マネースクウェア・ジャパンmorningstar...1 モーニングスター(株) 藤井 会...

13
1 マネースクウェア・ジャパン 8728JASDAQ スタンダード) モーニングスター(株) 藤井 知明 資産運用としてのFX取引を提唱 「FXは運より運用だ」というのは当社のTVCMで使われている フレーズだが、当社の経営方針をよく表している。ハイリスク・ハイ リターンなイメージの強いFX取引において、「資産運用としてのFX 取引」を提唱し、サービスを展開。具体的には、セミナー・コンサル ティングなどの投資教育に加え、独自の取引手法である「トラップリ ピートイフダン」などの仕組みを提供。顧客が安定的な収益を目指せ るような体制を構築しており、その評価の高まりとともに、顧客基盤 は徐々に拡大しつつある。 FX業界としては、証拠金規制の強化によりレバレッジが制限され るなど、徐々に他社との差別化が難しくなりつつある。そのなかで、「ト ラップリピートイフダン」など特許を取得した取引手法を持つ当社に は優位性が感じられる。これまでは認知度の低さもあって伸び悩んで いたイメージだが、当社のサービスに対する顧客の利用満足度は高く、 他者への紹介経験や紹介意向も高い模様。今後は認知度の向上ととも に一段と成長が期待される。 改正を求めていたFX税制についても、2012 1 月からは「取引所 取引」との差がなくなる見通し。外部環境も好転しつつある。 東京都中央区 山本 久敏 2002/10 1,224 百万円 2010/09/30 現在) 2007/10/25 http://www.m2j.co.jp/ 証券、商品先物取引業 独自の取引手法とサービスを展開するFX会社 【業績動向】 営業収益 前年比 営業利益 前年比 経常利益 前年比 当期純利益 前年比 EPS 百万円 百万円 百万円 百万円 2010/3 1,183 -16.1 -199 赤転 -245 赤転 -347 赤転 -6,887.32 2011/3 (未定として発表) - - - - - - - - - アナリスト予想 1,790 51.3 270 黒転 260 黒転 150 黒転 3,003.72 2012/3 アナリスト予想 2,040 14.0 380 40.7 360 38.5 230 53.3 4,605.71 JASDAQアナリストレポート・プラットフォーム<ベーシックレポート> 2011 1 26 主要指標 2011/01/24 現在 33,050 発行済株式数 54,591 1 1,804 百万円 未定 予想 EPS (アナリスト) 3,003.72 実績 PBR 0.57

Upload: others

Post on 02-Oct-2020

0 views

Category:

Documents


0 download

TRANSCRIPT

Page 1: マネースクウェア・ジャパンMorningStar...1 モーニングスター(株) 藤井 会 社 概 主要指標 発行済株式数 売 買 単 位 予 想 配 当 マネースクウェア・ジャパン

1

マネースクウェア・ジャパン(8728・JASDAQスタンダード)

モーニングスター(株)

藤井 知明

■ 資産運用としてのFX取引を提唱

「FXは運より運用だ」というのは当社のTVCMで使われている

フレーズだが、当社の経営方針をよく表している。ハイリスク・ハイ

リターンなイメージの強いFX取引において、「資産運用としてのFX

取引」を提唱し、サービスを展開。具体的には、セミナー・コンサル

ティングなどの投資教育に加え、独自の取引手法である「トラップリ

ピートイフダン」などの仕組みを提供。顧客が安定的な収益を目指せ

るような体制を構築しており、その評価の高まりとともに、顧客基盤

は徐々に拡大しつつある。

FX業界としては、証拠金規制の強化によりレバレッジが制限され

るなど、徐々に他社との差別化が難しくなりつつある。そのなかで、「ト

ラップリピートイフダン」など特許を取得した取引手法を持つ当社に

は優位性が感じられる。これまでは認知度の低さもあって伸び悩んで

いたイメージだが、当社のサービスに対する顧客の利用満足度は高く、

他者への紹介経験や紹介意向も高い模様。今後は認知度の向上ととも

に一段と成長が期待される。

改正を求めていたFX税制についても、2012 年 1 月からは「取引所

取引」との差がなくなる見通し。外部環境も好転しつつある。

会 社 概 要

所 在 地 東京都中央区

代 表 者 山本 久敏

設 立 年 月 2002/10

資 本 金 1,224百万円

(2010/09/30現在)

上 場 日 2007/10/25

U R L

http://www.m2j.co.jp/

業 種 証券、商品先物取引業

独自の取引手法とサービスを展開するFX会社

【業績動向】

営業収益 前年比 営業利益 前年比 経常利益 前年比 当期純利益 前年比 EPS

百万円 % 百万円 % 百万円 % 百万円 % 円

2 0 1 0 / 3 実 績 1,183 -16.1 -199 赤転 -245 赤転 -347 赤転 -6,887.32

2 0 1 1 / 3

会 社 予 想 (未定として発表)

- - - - - - - - -

アナリスト予想 1,790 51.3 270 黒転 260 黒転 150 黒転 3,003.72

2 0 1 2 / 3 アナリスト予想 2,040 14.0 380 40.7 360 38.5 230 53.3 4,605.71

JASDAQアナリストレポート・プラットフォーム<ベーシックレポート>

2011年 1 月 26日

主要指標 2011/01/24現在

株 価 33,050円

発行済株式数 54,591株

売 買 単 位 1株

時 価 総 額 1,804百万円

予 想 配 当 ( 会 社 )

未定

予 想 E P S ( ア ナ リ ス ト )

3,003.72円

実 績 P B R 0.57倍

Page 2: マネースクウェア・ジャパンMorningStar...1 モーニングスター(株) 藤井 会 社 概 主要指標 発行済株式数 売 買 単 位 予 想 配 当 マネースクウェア・ジャパン

2

会社概要

2002 年 10月に設立された外国為替証拠金取引(FX)サービス会社。創業時より「マネーゲームで

はない資産運用としてのFX取引」を標榜。顧客が余裕を持って長く取引を行ってもらえるように、

証拠金倍率については、「M2Jプレミアム」コースで最大 25倍、「M2Jダイレクト」コースで最大

50 倍と、倍率を低めに設定している。

また、2004 年 7 月には、独自の資産保全スキームである「トラスト アカウント プロテクション」

を住友信託銀行と契約し開始。このスキームの特長は、(1)為替差損益、スワップも含め顧客の資産

状況を毎日保全すること、(2)信託管理・カバー取引の一元化で区分管理の透明性を実現しているこ

と、(3)円だけでなく米ドルやユーロなど外貨で預けている証拠金も保全されること、などで、顧客

の資産は全て保全できる体制となった。これにより、顧客が安心して取引できるような環境を整えて

いる。さらに、投資教育に軸をおいた質の高いセミナーの実施や、「M2Jプレミアム」コースの顧客

には、コンサルティングサービスを提供するなど、中長期的な資産運用を志向する投資家のニーズに

対応している。

経営者及び設立経緯

従来、外為取引は、大蔵大臣が認可した外国為替公認銀行(為銀)を通じて行わなければならなか

ったが、1998 年 4 月の外為法改正により為銀主義が撤廃され、個人や企業が自由に対外取引を行える

ようになった。これにより、外国為替証拠金取引(FX取引)が誕生した。代表取締役社長の山本久

敏氏は、1999 年 1 月に事業本部長として入社したダイワフューチャーズ㈱(現ひまわりホールディン

グス㈱<8738>)において、日本で最初にFX事業を立ち上げ、「外国為替証拠金取引」と命名してお

り、この事業のパイオニア的な存在。その後、トレイダーズ証券㈱(現トレイダーズホールディング

ス㈱<8704>)の代表取締役社長を経て、2002年 10月に当社を設立した。

会 社 概 要

会社概要

Page 3: マネースクウェア・ジャパンMorningStar...1 モーニングスター(株) 藤井 会 社 概 主要指標 発行済株式数 売 買 単 位 予 想 配 当 マネースクウェア・ジャパン

3

会 社 概 要

会社概要

沿革

2002年10月 当社設立

2002年11月 電話による外国為替証拠金取引サービス開始

2003年4月 インターネットによる外国為替証拠金取引『iFX Style』サービス開始

2004年7月 住友信託銀行と外為証拠金分別管理信託(トラスト アカウント プロテクション)を契約、開始

2005年11月 金融先物取引法に基づく金融先物取引業者として登録

2005年12月 (社)金融先物取引業協会に加入

2006年6月 トラップトレード注文の開発、導入

2007年7月 プライバシーマーク取得

2007年7月 リピートイフダン注文の開発、導入

2007年9月 金融商品取引法施行に伴い第一種金融商品取引業者として登録

2007年10月 大阪証券取引所「ヘラクレス」(現・JASDAQ市場)へ上場

2007年12月 トラップリピートイフダン注文の開発、導入

2008年6月 モバイルトレード開始

2009年1月 クイック入金サービス取扱いスタート

2009年3月 トラップトレード特許取得

2009年4月 お客様向けマイページを導入

2009年5月 ポイントプログラムをスタート

2009年7月 『トラリピFX バーチャル』取扱い開始

2010年1月 リピートイフダン特許取得

2010年1月 トラップリピートイフダン特許取得

2010年7月 当社提供番組「マネーの辞典」放送開始

2010年7月 東京15時ロスカット導入

2010年7月 「M2Jダイレクト」コース売買単位を1,000通貨単位に引き下げ

(会社資料よりモーニングスター作成)

大株主

【大株主の状況】 (10年9月30日現在)

氏名又は名称 所有株式数 所有株式数の割合

(株) (%)

1 山本 久敏 9,593 17.57

2 相葉 斉 3,718 6.81

3 大椋 正男 2,300 4.21

4 渡邊 悟 1,347 2.47

5 バンク ジュリアス ベア アンド カンパニー リミテッド 1,154 2.11

6 青木 仁志 1,028 1.88

7 小倉 啓満 1,000 1.83

8 啓尚企画 1,000 1.83

9 ケージーアイ アジア リミテッド 997 1.83

10ダイワ キャピタルマーケッツ シンガポール リミテッド(トラストアカウント)

881 1.61

(四半期報告書よりモーニングスター作成)

Page 4: マネースクウェア・ジャパンMorningStar...1 モーニングスター(株) 藤井 会 社 概 主要指標 発行済株式数 売 買 単 位 予 想 配 当 マネースクウェア・ジャパン

4

事業の内容

当社は外国為替証拠金取引(FX)サービスの提供を行っている。外国為替証拠金取引とは、取引

総代金に対する一定率の証拠金をもとに、その取引総代金相当の外国為替取引(異なる通貨の売買)

を行う現物取引。取扱通貨ペアとしては、「M2Jプレミアム」コースでは「米ドル/円」「ユーロ/

円」「ユーロ/米ドル」「豪ドル/円」「ニュージーランドドル/円」「カナダドル/円」「英ポンド/円」

「香港ドル/円」「南アフリカランド/円」「豪ドル/米ドル」「ニュージーランドドル/米ドル」の 11

通貨ペアを取扱い、「M2Jダイレクト」コースでは、ここから「ユーロ/米ドル」「豪ドル/米ドル」

「ニュージーランドドル/米ドル」を除いた 8通貨ペアを取扱っている。なお、11 年 3 月期第 2 四半

期累計の取引高実績で見ると、通貨ペア別取引高シェアが最も高いのは高金利通貨の代表格である「豪

ドル/円」で 34.0%。以下、「米ドル/円」が 17.1%、「南アフリカランド/円」が 17.1%、「ユーロ

/円」が 14.0%、「英ポンド/円」9.0%となっている。

当社の収益は、顧客との外国為替証拠金取引成立の際にその売買単位に応じて徴収する取引手数料、

当社が顧客との間で行った相対取引の成立レートと当社がカバー取引※として行った成立レートの差

額、スワップ授受※に伴う差額等であり、これらの収益をトレーディング収益として計上している。

※ カバー取引

FX会社は、為替リスクを回避するため、顧客との相対取引によって保有したポジションを、カバ

ー取引先となる金融機関等への反対取引を行うことによってリスクヘッジを行っている。これがカバ

ー取引だが、実際には顧客向けのレートは、カバー取引先から掲示されるレートに対し一定の利幅を

確保した水準が掲示されており、この差額が当社の収益となる。

※ スワップ授受

外国為替証拠金取引は異なる通貨間の売買であるため、それぞれの通貨の金利相当の差額分が当事

者間で授受される。金利の高い通貨を買っている場合は、1日経てばその1日分の金利差を受け取る

ことができ、逆に高い通貨を売っている場合は、この金利差を支払うことになる。この金利調整分が

スワップであり、実際には金利の高い通貨を買っている顧客が受け取る金額よりも、売っている顧客

の支払う金額が高く設定されており、この授受の差額が当社の収益となる。当社ではこのスワップ受

け取りを目的とした運用を行っている顧客が多く、通貨ペア別取引高シェアでも高金利通貨の「豪ド

ル/円」の比率が高くなっている。

事 業 概 要

会社概要

Page 5: マネースクウェア・ジャパンMorningStar...1 モーニングスター(株) 藤井 会 社 概 主要指標 発行済株式数 売 買 単 位 予 想 配 当 マネースクウェア・ジャパン

5

事 業 概 要

会社概要

FX業界の変遷と当社の状況

FX業界は 1998 年の外為法改正という規制緩和により誕生したが、当初は参入規制がなかったこと

から数多くの業者が存在。競合が激しくなる中、顧客獲得や、顧客の取引高増加による収益機会の拡

大を目的として、売買手数料の無料化やスプレッド(FX会社が掲示する売値と買値の価格差)の狭

小化、さらに 100 倍、200 倍、400倍といった高いレバレッジ(証拠金で取引できる金額の倍率)の提

供といった競争が激化した。この結果、FXはマネーゲーム化し、その取引について顧客と業者との

トラブルが多発する状況となった。

このため、2005年 7月には改正金融先物取引法が施行され、FX業者は金融庁への登録制となった。

これを受けて当時 400 社近くあったFX業者のうち、100 社強が登録したが、2007 年のサブプライム

ローン問題顕在化や、2008 年のリーマンショックといった金融市場の波乱を受けて、FX業者の経営

が悪化。登録取り消しや破産するFX業者が増加したことから、2009 年には金融庁による規制強化が

導入された。具体的には、顧客の資産を保全するため、区分管理方法を信託に一本化。顧客からの預

かり証拠金の管理方法について、それまで認められていた「預貯金」や「カバー取引先への預託」が

禁止された。また、顧客及び業者のリスク管理の観点から、ロスカット・ルールの整備・遵守が義務

付けられたほか、証拠金についても規制を導入。2010 年 8月 1日からはレバレッジの上限が 50倍に、

さらに 2011 年 8 月 1 日以降はレバレッジの上限が 25 倍に引き下げられる。これにより、FX取引量

の減尐が懸念されており、一般的なFX業者は収益環境が厳しくなると見られている。

しかし、当社については、業界最高水準の信託保全スキームである「トラスト アカウント プロテ

クション」を 2004 年 7 月から導入しており、顧客の資産保全については全く問題がない。証拠金倍率

についても、「M2Jプレミアム」コースで最大 25 倍、「M2Jダイレクト」コースで最大 50 倍と、

倍率を低めに設定しており、こうしたレバレッジ規制の影響は小さい。今回の規制強化により、業界

の再編や淘汰が進むといった見方もあるが、当社にとってはむしろプラスとなる公算が大きい。

また、今後のFX業界は、サービス面での差別化が顧客獲得のポイントになると思われるが、当社

はセミナーやコンサルティングなど資産運用型FX取引の投資教育を実施しているほか、独自の取引

手法※を提供しており、顧客基盤の拡大が期待される。

※ 独自の取引手法

◇イフダン

最初から新規注文と決済注文を入れておく注文手法が「イフダン」注文。もし(イフ)「1 米ドル=

94.00 円になったら買う」という取引が成立(ダン)したら、「1米ドル=96.00円になったら売る」と

いう注文を出すというもの。買い注文が成立した後に、相場を見ながら売り注文を出す必要がなくな

る。

Page 6: マネースクウェア・ジャパンMorningStar...1 モーニングスター(株) 藤井 会 社 概 主要指標 発行済株式数 売 買 単 位 予 想 配 当 マネースクウェア・ジャパン

6

事 業 概 要

会社概要

◇トラップトレード(2009年 3月 19日特許取得)

一定の間隔の値幅で、一定の金額の新規注文を複数発注する手法。レンジ内で細かい指値注文を配

置しておくことで、相場を点ではなく面で捉えることができ、レンジ内での価格の分散が図れる。

◇リピートイフダン(2010年 1月 8日特許取得)

「イフダン」注文の第二注文が成立した時点で、同じ条件で新規と決済の注文を自動的に発注する

機能。「イフダン」注文が繰り返し発注される。

◇トラップリピートイフダン(2010年 1月 22日特許取得)

トラップトレードとリピートイフダンの合成注文。相場を面で捉えながら、レンジ相場が続く限り、

自動的に「イフダン」注文を繰り返す注文手法。また、ストップロス注文を設定しておけば、想定外

の値動きにも対応可能。なお、ストップロスとなった場合は、その後のリピート注文は無効となる。

☆トラップリピートイフダンの取引イメージ

(会社資料よりモーニングスター作成)

特に、このトラップリピートイフダン(通称トラリピ)を利用すれば、あらかじめ設定したレンジ

内で相場が動いていれば、小さな値幅で着実なリターンを積み重ねることで、相場を予想しなくても

安定した運用が期待される。自動で注文を繰り返すので、一般的なFXのように相場に張り付いてい

なくても取引ができるといった点も、顧客にとってはメリットとして評価されている。

Page 7: マネースクウェア・ジャパンMorningStar...1 モーニングスター(株) 藤井 会 社 概 主要指標 発行済株式数 売 買 単 位 予 想 配 当 マネースクウェア・ジャパン

7

事 業 概 要

会社概要

このトラリピなどの取引手法に関しては、当社が特許を取得しており、この仕組みを提供できるこ

とが、同業他社との差別化要因となっている。FX業界全般としては、競合対策として売買手数料を

無料としている業者が多いなか、当社が売買手数料を徴収できるのはこうした独自のサービスを提供

できているからであり、それでも顧客数は順調に拡大している。実際、2010 年 12 月の実績では、「M

2Jプレミアム」コースの稼動客のうち 51%、「M2Jダイレクト」コースでは稼動客のうち 93%が

このトラリピを利用して取引を行っており、そのニーズは強い。トラリピにより稼働率自体も上昇傾

向にあり、当社の収益拡大に寄与している。

さらに、当社では「トラリピFXバーチャル」というトラリピの模擬体験ができるシステムも提供

しており、これによりトラリピの魅力をアピールしている。実際、この模擬体験を利用した後に口座

開設する顧客は多いようだ。

なお、当社では 2010 年 7月 19 日より、「M2Jダイレクト」コースにおけるFXの売買単位を従来

の 10,000 通貨単位から 1,000通貨単位に引き下げた(但し、香港ドル/円、南アフリカランド/円は

10,000 通貨単位を継続)。これにより、従来よりも小額資金でのFX取引が可能になり、リスクの分散

化や機会損失の低減などが見込まれる。また、トラリピ等の利用が容易になるほか、注文指値本数を

増やすことで、同じ証拠金でもカバーできるレンジを拡げられるなど、顧客の利便性向上と売買の活

性化が期待される。実際、引き下げ後の指値件数は大幅に増加している。

Page 8: マネースクウェア・ジャパンMorningStar...1 モーニングスター(株) 藤井 会 社 概 主要指標 発行済株式数 売 買 単 位 予 想 配 当 マネースクウェア・ジャパン

8

業界内順位

当社の 10 年 3 月期末の顧客口座数は 20,538 口座で、会社資料(矢野経済研究所調べ)によると業

界内の順位は 24 位と低く、上位は外為どっとコムや外為オンライン、クリック証券など認知度の高い

業者や、SBI証券や楽天証券、松井証券などオンライン証券大手が占めている。上場企業ではある

ものの、上位の企業と比べると広告宣伝・PR活動が尐なく、認知度が低いことが影響しているよう

だ。ただ、預り証拠金残高は 10 年 3 月期末で 145 億円と、業界内の順位は 10 位となっている。当社

は資産運用型のFX取引を提案しており、富裕層の顧客が多いため、口座数に比べると預り証拠金残

高が大きいことが特徴となっている。

足元の状況としては、月次の口座数・預り証拠金残高はいずれも着実に増加している。当社のサー

ビスに対する顧客の利用満足度は高く、他者への紹介経験や紹介意向は高い模様。今後は認知度の向

上とともに一段と増加が見込まれる。ちなみに、口座数は 08 年 9 月のリーマンショック時も順調に増

加(下記グラフ参照)したが、預り証拠金残高は 08 年 10 月に大幅な減尐を示した(次頁グラフ参照)。

当社は富裕層の顧客が多く、スワップ受け取りを目的とした運用のため、あまり売買しない顧客も多

い。こうした顧客は、リーマンショック時でも初期の相場変動段階で早急に対処せず、結果的に大き

な損失を受けたため、預り証拠金残高が急減したようだ。ただ、現在は口座数の増加とともに、預り

証拠金残高もリーマンショック前に近い水準まで戻りつつある。

顧客口座数の推移(月次)

0

5,000

10,000

15,000

20,000

25,000

30,000

35,000

Apr-08

Jun-08

Aug-08

Oct-08

Dec-08

Feb-09

Apr-09

Jun-09

Aug-09

Oct-09

Dec-09

Feb-10

Apr-10

Jun-10

Aug-10

Oct-10

Dec-10

(口座)

顧客口座数

(会社資料よりモーニングスター作成)

市 場 分 析

会社概要

Page 9: マネースクウェア・ジャパンMorningStar...1 モーニングスター(株) 藤井 会 社 概 主要指標 発行済株式数 売 買 単 位 予 想 配 当 マネースクウェア・ジャパン

9

市 場 分 析

会社概要

預り証拠金残高の推移(月次)

0

5,000

10,000

15,000

20,000

25,000

Apr-08

Jun-08

Aug-08

Oct-08

Dec-08

Feb-09

Apr-09

Jun-09

Aug-09

Oct-09

Dec-09

Feb-10

Apr-10

Jun-10

Aug-10

Oct-10

Dec-10

(百万円)

預り証拠金残高

(会社資料よりモーニングスター作成)

「店頭取引」と「取引所取引」

一方、現在、外国為替証拠金取引(FX)には「店頭取引」と「取引所取引」の 2 通りがある。「店

頭取引」は当社を含めたFX業者が顧客と相対で取引を行っているのに対し、「取引所取引」は東京金

融先物取引所の「くりっく 365」や大阪証券取引所の「大証FX」で取引されている。その取引の仕

組みにはそれぞれに特徴があるが、大きな違いとして税制がある。現状は、「店頭取引」の場合、総合

課税で最大 50%の税率となり、3年間の損失繰越控除も不可だが、「取引所取引」は申告分離課税で一

律 20%、さらに3年間の損失繰越控除が可能となっている。

当社を含め「店頭取引」を行っているFX業者にとっては不公平な税制であり、改正を求めてきた

が、平成 23 年度税制改正大綱にFX取引に関する税制を一本化する内容が盛り込まれた。これにより、

平成 24 年(2012 年)1 月以降は、「店頭取引」も申告分離課税で一律 20%、3 年間の損失繰越控除が

可能となる見通し。当社にとっても追い風となろう。

Page 10: マネースクウェア・ジャパンMorningStar...1 モーニングスター(株) 藤井 会 社 概 主要指標 発行済株式数 売 買 単 位 予 想 配 当 マネースクウェア・ジャパン

10

11 年 3月期第 2四半期累計の業績について

11 年 3月期第 2 四半期累計(4~9月)の業績は、営業収益が 8億 7,000万円(前年同期比 62.5%増)、

営業損益が 5,200 万円の黒字(前年同期は 1 億 400 万円の赤字)となった。四半期別では、第 1 四半

期は営業収益が 5 億 2,500 万円、営業損益が 1 億 5,700 万円の黒字だったが、第 2 四半期は営業収益

が 3 億 4,400 万円、営業損益が 1 億 1,400 万円の赤字と、第 2 四半期が低調だった。第 2 四半期の営

業収益については、前年同期比では 18.8%増だったものの、第 1 四半期に比べると相場が動かず、取

引高が伸び悩んだ。営業損益については、営業収益の伸び悩みに加え、積極的な広告宣伝・PR活動

を実施したことによる営業費用の増加が響いた。なお、10 年 8月 1日からは証拠金規制(上限 50倍)

がスタートしたが、当社の場合は規制前から上限 50倍の商品設計となっていたため、これによる影響

は特になかった。

11 年 3月期(通期)及び 12年 3月期の業績予想について

一方、第 3 四半期については、月次概況(速報)の集計によると、営業収益は 4 億 5,500 万円(前

年同期比 45.4%増)程度となった模様。第 3 四半期以降は第 2 四半期のように広告宣伝費は使わない

計画であり、営業損益も改善が見込まれる。口座数や預り証拠金残高も順調に拡大しており、第 4 四

半期も順調な業績が期待される。会社側では 11年 3月期(通期)の業績予想を発表していないが、モ

ーニングスターでは、営業収益が 17 億 9,000 万円(前期比 51.4%増)、営業損益が 2 億 7,000 万円の

黒字(前期は 1億 9,900 万円の赤字)と予想している。

続く 12 年 3 月期の業績についても、営業収益が 20億 4,000 万円、営業利益が 3 億 8,000 万円と予想

している。証拠金規制については、2011 年 8 月 1日より上限 25倍に引き下げられ、これに対応する必

要があるが、当社の営業スタンスから見て、影響はさほど大きくないと見ている。一方で、2012 年 1

月からのFX税制変更は営業面でプラスになると思われ、第 4 四半期以降の動向が注目される。その

面では、そうした変化がフルに反映される 13年 3月期以降の業績に期待したい。

業 績

会社概要

Page 11: マネースクウェア・ジャパンMorningStar...1 モーニングスター(株) 藤井 会 社 概 主要指標 発行済株式数 売 買 単 位 予 想 配 当 マネースクウェア・ジャパン

11

2008/3 2009/3 2010/3 2011/3予

(アナリスト)

株 価 推 移

株価(年間高値) 円 300,000 113,000 27,600 -

株価(年間安値) 円 62,500 18,070 14,100 -

月間平均出来高 株 84,520 19,954 2,021 -

業 績 推 移

営 業 収 益 百万円 2,039 1,410 1,183 1,790

営 業 利 益 百万円 952 48 -199 270

経 常 利 益 百万円 931 61 -245 260

当 期 純 利 益 百万円 541 26 -347 150

E P S 円 11,670.34 497.47 -6,887.32 3,003.72

R O E % 20.8 0.8 -11.3 -

貸 借 対 照 表

主 要 項 目

流 動 資 産 合 計 百万円 15,651 11,715 13,682 -

固 定 資 産 合 計 百万円 529 551 459 -

資 産 合 計 百万円 16,181 12,267 14,142 -

流 動 負 債 合 計 百万円 12,652 8,983 11,229 -

固 定 負 債 合 計 百万円 0 0 0 -

負 債 合 計 百万円 12,652 8,983 11,229 -

株 主 資 本 合 計 百万円 3,534 3,276 2,890 -

純 資 産 合 計 百万円 3,528 3,283 2,912 -

キャッシュフ

ロ ー 計 算 書

主 要 項 目

営業活動による CF 百万円 402 -47 -74 -

投資活動による CF 百万円 -724 -107 -126 -

財務活動による CF 百万円 1,146 -285 -38 -

現金及び現金同等

物 の 期 末 残 高 百万円 1,662 1,221 982 -

M2J [8728/JQ] 週足 2011/01/25

単価 売買高(平均)[千] PMA_13 PMA_26 VMA_13 VMA_26

07/10/25 - 11/01/24 [171]2007/10/25 02/04 05/07 08/04 11/04 02/02 05/07 08/03 11/02 02/01 05/06 08/02 11/01

25

20

15

10

5

300,000

280,000

260,000

240,000

220,000

200,000

180,000

160,000

140,000

120,000

100,000

80,000

60,000

40,000

20,000

(07/10/29)300000

60600(08/4/1)

(08/6/3)113000

18070(08/10/28)

(08/11/11)36000

19100(09/2/18)

(09/3/5)29020

14100(09/11/24)

(10/1/21)18600

14510(10/2/15)

(10/4/30)27000

19860(10/9/2)

2008

2009

2010

2011

(出所)㈱QUICK

上記チャート図の一部又は全部を、方法の如何を問わず、また、有償・無償に関わらず第三者に配布してはいけません。

上記チャート図に過誤等がある場合でも㈱QUICK 社及び大阪証券取引所は一切責任を負いません。

上記チャート図の複製、改変、第三者への再配布を一切行ってはいけません。

Page 12: マネースクウェア・ジャパンMorningStar...1 モーニングスター(株) 藤井 会 社 概 主要指標 発行済株式数 売 買 単 位 予 想 配 当 マネースクウェア・ジャパン

12

外国為替市場の急激な変動

第一のリスクとしては外国為替市場の急激な変動が挙げられる。当社の収益構造を考えると、ある

程度は変動が高まった方が収益機会の拡大に繋がると思われるが、いわゆるリーマンショック時のよ

うな急激な相場変動が発生した場合はマイナスとなる公算が大きい。当社の顧客は富裕層が多く、ス

ワップ受け取りを目的としてあまり売買しない顧客も多いため、短期間で急激な変動が起きた場合、

顧客の資産が大きく毀損し、預り資産残高及び建玉数が減尐し、業績に影響を与える可能性がある。

また、利用顧客が多い「トラップリピートイフダン」は、一定のレンジ内で推移する相場に強い運用

手法であるが、その想定レンジを超えるような急激な変動が短期間で起きると、ロスカットが多発す

る可能性があり、結果的に業績に影響を与える可能性がある。

競合状況

店頭取引のFX業者に対しては、「トラップリピートイフダン」など独自のサービスで差別化を図っ

ており、競合面での不安要素は尐ない。しかし、東京金融取引所の「くりっく 365」や、大阪証券取引

所の「大証FX」などの取引所取引は、営業方針面や税制面で店頭取引よりも優遇されており、これ

らの利点を活かして業容を拡大している。今後、今以上に取引所取引という安心感を背景にシェアを

拡大していった場合、当社の業績等に影響を与える可能性がある。

システム障害

当社の取引システムは、インターネットからの注文受発注、ポートフォリオ管理、顧客向けフロン

トシステム、マーケットとの取引等を司るミドルシステム及び取引決済データ処理等を司る勘定帳票

系バックシステム等から構成されており、顧客からの取引注文の大部分はインターネットを通じて受

注し、一連のコンピュータ処理システムへの接続を通じて取引を執行している。このため、これら一

連のシステムに動作不良や人為的ミス、想定以上に急激なアクセス数の増加による通信回線の障害、

事故及び外部からの不正な侵入等によりシステム障害が発生した場合は、取引の執行が行えなくなる

可能性があり、信用力の低下や損害賠償請求等により、当社の業績等に影響を与える可能性がある。

リ ス ク 分 析

会社概要

Page 13: マネースクウェア・ジャパンMorningStar...1 モーニングスター(株) 藤井 会 社 概 主要指標 発行済株式数 売 買 単 位 予 想 配 当 マネースクウェア・ジャパン

13

1.本レポートは、株式会社大阪証券取引所(以下「大証」といいます。)が実施する「JASDAQアナ

リストレポート・プラットフォーム」を利用して作成されたものであり、大証が作成したものではあり

ません。

2.本レポートは、本レポートの対象となる企業が、その作成費用を支払うことを約束することにより作

成されたものであり、その作成費用は、当該企業が大証に支払った金額に大証からの助成金を加えたう

えでモーニングスター株式会社(以下「レポート作成会社」といいます。)に支払われています。

3.本レポートは、大証によるレビューや承認を受けておりません(ただし、大証が文面上から明らかに

誤りがある場合や適当でない場合にレポート作成会社に対して指摘を行うことを妨げるものではありま

せん)。

4.レポート作成会社及び担当アナリストには、この資料に記載された企業との間に本レポートに表示さ

れる重大な利益相反以外の重大な利益相反の関係はありません。

5.本レポートは、投資判断の参考となる情報の提供を唯一の目的として作成されたもので、有価証券の

取引及びその他の取引の勧誘又は誘引を目的とするものではありません。有価証券の取引には、相場変

動その他の要因により、損失が生じるおそれがあります。また、本レポートの対象となる企業は、投資

の知識・経験、財産の状況及び投資目的が異なるすべての投資者の方々に、投資対象として、一律に適

合するとは限りません。銘柄の選択、投資判断の最終決定は、投資者ご自身の判断でなされるようにお

願いいたします。

6.本レポート作成にあたり、レポート作成会社は本レポートの対象となる企業との面会等を通じて、当

該企業より情報提供を受けておりますが、本レポートに含まれる仮説や結論は当該企業によるものでは

なく、レポート作成会社の分析及び評価によるものです。また、本レポートの内容はすべて作成時点の

ものであり、今後予告なく変更されることがあります。

7.本レポートは、レポート作成会社が信頼できると判断した情報に基づき記載されていますが、大証及

びレポート作成会社は、本レポートの記載内容が真実かつ正確であり、そのうちに重要な事項の記載が

欠けていないことやこの資料に記載された企業の発行する有価証券の価値を保証又は承認するものでは

ありません。本レポート及び本レポートに含まれる情報は、いかなる目的で使用される場合におきまし

ても、投資者の判断と責任において使用されるべきものであり、本レポート及び本レポートに含まれる

情報の使用による結果について、大証及びレポート作成会社は何ら責任を負うものではありません。

8.本レポートの著作権は、レポート作成会社に帰属しますが、レポート作成会社は、本レポートの著作

権を大証に独占的に利用許諾しております。そのため本レポートの情報について、大証の承諾を得ずに

複製、販売、使用、公表及び配布を行うことは法律で禁じられています。

ディスクレーマー

会社概要

<指標の説明について>

本レポートに記載の指標に関する説明は、大阪証券取引所ウェブサイトに掲載されております。

参照 URL ⇒ http://www.ose.or.jp/jasdaq/5578