ナノマテリアル情報提供シート...法人番号 3010001008757 デンカ株式会社...

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法人番号 3010001008757 デンカ株式会社 経済産業省 平成28年6月時点 ナノマテリアル情報提供シート 材料名 アセチレンブラック 事業者名

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法人番号 3010001008757

デンカ株式会社

経済産業省

平成28年6月時点

ナノマテリアル情報提供シート

材料名 アセチレンブラック

事業者名

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添付資料備考

(測定方法等)

添付有SDS参照(2015年10月

改訂)

特性 添付有 SDS参照P1

有害性情報 添付有

SDS参照P1-3,別紙1参照(カーボンブラック取扱い安全指針、2013年9月版)別紙1 P9-13

結晶構造 添付有 別紙1 P3

凝集状態/分散状態

添付有別紙2参照(カーボンブラックに関する説明資料)P5

粒度分布 添付有

別紙3参照(ドメイン分布)、別紙4参照(アグリゲート径分布)

平均一次粒径 nm 添付有 別紙4参照

製品粒径 nm 添付無 粒状品:JIS K6219-4

アセチレンブラックはカーボンブラックと同様、アグリゲート(一次凝集体)を最小とする炭素構造体(添付資料参照)である。”粒子”とは、カーボンブラックの場合慣例的にアグリゲートの一部分(ドメイン)を意味している。アグリゲートが分割されてドメインが単独で存在することはない。即ち、アセチレンブラックは実際にはアグリゲートを最小単位とする材料であるという特徴を持っている。アグリゲートは凝集力が強く、空気中では更に凝集してより大きな粒子であるアグロメレート(二次凝集体)として存在する。

粒子(ドメイン)は添付資料4参照(電子顕微鏡写真より測定)、アグリゲート径分布は添付資料5参照(同上)、アグロメレート径分布は大気中での分布データはない。

アセチレンブラックの最小ユニットであるアグリゲート径の平均は400~1000nm(例えば添付資料5)

 粒状品;~0.5mm(粉状・プレス品は二次凝集体となっており、径は状況によって異なる)

安全データシート(SDS)

2.ナノマテリアルの特性

ゴム補強性、導電付与効果

項目 概要

1.MSDSの添付

アセチレンブラックはカーボンブラックの一種である。ナノ特有な有害性を特定するデータはないが、カーボンブラックとしての有害性情報をSDS、別紙1に示す。

乱層黒鉛構造

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製品形状 添付有SDS参照P1

密度 g/cm3 添付有SDS参照P5及びJISK6219-2

比表面積 m2/g 添付無 JIS K6217-2

表面電荷 mV 添付無

化学組成 添付有別紙5参照(カーボンブラック便覧)P1、292、294

その他物理化学的特性(気孔率、拡散、重力沈降、収着、湿式及び乾式移動、酸化還元と光化学反応の影響、土壌中の移動性等)

添付有別紙1参照、P5-6、別紙5参照 P292、294

製造・輸入量(平成27年度・概数)

基本的にはカーボンブラックと同じであるが、アセチレンブラックは表面官能基が少ないので吸湿性が小さい。別紙2、6参照。

1,000-10,000 t

 かさ密度;製品毎に異なるが、粉状・プレス品は0.02~0.18、粒状品は~0.25.

炭素(C) 97~100%酸素(O) 0~1%硫黄(S) 0~1%灰分    0~1%(アセチレンブラックは通常のカーボンブラックに比べて不純物が少ない。炭素として99%以上)

3.ばく露情報

(1)製造・輸入に関する情報

粉状、プレス状および粒状固体

35~150

ζ-電位の測定例:-20~-50   (pH 7付近)

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主な用途① 用途分類

詳細分類

主な用途② 用途分類

詳細分類

主な用途③ 用途分類

詳細分類

主な用途④ 用途分類

詳細分類 磁性材料、圧電材料、導電材料、超伝導材料、蛍光体材料

主な用途⑤ 用途分類

詳細分類 電解質材料、電解液材料、導電剤、絶縁材料、セパレータ

製造・加工施設及びプロセス

添付有別紙2参照P9-1

1、別紙5参照P292-294

労働者のばく露情報(ばく露対象者、ばく露活動・時間等)

添付無

工程からの環境排出量

添付無

計測技術と計測結果

添付無

添付無

高温に耐え得るレンガで内張りされた反応炉において、原料アセチレンガスを高温で熱分解させアセチレンブラックを生成させる。生成したアセチレンブラックはサイクロンで捕集する。捕集したアセチレンブラックは粉状、プレス化、あるいは粒状化して紙袋、フレキシブルコンテナなどに充填し、出荷する。なお、製造設備は基本的に密閉化されており、例外的に粉じんが飛散する可能性がある袋詰めなどの作業に当たっては局所排気設備および集塵設備を使用している。こうしたことから、大気中へのアセチレンブラックの排出は殆んどないと考えている。

①ばく露対象者; 袋付け作業者など②ばく露活動 ; 袋詰め作業、廃アセチレンブラック処理作業、分析作業③時間等; 袋詰め作業は6時間/日、その他は1時間/日以内

【大気】 アセチレンブラック製造設備は基本的に密閉構造であり、さらに発じんの可能性がある作業場所では局所排気設備および集塵設備を使用しており、大気環境へのアセチレンブラックの排出は殆んどないと考えている。【水質】 アセチレンブラックを含む排水は循環使用しており水質環境への排出は殆んどないと考えている

主な用途

電池(一次電池、二次電池)

可塑剤、補強剤(接着促進剤等)、充填剤

労働安全衛生法粉じん障害防止規則に従い袋詰め作業場所での計測を実施。 過去10年間の測定結果は全て第1管理区分である。(第1管理区分とは、当該単位作業場所の殆んど(95%以上)の場所で気中有害物質の濃度が管理濃度を超えない状態を指す)

(2)ばく露情報

難燃剤、帯電防止剤

合成ゴム、ゴム用添加剤、ゴム用加工助剤

プラスチック、プラスチック添加剤、プラスチック加工助剤

合成ゴム、ゴム用添加剤、ゴム用加工助剤

難燃材、帯電防止剤

電気・電子材料 

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ばく露・排出抑制対策

添付無

労働者への教育

添付無

今後の対策等のロードマップ

添付無

添付無

アセチレンブラックの製造工程は反応から充填まで基本的に密閉構造である。但し、充填など完全な密閉化が困難な作業場所では、局所排気設備を用いて粉じんの飛散を防止している。集塵用のフィルターはアセチレンブラックを充分捕集できる性能を有し、集塵したアセチレンブラックはリサイクル処理を行っている。さらに、充填作業を行う場所を中心に毎日の清掃を行っている。

「ナノマテリアルのばく露防止等の対策に対する基本的な考え方」として、ナノマテリアル検討会報告書(平成20年11月の第4部2項)にて『事業場が対策を講ずる上で参考となる知見を有し、それに基づいて予防的アプローチの観点から実効あるばく露防止対策を講じることが可能な場合は、ここに示した措置にかかわらず、独自の対応を図って差し支えない』との方針が示されている。弊社のアセチレンブラックも他のカーボンブラックと同様にREACHでは「危険有害性非該当」として登録されております。アセチレンブラックは管理された条件下で生産されており、且つ60余年の歴史を有している。その間も労働安全衛生法に従って適切に管理されてきた。アセチレンブラックは高純度、高結晶性のカーボンブラックであるため、今後エネルギー問題および地球温暖化に係る蓄電デバイスへの用途が拡がることが期待されている。これらに対する貢献を行いながら、今後も法に従って実効あるナノマテリアルに対する予防措置を継続して進めると同時にナノマテリアルに関する情報収集を図っていく。

4.リスク評価・管理の状況

労働安全衛生法の粉じん傷害防止規則等に基づく教育を行っている。また、ナノマテリアルに関する情報も踏まえて、例えば粒子捕集効率が99.9%以上の防塵マスクなど保護具の仕様を指導徹底している。さらに、MSDS等を用いてアセチレンブラックその他の取扱い物質の性状についての教育も都度実施している。

現状は労働安全衛生法およびじん肺法等の関係法令に基づいた対応を実施しており、当面は現状維持で問題はないと考える。但し、新たな知見が得られ、対応が必要となった場合には速やかに対応の検討を行う。

5.ナノマテリアルの性質等に関する事業者のコメント(ユーザに対するアドバイス等)

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[デンカブラック、DENKA BLACK Li][デンカ株式会社][整理番号 AB-07][2015 年 10月 19日]

安全データシート JIS Z 7253:2012 準拠

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デンカ株式会社 エラストマー・機能樹脂部門 特殊導電材料部

作成日 2015年10月19日

1.製品及び会社情報

製品名 : デンカブラック、DENKA BLACK Li

品種名 : 粉状,プレス50%,プレス75%,プレス100%,粒状,FX-35,HS-100,粉状M,

SAB,OSAB, Li-100, Li-250, Li-400, Li-435

会社名 : デンカ株式会社

住所 : 東京都中央区日本橋室町2丁目1番1号

担当部門 : エラストマー・機能樹脂部門 特殊導電材料部

電話番号 : 03-5290-5567

FAX番号 : 03-5290-5400

メールアドレス : [email protected]

緊急連絡先 : 大牟田工場 第一製造部 AB課 TEL: 0944-52-1072

千葉工場 第四製造部 超高純度AB課 TEL: 0436-26-3234

推奨用途:

二次電池部品、導電性プラスチック、導電性ゴム、ゴム補強剤、塗料、

電線・電纜、乾電池、紙・パルプ、擬革、絵具、鉛筆、顔料、靴ずみ、

カーボン紙、クレヨン、セラミックス、触媒担持材

整理番号 : AB07

改定履歴 : 初版作成 2001年 3月 15日

前回改定 2015年 6月 9日

2.危険有害性の要約

GHS分類

物理化学的危険性: 区分外

健康に対する有害性: 区分外

環境に対する有害性: 区分外

ラベル要素

絵表示またはシンボル: なし

注意喚起語: なし

危険有害性情報: なし

注意書き: なし

国/地域情報: 労働安全衛生法施行令別表第九 政令番号130 対象0.1%以上

粉じん障害予防規則(日本)の炭素原料に相当する。

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[デンカブラック、DENKA BLACK Li][デンカ株式会社][整理番号 AB-07][2015 年 10月 19日]

安全データシート JIS Z 7253:2012 準拠

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デンカ株式会社 エラストマー・機能樹脂部門 特殊導電材料部

3.組成、成分情報

化学物質・混合物の区分 :化学物質

化学名又は一般名 :カーボンブラック(Carbon black)

別名 :アセチレンブラック(Acetylene black)

化学式 :C

CAS番号 :1333-86-4

REACH登録番号 :01-2119384822-32-0059

官報公示整理番号(化審法・安衛法) :該当しない(元素)

分類に寄与する不純物及び安定化添加物 :情報なし

濃度又は濃度範囲 :99%以上

4.応急措置

吸入した場合: 被災者を新鮮な空気のある場所に移動し、呼吸しやすい

姿勢で休息させること。医師の手当、診断を受けること。

皮膚に付着した場合: 皮膚を速やかに洗浄すること。

目に入った場合: 水で数分間、注意深く洗うこと。

眼の刺激が持続する場合、気分が悪い時は、医師の診断、

手当てを受けること。

飲み込んだ場合: 口をすすぐこと。医師に連絡すること。

予想される急性症状及び遅発性症状(吸入): 咳、胸不快感、じん肺。

最も重要な兆候及び症状:情報なし

5.火災時の措置

消火剤: 小火災 :粉末消火剤、ソーダ灰、石灰

大火災 :乾燥砂、粉末消火剤、ソーダ灰、石灰

使ってはならない消火剤: 水、泡消火薬剤、二酸化炭素

特有の危険有害性: 燃焼速度は極めて遅く、無煙である(くん焼、火の粉伝播)。

このため消火は着火部分を広範囲で取り除き、空気遮断

した後、霧状水で冷却する。

棒状水を着火部分に注水すると火の粉が飛散し、危険で

ある。

火災によって刺激性、毒性、又は腐食性のガスを発生する

おそれがある。

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[デンカブラック、DENKA BLACK Li][デンカ株式会社][整理番号 AB-07][2015 年 10月 19日]

安全データシート JIS Z 7253:2012 準拠

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デンカ株式会社 エラストマー・機能樹脂部門 特殊導電材料部

特有の消火方法: 火災の種類に応じて適切な消火剤を用いる。

危険でなければ火災区域から包袋または容器を移動する。

移動不可能な場合、包袋または容器及び周囲に散水して冷却

する。

消火活動は、有効に行える十分な距離から行う。

包袋または容器内に水を入れてはいけない。

消火後は、大量の水を用いて十分に包袋または容器を

冷却する。

消火を行う者の保護: 消火作業の際は、適切な空気呼吸器、化学用保護衣を

着用する。

6.漏出時の措置

人体に対する注意事項、保護具及び緊急時措置:

漏洩物に触れたり、その中を歩いたりしない。

直ちに、全ての方向に適切な距離を漏洩区域として隔離する。

関係者以外の立入りを禁止する。

作業者は適切な保護具(「8.ばく露防止及び保護措置」の項を参照)を

着用し、眼、皮膚への接触やガスの吸入を避ける。

漏洩しても火災が発生していない場合、密閉性の高い、不浸透性の保護衣を

着用する。

風上に留まる。

低地から離れる。

環境に対する注意事項:

環境中に放出してはならない。

回収、中和:

漏洩物は清潔な帯電防止工具を用いて集め、プラスチック容器に入れ、

ゆるく覆いをし、後で廃棄処理する。

封じ込め及び浄化の方法・機材:

危険でなければ漏れを止める。

乾燥した土、砂や不燃材料で覆い更にプラスチックシートで飛散を防止し、

雨に濡らさない。

水で湿らせ、防護囲いをし、後で廃棄処理する。

二次災害の防止策:

すべての発火源を速やかに取除く(近傍での喫煙、火花や火炎の禁止)。

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[デンカブラック、DENKA BLACK Li][デンカ株式会社][整理番号 AB-07][2015 年 10月 19日]

安全データシート JIS Z 7253:2012 準拠

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デンカ株式会社 エラストマー・機能樹脂部門 特殊導電材料部

7.取扱い及び保管上の注意

取扱い

技術的対策:

「8.ばく露防止及び保護措置」に記載の設備対策を行い、保護具を着用する。

局所排気・全体換気:

「8.ばく露防止及び保護措置」に記載の局所排気、全体換気を行なう。

安全取り扱い注意事項:

冷所に保管し、日光を遮断すること。

使用前に取扱説明書を入手すること。

すべての安全注意を読み理解するまで取扱わないこと。

接触、吸入又は飲み込まないこと。

粉じんを吸入しないこと。

取扱い後はよく手を洗うこと。

接触回避:

「10.安定性及び反応性」を参照。

保管

技術的対策:

取り扱うために必要な採光、照明及び換気の設備を設ける。

混触危険物質:

「10.安定性及び反応性」を参照。

保管条件:

冷所に保管し、日光を遮断すること。

他の物質から離して保管すること。

容器包装材料:

国連輸送法規で規定されている包装又は容器を使用する。

8.ばく露防止及び保護措置

許容濃度

(カーボンブラック)

管理濃度: 厚生労働省告示369号(2004年10月1日) 3.0mg/㎥

許容濃度(ばく露限界値、生物学的、ばく露指標):

日本産業衛生学会勧告値 吸引性粉じん 1mg/m3(2005年版)

総粉じん 4mg/m3(2005年版)

ACGIH(2005年版) TLV-TWA 3 mg/m3

OSHA Z-1 PEL 3.5mg/m3

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[デンカブラック、DENKA BLACK Li][デンカ株式会社][整理番号 AB-07][2015 年 10月 19日]

安全データシート JIS Z 7253:2012 準拠

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デンカ株式会社 エラストマー・機能樹脂部門 特殊導電材料部

設備対策:

局所排気装置、全体換気装置。貯蔵ないし取扱う作業場には洗眼器と

安全シャワーを設置すること。

保護具

呼吸器の保護具 : 適切な呼吸器保護具を着用すること。

手の保護具: 適切な保護手袋を着用すること。

眼の保護具: 適切な眼の保護具を着用すること。

皮膚及び身体の保護具: 適切な顔面用の保護具を着用すること。

衛生対策:

取扱い後はよく手を洗うこと。

9.物理的及び化学的性質

物理的状態、形状、色など: 黒色の粉状もしくは圧縮粉状、粒状

臭い: 無臭1)

pH: データなし

融点・凝固点: 約3550℃(融点)1)

沸点、初留点及び沸騰範囲: データなし

引火点: データなし

爆発範囲: 該当しない

蒸気圧: negligible(20℃)1)

蒸気密度(空気 = 1): 該当しない

真比重(密度): 1.8-2.1(water=1)1)

溶解度: データなし

オクタノール/水分配係数: データなし

自然発火温度: データなし

分解温度: データなし

臭いのしきい(閾)値: データなし

蒸発速度(酢酸ブチル = 1): 該当しない

燃焼性(固体、ガス): データなし

粘度: 該当しない

10.安定性及び反応性

安定性: 通常の条件では安定である。

高温の表面、火花又は裸火により発火する。

危険有害反応可能性: 塩素酸塩、臭素酸塩、硝酸塩などの強酸化剤と反応する。

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[デンカブラック、DENKA BLACK Li][デンカ株式会社][整理番号 AB-07][2015 年 10月 19日]

安全データシート JIS Z 7253:2012 準拠

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デンカ株式会社 エラストマー・機能樹脂部門 特殊導電材料部

避けるべき条件: 加熱、スパーク、裸火は避ける。

粉じんの拡散を避ける。

600℃以上で着火する危険性がある。

400℃以上で火炎を生じることなく燃焼することがある。

混触危険物質: 塩素酸塩、臭素酸塩、硝酸塩などの強酸化剤。

危険有害な分解生成物: 燃焼生成ガスとして一酸化炭素、二酸化炭素。

11.有害性情報

急性毒性:

経口 ラット LD50 145400mg/kg9)

経皮 情報なし

吸入(粉じん) 情報なし

皮膚腐食性・刺激性:

ヒトのデータではirritating、一方rabbit試験データではnon-irritatingと

なっており、皮膚への影響の有無が判断できない。26)

眼に対する重篤な損傷・眼刺激性:

ヒトのデータではirritating、一方rabbit試験データではnon-irritatingと

なっており、皮膚への影響の有無が判断できない。26)

呼吸器感作性: 情報なし

皮膚感作性: 情報なし

生殖細胞変異原性:

デンカブラックについて、TA98を用いたプレインキュベーション法により試験

した結果、いずれの菌株においても復帰変異コロニーは陰性対象値の2倍未満

であったためAmes試験の結果は陰性と考えられた。(自主試験結果)

体細胞 in vivo 遺伝毒性試験(ラット肺胞細胞のDNA付加体形成試験)の

結果は陽性がある。8)本試験に使用されたカーボンブラック中の芳香族多環

水素類あるいは炎症に伴う活性酸素種の発生による可能性がある。標準的な

in vivo変異原性試験の情報がない。

発がん性:

IARC 2B、日本産業衛生学会30)2B 人間に対しておそらく発がん

性があると考えられる物質(証拠が比較的十分でない物質)。

ACGIH10) A4

ヒトに対して発がん性物質として分類できない物質。

ラットにおいて見られた腫瘍は、”lung overload”(肺への過剰負荷暴露)

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[デンカブラック、DENKA BLACK Li][デンカ株式会社][整理番号 AB-07][2015 年 10月 19日]

安全データシート JIS Z 7253:2012 準拠

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デンカ株式会社 エラストマー・機能樹脂部門 特殊導電材料部

に起因し、マウスやハムスターでは見られない。また、カーボンブラックの

疫学的調査において、カーボンブラックが人において問題となる健康事例が

ないので、発癌性の区分に非該当とする。

生殖毒性: 情報なし

特定標的臓器・全身毒性(単回ばく露):確定的な情報なし

特定標的臓器・全身毒性(反復ばく露):確定的な情報なし

吸引性呼吸器有害性: データなし

12.環境影響情報

水生環境有害性(急性):

甲殻類(オオミジンコ)の24時間EC50 5600mg/L

(IUCLID)から、本物質の水溶解度が不溶(HSDB,

2004)において当該毒性を示さない。(区分外)

水生環境有害性(慢性): 難水溶性で急性毒性が報告されておらず、水中

での挙動および生物蓄積性も不明である。

(分類できない)

13.廃棄上の注意

残余廃棄物:

廃棄においては、関連法規ならびに地方自治体の基準に従うこと。

都道府県知事などの許可を受けた産業廃棄物処理業者、もしくは

地方公共団体がその処理を行っている場合にはそこに委託して処理する。

廃棄物の処理を委託する場合、処理業者等に危険性、有害性を十分告知の

上処理を委託する。

汚染容器及び包装:

容器は清浄にしてリサイクルするか、関連法規ならびに地方自治体の

基準に従って適切な処分を行う。

空容器を廃棄する場合は、内容物を完全に除去すること。

スプレー缶を廃棄する場合は、自治体により廃棄方法が異なるので該当

する自治体の規定に従うこと。

14.輸送上の注意

国際規制

海上規制情報 : IMOの規定に従う。

UN No. : 非該当

炭素で規定される UN No.1362は動植物由来の

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[デンカブラック、DENKA BLACK Li][デンカ株式会社][整理番号 AB-07][2015 年 10月 19日]

安全データシート JIS Z 7253:2012 準拠

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デンカ株式会社 エラストマー・機能樹脂部門 特殊導電材料部

カーボンブラックのみを対象とする。

したがって、デンカブラック、DENKA BLACK Li

は非該当。

Proper Shipping Name : CARBON(non animal or vegetable origin)

Class : 非該当

デンカブラックは自然発火性固体(PGⅠof 4.2)

および自己発熱性物質(Division 4.2)に該当し

ないことを確認済。(自主試験)

Packing Group : 非該当

Marine Pollutant : 非該当

航空規制情報 : ICAO規定に従う。

国内規制

陸上規制情報 : 非該当

海上規制情報 : 船舶安全法の規定に従う。

国連番号 : 非該当

品名 : 炭素

クラス : 非該当

デンカブラックは自然発火性固体(PGⅠof 4.2)

および自己発熱性物質(Division 4.2)に該当し

ないことを確認済。(自主試験)

容器等級 : 非該当

海洋汚染物質 : 非該当

航空規制情報 : 航空法の規定に従う。

特別の安全対策

輸送に際しては、容器の破損、腐食、漏れのないように積み込み、荷崩れの

防止を確実に行う。

15.適用法令

労働安全衛生法: 名称等を通知すべき有害物

(法第57条の2、施行令第18条の2別表第9、政令番号 第130号)

毒物及び劇物取締法: 非該当

化学物質排出管理促進法:非該当

船舶安全法: 非該当(危規則第2,3条危険物告示別表第1)

じん肺法: 粉じん作業

カリフォルニア規制65号:カーボンブラック(空気中、吸入性粒子サイズの非結合

分子(airborne, unbound particles of respirable size))

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[デンカブラック、DENKA BLACK Li][デンカ株式会社][整理番号 AB-07][2015 年 10月 19日]

安全データシート JIS Z 7253:2012 準拠

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デンカ株式会社 エラストマー・機能樹脂部門 特殊導電材料部

は、カリフォルニア州のProposition 65に発がん性物質と

して収載されています。

16.その他の情報

各国既存化学物質登録情報:

国名/規則 登録名称 登録番号

USA/TSCA Acetylene black 1333-86-4

Australia/AICS Carbon black 1333-86-4

China/IECSC Carbon black 1333-86-4

Canada/DSL Carbon black 1333-86-4

EU/EINECS Carbon black 215-609-9

Korea/KECI Carbon black KE-04682

New Zealand/NZIoC Carbon black 1333-86-4

Philippines/PICCS Carbon black 1333-86-4

Switzerland/SCI KOHLENSCHWARZ 1333-86-4

Taiwan Carbon black 1333-86-4

参考文献:

1)ICSC(1995) 29)RTECS(VZ200000)HSDB Full record

2)ホンメル(1991) 30)産衛学会勧告(2005)

3)Weiss(2nd,1985) 31)IARC(2005)

4)HSDB(2002) 32)IRIS(1998)

5)危険物DB(2nd,1993) 33)EHC 61(1988)

6)ESC SYRESS 34)EHC(J) 134(1997)

7)ACGIH(2001) 35)Renzo(3rd,1986)

8)DFGOT vol.18(2002) 36)溶剤ポケットブック(1997)

9)RTECS(2004) 37)Lange(16th,2005)

10)ACGIH-TLV(2005) 38)Chapman(2005)

11)NTP(11th,2005) 39)環境省リスク評価第3巻(2002)

12)Howard(1997) 40)混触危険ハンドブック(第2版,1997)

13)UNRTDG(13th,2004) 41)ATSDR(1997)

14)SIDS(2002) 42)BSDB(2005)

15)ECETOC TR4(1982) 43)CAMD(Access on May 2005)

16)SRC(2005) 44)J Occupational Health 45:137-139(2003)

17)GESTIS(2005) 45)Eur Respr J. 25(1):201-204(2005)

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[デンカブラック、DENKA BLACK Li][デンカ株式会社][整理番号 AB-07][2015 年 10月 19日]

安全データシート JIS Z 7253:2012 準拠

[10 /10]

デンカ株式会社 エラストマー・機能樹脂部門 特殊導電材料部

18)PATTY(5th,2001) 46)DFGOT vol.12(1999)

19)AQUIRE(2003) 47)NICNAS(1999)

20)Merck(13th,2001) 48)EU Annex I(2005)

21)CERIハザードデータ集(1998) 49)Lide(85th,2004)

2)BUA 68(1991) 50)EU-RAR(2005)

23)TOXCENTER(Access on Feb 2005) 51) HSDB(2003)

24)Sax(11th,2004) 52) ICSC(1999)

25)ECETOC TR64(1995) 53) 厚生省報告(2005)

26)IUCLID(2002)

27)IARC vol.65(1996)

28)ACGIH(2003)

災害事例 情報なし

1) この情報は、作成者の知識の及ぶ限りにおいて正確ですが、その内容の絶対的な情報の正

確性および情報収集の網羅性については完全ではありません。

2) また、本記載内容は材料、製品に関するものであり、この材料が他の素材と組み合わされ

たり、処理された場合については想定しておりません。

3) この材料を適切に使用する最終的決定の責任、およびこの情報をユーザー独自の取扱いに

適合させ、完全で満足できるものとする責任はユーザーにあります。

4) 全ての材料には未知の危険性があり、取扱いに充分に注意する必要があります。

このSDSには特定の危険性について記載してありますが、これ以外の危険性が存在しな

いとは云えません。

5) ご使用に際しては、必ず貴社にて事前のテストを行い、使用目的に適合するかどうか、お

よび安全性についてご確認ください。

6) 本書の記載は新しい知見により断りなく変更する場合がありますのでご了承ください。

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別紙1.カーボンブラック取り扱い安全指針(2013 年 9 月改訂第六版)

1.名称、分類番号、化学物質規制法

1.1 名称

カーボンブラック Carbon Black(以下 CB と略す)

製法による名称分類:ファーネスブラック(IUPAC 名称 Carbon Black,furnace)

チャンネルブラック、アセチレンブラック、サーマルブラック、ランプブラック、

その他

注 ) CB は、管理された条件下で製造されたものを指す。管理されていない条件下で

副次的に発生する煤・自然発生する煤は、CB の範疇に含まれない 1)。

1.2 化学構造式

炭素(C) 乱層黒鉛構造

1.3 分類番号

① CAS( Chemical Abstracts Service Registry Number) 1333-86-4

②国連番号(国連の基準で評価した危険物番号) 対象外:鉱物系原料で製造した CB

は危険物に該当しない。現在日本で流通している CB のほとんどは、鉱物油を原料と

しファーネス法で製造された CB であり、危険物に該当しない。(動植物系原料の

CB には国連番号 1361 が付与され、危険物に該当するものがある)

③関税番号 2803

輸出入統計番号 2803.00-000

④日本工業規格

JIS K1469-2003 「電池用アセチレンブラック」

JIS K6216-1-2001 「ゴム用カーボンブラック-共通事項-第 1 部:試料採取方法」

JIS K6216-2-2001 「ゴム用カーボンブラック-共通事項-第 2 部:検定用標準カーボ

ンブラック」

JIS K6217-1-2008 「ゴム用カーボンブラック-基本特性-第 1 部:よう素吸着量の求

め方(滴定法)」

JIS K6217-2-2001 「ゴム用カーボンブラック-基本特性-第 2 部:比表面積の求め方

-窒素吸着法-単点法」

JIS K6217-3-2001 「ゴム用カーボンブラック-基本特性-第 3 部:比表面積の求め方

-CTAB吸着法」

JIS K6217-4-2008 「ゴム用カーボンブラック-基本特性-第 4 部:オイル吸収量の求

め方(圧縮試料を含む)」

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JIS K6217-5-2010 「ゴム用カーボンブラック-基本特性-第 5 部:比着色力の求め方」

JIS K6217-6-2008 「ゴム用カーボンブラック-基本特性-第 6 部:ディスク遠心光沈

降法による凝集体分布の求め方」

JIS K6217-7-2008 「ゴム用カーボンブラック-基本特性-第 7 部:ゴム配合物-多点

法窒素比表面積 (NSA )及び統計的厚さ比表面積 (STSA )

の求め方」

JIS K6218-1-2005 「ゴム用カーボンブラック-付随的特性-第 1 部:加熱減量の求め

方」

JIS K6218-2-2005 「ゴム用カーボンブラック-付随的特性-第 2 部:灰分の求め方」

JIS K6218-3-2005 「ゴム用カーボンブラック-付随的特性-第 3 部:ふるい残分の求

め方」

JIS K6218-4-2011 「ゴム用カーボンブラック-付随的特性-第 4 部:トルエン着色透

過度の求め方」

JIS K6218-5-2011 「ゴム用カーボンブラック-付随的特性-第 5 部:溶媒抽出量の求

め方」

JIS K6219-1-2006 「ゴム用カーボンブラック-造粒粒子の特性-第 1 部:微粉量の求

め方」

JIS K6219-2-2006 「ゴム用カーボンブラック-造粒粒子の特性-第 2 部:かさ密度の

求め方」

JIS K6219-3-2006 「ゴム用カーボンブラック-造粒粒子の特性-第 3 部:造粒粒子の

硬さの求め方」

JIS K6219-4-2006 「ゴム用カーボンブラック-造粒粒子の特性-第 4 部:造粒粒子の

大きさの分布の求め方」

⑤RTECS( Registry of Toxic Effects of Chemical Substances=米国 NIOSH のデータ

ベース) FF5800000

⑥ Color Index C.I.Constitution numbers: C.I.77266

C.I.Generic Name: C.I.Pigment Black 7

⑦ ICSC( International Chemical Safety Cards=国際化学物質安全性カード) 0471

1.4 化学物質規制法(各国の新規化学物質届出制度、既存化学物質リスト)

① 化審法:CB は元素(C)であり、化学物質に該当しないので対象外。

② 安衛法:CB は通知対象物質に該当する。(第 57 条 -2 別表第 9 No.130)

③ TSCA( U.S.Toxic Substances Control Act): 既存化学物質として記載(1333-86-4)

④ EINECS( European Inventory of Existing Commercial Chemical Substances):

既存化学物質として記載(215-609-9)

⑤ DSL( Canada Domestic Substances List):既存化学物質として記載(1333-86-4)

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⑥ AICS( Australian Inventory of Chemicals and Chemical Substances):既存化

学物質として記載(1333-86-4)

⑦ PICCS( Philippine Inventory of Chemicals and Chemical Substances):既存化

学物質として記載(1333-86-4)

⑧ KECI( Korean Existing Chemicals Inventory):既存化学物質として記載(KE-04682)

⑨ IECSC( Inventory of Existing Chemical Substances in China):既存化学物質

として記載(1333-86-4)

⑩ NZIoC( New Zealand Inventory of Chemicals):既存化学物質として記載(1333-86-4)

⑪ SWISS( Inventory of Notified New Substances in Accordance with the Ordinance

on Substances):既存化学物質として記載(1333-86-4)

⑫ Taiwan Toxic Chemical Substances Control Act 1986:記載なし

⑬ Taiwan Existing Chemical Substance Nomination: 現在、法制化中。ドラフト版

のリストには記載(1333-86-4)

⑭ California Proposition 65:発がん性物質として「carbon black(airborne, unbound

particles of respirable size 空気中に飛散する吸入可能なサイズのもの)」が

加えられた。(2003)

1.5 参考文献

1)カーボンブラック便覧<第三版>(1995 年)、カーボンブラック協会

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2.主な物理的性質

2.1 製品形状

粉状および粒状固体。

2.2 色相

黒色。

2.3 臭気

なし。

2.4 密度

ピクノメータ使用の液体置換法で測定した密度は 1,700~ 1,900kg/m3 である。また

粒子製品のかさ密度は銘柄により異なるが、一般的には 200~ 700 kg/m3 の範囲にある。

2.5 沸点・融点

いずれも 3,000℃以上。

2.6 溶解性

水や油、溶剤には不溶である。

2.7 揮発分

ふたつきルツボ中、950℃で 7 分間加熱した場合の揮発減量を揮発分という。ゴム用

の CB では一般に 5%以下であるが、カラー用では 20%台と高い銘柄もある。

2.8 比熱

CB の比熱データは乏しい。参考までに黒鉛の比熱は 0.71kJ/kg(298.15k)である。

2.9 吸湿性

水の CB への吸着量は雰囲気の相対湿度が高いほど多くなる。低湿度では CB 表面の

酸性官能基との化学吸着が見られ、CB の揮発分と関係が強く、中間の湿度では比表面

積依存性が強く、高湿度では水分は単に凝集体粒子間の細孔への凝縮と考えられる。

従って一般的に、比表面積が大きいすなわち粒子径が小さい銘柄は吸湿性が高い。

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3.主な化学的性質

3.1 反応性

CB 単体では通常安定であるが CB 表面にはヒドロキノン、ラクトン、キノン等の酸

素含有官能基が付着しており、重合反応等への影響や触媒作用がある。水との反応性

はない。

強酸化物質と接触した場合には反応して発熱する危険性がある。

3.2 酸化性

他の物質に対する酸化性はない。

3.3 pH

4~ 11(50g/l 水溶液, 20ºC) 非酸化 CB

2~ 4 酸化 CB

3.4 腐食性

水が共存すると CB 中の微量不純物により金属の腐食が促進されることがある。

4.引火性および爆発性

4.1 引火性

なし。

4.2 着火性

着火温度は銘柄及び形状で異なるが、一般には 290~ 520℃である。ただし揮発分の

多い銘柄や高酸素濃度下では着火温度が低くなる傾向がみられる。また約 150℃以上

の温度で長時間放置すると蓄熱で着火する場合もある。

しかし、危政令第 1 条の 4 に示されている危険物第 2 類確認試験である小ガス炎着

火試験で着火しないため、消防法第 2 条第 7 項別表第 1 に掲げられている危険物第 2

類 (可燃性固体)には該当しないことから、消防法で定める危険物には該当しない。ま

た、平成 2 年 10 月 31 日付け消防危第 105 号に消防法で定める指定可燃物にも該当し

ないことが示されている。

これらの事実から可燃性の粉じんであるが、消防法で定める危険物や指定可燃物に

は該当しない。

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4.3 燃焼性

火炎を生じることなく燃焼する。(くん焼、火の粉伝播)また着火しても燃焼速度

が非常に遅いため発見が遅れることがある。

4.4 爆発性 1)

粉じん爆発とは、可燃性粉じんと空気の混合物において局所的な燃焼反応体が形成

され、これが混合物中を伝播し、圧力の上昇が認められる場合をいう。最大圧力上昇

速度から求められた爆発クラスの分類によると、CB は爆発の激しさが弱い粉じんであ

る。(クラス 1)

爆発クラスの分類は次の通りである。

爆発クラス 0

1

2

3

燃焼・爆発性のない粉じん

爆発の激しさが弱い粉じん

爆発の激しい粉じん

爆発の激しさの特に大きい粉じん

なお揮発分 8%以上のCBは粉じん爆発に関して特に注意を要すると言われている。

2)

一般的な CB の粉じん爆発特性値は、粉じん層着火温度は 360℃以上、最小着火エネ

ルギーは酸素中で 18~ 100mJ、爆発下限界濃度は 0.1kg/m3 以上、爆発限界酸素濃度は

35%以上と言われている。従って、通常の品種であれば常温の空気中では着火、粉じん

爆発の危険性はないと言える。もし仮に、高酸素濃度下または高温雰囲気下において

浮遊状態且つスパーク等の強力な点火源がある場合において、粉じん爆発が生じた場

合においても、CB は着火エネルギーが高いこと、燃焼速度が極めて遅く且つ火炎を伴

わないこと等の理由から爆発力は非常に弱いと言える 3)。

4.4 参考文献

1)粉じん爆発の防止対策 第1版(1996)中央労働災害防止協会

2)米国 National Electric code:Standard 70,Article 500-3 groupF(1987)

3)カーボンブラック便覧<第三版>(1995 年)、カーボンブラック協会

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5.生体に対する有害性

5.1 発がん性

5.1.1 概要

CB の発がん性は、実験動物への肺吸入による毒性学的研究、ヒトのコホート研究(特定の集団の

健康状態を、長期間にわたり調べ、疾病とその要因を生活習慣や環境との関連から調査する研究)

による疫学的研究が数多く行われている。雌ラット、マウス、ハムスターを使用した動物実験では、

吸入による肺過負荷条件下で、雌ラットのみに肺腫瘍が見られた。CB 工場労働者を対象としたコホ

ート研究では、暴露と肺がんの発生率に因果関係は見いだせなかった。これらの研究結果に基づき、

各評価機関により発がん性が分類され、公表されている。国際がん研究機関(IARC)では CB の発

がん性を、ヒトにおいては十分なエビデンスが無いとしながらも、雌ラットにおいて発がん性の十

分なエビデンスがあるとして、「ヒトに対して発がん性を示す可能性がある」という2Bに分類した。

一方、「動物毒性試験で肺腫瘍が見られたのは、非水溶性微粒子を肺に過負荷投与した時に発生す

るラット特有の現象である。」ことと、疫学的調査結果をもとに、国連世界調和システム(GHS)及

び/あるいはヨーロッパ EU 圏の分類法規(CLP)にて判定すると、CB への発がん性分類は「区分外」

(not classified)となる。国際カーボンブラック協会(ICBA)では EU・GHS のルールを支持してい

る。CB の発がん性評価に関し、各評価機関の分類は以下の様になっている。

UN GHS 及び EU CLP 評価基準に基づく評価

評価基準 評価

国連世界調和システム(ルー

ル)(UN GHS)

区分外(not classified) (評価機関:国際カーボンブラック協会(ICBA))

根拠:動物実験で有害影響が見られたが、その機構及び作用モードにおい

てヒトへの関連性が十分でないため有害であると分類すべきでない。

欧州連合 物質及び混合物の

分類、ラベル、包装に関する

規則

(EU CLP)

区分外(not classified)

(評価機関:カーボンブラックコンソーシアム(CB4REACH))

根拠:実験動物における肺過負荷の条件下で示される発がん性が、動物

の種に特有な機構によるものであるとき、ヒトへの関連において作用機構

上明らかではなく、有害であると分類すべきでない。 CLP中の危険物質リ

ストには記載されていない。

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発がん性評価機関による評価

評価機関 評価結果

国際がん研究機関 (IARC)

総合評価:2B ヒトに対して発がん性があるかもしれない

評価理由:発がん性に関し、実験動物の研究では十分なエビデンス(証拠)

があるが、ヒトにおいては、十分なエビデンスが無い。

米国産業衛生専門家会議

(ACGIH)

A3: 動物で発がん性が確認されているが、ヒトへの関連性は知られていな

い。

日本産業衛生学会 第 2 群 B: 許容濃度等の勧告(2011 年度) - 疫学研究からの証拠はない

が,動物実験からの証拠が十分である.

アメリカ合衆国環境保護庁

(EPA)

物質の発がん性を評価するデータベース(IRIS-Integrated Risk

Information System )に記載されていない。

米国国家毒性プログラム

(NTP)

発がん性物質報告書(Report on Carcinogens ;RoC)に記載されていな

い。

米国国立労働安全衛生研究

所(NIOSH)

0.1 重量%以上の多環芳香族炭化水素(Polycyclic aromatic

hydrocarbon、PAHs)を含有するCBを「職業性がんを起こす可能

性物質のリスト」に収載している。

5.1.2 動物実験(毒性学研究)

5.1.2.1 経口投与

マウスおよびラット 1)に 2 年間にわたって経口投与に関して試験されたが、腫瘍発生率の増加は

認められなかった。

5.1.2.2 吸入試験

マウス、ハムスター、ラット(雄、雌)の吸入試験から以下の結論が導かれる。

第一に、長期にわたる高濃度の CB の吸入は、肺胞からの不溶性粒子の排除の遅延と粒子の顕著

な滞留をもたらす。この現象は「肺過負荷」と呼ばれ 2)、毒性の低い様々な吸入性不溶性粉塵によ

く見られる。ラットでは、このような肺への高負荷の結果、持続的な炎症が引き起こされ、それに

よって炎症が促進され、上皮過形成、肺線維症などが発生する。

第二に、ラットは、CB 過負荷の影響に対して、他種(マウス、ハムスター)よりも感受性が高く、

雌ラットは雄ラットよりも顕著な反応を示す 3)。長期間の試験において、肺腫瘍の発生が有意に増

加する傾向が見られたのは雌ラットのみであった。

霊長類 4)やヒト 2) での粒子沈着、クリアランスのパターン、組織の反応は、ラットとは明らかに

異なる。こうした違いは、肺過負荷条件下で腫瘍が発生するというラットの特殊性を際立たせてい

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る。Mauderly はラットによる動物試験結果を、種を超えてヒトに与える影響の推定に用いることの

妥当性に疑問を投げた 5)。米国産業衛生専門家会議(ACGIH)は Mauderly の見解を支持し、2011 年

発行の CB の TLV(閾値)文書において、「ラットによる肺過負荷条件下での実験結果をそのままヒト

に適用するには疑問がある。」とし、分類を 3とした。

(1) マウス

濃度 7.4-12.2mg/m3のファーネスブラックに暴露させる吸入試験では、暴露されたグループに体

重の減少が見られた、また若干の腫瘍も見られたが、暴露されていないグループ(コントロール)と

の統計的差異は見られなかった 6)。

(2) ハムスター

高濃度(57-110mg/m3)のファーネスブラックに暴露させる吸入試験が行われたが、喉頭がん、気管

支の腫瘍は見られなかった 7)。

(3) ラット

ラットを対象とした CB の吸入暴露試験は、ファーネスブラックを使用して、いくつかの暴露濃

度(2.5mg-50mg/m3)、暴露パターンで行われている。これらの試験から以下の結果が導かれ、IARC

が CB を発がん性 2B の分類に到る証拠として用いられた。

Dungworth8), Heinrich9)らは雌のラットを用い、6 ㎎/m3の濃度で、2 つのグループをそれぞれ、

43 週間と 86 週間暴露させた。この結果 43 週暴露グループは肺腫瘍率が 18%で、86 週暴露グル

ープでは 8%で、暴露により肺腫瘍発生が増加することが分かった。長期間の方が肺腫瘍率は低

かったが、統計上この差異は重要では無いとしている。

Dungworth8)、 Heinrich6)らは雌のラットを用い、平均 11.6 ㎎/m3の濃度で 24 か月暴露させた

ところ、暴露グループの死亡率は 56%(非暴露グループ(コントロール)は 42%)であった。そ

の後暴露を止め、清浄空気下で 6か月置かれたが、30 か月目の死亡率は暴露グループで、92%、

コントロールは 85%で、暴露グループの死亡率が高くなった。また暴露グループでは 39%に肺

腫瘍が発生した。

Mauderly10)、Nikula9)は雄、雌のラットを用い、2.5mg/m3と 6.5mg/m3の吸入濃度で、24 か月(16

時間/日、週 5日)暴露させる試験を実施した。この結果;

雄、雌とも暴露により、平均寿命が短縮し、高吸入濃度のグループの方がこの傾向が

顕著であった。

雄、雌とも暴露により体重の減少が観察され、22 か月後では、高吸入濃度では雄、雌

の減少率は、それぞれ 14%と 16%減であった。低濃度グループでは雄、雌の減少率は

10%以下であった。

暴露により、肺に進行的に CB の蓄積が起こり、高濃度グループでは雌の肺負荷が

30mg/g で、蓄積量が雄よりも 50%多くなっていた。低濃度グループでも蓄積は発生し、

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蓄積量は高濃度より低く、また雌の方が大きな蓄積量を示した。

ラットの肺の調査から、雌のラットにおいて線腫及び線がんが確認され、肺腫瘍は高

濃度グループで 26.7%、低濃度では 7.5%であった。雄においては統計上意味のある肺

腫瘍発生は見られなかった。

5.1.2.3 気管支内投与

雌のラットに生理食塩水中に CB を懸濁させ、気管支内に投与した試験では、各種濃度において、

肺腫瘍の発生率の増加が認められた 11)。

5.1.2.4 皮膚接触

オイルに懸濁させた CB を、マウスの皮膚に塗布して試験されたが、皮膚に対する発がん性への

影響は認められなかった 12)。なお同試験において、CB のベンゼン抽出物の塗布試験では、皮膚腫

瘍の発生が認められた。

5.1.2.5 皮下注入

多環芳香族炭化水素(ベンゾ(a)ピレンとその他6種類のPAHs)を添加したCBをマウスに皮下注入

した試験では、皮下注入したマウスに局所的に腫瘍を発生させた。 多環芳香族炭化水素を添加し

ていない CB では腫瘍の発生は認められなかった 13)。

5.1.4 疫学調査

CB 生産工場での肺癌死亡率の疫学調査は、米国、ドイツ、英国の CB 工場労働者に対して行われ

た。これらの研究は各機関の発がん性評価で検討され、CB への暴露と肺がんの発生率に因果関係は

見いだせなかったと結論付けられている。

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死亡率調査結果

米国 ドイツ 英国

対 象 工

米国の CB18 工場 ドイツ CB1 工場 英国の 5 工場(工場は現在、

全て閉鎖されている。)

対象者 1935 年から 2003 年の間に

就業した 5,011 名の労働者

(製造関係作業者のみ)が

対象、うち 6%は女性

1976 年から 1998 年の間に

就業した 1,528 名の労働者

が対象

1951 年から 1996 年の間に

就業した 1,147 名の労働者

が対象

調 査 期

労働者に付き、平均 29 年の

追跡調査を実施

- -

調 査 結

CB 工場労働者の中で、暴露

によるがん発生率の増加は

認められない。

SMR(標準化死亡率)は 0.85

(127 例、95%CI(注): 0.71,

1.00) と算出された。

調査対象母集団で肺がん発

生増加が認められた(SMR

は 1.83 (50 例 、

95%CI(注): 1.34, 2.39)が、

CB への暴露との間に因果関

係は認められなかった。

がん発生率の増加が認めら

れたが(SMR は 1.73 (61 例、

95%CI(注) : 1.32, 2.22))、

CB への暴露によるものとは

関係付けなかった。

説明 初回暴露からの経過時間や

暴露期間との間にいかなる

傾向も認められなかった。

調査対象母集団の以前の職

場での、アスベスト及びそ

の他既知発がん性物質への

事前暴露が死亡率の増加に

貢献したと考えられてい

る。

調査対象母集団で肺がんの

発生増加が認められた

この調査では、その他要因

(喫煙、アスベストへの暴

露等以前の勤務地での発が

ん物質暴露)により死亡率

が増加したと考えられてい

る。

(注):95% C.I, confidence intervals (信頼区間)

5.1.4.1 UN GHS 及び EU CLP 評価基準に基づく評価

(1) 国連 世界調和システム(UN GHS)

ラットにおいて、CB は「肺過負荷」の条件下で、肺に刺激、細胞増殖、繊維形成、さらには肺腫

瘍を発生させたが、この反応は主としてラット、特に雌のラットに現れる種特異的な現象であり、

ヒトへの関連は知られていない 3)。この研究結果は、UN GHS(Globally Harmonized System of

Classification and Labeling of Chemicals-化学品の分類および表示に関する世界調和システム)

による CB のラベル表示にも影響する。UN GHS では、「動物実験で、動物に現れる影響の作用機構が、

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ヒトの代謝においてそのまま適用するのに疑問がある場合、動物実験よりも低い発がん性分類を採

用する。また作用形態または作用機序がヒトに該当しない場合は、その物質が有害であるという分

類はしない 14)としてある。CB では、ラットの実験で得られる有害影響の発生機構において、ヒト

への関連性が十分でないため、国際カーボンブラック協会(ICBA)では UN GHS ルールに則り、有

害であると分類すべきでないと判断している。

(2) ヨーロッパユニオン(EU CLP)

EU 圏で全ての化学物質の分類と表示に適用される「CLP-物質及び混合物の分類、ラベル、包装

に関する規則 22)」では、動物実験で、特定臓器への発がん性が認められたとしても、それがその動

物の種に特有な機構によるものである時、それをヒトへの有害性を予測する根拠として用い分類し

ないというルール(CLP Annex I, 3.9.2.8.1. (e))があり、特に「肺過負荷」の条件下の動物実

験データはその立場から、CB は発がん性分類の対象外である。カーボンブラックコンソーシアム

(CB4REACH)は CLP 規則に則り、発がん性分類において有害であると分類すべきでないと結論し、

2009 年に CB4REACH メンバーにより欧州化学品庁に提出、受理されている。

CB は、CLP 規則 22)中の「List of harmonized classification and labeling of hazardous

substances(危険物質リスト)」には含まれない。

5.1.4.2 各機関の発がん性評価結果

(1) 国際がん研究機関(IARC)

世界保健機関(WHO)の外部組織である、国際がん研究機関(IARC)24)は英国 15)、ドイツ 16)、北

米 17)で労働者を対象に行われたヒトのがんリスクに関する疫学評価結果(コホート研究調査結果)

を評価し、ヒトにおける CB の発がん性を証拠立てるには不十分であると結論した 18)。しかしなが

ら、CB のラットでの吸入実験研究結果 8)9)19)は発がん性のエビデンスとして十分であるとし、発が

ん性分類グループ 2B「ヒトに対して発がん性を示す可能性がある」に分類した(IARC モノグラフ

-Vol 65 1996/ Vol 93 2010)。これは1つの種であっても、異なる 2 つ以上の動物実験研究で発が

ん性が陽性であることが示された場合、このように分類するという IARC の指針に基づく結論であ

る。

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IARC の発がん性分類と各グループの物質例

グループ 定義 例

1 ヒトに対して発がん性がある(carcinogenic to

humans).

ダイオキシン,アスベスト,紙タバ

コ,アルコール飲料,電離放射線

2A ヒトに対しておそらく発がん性がある

(probably carcinogenic to humans).

紫外線照射,クレオソート,ホルム

アルデヒド

2B ヒトに対して発がん性があるかもしれない

(possibly carcinogenic to humans).

コーヒー,ゼリーや乳製品の安定剤

(カラゲーニン),わらび,ガソリ

3 ヒトに対する発がん性については分類できな

い ( cannot be classified as to

carcinogenicity in humans).

カフェイン,お茶,コレステロール

4 ヒトに対しておそらく発がん性がない

(probably not carcinogenic to humans).

カプロラクタム

(2) 米国産業衛生専門家会議(ACGIH)20)

ACGIH は CB の発がん性に関し、ラットによる吸入毒性試験では陽性であったが、これは「肺過負

荷」状況にさらされた結果であり、ヒトの肺がん性へ関連付けるには不十分という Mauderly5)の見

解を支持した。さらに、英国 15)、ドイツ 16)、北米 17)での労働者を対象に行った「コホート」研究

の疫学調査結果において、CBへの暴露と発がん性の因果関係が見られなかったことから,ACGIHは、

発がん性分類 A3「動物に対し発がん性物質であるが、ヒトとの関連は分かっていない」としている。21)

(3) 日本産業衛生学会

日本産業衛生学会は、国際がん研究機関(IARC)の発がん性分類を検討し,発がん物質表を定めてい

る。この中で CB は「第 2群 B-疫学研究からの証拠が限定的であり,動物実験からの証拠が十分で

ない.または,疫学研究からの証拠はないが,動物実験からの証拠が十分である。」に分類される。

(4) 米国 環境保護庁(EPA: Environmental Protection Agency)

EPA は物質の発がん性分類を行っているが、CB は含まれておらず、また EPA の IRIS システム

(Integrated Risk Information System-ヒトが環境中で暴露され悪影響を及ぼす化学物質のリス

ト)に含まれない。

(5) 米国 国家毒性プログラム-(NTP:National Toxicology Program)

NTP は、発がん性物質を RoC(Report on Carcinogens)23)で公開するが、CB はそのリストには含

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- 16 -

まれない。

(6) 米国国立労働安全衛生研究所(NIOSH)

NIOSH(National Institute of Occupational Safety and Health)は職業性がんを起こす可能性

物質のリストを公開し、0.1 重量%以上の多環芳香族炭化水素(Polycyclic aromatic hydrocarbon、

PAHs)を含有するCBがそのリストに入っている。

5.1.5 CB 抽出物

CB 中に含有される有機溶剤可溶分(CB 抽出物)は、IARC を始め、すべての機関で発がん性の認

められた多環芳香族炭化水素を含んでいる 25)。従ってトルエン着色透過度や溶媒抽出量を測定する

試験においてはこれに暴露する機会の生じないよう留意しなければならない。

5.2 がん以外の毒性

5.2.1 呼吸器系への作用

CB は他の低溶解性、低毒性の一般的粉じんと同様の作用を示す。過去の疫学調査によれば、高濃

度・長時間の暴露で肺への蓄積量が増加し、その結果次のような症状が報告されている 26)。

① 肺内に蓄積された異物(CB 等)の体外へ排出される期間の長期化

② 肺活量等の機能の低下及びじん肺

③ せき、たんを伴う気管支疾患の増加

5.2.2 皮膚への作用

CB に、皮膚感さ性は報告されていない。長期にわたる接触では皮膚の乾燥、刺激を伴うことがあ

る。

5.3 許容濃度等

5.3.1 日本

① 管理濃度(厚生労働省告示 369 号 2004 年 10 月 1 日、改正厚生労働省告示 437 号 2007 年 12 月

27 日)

CB は遊離けい酸含有率ゼロなので 3.0 mg/m3

② 日本産業衛生学会勧告値 2001 年 1 月 15 日

CB は第2種粉じんに該当し、吸入性粉じん 1 mg/m3、総粉じん 4 mg/m3

5.3.2 米国

① ACGIH(産業衛生専門家会議)許容濃度勧告値(時間加重平均)

TLV-TWA 3.0 mg/m3 (吸引性粉じん)

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(TLV:Threshold Limit Value TWA:Time Weighted Average)

② OSHA(労働安全衛生局)許容暴露限界値(時間加重平均)

PEL-TWA 3.5 mg/m3

(PEL:Permissible Exposure Limit)

③ NIOSH(国立労働安全衛生研究所)暴露限界勧告値(時間加重平均)

REL-TWA 3.5 mg/m3

(REL:Recommended Exposure Limit)

NIOSH では浮遊粉じんとしての CB 中の PAHs(多環芳香族炭化水素)含有量が 0.1%を超える場合

には、空気中の PAHs の測定が必要であると推奨しており、シクロヘキサン抽出成分としての測定

において、空気中の PAHs の暴露限界は 0.1 mg/m3(REL)と推奨している。

5.3.3 その他各国

オーストラリア: 3.0 mg/m3, 時間荷重平均 TWA 吸入粉塵

ベルギー: 3.6 mg/m3, TWA

ブラジル: 3.5 mg/m3, TWA

カナダ(オンタリオ州): 3.0 mg/m3, TWA 吸入粉塵

中国: 4.0 mg/m3, TWA; 8.0 mg/m3, 短時間暴露限度(STEL-通常 15 分間の時間荷重平均濃度)

コロンビア: 3.0 mg/m3, TWA 吸入粉塵

チェコ: 2.0 mg/m3, TWA

フィンランド: 3.5 mg/m3, TWA; 7.0 mg/m3, STEL

フランス - 国立安全衛生研究所: 3.5 mg/m3, 暴露平均濃度

ドイツ - TRGS 900: 3.0 mg/m3, 時間荷重平均 吸引域粉塵; 10.0 mg/m3, 時間荷重平均 吸入粉塵

ドイツ - AGW: 1.5 mg/m3, TWA 吸引域粉塵; 4.0 mg/m3, TWA 吸入粉塵

香港: 3.5 mg/m3, TWA

インドネシア: 3.5 mg/m3, TWA

アイルランド: 3.5 mg/m3, TWA; 7.0 mg/m3, STEL

イタリア: 3.0 mg/m3, TWA 吸入粉塵

韓国: 3.5 mg/m3, 時間荷重平均

マレーシア: 3.5 mg/m3, 時間荷重平均

オランダ - 最高許容濃度: 3.5 mg/m3, 時間荷重平均 吸入粉塵

ノルウェイ: 3.5 mg/m3, 時間荷重平均

スペイン: 3.5 mg/m3, 時間荷重平均(表示限界値)

スウェーデン: 3.0 mg/m3, 時間荷重平均

イギリス - 職場暴露許容濃度:3.5 mg/m3, 時間荷重平均 吸入粉塵; 7.0 mg/m3, 短時間暴露限度

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(通常 15 分間の時間荷重平均濃度) 吸入粉塵

5.4 参考文献

1) Pence BC, Buddingh F (1985). The effect of carbon black ingestion on

1,2-dimethylhydrazineinduced colon carcinogenesis in rats and mice. Toxicol Lett, 25:273.277

doi:10.1016/0378- 4274(85)90207-3. PMID:4012805

2) Mauderly JL. Lung Overload: The Dilemma and Opportunities for Resolution. Inhal. Toxicol.

8:1-28 (1996)

3) ILSI Risk Science Institute Workshop: The Relevance of the Rat Lung Response to Particle

Overload for Human Risk Assessment. Inhala. Toxicol. 12:1-17 (2000).)

4) Nikula KJ, Avila KJ, Griffith, WC, Mauderly JL. Lung Tissue Responses and Sites of

Particle Retention Differ Between Rats and Cynomolgus Monkeys Exposed Chronically to Diesel

and Coal Dust. Fundam. Appl.Toxicol. 37:37-53 (1997)

5) Mauderly JL; Relevance of particle-induced rat lung tumors for assessing lung

carcinogenic hazard and human lung cancer risk. Environ Health Perspectr 105 (Supp 5):1337-46

(1997))

6) Heinrich, U., Fuhst, R., Rittinghausen, S., Creutzenberg, O., Bellman, B., Koch, W.,

and Levsen, K. (1995). Chronic Inhalation Exposure of Wistar Rats and Two Different Strains

of Mice to Diesel Engine Exhaust, Carbon Black, and Titanium Dioxide. Inhal. Toxicol.

7:533-556

7) Snow JB Jr (1970). Carbon black inhalation into the larynx and trachea. Laryngoscope,

80:267–287 doi:10.1288/00005537-197002000-00012. PMID:5416460

8) Heinrich U (1994). Carcinogenic effect of solid particles. In: Mohr U, Dungworth DL,

Mauderly JL, Oberdörster G, eds, Toxic and Carcinogenic Effects of Solid Particles in the

Respiratory Tract, Washington DC, ILSI Press, pp. 57–73.

9) Nikula KJ, Snipes MB, Barr EB et al. (1995). Comparative pulmonary toxicities and

carcinogenicities of chronically inhaled diesel exhaust and carbon black in F344 rats. Fundam

Appl Toxicol, 25:80–94 doi:10.1006/faat.1995.1042. PMID:7541380

10) Mauderly JL, Snipes MB, Barr EB et al. (1994) Pulmonary Toxicity of Inhaled Diesel

Exhaust and Carbon Black in Chronically Exposed Rats. Part I: Neoplastic and Nonneoplastic

Lesions (HEI Research Report Number 68), Cambridge, MA, Health Effects Institute.

11) Pott &Roller.,Heinrich.,Dasenbyock et al: IARC Monographs on the Evaluation of

Carcinogenic Risks to Humans –Page 116-118 Intratracheal administration

12) Nau CA, Neal J, Stembridge VA (1958). A study of the physiological effects of carbon

black. II. Skin contact. AMA Arch Ind Health, 18:511–520. PMID:13593888

13) Steiner PE (1954). The conditional biological activity of the carcinogens in carbon

blacks, and its elimination. Cancer Res, 14:103–110. PMID:13126943

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14) Global Harmonized System of Classification and Labelling of Chemicals (GHS) 4th

Revised Edition 1.3.2.4.9.4

15) Sorahan T, Hamilton L, van Tongeren M, Gardiner K, Harrington JM (2001). A cohort

mortality study of U.K. carbon black workers 1951-96. Am. J. Ind. Med. 39(2),158-170.)

16) Wellmann J, Weiland SK, Neiteler G, Klein G, Straif K (2006). Cancer mortality in German

carbon black workers 1976-1998. Occupational and Environmental Medicine 63(8):513-521.

Morfeld P, Büchte SF, Wellmann J, McCunney RJ, Piekarski C (2006a). Lung Cancer Mortality

and Carbon Black Exposure: Cox Regression Analysis of a Cohort From a German Carbon Black

Production Plant. J. Occup. Environ. Med. 48, 1230–1241.

Morfeld P, Büchte SF, McCunney RJ, Piekarski C (2006b). Lung Cancer Mortality and Carbon

Black Exposure: Uncertainties of SMR Analyses in a Cohort Study at a German Carbon Black

Production Plant. J. Occup. Environ. Med. 48, 1253–1264.

Buechte SF, Morferld P, Wellmann J, Bolm-Audorff U, McCunney RJ, Piekarski C (2006). Lung

Cancer Mortality and Carbon Black Exposure: A Nested Case–Control Study at a German Carbon

Black Production Plant. J. Occup. Environ Med 48(12), 1242–1252.

17) Dell LD, Mundt KA, Luippold RS, Nunes AP, Cohen L, Burch MT, Heidenreich MJ, Bachand

AM (2006). A Cohort Mortality Study of Employees in the U.S. Carbon Black Industry. J. Occup.

Environ. Med. 48(12), 1219–1229

18) Baan R, Straif K, Grosse Y, Secretan B, El Ghissassi F, Cogliano V (2006).

Carcinogenicity of carbon black, titanium dioxide, and talc. Lancet Oncol 7(4), 295-296.

19) Dungworth DL, Mohr U, Heinrich U et al. (1994). Pathologic effects of inhaled particles

in rat lungs: associations between inflammatory and neoplastic processes. In: Mohr U,

Dungworth DL, Mauderly JL, Oberdörster G, eds, Toxic and Carcinogenic Effects of Solid

Particles in the Respiratory Tract, Washington DC, ILSI Press, pp. 75–98.

20) American Conference of Governmental Industrial Hygienists

21) Carbon Black TLV®, ACGIH 2011

22) Regulation (EC) No 1272/2008 on classification, labelling and packaging (CLP) of

substances and mixtures

23) Report on Carcinogens (12th Edition 2011) –U.S. Department of Health and Human Services

Public Health Service National Toxicology Program

24) International Agency for Research of Cancer

25) IARC:ibid.,65,159-164(1996)

26) IARC Monographs on the evaluation of carcinogenic risks to humans vol 65,210-214 (1996)

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6.取り扱い上の注意

6.1 設備の密閉化、集じん装置、排気装置等

CB の輸送、貯蔵、使用等取り扱い上の施設は極力密閉構造とする。容器や配管等も

外に漏れないものを用い、点検孔、マンホールなど開放される部分もシールで密閉す

る。CB の袋詰め、解袋等の発じん作業には局所排気装置を用い、発生した粉じんは発

生源にて除去する。また屋内作業場において浮遊粉じん濃度を極力下げるため全体換

気装置を設ける。必要に応じて隔離、密閉化、湿潤化等の粉じん発生防止策を講じる。

6.2 着火防止

CB を多量に保管または取り扱う場所においては、着火源となる火花、アーク等を発

する機械および火気を使用してはならない。また直射日光下での保管および硝酸塩等

の強酸化剤との接触は避ける。

6.3 電気計装設備

可燃性の粉じんが存在する場合、爆発または火災を防止するため、通風、換気、除

じんの措置を講じる。さらに工場電気設備の防爆指針によれば、電気機器はすべて粉

じん防爆構造品の使用を促しているが(労働安全衛生規則第 261 条、281 条)、CB の

場合もその導電性による電気設備の絶縁劣化への対策として安全増防爆タイプのシー

ル性を重視した電気機器が推奨される。なお電気計装設備の配電盤・計器盤等の内部

は正圧とするのが好ましい。

6.4 漏れたときの処置

周囲への飛散を防止し、速やかに回収する。飛散した CB を掃除する場合、乾いた状

態でほうき等で掃くことは極力避ける。集じん装置で吸引するかまたは霧状水を散水

して汚泥化する等の方法で処理する。水を使う場合、少量の洗剤またはアルコールを

添加したものを用いるとよい。

7.消火方法

燃焼速度は遅いが消火は難しい。着火部分を大きく慎重に取り除き、霧状水で消火・

冷却する。棒状水を着火部分に注水すると火の粉が飛散し、危険である。消火の確認

は容易ではないので、着火部分が十分に冷却するまで注水する。また消火作業では燃

焼ガス中に炭酸ガスや一酸化炭素が含まれるので、酸欠および一酸化炭素中毒に対す

る注意が必要であり、室内等ではボンベ式空気呼吸器を使用する。

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8.衛生上の注意

8.1 応急処置

①眼に入った場合:清水で約15分ていねいに洗う。眼のふちに付着した場合はクレ

ンジングクリームを塗り、柔らかい布で拭き取る。快癒しない場合は医師の診断を受

ける。

②吸入した場合:水でうがいし、口の中をよく洗う。大量の場合は被災者を新鮮な空

気中に移す。快癒しない場合は医師の診断を受ける。

③飲み込んだ場合:水でうがいし、口の中をよく洗う。大量の場合は指などを用いて

吐き出させる。体内に摂取されたものは自然に排泄される。快癒しない場合は医師の

診断を受ける。

④皮膚に付着した場合:石鹸でよく洗い落とす。汚れ落ちが悪い場合はクレンジング

クリームを塗り、柔らかい布で拭き取る。快癒しない場合は医師の診断を受ける。

8.2 粉じん作業

労働安全衛生法粉じん障害防止規則およびじん肺法の規制内容(11.1 項参照)を遵

守する。

8.3 作業場の粉じん測定

労働安全衛生法(法 65 条、施行令第 21 条および粉じん則第 25 条)に定める粉じ

ん作業場に該当する場所においては、定期的に作業環境中の粉じん濃度を測定し、そ

の結果の評価については法 65 条(労働省告示 79 号 1988 年 9 月 1 日、厚生労働省告示

192 号 2001 年 4 月 27 日改正)に基づき行わなければならない。測定に際しては有資

格者の立ち会いが必要であり、測定方法は粉じん則第 26 条(労働省告示 46 号 1976 年

4 月 22 日、厚生労働省告示 191 号 2001 年 4 月 27 日改正)に定められている。

8.4 酸欠および一酸化炭素中毒の防止

CB タンク内で作業を行う場合には酸素欠乏(酸素濃度 18%未満)および一酸化炭素

中毒防止のために、酸素濃度の測定や一酸化炭素検知が必要であり、必要ならボンベ

式空気呼吸器やエアラインマスクを使用する。

8.5 保護具の着用

粉じん作業に従事する場合は防じんマスク(粒子補集効率が 99.9%以上であり、国

家検定に合格したもの)、防じんメガネ、ビニールまたはゴム手袋を着用する。

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8.6 作業環境の向上

8.6.1 設備関係

① CB 取り扱い作業場の床面は隅々まで水洗いできるレイアウトとする。

②CB 取り扱い作業場とクリーンエリアとは分離する。(エアカーテン、水マット、手

洗い場)

③CB 取り扱い作業場には全体換気設備および/または局所排気設備を設ける。

④粉じん取り扱い設備は密閉構造とし、可能なら室内は負圧とする。

⑤使用済みの紙袋、フレコン等 CB の付着したものは置き場所を定め、密閉容器に収納

する。

8.6.2 日常管理

① CB 取り扱い作業場は毎日清掃する。

②CB で汚れた衣服や保護具等はこまめに交換し、常に清潔なものを使用する。

③CB で汚れた道具、容器等を床面上に直接置かないで台の上などに置く。

④床面上の CB は集じん機で吸い取るか水洗する。乾いた状態ではほうき等で掃かない。

⑤CB 取り扱い作業場から他のクリーンエリアに立ち入るところでは、汚れた靴底の洗

浄設備を設置するか靴カバーを着用する。

9.廃棄上の注意

産業廃棄物の処理及び清掃に関する法律(法第 137 号 1970 年 12 月 25 日、法第 53

号 2012 年 8 月 1 日改正

10.商品の用途、出荷容器および自主規制

10.1 用途(カッコ内の数字は 2011 年内訳)

①ゴム補強用(95%) タイヤ、ベルト、ホースその他のゴム製品の補強剤

②非ゴム用(5%)プラスチック、インク、塗料等の顔料及び乾電池、導電性材料など

10.2 出荷容器

①専用容器付(バルク)トラックによるバラ積み輸送

②フレキシブル・コンテナ

③クラフト紙 2~3 層袋およびプラスチック袋

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10.3 自主規制

次の業界では、CB について以下の自主規制を設けている。

業 界 自主規制 記載内容

ポ リ オ レ フ

ィ ン 等 衛 生

協議会

PL(ポリオレフィ

ン 等 合 成 樹 脂 製

食 品 容 器 包 装 に

関する自主基準)

(2013 年 3 月 )

チャンネル法によるもの、または下

記の規格を満たすもの

トルエン抽出物 0.1%以下

ベ ン ツ (a) ピ レ ン 含 有 量

0.25mg/kg 以下

添加量 2.5%以下

無機顔料として使用可能

塩ビ食品衛

生協議会

PL(塩化ビニル樹

脂製品等の食品

衛生に係る自主

規格)

(2007 年 12 月 )

F-4(1)カーボンブラック

C.I.No77266 Pig.No.Black-6/7

品質はトルエン抽出物 0.1%以下、

ベ ン ゾ (a) ピ レ ン 含 有 量 が

0.25mg/kg 以下、添加量は 2.5%以

印刷インキ

工業会

NL

(2012 年 6 月 )

記載なし

日本接着剤

工業会

NL

(2009 年 4 月 )

記載なし

軟包装衛生

協議会

食品および医薬

品に関する PL

ポリオレフィン等衛生協議会および

塩ビ食品衛生協議会の PL を記載。印

刷インキ工業会および日本接着剤工

業会の NL を記載

日本ゴム協

ゴム製食品容器

具及び容器包装

等に関する PL

(2002 年 9 月 )

11-5 充填剤

カーボンブラックは製品重量の

50.0%を超えてはならない。ただし

ファーネスブラックについては牛乳

または食用油に接触している製品重

量の 10.0%を超えてはならない。

PL(ポジティブリスト):使ってもよい物質のリスト

NL(ネガティブリスト):使ってはならない物質のリスト

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11.主な適用法規

11.1 労働安全衛生法

(1) 第 57 条-2: CB は通知対象物に該当する。(同施行令第 18 条 2、 2012 年 9 月

20 日 改 正 ) 名 称 を 通 知 す べ き 有 害 物 を 使 用 す る 職 場 で は SDS(Safety Data

Sheet)を常時作業場に掲示または備え付け周知すること。

同別表第 9: No.130 カーボンブラック。

なお 、同法は 国連勧告 「化学品 の分類及 び表示に 関する世 界調和シ ステム

(GHS)」を踏まえ、表示・文書交付制度を改善している。

( 2)粉じんの障害防止規則(CB は炭素原料に含まれる-厚生労働省確認済み)

休憩設備のほか作業内容により次の措置を講じなければならない。(第 2 条特

定粉じん作業、第 10 条除じん装置の設置、第 17 条局所排気装置の定期的自主

検査、第 25 条作業環境測定を行うべき屋内作業場、第 26 条粉じん濃度の測定

等、第 27 条呼吸用保護具の使用)

作業内容 実施内容

特定粉じん作業 密閉する設備、局所排気装置、湿潤な状態に

保つための設備、プッシュプル型換気装置の

いずれかの措置またはこれと同等の措置

作業環境測定および評価

呼 吸用保護 具を使用 すべ き

作業

全体換気装置 呼吸用保護具

その他の粉じん作業 全体換気装置

① 粉じん作業に該当するもの(規則第 2 条第 1 項)

・別表第 1 第 8 号

炭素原料を動力により破砕し、粉砕し、またはふるいわける場所における作業

・別表第 1 第 9 号

炭素原料を乾燥し、袋詰めし、積み込みし、または積み卸す場所における作業

・別表第 1 第 11 号

炭素原料を混合し、混入する場所における作業

② 特定粉じん発生源(規則第 2 条第 2 項)

・別表第 2 第 8 号

屋内の、炭素原料を動力により破砕し、粉砕し、またはふるいわける箇所

・別表第 2 第 9 号

屋内の、炭素原料を袋詰めする箇所

・別表第 2 第 10 号

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屋内の、炭素原料を混合し、混入、又は散布する箇所

③ 特定粉じん作業(規則第 2 条第 3 項)

上記②の特定粉じん発生源における作業

④ 呼吸用保護具を使用すべき作業(規則第 27 条第 1 項)

・別表第 3 第 8 号

炭素原料もしくは炭素製品を乾燥するため乾燥設備の内部へ立ち入る作業、

または屋内において積み込みもしくは積み卸す作業

11.2 じん肺法

健康管理の対象となる粉じん作業(施行規則第 2 条)

① 施行規則別表第 8 号 -粉じん障害防止規則別表第 1 第 8 号と同じ作業

② 施行規則別表第 9 号 - 同上 第 1 第 9 号と同じ作業

③ 施行規則別表第 11 号 - 同上 第 1 第 11 号と同じ作業

11.3 大気汚染防止法

CB を使用するゴムおよびプラスチック成形設備等はばい煙発生施設に該当しない。

CB のふるい分け、運搬等取り扱い施設は粉じん発生施設に該当するものもある。

11.4 水質汚濁防止法

排出水は、排出基準に適合しなければならない。

なお、排水中の CB は「浮遊物質量」(SS:Suspended Solid)などとして測定され

るが、具体的には各都道府県の条例による。

11.5 消防法

対象外。危険物にも指定可燃物にも該当しない。(消防法第 2 条第 7 項別表 2012

年 6 月 27 日改正、消防危第 105 号 1990 年 10 月)

11.6 毒物および劇物取締法

対象外。

11.7 危険物船舶運送及び貯蔵規則(危規則) 1)

国際海事機関(IMO)の International Maritime Dangerous Goods Code(IMDG コ

ード)によると「鉱物系原料から製造した CB は不活性炭素であり、危険物ではない」

との記載があり、本規則には該当しない運用が実施されている。また航空機による

輸送も同様である。なお動物系および植物系の原料から製造した CB(ボーンブラッ

ク、ベジタブルブラック等)のうち自己発熱性を有するもの(国連番号 1361、英語

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名「 CARBON, animal or vegetable origin」、日本語名「炭素(動物又は植物から

製 造 さ れ た 粉 状 又 は 粒 状 の 不 活 性 炭 素 で あ っ て 、 自 己 発 熱 性 を 有 す る も の に 限

る。)」)は等級 4.2(「可燃性物質類」の「自然発火性物質」)、容器等級 II ある

いは III に分類されている(「船舶による危険物の運送基準等を定める告示」の別

表 1)。

11.8 国連番号(UN No.)

鉱物系原料で製造した CB は、危険物に該当せず、国連番号はない。現在日本で流

通している CB のほとんどは、鉱物油を原料としファーネス法で製造された CB であ

る。

動植物系原料のCBには危険物に該当するものがあり、国連番号 1361(「CARBON,

animal or vegetable origin」)が付与されている 2)。

11.9 輸出貿易管理令

CBは別表第 1 の 1~ 15 項に対しては非該当。別表第 1 の 16 項(キャッチオール

規制)は該当。(2012 年 9 月 1 日改正、公布、2012 年 9 月 19 日施行)

11.10 薬事法

昭和 42 年の厚生省告示第 321 号の別表に、化粧品原料として定められた品質のC

Bの使用が認められていたが、この基準は平成 13 年 3 月 31 日限りで廃止された。

これに代わる新しい告示(平成 12 年 9 月 29 日厚生省告示第 331 号)にはCBは記

載されていない。

しかしCBを化粧品原料として検討する場合には、新告示の趣旨を理解した上で、

化粧品製造者の責任において判断する必要があると考えられる。

医薬部外品としては平成 18 年 3 月 31 日薬食発第 0331030 号にて医薬部外品とし

てカーボンブラックの規格(鉛:5ppm 以下、ヒ素:5ppm 以下、水可溶物:0.5%以下、

乾燥減量:5.0%以下、強熱残分:0.5%以下)が決められ、平成 19 年 9 月 4 日薬食

発第 0904002 号にてベンゾ(a)ピレン:5ppb 以下が追加された。医薬部外品原料規

則 2006(追補)に記載されている。

11.11 FDA(米国食品医薬局)

FDA に よ る 規 制 は CFR( Code of Federal Register) Title21- Food and Drugs

( 2002.4.1 現在)に、ポジティブリストとして次のように記載されている。

① FDA は、公衆の健康を保護するため、チャンネルブラックを食品、医薬品、化

粧品中に使用できるリストから削除した(§81. 10)

② 間接食品添加剤としてチャンネルブラックのみ使用が認可されているもの

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§175. 105 接着剤

§176.170 水性及び脂肪性食品に接触する紙及びボール紙(着色剤として

のみ使用可)

§177. 1650 ポリスルフィド-ポリエポキシ樹脂

§177. 2400 パーフルオローカーボン加硫ゴム(15phr 以下)

§177. 2410 フェノール樹脂成型品

③ 間接食品添加剤としてチャンネルブラックとファーネスブラックの使用が認

められているのも

§177.2600 繰り返し使用されるゴム製品(チャンネルブラックは 50%以下、

ファーネスブラックは 10%以下)

§178.3297 ポリマー着色剤(天然ガス原料のチャンネルブラック)(高純

度ファーネスブラック*の場合は 2.5 重量%以下)

* 本文書に規定された方法で測定した多環芳香族炭化水素含有量が 0.5ppm 以下

でかつベンゾ(a)ピレンの含有量が 5.0ppb 以下のもの。

11.12 EU

欧州プラスチック施行規則 PIM( NO 10/2011)のポジティブリストには一次粒子 径、

アグリゲートサイズ、アグロメレートサイズ、トルエン抽出量、シクロヘキサ ン抽

出液 UV 吸光度、ベンゾ(a)ピレン量について制限された CB が収載されている。

11.13 フランス

ナノ物質に関する年次報告制度(2012 年 8 月省令公布、 2013 年 1 月に発効)が制

定され、フランス国内にて年間 100g 以上のナノ物質を製造、輸入、流通させる者は、

製品に用いているナノ物質についての情報を翌年 5 月までに提出することを義務付け

られた。

2011 年に発表された EU におけるナノ物質の公式定義は、「自然若しくは偶然にで

きた又は製造された物質であって、非結合状態若しくはアグリゲート又はアグロメレ

ートの粒子であり、個数濃度のサイズ分布で 50%以上の粒子について、1 つ以上の外径

寸法が 1nm から 100nm のサイズ範囲である粒子を含有するもの」であり、ほとんどの

CB が該当する。

11.14 参考文献

1) 危険物船舶運送及び貯蔵規則 13 訂版(2007)国土交通省海事局検査測度課 海

文堂

2) Recommendations on the Transport of Dangerous Goods Seventeenth revised

edition (2011) UNITED NATIONS

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カーボンブラックについてカーボンブラックについて

カーボンブラック協会 

(2009年9月1日)

CBA
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別紙2
CBA
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CBA
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1.物質の説明1.物質の説明カーボンブラックカーボンブラック

(管理された条件下で作られた煤)(管理された条件下で作られた煤)

• 外観 黒色ビード(1mm程度)(製品の95%以上)                       又は粉末状

     

  ビード形状

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2.用途2.用途カーボンブラック

ゴム補強材 黒色着色剤 導電付与材等

タイヤ

黒色インキ

樹脂混錬物

電気製品ケース

構造体着色

黒色塗料

電気部品

ベルト・ホー

ス等材料

自動車部品

新聞

印刷物

その他ゴム製品

高温保温材

 電子部品

ICトレー

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3.物質の性状3.物質の性状

• 構造:乱層黒鉛(6環・5環層)構造• 密度:1700~1900kg/m³(液体置換法)• カサ密度:200~700kg/m³• 比表面積:5~500m³/g• 沸点融点:3000度以上• 電気伝導率・熱伝導率:良電気・熱伝導性• 溶解性:水,油及び溶剤に不溶• 耐食性:高耐食性

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4.構造4.構造((アグリゲートを最小単位とする構造)アグリゲートを最小単位とする構造)

 ドメイン(粒子)

アグリゲート(最少単位) 1nm

1μm100

1mm ビード

アグロメレート(2次凝集体)

100

10

アグリゲート(1次凝集体)ドメイン

(粒子)10

注)アグリゲートは反応過程で液晶状態の粒子が溶融結合して出来た骨格に、更に  炭化水素が結合し、その後炭化して生成すると考えられている。

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アグリゲート写真(アグリゲート写真(ABCDABCDは品種は品種))

A 100nm B 100nm

C 100nm D 100nm

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アグロメレート(アグロメレート(22次凝集体)次凝集体)

•  アグロメレートはアグリゲートがVan Der Waales力や単なる集合,付着,絡み合いなどによって生じる2次凝集体である。通常数十ミクロンから数百ミクロンの大きさと考えられている。

   製品工程でもビード形成前にはアグロメレートの形態で存在すると考えられる。市販されている粉末状カーボンブラックもこのアグロメレート形体であると考えられる。

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ビードビード 発塵防止のためカーボンブラックを固めたものをいう。現在市販されている製品のほとんどはビード形状で出荷される。

  ビードの製造方法には水を加えて作る

 湿式方と水を加えずに作る乾式法があるが湿式方が大半である。湿式方で作ったビードも後の工程で水分を完全に飛ばして乾燥状態で出荷される。

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5.製造工程の一例5.製造工程の一例

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6.出荷時の梱包状況6.出荷時の梱包状況バルクトラック輸送: 大口需要家向け。需要家のタンクに直接投入(出荷の7~8割)フレコンバック: 500~1000kg投入可能なフレコンバック(ゴムラインニング)で出荷紙袋: 紙袋は、紙が数層になっており,粉塵が外部に流失しない構造になっている。内容量20kgのものが大半である。 顧客に対しては,「MSDS」及び「取扱安全指針」を配布して安全上の注意を徹底させている。

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カーボンブラックアグリゲート分布例

《出典》

浅井邦彦:日本ゴム協会誌,78,202(2005)

CBA
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別紙4
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CBA
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別紙
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1

別紙6

2013.12.17 改正版 カーボンブラック協会

カーボンブラックのナノマテリアルとしての安全性

-従来から使用されていたナノ材料-

1、初めに

カーボンブラックは、1872 年米国のハイドロカーボンガスブラック(Hydro Carbon Gas Black)社が、天然

ガスを原料に煤(Soot)の大量生産を開始し、Carbon Black の名称で販売したことにはじまる。このようにカ

ーボンブラックは、工業用煤の一種としてスタートした。1910 年ゴム補強材として工業用煤が有効であること

【要点】

1、カーボンブラックは、以下(1)及び(2)の理由から、近年新しく出現したナノ材料ではなく、又、その安全性に

関して過去数十年に亘り世界で蓄積されてきた知見は、現在生産・使用されているカーボンブラックにも当ては

まるものである。

(1)カーボンブラックの製法は、1940年代に確立されて普及してきた「オイルファーネス法」が基本であり、

又、同時代には「アセチレン法」も確立され、その後大きく変わっていない。このため、粒子のサイズも数十

年以上前からナノサイズで変わっていない。

(2)カーボンブラックの品質(粒子サイズ等)は、メーカーが違っても殆ど変わらない。

2、カーボンブラックの安全性評価に関する最新事情としては、EU CLPで制度(EU Classification, Labelling and

Packaging of substances and mixtures 以下EU CLP規制と略す)の適用においてICBA(International Carbon

Black Association)加盟メーカーや日本メーカー4社のカーボンブラックが同一物と見なされて、全ての危険有害

性項目について「危険有害性非該当」として届け出られている実例がある。尚、現時点まで本届出に対して規制

当局からの反論は無く、従来通りの流通が続いている。

3、ICBAの検討・調査の結果においても、4カ国のカーボンブラック製造工場の労働者における疫学的調査(コ

ホート研究)の結果でも、労働者への暴露と発がん性の因果関係は見つからなかったことが明らかになっている。

4、カーボンブラックの発がん性分類は、動物実験による毒性学調査・ヒトの疫学研究の結果をどのように評価す

るかで異なる。IARC(International Agency for Research on Cancer)は雌ラットによる複数の発がん性研

究結果で陽性が現れたため、発がん性分類を、「区分2B」とした(“ヒトに対して発がん性であるかもしれない”

という区分、コーヒー等が該当)。一方、EU,国連GHSのルールでは、ヒトでの疫学調査結果が陰性であれば、動

物実験で、特に過剰投与下で陽性が現れても、そのメカニズムがヒトへの作用と関連が明らかでない限り、発が

ん性分類は要しないとしている。よって、EU,国連GHSでは“区分外(not classfiied)”分類になっている。

5、日本のカーボンブラック協会としては、以上の検討に基づき次の点を強く主張するものである。

(1)長い歴史を持つカーボンブラックは、既に安全性についての試験結果を有しており・規制濃度が決められ、

且つ法規制がなされている

(2)カーボンブラックは、数十年以上前から生産・使用されている材料であり、ナノサイズであるからと言って

他のナノ材料と同一視すべきでなく、また、ナノサイズであることだけを理由に安全規制が強化されるべきでない。

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2

が見出されると使用量は急激に増加して、それに対応して製造方法も進化して、1942 年には現在の主力となる

オイルファーネス法が確立され、安全・安価な材料としてのカーボンブラックの使用が定着した。

電子顕微鏡での観察が普及し、煤・カーボンブラックの優れた黒色性・ゴム補強性がナノ材料としての特性で

あることがわかったのは最近である。しかし、先人は、努力を重ね優れた黒色性・優れた補強性を持つ工業材料

として、煤・カーボンブラックを進化させてきた。ここでは、煤・カーボンブラックの歴史からカーボンブラッ

クの基本構造と、及び従来から安心して使用されてきた材料で有ることを紹介したい。

2、煤の分類 「煤、工業用煤とカーボンブラック」の関係

煤は、炭化水素が高温で不完全燃焼すると生じる。私達のまわりでも多量の煤が発生しており、生活空間内で

も多量の煤が観察される。

人間活動に伴う煤には、非意図的に生成・排出されるものと意図的に製造される煤(工業製品とする為、管理

した条件で製造する煤)が有る(図 1 参照)。この内、非意図的に排出する煤は、健康に害悪も懸念される灰分・

未反応油分及び付着分子等が多い、自動車排ガス・工場煤煙は、この中に含まれる(表 1 SOF ソックスレー抽

出物)。一方、意図的に製造される煤・カーボンブラック(以後、図 1 に示すファーネス法・アセチレン法等現

在多量に生産されている工業的煤をカーボンブラックと表記する)は、グラファイトと同様な構造を持つ安定し

煤(炭水化物の不完全燃焼で生じる炭素質ナノ物質)

自然界 人間活動

山火事・火災

黒煙・煤

非意図的排出

内燃機関燃焼排ガス

工場煤煙

炊事・暖房

煙・煤

火事・野焼

黒煙・煤

意図的製造

カーボンブラック

ナノマテリアル範疇(

広義)

墨用煤等

松煙煤

油煙煤(菜種油等)

ファーネス法

サーマル法

チャネル法

図 1 煤の分類

ファーネス法

アセチレン法

その他工業的手法

アセチレン法

アセチレン法

その他工業的手法

その他工業的生産方法

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た炭素分が主体である(表 1 純炭素参照)。

国連の経済協力開発機構(以下 OECD)は、『ナノマテリアルとは、意図的に作られる固体で大きさが X,Y,Z の

どれかの次元が 1~100nm である、またはこれらの凝集体』と定義している。煤においては、図1の意図的に製

造される材料がナノマテリアルに分類される。又、OECD は、安全性を調査するスポンサーシッププログラムの

代表的ナノ物質(14 物質)の一つとしてカーボンブラックを指定した(カーボンブラックは、スポンサー国が

無いため、その後調査対象から外された)。

3、煤・カーボンブラックの使用の歴史

煤は、紀元前の古代から文字を書くためのインキや絵具の材料に使用されていた。最も古い工業製法の記録は

“Vitruvius on Architecture”(BC30~AD14)があり、早い時期から工業化がなされたことが分かる。2 世紀に

は紙が発明され、3 世紀には、煤を膠で固めた墨が発明された。紙・墨の使用は、記録媒体・交信手段の変革だ

けでなく、“書” “水墨画”として東アジアの伝統文化を形成したと考えられる。

煤は、このように身近な材料であったため使用量も増え、初期に使われた松を原料とした松煙煤だけでは間に合

わず桐油・菜種油・豚油等を燃やして作る油煙煤が作られ、10 世紀には既に石油も使用されていた。

日本への墨の伝来は 7 世紀とされる。山路*2)等は、平城京左京三条一坊十四坪の遺跡から出土した墨(720 年

前後)平城京右京五条四坊三坪の遺跡から出土した墨(8 世紀半ば)の走査型電子顕微鏡による観察を行っている

(図 6 参照)*3)。この煤については、5 章で詳細に述べるが古代の煤も大きさでは、ナノ材料の範疇に入ることが

分かる。

欧州では、12 世紀に紙が使用され始めると墨インクの使用も広がった。活版印刷が発明された 15 世紀以降印

刷インキ用煤の生産が、ドイツ・フランス・イギリス等で始まった。当時の原料は、タール・豚油・樹脂が使わ

表1 *1)

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れたようである。当時の手法は、ランプブラックとして分類される一連の手法である。この方法は、原料を気化

して(灯心の使用又は輻射熱での気化)燃焼させ、生成した煤を補修するものである。この方法の生産は、製品

の独特な色調から日本(墨用)・ドイツ(デグッサ社がランプブラックとして工業化)では現在でも使用されている。

日本では平均粒子径は 50~150nm 程度、*4)デグッサ社は、60~120nm 程度である。*5)

19 世紀アメリカで天然ガスを燃焼させ冷板に接触させて製造されるチャンネル法が開発されカーボンブラック

名称で販売されるようになって、ゴムの補強効果が発見され、オイルファーネス法・アセチレン法が開発されて

現在に至っている。現在カーボンブラックは、ゴム工業・印刷インキ・塗料・樹脂等々に使用され、印刷物・タ

イヤ・黒色樹脂等々の製品として市民生活の隅々で使用されている。カーボンブラックの世界全体の使用量は

1000 万 t を超えている。歴史を表 2 に示し、現在の使用状況の詳細を、6 章に示す。

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4.カーボンブラック・煤の構造

表 2 カーボンブラックの関連年表*6)

図2 カーボンブラックの構造

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カーボンブラック構造の概念図と寸法を図 2 に示す。

カーボンブラックの分解できない最小単位は、図 2 に示すアグリゲートである。尚、その一部分(ドメイン)を粒

子と通称する。この粒子は、ナノマテリアルで最小単位として定義される粒子に該当して考えられるがあくまで

もアグリゲートの一部である。ドメインの径及びアグリゲートの長さは、かなりコントロールすることができ、球形の物

も製造可能である。アグリゲートを構成するのは、炭素 6 員環(黒鉛の成分と同じもの)及び炭素 5 員環で有る。表

面には、水素官能基及び小量の酸素系官能基が有る。安定な炭素 5 及び 6 員環を基本構造とするカーボンブラッ

クは、化学的に安定で毒性も低い。アグリゲートは、ファン・デルワ―ルス力等の物理的な力により 2 次凝集体(ア

グロメレート)を構成する。

ナノ単位の粒子は、相互が近接するため、結合強度は強く、一般の状況では 2 次凝集体を完全にバラバラに

することは難しい。

カーボンブラックの製品は、飛散防止のため 1mm 程度のビードという形で、輸送販売されることが殆どで

ある。カーボンブラックの電顕写真を図 3・4・5 に示す。電子顕微鏡には、対象物に電子線をあて透かして(内

部を)観察する透過型電顕(以下 TEM)と対象物に電子線をあて表面を観察する走査型電顕(以下 SEM)があ

る。ここでは、両手法を並べて記載する。(図 4 は、TEM のみ記載)

図 3 はファーネス法で作られたゴム用カーボンブラックを記載する。ゴム用カーボンブラックは、多くの品種

が有るが、ここでは大粒子径であるファインサーマル級(算術平均粒子径 85nm)、古くから使用されていた

GPF(General Purpose Furnace)級(算術平均粒子径 59nm)、カーボンブラックの品種の中で使用量が最も多

い HAF(High Abrasion Furnace) (算術平均粒子径 31nm)を代表例とし掲載した。(注 新日化カーボン㈱

製 記載 HTC・ニテロンは商標 粒子径は同社測定)

図4はファーネス法で作られたカラー用カーボンブラックを記載する。MCF(Medium Color Furnace)及び

HCF(High Color Furnace)の代表製品を掲載した。(注 三菱化学㈱写真提供)

又、図 5 はアセチレン法で作られた導電用カーボンブラックを掲載する。ここでは一般品(算術平均粒子径

35nm)、低比表面積品 HS-100(算術平均粒子径 48nm)、高比表面積品 FX-35(算術平均粒子径 23nm)、を掲

載した。 (注 電気化学㈱製 記載は商標 粒子径は同社測定)

図 3 の写真2のファインサーマル級カーボンはボールの様に球状のものがほとんどであり、つながって見えるの

は、観察膜の厚み方向に有る観察物が重なって見えるだけである。他の写真は、全てアグリゲート構造に成っている。

どの写真でもドメイン(粒子)の平均径は、10~100nm の領域に含まれている(スケールは各写真に掲載)。

SEM 写真は、詳細な粒子径を測定するのには適さないが、ドメイン(粒子)の部分が丸く見えるので大まかな分

類をすることは可能である。この SEM 写真で墨の原料とし昔から使用されてきた松煙煤・油煙煤を観察し図6

に示す。(注 ㈱墨運堂製 粒子径は同社測定)。油煙煤は、カーボンブラックの HAF 級カーボンブラックに近

い粒子径を持つことが解る。松煙煤は、ファーネス法と比較すると広い粒子径分布を持つことが特徴と成ってい

る。小さな粒子径のものは 20nm のものもある。このように詳細な構造を見ても従来から使用されてきた松煙

煤・油煙煤と現代の煤であるカーボンブラックは、粒子径及び構造の差異が少なく、ともにナノマテリアルに分

類される構造であることが分かった。*注

*注 カーボンブラックは、現代の工業技術を駆使して作られているため、大きさは煤と同等であるが、

表面に付着している有害成分の割合は、より少ない。

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7

図 3 ゴム用カーボンブラック(ファーネス法)電顕写真

100nm

100nm

100nm

1000nm

1000nm

1000nm

1000nm

1000nm

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8

MCF級 TEM 写真

HCF級 TEM 写真

図4 カラー用カーボンブラック(ファーネス法)電顕写真

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9

[SEM写真] [TEM写真]

一般品(商品名デンカブラック粉状) 同左

比表面積;70m2/g

低比表面積品(商品名デンカブラック HS-100) 同左

比表面積;40m2/g

高比表面積品(商品名デンカブラック FX-35) 同左

比表面積;135m2/g

図-5 導電性カーボンブラック(アセチレンブラック法)電顕写真

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10

図-6 現代の墨用煤(油煙・松煙)SEM 写真

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11

5.電子顕微鏡で見た古代墨・現代墨の煤とカーボンブラック

墨は、煤 10 に対し膠(にかわ)6と香料(全体の 0.3~0.6%)を混練し、型に入れてプレスし成形して乾

燥させたものである。個々の工程には、細心な配慮がなされており、詳細は参考文献*7を参照されたい。

図 7 に示した、走査型電子顕微鏡(以下 SEM と記す)データに示した評価試料は以下のものである。

注)下記(1A・2B・・・)は写真番号を示す。

1A:下総国分僧寺出土土器(8 世紀後半) 倍率 20,000 倍 縮尺 0~1μm 参照

2B:A に現在の松煙墨塗ったもの 倍率 20,000 倍 縮尺 0~1μm 参照

注:松煙墨は松煙煤を原料とした墨

3C:A に現在の油煙墨塗ったもの 倍率 20,000 倍 縮尺 0~1μm 参照

注:油煙墨は油煙煤を原料とした墨倍率

4D:下総国分僧寺出土土器の墨痕(8 世紀後半)倍率 20,000 倍 縮尺 0~1μm 参照

5E:同出土の墨書土器(土師器:8 世紀代)倍率 20,000 倍 縮尺 0~1μm 参照

6F:平城京左京三条一坊十四坪出土の墨 倍率 20,000 倍 縮尺 0~1μm 参照

7G:平城京右京五条四坊三坪出土の墨 倍率 20,000 倍 縮尺 0~1μm 参照

8F:平城京左京三条一坊十四坪出土の墨 拡大写真 倍率 50,000 倍 縮尺 0~0.5μm 参照

9G:平城京右京五条四坊三坪出土の墨 拡大写真 倍率 50,000 倍 縮尺 0~0.5μm 参照

表記の試料観察は、日本電子 JSM5410LV を使用した。

既に記載したように OECD の定義では、ドメインの径が 1~100nm(10%以上含まれることが必要)に含まれれ

ば構造体全体の大きさに係わらずナノマテリアルとして分類される。従って、写真の丸い凸の径によりナノマテ

リアルか否かの判定を行うことができる。山路は,写真より F は 100~150nm 前後の粒子径のものが多く、G は

10~100nm 前後の粒子径のものが多いとしている。F でも 100nm 以下の粒子径のものも見られ、OECD 定義

では両方の古代墨共にナノマテリアルに含まれる可能性は大きい。

煤・カーボンブラックの黒色は、粒子径が小さく、粒子径分布がシャープなほど色が黒くなる。又、粒子径の

大小により底色(青っぽい黒か、赤っぽい黒か)は決まる。一般に小粒子径では赤っぽく見える。現在の油煙煤

は、粒子径が小さく、均一化し黒色度を増加しているように見える。一方では、昔ながらの松煙煤が独特な色調

から好まれ、現在でも使用されている。このことは、先人が 1000 年以上延々と煤を使用して、改善を図ってき

たことを伺わせるものである。

墨用の煤及び墨は、このように古くからの技術を伝承しながらも創意工夫が図られている。安全性についても

配慮がなされていると考えている。

尚、山路等は、古代の墨の透過型顕微鏡写真の観察も計画しており、古代の煤の実態がより明らかになると考え

られる。

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12

図7 古代墨用煤の粒子(SEM 写真)

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6.現代の身近な素材としてのカーボンブラック

カーボンブラックは、タイヤ等のゴム製品に使用されているだけでなく、印刷インキ・トナー・黒い色に着色

された樹脂・液晶のブラックマトリックス…・等々日常生活で身の周りにある黒色製品には“含まれる”といっ

ても過言ではないほど身近な素材である。生産量は全世界での,1000 万T/年を超えており、含有製品は億トン

の単位になるかもしれない。

この様にカーボンブラックが長期間・大量に使用されてきた背景には、

① カーボンブラックのゴム補強性・黒色度及び樹脂等への導電性付与性能が他の材料より大幅に優れている。

② 管理された条件下で作られ、安全な材料である(7 章で詳細に述べる)。

③ 高温の熱分解反応(炎の中)で容易く・大量に合成される。

’①の例としてインキ・塗料・トナー等で使うカラー用カーボンを考える。カーボンブラックは、1%前後でも非

常に優れた黒色を出すだけではなく、退色が殆どない。更に、樹脂との親和性が高い為、トナー印刷物中のカー

ボンブラックは、樹脂中に分散しておりカーボンブラックが飛散することもなく、手で触っても手が汚れること

はほとんどない。このように優れた製品特性を持ちかつ安価で・大量に使用されるカーボンブラックは、生活に

身近な・代替え材料が見当たらない素材である。

7.カーボンブラックの規制と安全性の知見

7.1 カーボンブラックの安全性を考える上で念頭に置かれるべき特徴

①製法は、オイルファーネス法、アセチレン法ともに1940年代に確立されて普及しおり、現在の生産方法も基

本的に変わらない。このため、粒子サイズも数十年前からナノサイズである。

②各メーカーが生産するカーボンブラックの“性状(粒子サイズ等)”は、ほとんど同一である。

’①と②より、過去数十年の間に世界中で集積されたカーボンブラックの安全性に関する知見は、現在生産・

使用されているカーボンブラックにも当てはまる特徴である。

7.2カーボンブラックの安全性の評価に係わる最新の国際動向及び安全知見。

7.2.1 カーボンブラックのEU CLP規制8)

日本のカーボンブラックメーカー4社が、EUに輸出しているカーボンブラックのREACH登録を実施している。

REACH登録の際に、REACH規則により求められている反復投与毒性、発がん性、生殖発生毒性等の試験結果を提出

している。こうした危険有害性情報を踏まえてREACH登録各社が欧州化学品庁(ECHA)に届出たCLP分類の結

果は、先行登録したEvonik Degussa GmbH(現:オリオンカーボンブラック)社が届出たCLP分類の結果と同様に

「危険有害性非該当(not classified)」(CLP規則で取り上げている全ての危険有害性項目に関して注意すべ

き危険有害性はないとの結果)であった。尚、現時点において、本届出に対して規制当局からの反論は無く、従

来通りの流通が続いている。

7.2.2 カーボンブラックの発がん性

7.2.2.1 概要

カーボンブラックの発がん性は、実験動物への肺吸入による毒性学的研究、ヒトのコホート研究(特定の集団

の健康状態を、長期間にわたり調べ、疾病とその要因を生活習慣や環境との関連から調査する研究)による疫学

的研究が数多く行われている。雌ラット、マウス、ハムスターを使用した動物実験では、吸入による肺過負荷条

件下で、雌ラットのみに肺腫瘍が見られた。カーボンブラック工場労働者を対象としたコホート研究では、暴露

と肺がんの発生率に因果関係は見いだせなかった。各評価機関は、これらの研究結果に基づき発がん性を分類し、

公表している。IARC ではカーボンブラックの発がん性を、(ヒトにおいては、十分なエビデンスが無いとしなが

らも)、雌ラットにおいて発がん性の十分なエビデンスがあるとして「ヒトに対して発がん性を示す可能性がある」と

いう2Bに分類した。一方、CLP、及び国連世界調和システム(GHS)に従うと、「動物毒性試験で肺腫瘍が見ら

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れたのは、非水溶性微粒子を肺に過負荷投与した時に発生するラット特有の現象である。」こと及び疫学的調査

結果から、カーボンブラックへの発がん性分類は必要とされない。ICBA では EU・GHS のルールを支持している。

カーボンブラックの発がん性評価に関し、各評価機関の分類は以下の様になっている。

UN GHS 及び EU CLP評価基準に基づく評価

評価基準 評価

国連世界調和システム(ルー

ル)(UN GHS)

区分外(not classfiied) (評価機関:国際カーボンブラック協会(ICBA))

根拠:動物実験で有害影響が見られたが、その機構及び作用モードにおい

てヒトへの関連性が十分でないため有害であると分類すべきでない。

欧州連合 物質及び混合物の

分類、ラベル、包装に関する

規則

(EU CLP)

区分外(not classfiied) (評価機関:カーボンブラックコンソーシアム

(CB4REACH))

根拠:実験動物における肺過負荷の条件下で示される発がん性が、動物の

種に特有な機構によるものであるとき、ヒトへの関連において作用機構上

明らかではなく、有害であると分類すべきでない。CLP中の危険物質リ

ストには記載されていない。

発がん性評価機関による評価

評価機関及びルール 評価結果

国際がん研究機関 (IARC)

総合評価:2B ヒトに対して発がん性があるかもしれない

評価理由:発がん性に関し、実験動物の研究では十分なエビデンス(証拠)

があるが、ヒトにおいては、十分なエビデンスが無い。

米国産業衛生専門家会議

(ACGIH)

A3: 動物で発がん性が確認されているが、ヒトへの関連性は知られていな

い。

日本産業衛生学会 第 2群 B: 許容濃度等の勧告(2011 年度) - 疫学研究からの証拠はな

いが,動物実験からの証拠が十分である.

アメリカ合衆国環境保護庁

(EPA)

物質の発がん性を評価するデータベース(IRIS-Integrated Risk

Information System )に記載されていない。

米国国家毒性プログラム

(NTP)

発がん性物質報告書(Report on Carcinogens ;RoC)に記載されていない。

米国国立労働安全衛生研究所

(NIOSH)

0.1重量%以上の多環芳香族炭化水素(Polycyclic aromatic hydrocarbon、

PAHs)を含有するCBを「職業性がんを起こす可能性物質のリスト」

に収載している。

7.2.2.2 動物実験(毒性学研究)

7.2.2.2.1 経口投与

マウスおよびラット 9)に2年間にわったて経口投与されたが、腫瘍発生率の増加は認められなかった。

7.2.2.2.2 吸入試験

マウス、ハムスター、ラット(オス、メス)に対する吸入試験から以下の結論が導かれる。

第一に、長期にわたる高濃度のカーボンブラックの吸入は、肺胞からの不溶性粒子の排除の遅延と粒子の顕著な

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滞留をもたらす。この現象は、「肺過負荷」と呼ばれ 10)る毒性の低い様々な吸入性不溶性粉塵によく見られる現

象である。ラットでは、このような肺への高負荷の結果、持続的な炎症が引き起こされ、それによって炎症が促

進され、上皮過形成、肺線維症などが発生する。

第二に、ラットは、カーボンブラック過負荷の影響に対して、他種(マウス、ハムスター)よりも感受性が高

く、雌ラットは雄ラットよりも顕著な反応を示す 11)。長期間の試験において、肺腫瘍の発生が有意に増加する傾

向が見られたのは雌ラットのみであった。

不溶性粉塵が肺に吸引されるとき、霊長類 12)やヒト 10) における、粉塵の肺沈着、排泄形態、組織の反応は、

ラットとは明らかに異なる。こうした違いは、肺過負荷条件下で腫瘍が発生するというラットの特殊性を際立た

せている。Mauderlyは、ラットによる動物試験結果を、種を超えて人に与える影響の推定に用いることの妥当性

に疑問を投げた 13)。米国産業衛生専門家会議(ACGIH)は、Mauderly の見解を支持し、2011 年発行のカー

ボンブラックのTLV(閾値)文書において、“ラット”による肺過負荷条件下での実験結果をそのまま人に適用

するには疑問がある。以上を考慮して、分類を3とした。

(1) マウス

濃度 7.4-12.2mg/m3のファーネス法カーボンブラックに暴露させる吸入試験では、暴露されたグループに体重

の減少が見られ、若干の腫瘍も見られたが、暴露されていないグループ(コントロール)との統計的差異は見られ

なかった 14)。

(2) ハムスター

高濃度(57-110mg/ m3)のファーネス法カーボンブラックに暴露させる吸入試験によって、喉頭がん、気管支の

腫瘍は見られなかった 15)。

(3) ラット

ラットを対象としたカーボンブラックの吸入暴露試験は、ファーネス法カーボンブラックを使用して、いくつ

かの暴露濃度(2.5mg-50mg/ m3)、暴露パターンで行われている。これらの試験から以下の結果が導かれた。こ

の結果を基に IARCは、カーボンブラックを発がん性2Bの分類した。

Dungworth16), Heinrich14)らは、雌のラットを用い 6㎎/M3の濃度で、2つのグループをそれぞれ、43週間と

86 週間暴露させた。43週暴露グループは肺腫瘍率が 18%で、86 週暴露グループが 8%で、長期間暴露の方が

肺腫瘍率は低かったが、統計上この差異は重要では無く、肺腫瘍発生した事実が重要としている。

Dungworth16)、 Heinrich14)らは雌のラットを用い、平均 11.6 ㎎/ m3の濃度で 24 か月暴露させたところ、暴

露グループの死亡率は 56%で(非暴露グループ(コントロール)は 42%)であった。その後暴露を止め、清浄

空気下で 6 か月置かれたが、30 か月目の死亡率は暴露グループで、92%、コントロールは 85%で、暴露グル

ープの死亡率が高くなった。また暴露グループでは 39%に肺腫瘍が発生した。

Maudely18)、Nikula17)はオス、メスのラットを用い、2.5mg/ m3 と 6.5mg/ m3の吸入濃度で、24か月(16時間

/日、週 5日)暴露させる試験を実施した。この結果;

オス、メスとも暴露により、平均寿命が短縮し、高吸入濃度のグループの方がこの傾向が顕著であ

った。

オス、メスとも暴露により体重の減少が観察され、22か月後では、高吸入濃度ではオス、メスの減

少率は、それぞれ 14%と 16%減であった。低濃度グループではオス、メスの減少率は 10%以下であっ

た。

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暴露により、肺に進行的にカーボンブラックの蓄積が起こり、高濃度グループではメスの肺負荷が

30mg/gで、蓄積量がオスよりも 50%多くなっていた。低濃度グループでも蓄積は発生し、蓄積量は

高濃度より低く、またメスの方が大きな蓄積量を示した。

ラットの肺の調査から、メスのラットにおいて線腫及び線がんが確認され肺腫瘍は高濃度グループ

で 26.7%、低濃度では 7.5%であった。オスにおいては統計上意味のある肺腫瘍発生は見られなかっ

た。

7.2.2.2.3 気管支内投与

雌のラットに生理食塩水中にカーボンブラックを懸濁させ、気管支内に投与した試験では、各種濃度において、

肺腫瘍の発生率の増加が認められた 19)。

7.2.2.2.4 皮膚接触

オイルに懸濁させたカーボンブラックをマウスの皮膚に塗布する試験を実施した。その結果皮膚に対する発が

ん性への影響は、認められなかった 20)。なお同試験において、カーボンブラックのベンゼン抽出物の塗布試験で

は、皮膚腫瘍の発生が認められた。

7.2.2.2.5 皮下注入

マウスにベンゾ[a]ピレン、その他 PAH を 6 種類加えたを添加したカーボンブラックを皮下注入した試験では、

多環芳香族炭化水素を含有するカーボンブラックを注入したマウスに局所的に腫瘍を発生させた。 多環芳香族

炭化水素を添加していないカーボンブラックでは腫瘍の発生は認められなかった 21)。

7.2.2.3 疫学調査

カーボンブラック生産工場での肺癌死亡率の疫学調査は米国、ドイツ、英国でのカーボンブラック工場の労働

者に対して行われた。これらの研究は各機関の発がん性評価で検討され、カーボンブラックへの暴露と肺がんの

発生率に因果関係は見いだせなかったと結論付けられている。

死亡率調査結果

米国 ドイツ 英国

対象工場 米国のカーボンブラック 18

工場

ドイツカーボンブラック 1 工

英国の 5 工場(工場は現在、

全て閉鎖されている。)

対象者 1935 年から 2003 年の間の雇

用労働者(製造関係作業者の

み)、5011名が参加、うち 6%

は女性

1976-1998 の間に就業した、

1528名の労働者が対象

1951-1996 の間に就業した、

1147名の労働者が対象

調査期間 労働者に付き、平均 29年の追

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17

跡調査を実施

調査結果 カーボンブラック工場雇用労

働者の中で、暴露によるガン

発生率の増加は認められな

い。

SMR(標準化死亡率)は 0.85

(127 例、95%CI(注): 0.71,

1.00) と算出された。

調査対象母集団で肺ガン発生

増加が認められた(SMR は

1.83 (50 例、 95%CI(注):

1.34, 2.39)が、カーボンブラ

ックへの暴露との間に正の相

関は認められなかった。

ガン発生率の増加が認められ

たが(SMR は1.73 (61例、95%

CI(注) : 1.32, 2.22))、カー

ボンブラックへの暴露による

ものとは関係付けなかった。

説明 初回暴露からの経過時間や暴

露期間との間にいかなる傾向

も認められなかった。

調査対象母集団の以前の職場

での、アスベスト及びその他

既知発癌性物質への事前暴露

が死亡率の増加に貢献したと

考えられている。

調査対象母集団で肺ガンの発

生増加が認められた

この調査では、その他要因(喫

煙、アスベストへの暴露等以

前の勤務地での発がん物質暴

露)により死亡率が増加した

と考えられている。

(注):95% C.I, confidence intervals (信頼区間)

7.2.2.3.1 UN GHS及び EU CLP評価基準に基づく評価

(1)国連 世界調和システム(UN GHS)

ラットにおいて、カーボンブラックは「肺過負荷」の条件下で、肺に刺激、細胞増殖、繊維形成、さ

らには肺腫瘍を発生させたが、この反応は主としてラット、特に雌のラットに現れる種特異的な現象で

あり、ヒトへの関連は知られていない 11)この研究結果は、UN GHS(Globally Harmonized System of

Classification and Labeling of Chemicals-化学品の分類および表示に関する世界調和システム) に

よるカーボンブラックのラベル表示にも影響する。UN GHS では、「動物実験で、動物に現れる影響の作

用機構が、ヒトの代謝においてそのまま適用するのに疑問がある場合、動物実験よりも低い発がん性分

類を採用する。また作用形態または作用機序が人に該当しない場合は、その物質が有害であるという分

類はしない 22)としてあり、カーボンブラックでは、ラットの実験で得られる有害影響の発生機構におい

て、ヒトへの関連性が十分でないため、ICBA では UH GHS ルールに則り、有害であると分類すべきでな

いと判断している。

(2)ヨーロッパユニオン(EU CLP)

EC圏で全ての化学物質の分類と表示に適用される「(CB4REACH)は-物質及び混合物の分類、ラベル、

包装に関する規則 30)」では、動物実験で、特定臓器への発がん性が認められたとしても、それがその動物

の種に特有な機構によるものである時、それをヒトへの有害性を予測する根拠として用い分類しないとい

うルール(CLP Annex I, 3.9.2.8.1. (e))があり、とくに「肺過負荷」の条件下の動物実験データはそ

の立場から、カーボンブラックは発がん性分類の対象外である。カーボンブラックコンソーシアム

(CB4REACH)は CLP 規則に則り、発がん性分類において有害であると分類すべきでないと結論し、2009

年に CB4REACH メンバーにより欧州化学品庁に提出、受理されている。カーボンブラックは、CLP規則

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18

30)中の「List of harmonised classification and labelling of hazardous substances(危険物質リスト)」

には含まれない。

7.2.2.3.2 各機関の発がん性評価結果

(1)国際がん研究機関(IARC)

世界保健機関(WHO)の外部組織である、IARC32)は英国 23)、ドイツ 24)、北米 25)で労働者を対象に行われたヒト

の癌リスクに関する疫学評価結果(コホート研究調査結果)を評価し、ヒトにおけるCBの発癌性を証拠立てる

には不十分であると結論した 26)。しかしながら、カーボンブラックのラットでの吸入実験研究結果 16)17)27)は発が

ん性の証拠(エビデンス)として十分であるとし、発がん性分類グループ2B「ヒトに対して発がん性を示す可能

性がある」に分類した(IARCモノグラフ-Vol 65 1996/ Vol 93 2010)。これは1つの種であっても、異な

る 2 つ以上の動物実験研究で発ガン性が陽性であることが示された場合、このように分類するという IARC

の指針に基づく結論である。

参考 IARCの発がん性分類と各グループの物質例

グループ 定義 例

1 人に対して発がん性がある(carcinogenic to

humans).

ダイオキシン,アスベスト,紙タバコ,

アルコール飲料,電離放射線

2A 人に対しておそらく発がん性がある(probably

carcinogenic to humans).

紫外線照射,クレオソート,ホルムア

ルデヒド

2B 人に対して発がん性があるかもしれない

(possibly carcinogenic to humans).

コーヒー,ゼリーや乳製品の安定剤

(カラゲーニン),わらび,ガソリン

3 人に対する発がん性については分類できない

(cannot be classified as to carcinogenicity

in humans).

カフェイン,お茶,コレステロール

4 人に対しておそらく発がん性がない(probably

not carcinogenic to humans).

カプロラクタム

(2)米国産業衛生専門家会議(ACGIH)28)

ACGIH はカーボンブラックの発がん性に関し、ラットによる吸入毒性試験では陽性であったが、これは「肺過

負荷」状況にさらされた結果であり、ヒトの肺がん性へ関連付けるには不十分という Mauderly13)の見解を支持し

た。さらに、英国 23)、ドイツ 24)、北米 25)での労働者を対象に行った「コホート」研究の疫学調査結果において、

CBへの暴露と発がん性の因果関係が見られなかったことから,ACGIH は、発がん性分類A3「動物に対し発が

ん性物質であるが、ヒトとの関連は分かっていない」としている。29)

(3)日本産業衛生学会

日本産業衛生学会は、IARCの発がん性分類を検討し,発がん物質表を定めている。この中でCBは「第 2群 B-

疫学研究からの証拠が限定的であり,動物実験からの証拠が十分でない.または,疫学研究からの証拠はないが,

動物実験からの証拠が十分である.」に分類される。

(4)米国 環境保護庁(EPA: Environmental Protection Agency)

EPA は物質の発がん性分類を行っているが、カーボンブラックは含まれておらず、また EPA の IRIS システム

(Integrated Risk Information System-人が環境中で暴露され悪影響を及ぼす化学物質のリスト)に含まれな

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19

い。

(5)米国 国家毒性プログラム-(NTP:National Toxicology Program)

NTP は、発ガン性物質をRoC(Report on Carcinogens –RoC)31)で公開するが、カーボンブラックはそのリ

ストには含まれない。

(6)米国国立労働安全衛生研究所(NIOSH)

NIOSH(National Institute of Occupational Safety and Health)は職業性ガンを起こす可能性物質のリスト

を公開し、0.1 重量%以上の多環芳香族炭化水素(Polycyclic aromatic hydrocarbon、PAH)を含有するカーボ

ンブラックがそのリストに入っている。

7.2.2.4CB抽出物

カーボンブラック中に含有される有機溶剤可溶分(カーボンブラック抽出物)は、IARCを始めすべての機関で

発がん性の認められた多環芳香族炭化水素を含んでいる 33)。従ってトルエン着色透過度や溶媒抽出量を測定する

試験においてはこれに暴露する機会の生じないよう留意しなければならない。

7.2.3 がん以外の毒性

7.2.3.1 呼吸器系への作用

カーボンブラックは他の低溶解性、低毒性の一般的粉じんと同様の作用を示す。過去の疫学調査によれば、高

濃度・長時間の暴露で肺への蓄積量が増加し、その結果次のような症状が報告されている 34)。

① 肺内に蓄積された異物(CB カーボンブラック等)の体外へ排出される期間の長期化。

② 肺活量等の機能の低下及びじん肺

③ せき、たんを伴う気管支疾患の増加

7.2.3.2 皮膚への作用

カーボンブラックに、皮ふ感さ性は報告されていない。長期にわたる接触では皮膚の乾燥、刺激を伴うことが

ある。

7.2.4 許容濃度等

7.2.4.1 日本

① 管理濃度(厚生労働省告示 369号 2004年 10月 1日、改正厚生労働省告示 437号 2007年 12月 27日)

カーボンブラックは遊離けい酸含有率ゼロなので 3.0 mg/m3

② 日本産業衛生学会勧告値 2001年 1月 15日

カーボンブラックは第2種粉じんに該当し、吸入性粉じん 1 mg/m3、総粉じん 4 mg/m3

7.2.4.2 米国

① ACGIH(産業衛生専門家会議)許容濃度勧告値(時間加重平均)

TLV-TWA 3.0 mg/m3 (吸引性粉じん)

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(TLV:Threshold Limit Value TWA:Time Weighted Average)

② OSHA(労働安全衛生局)許容暴露限界値(時間的加重平均)

PEL-TWA 3.5 mg/m3

(PEL:Permissible Exposure Limit)

③ NIOSH(国立労働安全衛生研究所)暴露限界勧告値(時間的加重平均)

REL-TWA 3.5 mg/m3

(REL:Recommended Exposure Limit)

NIOSH では浮遊粉じんとしてのカーボンブラック中の PAHs(多環芳香族炭化水素)含有量が 0.1%を超える場

合には、空気中のPAHsの測定が必要であると推奨しており、シクロヘキサン抽出成分としての測定において、

空気中の PAHsの暴露限界は 0.1 mg/m3(REL)と推奨している。

7.2.4.3 その他各国

オーストラリア: 3.0 mg/m3, 時間荷重平均 (TWA)吸入粉塵

ベルギー: 3.6 mg/m3, TWA

ブラジル: 3.5 mg/m3, TWA

カナダ(オンタリオ州): 3.0 mg/m3, TWA吸入粉塵

中国: 4.0 mg/m3, TWA; 8.0 mg/m3, 短時間暴露限度(STEL-通常 15 分間の時間荷重平均濃度)

コロンビア: 3.0 mg/m3, TWA 吸入粉塵

チェコ: 2.0 mg/m3, TWA

フィンランド: 3.5 mg/m3, TWA; 7.0 mg/m3, STEL(通常 15 分間の時間荷重平均濃度)

フランス - 国立安全衛生研究所: 3.5 mg/m3, 暴露平均濃度

ドイツ - TRGS 900: 3.0 mg/m3, 時間荷重平均 吸引域粉塵; 10.0 mg/m3, 時間荷重平均 吸入粉塵

ドイツ - AGW: 1.5 mg/m3, TWA 吸引域粉塵; 4.0 mg/m3, TWA 吸入粉塵

香港: 3.5 mg/m3, TWA

インドネシア: 3.5 mg/m3, TWA

アイルランド: 3.5 mg/m3, TWA; 7.0 mg/m3, Stel(通常 15 分間の時間荷重平均濃度)

イタリア: 3.0 mg/m3, TWA 吸入粉塵

韓国: 3.5 mg/m3, 時間荷重平均

マレーシア: 3.5 mg/m3, 時間荷重平均

オランダ - 最高許容濃度: 3.5 mg/m3, 時間荷重平均 吸入粉塵

ノルウェイ: 3.5 mg/m3, 時間荷重平均

スペイン: 3.5 mg/m3, 時間荷重平均(表示限界値)

スウェーデン: 3.0 mg/m3, 時間荷重平均

イギリス - 職場暴露露許容濃度:3.5 mg/m3, 時間荷重平均 吸入粉塵; 7.0 mg/m3, 短時間暴露限度(通常 15 分

間の時間荷重平均濃度) 吸入粉塵

8,まとめ

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(1)法規制

カーボンブラックは、この名を冠した工業生産品が 19世紀には存在し、現在の生産体系が完成したのも 1940年

代である。このように長い歴史のあるカーボンブラックは、既に安全性についての試験を有しており・規制濃度

が決められ且つ法規制のなされている(日本の場合、労働安全衛生法粉塵障害防止規則等)。このように安全に

対する配慮が十分に講じられていると考えられる。

また、発がん性については、IARCの分類で「区分 2B」(“ヒトに対して発がん性であるかもしれない”、コ

ーヒー等が該当)で有り、発がん性は低い物質である。

(2)日本のカーボンブラック協会の主張

私達は、“カーボンブラック”は、日常生活でどこにでも見られる“煤”と基本的な粒子径サイズ大きさは、

大きく変わらないが、より安全性の高い製品と考える。私達は、カーボンブラックを合理的な製法に基づいて生

産することで安定した、安全な製品とする努力をしてきた。

カーボンブラック協会はこのような認識から、カーボンブラックについては、「数十年以上前から生産・使用

されている材料であり、ナノサイズであるからと言って他のナノ材料と同一視すべきでないこと」、「大きさだけ

の理由で規制が強化されるべきでないこと」を強く主張する。この考えに至ったのは、カーボンブラックが人々

の生活に広く利用され、今後も市民生活に密着して生活・文化を支えていく極めて有用な材料であり、これをナ

ノサイズであることだけを理由に他のナノ材料と同列に扱うことは、客観性を欠いていると共に同等の性能を発

揮できかつ大量生産が代替え材料のない素材がない段階で過剰な規制は、社会的混乱を引き起こす不当な行為で

あると考えるからである。

ここで記載した主張は、カーボンブラックに関してのみの主張であるが、既に使用されている他の工業ナノ材

料の中にも安全性が確認できる材料が有ると考えている。これらの材料に対しても、大きさだけの理由で(ナノ

サイズ)特別な規制をするのではなく、個別に、また、客観的に安全性を議論することにより、有効な素材は、

ナノ材料としての有効性を理解し、有効に取り扱うべきと考える。

≪引用・参考文献≫

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カーボンブラック協会 環境技術委員会ナノ部会 構成表

氏名 所属

(委員) 金 井 孝 陽 新日化カーボン株式会社

垣 内 崇 孝 三菱化学株式会社

山 口 東 吾 旭カーボン株式会社

久 保 寺 勝

キャボットジャパン株式会社

玉 井 良 介 キャボットジャパン株式会社

片 岡 和 人 東海カーボン株式会社

石 塚 芳 己 電気化学株式会社

(事務局) 山 田 睦 親 カーボンブラック協会

(文責 金 井 孝 陽)

問合せ先

===================

カーボンブラック協会

〒107-0051 東京都港区元赤坂 1-5-26

東部ビル 5 階

Tel;03-5786-3015、 Fax;03-3478-3016

E-mail:[email protected]

===================

第二版

第一版 2011.03.23 発行