シスコサポートコミュニティ live expert webcast - …...2014/02/28 ·...

シスコサポートコミュニティ Live Expert Webcast:

鈴木剛（Tsuyoshi Suzuki）グローバルナレッジネットワーク株式会社 Cisco認定インストラクター

2014年3月4日

OSPF入門

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鈴木剛 (Tsuyoshi Suzuki)

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投票質問 1

OSPFについて、どの程度ご存知でしょうか？

A) 実機でOSPFを設定したことがあり、細かい内容も理解している

B) 一通り学習したことがあり、設定もしたことがあるが、あまり自信が無い

C) 一通り学習して知識はあるが、設定をしたことが無い

D) 学習したことはあるが、よく分からなかった

E) 言葉は聞いたことがある


OSPF概要リンクステートプロトコルの動作

メトリック

エリア

ネイバー、DR/BDR

OSPFの設定基本設定

showコマンド

OSPFの応用テクニック再配送

スタブエリア

Agenda


1. OSPF概要


リンクステートプロトコルである

各ルータは、ネットワークの全体構成（トポロジ）を知っている

ネットワークの構成変更に対して、迅速に対応できる（収束が早い）

実環境でよく利用されている

他のルーティングプロトコルより、ルータにかかる負荷が高い

OSPFとは


リンクステートプロトコルの動作（1/2）

ルーティングテーブル

5

・ループは発生しない（ループフリー）・VLSMが可能

1 2

SPF アルゴリズム

3

SPFツリー

LSAの交換

OSPFルート

4

宛先ネットワークネクストホップメトリック

LSDB

OSPFエリア

LSA


① LSAと呼ばれるネットワークに関する情報を、ルータ間で交換する →全ルータが同じLSAを保持

② 各ルータは、収集した全てのLSAを使用して、ネットワークの全体構成を再現する

③ 全ての経路に対するベストパス（最適経路）を、SPFアルゴリズムで決定する →累積コストが最小の経路がベストパス

④ OSPFで学習することができた最適経路を、ルーティングテーブルへ載せる

⑤ ルーティングテーブル上で、OSPFで学習した経路の情報が確認できる →show ip routeコマンド

リンクステートプロトコルの動作（2/2）


メトリックとは、経路選択の判断基準である

OSPFのメトリック（1/2）

プロトコルメトリック

OSPF パスコスト

RIP ホップ数（経由するルータの数）

EIGRP 帯域幅と遅延

パスコストは、インターフェース毎に持つ

パスコスト＝ 100M （参照帯域幅）

インターフェースの帯域幅

設定変更可能設定変更可能

設定変更可能


OSPFのメトリック（2/2）

172.20.1.1

172.20.5.1

A

B R1

R2

R4

宛先ネットワーク 172.20.5.0/24

172.20.1.0/24

宛先ネットワーク中継先コスト

172.20.5.0/24 R2 20

172.20.5.0/24 R4 35

コスト：5

コスト：30

コスト：10

コスト：5

R3

コスト：5

ルート情報

172.20.5.1 へのルート

IP

宛先ＩＰ: 172.20.5.1


投票質問 2

R3は、ネットワーク10.1.1.0/24へのパスコストをいくつと認識するでしょうか？（正解は1つ）

A) 40

B) 60

C) 100

R1 R2 R3

Cost 10

エリア0

Fa0/0

Cost 20 Cost 30 Cost 40 10.1.1.0/24

D) 41

E) 61

F) 101


OSPFのエリア（1/2）

OSPFは、エリア内の詳細な地図情報（トポロジ）を持つ

どのルータとどのルータが繋がっているか

ネットワークのタイプ（イーサネット or ポイントツーポイント）

メトリック

1つのエリアで構成すると、LSDBのサイズが大きくなり、ルータに負荷がかかるため、大規模なネットワークに対応できない

エリア 0

サイズの大きな LSDB


OSPFのエリア（2/2）

エリアを分割することで、LSDBのサイズを小さくすることができる

自分が所属するエリアについては、詳細な地図情報を作成する

他のエリアについては、地図情報ではなく、地図を要約したネットワーク情報（例：192.168.1.0/24）を持つ

バックボーンはエリア0

その他のエリアは、エリア0に直接接続すること

サイズの小さい LSDB

エリア0

エリア境界ルータ(ABR)

エリア１エリア2

エリア3


OSPFネイバー

• LSAを交換する前に、Helloパケットを使ってネイバー関係を確立する

• Helloパケットは、マルチキャスト（224.0.0.5）を使用して送られる

Helloパケット

Helloパケット

ルータID Helloとdeadの間隔* ネイバーエリア番号* ルータプライオリティ DR/BDRのIPアドレス認証パスワード* スタブエリアフラグ*

*のある項目は、ネイバー関係を確立するために一致する必要がある


マルチアクセスネットワークにおける代表ルータ（DR）の概念（1/2）マルチアクセスネットワークでは、LSAの交換を効率的におこなうために、代表ルータ（DR）が選出される代表ルータ（DR）

バックアップ代表ルータ（BDR）

それ以外のルータ（DROTHER）

1

LSA

DR BDR DR BDR 2


マルチアクセスネットワークにおける代表ルータ（DR）の概念（2/2）ネイバー関係には2種類ある

FULL状態（Adjacency関係）： LSAを直接交換する

• DRとBDR、DRとDROTHER、BDRとDROTHER

Two-Way状態（Neighbor関係）： LSAをDR経由で交換する

• DROTHER同士 DR BDR

DROTHER DROTHER DROTHER

FULL

Two-Way


ルータは、下記の手順でルータIDを決定する

① インターフェースのプライオリティが最大（プライオリティは0～255で、0の場合は必ずDROTHERになる）

② ルータIDが最大

DR、BDRの決定手順

DR

BDR DROTHER

DROTHER

DR

BDR

DR、BDRはセグメント単位で決定される（ルータ単位ではない）


Helloを交換してネイバー確立、DRの決定、LSAの交換などのプロセスにおいて、順に状態が遷移する

【参考】OSPFの状態遷移

状態（state）状態の説明

DOWN 有効なネイバーを検出していない

INIT Helloパケットを受信した

TWO-WAY* Helloを交換して、ネイバー関係を確立した

EXSTART LSAの交換順序が決定された

EXCHANGE LSAを交換している

LOADING トポロジを再現し、SPF計算を実行している

FULL* ルーティングテーブルが完成した

*以外の状態で留まっている場合、異常が発生していると考えられる


2. OSPFの設定


OSPFの基本設定（シングルエリアの設定例1）

R1 R2 R3

10.1.1.0/24 10.2.2.0/24 192.168.1.0/24 172.16.1.0/24

.1 .1 .2 .2 .3 .3

エリア0

router ospf 1

network 10.1.1.2 0.0.0.0 area 0

network 10.2.2.2 0.0.0.0 area 0

「router ospf 1」の1はプロセス番号（process-id）と呼ばれ、ルータ内でOSPFというプロセスを識別するための数値である

他のルータと合わせる必要はない


投票質問 3

【やや難】 OSPFのnetworkコマンドについて、正しい記述はどれでしょう？（正解は1つ）

A) OSPFで扱うネットワークを指定するコマンドである

B) OSPFを有効にするインターフェースを指定するコマンドである

C) ルータのインターフェースに設定されているIPアドレスを設定するコマンドで、サブネットマスクも正しく入力しなければならない

D) OSPFを設定する時、networkコマンドは必須である


OSPFの基本設定コマンド

network address wildcard-mask area area-id

OSPFを有効にしたいインターフェースに設定されているIPアドレスが含まれるように、networkコマンドを設定する

networkコマンドではなく、「ip ospf 1 area 0」コマンドを使用してもよい

router ospf process-id

プロセス番号（process-id）を指定して、OSPFを有効にする

RouterX(config)#

RouterX(config-router)#

OSPFの設定


OSPFの基本設定（シングルエリアの設定例2）

R1 R2 R3

10.1.1.0/24 10.2.2.0/24 192.168.1.0/24 172.16.1.0/24

.1 .1 .2 .2 .3 .3

エリア0

router ospf 1

network 10.1.1.2 0.0.0.0 area 0

interface FastEthernet 0/1

ip ospf 1 area 0

Fa0/0 Fa0/1


ワイルドカードマスクは32bitで表記され、IPアドレスのどこを読み取るかを指定する。「0」のbitは一致する必要があり、「1」のbitは一致しなくてもよい。

① IPアドレスが10.1.1.1のインターフェースでのみ、OSPFが有効になる

② IPアドレスが10.0.0.0～10.0.0.3の範囲内にあるインターフェースで、OSPFが有効になる

③ IPアドレスの第3オクテットが1であるインターフェースで、OSPFが有効になる ※実環境で設定することは、通常ありません

【補足】ワイルドカードマスクについて

network 10.1.1.1 0.0.0.0 area 0

network 10.1.1.0 0.0.0.3 area 0

network 10.1.1.1 255.255.0.255 area 0


show ip ospf neighbor

ネイバーとの状態が確認できるため、設定後すぐに入力することが多い

show ip ospf

OSPFプロセス番号やルータIDなど、OSPFに関する一通りの情報が確認できる

show ip protocols

ルーティングプロトコルの稼働状況が確認でき、主に、ルーティングコンフィグレーションモードで設定した情報の確認ができる

show ip ospf interface Fastethernet 0/0

OSPFの中で、パスコストなどインターフェース固有の情報が確認できる

show ip route ospf

ルーティングテーブルの中で、OSPFで学習した経路のみ表示する

OSPFのshowコマンド（1/6）


OSPFのshowコマンド（2/6）～ show ip ospf neighbor ～

R1 R2 R3

10.1.1.0/24 10.2.2.0/24 192.168.1.0/24 172.16.1.0/24

.1 .1 .2 .2 .3 .3

エリア0

R2#show ip ospf neighbor

Neighbor ID Pri State Dead Time Address Interface

192.168.1.3 1 FULL/BDR 00:00:36 10.2.2.3 FastEthernet0/1

172.16.1.1 1 FULL/DR 00:00:32 10.1.1.1 FastEthernet0/0


OSPFのshowコマンド（3/6）～ show ip ospf ～

R1 R2 R3

10.1.1.0/24 10.2.2.0/24 192.168.1.0/24 172.16.1.0/24

.1 .1 .2 .2 .3 .3

エリア0

R2#show ip ospf

Routing Process "ospf 1" with ID 10.2.2.2

Start time: 00:02:03.588, Time elapsed: 00:13:34.400

（途中省略） Area BACKBONE(0)

Number of interfaces in this area is 2

Area has no authentication

SPF algorithm last executed 00:12:29.800 ago

SPF algorithm executed 3 times

（以下略）


OSPFのshowコマンド（4/6）～ show ip protocols ～

R1 R2 R3

10.1.1.0/24 10.2.2.0/24 192.168.1.0/24 172.16.1.0/24

.1 .1 .2 .2 .3 .3

エリア0

R2#show ip protocols

Routing Protocol is "ospf 1"

Outgoing update filter list for all interfaces is not set

Incoming update filter list for all interfaces is not set

Router ID 10.2.2.2

Number of areas in this router is 1. 1 normal 0 stub 0 nssa

Maximum path: 4

Routing for Networks:

10.1.1.2 0.0.0.0 area 0

10.2.2.2 0.0.0.0 area 0

Reference bandwidth unit is 100 mbps

Routing Information Sources:

Gateway Distance Last Update

192.168.1.3 110 00:15:14

172.16.1.1 110 00:15:59

Distance: (default is 110)


OSPFのshowコマンド（5/6）～ show ip ospf interface fastethernet 0/0 ～

R1 R2 R3

10.1.1.0/24 10.2.2.0/24 192.168.1.0/24 172.16.1.0/24

.1 .1 .2 .2 .3 .3

エリア0

R2#show ip ospf interface fastEthernet 0/0

FastEthernet0/0 is up, line protocol is up

Internet Address 10.1.1.2/24, Area 0

Process ID 1, Router ID 10.2.2.2, Network Type BROADCAST, Cost: 10

Transmit Delay is 1 sec, State BDR, Priority 1

Designated Router (ID) 172.16.1.1, Interface address 10.1.1.1

Backup Designated router (ID) 10.2.2.2, Interface address 10.1.1.2

Timer intervals configured, Hello 10, Dead 40, Wait 40, Retransmit 5

（以下略）


OSPFのshowコマンド（6/6）～ show ip route ospf ～

R1 R2 R3

10.1.1.0/24 10.2.2.0/24 192.168.1.0/24 172.16.1.0/24

.1 .1 .2 .2 .3 .3

エリア0

R2#show ip route ospf

172.16.0.0/32 is subnetted, 1 subnets

O 172.16.1.1 [110/11] via 10.1.1.1, 00:19:39, FastEthernet0/0


O 192.168.1.3 [110/11] via 10.2.2.3, 00:18:55, FastEthernet0/1


3. OSPFの応用テクニック


OSPFで、他のルータへ通知するネットワーク情報は下記2点のみである

OSPFで学習したネットワーク

OSPFが有効なインターフェースが所属するネットワーク

再配送（1/2）

スタティックルートやEIGRPなど他のルーティングプロトコルのネットワークをOSPFで扱うには、再配送（Redistribution）を設定する


再配送（2/2）

R1 R2 R3

10.1.1.0/24 10.2.2.0/24 192.168.1.0/24 172.16.1.0/24

.1 .1 .2 .2 .3 .3

OSPF エリア0

router ospf 1

log-adjacency-changes

redistribute rip subnets

network 10.2.2.3 0.0.0.0 area 0

RIP

OSPFへ再配送する時、subnetsオプションをつけないとサブネット化されていないネットワークのみ再配送する

OSPFの用語で、境界となるR3をASBRと呼ぶ

再配送


ルータの持つLSDBを小さくし、負荷を軽減する目的で使用される

スタブエリア内のルータは、OSPFではない外部ルートは学習せず、デフォルトルートを学習する

※スタブ（stub）とは「袋小路」という意味を持ち、出口が1つしかないネットワークを示す

OSPFスタブエリア（1/5）


OSPFスタブエリア（2/5）～スタブエリア設定前～

R1 R2 R3

10.1.1.0/24 10.2.2.0/24

192.168.1.0/24 192.168.2.0/24 192.168.3.0/24

172.16.1.0/24

.1 .1 .2 .2 .3

OSPF エリア1（標準エリア）

router ospf 1


network 10.1.1.2 0.0.0.0 area 1

network 10.2.2.2 0.0.0.0 area 0

RIP OSPF エリア0

router ospf 1


network 10.1.1.1 0.0.0.0 area 1

network 172.16.1.1 0.0.0.0 area 1


OSPFスタブエリア（3/5）～スタブエリア設定前～

R1 R2 R3

10.1.1.0/24 10.2.2.0/24

192.168.1.0/24 192.168.2.0/24 192.168.3.0/24

172.16.1.0/24

.1 .1 .2 .2 .3

OSPF エリア1（標準エリア） RIP OSPF エリア0

R1#sh ip route


C 172.16.1.0 is directly connected, Loopback1


O IA 10.2.2.0 [110/20] via 10.1.1.2, 00:07:05, FastEthernet0/0

C 10.1.1.0 is directly connected, FastEthernet0/0

O E2 192.168.1.0/24 [110/20] via 10.1.1.2, 00:00:35, FastEthernet0/0



「O IA」は、別エリアのネットワークであることを示す「O E2」は、別のルーティングプロトコル（外部ルート）であることを示す


OSPFスタブエリア（4/5）～スタブエリア設定後～

R1 R2 R3

10.1.1.0/24 10.2.2.0/24

192.168.1.0/24 192.168.2.0/24 192.168.3.0/24

172.16.1.0/24

.1 .1 .2 .2 .3

OSPF エリア1（スタブエリア）

router ospf 1


area 1 stub

network 10.1.1.2 0.0.0.0 area 1

network 10.2.2.2 0.0.0.0 area 0

RIP OSPF エリア0

router ospf 1


area 1 stub

network 10.1.1.1 0.0.0.0 area 1

network 172.16.1.1 0.0.0.0 area 1

スタブエリアの設定は、エリア内の全てのルータで設定するもし、片側のルータのみスタブエリアの設定をすると、ネイバーが確立できない（ネイバー条件である、スタブエリアフラグが一致しないため）


OSPFスタブエリア（5/5）～スタブエリア設定後～

R1 R2 R3

10.1.1.0/24 10.2.2.0/24

192.168.1.0/24 192.168.2.0/24 192.168.3.0/24

172.16.1.0/24

.1 .1 .2 .2 .3

OSPF エリア1（スタブエリア） RIP OSPF エリア0

R1#show ip route

Gateway of last resort is 10.1.1.2 to network 0.0.0.0


C 172.16.1.0 is directly connected, Loopback1


O IA 10.2.2.0 [110/20] via 10.1.1.2, 00:05:01, FastEthernet0/0

C 10.1.1.0 is directly connected, FastEthernet0/0

O*IA 0.0.0.0/0 [110/11] via 10.1.1.2, 00:05:01, FastEthernet0/0

RIPドメイン内のネットワークは表示されず、代わりに0.0.0.0/0というデフォルトルートが登録された（ルーティングテーブルが小さくなった）


スタブエリアを設定するためには、下記の条件を満たす必要がある

エリア0ではない

エリア0に接続するルータ（ABR）が存在する

他のルーティングプロトコルのネットワークに接続しておらず、袋小路である（ASBRが存在しない）

仮想リンクがエリアを通過しない

エリア内の全てのルータが、スタブルータに設定される

【参考】スタブエリアのルール


OSPF概要リンクステートプロトコルの動作

メトリック

エリア

ネイバー、DR/BDR

OSPFの設定基本設定

showコマンド

OSPFの応用テクニック再配送

スタブエリア

まとめ


Q&A


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今日聞けなかった質問は、今回のエキスパートが担当するエキスパートに質問（ 3月5日～ 3月16日まで開催）へお寄せください！ https://supportforums.cisco.com/thread/2270366 Webcastの内容やQ&Aドキュメントは、本日より5営業日以内にこのサイトへ掲載いたします。 https://supportforums.cisco.com/community/csc-japan/expert-corner#view=webcasts


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