ブロックチェーン技術の基本と pwc 2017年7月24 その可能...

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Strictly Private and Confidential

ブロックチェーン技術の基本と

その可能性

www.pwc.com/jp/assurance

2017年7月24日PwCあらた有限責任監査法人

フィンテック&イノベーション室

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PwC

  本資料は概略的な内容を紹介する目的で作成されたもので、プロフェッショナルとしてのアドバイスは

含まれていません。

 個別にプロフェッショナルからのアドバイスを受けることなく、本資料の情報を基に判断し行動されないよう

お願いします。

 本資料に含まれる情報は正確性または完全性を、(明示的にも暗示的にも)表明あるいは保証するもので

ありません。

  また、本資料に含まれる情報に基づき、意思決定し何らかの行動を起こされたり、起こされなかったことに

よって発生した結果について、 PwCあらた有限責任監査法人およびメンバーファーム、職員、代理人は、

法律によって認められる範囲においていかなる賠償責任、責任、義務も負いません。

免責事項

2

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ブロックチェーン技術の基本とその可能性

3

Ⅰ 仮想通貨の規制

Ⅲ ブロックチェーンの技術

Appendix

Ⅱ 仮想通貨とブロックチェーン

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PwC

1.1 規制等に関するスケジュール

3

2016.6 2016.12 2017.1 2017.2 2017.3 2017.4 2018.4 2019.3

法令等

監査実務指針

改正資金決済法

公布

6/3

内閣府令&事務ガイドライン公開草案

12/28

公開草案コメント締切

1/27

内閣府令&事務ガイドライン公布パブコメ回答公表

3/24

改正資金決済法

施行

4/1

分別管理監査実務指針公開草案

3/27

分別管理監査

実務指針公表

5/31

会計

第28回FASF

基準諮問会議テーマ提言

(JICPA)

11/14

第29回FASF

基準諮問会議検討提言決定

3/14

JICPA仮想通貨対応

専門部会設置

2016.4

財務諸表監査実務指針公開草案

(予定)

未定

•3月決算は2019年3月末期から

•「合意された手続」(AUP)により実施•FS監査がないことを前提とした追加手続あり

第357回ASBJ本会議検討開始決

3/28

(施行日含事業年度の翌事業年度が初度 ) 財務諸表監査

分別管理監査初回18年3末or登録後1年以内

施行日or登録日から 

1年以内

分別管理監査

制度監査

ASBJ公開草案

公表(予定)

9月(予定)

第358回ASBJ本会議

4/10

Ⅰ 仮想通貨関連の規制

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1.2 規制の背景と概要

5

Ⅰ 仮想通貨関連の規制

仮想通貨関連規制の背景

• 2014年2月に顧客資産を消失させたうえで経営破たんした Mt.Goxが日本の会社であったことから、社会の注目を集めた(同年 4月 破産手続開始決定)。

• 2014年6月に仮想通貨の規制等に関する見解が自民党 IT戦略特命委員会から公表された(中間報告)。

• 2014年年9月に自主規制団体JADA(今の「日本ブロックチェーン協会」の前身)が設立された

• 2015年6月28日のG7エルマウ・サミット首脳宣言を受けて、 金融活動作業部会(FATF)から仮想通貨に関する報告書が公表される。当該報告書では、仮想通貨が、テロリストへの資金供与、組織犯罪の違法取引の手段となることを防止することを目的に、仮想通貨取引所の登録・免許制、顧客の本人確認、怪しい取引履歴の届け出、保存義務などが提案されている。

• 2015年12月に公表された、金融審議会・決済業務高度化 WG報告書において仮想通貨に関する法規制の内容について言及された

• 2016年3月4日仮想通貨に関する規制を含む「 情報通信技術の進展等の環境変化に対応するための銀行法等の一部を改正する法律案 」が閣議決定され、同年 5月、第190回国会にて成立した。

• 2017年4月1日施行。改正資金決済法において「仮想通貨」が定義された。一定の事業者を「仮想通貨交換業者」に指定し、登録制が導入され、種々の行為規制が規定された。規制の要旨は次頁の通り。

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資金決済法関連

1 仮想通貨の定義(2 条 5 項)

2 仮想通貨交換業に係る登録制の導入(2 条 7 項、63 条の 2)

3

仮想通貨交換業者の業務に関する規制 • 情報の安全管理のために必要な措置(63 条の8)• 利用者への情報提供など利用者の保護を図り、業務の適正かつ確実な遂行を 確保するために必要な措置(63 条の 10)• 顧客資産の分別管理義務及びその状況について公認会計士又は監査法人の監査を受ける義務(63 条の 11)• 利用者の苦情処理及び利用者との間の紛争解決等の措置(63 条の 12))

4

仮想通貨交換業者に対する監督 • 帳簿書類を作成・保存義務 (63 条の 13)• 仮想通貨交換業に関する報告書の提出義務。添付資料としての財務諸表については、公認会計士又は監査法人の監査を受ける必要あり(63 条

の 14 第 1 項、63 条の 14 第 3 項)• 当局の検査(63 条の 15 第 1 項)• 登録取り消し及び業務停止命令(63 条の 17) 等

5 仮想通貨交換業者の設立する認定資金決済事業者協会に関する規定(87 条、88 条、90 条~92 条、97 条)

6 仮想通貨交換業者に対する罰則資金決済法の既存の罰則規定が、仮想通貨交換業者に対しても適用される(107条~109 条、112 条~117条)

1.2 規制の背景と概要

6

Ⅰ 仮想通貨関連の規制

犯罪収益移転防止法関連

1

仮想通貨交換業者の「特定事業者」への指定(2 条 31 号)• 口座開設時における本人確認(4条)• 本人確認記録、取引記録の作成・保存(6条、7条) • 疑わしい取引に係る当局への届出(8条)• 社内体制の整備 (10条)

2 利用者、仮想通貨交換業者等に対する罰則

利用者保護

マネロン・テロ資金供与対策

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1.3 分別管理に関する規制の概要 

7

利用者が預託した金銭・仮想通貨の分別管理

仮想通貨交換所の仕組みと分別管理(最もシンプルなケース)

原則として、以下における①≦②の状態を維持(日次で確認)

仮想通貨 金銭

①預かり仮想通貨-引出仮想通貨=帳簿上の預かり仮想通貨残高

①顧客振込額-顧客引出額=帳簿上の預かり金銭残高

②ブロックチェーン上の、顧客用アドレスに紐づいている仮想通貨残高

②顧客用銀行預金口座の残高

Ⅰ 仮想通貨関連の規制

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改正資金決済法において、「仮想通貨」は以下の通り定義されている(改正資金決済法第2条5項、6項)。当該定義は、FATFの定義する換金型仮想通貨の定義を参照しているものと考えられ、発行者の存否及び中央集権型か分散型かは要件に含まれていない。ここでは、仮想通貨を1号と2号に分けており、まずは第1号では、前払式支払手段との違いを意識した、仮想通貨の特徴を捉えた定義を置いた上で、第2号では、その第1号の通貨と相互に交換可能なものも仮想通貨に含めるという2段構えの構成となっている。その為、まずは、第1号に定める仮想通貨の特徴をつかむことが肝要である。

1.4 改正資金決済法上における仮想通貨

8

Ⅰ 仮想通貨関連の規制

Ref.

第2条5項1号 備考

1物品を購入し、若しくは借り受け、又は役務の提供を受ける場合に、これらの代価の弁済のために不特定の者に対して使用することができる

決済機能を有さないものや、特定の者に対してのみ使用可能なものは含まれない。よって、通常、ゲーム内通貨や電子マネーなどの前払式支払手段は含まれない。また、企業内コインも該当しない。2 不特定の者を相手方として購入及び売却を行うことができる

3 財産的価値 -

4 電子機器その他の物に電子的方法により記録されているもの -

5 本邦通貨及び外国通貨並びに通貨建資産でない法定通貨そのものや一定金額の法定通貨との交換が約束されたデジタル通貨は含まれない

6 電子情報処理組織を用いて移転することができる 移転が想定されていないものは該当しない

Ref.

第2条5項2号 備考

1不特定の者を相手方として前号に掲げるものと相互に交換を行うことができる財産的価値であって、電子情報処理組織を用いて移転することができるもの

専らビットコインとの間で取 引が行われているアルトコインであっても定義に含まれる。

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ブロックチェーン技術の基本とその可能性

9

Ⅰ 仮想通貨の規制

Ⅲ ブロックチェーンの技術

Appendix

Ⅱ 仮想通貨とブロックチェーン

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主な仮想通貨の時価総額(2017年7月18日時点)

2.1 仮想通貨の種類と市場規模

10

Ⅱ 仮想通貨とブロックチェーン

仮想通貨は、既に1000種類ほど発行されているが、広く流通しているものは一部。時価総額の 50%程度をビットコインが占める。

出所:コインマーケットキャップ:JPY建“Market Cap”をベースに算出

• ブロックチェーンは、ビットコインの基盤技術

• ブロックチェーン技術により、従来の中央管理型システムに比べて低コストかつ堅牢な仕組みの構築ができる可能性があり、金融以外の分野への応用も期待されている。

• ブロックチェーンを理解するには、まずビットコインの仕組みを知ることが重要となる

その他19%

Ethereum22%

Ripple8%

Litecoin3%

Bitcoin47%

時価総額

8兆円

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2.2 ブロックチェーンの主たる類型(管理者基準)

11

Ⅱ 仮想通貨とブロックチェーン

 オープンシステム クローズドシステム

パブリック型 プライベート型 コンソーシアム型

管理者の有無 なし あり・単独あり・相互に信頼関係に

ある複数の主体

ノード参加 自由(Permission less) 管理者による許可制(Permissioned)

管理者による許可制(Permissioned)

認証に求められる合意形成の厳格さ

厳格(例:作業証明)必ずしも厳格でなくてもよい

(管理者次第)必ずしも厳格でなくてもよい

(管理者次第)

認証時間 遅い 早くできる 早くできる

一定時間内に処理できる取引量

少ない 多くできる 多くできる

出所:経済産業省 第5回「産業・金融・ITに関する研究会」 Orb提出資料

金融機関・事業会社による利用が想定されるモデル

Hyperledger Fabric、Corda、Orb等Bitcoin、Ehereum等

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2.5 仮想通貨の代表、ビットコインとは

12

Ⅱ 仮想通貨とブロックチェーン

1 ビットコインとは何か?

• 国家的信用の裏付けがなく、インターネット上で発行・流通するP2P※型デジタル通貨、あるいはその仕組み

   ※ピアツーピア:すべての参加者がネットワークの一部としてサーバにもクライアントにもなる方式

• 2008年11月「ナカモトサトシ」の名でインターネット上に公開された論文がきっかけとなってシステムが作られ、2009年1月に初めて発行された

2 ビットコインの特徴

仮想空間で価値を移転させる時のポイント

(具体的な特徴)

• 全ての取引記録がブロックチェーンに記録され、公開される

• ブロックチェーンは、多数のコンピュータで構成されるP2Pネットワークで維持される

• 一般的な暗号技術(電子署名、公開鍵暗号、暗号学的ハッシュ関数)を活用している

• Proof of Workによって、ブロックチェーンの改ざんが著しく難しく設計されている

• 供給量と供給スケジュールが、あらかじめプロトコルで決められている(上限2,100万枚、約10分毎に新規発行され、1回あたりの発行量は約4年ごとに半減する)

• 経済的インセンティブを組み込んだシステム(新規発行されたビットコインは、検証作業者(マイナー)への報酬として割り当てられるため)

①本当に権利者が入力したものか?   ☜電子署名

②二重払いではないことをどう証明するのか?  ☜ PoWを使った競争的検証システム

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2.6 仮想通貨の代表、ビットコインとは

13

Ⅱ 仮想通貨とブロックチェーン

3 どの様に入手するか?

1. マイニングの報酬として入手(新規発行)

2. 保有者からの送金を受ける

3. 取引所で購入する

 -仮想通貨を保有するために、専用のウォレットを使うのが一般的

4 ビットコインのビジネスへの影響

• 低コストの送金手段

• 新たな投資商品

• 店舗・ECにおける支払手段※

• 銀行口座・クレジットカード等を持たない人達にとっての金融サービスへの参加手段

• マイクロペイメントの手段

• 寄付の手段

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2.7 ビットコイン、法定通貨、電子マネーとの比較

14

Ⅱ 仮想通貨とブロックチェーン

特徴 ビットコイン 法定通貨 電子マネー

発行・管理

発行者 システムが自動的に発行日本政府(通貨)日本銀行(紙幣)

電子マネー事業者

管理者P2Pネットワーク参加者が分散管理

同上 同上

価値

発行上限 2,100万BTC なし 事前に入金された範囲で発行

価値の裏付け システムへの信用 日本政府への信用• 供託された日本円• 電子マネー事業者

送金処理

送金の方向 双方向 双方向 一方向(利用者⇒加盟店)

送金の処理時間 約10分間隔でブロックを作成

• 直接の受け渡しであれば即時

• 長距離・大量だと時間がかかることもある

加盟店に支払われるまで数字~1.5ヵ月程度

送金の手数料• 少額• 送金者負担

• 高額• 場合によって両方負担

受取者(加盟店)負担

匿名性取引の匿名性

取引履歴は明らかだが、匿名性あり

高い低い(履歴は電子マネー事業者が管理)

取引履歴の公開 公開 非公開 一般に非公開

出所:平成27年度 我が国経済社会の情報化・サービス化に係る基盤整備(ブロックチェーン技術を利用したサービスに関する国内外動向調査)報告書(経済産業省ウェブサイト)

「発行者の有無」が最大の特徴

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2.8 送金における仕組みの違い

15

Ⅱ 仮想通貨とブロックチェーン

鈴木さん佐藤さん

1.預金を使った送金

鈴木さんに10万円

送金しよう

信頼されている主体が管理する帳簿を書き換えることにより価値を移転

送金依頼

2.ビットコインの送金

電子ウォレット

電子ウォレット

田中さん高橋さん

送金依頼(放送する)

入金を確認

インターネット上に構築された分散型台帳の記録を書き換えることにより価値を移転

ビットコインネットワーク

A銀行B銀行

決済システム(全銀システム、日銀ネット等)

資金系決済インフラ

入金を確認

田中さんに1BTC送金しよう

検証&更新

(B銀行の口座を保有 )(A銀行の口座を保有 )

(ビットコインアドレスを保有)

(ビットコインアドレスを保有)

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ブロックチェーン技術の基本とその可能性

16

Ⅰ 仮想通貨の規制

Ⅲ ブロックチェーンの技術

Appendix

Ⅱ 仮想通貨とブロックチェーン

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1 ブロックチェーンとは何か?

P2P型分散データベース、あるいは出来事を非可逆的に記録するための技術• 処理データを一定期間ごとにまとめてデータの固まりを作り(ブロック)、直前のブロックと強く結びつけられる形で記

録(チェーン)• 処理データは、参加者のコンピューターで共有され、検証された上で保存される

2 特性 *1

従来の集中管理者を前提としたシステムに比べて、以下のような特徴を持つといわれている。• 「改ざんが極めて困難」• 「実質ゼロ・ダウンタイム」なシステム• 「安価」に構築可能

3.1 ブロックチェーンとは

17

Ⅲ ブロックチェーンの技術

P2PA

ハッシュ関数

B公開鍵暗号・電子署名

CProof of Work

(PoW)

D

ビットコインのブロックチェーンにおいて用いられている技術

*1出所:平成27年度 我が国経済社会の情報化・サービス化に係る基盤整備(ブロックチェーン技術を利用したサービスに関する国内外動向調査)報告書 (経済産業省ウェブサイト)

ブロック1 ブロック2 ブロック3

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3.2 P2P型の管理とは

18

Ⅲ ブロックチェーンの技術

クライアントサーバ型とは異なり、ネットワークに参加する各コンピュータがそれぞれデータを保持し、他のコンピューターに対して対等の関係でデータの要求と提供を行う自律的ネットワークのこと。 *1

取引記録を参加者が分散共有管理(P2P型)

取引記録を第三者が中央集中管理(クライアントサーバ型)

P2PA

*1出所:平成27年度 我が国経済社会の情報化・サービス化に係る基盤整備(ブロックチェーン技術を利用したサービスに関する国内外動向調査)報告書 (経済産業省ウェブサイト)

• 「中心」と呼べるようなものは存在しない

• 参加者は、クライアント、サーバどちらの機能も持つ(参加者が、すこしずつシステムの機能の一部を担う)

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3.2 P2P型管理における疑問

19

Ⅲ ブロックチェーンの技術

クライアント・サーバ型の取引記録管理において、取引記録の「信頼性」の付与や「整合性」のチェックは、「信頼できる第三者」が行ってきた。

中心なきP2P型構造を採用するビットコインのブロックチェーンは、どのように対処しているのか ?

1. 一定の信頼性を保証する中央管理機関の不在(信頼性の問題)

2. 中央管理機関による単一のデータベースではなく、多数の参加者が有するデータベースの存在(整合性の問題)

どのようにして取引情報の改ざん・なりすまし・否認・二重取引を防止するのか?

どのようにして同一のデータベースを共有するのか?

事実 疑問

回答

• 広く普及している既存の暗号技術(「枯れた技術」)を組み合わせて使用する• 「莫大な作業負荷を行ったことの証明」( PoW)による改ざん防止の仕組みを取り入れる• 経済的インセンティブに基づく競争原理を導入し、膨大な計算パワーを呼び込む

ハッシュ関数

B公開鍵暗号・電子署名

CProof of Work

(PoW)

D

P2PA

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3.3 ビットコインにおけるブロックチェーンの概要

20

Ⅲ ブロックチェーンの技術

ブロックチェーンの構造

直前ブロックのハッシュ値

ナンス

取引記録2 C⇒D

ブロック1

・・・

取引記録1 A⇒B

取引記録全体のハッシュ値

取引記録0 無⇒採掘者1

ブロックヘッダ

・・・

取引記録1 E⇒F

取引記録全体のハッシュ値

取引記録0 無⇒採掘者2

ブロックヘッダ

直前ブロックのハッシュ値

ナンス

取引記録2 G⇒H

・・・

取引記録1 I⇒A

取引記録全体のハッシュ値

取引記録0 無⇒採掘者3

ブロックヘッダ

直前ブロックのハッシュ値

ナンス

取引記録2 B⇒J

ブロック2 ブロック3

公開鍵暗号・電子署名

C

ハッシュ関数

B

ハッシュ関数

B

• 「取引記録0」は、計算競争に勝利した採掘者に、報酬として割り当てられるために生成されるもの(報酬の他、送金取引に関する手数料も含まれる)

• 採掘者1~3及びA~Jは、ビットコインアドレス。各アドレスの保有者が誰かは分からない(仮名性)

ハッシュ関数

B

Proof of Work

D

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3.4 ハッシュ関数とは

21

Ⅲ ブロックチェーンの技術

元のデータを予見不可能なランダムなデータに変換する関数

 ① 入力データの長さに関係なく、固定の長さの出力がでてくる

 ② 同じ入力を入れたら、同じ出力が出てくる

 ③ 出力データから、元のデータを推定することは事実上できない

元のデータ ハッシュ関数ハッシュ値

(一定桁数の英数字)

PwCあらたハッシュ関数(SHA-256) *2

E8255F6A2A0EA9A2E7B8EEF77C103F484BF06892DC1C9C5BB04595AF1A6319CA

PWCあらたハッシュ関数(SHA-256) *2

2501A088951D808306389882367FB83A2F0F19771AB265135CA3FF0FCB625693

文字を一部変更すると

まったく異なるハッシュ値が得られる

ハッシュ関数

B

*2 ハッシュ値は、以下のサイトを使って算出 http://www.convertstring.com/ja/Hash/SHA256入力データを予測できない

ハッシュ関数は、ビットコインアドレスの生成や、ブロックに含まれる取引記録の要約等、ビットコインの設計のなかに何度も違う形で使われる。

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3.4 ハッシュ関数のビットコインにおける適用

22

Ⅲ ブロックチェーンの技術

ビットコインアドレスの生成過程

ハッシュ関数

B

秘密鍵 公開鍵楕円曲線上のスカラー陪算 1NZUP3JAc9JkmbvmoTv7nVgZGtyJjirK

V1

ビットコインアドレス

ハッシュ関数

1NZUP3JAc9JkmbvmoTv7nVgZGtyJjirKV1

モバイルウォレット画面イメージ

送り先アドレス

太郎さんからアドレス教えてもらった。1BTC送ろう。

送金額

1 BTC次郎さん

太郎さん

アドレスを作って次郎さんから1BTC送ってもらおう

送金

一方向性 一方向性

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3.4 ハッシュ関数のビットコインにおける適用

23

Ⅲ ブロックチェーンの技術

ブロックを強固に連結するブロックハッシュ値(簡略した例)

ハッシュ関数

B

ブロック1(初めてのブロック)

AからBに2BTC送金

ハッシュ関数

ブロック1のハッシュ値

8D8FD・・・・・59F

ブロック2(2つ目のブロック)

CからDに4BTC送金

ハッシュ関数

ハッシュ値D5290・・・・・945

ブロック1のハッシュ値

8D8FD・・・・・59F• ブロック1のハッシュ値を、ブロック

2に混ぜ込む• その上で、ブロック2のハッシュ値を求める

ブロック1が改ざんされたら、必然的にブロック2のハッシュ値も変わる

ハッシュ関数

ブロック2のハッシュ

値9C45・・・・・KN2

ブロック3(3つ目のブロック)

FからGに0.2BTC送金

ハッシュ関数

ハッシュ値9CB87・・・・・BB6

ブロック2のハッシュ

値9C45・・・・・KN2

ハッシュ関数

ブロック3のハッシュ

値1WL5・・・・・SA2

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PwC

3.4 ハッシュ関数のビットコインにおける適用

24

Ⅲ ブロックチェーンの技術

直前ブロックのハッシュ値

ナンス(PoW)

ブロック1

・・

取引記録1 A⇒B

取引記録全体のハッシュ値

取引記録0 無⇒採掘者1

ブロックヘッダ

・・

取引記録1 E⇒F

取引記録全体のハッシュ値

取引記録0 無⇒採掘者2

ブロックヘッダ

直前ブロックのハッシュ値

ナンス(PoW)

取引記録2 G⇒H

・・

取引記録1 I⇒A

取引記録全体のハッシュ値

取引記録0 無⇒採掘者3

ブロックヘッダ

直前ブロックのハッシュ値

ナンス(PoW)

取引記録2 B⇒J

ブロック2 ブロック3

ハッシュ関数

B

取引記録1 C⇒D

ブロックチェーンの構造(ブロックハッシュ値による鎖)

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3.4 ハッシュ関数のビットコインにおける適用

25

Ⅲ ブロックチェーンの技術

直前ブロックのハッシュ値

ナンス(PoW)

取引記録2 C⇒D→K

ブロック1

・・

取引記録1 A⇒B

取引記録全体のハッシュ値

取引記録0 無⇒採掘者1

ブロックヘッダ

・・

取引記録1 E⇒F

取引記録全体のハッシュ値

取引記録0 無⇒採掘者2

ブロックヘッダ

直前ブロックのハッシュ値

ナンス(PoW)

取引記録2 G⇒H

・・

取引記録1 I⇒A

取引記録全体のハッシュ値

取引記録0 無⇒採掘者3

ブロックヘッダ

直前ブロックのハッシュ値

ナンス(PoW)

取引記録2 B⇒J

ブロック2 ブロック3

ハッシュ関数

B

取引記録2 C⇒DをC⇒Kに改ざん

• ブロック1の「取引記録2」を改ざんすると、「取引記録全体のハッシュ値」が変わり、ブロック 1における「ナンス」の再計算が必要。

• 加えて、ブロック2における「直前ブロックのハッシュ値」も変わることから、ブロック 2における「ナンス」も再計算が必要。ブロック 3も同様・・・。

悪意の採掘者

「ナンス」は膨大な計算パワーを使わないと発見できない値であり、悪意の採掘者が再計算をしている間にも、善意の採掘者達によるブロック追加競争は続く。善意の採掘者の計算パワーを上回らない限り、取引記録の改ざんは成功せず、事実上不可能。

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3.5 公開鍵暗号・電子署名とは (1/2)

26

Ⅲ ブロックチェーンの技術

公開鍵暗号とは、暗号化とその複合に別々の鍵を用いる暗号化方式である。鍵を「本人だけが用いる鍵(秘密鍵)」と「誰でも利用できる鍵(公開鍵)」の二つに分ける。また、電子署名は、この公開鍵暗号を用いて、ネットワーク経由で送信したデータが正しいものであることを証明する仕組みである。 *1

*1 出所:平成27年度 我が国経済社会の情報化・サービス化に係る基盤整備(ブロックチェーン技術を利用したサービスに関する国内外動向調査)報告書(経済産業省ウェブサイト)

送信者 受信者

「秘密鍵」で暗号化=署名の作成

公開鍵暗号・電子署名

C

秘密鍵に対応する「公開鍵」で復元=署名の検証

イメージ図

送信者の秘密鍵で電子署名したデータは、暗号化され、送信者の公開鍵によってのみ暗号化が解除され、オリジナルのデータが復元されることになる。

⇒ 送信者の公開鍵で暗号化が解除されたため、受け取ったデータが改ざんされていないこと及び、間違いなく送信者が電子署名を行ったことの証明となる。

メッセージ 秘密鍵 暗号文 暗号文 公開鍵 メッセージ

Point2つのペア鍵、2つの行為

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3.5 公開鍵暗号・電子署名とは (2/2)

27

Ⅲ ブロックチェーンの技術

• 送金先アドレス(D)

• 送金金額• 送信者の

公開鍵 等

取引記録C⇒D

秘密鍵を用いて取引情報を暗号化(電子署名)

送金者(C)

公開鍵を用いて暗号化された取引情報を元に戻す

ビットコインネットワーク

秘密鍵

公開鍵

公開鍵暗号・電子署名

C

ビットコインにおける公開鍵暗号・電子署名の概要は、以下の通りである。

• 送金先アドレス(D)

• 送金金額• 送信者の

公開鍵 等

暗号化された取引情報

電子署名

送金先アドレスや送金金額、送金者の公開鍵等が含まれた取引記録は、送金者の秘密鍵によって電子署名が作成される。

当該暗号化された取引情報は、ビットコインネットワークへ発信され、採掘者によって、送金者の公開鍵を用いて暗号化された取引情報を復元することによって検証される。

発信

暗号化された取引情報

電子署名

取引記録C⇒D

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3.6 Proof of Work (PoW)とは

28

Ⅲ ブロックチェーンの技術

ブロックチェーンの構造(再掲)

直前ブロックのハッシュ値

ナンス

取引記録2 C⇒D

ブロック1

・・・

取引記録1 A⇒B

取引記録全体のハッシュ値

取引記録0 無⇒採掘者1

ブロックヘッダ

・・・

取引記録1 E⇒F

取引記録全体のハッシュ値

取引記録0 無⇒採掘者2

ブロックヘッダ

直前ブロックのハッシュ値

ナンス

取引記録2 G⇒H

・・・

取引記録1 I⇒A

取引記録全体のハッシュ値

取引記録0 無⇒採掘者3

ブロックヘッダ

直前ブロックのハッシュ値

ナンス

取引記録2 B⇒J

ブロック2 ブロック3

公開鍵暗号・電子署名

C

ハッシュ関数

B

ハッシュ関数

B

ハッシュ関数

B

Proof of Work

D

Proof of Work

D

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3.6 Proof of Work (PoW)とは

29

Ⅲ ブロックチェーンの技術

大量の計算資源を費やして計算を行った証拠と言える、ある適当な数のこと

直前ブロックのハッシュ値

ナンス(PoW)

取引記録2 C⇒D

ブロック1

・・・

取引記録1 A⇒B

取引記録全体のハッシュ値

取引記録0 無⇒採掘者1

ブロックヘッダ

ハッシュ関数 結果の数目標値よりも小さいか?

条件に見合うブロックハッシュ値が得られるまで、ナンスを繰り返し変えて計算し続ける

検証

00・・00e54583ge

• 採掘者達は、ブロックハッシュ値の上位桁にゼロが並ぶ形になるような数を求め、総当たり方式の計算を行う。

• 最も早く「ナンス」を見つめた採掘者が勝者となり、報酬として新規発行されるビットコインが付与される。

• 難易度は、10分程度でナンスが発見できるようにゼロの数を増減することで自動調整される(約 2週間に1度)

Proof of Work

D

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概要取引件数 2261合計出力 37,636.61051382 BTC推定取引量 2,599.15999572 BTC取引手数料 2.04930111 BTCブロック高 476389

タイムスタンプ 2017/7/18 14:36

受け取り時刻 2017/7/18 14:36

中継所 F2Pool難易度 804,525,194,568.13ビット 402742748サイズ 999.906 KB

バージョン 0x20000002

ノンス 1836529186

ブロック報酬 12.5 BTC

ハッシュ

ハッシュ0000000000000000008cde229bd4b8c1964c7b5c062a7cf7b1b0282895cb

ddd8

前のブロック00000000000000000135996678d5d5cb3cf9b800b659fe541c9a7448a9d6

7392

次のブロック0000000000000000002abafe63102d41aac94ce71b869f95fd1071144f3f4

143

マークルルート 32bed69a94b79831a45803f5b139ec413c3316226c8fd63c0d4af335ea0c5903

3.6 Proof of Work (PoW)とは

30

Ⅲ ブロックチェーンの技術

476,389個目のブロックの中身

(出所)Blockchain.info

• ブロックハッシュ値の上 17桁がゼロとなっている。• このような特殊な値が、偶然出てくるまで何度もナンスを入れ替えて、ひたすらハッシュ値を計算し続ける。

• 17個並んだハッシュ値を発見したら、「採掘成功!」

このブロックにおけるナンス

このブロックにおける「取引記録全体のハッシュ値」

Proof of Work

D

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3.6 Proof of Work (PoW)とは

31

Ⅲ ブロックチェーンの技術

ネットワーク参加者による新ブロックの検証

• PoWの発見者(計算競争に勝利した採掘者)は、新「ブロック」を P2Pネットワークの参加者に向けて「放送」する。

• 参加者は、ネットワークワークから受信した新しいブロックの中のすべての取引の整合性を確認し、問題なければ、自分が保持するブロックチェーンの末尾に、その新たなブロックを追加する(データベースの更新)。

計算勝利者の作業内容を検証し、皆で問題がないことを確かめ合って、自分のデータベースに追加

⇒ P2P型分散データベースにおいて、同一の帳簿が共有され続けるための合意形成方法

参加者は、新ブロックに含まれる取引記録について、送金者の署名を全てチェックし、過去の全取引情報との突き合わせを行う 

⇒ 新ブロックに二重使用がないことの検証

Proof of Work

D

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3.7 ビットコインにおけるブロックチェーン(まとめ)

32

Ⅲ ブロックチェーンの技術

1. 送信者Dは、Iに対してブロックB-2に含まれている取引情報「 C⇒D 9BTC」で受け取ったBTCをすべてIに送信するという取引情報に電子署名を行った上で、参加者へ発信。

2. マイナーは、発信された取引情報に不正なものが含まれていないか 過去のブロックに記録されている取引情報(ここでは「C⇒D 9BTC」)を参照して確認する。そのうえで、直前のブロック「B- 1」に含まれているすべての情報をハッシュ関数に入れて得られた「前ブロックのハッシュ値」及びブロックに含められた新たな取引情報に加えて、ハッシュ関数に入力した結果ブロック B-0全体のハッシュ値が「00・・・00」となるような追加データ「ナンス」を約10分間大量の計算を行うことにより求める。

3. ナンスを最も早く計算したマイナーの作業結果を、他の参加者が検証し、問題なければ当該マイナーには報酬としてビットコインが付与され、 他の参加者は新しいブロックを自らのデータベースに追加する。

T-2

前ブロックのハッシュ

ナンス

取引情報 A⇒B 5BTC

取引情報 C⇒D 9BTC

ブロックB-2

T-1

前ブロックのハッシュ

ナンス

取引情報 E⇒F 2BTC

取引情報 G⇒H 8BTC

ブロックB-1

T-0

前ブロックのハッシュ

ナンス

取引情報 D⇒I 9BTC

取引情報 E⇒D 6BTC

ブロックB-0ハッシュ関数

B

Proof of Work

D

公開鍵暗号・電子署名

C

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3.8多様なユースケース

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ブロックチェーンは、金融に限らず幅広いユースケースが想定されている。経済産業省が取りまとめた報告書*では、潜在的な国内市場規模は 67兆円になると予測されている。

*出所:平成27年度 我が国経済社会の情報化・サービス化に係る基盤整備(ブロックチェーン技術を利用したサービスに関する国内外動向調査)報告書 (経済産業省ウェブサイト)

金融取引

決済

商取引

サプライチェーン管理

送金 ポイント

証券取引 SNSサービス

デリバティブ取引 デジタルコンテンツ管理

クラウドファンディング シェアリング

リース取引 IoTエスクロー(第三者預託) ストレージサービス

トレードファイナンス オンラインゲーム

シンジゲートローン 予測市場

利用者データ

医療情報管理

公共サービス

投票

KYCデータ管理 登記簿

認証管理 アンケート調査

権利者管理 各種届出管理

ブロックチェーンの応用例

Ⅲ ブロックチェーンの技術

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3.9多様なユースケース

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オープン系ブロックチェーンでは、グローバルで様々なプロジェクトが進行している。この動向を理解するためには「DAO」(Decentralized Autonomous Organization)の概念をおさえる必要がある。

「DAO」とは、中央集権的な管理者が不在な組織であり、分散型かつ自動的・自律的なガバナンスにより運用される(自律分散型組織)。 ビットコインは、「 DAO」であると言われる。送金サービスを世界規模で提供している「組織」でありながら、その中心にはプログラムやコードで規定された一連のルールがあるのみで、経営者といった組織の全体管理を行っている者はいない。

DAOのコンセプトのもと、運営者なしで、既存のプラットフォームサービスを置き換えることを目指したプロジェクトが多い。まだ、実験段階。

ライドシェアUberのようなライドシェアビジネスをブロックチェーン上で運営しようというプロジェクト。(La’Zooz、Arcade City)

クラウドソーシングフリーランサーと企業をマッチングさせるクラウドソーシングサービスを、運営企業なしで実現させるもの。(Colony)

マーケットプレイスAmazonなどオンライの商取引プラットフォームビジネスを、ブロックチェーンで運営するプロジェクト。参加者は、自由に直接商取引が可能。(Open Bazaar)

公証書類や登記記録などのハッシュ値をブロックチェーンに記録して、公証の機能を実現するもの。(Factom)

ゲームオンラインゲームアプリケーションをブロックチェーン上で実装して運営することを目指すプロジェクト。(Gamecredits,MobileGo)

出所:各プロジェクトの webサイトの情報を基に作成

Ⅲ ブロックチェーンの技術

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ブロックチェーン技術の基本とその可能性

35

Ⅰ 仮想通貨の規制

Ⅲ ブロックチェーンの技術

Appendix

Ⅱ 仮想通貨とブロックチェーン

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Appendix スマートコントラクト

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• スマートコントラクトは、二者以上の当事者間におけるコンピュータ処理が可能な契約で、デジタル署名によって締結される。ソフトウェアにより、契約の条項の一部を実行することが可能な仕組み。

• スマートコントラクトの概念自体は、1997年にアメリカのNick Szabo氏が論文で取り上げており、ブロックチェーンの歴史よりも古い。例として自動販売機が挙げられる。すなわち、「①代金投入+②ボタンを押すという条件を満たした場合に、自動でジュースが出る」というプログラムにより、取引自動化が達成される。

• ブロックチェーンにおけるスマートコントラクトでは、コードを使って契約条件をブロックチェーンに書き込む。利用者が、条件を満たす行為を行った場合あるいは、条件を満たす何らかのイベントが起こった場合に、予め決められた契約内容に従った行為がブロックチェーン上で自動で実行されることになる。

• 2020年代には、自動執行権のある契約が多数行われると考えられている。

• パブリックかプライベートかに関わらず、ブロックチェーンの登場が引き金となり、世界中でさまざまな人々がインターネットを使ったデジタル資産の移動を目指す取り組みが活発化されている。

図表:スマートコントラクトの潜在的メリットのまとめ(ただし、これらのメリットが全てのケースに当てはまるとは限らないこと留意されたい)

出所:「PwC Technology Forecast:ブロックチェーンとスマートコントラクトオートメーション」

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仮想通貨の特徴

改正資金決済法が公表されるまで、仮想通貨に明確な定義はなかったが、「民間の主体によって発行され、独自の計算単位をもつ、価値がデジタルの形で表現されたもの」*1とされていた。仮想通貨の種類は、現在600種類以上と言われているが、時価総額ベースで全体の約8割はビットコインが占めている。

国際決済銀行(Bank for International Settlements, BIS)の決済・市場インフラ委員会(Committee on Payments and Market Infrastructures ,CPMI)は、11月23日、報告書「デジタル通貨」(原題:Digital currencies、以下「CPMI報告書」という。)を公表した。そこでは、デジタル通貨*2の特徴として、以下の3つが挙げられている(訳は、日本銀行の抄訳を参考にした)。

1. デジタル通貨は、特定の個人や機関の「負債」ではない。「資産」として、需要と供給によって価値が決定される。金等のコモディティに類似しているが、コモディティと異なり、本源的価値はゼロであり、その価値は、財・サービスや法定通貨と交換することができるという信頼にのみ基づいている。

2. デジタル通貨は、分散型元帳を利用し、第三者機関を経由しないで、個別の主体間の価値移転が可能である。銀行券も、価値移転に第三者機関が不要である点では同様であるが、「紙」の物理的な受け渡しを伴う点で異なる。他方、預金や電子マネーは、中央集権的インフラを経由し価値移転を行っている。デジタル通貨の革新的な特徴は、電子的な価値移転手段でありながら、信頼できる第三者による管理が不要である点にある。

3. デジタル通貨スキームは、金融機関等の特定の運営者が存在せず、もっぱらノンバンクが多様なサービスを提供する形で運用されている。電子マネーのスキームには発行体、ネットワーク運営者、ベンダー、アクワイヤラー、清算者等が存在するが、分散型という性質を持つデジタル通貨スキームには特定の運営者が存在しない。一方、デジタル通貨スキームには、多様な技術サービスを提供する仲介者が存在。これらの仲介者は、デジタル通貨のユーザーが価値を移転するためのウォレットサービスや、デジタル通貨とソブリン通貨(ないし他のデジタル通貨、他の資産等)を交換するサービスを提供している。

Appendix 仮想通貨の特徴(CPMI報告書)

37

*1 「Virtual Currencies and Beyond: Initial Considerations」(IMF 2016)

*2 「デジタル通貨」の用語は不完全ではあるが、広く使われており、デジタルの形式で表される資産というコンセプトを反映しているため、CPMI報告書ではこれを用いている。過去の決済・市場インフラ委員会報告書では「仮想通貨」の用語を使っていた。また、しばしば「暗号通貨」とも呼ばれる。

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図表:マネーおよび交換メカニズムの分類

Appendix 仮想通貨の特徴(CPMI報告書)

38

物理的マネーを代替し得るもの

伝統的な意味での電子マネー(ソブリン通貨建て)非物理的マネーを代替し得るもの

物理的トークン/金券

中央銀行マネー

商業銀行マネー

電子マネー(広義)

法律で承認された電子マネー(狭義の電子マネー)

デジタル通貨

現金 中銀預金中央集約的発

行分類型または自動発行

Peer-to-peerでの物理的交換(特定のインフラは不要)

伝統的な中央集権型金融市場インフラ(大口・小口決済システム)

二者間取り決め(コルレス銀行等)

電子マネー交換メカニズム:Peer-to-peerでの交換は可能だが、信頼される第三者機関が必要

分散型決済メカニズム

(Peer-to-peerでの電子的交換)

資産

交換メカニズム

電子的物理的

Peer-to-peer 信頼される第三者機関または「信頼の連鎖」が必要

Peer-to-peer

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PwCあらた有限責任監査法人

フィンテック & イノベーション 室

室長 パートナー

鈴木 智佳子[email protected]

シニアマネージャー

西坂 和彦[email protected]

マネージャー

齊藤 洸[email protected]

PwC税理士法人

フィンテック & イノベーション 室

パートナー

中村 賢次[email protected]

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