1に示すように、Fe2O3含有量と相互関係があ

表3.2.(1)-1 セメント用非石灰石原料の化学分析値 母岩 産地 Pl

% Iglos

% NaO

% MgO

% Al2O3%

SiO2%

P2O5%

SO3%

K2O%

CaO %

Fe2O3 %

Eu (ng/g

Co (ng/g)

橄欖岩 北海道 8 2.4 0.02 44.60 0.7 42.4 0.00 0.03 0.00 0.6 7.98 20 115000蛇紋岩 山口県 2 17.2 0.00 23.95 1.9 32.2 0.03 0.03 0.01 12.7 10.64 30 108000斑礪岩 茨城県 30 1.3 1.20 7.85 17.9 43.7 0.24 0.03 0.24 11.9 14.13 620 601000玄武岩 長崎県 40 1.2 2.77 7.71 14.5 52.4 0.26 0.01 1.43 9.3 8.33 890 37000 玄武岩 大島 45 1.1 2.61 3.57 16.1 47.7 0.27 0.01 0.92 11.0 15.45 890 37000 安山岩 神奈川 65 0.9 3.84 1.57 15.2 64.0 0.17 0.03 0.77 5.7 6.43 1200 12300 安山岩 香川県 52 1.1 3.11 7.60 15.4 56.4 0.15 0.05 1.81 6.3 5.88 810 10030 デイサイト 長崎県 45 0.4 4.12 2.78 15.3 63.2 0.08 0.00 1.65 4.1 5.24 970 9100 閃緑岩 岐阜県 35 0.5 3.38 0.74 14.2 72.3 0.10 0.00 3.98 2.2 1.91 710 3400 流紋岩 新島 20 0.2 4.25 0.15 12.9 77.5 0.02 0.00 2.31 1.3 1.28 350 2300 花崗岩 岡山県 30 0.9 2.56 0.30 11.8 71.4 0.08 0.83 6.25 2.1 3.09 820 1470 シラス 鹿児島 30 0.5 3.05 0.48 15.2 71.2 0.03 0.00 2.18 2.6 3.52 630 1800 酸性白土 新潟県 20 8.1 0.10 0.11 1.3 89.9 0.02 0.13 0.06 0.2 0.16 310 90 蝋石 広島県 20 4.9 0.09 0.00 24.3 70.3 0.03 0.00 0.17 0.1 0.16 280 60 川砂 茨城県 35 2.3 2.09 1.30 13.3 72.2 0.07 0.05 2.53 1.7 3.60 760 8500 頁岩 岐阜県 35 4.8 1.09 1.88 10.7 72.8 0.13 1.67 2.54 1.2 3.94 820 8800 チャート 群馬県 10 1.2 0.00 0.97 1.8 92.9 0.02 0.00 0.60 0.9 1.71 170 400 石灰岩 青森県 1 43.6 0.00 0.21 0.0 0.09 0.01 0.00 0.01 55.1 0.03 19 40 石灰岩 福岡県 1 46.1 0.00 0.67 0.1 0.12 0.01 0.04 0.00 52.8 0.03 48 13 石灰岩 沖縄県 2 43.4 0.00 0.40 0.3 0.50 0.05 0.01 0.04 54.3 0.25 99 350 石灰岩 中国 13 31.7 0.40 1.01 2.8 13.6 0.09 0.18 0.59 47.1 1.96 370 3000 風成砂 豪州 1 0.0 0.01 0.00 0.4 98.4 0.00 0.00 0.01 0.2 0.40 47 50 斜長岩 ノルウエ ー 88 0.4 4.60 0.43 28.1 53.1 0.06 0.02 0.18 12.5 0.61 1800 900

図3.2.1(1)-1 非石灰石原料中のFe2O3量とCo含有量の関係 図3.2.1(1)-2 非石灰石原料中のAl2O3量とEu含有量の関係

図3.2.1(1)-3偏光顕微鏡写真(横スケール0.5mm)左岐阜県閃緑岩(斜長石35%含有)中長崎県玄武岩(斜長石40%含有)右沖縄県石灰岩(斜長石0%)

0

20000

40000

60000

80000

100000

120000

140000

0 5 10 15 20 25 30 35

Fe2O3含有量(%)

Co含

有量

(ng/

g)

0

500

1000

1500

2000

2500

0 5 10 15 20

Al2O3含有量(%)

Eu含

有量

(ng/g

)

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16

った。この傾向をもとに鉄原料を厳選し、Co含有量の少ない赤鉄鉱(Fe2 O3 )を使用して低熱ポルトランドセメン

トを試製したが、白色セメント以上の低減は困難であった。そこで本年度は、原料にFe元素を極力使用せずに放

射性元素(特にCo)を低減し、且つ低発熱性能を満たすこととした。 他方、希土類元素であるEuの低減はCoに比べ容易ではない。図3.2.1(1)-1に示すようにAl2O3含有量10%以下で

はEu含有量が少なくなりこれを減らす方策が有効だが、Al2O3を少なくするとセメントそのものが製造できない

からである。また通常3価のEu3+が還元下ではEu2+に変化する特徴があり、その結果地球上に最も多く存在する

アルミノシリケート,特に斜長石中にEuが多く含まれることとなり、Eu含有量の少ないセメント原料の入手は極

めて困難であった。図3.2.1(1)-3に偏光顕微鏡観察の例を、表3.2.(1)-1に偏光顕微鏡観察によって計測された、斜

長石含有量(Pl率と記載)を併記するが、Euの高い試料は斜長石含有量の高いものであった。この点を考慮すると、

低放射化セメントの原料にカルシウムアルミノシリケート(即ちAl元素)を極力使用せずに、Eu含有量を低減する

設計としたい。このような低放射化セメントの要求性能を鑑み、本年はセメント原料としてFe元素およびAl元素

を極力使用することなく、低発熱型低放射化セメントを開発することとした。なお低放射化性能は市販白色セメ

ント以上を目標とした。 b. 新セメント試製の概要

・使用材料 原料として、表3.2.1(1)-2に示す石灰石、赤鉄鉱、 菱苦土石、天然石膏、蝋石、珪石、珪灰石、酸性白土、活

性白土を使用した。いずれの原料もEu、Co含有量が少ないものを選択した。 ・低放射化セメントの設計

JIS 低熱ポルトランドセメントの規格をもとに、新規低放射化型低熱セメントクリンカーの鉱物割合を理論水

和熱から設計した。また低放射化クリンカーを、電気炉にて特級試薬から試製し、これに二水セッコウを仕上げ

SO3が2.5%になるよう添加し、ポットミルで粉砕してセメントを試製した。 ・焼成性向上のための原料の最適化 低放射化クリンカーの焼成性の向上を図るために、原料の粒度と種類について検討した。SiO2原料として、26

~45μmの粒度に調製した表3.2.1(1)-2に示す珪石、蝋石、珪灰石、酸性白土、活性白土をそれぞれ使用した。 ・SO3が低放射化クリンカーに及ぼす影響確認 低放射化クリンカーに SO3を固溶させることで、C3A 生成量の低減(水和熱の低減)が可能か検討した。低放射

化セメント原料に、SO3として二水セッコウを所定量添加し、これを電気炉で焼成しクリンカーを試製した。試

製セメントの水和発熱速度をコンダクションカロリーメータ(W/C=0.4)で測定し、水和熱の低減効果を確認した。 ・低放射化セメントの小規模製造 図 3.2.1(1)-4 記載のミニキルン(450mmφ×8340mmL,焼成量:100kg-セメント原料/hr,燃料:A 重油,ロータリ

ークーラー)にて低放射化クリンカーを焼成し、これに天然二水石膏を仕上げSO3が2.0%になるよう添加し、小

表3.2.1(1)-2 原料の化学成分 単位はEuとCo(ng/g)以外はWt% Igloss

% Na2O

% MgO

% Al2O3

% SiO2

% SO3 %

K2O %

CaO %

Fe2O3 %

Eu (ng/g)

Co (ng/g)

石灰石 43.8 0.00 0.02 0.2 0.3 0.02 0.01 55.12 0.05 0.04 0.11 赤鉄鉱 18.9 0.00 0.13 1.1 2.0 0.00 0.07 0.13 56.86 0.53 2.30 菱苦土石 57.5 0.00 41.75 0.0 0.1 0.11 0.00 21.22 0.02 0.05 0.21 天然石膏 21.1 0.02 0.01 0.0 0.0 43.95 0.18 30.19 0.02 0.01 0.04 蝋石 3.4 0.03 0.00 14.6 80.8 0.09 0.15 0.16 0.29 0.02 0.24 珪石 0.1 0.01 0.01 0.1 99.6 0.01 0.01 0.06 0.03 0.05 0.05 珪灰石 2.7 0.01 0.76 0.7 50.4 0.01 0.13 46.52 0.35 0.24 0.09 酸性白土 15.6 0.07 2.65 11.3 67.4 0.01 0.13 0.90 1.92 0.62 0.11 活性白土 8.1 0.10 0.11 1.3 89.9 0.13 0.06 0.21 0.16 0.41 0.10

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図3.2.1(1)-4 運転中のミニロータリーキルン 図3.2.1(1)-5 試製低放射化型低熱セメント粉末

表3.2.1(1)-3 焼成性最適化試験の設計

SiO2 Al2O3 Fe2O3 CaO MgO SO3 Na2O K2O C3S C2S C3A C4AF24.8 5.0 0.9 67.1 1.42 <0.21 0.12 0.28 50 33.5 11.7 2.7

表3.2.1(1)-4 本報告における低放射化セメントの設計 水和熱(J/g) 水和熱(J/g) 鉱 物 組 成 7d 28d C3S C2S C3A C4AF

JIS低熱セメント規格 ≦250 ≦290 ≧40 ≦6 市場白色セメント 350 391 56.5 26.8 12.5 0.9 低放射化セメント 189 263 30 61 6 0.9

型ボールミルで粉砕してセメントを試製した。また、比較用に低熱ポルトランドセメントも同様に試製した。セ

メントは、JIS R 5201-1997に準じて評価した。Eu、Coは放射化分析で定量した。

c. 試験結果

・低放射化型低熱セメントの設計 JIS 低熱ポルトランドセメント規格および理論水和熱から、低放射化セメントの主要鉱物割合を表 3.2.1(1)-4

の設計とした。実際、特級試薬を用いて電気炉で試製した低放射化クリンカーは、概ね設計通りの性状であった。

また、これを用いてセメントを試製した結果(比表面積3630cm2/g)、7日、28日の水和熱はそれぞれ227、289(J/g)となり、JIS低熱ポルトランドセメント規格内であった。 ・焼成性向上のための原料の最適化 使用する SiO2原料の種類によって、クリンカーの焼成性が変化するかの確認した結果を図 3.2.1(1)-6 に示す。

SiO2原料として、蝋石、酸性白土、活性白土を使用すると焼成性が向上し、珪石、珪灰石を使用すると、焼成性

が悪化することが確認された。これはSiO2原料の種類が焼成性に及ぼす影響を示していると考えられる。 上述の結果を基に、低放射化クリンカーを電気炉で試製した。結果を図3.2.1(1)-7 に示す。全原料を90μm 全

通まで粉砕しただけでは、f-CaO が 4.2%と焼成が不十分となったが、菱苦土石をクリンカーでMgO=1.5%とな

るまで添加し、SiO2原料を45μm全通まで粉砕し、さらに活性白土を用いることで、f-CaOは0.6%まで低下し、

低放射化クリンカーが焼成できることが確認された。原料に MgO を添加した理由は、①液相の粘性を下げ表面

張力を高めることで焼成性を向上させるため、②液相量を増やすため、③C2S の β→γ 転移を抑制するため、で

ある。 ・SO3が低放射化クリンカーに及ぼす影響確認

SO3による低放射化クリンカーの鉱物割合変化を図 3.2.1(1)-8 に示す。SO3添加によって、C2S 相が増加し、

C3S 相と C3A 相が減少した。SO3が約 0.3%以下であれば、著しい焼成性の悪化は認められなかった。試製セメ

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ントの水和発熱速度結果を図3.2.1(1)-9に示す。水和1時間まではC3A相の減少による明確な効果が認められた

が、それ以降はシリケート相の水和活性化が生じていた。その結果,試製セメントの 7 日、28 日水和熱には顕著

な低減効果は認められなかった。先行研究から推察すると、クリンカー中のSO3は、エーライトの粒径を大きく

すること、28日強さが大きくなる、β-C2Sの水和を活性化すること、などが原因として考えられる。本研究に供

した低放射化クリンカーには、アルカリは殆ど存在せず、MgO (1.5%程度)と SO3(~0.5%程度)が含まれおり、

C2S は全て β相、C3S も殆どが M3相であることを XRD 解析により確認している。従ってシリケート相が水和

活性化した理由は、シリケート相の多形の転移ではなく、エーライトの粒径が大きくなったことなどが影響した

ものと考えられる。

図3.2.1(1)-11 SiO2源の違いによる焼成性の違い 図3.2.1(1)-12 原料粒度の違いによる焼成性の違い

図3.2.1(1)-6 SiO2源の違いによる焼成性の違い 図3.2.1(1)-7 原料粒度の違いによる焼成性の違い

図3.2.1(1)-8 低放射化クリンカーの鉱物割合変化 図3.2.1(1)-9 試製セメントの水和発熱速度測定結果

表3.2.1(1)-5 EPMA評価用クリンカ組成 化 学 成 分 鉱 物 組 成

SiO2 Al2O3 Fe2O3 CaO MgO SO3 Na2O K2O C3S C2S C3A C4AFSO3=0%無添加 29.4 2.4 0.4 65.6 1.5 0.00 0.00 0.00 33 63 1.6 1.4 SO3=3%添加 28.4 2.5 0.4 65.1 1.5 0.39 0.00 0.00 35 62 1.2 1.5

低放射化クリンカー中のSO3の挙動を把握するために、表3.2.1(1)-5に示すクリンカーを試製した。SO3につ

いても、C3S相よりもC2S相に多く固溶することが確認された。C3S相については、SO3の固溶量が増加しても、

Al2O3固溶量は変化しなかったが、C2S 相は SO3の固溶量が大きく増加することで、Al2O3固溶量も増加してい

ることが確認された。本結果より低放射化クリンカー中のSO3の増加に伴い、C3Aが減少した理由は、C2S相に

SO3とAl2O3が固溶したためと考えられた。この反応によって少なくとも、低放射化セメントの水和ごく初期(水和1時間まで)の発熱を低減できることが明らかとなった。

0.0

0.5

1.0

1.5

2.0

2.5

3.0

3.5

蝋石 珪石 珪灰石 酸性白土 活性白土

遊離

石灰

分Fre

eCa(%)

00.51

1.52

2.53

3.54

4.55

A=全試料90μm以下

A+珪石45μm以

B+菱苦土石添加

C+活性白土添加

原料調合

遊離

石灰

Fre

eCa(%)

0.0

0.5

1.0

1.5

2.0

2.5

3.0

0.0 0.2 0.4 0.6 0.8 1.0 1.2SO3 in Low-activation clinker (%)

Min

era

l co

mposi

tion

(%_X

RD/Re

itve

ld an

alys

is) C3A

C4AFf-CaO

20

30

40

50

60

70

80

0.0 0.2 0.4 0.6 0.8 1.0 1.2SO3 in Low-activation clinker (%)

Mine

ral

com

posit

ion

(%_

XRD/

Rei

tvel

d an

aly

sis) C3S

C2S

0

10

20

30

40

50

60

70

80

90

100

110

0 0.1 0.2 0.3 0.4 0.5

Time(hr)

Heat

evol

ution

rate

(J/g

/hr

SO3=0.00%(Clinker)SO3=0.25%(Clinker)

SO3=0.50%(Clinker)

0

2

4

6

8

10

12

14

0 4 8 12 16 20 24 28 32 36 40 44 48

Time(hr)

Heat

evol

ution

rate

(J/g

/hr

SO3=0.00%(Clinker)SO3=0.25%(Clinker)SO3=0.50%(Clinker)

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d. 低放射化セメントの小規模製造

ミニキルンで製造した低放射化セメントと低熱ポルトランドセメントの組成分析結果を表 3.2.1(1)-6 に、物理

試験結果を表 3.2.1(1)-7 に示す。低放射化セメントは、モルタル圧縮強さ、凝結、水和熱について JIS 低熱ポル

トランドセメント規格を満たした。またモルタル圧縮強さ、凝結、流動性については、試製した低熱ポルトラン

ドセメントより優れた物性を示した。低放射化セメントのEu、Co含有量は、それぞれ0.24、0.25mg/kgとなり、

市場品普通ポルトランドセメント平均値(n=50)に対し、Euが約1/2、Coが1/50まで低減できた。なおEuにつ

いては原料の種類を見直し、再度セメントを試製した結果、0.11mg/kg(市場品普通ポルトランドセメント平均値

の1/4)まで低減できることを確認している。原料コストは割高となるが、Al原料にアルミナを使用すれば更なる

低減も可能である。またこの試作セメントを、現在、電力会社・大型加速器施設等にサンプル持ち込み、評価依

頼している。

表3.2.1(1)-6 ミニキルン焼成セメントの組成分析結果 化 学 成 分 鉱 物 組 成 SiO2 Al2O3 Fe2O3 CaO MgO SO3 Na2O K2O C3S C2S C3A C4AF 低放射化セメント 27.8 2.5 0.4 64.5 1.5 2.07 0.01 0.02 31 62 3.3 1.0 低熱セメント 25.2 2.6 3.1 63.2 0.8 2.29 0.01 0.00 30 58 0.6 8.8 比 表 面

積 比重 Igloss Free-Ca Eu含有 Co含有

Cm2/g % % ng/g ng/g 低放射化セメント 3220 3.17 1.2 0.68 0.24 0.25 低熱セメント 3340 3.20 1.3 0.50 0.48 5.20

表3.2.1(1)-7 ミニキルン焼成セメントの製品評価 水和熱(J/g) 水和熱(J/g) 圧縮強度

(N/mm2) 圧縮強度

(N/mm2) 圧縮強度

(N/mm2) 凝結時間

(min) 凝結時間

(min) 7d 28d 7d 28d 91d 始発 終結

JIS低熱セメント規格 ≦250 ≦290 ≧7.5 ≧22.5 ≧42.5 ≧60 ≦600 低放射化セメント 231 290 18.6 42.8 70.7 135 220

熱セメント 208 262 15.3 34.9 67.4 185 300

e. 微粉部分の評価方法及びソーマサイトの生成リスク 砕石である石灰石には、砂等に微粉部分として不可避的に含まれるのみならず、近年欧米でコンクリートを膨

張ひび割れを生じる事故が発生しているソーマサイト等の生成も懸念される。thaumasite (CaSiO3・CaCO3・

CaSO4・15H2O))は、珪酸カルシウム塩、炭酸塩、硫酸塩という複雑な鉱物でエトリンガイトの生成に関係する。

ソーマサイト生成実験は、日本産砕砂に加え、スイス、スペイン、イギリス産の石灰石を75μm以下に粉砕した

ものを、5℃の温度で人工海水に1年間浸漬したものを、浸漬前後のX線回折で比較した。ソーマサイトの生成

は確認されなかった。この程度のSO3含有量でもそう簡単には生成しないものと考えられる。尚、この実験は引

き続き継続中である。 JASS5Nでは、JIISA1103法のよる75μm以下の割合を3.0%以下としているが、それを満たしていたとして

も不純物混入対策は十分でない。そこで、日本国内でコンクリート用骨材として用いられている石灰砕砂を75μm篩で分級したものを元の砂と比較した。なお2ヶ所のものについては、採取鉱山の表土を入手して比較した。分

析結果を表 3.2.2(1)-2 に示す。全ての砂で微粉部分の純度が低下していた。これは表土等混入の影響と考えられ

る。不溶残分は炭酸・硫酸塩鉱物以外の量を示すといってよいが、微粉分量の評価には敏感でないため、BET比

表面積の方が大きく変化を表していた。BET値が大きいとモルタルコンクリート中の各種混和剤の吸着等の問題

を生じる。石炭灰の測定結果の実績等から3m2/g以下の値を目安に管理できそうである。

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20

表3.2.2(1)-1 海外産苦灰岩・石灰岩の化学分析値(単位%) 産地 CO2 Na2O MgO Al2O3 SiO2 P2O5 SO3 Cl K2O CaO Fe2O3 Insol

苦灰岩 スイス 44.4 0.05 18.70 0.87 2.72 0.17 1.11 0.02 0.33 30.6 0.61 0.5 石灰岩 スペイン 41.4 0.04 0.43 1.50 2.40 0.02 1.09 0.03 0.25 51.9 0.68 0.7 石灰岩 イギリス 37.7 0.08 1.21 2.21 4.87 0.37 1.44 0.04 0.33 49.3 2.22 1.6

表3.2.2(1)-2 日本産石灰石砕砂の化学成分分析結果(単位はBET比表面績がm2/gである以外%)

産地 形態 CO2 Na2O MgO Al2O3 SiO2 P2O5 SO3 Cl K2O CaO Fe2O3 Insol BET 北海度 砂 42.3 0.03 3.07 0.81 2.87 0.09 0.05 0.02 0.07 50.5 0.41 3.9 0.89 北海道 <75μ 37.8 0.03 2.63 1.88 4.80 0.17 0.06 0.03 0.19 51.4 0.74 8.8 3.35 青森県 砂 44.6 0.00 0.40 0.05 0.26 0.02 0.06 0.01 0.01 54.5 0.02 0.2 0.79 青森県 <75μ 43.8 0.01 0.69 0.25 0.71 0.06 0.06 0.01 0.03 54.2 0.12 0.5 1.75 青森県 表土 8.4 0.02 1.08 25.40 41.80 0.52 0.10 0.23 1.36 1.6 17.30 78.9 9.07 山口県 砂 43.6 0.00 0.38 0.09 0.15 0.02 0.01 0.00 0.01 55.4 0.04 0.0 0.67 山口県 <75μ 43.2 0.00 0.36 0.14 0.21 0.03 0.00 0.01 0.02 56.0 0.04 0.1 1.15 山口県 表土 7.0 0.03 0.75 26.90 58.50 0.03 0.02 0.01 3.18 0.4 2.34 83.2 0.77 大分県 砂 42.2 0.00 0.90 0.16 0.39 0.25 0.05 0.02 0.01 55.9 0.09 0.2 0.71 大分県 <75μ 42.8 0.00 0.84 0.18 0.43 0.25 0.03 0.02 0.02 55.3 0.11 0.3 1.24

f. アルカリ骨材反応リスク

コンクリートの耐久性において、アルカリ骨材反応等を生じないことが肝要である。アルカリ骨材反応には、

セメント中のアルカリ分とシリカ質骨材が反応するアルカリ・シリカ反応のほかに、アルカリ分がドロマイトな

どと反応するアルカリ炭酸塩反応がある。低放射化材料として石灰石骨材を多用することから、確実にアルカリ

骨材反応を起すことが知られている、カナダ・オンタリオ州キングストン採掘場から1.5mおきにサンプリングし、

化学分析などを行なった。

表3.2.2(2)-1 カナダ・キングストン産石灰石の化学成分分析結果(%単位) 深さ Igloss Na2O MgO Al2O3 SiO2 P2O5 SO3 Cl K2O CaO Fe2O3 Insol 0.0m 39.6 0.01 1.59 1.85 5.07 0.02 0.29 0.03 0.63 50.1 0.51 6.2 1.5m 42.3 0.06 5.37 1.45 4.16 0.01 0.31 0.05 0.43 45.0 0.74 2.6 3.0m 43.9 0.01 1.22 0.37 1.85 0.01 0.12 0.04 0.11 51.9 0.28 2.8 4.5m 43.7 0.01 1.08 0.32 1.84 0.03 0.28 0.05 0.11 51.9 0.31 7.6 6.0m 35.2 0.10 1.08 3.91 10.50 0.08 0.17 0.04 1.31 44.6 0.95 9.9 7.5m 18.9 0.30 10.10 11.50 27.20 0.04 0.31 0.06 3.46 24.8 2.35 35.9 9.0m 29.8 0.20 6.00 5.79 19.00 0.02 0.19 0.03 1.81 35.8 1.34 20.6

分析結果を表3.2.2(2)-1に示す。現場観察によると上から7.5m以下の部分でMgO量が高くなり、ドロマイト

に変化していた。それに伴い不溶残分(Insol)量も増加していた。Insol量は、炭酸塩以外の侠雑部分量を示し、

10%を超える部分でアルカリ骨材反応を起すことが確かめられた。光学顕微鏡写真でもドロマイト中のイライト

などとして観察され、この部分がアルカリ骨材反応の反応縁を示していた。つまり石灰石のアルカリ骨材反応な

るものは、石灰岩中の珪酸塩部分の、アルカリシリカ反応の部分的現象であることが確かめられた。現在日本産

の石灰岩を評価しているが、このような反応を起こすものは見出していない。

[1]一坪,他:低放射化セメントの創製(低熱白熱セメントの創製),2007セメント協会論文集,2008.2.20刊,(2008).

[2]田野崎,他:コンクリート系低放射化材料の開発,コンクリート工学協会年次論文集,Vol.29, p81-86, (2007).

Page 33: クリアランスレベル以下にするための 低放射化設計 …...2017/07/19  · [7] Uematsu M. et al. “Low-Activation Reinforced Concrete Design Methodology (3)-ΣD/C

21

(2) ハイアルミナセメント用低放射化 CAS 系混和材の創製 平成 19 年度は図 3.2.1(3)-1 の開発フローにもとづき、試験①~③について試験を行なった。

耐久性、耐火性、構造安全性など総合性能評価と見極め平成20年度

試験① 化学組成の検討試験② 比表面積の検討

試験③ 既存設備を用いた低放射化CAS系混和材の製造

低放射化CAS系混和材の最適化平成19年度は

試験①~③を実施

平成17,18年度

a.収縮低減・相転移防止材の探索 ⇒ カルシウムアルミネートシリケート系混和材

(以下、CAS系混和材と略)で効果b.低放射化原料の選定

低放射化CAS系混和材の開発目途がたつ。

耐久性、耐火性、構造安全性など総合性能評価と見極め平成20年度

試験① 化学組成の検討試験② 比表面積の検討

試験③ 既存設備を用いた低放射化CAS系混和材の製造

低放射化CAS系混和材の最適化平成19年度は

試験①~③を実施

平成17,18年度

a.収縮低減・相転移防止材の探索 ⇒ カルシウムアルミネートシリケート系混和材

(以下、CAS系混和材と略)で効果b.低放射化原料の選定

低放射化CAS系混和材の開発目途がたつ。

図 3.2.1(3)-1 ハイアルミナセメントの構造部材としての適用技術開発

a. 試験① 化学組成の検討

出発原料に生石灰(ΣD/C=0.74)、電融アルミ

ナ(ΣD/C=0.014)、珪砂(ΣD/C=0.02)を用意

し、図 3.2.1(3)-2 に示す A~G の組成となる低放

射化 CAS 系混和材を調合した。ただし、ブレー

ン比表面積は、目標値で 4,500cm2/g となるよう

にした。JIS R5201 に準じてモルタル(ハイア

ルミナセメント/低放射化 CAS 系混和材=3/7、水

結合材比=40%、40℃環境下で 28 日間封かん養

生)を作製して各種物性を評価した。モルタルの

流動性を評価すると、図 3.2.1(3)-3 に示すように、

図3.2.1(3)-3 流動性の評価結果 

100

120

140

160

180

200

A B C D E F Gサンプル名

15打

点フ

ロー

値 (m

m)

普通セメント

急結

ハイアルミナセメント

図3.2.1(3)-3 流動性の評価結果 

100

120

140

160

180

200

A B C D E F Gサンプル名

15打

点フ

ロー

値 (m

m)

普通セメント

急結

ハイアルミナセメント

図3.2.1(3)-4 材齢28日における圧縮強度と

長さ変化率の散布図 

-500

-400

-300

-200

-100

00 20 40 60 80

圧縮強度 (N/mm2)

長さ

変化

率 (×

10-6)

★ハイアルミナ

セメント

E A

普通セメント◆

B

C D

図3.2.1(3)-4 材齢28日における圧縮強度と

長さ変化率の散布図 

-500

-400

-300

-200

-100

00 20 40 60 80

圧縮強度 (N/mm2)

長さ

変化

率 (×

10-6)

★ハイアルミナ

セメント

E A

普通セメント◆

B

C D

図3.2.1(3)-2 試製した低放射化CAS系混和材の化学組成

CaO

ゲーレナイト(2CaO・Al2O3・SiO2)

●E

Al2O3

ハイアルミナセメント

◆普通

セメント

高炉水砕スラグ▲

● ●●

●G

●F

SiO2

●D

C

A

B

×

×C12A7

×CA

×C3A

C2S×

C3S×

C3S2×

CS×

×CA2

×CA6

1,600℃融液生成域

CaO

ゲーレナイト(2CaO・Al2O3・SiO2)

●E

Al2O3

ハイアルミナセメント

◆普通

セメント

高炉水砕スラグ▲

● ●●

●G

●F

SiO2

●D

C

A

B

×

×C12A7

×CA

×C3A

C2S×

C3S×

C3S2×

CS×

×CA2

×CA6

1,600℃融液生成域

図3.2.1(3)-2 試製した低放射化CAS系混和材の化学組成

CaO

ゲーレナイト(2CaO・Al2O3・SiO2)

●E

Al2O3

ハイアルミナセメント

◆普通

セメント

高炉水砕スラグ▲

● ●●

●G

●F

SiO2

●D

C

A

B

×

×C12A7

×CA

×C3A

C2S×

C3S×

C3S2×

CS×

×CA2

×CA6

1,600℃融液生成域

CaO

ゲーレナイト(2CaO・Al2O3・SiO2)

●E

Al2O3

ハイアルミナセメント

◆普通

セメント

高炉水砕スラグ▲

● ●●

●G

●F

SiO2

●D

C

A

B

×

×C12A7

×CA

×C3A

C2S×

C3S×

C3S2×

CS×

×CA2

×CA6

1,600℃融液生成域

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22

組成 A~E は普通セメントより良好な流動性を示すことがわかった。一方、図 3.2.1(3)-4 に示す材齢 28日の圧縮強度と長さ変化率の結果より、低放射化 CAS 系混和材の化学組成が組成 D(CaO 50%、

Al2O3 20%、SiO2 30%)のときに普通セメントと同等の圧縮強度を示し、かつ、長さ変化率が小さ

いことがわかった。以上を踏まえると、低放射化 CAS 系混和材の化学組成は、組成 D が適当であ

ると結論づけた。 b. 試験② 比表面積の検討

低放射化 CAS 系混和材の化学組成を組成 D に固

定し、ブレーン比表面積が異なる試料(3,900、5,100、5,900cm2/g)を用いたことと、ポリカルボ

ン酸系高性能減水剤を 0.5%添加したこと以外は、

試験①と同様に評価して比表面積を最適化した。図

3.2.1(3)-6 に 15 打点フロー値を示すが、ブレーン

比表面積に関わらず、ほぼ同等のフロー値を示した。

このとき、チクソトロピー性やブリージングは確認

されなかった。また、図 3.2.1(3)-6 に圧縮強度の推

移を、図 3.2.1(3)-7 に長さ変化率の推移を示すが、

いずれもブレーン比表面積の違いによる明確な差は

認められず、材齢 28 日で約 35N/mm2、170μの収

縮を示していた。

0

20

40

60

80

100

0 10 20 30材齢(日)

圧縮

強度

(N

/mm

2 )

HAC

NPC

5,100cm2/g5,700cm2/g

3,900cm2/g

図3.2.1(3)-6 圧縮強度に与える比表面積の影響

0

20

40

60

80

100

0 10 20 30材齢(日)

圧縮

強度

(N

/mm

2 )

HAC

NPC

5,100cm2/g5,700cm2/g

3,900cm2/g

図3.2.1(3)-6 圧縮強度に与える比表面積の影響

-500

-400

-300

-200

-100

0

100

0 10 20 30

材齢(日)

長さ変化率(

×10-6

NPC

HAC

5,100cm2/g3,900cm2/g

5,700cm2/g

図3.2.1(3)-7 長さ変化率に与える比表面積の影響

-500

-400

-300

-200

-100

0

100

0 10 20 30

材齢(日)

長さ変化率(

×10-6

NPC

HAC

5,100cm2/g3,900cm2/g

5,700cm2/g

図3.2.1(3)-7 長さ変化率に与える比表面積の影響

XRD を用いて材齢 28 日の水和生成物をみると、3,900cm2/g のみ安定相である Stratlingite(2CaO・

Al2O3・SiO2・8H2O)などを含み、それ以外では準安定相である CaAl2O3・10H2O や Ca2Al2O5・8H2O も混

在していた。水和生成物の安定性や粉砕時の微量元素の汚染などを考慮すると、低放射化 CAS 系混和材

の比表面積は小さいほうが適当と結論付けられた。 c. 試験③ 既存設備を用いた低放射化 CAS 系混和材の製造 試験①、②で得られた結果と、区分判断用材料データベースの結果を踏まえ、H19 年度は既存設備を

100

150

200

250

300

3000 4000 5000 6000

ブレーン比表面積(cm2/g)

15打

点フ

ロー

値(

mm)

ハイアルミナセメント

普通セメント

図3.2.1(3)-5 流動性に与える比表面積の影響

100

150

200

250

300

3000 4000 5000 6000

ブレーン比表面積(cm2/g)

15打

点フ

ロー

値(

mm)

ハイアルミナセメント

普通セメント

図3.2.1(3)-5 流動性に与える比表面積の影響

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23

用いて低放射化 CAS 系混和材を製造した。ΣD/C の値が小さな原料を選定し、化学組成が CaO 50%、

Al2O3 20%、SiO2 30%となるように配合して電炉を用いて焼成した。 焼成して得られたクリンカーを粉砕するにあたり、まず、既存設備で粉砕した場合に微量元素がどれく

らい混入するかを調査した。表 3.2.1(3)-1 に、アルミナ製ボールミルと振動ミルで粉砕したときに粉砕品

に含まれる微量元素量を示す。これより、アルミナ製ボールミルで粉砕した場合は、振動ミルで粉砕した

場合に比べて微量元素(特に、Fe と Co)の混入量が少ないことがわかった。

表 3.2.1(3)-1 既存設備を用いて粉砕した低放射化CAS 系混和材の微量元素量 試料名 ブレーン値

(cm2/g) Sc

ppm Fe

ppm Co

ppm Cs

ppm Eu

ppm 備考

未粉砕品 - 0.38 320 0.07 0.03 0.05 アルミナ製ボールミル粉砕品 8,000 0.45 352 0.15 0.12 0.090 分級品

振動ミル粉砕品 3,400 0.34 13,400 2.3 - 0.082 -:γ線ピークが未検出

調査結果をもとに、製造したクリンカーは、ボールミルを用いて表 3.2.1(3)-2 に示す条件で粉砕した。

図 3.2.1(3)-8 に、粉砕時間にともなうブレーン比表面積の変化を示すが、ブレーン比表面積が目標値であ

る 3,000cm2/g となるようにクリンカーを粉砕するには、約 10 時間近く要することがわかった。アルミ

ナ製ボールのかさ比重は 3.6 であり、通常使用される鋼製ボールの比重(約 8)に比べて小さいことや、

ボール充填率が適正でないために粉砕効率が劣ることなどが原因と考えられる。今後は、それらの最適化

が必要である。

表 3.2.1(3)-2 クリンカーの粉砕条件 粉砕機 転動ボールミル

材質 鋼(容器) アルミナ(ボール)

ミル容量(m3) 0.823 ボール径(mm) 60 ボール充填率(%) 10

クリンカー充填量(kg) 200

図3.2.1(3)-8 粉砕時間とブレーン比表面積、      90μm篩上残分との関係 

y = 182.8 x     + 1312.2

0

1000

2000

3000

4000

0 5 10 15粉砕時間(時間)

ブレーン比表面積(

cm2 /g

0

20

40

60

80

100

90μm

篩上残分(

%)

図3.2.1(3)-8 粉砕時間とブレーン比表面積、      90μm篩上残分との関係 

y = 182.8 x     + 1312.2

0

1000

2000

3000

4000

0 5 10 15粉砕時間(時間)

ブレーン比表面積(

cm2 /g

0

20

40

60

80

100

90μm

篩上残分(

%)

以上をまとめると、クリンカーの粉砕効率に課題は残るが、既存設備を用いて低放射化 CAS 系混和材

を製造できる目途がたった。 平成 20 年度は、以上を踏まえて、①総合性能評価と見極め(耐久性、耐熱性、構造安全性など)、②

製造技術の最適化を行なう予定である。 1)森ほか:クリアランスレベル以下にするための低放射化設計法に関する技術開発(32)-低放射化混和材の開発-, 日本原子力学会 2007

年秋の大会(2007). 2)森ほか:クリアランスレベル以下にするための低放射化設計法に関する技術開発-(44)低放射化混和材の水和反応に与える比表面積の影

響-, 日本原子力学会 2008 年春の大会(2008).

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24

3.2.2 低放射化鉄筋の創製 (1) 低放射化鉄筋製造プロセスの検討

a. 合金鉄からのCo 汚染 昨年度までに、製銑製鋼プロセスにおけるCo のマスバランス調査からCo のインプット源を明らかに

し、基礎実験により原料選択による低Co 溶銑の製造試験を行なった 1)-4)。製鋼精錬時に使用する原材料や

耐火物には Co が含まれないという結果を得たが、鉄筋にするには強度を確保するため精錬後、所定成分

へ合金を添加する必要がある。そこで、今年度は合金に含まれるターゲット元素を分析した。その結果を

表 3.2.2.(1)-1 に示す。 表 3.2.2.(1)-1 各種原材料のターゲット成分の含有量 (mass%)

Co Nb Sn Sc Cs Eu高炭素フェロマンガン 0.021 0.00042 <0.0002 <0.0002 <0.00001 <0.00001低炭素フェロマンガン 0.008 0.00021 <0.0002 <0.0002 <0.00001 <0.00001

フェロニッケル 0.41 0.00013 <0.0002 <0.0002 <0.00001 <0.00001ニッケル地金 0.003 0.00019 <0.0002 <0.0002 <0.00001 <0.00001

高炭フェロクロム 0.042 0.00062 <0.0002 <0.0002 <0.00001 <0.00001フェロモリブデン 0.004 0.00085 0.0003 <0.0002 0.00008 <0.00001

高強度鉄筋の場合は Mn を 1.5%程度に制御するが、これを高炭素フェロマンガンで添加すると Co は

4.25ppm程度上昇する事になる。一方、既に強度に対する合金元素濃度の影響は知られており、Mnを 1.5%添加した場合と等しい強度を得るには、大凡、Ni で 7.5%、Mo で 1.25%、Cr で 2.5%の添加が必要にな

る。これより、鉄筋強度を各元素で確保した場合のCo 汚染量(△Co)を計算すると表 3.2.2.(1)-2 のよう

になり、合金を選択する事で 1ppm 程度の上昇に留められる可能性が認められた。

表 3.2.2.(1)-2 合金の選択によるCo 濃度変化量の違い

b. 放射化分析と ICP 分析との比較

これまでは、ICP-MS 又は ICP-AES によりターゲット元素の分析を行なって来たが、放射化分析値と

の比較を行なうと図 3.2.2.(1)-1 のように放射化分析値の方が高くでる場合が多く、高炉、焼結のマスバラ

ンスを再計算すると、放射化分析値を用いた方が概して不明分が少ない傾向にあった。分析値としてどち らが正しいかは判断しにくいものの、ターゲット成分の含有量が低い物については放射化分析での確認

も必要であり、来年度の課題である。

合金元素 合金濃度

(mass%) 合金鉄 △Co(ppm)

高炭素フェロマンガン 4.26 Mn 1.5

低炭素フェロマンガン 1.32

フェロニッケル 1523.00 Ni 7.5

ニッケル地金 2.26

Cr 2.5 高炭フェロクロム 20.66

Mo 1.25 フェロモリブデン 0.81

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25

図 3.2.2.(1)-1 放射化分析値と ICP 分析値の比較 1) Kitamura S. et al.”Technology to Produce Low-activation Steel for the Reduction of Radioactive Waste”, Proceedings of AISTech2007,2,1297-1304,USA,Indianapolis,AIST(2007). 2) Kitamura S. et al. “Low Activation Reinforced Concrete Design Methodology (13)- Technology to Produce Low Activation Steel Reinforcing Bars -, Transactions, 19th International Conference on Structural Mechanics in Reactor Technology, Toronto, Canada, Paper# HW2/5, (2007). 3) 北村,他:製鋼工程における Co の混入源と挙動 低放射化鉄鋼材料の製造技術(2),日本鉄鋼協会第 154 回秋季講演大会,日本,岐阜,(2007) 4) Kitamura S, et al. :”Behavior of cobalt in iron- and steel-making processes”, ISIJ International,47(12),1818-1828(2007)

(2) 低Co 鉄筋の接合性能評価 昨年度調査において、Co 以外の微量成分調整及び圧延条件制御によって、低Co 鋼の機械的性質が現用

鉄筋に遜色無い値になることを明らかにした。本年度は昨年度の結果を基に、Co 以外の微量元素を現用鋼

並みに調整し、加熱温度及び仕上げ圧延温度を制御して棒鋼を作成後、ガス圧接合による接合性能を現用

鋼と比較評価した。 a. 棒鋼素材の溶解 300kgの真空誘導炉により微量成分を調整した極低Co鋼を溶解して、表3.2.2.(2)-1に示す組成の100kg

鋼塊を 2 本作成した。各鋼塊から鍛造により 85mm x 85mm x 1500mm 長さの角ビレットを作成後、

表 3.2.2(2)-1 微量成分制御鋼の溶解成分分析結果(単位:mass %)

項目 C Si Mn P S Ni Cr Mo Co

目標成分 0.22 0.35 1.35 0.018 0.018 0.010 0.13 0.020 0.0003

出鋼成分 0.23 0.35 1.34 0.019 0.018 0.010 0.013 0.021 0.00035

全面及びコーナ部を研削して 80mm 角のビレットに仕上げ た。その後 1050℃加熱炉に挿 入し、抽出温度 1031℃、仕上 げ温度 916℃、6 パス孔型圧延 にて 22φmm の棒鋼を作成 した。棒鋼圧延パス状況とパ ス間の温度測定結果を図

3.2.2(2)-1 及び表 3.2.2(2)-2 に示す。圧延後の棒鋼は、長さ 300~400mm に鋸断後切断面のバリ取り及び

汚れ落としを行い、ガス圧接試験に供した。なお、ガス圧接試験は、現用されている高炉鉄筋及び電炉鉄

筋(表 3.2.2(2)-3)と同時に実施して、その性能を比較評価した。

図 3.2.2(2)-1 圧延パス状況及び測温箇所

表 3.2.2(2)-2 棒鋼圧延パス測温結果 測温箇所 温度(℃)

①抽出 1031

②粗ロール 1013

③中間ロール 987

④#5 ロール(上) 965

⑤#3 ロール 936

⑥仕上げロール 916

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26

表 3.2.2(2)-3 ガス圧接試験比較用 SD345 鋼成分(単位:mass %)

種別 径(mm) C Si Mn P S Co

D29 0.23 0.36 1.41 0.013 0.005 0.0031 高炉鋼

D51 0.22 0.34 1.35 0.017 0.003 0.0031

電炉鋼 D29 0.25 0.17 0.89 0.022 0.026 0.0103

ガス圧接は横置きの手動ガス圧接機を用い、日本圧接協会が認定した手動ガス圧接技量適格(4種)保有

者によって、引張試験用及び曲げ試験用各 5 本とマクロ試験用各 1 本を施工した。ガス圧接後の継手引張

試験結果を図 3.3.2(2)-2 及び図 3.3.2(2)-3 に示す。両図に示す様に、極低Co 棒鋼の継手引張特性は現用鉄

筋材同等以上の値を有しており、良好であることが明らかになった。

図3.2.2(2)-2 継手引張特性(強度)

0

100

200

300

400

500

600

700

極低Co鋼 高炉D29 高炉D51 電炉D29

種別

強度(N/mm

2)

降伏点引張強さ

図3.2.2(2)-3 継手引張特性(破断伸び)

0

5

10

15

20

25

極低Co鋼 高炉D29 高炉D51 電炉D29

種別

破断伸び(%)

破断伸び

ガス圧接後継手部の曲げ試験を実施した結果を写真 3.3.2(1)及び表 3.3.2(2)-3 に示す。いずれの試験片も

ガス圧接部で破断することなく曲がっており、ガス圧接部の曲げ特性は良好であることが明らかになった。

(3)まとめ

本年度の調査結果から、クリアランスレベルになるようにCo 量を減じた極低Co 棒鋼は微量元素及び棒

鋼圧延条件を制御することにより、ガス圧接合部の性能は現用されている高炉鉄筋及び電炉鉄筋と同等以

上の性能が得られることが明らかになった。これらの結果は、日本原子力学会 2006 秋の大会1)及び 2007春の年会 2)発表に引き続き、2008 春の年会に発表 3)する予定である。来年度は製造上の課題(直接還元

法及び電炉法による溶鋼製造や制御圧延等)、コスト、実現性について検討する。また、高純度化鉄筋の使

用性能についての試験結果を基に、その総合評価の検討および使用上での課題検討を行う。 1)榊原、他:クリアランスレベル以下にするための低放射化設計法に関する技術開発(14)低放射化鉄筋の製造と定量分析、日本原子力学

会 2006 秋の大会、予稿集、F6 2)榊原、他:クリアランスレベル以下にするための低放射化設計法に関する技術開発(24)低 Co 鋼の機械的に性質に及ぼす微量成分及び

圧延条件の影響、日本原子力学会 2007 春の年会、予稿集、F7 3)榊原、他:クリアランスレベル以下にするための低放射化設計法に関する技術開発(45)低放射化鉄筋の接合性能評価、日本原子力学会

2008 春の年会

極低 Co 高 炉 鋼 高 炉 鋼 電 炉 鋼

写真 3.2.2(2)-1 ガス圧接合部の曲げ外観

表 3.2.2(2)-4 ガス圧接部の 90°曲げ評価

極低Co 鋼 高炉鋼 電炉鋼

試験数

D22 D29 D51 D29

n=1 良好 良好 良好 良好

n=2 良好 良好 良好 良好

n=3 良好 良好 良好 良好

n=4 良好 良好 良好 良好

n=5 良好 良好 良好 良好

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27

3.2.3 低放射化中性子遮蔽材料の創製

前年度は 1/300 低放射化コンクリート(電融アルミナ骨材+ハイアルミナセメント)に B4C 粉体を

56kg/m3添加した試験を行ったが、チクソトロピー、収縮、高発熱などの問題を解決するにはかなり高い

ハードルがあることが判明したため、本年度は、表 3.1.1(2)-2 や表 3.1.2-2 で挙げたような、1/30 低放射

化コンクリートやL2→L3用低放射化コンクリートに対してB4C添加試験を行った。結果はかなり良好で、

これらのコンクリートに対しては特別な不具合は生じない、ということを確認した。ボロン添加による

∑D/C の低減効果の計算例(体系 1:コンクリートキャスク体系、体系 2:プレキャストコンクリート体系)

1) を図 3.2.3-1 に、ボロン溶出試験例(結果は検出限界以下)を図 3.2.3-2 に示す。

図 3.2.3-1 ボロン添加による∑D/C の低減効果

図 3.2.3-2 ボロン溶出試験

平成20年度は、1/300低放射化コンクリートを含めたB4C入りの各種低放射化コンクリートについて、

より詳細な∑D/C の低減効果を評価し、ボロン溶出など仕様作成に向けたデータを取得し、これまでの成

果をまとめる予定である。

1) 金野,他:クリアランスレベル以下にするための低放射化設計法に関する技術開発(29)-中性子吸収材入り低放射化コンクリート-,日本原子力学会 2007 年秋の大会, F28, p.329, 北九州国際会議場他,(2007).

ボロン入り1/30低放射化コンクリート

0.0001

0.001

0.01

0.1

1

0.01 0.1 1 10

ボロン含有量(×1.0E+21/cc)

∑D/C(安

山岩

コンクリー

ト≡

1.0)

体系1・表面

体系1・34cm深さ

体系2・表面

体系2・34cm深さ

ボロン入り1/300低放射化コンクリート

0.00001

0.0001

0.001

0.01

0.1

1

0.01 0.1 1 10

ボロン含有量(×1.0E+21/cc)

∑D/C(安山岩コンクリート≡1.0)

体系1・表面

体系1・34cm深さ

体系2・表面

体系2・34cm深さ

溶出(200RCM、6hr) 静置 ろ過 ICP分析

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3.3 低放射化設計法の開発 3.3.1 放射化した廃棄物の処理処分区分マップ作成システムの開発 (1)概要 平成 19 年度は、昨年度作成した放射化廃棄物の処理処分区分マップ作成システム(以下、区分マップシス

テムという)に対して、材料選定評価システムで作成された低放射化材料組成を、簡易的に放射化量評価を行

う放射能レベル区分計算機能の追加を行った。本機能を使用することにより、計算時間を要する 2次元体系で

の区分マップシステムによる詳細な放射化量評価を行う前に、大まかな ΣD/C 並びに廃棄物レベル区分を迅速

に得られるようになった。 (2)放射能レベル区分計算機能の追加 放射能レベル区分計算の概要を図 3.3.1-1 に示す。予め、JPDRに対して 2次元輸送計算コードDORT を使

用して計算した 183 群の中性子スペクトルに基づいて、炉心側部位置における中性子スペクトルを考慮した単

位元素あたりの放射化計算と減衰計算(減衰期間 6年、10 年)を行った結果をデータベース化した。システム

では、材料選定評価システムで作成された低放射化材料組成を入力とし、内蔵した単位元素あたりの計算結果

より放射能計算を行い、D/C と ΣD/C の計算により廃棄物の処理処分レベル区分の判定を行う。計算結果は、

JPDR 炉心中心高さ位置における生体遮へい体深さ位置(表面, 10, 20, 30, 50, 100 と 150cm)におけるΣD/C (Co, Eu, Cs と合計)表示と、L2 とL3 の境界位置並びにL3 とクリアランスレベルの境界位置を表示する。放

射能レベル区分計算のデータ設定並びに結果表示画面イメージを図 3.3.1-2 に示す。 (3)放射能レベル区分計算による評価 本機能により普通コンクリートと石灰岩系低放射化コンクリートによる計算を実施し、区分マップシステム

の 2 次元詳細計算結果との確認を行った。対象コンクリートと生体遮へい体深さ位置における計算結果を表

3.3.1-1 に、2次元詳細評価で使用した JPDRの 2 次元全中性子束分布図を図 3.3.1-3 に、区分マップシステム

による 2 次元詳細評価による廃棄物処理処分レベル区分図を図 3.3.1-4 に示す。通常コンクリートに対して石

灰岩系低放射化コンクリートを使用することにより、ΣD/C が低減されL2 とL3 の境界位置も 2次元レベル区

分図と同様に低減されていることが確認された。また、計算時間は、区分マップシステムで詳細な 2次元レベ

ル区分を得るまでに数日の時間を要するのに対して、本機能を使用すると10秒程度で結果を得ることができ、

迅速に計算されることが確認された。 (4)まとめと今後の予定 放射能レベル区分計算機能の追加により、低放射化材料組成に対して迅速かつ簡易的に ΣD/C と廃棄物処理

処分レベル区分が得られるようになった。 今後は、平成 19 年度までの成果に対して、プラント内の各場所の中性子スペクトルデータや材料選定評価

システムからの材料データを使い処理処分コスト評価まで行うシステムを完成させる。

1)山口、他:クリアランスレベル以下にするための低放射化設計法に関する技術開発(36)放射化した廃棄物の処理処分区分マップ作成システム

の開発、日本原子力学会 2007秋の大会、予稿集、F35 2)山口、他:クリアランスレベル以下にするための低放射化設計法に関する技術開発(40) 区分マップシステムのJPDRへの適用、日本原子力

学会 2008春の年会

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29

図 3.3.1-1 放射能レベル区分計算の概要 図 3.3.1-2 放射能レベル区分計算画面イメージ

表 3.3.1-1 放射能レベル区分計算による JPDR 側部生体遮へい体におけるΣD/C とレベル区分

Co (ppm) 21.8 21.8 27 5.73 1.45 0.25 0.16Eu (ppm) 0.92 0.92 1.1 0.67 0.123 0.04 0.018

ΣD/C(Co) 1.93E+04 1.93E+04 2.39E+04 5.08E+03 1.28E+03 2.22E+02 1.42E+0210cm ΣD/C(Eu) 2.65E+04 2.65E+04 3.16E+04 1.93E+04 3.54E+03 1.15E+03 5.18E+02

ΣD/C, 区分 4.62E+04 L2 4.62E+04 L2 5.59E+04 L2 2.51E+04 L2 4.91E+03 L2 1.40E+03 L2 6.78E+02 L2ΣD/C(Co) 6.92E+03 6.92E+03 8.57E+03 1.82E+03 4.60E+02 7.93E+01 5.08E+01

30cm ΣD/C(Eu) 9.89E+03 9.89E+03 1.18E+04 7.20E+03 1.32E+03 4.30E+02 1.94E+02ΣD/C, 区分 1.69E+04 L2 1.70E+04 L2 2.05E+04 L2 9.28E+03 L2 1.81E+03 L3 5.17E+02 L3 2.50E+02 L3ΣD/C(Co) 1.53E+01 1.53E+01 1.89E+01 4.02E+00 1.02E+00 1.75E-01 1.12E-01

100cm ΣD/C(Eu) 2.20E+01 2.20E+01 2.63E+01 1.60E+01 2.94E+00 9.56E-01 4.30E-01ΣD/C, 区分 3.76E+01 L3 3.76E+01 L3 4.55E+01 L3 2.06E+01 L3 4.03E+00 L3 1.15E+00 L3 5.56E-01 CLΣD/C(Co) 1.60E-01 1.60E-01 1.98E-01 4.20E-02 1.06E-02 1.83E-03 1.17E-03

150cm ΣD/C(Eu) 2.29E-01 2.29E-01 2.74E-01 1.67E-01 3.06E-02 9.96E-03 4.48E-03ΣD/C, 区分 3.92E-01 CL 3.92E-01 CL 4.74E-01 CL 2.15E-01 CL 4.20E-02 CL 1.20E-02 CL 5.79E-03 CL

45.7 45.7 43.7 50.7 26.7 17.7 16.7139.3 139.3 144.3 134.4 114.6 100.7 91.7

安山岩 玄武岩 砂岩

普通コンクリート

日本平均 1/10低放射化

1/30低放射化

1/50低放射化

石灰岩系コンクリート

 L2-L3境界(cm) L3-CL境界(cm)

微量元素含有量

評価位置(生体遮へい体深さ)

元素単位での

照射・減衰

データベース

低放射化材料組成

放射能計算

ΣD/Cと処理処分レベル区分

材料選定評価システム

日本平均 1/50低放射化 1/10低放射化 図3.3.1-4 2次元処理処分レベル区分と簡易評価高さ位置

評価位置 (炉心中央)

L2レベル

L3レベル

クリアランスレベル

図3.3.1-3 JPDR炉心廻り全中性子束分布図

生体遮へい体

原子炉 圧力容器

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3.3.2 材料選定評価システムの開発 本年度は、これまでに作成したシステムに機能の追加や改良を行った。昨年度に続き、

照射条件および放射化計算条件の設定の拡張と核種毎の D/C 内訳の作図機能を作成し(図

3.3.2-1)、どの材料のどの元素の低減が低放射化に優位に効くかを明確に知ることができる

ようになった。また、いくつかの原材料の中から低放射化の組み合わせを計算する機能(製

造シミュレーション機能)を改良し、∑D/C や原料コスト計算に加えて原料ごとの∑D/C 内

訳をグラフで表示する機能や元素相関図の表示機能を作成した(図 3.3.2-2)。

図 3.3.2-1 放射化計算の設定画面(左)と∑D/C 作図機能(右)

図 3.3.2-2 製造シミュレーション機能の組み合わせ計算例(左)と∑D/C 作図機能(右)

3.4 クリアランスなどの区分判断用材料データベースの構築 平成 19 年度は、図 3.4-1 に示す内容の内、文献調査(18 年度からは材料選定システムの

材料データベースへの入力)および骨材、混和材、セメント原料(石灰岩、粘土、珪砂、

鉄鉱石、石膏、燃料)など約 500 種類の材料のサンプリングを行い、これら全ての分析用

試料を作製して、放射化分析、ICP-AES、ICP-MS などによる元素分析を行った。また、

データベース化するためのシステムを検討した。

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図 3.4-1 クリアランスなどの区分判断用材料データベースの構築

3.4.1 データベースの拡充

平成 19 年度は、前年度作業に引き続き、特に放射化で重要な標的元素である Eu や Coなどに関する分布図集を作成するため、文献を中心に、材料の元素組成を調べた。前年度

に引き続き、材料選定評価システムの材料データベースに入力し、データベースの整備と

拡充を行った。

3.4.2 サンプリングおよび元素分析

(1)平成 19 年度成果品のサンプリング

各社の本年度の成果品である低放射化コンクリート 20 種類、セメントクリンカーど約 50種類のサンプリングを行い、主に放射化分析にて Eu, Co, Cs, Sc, Fe を分析した。

(2)骨材、セメント、混和材、セメント原料などのサンプリング

平成 19 年度は、JRR-3(日本原子力研究開発機構、研究用原子炉)を利用し、平成 19 年度

成果品を含む、骨材、セメント、混和材、セメント原料など 280 個の材料の放射化分析を

行った。分析試料は想定される放射化元素濃度に応じて約 50mg、100mg を取り分け、石

①文献調査、EXCEL 入力 メジャー元素、微量元素、「NUREG/CR-3474」「日本岩石誌」「火力・原子力発電

設備材料」など。 ②1,000 種類の材料のサンプリング、元素分析

各機関分担してサンプリング。

鉄筋、鋼板、コンクリート、骨材、セメント、混和材、混和剤、長繊維補強筋、

セメント原料(石灰岩、粘土、珪砂、鉄鉱石、石膏、ろう石、燃料)、配管材料、

電解鉄、低コバルト鋼、アルミニウム合金、JIS 鉄鋼材料、溶接材料、その他合金

材料、鉛、グラウト材料、電線材料、塗装材料、建築用セラミックス(タイル、

管、煉瓦)、有機材料(アスファルト、プラスチック、ゴム)、保温・断熱材料、イ

ンサート材料、放射線遮蔽材料、ガラス材料など

③データベースの作成

メジャー元素分析:遮蔽計算用、分析

は主に ICP-AES 分析

平成 19 年度は、前

年度に引き続き、①

文献調査の一部、②

の骨材、セメント、混和

材の元素分析およ

びスクリーニング

のためのセメント

原料元素分析、約

500 種類の材料を

分析、③データベー

ス作成

微量元素分析:放射化計算用、分析

は主に原子炉を利用した放射化分析

①クリアランスなどの区分判断用材料データベース ②材料選択評価のための基礎データ

③低放射化設計のための各種「標準材料」データ

④クリアランスの検認に関わる基礎データ

⑤L2→L3 用基礎データ

平成 20 年度

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32

英ガラス管に封入し照射に供した。照射後に東北大学工学研究科放射性同位元素実験室に

試料を輸送し、放射能測定を進め、分析を実施している。試料リストを表 3.4.2-1 に示す。

表 3.4.2-1 放射化分析試料リスト

KUR(1) KUR(2) JMTR JRR-3セメント系材料 316 セメント 127 19 55 25 52

モルタル 5 0 0 1 4セメントクリンカ 16 0 0 10 6混和材料 81 2 51 28 14セメント原料 87 22 0 37 49

鉄筋系材料 47 鉄製品 40 37 0 33 3製鉄原料 7 0 1 6 0

天然岩石 210 4 14 79 116製造副産物系材料 6 セメント副産物 3 0 0 3 0

製鉄副産物 2 1 0 2 0精銅副産物 1 1 0 1 0

その他関連材料 15 粉砕用材料 1 0 0 0 1その他 14 1 0 8 6

分析対象試料 計 594 87 121 233 251分析用モニタ材料 14 35 70 44 35全原子炉照射試料 計 608種類 122 191 277 286

各原子炉における照射試料数大分類 (種類) 小分類 (種類)

計 876 個

(3)データベースの構築 平成 19 年度は、前年度に引き続き、微量元素の放射化分析や主要元素の蛍光X線分析お

よび文献調査による材料組成データについて、前節 3.3.2 の材料選定評価システムの材料デ

ータベースに集約した。組成データは元素同士の相関や濃度による材料の抽出など行うこ

とが可能である。平成 20 年度も継続してデータベースの拡充を図る。 3.4.3 難測定核種の検討 平成 19 年度は、前年度成果を踏まえて、129I(AMS:加速器質量分析)および 41Ca(X

線計測、RIMS:レーザー共鳴電離質量分析)の評価試験を行った。14C(AMS)および 36Cl(AMS)については、測定のための前処理確認とブランクテストを行った。

1)①照射した標準岩石 JG-1 中の 152Eu、60Co を測定し、照射場における熱中性子束の計算。②試料を溶融し、担体と

してヨウ化(127I)銀を加え、129I を抽出。③ヨウ化(129I /127I)銀試料の作成。④AMS による 129I の測定。⑤測定と計

算の比較。

2) ①照射した石灰岩中の 152Eu、60Co を測定し、照射場における熱中性子束の計算。②陰イオンおよび陽イオン交換樹

脂によるカルシウムの分離回収。③装置の汚染低減を目的とした陽イオン交換樹脂によるユーロピウムとの分離。④質

量分析装置の改良。⑤RIMS による測定と計算の比較。

平成 20 年度は、AMS による 129I の測定結果をまとめ、41Ca の による測定と 14C および

36Cl についての測定を行い、これまでの成果をまとめる予定である。

平成 19 年度は

①の標準岩石

の測定および

②の石灰岩測

定を試みた。③,④については

20 年度に試験

を予定。

①コンクリート中の 129I の測定方法の確立と計算値との比較(AMS による測定)1)

②コンクリート中の 41Ca の測定方法の確立と計算値との比較(X 線、RIMS による測定)2)

③コンクリート中の 14C の測定方法の確立と計算値との比較 19 年度に前処理確認試験、

④コンクリート中の 36Cl の測定方法の確立と計算値との比較 20 年度に測定試験

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33

4. 平成 19 年度技術開発成果のまとめ

4.1 全体のまとめ

(1)原子力施設用の低放射化コンクリート実用化開発

ABWR 原子炉遮蔽壁(RSW)については、現状の L2 区分を全て L3 区分以下にするために、1/300

低放射化重量モルタルの施工性の改善、材料分離抵抗性の向上、水和熱のさらなる抑制、耐久性評価など

の試験を行った。その結果、昨年度に開発した低放射化 CAS 系混和材を使用した重量モルタルは、ハイ

アルミナセメントモルタルで課題としていた流動性を改善し、水和発熱を低減することができる等、実用

化へ向けて前進した。ABWR 生体遮蔽壁(BSW)については、低放射化混和材を使用した 1/50 低放射

化コンクリートの代替で、BSW 部位のほぼ全てをクリアランスレベル以下にできることがわかった。

APWR 遮蔽壁については、低放射化 CAS 系混和材の中性化に対する抵抗性を評価し、この混和材を使

用したセメントは普通セメントに比べて中性化が早く、中性化抑制策が必要であることを明らかにした。

本混和材を用いたハイアルミナセメントコンクリートでは中性化が一般のコンクリートよりも早いため、

直接大気に触れる構造の場合は、鉄筋の腐食に注意が必要であることが判った。しかし、中性化は、現在

盛んに検討されている鋼板コンクリートのような充填コンクリートの場合には大きな問題は無いと考えら

れる。一方、鋼板コンクリートは充填後の収縮が問題となるが、本混和材を用いた場合には収縮量の低減

が図れており、大きな改善が見込める。また、他の骨材等を厳選して、水和熱抑制技術を活用したコンク

リート製造試験を行った。L2→L3 用低放射化コンクリートとして、アルミナ系骨材を使用したコンク

リートが有力候補となった。

コスト低減効果の評価システム開発では、低放射化コンクリートを適用した場合、ABWR で 20 億円/

基、APWR で 10 億円/基の処分コスト削減効果が期待できると試算された。

(2)低放射化材料の創製

低放射化セメントの開発については、18 年度に行った製造試験結果を踏まえ、石灰石原料以外の 適

化や実用化にあたっての課題の抽出およびその対策などについて検討した。併せて、試製セメントの評価

を行い、標準化や規格化に向けて品質のバラツキに対応した検討を行った。また、低放射化型低熱ポルト

ランドセメントの製造試験に関しては JIS 低熱ポルトランドセメントの規格内に納めることができ、コ

ンクリート試験ができる量(2 トン程度)の試製に成功した。本セメントは、世界初の発明であり、類を

見ない、まったく新しい概念から創られた画期的なセメントである。ハイアルミナセメントに関しては、

低放射化 CAS 系混和材の添加で、多くの課題が解決できるということが分ったので、混和材のさらなる

組成や粒度の 適化ならびに実機製造(8 トン)を行い、量産時の問題点を整理するとともに、モルタル

試験で流動性の改善や収縮量の低減を確認した。

低放射化鉄筋の創製に関しては,Fe-Mn 合金からの Co の混入など、高炉プロセス全体での放射化標

的元素を含む微量元素のマテリアルバランスを解明することで、高炉鉄筋を 1/30 以下の低放射化とする

ための製造上の課題、実現性について検討した。さらに、小規模溶解により Co 以外の微量元素(Ni、

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Cr 及び Mo)を従来材と同等量に制御して製造した低放射化鉄筋の接合性に関する評価検討を行った。

その結果、小規模溶解により Co 以外の微量元素を従来材と同等量に制御して製造した低放射化鉄筋は従

来の鉄筋と同等の接合性能(引張特性及び曲げ性)を有しており、使用性能上の問題ないことが明らかに

なり、目標の低放射化鉄筋を製造することが可能であることが示された。

低放射化中性子遮蔽材料の創製については、B4C 添加によるコンクリート試験とボロン溶出試験を行

い、ボロン入りコンクリートとしての基本的な健全性を確認した。

(3)低放射化設計法の開発

材料データベースの構築と連携し、化学組成データ等を更新するとともに、材料組合せによる放射化の

シミュレーション機能を付加し、原材料の成因によるデータのばらつきを調査した。区分マップ作成シス

テムに関しては、選択した材料(コンクリート、鉄筋ごとに)について、廃棄物レベル区分を迅速に評価

するシステムを作成した。

(4)クリアランスレベルなどの区分判断用材料データベースの構築

低放射化設計法を確立するための基礎データとして、コンクリート材料など約 500 種類の材料につい

て、放射化分析、ICP-AES、ICP-MS などで分析し、材料データベースの拡充をはかった。また、難測

定核種に関しては、129I(加速器質量分析)および 41Ca の評価試験を行った。14C および 36Cl については、

測定のための前処理確認とブランクテストを行った。

4.2 今後の計画

(1)原子力施設用の低放射化コンクリート実用化開発

ABWR 原子炉遮蔽壁への適用を目指した開発

19 年度成果に基づき、主に L2→L3 低放射化重量モルタルについて、電融アルミナ骨材を使用した重

量モルタルの施工性の改善、材料分離抵抗性の向上、耐久性評価などの試験を行い、これまでの成果をま

とめる。

ABWR 生体遮蔽壁への適用を目指した開発

終候補として、低放射化混和材を使用した 1/50 低放射化コンクリートが挙げられた。この低放射化

コンクリートの代替で、ほとんどの BSW 部位をクリアランスレベル以下にできる。新セメントを用いた

コンクリート製造試験を行い、その有用性を確認するとともに、仕様作成に向けたデータを取得蓄積し、

これまでの成果をまとめる。

APWR 遮蔽壁への適用を目指した開発

これまでの研究で、 終候補として L2→L3 用の低放射化コンクリートが挙げられ、大幅なコストダウ

ンが可能である。鋼板コンクリートを想定して、新混和材を用いたコンクリート製造試験を行い、仕様作

成に向けたデータを取得蓄積し、これまでの成果をまとめる。

低放射化材料適用によるコスト低減効果の評価

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平成19年度に行ったABWR、APWRそれぞれのモデルプラントの二次元中性子束)解析と放射化解析に

よる評価を踏まえ、低放射化材料の適用が有効な範囲を詳細に検討し、コスト低減効果の検討を行う。

(2)低放射化材料の創製

低放射化型低熱ポルトランドセメントの創製

平成 19 年度のミニキルンによる低放射化型低熱ポルトランドセメント製造試験結果を踏まえ、さらな

る石灰石原料以外の 適化や実機生産にあたっての課題の抽出およびその対策などについて検討する。併

せて、各種評価試験、モルタル試験(安定性、強度、フロー、凝結、水和熱、寸法安定性、など)を行い、

標準化や規格化に向けて品質のバラツキに対応した検討し,JASS5N 等への適応できるデータを収集す

る。またサンプルを用意して多くのユーザーに評価してもらい,市場性について調査する。

ハイアルミナセメント用低放射化 CAS 系混和材の創製

平成 19 年度の成果を基に、低放射化 CAS 系混和材を用いたモルタル・コンクリートの製造試験、コス

ト・低放射化性能の評価、製造課題の抽出、解決策の検討等を行う。

低放射化鉄筋の創製

平成 19 年度までの成果に基づき、低放射化のための低 Co 鉄筋製造上及び性能上の課題等を整理し、

製造方案作成の検討を行う。高炉鉄筋については、高炉プロセスでの微量元素の物質収支に関する基礎実

験や、微量元素混入に関する耐火物等の影響等の実製造時の要因について検討してきた結果に基づき、高

炉鉄筋の低 Co 化の限界評価と、そのための製造上の課題について検討する。

低放射化中性子遮蔽材料の創製

B4C 入りの各種低放射化コンクリートについて、ボロン溶出量を評価するなど仕様作成に向けたデー

タを取得し、これまでの成果をまとめる。

(3)低放射化設計法の開発

放射化した廃棄物の処理処分区分マップ作成システムの開発

平成19年度の成果に対して、プラント内の各場所の中性子スペクトルデータや材料選定評価システムか

らの材料データを使い処理処分コスト評価まで行うシステムを完成させる。

材料選定評価システムの開発

平成 19 年度までの成果に基づき、完成させる評価版の材料選定評価システムを利用者の観点から検証

し、追加するべき仕様を抽出する。また、材料データベースの構築作業により得られる基礎データを追加

更新する。

(4)クリアランスレベルなどの区分判断用材料データベースの構築

データベースの構築

平成 19 年度に引き続き、低放射化設計法を確立するための基礎データとして、標準材料、コンクリー

ト材料、鉄筋などの材料について、放射化分析(JRR-3 および JRR-4)、ICP-AES、ICP-MS などで分

析し、材料データベースの拡充をはかる。これまでは Co, Eu など主要標的元素の分析であったが、 終

年度は、各種低放射化コンクリートおよびその原料約 60 種類(低放射化骨材および新低放射化セメント、

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新低放射化混和材など)について、クリアランス規制核種の標的元素について検証試験を行う。さらに、

現在までに収集した材料(1,000 種類以上)を系統的に整理しデータベース化するとともに、材料選定評

価システムとリンクさせ、より有用なデータベース・システムを構築するとともに、同システムの効果的

な公開に向けた検討を行う。

難測定核種の評価

AMS による 129I の測定結果をまとめ、41Ca の測定と 14C および 36Cl についての測定を中心に試験を

行い、これまでの成果をまとめる。

4.3 得られた成果に関する自己評価

平成 19 年度もいくつかの項目で当初の計画を大幅に上回る成果を上げた。例えば、開発できた低放射

化型低熱ポルトランドセメントのクリンカの構成は、これまでの学問上の常識をひっくり返すような画期

的なものであった。また、開発された低放射化 CAS 系混和材も、数 10 年来不可能とされてきたアルミ

ナセメントの長期強度低下問題を根本から解決するという画期的なものである。低放射化鉄筋の開発でも、

高炉鉄筋で現状の鉄筋の 1/30 の低放射化の鉄筋の製造が可能であり、再利用のシナリオが見えてきた。

いずれの材料開発も日本から世界に発信できる画期的なものである。また、分析した材料数も約 500 と

当初の計画を大きく上回った。これらの成果は、低放射化設計を弾力的かつ飛躍的に向上させていくもの

と期待している。当初目標として設定していた、ABWR の RSW の L2→L3、BSW の L3→クリアラン

ス、APWR 一次遮蔽壁のL2→L3 は、クリアできそうであり、ゴールは目前である。

本事業は、材料学とニュートロニクスの複合領域に関する研究の試みであり、本事業の進行により低放

射化設計学という新しい工学分野の確立に向けて大きく前進したものと考えている。さらに本開発は、放

射性廃棄物の低減に大きく寄与し、循環型社会の形成および六ヶ所などの処分場の長寿命化にも貢献する

ものと考える。