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1 パワーモジュールの 熱性能・信頼性評価に必要な 過渡熱抵抗評価方法 大阪大学 大学院工学研究科 電気電子情報工学専攻 教授 舟木 202024

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  • 1

    パワーモジュールの熱性能・信頼性評価に必要な過渡熱抵抗評価方法

    大阪大学 大学院工学研究科

    電気電子情報工学専攻

    教授 舟木 剛

    2020年2月4日

  • 2

    研究分野

    創エネ・省エネに必要なパワーエレクトロニクス

    パワエレ機器の高性能化と適用分野の拡大

    電気自動車

    航空機電鉄

    太陽光

    風力

  • 3

    技術背景

    パワーデバイス デバイス構造設計 新材料の適用

    パッケージ技術 熱性能 信頼性

    EMC設計 ノイズ対策

    低放射ノイズ 高ノイズ耐性

    受動部品 コンデンサ リアクトル

    パワエレ機器

    小型化に対応した低熱抵抗設計に対する評価法が必要

  • 4

    過渡熱抵抗測定の基礎

    ジャンクション温度とその推定

    熱容量と熱抵抗

    ICモールド内にある半導体チップ温度

    接合部

    モジュール基板

    樹脂モールドI/V特性

    静的な熱抵抗測定では非破壊で各部の熱抵抗をに分解できない半導体チップの定電流に対する電圧の時間応答の測定によりチップ接合部ジャンクション温度の時間応答を推定→内部構造を反映する熱容量と熱抵抗に関する情報を得る

    RC1, CC1

    RC2, CC2

    RC3, CC3

    パワーデバイス

  • 5

    半導体パッケージの過渡熱回路モデルチップ

    パターン銅はんだ

    グリースヒートシンク

    ベース銅絶縁層

    Thermal resistance 𝑅𝑡ℎ [K/W]

    Th

    erm

    al c

    apac

    itan

    ce 𝐶𝑡ℎ

    [Ws/

    K]

    グリース

    𝑅𝑡ℎ1

    𝐶𝑡ℎ1チップ

    はんだ銅

    絶縁層

    ヒートシンク

    𝐶𝑡ℎ2

    𝐶𝑡ℎ3

    𝐶𝑡ℎ4

    𝐶𝑡ℎ5

    𝐶𝑡ℎ6

    𝐶𝑡ℎ7

    𝑅𝑡ℎ2 𝑅𝑡ℎ3 𝑅𝑡ℎ4 𝑅𝑡ℎ5 𝑅𝑡ℎ6 𝑅𝑡ℎ7

    𝑅𝑡ℎ𝑖 =

    𝑘=1

    𝑖

    𝑅𝑐𝑘

    𝐶𝑡ℎ𝑖 =

    𝑘=1

    𝑖

    𝐶𝑐𝑘

  • 6

    過渡熱回路モデルの測定手順

    電流

    電圧

    ジャンクション温度応答

    測定電流

    加熱電流

    冷却応答

    加熱応答

    電圧応答を記録

    温度 [度]順方向電圧

    [V]

    @微小定電流

    ・半導体チップの電流-電圧特性の変化よりジャンクション温度の時間応答を推定(冷却時の定電流に対する電圧変化から推定)・半導体パッケージ内部の熱抵抗・熱容量の構造を反映した応答

  • 7

    従来技術により得られる構造関数パワーモジュールを構成する部材の物性値とモジュール構造の対応から理論的に得ることのできない界面熱抵抗を実験的に同定することが可能

  • 8

    従来技術の特徴熱性能評価:Static法に基づく過渡熱抵抗測定法

    (JEDEC JESD51-14)

    評価装置:T3Ster(Mentor Graphics)

    • パワーデバイスのI-V特性の

    温度依存性を利用した温度測定

    • 電気的に推定したジャンクション温度𝑇𝐽から

    過渡熱回路モデルパラメータ(構造関数)を同定

  • 9

    過渡熱解析技術①データ取得

    • サンプリング後、区間間引き処理が必要

    • データ過大となるため

    𝑡

    1MHz 500kHz 250kHz

    𝑡

    例)1MHzサンプリング

  • 10

    ②時間スケール変換

    • 過渡熱回路モデル同定に線形時間領域から対数時間領域への変換が必須(𝑧 = ln 𝑡)

    対数時間領域における信号処理方法が重要

    1MHz 500kHz 250kHz

    𝑧

    𝑧 = ln 𝑡

    𝑡

    過渡熱解析技術

  • 11

    ③信号処理

    • 対数時間領域でノイズ除去&リサンプリング

    • 移動平均フィルタなど

    • 間引きデータに対するフィルタ処理では効果不足

    𝑧

    𝑧

    ①移動平均フィルタ②リサンプリング

    過渡熱解析技術

  • 12

    従来技術の課題点

    1. 時間スケール変換のため移動平均フィルタの効果が小さい

    2. 数値微分による残留ノイズの顕在化

    高精度な解析処理アルゴリズムが必要

    高い放熱性能を有する半導体パッケージの正確な評価が困難

  • 13

    新技術で採用した信号処理

    • 対数周波数領域におけるノイズ除去

    • 不等間隔フーリエ変換により周波数領域に変換

    • 逆フーリエ変換時にリサンプリング

    𝑧

    𝑧 対数周波数振幅

    ①不等間隔フーリエ変換

    ③逆フーリエ変換(リサンプリング)

    ②ノイズ除去

  • 14

    新技術と従来技術の比較

    従来技術 新技術

    ノイズ除去時間領域

    (移動平均フィルタ)

    周波数領域(不等間隔フーリエ変換

    &高周波成分除去)

    リサンプリング(𝑡→𝑧 = ln 𝑡)

    時間領域周波数領域

    (逆フーリエ変換)

    提案アルゴリズムにより、従来技術と比べてさらなるノイズ低減を可能にした

  • 15

    新技術の特長 ①測定雑音に強い

    -2

    -1.5

    -1

    -0.5

    0

    0.5

    1

    1.5

    2

    2.5

    1.E-06 1.E-03 1.E+00

    da

    /dz

    t [s]

    測定データ(黒)

    0

    0.05

    0.1

    0.15

    0.2

    0.25

    0.3

    1.E-06 1.E-03 1.E+00

    da

    /dz

    t [s]

    新技術(赤)

    従来技術(青)

    図:測定したジャンクション温度応答の微分値 図:ノイズ除去後の微分値

    移動平均フィルタ信号処理ではデータ間引き時に対数時間領域に変換の影響が現れやすい。新技術では不等間隔フーリエ変換により一旦周波数領域に変換して高周波ノイズ成分を除去し、逆フーリエ変換することでノイズ低減が図れる

  • 16

    既知ノイズ強度(SNR)を有するデータでの効果

    新技術によるノイズ低減効果:大

    SNR 新技術 従来技術

    -60dB 5.02× 10−5 2.24× 10−4

    -46dB 2.40× 10−4 5.93× 10−4

    -40dB 3.39× 10−4 1.08× 10−3

    -26dB 8.02× 10−3 1.01× 10−2

    表:理想的なジャンクション温度応答の数値微分値に対するノイズ低減効果(平均二乗誤差)

  • 17

    新技術の特長②高精度の構造関数パラメータ抽出

    1.E-02

    1.E+00

    1.E+02

    1.E+04

    1.E+06

    1.E-07

    1.E-05

    1.E-03

    1.E-01

    1.E+01

    1.E+03

    1.E+05

    0.0 0.5 1.0 1.5 2.0

    k[W

    2s/K2]

    Cth

    [Ws/

    K]

    Rth [K/W]

    図:従来技術および新技術により算出される構造関数

    • 複雑なモジュール構造でも熱性能評価が可能• 界面熱抵抗を評価するため数値微分値が明確に求まる

  • 18

    新技術の特長③汎用測定装置の適用が可能

    • 従来装置:1500万円~(専用ハード+解析ソフト)

    • 汎用装置:50万円~(市販装置の組み合わせ)

    ↑被測定デバイス

    電流遮断ユニット

    測定電流源加熱電流源

    制御および計測用PC

    計測器

    図:一般的な過渡熱抵抗測定装置の構成

  • 19

    • パワーモジュールの熱性能評価

    • パワーモジュールの信頼性評価

    想定される技術用途

    デバイス配置の最適設計へ適用

    図:マルチチップモジュール内部の熱干渉

    1.E-05

    1.E-03

    1.E-01

    1.E+01

    1.E+03

    0.0 0.5 1.0 1.5 2.0

    Cth

    [W

    s/K

    ]

    Rth [K/W]

    ダイアタッチ

    サイクル前サイクル後

  • 20

    実用化に向けた課題

    • 計算アルゴリズムの最適化

    • 従来手法と比べて若干計算時間がかかる(高速フーリエ変換を適用できないため)

    • GUI化

    • 使い勝手の向上

  • 21

    新技術の導入が有益となる企業

    • パワーモジュールを開発中

    • モジュール評価

    • モジュール材料分野への展開を検討中

    • 材料評価

    • パワーモジュール向け熱試験装置を開発中

    • 試験装置の開発

  • 22

    本技術に関する知的財産権

    • 発明の名称:

    過渡熱特性解析装置、解析方法及びプログラム

    • 出願番号:特願2019-127344号

    • 出願人:

    大阪大学1), 産業技術総合研究所2)

    • 発明者:

    福永崇平1), 舟木剛1), 加藤史樹2)

  • 23

    お問い合わせ先

    大阪大学共創機構 産学共創・渉外本部

    イノベーション戦略部門 産学官連携支援室

    TEL 06-6879-4875

    e-mail [email protected]

  • 24

    ご清聴ありがとうございました