ストラクチャードファイナンス商品 格付方法の概要 - r&i...2020/04/01  ·...

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2020 4 1 ストラクチャードファイナンス商品 格付方法の概要

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  • 2020 年 4 月 1 日

    ストラクチャードファイナンス商品

    格付方法の概要

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    ©Rating and Investment Information, Inc.

    目 次 第1章 総論 .......................................................................................................................... 5

    第1節 格付方法の位置付けとSF商品分析の考え方 ...................................................... 5 第2節 SF商品の信用格付の基本的な方法 .................................................................... 6 第3節 信用格付のモニタリング方法 ............................................................................... 9

    第2章 各論 仕組みに関するリスク ................................................................................. 12 第1節 資産移転の仕組み ............................................................................................... 12 第2節 資産保有(SPV)の仕組み ................................................................................. 15 第3節 資産管理の仕組み ............................................................................................... 21 第4節 外部信用補完の仕組み ........................................................................................ 32 第5節 外部流動性補完の仕組み .................................................................................... 34 第6節 キャッシュフロー分配の仕組み.......................................................................... 36

    第3章 各論 裏付資産に関するリスク ............................................................................. 38 第1節 割賦債権 ............................................................................................................. 38 第2節 リース料債権(ファイナンスリース) ............................................................... 44 第3節 住宅ローン債権................................................................................................... 48 第4節 住宅金融支援機構MBS .................................................................................... 55 第5節 貸金債権 ............................................................................................................. 60 第6節 一般貸付債権 ...................................................................................................... 65 第7節 手形債権 ............................................................................................................. 69 第8節 売掛債権 ............................................................................................................. 71 第9節 債券 .................................................................................................................... 74 第10節 デリバティブ取引(クレジットデフォルトスワップ等) ............................... 78 第11節 その他金銭債権等(信託受益権を含む) ........................................................ 84 第12節 不動産(不動産信託受益権).......................................................................... 85 第13節 不動産ノンリコースローン ............................................................................. 88 第14節 開発型不動産................................................................................................... 90 第15節 入居保証金債権 ............................................................................................... 93 第16節 保証付債権 ...................................................................................................... 95 第17節 診療報酬債権、調剤報酬債権.......................................................................... 98 第18節 マンスリークリア債権 .................................................................................. 100 第19節 プロジェクト(PFI を含む) ........................................................................ 104 第20節 事業キャッシュフロー等 ............................................................................... 117 第21節 サブパフォーミングローン等........................................................................ 118

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    第22節 航空会社向け金銭債権及び航空機 ................................................................ 120 第23節 その他アセット(別節で定めるものを除く)............................................... 123

    第4章 各論 キャッシュフローリスク ........................................................................... 125 第1節 金銭債権等に関する分析方法(大数アプローチ) ........................................... 125 第2節 金銭債権等に関する分析方法(少数アプローチ) ........................................... 132 第3節 不動産証券化商品に関する分析方法 ................................................................ 134 第4節 プロジェクトファイナンスの分析方法 ............................................................. 141 第5節 事業キャッシュフロー等に関する分析方法 ...................................................... 145 第6節 キャッシュフローテストを用いる分析方法 ...................................................... 147 第7節 裏付資産及び仕組み関係者等の信用格付を基にする分析方法 ......................... 149 第8節 デリバティブ商品のカウンターパーティーリスク軽減措置の分析方法 ........... 151 第9節 欠番 .................................................................................................................. 153 第10節 リスク移転取引の分析方法 ........................................................................... 154 第11節 航空機ファイナンスに関する分析方法 ......................................................... 155

    第5章 各論 モニタリング ............................................................................................. 156 第1節 裏付資産及び仕組み関係者等の信用格付に関するモニタリング...................... 156 第2節 大数アプローチのモニタリング........................................................................ 156 第3節 少数アプローチのモニタリング........................................................................ 157 第4節 不動産を裏付資産とする格付対象のモニタリング ........................................... 157 第5節 手形債権・売掛債権等を裏付資産とする短期商品のモニタリング .................. 157 第6節 プロジェクト及び事業キャッシュフロー等を裏付資産とする格付対象のモニタリング ........................................................................................................................... 158 第7節 航空会社向け金銭債権及び航空機を裏付資産とする格付対象のモニタリング 158 第8節 プログラムに対する信用格付のモニタリング .................................................. 158

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    (注意事項) 第 2 章、第 3 章記載の「基本的な事項」は事実を述べたものである。 第 2 章、第 3 章記載の「リスク要因」は主なものを記載している。 第 2 章、第 3 章記載の「リスク対応」はオリジネーター、アレンジャー等が行う当該リ

    スクへの対応である。ひとつのリスク要因に複数の対応がある場合、通常、いずれか

    の対応が単体又は組み合わせで用いられる。 第 2 章、第 3 章記載の「評価の視点」は、「リスク対応」に対する R&I の評価の視点で

    ある。記載された「リスク対応」以外の対応がなされた場合、その対応が適切である

    かを評価する。 本文記載の「R&I が認める先」は、R&I が非公表の信用格付を付与し、その文脈にお

    いて適切性を認める法人等である。 「ストラクチャードファイナンス商品(SF 商品)」とは、証券化商品、デリバティブ商

    品、その他 SF 商品をいう。J-REIT は含まない。 「証券化商品」とは、主として特定の資産のみを裏付になんらかの仕組みを用いて、企

    業が資金調達するための商品をいう。 「デリバティブ商品」とは、主として比較的高い信用力の債券のリパッケージ商品にデ

    リバティブ取引を組み込んだ商品をいう。 「その他 SF 商品」とは、主としてコーポレートファイナンスになんらかの仕組みを用

    いて信用力を高めている商品をいう。

  • 格付方法の概要 第 1 章 総論

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    第1章 総論

    第1節 格付方法の位置付けとSF商品分析の考え方

    格付方法は、信用格付業務基本方針及び格付付与方針に則り定められるものである。格

    付方法は定性的・定量的な論理体系で、ストラクチャードファイナンス商品(以下、SF 商品)の信用格付を行う際に使用する『格付の考え方』を定めるものである。個別の案件の

    信用格付は、この格付方法に基づき付与される。格付の手順、手続き、具体的な計算方法

    等はマニュアルとして別途定められている。 本稿は、格付方法の概要を『格付方法の概要』として公表するものである。格付方法の

    概要は格付方法の基本的な考え方を記述した総論と、仕組みに関するリスク、裏付資産に

    関するリスク、アプローチ毎の分析方法、信用格付のモニタリング方法を記述した各論か

    ら構成されている。総論は各論の上位概念となっている。 R&I の信用格付は信頼性のある格付であることを目標としている。この目標は、①先見

    性のある格付と②安定性・継続性のある格付により実現される。先見性のある格付を付与

    することが、結果として安定性・継続性のある格付となる。 このためには、的確な将来見通しが重要となる。将来の的確な見通しは以下の分析プロ

    セスにより行われる。まず仕組みに関するリスク、裏付資産に関するリスクのそれぞれの

    信用リスク要因の洗い出しとこれらの信用リスク要因分析により案件実態の把握を行う。

    この信用リスク要因分析結果を反映してキャッシュフローリスク分析を行い、その後に、

    キャッシュフローリスク分析に織り込まなかった信用リスク要因の分析結果を勘案した総

    合評価を行い、最終的に信用格付を付与する。 この様な各プロセスにおいて用いる格付方法は、その具体的な案件の仕組みや裏付資産

    等の特性に応じて、適切に選択されなければならない。用いられる格付方法は単独の場合、

    一部の場合、複数の場合がある。いずれにしても本格付方法に則り、その専門的知識と技

    能を発揮して、信頼性のある信用格付を付与しなければならない。 なお、格付方法がない場合とは、格付方法の各章において、考え方について全く記載が

    ない場合を言う。たとえばエクイティのインデックスにリンクする商品の場合がこれに該

    当する。各章に何らかの考え方が存在する場合や一部の記載がある場合は、格付方法は存

    在するものと判断される。

  • 格付方法の概要 第 1 章 総論

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    第2節 SF商品の信用格付の基本的な方法

    第1項 格付対象の特定 信用格付の付与に当たっては、まず、信用格付の対象となる SF 商品(格付対象)を特定

    する。格付対象を特定する主な属性としては、発行者名、回号を含む名称、発行日、償還

    日、利率、発行金額等が挙げられる。 これら属性は、契約で規定されており、格付対象としては、有価証券又は貸付以外にバ

    ーゼル II 規制に定められる「購入債権」やデリバティブ契約、プログラム等が含まれる。 発行日から償還期日までの期間が 1 年未満であるか否かによって、格付対象に付与する

    信用格付の種類が異なる。原則として、1 年未満である場合には、格付対象を短期金融債務とみなして短期格付を付与し、それ以外は長期個別債務格付を付与する。短期格付を付与

    する場合、格付対象に対して短期格付を付与するための特段の方法がなければ、適用する

    格付方法に従い長期個別債務格付を決定した後に、長期個別債務格付を短期格付に読み替

    えることによって短期格付を決定する。従って、本格付方法は基本的に長期個別債務格付

    について記述する。なお、読み替えに際しては、長期個別債務格付における信用力が債務

    不履行となる可能性(デフォルトリスク)及び債務不履行時の損失の可能性(回収リスク)

    から判断される一方で、短期格付における信用力には回収リスクの判断を織り込まず、単

    にデフォルトリスクの判断のみに基づくことに留意する。

    第2項 約定の整理 信用格付は債務が約定通りに履行される確実性に対する意見であるから、付与に当たっ

    ては、約定を整理し、特定する必要がある。 SF 商品は、一般的に、債務不履行に陥らないように又は債務不履行によって法的整理に

    至らないように設計される。そのため、SF 商品は、当初の元本償還方法及び利払い方法に関して支払い不足になっていないかという観点にたって評価する。

    SF 商品の信用格付に当たっては、格付付与方針に定めるデフォルトの考え方に沿って、格付対象の約定を整理する。一般的な SF 商品においては、最終償還までの元利払いの確実性を評価する。また、実績配当型の利息を付す商品等においては、利息の支払い金額を特

    定できないため、期日通りの元本償還のみを約定として信用力を評価することがある。IO(Interest Only)等の利息も評価する。 なお、一般に SF 商品の信用格付の評価の対象外としている事象は、SF 商品の設計又は

    取引に拘わりなく市場参加者に広く一律に適用される税制変更・法制変更等、仕組み関係

    者の詐欺行為、投資家の責めに帰すべき事由、又は投資家の権利行使等によって生じる遅

    延・損失である。

  • 格付方法の概要 第 1 章 総論

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    第3項 資料の収集 信用格付を付与するため、案件関連契約書、裏付資産に関するデータ・資料、パフォー

    マンスに関するデータ、モニタリング資料等を収集する。 収集した資料は、信用リスク要因の洗い出しと分析(第 4 項)、キャッシュフローリスク

    分析(第 5 項)、総合評価(第 6 項)に用いる。最終的には、分析に用いた資料すべてを総合して判断し、信用格付を決定する。 信用格付を付与した後は、モニタリング資料を定期的又は必要に応じて収集し、モニタ

    リング業務を行う(第 3 節)。

    第4項 信用リスク要因の洗い出しと分析 収集した資料を基に、格付対象に影響があると判断する重要な信用リスク要因を洗い出

    す。信用リスク要因を洗い出すためには、格付対象の実態に即して、収集した資料を精査

    し、格付付与上、適切な部分を使用する。具体的には、信用リスク要因を仕組みに関する

    事項と裏付資産に関する事項に整理し、それぞれの事項について信用リスクの有無や程度

    を確認していく必要がある。 案件関連契約書からは、仕組みに関して、主に法的リスクや仕組みの強さに関する信用

    リスク要因を洗い出す。裏付資産に関するデータ・資料からは、裏付資産に関して、主に

    キャッシュフローに変動を生じさせる信用リスク要因を洗い出す。

    I. 仕組みに関するリスク

    仕組みに関するリスクでは、主に移転、保有、管理の 3 つの視点から分析し、SF 商品が組成される過程で、適正な特別目的事業体(以下、SPV)に資産が移転(譲渡)され、以降どのように保有・管理されていくかを確認する。さらに、外部信用補完、外部流動

    性補完、キャッシュフロー分配の 3 つの視点はキャッシュフローに関するもので、これらの仕組みが備わっていれば内容を確認する。 主な信用リスク要因を例示すれば、以下のとおりである。 利益相反 真正売買性 SPV の事業リスク SPV の資本的関係に関するリスク SPV の人的関係に関するリスク SPV のリングフェンス性 サービサー破綻によるコミングリングリスク サービサー破綻による流動性リスク スワップカウンターパーティー破綻に関するリスク 預金先金融機関破綻に関するリスク

  • 格付方法の概要 第 1 章 総論

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    カストディアン破綻に関するリスク 余資運用対象の価値減少に関するリスク 重要な仕組み関係者の業務態勢に関するリスク 外部信用補完提供者/外部流動性補完提供者に関するリスク 外部信用補完/外部流動性補完が供与されないリスク 信用補完のタイミングに関するリスク ウォーターフォールに関するリスク マスタートラストに関するリスク

    II. 裏付資産に関するリスク

    裏付資産に関するリスクでは、主に以下の視点から分析を行う。 裏付資産の基本的性質の確認 裏付資産別の信用リスク要因 第 3 章の各節では、裏付資産の種別毎に主な信用リスク要因の洗い出しを行っている。

    裏付資産に直接的に対応する節がない場合には、複数の節を組み合わせて適用する、又

    は類似する裏付資産に関する節を適用する。

    第5項 キャッシュフローリスク分析 上記の信用リスク要因分析及び収集した資料に基づき、キャッシュフローリスク分析を

    行う。サービサーの破綻、キャッシュフロー分配の仕組み、及び裏付資産のキャッシュフ

    ローの変動等が、SF 商品の元利払いに与える影響を分析する。 裏付資産のキャッシュフローの変動等を分析するに当たっては主にパフォーマンスに関

    するデータを使用するが、その際は適切な部分や期間を用いる。また、キャッシュフロー

    分配の仕組みの検討に当たっては、案件関連契約書に記載されている資金のフローが重要

    となる。 先見性のある格付とするため、個々の信用リスク要因の洗い出しと分析では確実なもの

    として織り込めなかったものの将来的には十分に起こりうる考慮すべき事柄があれば、そ

    の定性要因をキャッシュフローリスク分析に加味する。

    第6項 総合評価 キャッシュフローリスク分析結果(第 5 項)、及び信用リスク要因分析結果(第 4 項)の

    うちキャッシュフローリスク分析に織り込まなかった信用リスク要因の両者を勘案し、格

    付符号の定義に照らして総合評価を行う。

  • 格付方法の概要 第 1 章 総論

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    第3節 信用格付のモニタリング方法

    第1項 基本的な考え方 モニタリング期間に信用格付において基本とする考え方及び使用する格付方法は、原則

    として信用格付の新規付与時と同様である。モニタリング期間においても、信用格付は先

    見性があり、安定性・継続性のある意見であることが、投資家にとって重要であるとの立

    場に立ち、信用格付を付与している。信用格付の付与にあたっては格付対象の実態を把握

    し、これを踏まえて的確な将来見通しを策定する。

    第2項 格付対象の変化を捉えるモニタリング 信用格付は、その時々の状況を反映して適切に評価されるべきものである。当初格付の

    付与後、格付対象の状態及び周辺環境やキャッシュフローリスク分析に用いた前提に変化

    が生じれば、その変化の度合いによっては、その都度適切に信用格付を変更する可能性が

    ある。従って、予め信用格付をモニタリングしないことを明言している場合を除き、信用

    格付に対し、継続的なモニタリングを行う。 信用格付を付与した際に認識した格付対象の状態及び周辺環境、キャッシュフローリス

    ク分析に用いた前提に大きな変化があれば、信用格付を変更する。逆に、大きな変化がな

    い場合は、信用格付を変更しない。 なお、モニタリング期間には、信用格付の新規付与時には存在しない裏付資産プールの

    パフォーマンス実績のような資料がある一方で、裏付資産プール内の債務者の属性データ

    のように通常では入手できない資料があることに留意する。

    第3項 レーティング・モニターの指定、継続、解除 モニタリング期間に格付対象に変化が生じた結果、信用格付の変更可能性が高いと認識

    するものの、信用格付の変更要否の判断には十分な検討時間を要する場合、あるいは、全

    く予期せぬ環境変化が起こり信用格付の変更要否の判断に十分な検討時間を要する場合に

    は、格付対象をレーティング・モニターに指定する。なお、信用力に影響を与える事象が

    生じていることを表すためにレーティング・モニターに指定する場合は、符号変更の可能

    性の有無にかかわらず、レーティング・モニター(方向は未定)を用いることがある。 レーティング・モニターは、原則として各事象の影響を信用格付に加味することが可能

    となった場合に解除する。 レーティング・モニターに指定した格付対象について、新たに、レーティング・モニタ

    ーの指定を検討すべき事象が発生した場合、「レーティング・モニターの継続」の格付アク

    ションを取ることがある。

  • 格付方法の概要 第 1 章 総論

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    (参考1)SF商品の信用格付の基本的な方法

    第1章:総論

    格付対象の特定約定の整理

    信用リスク要因洗い出し

    信用リスク要因分析

    キャッシュフローリスク分析

    総合評価 ⇒ 信用格付

    第2章:仕組みに関するリスク

    第3章:裏付資産に関するリスク

    第2章:仕組みに関するリスク/第3章:裏付資産に関するリスク

    (信用リスク要因分析の評価の視点)

    第4章:キャッシュフローリスク(キャッシュフローリスク分析の視点)

    第5章:モニタリング

    資料の収集

    キャッシュフローリスク分析に用いない信用リスク要因分析結果

    信用リスク要因分析結果(定量・定性)

    キャッシュフローリスク分析結果

  • 格付方法の概要 第 1 章 総論

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    参考

    2)

    典型

    商品

    にお

    ける

    格付

    方法

    の概

    要参

    照箇

    商品

    名1章

    総論

    2章

    仕組

    み3章

    裏付

    資産

    4章

    キャ

    ッシ

    ュフ

    ロー

    リス

    ク分

    析ABS(割

    賦)

    すべ

    て適

    宜1節

    賦債

    権1節

    銭債

    権等

    に関

    する

    分析

    方法

    (大

    数アプローチ)

    6節

    キャッシュフローテストを

    用い

    る分

    析方

    法ABS(リース)

    すべ

    て適

    宜2節

    リース料

    債権

    (ファイナンスリース)

    1節

    銭債

    権等

    に関

    する

    分析

    方法

    (大

    数アプローチ)

    6節

    キャッシュフローテストを

    用い

    る分

    析方

    法RMBS

    すべ

    て適

    宜3節

    宅ローン債

    権1節

    銭債

    権等

    に関

    する

    分析

    方法

    (大

    数アプローチ)

    6節

    キャッシュフローテストを

    用い

    る分

    析方

    法RMBS(支

    援機

    構MBS)

    すべ

    て適

    宜4節

    宅金

    融支

    援機

    構MBS

    1節

    銭債

    権等

    に関

    する

    分析

    方法

    (大

    数アプローチ)

    6節

    キャッシュフローテストを

    用い

    る分

    析方

    法ABS(貸

    金)

    すべ

    て適

    宜5節

    金債

    権1節

    銭債

    権等

    に関

    する

    分析

    方法

    (大

    数アプローチ)

    6節

    キャッシュフローテストを

    用い

    る分

    析方

    法CLO、CBO

    すべ

    て適

    宜6節

    般貸

    付債

    権1節

    銭債

    権等

    に関

    する

    分析

    方法

    (大

    数アプローチ)

    9節

    券2節

    銭債

    権等

    に関

    する

    分析

    方法

    (少

    数アプローチ)

    ABS(手

    形)

    すべ

    て適

    宜7節

    形債

    権1節

    銭債

    権等

    に関

    する

    分析

    方法

    (大

    数アプローチ)

    ABS(売

    掛)

    すべ

    て適

    宜8節

    掛債

    権1節

    銭債

    権等

    に関

    する

    分析

    方法

    (大

    数アプローチ)

    クレジットリンク商

    品す

    べて

    適宜

    9節

    券2節

    銭債

    権等

    に関

    する

    分析

    方法

    (少

    数アプローチ)

    (CLL、CLN、FTD、SCDO)

    10節

    デリバティブ取

    引7節

    付資

    産及

    び仕

    組み

    関係

    者等

    の信

    用格

    付を

    基に

    する

    分析

    方法

    (クレジットデフォルトスワップ等

    )8節

    デリバティブ商

    品の

    カウンターパーティーリスク軽

    減措

    置の

    分析

    方法

    JGBリパケージ、CBリパッケージ

    すべ

    て適

    宜9節

    券7節

    付資

    産及

    び仕

    組み

    関係

    者等

    の信

    用格

    付を

    基に

    する

    分析

    方法

    10節

    デリバティブ取

    引 (クレジットデフォルトスワップ等

    )リパッケージ商

    品す

    べて

    適宜

    11節

    の他

    金銭

    債権

    等7節

    付資

    産及

    び仕

    組み

    関係

    者等

    の信

    用格

    付を

    基に

    する

    分析

    方法

    (基

    金の

    証券

    化、預

    金債

    権、受

    益権

    等)

      (

    信託

    受益

    権を

    含む

    )不

    動産

    証券

    化商

    品(

    シングルボロワー型

    )す

    べて

    適宜

    12節

    動産

    (不

    動産

    信託

    受益

    権)

    3節

    動産

    証券

    化商

    品に

    関す

    る分

    析方

    法不

    動産

    証券

    化商

    品(

    マルチボロワー型

    )す

    べて

    適宜

    13節

    動産

    ノンリコースローン

    3節

    動産

    証券

    化商

    品に

    関す

    る分

    析方

    法不

    動産

    証券

    化商

    品(

    開発

    型)

    すべ

    て適

    宜14節

    発型

    不動

    産3節

    動産

    証券

    化商

    品に

    関す

    る分

    析方

    法ABS(入

    居保

    証金

    )す

    べて

    適宜

    15節

    居保

    証金

    債権

    7節

    付資

    産及

    び仕

    組み

    関係

    者等

    の信

    用格

    付を

    基に

    する

    分析

    方法

    CLO(保

    証ローン)

    すべ

    て適

    宜16節

    証付

    債権

    7節

    付資

    産及

    び仕

    組み

    関係

    者等

    の信

    用格

    付を

    基に

    する

    分析

    方法

    ABS(診

    療報

    酬)

    すべ

    て適

    宜17節

    療報

    酬債

    権、調

    剤報

    酬債

    権1節

    銭債

    権等

    に関

    する

    分析

    方法

    (大

    数アプローチ)

    ABS(マンスリークリア)

    すべ

    て適

    宜18節

    マンスリークリア債

    権1節

    銭債

    権等

    に関

    する

    分析

    方法

    (大

    数アプローチ)

    プロジェクトファイナンス

    すべ

    て適

    宜19節

    プロジェクト(PFIを

    含む

    )4節

    プロジェクトファイナンスの

    分析

    方法

    事業

    証券

    化商

    品&LBO

    すべ

    て適

    宜20節

    業キャッシュフロー等

    5節

    業キャッシュフロー等

    に関

    する

    分析

    方法

    不動

    産担

    保付

    ローン等

    すべ

    て適

    宜21節

    サブパフォーミングローン等

    1節

    銭債

    権等

    に関

    する

    分析

    方法

    (大

    数アプローチ)

    2節

    銭債

    権等

    に関

    する

    分析

    方法

    (少

    数アプローチ)

    航空

    機ファイナンス

    すべ

    て適

    宜22節

    空会

    社向

    け金

    銭債

    権及

    び航

    空機

    11節

    空機

    ファイナンスに

    関す

    る分

    析方

    法ABCP

    すべ

    て適

    宜7節

    形債

    権7節

    付資

    産及

    び仕

    組み

    関係

    者等

    の信

    用格

    付を

    基に

    する

    分析

    方法

    8節

    掛債

    本格

    付方

    法は

    SF商

    品の

    信用

    リス

    ク要

    因や

    分析

    方法

    ごと

    に述

    べて

    いる

    ため

    、特

    定の

    SF商

    品を

    格付

    対象

    とし

    た場

    合は

    、こ

    の各

    論の

    組み

    合せ

    とな

    る。

    その

    ため

    、典

    型的

    な商

    品を

    例示

    して

    、格

    付方

    法の

    主に

    参照

    すべ

    き箇

    所を

    下記

    に示

    した

    。な

    お、

    典型

    には

    当て

    はま

    らな

    い商

    品が

    ある

  • 格付方法の概要 第2章 各論 仕組みに関するリスク

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    第2章 各論 仕組みに関するリスク

    本章では、総論第 2 節第 4 項に述べた信用リスク要因の洗い出しと分析について、仕組みに関するリスクの側面から、主なリスク要因を挙げて、その評価の視点を示す。

    仕組みの種類毎に節を設け、各節の第 1 項において仕組みの基本的な事項について述べ、第 2 項において当該仕組みにおいて考えられる主な信用リスク要因の分析について述べる。信用リスク要因の分析は、まずリスク要因の内容を示し、それに関する主なリスク対応と

    評価の視点を示している。

    第1節 資産移転の仕組み

    第1項 基本的な事項

    I. 仕組みの目的

    資産移転の仕組みの目的は、裏付資産から生じるキャッシュフローを阻害されること

    なく投資家へ分配させるために、裏付資産の所有権を SF 商品の発行体となる SPV へ移転を確実なものとすることである。

    II. 仕組みの構成

    債権の譲渡(現に発生していない債権の譲渡を含む。)は、基本的に民法に規定される

    債権譲渡の手続きに従って行われる。裏付資産となる金銭債権の原因となる契約関係に

    おける当該譲渡債権の位置づけを明確にし、契約上の他の権利・義務との関係を適切に

    整理したうえで、SPV へ裏付資産の移転が行われる。 権利関係が明確で、資産の移転手続きの市場慣行が確立されている手形及び債券につ

    いては、法令及び市場慣行等に則り、SPV へ裏付資産の移転が行われる。 不動産については、裏付不動産の所有権等が譲渡されることにより、SPV へ裏付資産

    の移転が行われる。

    III. 主な仕組みの関係者

    オリジネーター、アレンジャー、SPV

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    第2項 信用リスク要因の分析

    I. 移転関係者との利益相反

    A. リスク要因

    オリジネーター等と投資家は、通常、利益相反の関係にある。 よって、オリジネーター等(投資家と利益相反関係にあるもの)が自己の利益の最

    大化のために、投資家に信用損失を与える可能性がある。

    B. 主なリスク対応と評価の視点

    1. 利益相反防止措置の確保 抽出基準など適切な基準を定める等、裏付資産の特徴にあった譲渡やリスク移

    転に関する手続きを明確にすることなどにより利益相反を抑止する。

    2. オリジネーター等による SF 商品の一部保有 オリジネーター等が SF 商品の一部を保有することによって、SF 商品の損失を

    負担するため、利益相反を抑止する効果が期待される。

    評価は、1.もしくは 2.にて、利益相反への対応が十分かという視点で行う。 なお、裏付資産に参考プールとの類似性が要求される場合は、1.もしくは 2.が対応

    されない限り、原則、信用格付を付与しない。裏付資産に参考プールとの類似性が要

    求されない場合は、裏付資産の特徴を踏まえ、評価する。

    II. 真正売買性に関するリスク

    A. リスク要因

    オリジネーターが破綻した場合、裏付資産の譲渡が否認され、SF 商品の元本及び利息の支払原資が不足する。 譲渡が否認されないまでも、オリジネーターの法的破綻処理の過程で、裏付資産の

    移転が売買ではなくオリジネーターの担保付取引と見なされる可能性がある。

    B. 主なリスク対応と評価の視点

    1. 真正売買性確保のための諸手当て 裏付資産の特徴にあわせ、主に以下の点について検討し、真正売買性に関する

    リスクが顕在化する可能性が低いと判断する場合、オリジネーターの信用力より

    も高い信用格付を付与することができる。手当てが不十分な場合、オリジネータ

    ーの信用格付を基に信用格付を判断する。以下は例示である。

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    (i) 当事者の意図

    (ii) 資産譲渡の有効性、対抗要件の具備

    (iii) 法的支配権限の移転

    (iv) 経済的リスクの移転

    (v) 被担保債権の不存在

    評価は、真正売買性確保のための諸手当ての十分性という視点から行う。

    2. オリジネーターの適格性 オリジネーターが譲渡時に債務超過等の状態にあると、破綻時にオリジネータ

    ーの破産管財人により、譲渡自体が否認されてしまうリスクがある。 その対応として、オリジネーターは会計監査を受け、無限定適正意見を受けて

    いれば、特に問題はないと考えている。会計監査を受けていない場合は、オリジ

    ネーターの信用力等によって、譲渡否認リスクを完全に払拭はできないことから、

    その信用力等について確認を行う。 評価は、譲渡否認リスクが顕在化する可能性が高いかどうかという視点で行う。

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    第2節 資産保有(SPV)の仕組み

    第1項 基本的な事項

    I. 仕組みの目的

    SPV が裏付資産を保有し、裏付資産から発生するキャッシュフローを安定継続的に投資家に分配する役目を担うためには、一般的に、SPV を倒産隔離性の高い機能が備わった箱(導管体)とする必要がある。 裏付資産から生じるキャッシュフローを裏付資産以外の要因により阻害された場合、

    オリジネーター及び投資家のニーズを満たすことができない。そのためには、裏付資産

    を保有し、裏付資産から発生するキャッシュフローを投資家へ安定継続的に分配するこ

    とが SF 商品の発行体である SPV には求められる。

    II. 仕組みの構成

    SPV の形態には、信託形式と会社形式(株式会社、特定目的会社、一般社団法人、合同会社、ケイマン SPC など)がある。日本において組成される SF 商品においては、倒産隔離機能(バンクラプシー・リモート)が信託法にて確保されている信託形式が用い

    られることが多い。

    III. 主な仕組み関係者

    SPV、議決権付株式保有者、債権者(SF 商品の投資家、事務代行者派遣先等)、証券化事業事務代行者(取締役、社員等)、委託者、受託者、受益者

    第2項 信用リスク要因の分析 本項では、倒産隔離機能を高めるために、会社形式の SPV を想定して、倒産隔離機能を

    高めるための措置をまとめる。 倒産隔離機能のための仕組みは、以下の4つの視点から評価を行う。

    事業リスク 資本的関係に関するリスク 人的関係に関するリスク リングフェンス性

    本項に掲載のないその他信託などの SPV については、同様に、4 つの視点から、それぞれ倒産隔離性が高いかどうか確認する。 なお、信託形式の場合、会社形式の場合と違い、4 つの視点のうち、資本的関係に関する

    リスクや人的関係に関するリスクは基本的にない。資本的関係に関するリスクは株主が存

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    在しない。人的関係に関するリスクは、取締役等が存在せず、第三者である受託者が善良

    なる管理者として運営を行うためである。 よって、信託形式の場合、事業リスクが限定されているかとリングフェンスがなされて

    いるかという視点が重要である。事業リスクの限定に関しては、信託の目的で確認を行い、

    リングフェンス性に関しては、受託者の固有財産と区別され、分別されているか等の視点

    から評価を行う。

    I. 事業リスク

    A. リスク要因

    SF 商品の発行体となる SPV は、証券化事業(SF 商品の発行・維持管理に関わる業務に関する事業)を行うために設立される。しかし、一般的に法人は、法律、規制

    等の範囲内で、自由に事業活動を行えるため、証券化事業以外の他事業を行うことは

    できる。事業リスクに関する主なリスク要因としては、以下が挙げられる。 証券化事業のための金員が他事業に充当される。 他事業の債権者が倒産申立を行う可能性がある。

    B. 主なリスク対応と評価の視点

    1. 必要な措置を講じる 会社定款における設立目的、関連契約の当事者間の表明保証等において、以下

    に掲げる事項を規定することにより、事業リスクが顕在化するリスク、あるいは

    そのような行動をとるインセンティブを排除する。以下は例示である。 他事業を行わない(証券化事業に不可欠な付随事業は除く)。 証券化事業のための債務以外は負わない。 評価は、適切に事業リスクを限定できているかという視点で評価する。

    II. 資本的関係に関するリスク

    A. リスク要因

    SPV は、事業活動を行うための資金を株式発行により調達できる。SPV の議決権付株式を保有する株主(以下、株主)は、議決権行使を行い、証券化事業に影響を与

    えることができる。また、SPV が新株の発行等をした場合には、株主が増える可能性がある。議決権付株式が存在することにより、資本的関係に関する主なリスク要因と

    しては、以下が挙げられる。 株主は、証券化事業に重大な悪影響を及ぼすことができる。 株主に関係する利害関係者のために、SPV を解散する議案を株主総会に提出、

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    決議することができる。 議決権株式を追加発行することができる。追加発行された株主が証券化事業に

    理解を示さない場合、議決権行使等により、証券化事業に重大な悪影響を及ぼ

    すことができる。

    B. 主なリスク対応と評価の視点

    1. 必要な措置を講じる 会社定款における議決権付株式に関する事項、議決権株式の譲渡契約等におい

    て、当該リスクが顕在化するリスク、あるいはそのような行動をとるインセンテ

    ィブを排除する。以下は例示である。 株主は利害関係者から独立した第三者とする。 株主に倒産申立権を放棄させる。 議決権保有者による議決権行使を制限する(株式に付された議決権を講じる

    ことができないように慈善信託する等)。 議決権株式を追加発行する場合には、債権者(社債管理者、投資家等)の承

    諾が必要とする等の条件を付す。 評価は、SPV と株主との関係という視点で行う。

    III. 人的関係に関するリスク

    A. リスク要因

    取締役等は、取締役会決議等を通じて、事業活動に影響を与えることができる。人

    的関係に関する主なリスク要因としては、以下が挙げられる。 証券化事業に重大な悪影響を及ぼす行為(利害関係者の利益のための業務運営)

    を行うことができる。 利害関係者の要請等に応じ、倒産申立等を行う。 証券化事業と利益相反の恐れがある者が取締役等になる可能性がある。 SPV の役職員の退職により、証券化事業に重大な悪影響を及ぼす可能性がある。

    B. 主なリスク対応と評価の視点

    1. 必要な措置を講じる 取締役等は、利害関係者の役職員ではない弁護士、公認会計士等を派遣契約等

    に基づく派遣とした上で、派遣契約書、業務委託契約等において、当該リスクが

    顕在化するリスク、あるいはそのような行動をとるインセンティブを排除する。

    以下は例示である。 資本関係の影響を受けない弁護士、公認会計士等を取締役等にすることによ

    り、証券化事業に悪影響を与えることないような措置をとる

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    取締役等に倒産申立権を放棄させる 評価は、SPV に、人的な影響が及ばないかという視点で行う。

    IV. リングフェンス性

    同一の SPV から異なる資産を裏付とした複数の SF 商品が発行される場合において、それぞれの SF 商品に生じた損失が互いに影響を及ぼさないための仕切り(フェンス)の役割を果たす措置をリングフェンスという。

    A. リスク要因

    事業会社等が複数の債券を発行している場合において、特定の債券を保有する債権

    者の債権回収に何らかの事由により問題が発生した場合、債権者は当該事業会社の資

    産を差し押さえる等により、債権の回収を図ることが可能である。SF 商品は、その商品設計上、譲渡された特定の裏付資産のキャッシュフローによって SF 商品の元利払いがなされる。SPV が裏付資産の異なる複数の SF 商品(商品 A、商品 B)をそれぞれ異なる利害関係を有する投資家に対して発行した場合、特定の SF 商品(商品 A)の債権回収のために、SPV の他の資産(商品 B の裏付資産)を差し押さえられる等の事象が発生することにより、SF 商品(商品 B)の元利払いが、他の SF 商品(商品 A)の破綻の影響を受けてしまう。

    B. 主なリスク対応と評価の視点

    1. 1 つの SPV から1つの SF 商品の発行に限定 2 つ以上の SF 商品が発行されないことから、債権者の利害関係は生じない。よ

    って、リングフェンスの確保が行われている。

    2. 1 つの SPV から複数の SF 商品を発行し、リングフェンス性の確保を行う アレンジャーは各 SF 商品(商品 A、商品 B)の裏付資産(裏付資産 A、裏付資

    産 B)を明確にすることで、各債権者(債権者 A、債権者 B)の遡及できる資産を特定する。その上で、アレンジャーは全ての SF 商品に同様の措置を講じることにより、各債権者による倒産申立あるいはそのインセンティブを抑制するための以

    下の措置を講じる。 SF 商品の裏付資産ごとに担保権を設定する(対抗要件具備)。 裏付資産は SF 商品ごとに分別管理を関連契約に規定する。 投資家及び仕組み関係者に関するリミテッドリコース(責任財産限定)条項

    とノンペティション(倒産不申立)条項を関連契約に規定する。 将来発行する SF 商品については、上記措置が確保できるような措置を行う。裏

    付資産に担保権を設定することができない場合、案件の特徴にあったリングフェ

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    ンス性を高める措置をとることによってリングフェンス性を確保する。 評価は、SPV が適切にリングフェンスされているかという視点で行う。 リングフェンシングが不十分な場合には、原則として、裏付資産の異なる全て

    の SF 商品の信用格付を同一の水準とする。

    V. プロジェクト等を裏付資産とする案件の SPV の倒産隔離性について

    A. リスク要因

    プロジェクト、事業キャッシュフロー等、航空会社向け金銭債権及び航空機などを

    裏付資産とする場合、一定の制約や手当ての基で、事業を主導する企業であるスポン

    サーが SPV に対する出資、役員及び社員の派遣、主要業務の受託などを通じて事業全体をコントロールし、SPV の業務遂行の中心的役割を担うことが多い。その際、スポンサーの破綻が SPV の事業継続性に悪影響を及ぼす可能性がある。

    B. 主なリスク対応と評価の視点

    1. 必要な措置を講じる SPV の倒産隔離性の高さは、格付対象における倒産隔離性を高めるための制約

    や手当を踏まえ、スポンサーからの独立性の度合いなどから総合的に判断する。

    スポンサー破綻時に、SPV の事業継続が困難な場合はスポンサーの信用力が格付対象の信用格付の上限となり、相応に SPV の事業継続性がある場合は影響の度合いに応じて格付対象の信用格付がスポンサーの信用力を上回ることが可能である。 評価は、スポンサー破綻時の SPV の事業継続性があるかという視点で行う。以

    下は例示である。

    (i) 当該プロジェクトの経済合理性

    (ii) 当該プロジェクトの事業経営・運営の代替性

    (iii) スポンサーの代替候補者の存在

    (iv) プロジェクトの中で締結されている各種の契約書が契約当事者の変更を許容しているかどうか

    (v) 事業承継を進めるスキーム上の手当てが十分か(例えば、以下の 3 点のような手当て)

    (a) SPV の独立取締役の選任

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    (b) スポンサーが保有する SPV 株式に対する担保設定

    (c) SPV の保有資産(プロジェクトの実施に必要な資産)に対する担保設定

    (vi) 公共セクターと債権者との直接協定(Direct Agreement)の有無(PFI の場合)

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    第3節 資産管理の仕組み

    第1項 基本的な事項

    I. 仕組みの目的

    資産管理の仕組みの目的は、SPV が保有する裏付資産を適切に管理・処分すること及び SPV が受領した金銭を適切に管理して契約に基づいた支払いを行うことである。

    II. 仕組みの構成

    SF 商品の形式的な発行体である SPV は、一般的に、従業員を雇用して自ら事務を行うという態勢をとらない。したがって、裏付資産の管理・処分に必要な事務を第三者に

    委託する必要が生じる。SPV が委託する主な事務は、裏付資産の形態に応じて、金銭債権の回収業務(サービシング)、不動産のプロパティマネジメント、有価証券の保管(カ

    ストディー)等がある。これらの事務の継続性を確保するために、必要に応じて、適切

    な仕組みが講じられる。 SPV が受領した金銭等の管理及び支払いの仕組みについては、預金その他の運用、キ

    ャッシュフローミスマッチをヘッジするためのスワップ取引、必要な費用の支払い等が

    ある。

    III. 主な仕組みの関係者

    サービサー、スワップカウンターパーティー、預金先金融機関、カストディアン、余

    資運用対象

    第2項 信用リスク要因の分析

    I. サービサー破綻によるコミングリングリスク

    A. リスク要因

    通常、SPV は裏付資産のサービシングをサービサーに委託する。サービサーは一定の回収期間を設け、その期間に債務者から回収した資金を定められた引渡日に SPVへ引渡す。サービサーが回収金を引渡す前に破綻すると、サービサーの固有財産と分

    別されていない場合には、サービサーの倒産等の処理において、サービサーの固有財

    産として、倒産処理の中で他の債権者と同様に扱われる恐れがある。結果として、裏

    付資産の回収元本及び利息が喪失するコミングリングリスクが顕在化する。

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    B. 主なリスク対応と評価の視点

    1. 優先劣後構造(コミングリングロス部分についての劣後上乗せ) コミングリングロス相当金額を劣後部分に上乗せすることで、優先部分の元利

    払いの確実性を高めることができる。 評価は、劣後部分による補完の十分性の視点から行う。 なお、サービサーの信用力が高く、裏付資産に相応の信用力があれば、案件当

    初から一定期間について破綻を想定しない場合がある。

    2. コミングリングロス相当金額の現金準備 当該リスクに備えるため、コミングリングロス相当金額を現金準備として確保

    する。 評価は、現金準備の十分性の視点で行う。

    3. 前払い サービサーは回収金引渡日前に一定金額を SPV へ前払いする。当該リスクが顕

    在化した場合、予め SPV に留保している前払い金とコミングリングロス相当金額を相殺する。 評価は、前払い金の十分性の視点で行う。

    4. 格付トリガーによる現金準備もしくは前払いによる対応 サービサーの信用力が低下した場合に、「2.コミングリングロス相当金額の現金

    準備」、あるいは「3.前払い」の対応をとる。 評価は、格付トリガーの措置の有効性及び十分性の視点で行う。

    5. 格付トリガーによるサービサーの交代 当該リスクはサービサーが破綻しない限り顕在化しないリスクであるため、サ

    ービサーの信用力が低下した時点でサービサーを交代することで、コミングリン

    グリスクの発生を回避する。 評価は、格付トリガーの措置の有効性及び十分性の視点で行う。

    6. セラー持分との相殺 コミングリングロス相当金額に対応するセラー持分を設定する。当該リスクが

    顕在化した場合、セラー持分とコミングリングロス相当金額を相殺する。 評価は、当該リスクへの対応の十分性の視点で行う。

    7. セラー持分の償還方法の変更 コミングリングロス相当金額に対応するセラー持分を設定する。当該リスクが

    顕在化した場合、セラー持分を優先部分より償還順位を劣後させることで、優先

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    部分の元利払いの確実性を高めることができる。 評価は、当該リスクへの対応の十分性の視点で行う。

    8. サービサーが預金保険制度に加入している金融機関である 回収金を処理する勘定が「決済用預金」あるいは、回収金引渡債務が「特定決

    済債務」に該当し、かつ回収金が別段預金や仮受金などで処理されている場合は

    預金保険制度によって預金保険の全額保護の対象となる可能性が高い。 評価は、預金保険制度によって預金保険の全額保護の対象となる可能性が高い

    こと、回収金のサービサーへの滞留期間を限定することなどの手当てを確認した

    うえで、コミングルリスクが発生するかどうかという視点で行う。

    9. 原債務者からの SPV への直接送金の場合 原債務者からサービサーを介さずに SPV へ直接送金した場合、コミングリング

    リスクは発生しない。

    10. リスク対応がない場合 当該リスクはサービサーが破綻しない限り顕在化しないリスクである。 サービサーの信用力を基に評価する。

    II. サービサー破綻による流動性リスク

    A. リスク要因

    SPV より裏付資産のサービシングを委託されたサービサーが破綻した場合、サービシングが継続できない可能性がある。継続されるとしても、一定期間サービシングが

    滞る可能性がある。このような状況では、一時的に格付対象の利息・配当の支払いや

    スキーム維持に必要となる諸費用等の支払いに遅延が発生することがある。 当該リスクに対応するために流動性対応として必要な金額は、裏付資産やスキーム、

    債務者への通知のタイミング、バックアップサービサー(BUS)によるサービシングが正常に再開するまでの期間等などによって異なる。

    B. 主なリスク対応と評価の視点

    1. 流動性補完額の現金準備 当該リスクに備えるため、流動性補完必要額を現金準備として確保する。通常

    はサービサー破綻に備えるために案件当初から現金準備を確保する。ただし、信

    用力が高いサービサーについては、当初から現金準備の積み立てをせず、一定期

    間の積立期間の猶予を設定することがある。 評価は、現金準備等の対応の十分性の視点で行う。

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    2. 金融機関など流動性補完提供者によるバックアップライン 当該リスクに対応するため、金融機関など流動性補完提供によるバックアップ

    ラインをつける。 評価を行う際は、バックアップラインの有効性及び十分性を確認する。

    3. 諸費用が支払い済み 案件当初に利払いや諸費用が支払い済みの場合、流動性リスクは発生しない。

    4. サービサーが預金保険制度に加入している金融機関である 預金保険制度には、金融機関が破綻したときの処理方法として、資金援助方式

    と保険金支払方式がある。その方式により、タイムリーペイメント性に違いが生

    じる可能性がある。資金援助方式では週末に金融機関を破綻処理し、当該金融機

    関が預金を払い戻すよう円滑に処理ができると想定している。一方で保険金支払

    方式の場合は預金保険機構が払い戻し窓口となるため、回収金の引き渡しが一時

    的に遅延する懸念がある。金融機関によっては、保険金支払方式になった場合に

    備え、SF 商品の利払いや諸費用の支払のための流動性補完はあらかじめ備えておく必要がある。 評価は、当該リスクに対応するための措置が適切かどうかという視点で行う。

    5. 格付トリガーによる現金準備による対応 サービサーの信用力が低下した場合に、流動性補完として必要な現金を現金準

    備として確保する。 評価は、サービサーの短期の資金拠出能力等を勘案して、トリガーの水準の十

    分性及び有効性の視点で行う。

    6. リスク対応がない場合 当該リスクはサービサーが破綻しない限り顕在化しないリスクである。 サービサーの信用力を基に評価を行う。

    III. スワップカウンターパーティー破綻に関するリスク

    スワップ取引とは、キャッシュフロー・スワップ、金利スワップ、通貨スワップ、ア

    セットスワップの他、金利キャップ等、裏付資産から受領するキャッシュフローと格付

    対象の元利払いに充てるキャッシュフローのミスマッチをヘッジするなどの目的で行な

    うものである。

    A. リスク要因

    一般的にスワップカウンターパーティーが破綻するとスワップ契約は期限前終了

    し、キャッシュフローのミスマッチが顕在化する。

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    B. 主なリスク対応と評価の視点

    1. 格付トリガーによる対応 スワップカウンターパーティーの信用力低下に備えた措置が予め適切に講じら

    れている場合には、格付対象にスワップカウンターパーティーよりも高い信用格

    付を付与することがある。適切な措置として、スワップカウンターパーティーの

    信用格付が充足基準を満たさなくなった場合、速やかに当初スワップカウンター

    パーティーがコストを負担して、以下のような手当てを実施する仕組みを設ける

    ことが挙げられる。 (1)充足基準を満たすスワップカウンターパーティーを選び、全てのスワップ契

    約を継承させる。 (2)充足基準を満たす金融機関により、スワップ契約について保証を差し入れる。 (3)現金など流動性が高い資産について R&I が認める必要額以上の担保を R&I

    の満足する形で差し入れる。 (4)その他 R&I が適当と認める信用補完策を講じる。 スワップカウンターパーティー及び金融機関の充足基準は、主にスワップ取引

    の代替可能性の視点から評価する。代替可能性によって適切であると考える充足

    基準及び発行体格付から短期格付の読み替えは下表のとおりである。 図表:スワップカウンターパーティー及び金融機関の充足基準

    格付対象の格付

    AAA~AA- A+~A-

    充足基準

    代替可能性が

    比較的高い a-1 以上 a-2 以上

    代替可能性が

    比較的低い a-1+以上 a-1 以上

    図表:発行体格付から短期格付への読み替え 発行体格付 短期格付

    AAA~AA- a-1+

    A+~A- a-1

    2. 担保設定 スワップカウンターパーティーが破綻し、スワップ契約が期限前終了する場合、

    キャッシュフローのミスマッチを回避するため、同一条件のスワップ契約を新た

    に結ぶ必要が生じる。スワップ契約の再構築コストが必要な場合、デフォルトし

    たスワップカウンターパーティーがそれを負担するため、その負担を確実にする

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    ために担保を設定する。当該差入れ担保金額の十分性について、スワップカウン

    ターパーティーの信用力が格付対象の信用力に影響を与えないかという視点で評

    価する。 なお、格付対象によっては、スワップ契約の期限前終了とともに格付対象を期

    限前償還する仕組みがある。そのような場合には担保によって保全すべき被担保

    債務は再構築コストではなく、裏付資産の価格変動等、格付対象の期限前償還の

    ための原資であるため、担保金額の十分性と期限前償還のキャッシュフローに関

    しては、異なる視点で評価する。評価方法の詳細は、第 4 章第 8 節デリバティブ商品のカウンターパーティーリスク軽減措置の分析方法を参照のこと。

    3. 一括前払い措置を講じる スワップカウンターパーティーの破綻に備えて、スワップカウンターパーティ

    ーが支払うべきスワップ契約上の金銭を一括前払いする等の措置を講じる。ただ

    し、スワップカウンターパーティーの破綻時において、スワップカウンターパー

    ティーの管財人が双方未履行の双務契約と解して、スワップ契約の解除を求める

    等の蓋然性が低いかどうかを確認し、当該措置の適切性を評価する。

    4. スワップカウンターパーティーへの保証 スワップカウンターパーティーの破綻により、スワップ契約が期限前終了し、

    キャッシュフローにミスマッチが顕在化することに備えるため、スワップカウン

    ターパーティーのスワップ契約上の債務について第三者からの保証を取得する。

    評価は、保証の有効性の視点から行なう。 信用格付は、保証体の信用力を基に評価する。

    5. リスク対応がない場合 信用格付は、スワップカウンターパーティーの信用力を基に評価する。

    IV. 預金先金融機関破綻に関するリスク

    A. リスク要因

    SF 商品では一般的に裏付資産などから発生する回収金やあらかじめ設定されている現金準備などの資金が、SF 商品の元利払いに充てられるまでの間、預金先金融機関に設置された預金口座に滞留することがある。そのような預金先金融機関が破綻し

    た場合、キャッシュフローが減少する可能性がある。

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    B. 主なリスク対応と評価の視点

    1. 格付トリガーによる対応 預金先金融機関の信用力低下に備えた措置が予め適切に講じられている場合に

    は、格付対象に預金先金融機関よりも高い信用格付を付与することがある。適切

    な措置として、預金先金融機関の信用格付が下表の充足基準を満たさなくなった

    場合、可能な限り速やかに(概ね 1 カ月以内に)、充足基準を満たす他の金融機関へ預金を移動する等の仕組みを設けることが挙げられる。

    図表:預金口座の充足基準 格付対象の格付 AAA~AA- A+~BBB-

    預金先金融機関の短期格付 a-1 以上 a-2 以上

    預金先金融機関が短期格付を取得していない場合、発行体格付から読み替える

    ことができる(下表)。また、預金先金融機関が短期格付もしくは発行体格付を取

    得していない場合であっても、R&I が認める先の口座であれば利用可能である。 図表:預金先金融機関の発行体格付の短期格付への基本的な読み替え 発行体格付 短期格付

    AAA~AA- a-1+

    A+~A- a-1

    BBB+~BBB- a-2

    評価は、措置の有効性及び十分性の視点から行なう。

    2. 回収金を預金保険により保護される勘定にて処理することによる対応 預金保険制度加入の金融機関に預金口座が設置されており、預金保険により保

    護される勘定で回収金が処理されている場合、預金先金融機関の破綻による損失

    は限定的である。預金保険の一時的な支払い遅延に備えて SF 商品の利払いや諸費用の支払いのための流動性が確保されているなどの場合は、預金先金融機関の破

    綻による損失に対する対応は必要ない。 評価は、預金保険により保護される勘定に預けられているかどうか等の視点で

    行う。

    3. リスク対応がない場合 評価は、預金先金融機関の信用力を基に行う。

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    V. カストディアン破綻に関するリスク

    A. リスク要因

    SPV は、カストディー契約をカストディアンと締結し、カストディアンを介して債券を保有することが一般的である。カストディアンは、SPV の指図に基づき、債券の管理・保管及び元利金の受取及び支払業務を行う。債券のペーパレス化の普及とクロ

    スボーダー決済の進展により、通常、グローバルに展開するカストディアン(グロー

    バル・カストディアン)は当該債券の管理・保管に際して、必要と判断する場合、当

    該債券の所在する各国の制度・取引方法に精通したカストディアン(サブ・カストデ

    ィアン)を経由して管理・保管する(階層構造)。カストディアンに関する主なリス

    ク要因としては、以下が挙げられる。 カストディアン(グローバル・カストディアン、サブ・カストディアン)が破

    綻した場合、顧客資産に損失(現物債券・元利払のコミングリングロス)、元利

    金の支払遅延等が発生するリスク(各国の法制度の問題)。 証券決済機関(日本では振替機関)に事故があった場合等のリスク。

    B. 主なリスク対応と評価の視点

    1. サブ・カストディアン サブ・カストディアンについては、グローバル・カストディアンがそのリスク

    管理を行っているものと判断している。従って、サブ・カストディアンの破綻に

    起因するリスクは極めて小さいものであり、基本的にリスク対応は必要ないと考

    えている。

    2. グローバル・カストディアン(適切な業務態勢が確認できる場合) グローバル・カストディアンの破綻にともなうリスクの大きさを評価する視点

    は以下(1)及び(2)である。 (1) 自己の固有資産と顧客資産を分別管理(顧客資産は混蔵管理を認める。権利

    関係は管理簿上で管理しなければならない。)されている。 (2) 債券の元利金が、以下の①~③のいずれかを満たす。 ① グローバル・カストディアンの固有資産にならない。 ② グローバル・カストディアン破綻後、全額保護される。 ③ グローバル・カストディアンに連続して金銭が滞留する期間が十分に短い。

    上記(1)及び(2)の視点に合致すれば、カストディアンの破綻に起因するリスクは

    極めて小さいものであり、基本的にリスク対応が必要ないと考えている。 たとえば、債券が日本国債(振替国債)の場合、適切な業務態勢がとられれば、

    上記(1)及び(2)の視点に合致していると考えている。

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    3. グローバル・カストディアン(格付トリガーでの対応) 上記(1)及び(2)の視点に合致しない場合には、格付トリガーを設定することによ

    って当該リスクを軽減できると考える。格付対象に応じた充足基準は以下のとお

    りである。 図表:カストディアンの充足基準 格付対象の格付 AAA~AA- A+~BBB-

    カストディアンの短期格付 a-1 以上 a-2 以上

    図表:発行体格付の短期格付への基本的な読み替え 発行体格付 短期格付

    AAA~AA- a-1+

    A+~A- a-1

    BBB+~BBB- a-2

    カストディアンの短期格付が、カストディアンの充足基準を満たさなくなる場

    合、可能な限り速やかに(概ね 1 カ月以内)、その充足基準を満たすカストディアンにカストディー契約上の地位及び預かり資産を譲渡しなければならない。 カストディアンが短期格付を取得していない場合は、発行体格付から読み替え

    を行うことができる。また、カストディアンが発行体格付、短期格付のいずれも

    取得していない場合であっても、R&I が認める先であれば利用可能である。

    VI. 余資運用対象の価値減少に関するリスク

    A. リスク要因

    SF 商品では、預金先金融機関に設置された預金口座に滞留する資金を運用するケースがある。運用対象の価値が減少した場合、キャッシュフローが減少する。

    B. 主なリスク対応と評価の視点

    1. 格付トリガーによる対応 運用対象の信用力低下に備えた措置が予め適切に講じられている場合には、格

    付対象に運用対象よりも高い信用格付を付与することがある。適切な措置として、

    運用対象の信用格付が下表の充足基準を満たさなくなった場合、可能な限り速や

    かに(概ね 1 カ月以内に)、充足基準を満たす他の運用対象に変更する等の仕組みを設けることが挙げられる。

    評価は、措置の有効性及び十分性の視点から行なう。

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    運用対象となりうるものは、CP、信託銀行における銀行勘定貸、国債、政保債、無担コール、CP 現先、国債レポ、定期預金などである。運用対象は、満期時及び中途解約時に格付対象の通貨建て、かつ投資金額以上で償還される必要がある。

    運用対象の充足基準は下表の通りである。格付対象の信用格付に応じて、運用資

    産の短期格付にて充足基準が定まっている。なお、CP 現先、国債レポにより運用する場合には、当該取引相手方の発行体格付によって充足基準を判断する。

    図表:運用対象の充足基準 格付対象の格付 AAA~AA- A+~BBB-

    運用対象の短期格付 a-1 以上 a-2 以上

    運用対象が短期格付を取得していない場合は、発行体格付から読み替えること

    ができる(下表)。また、運用対象が信用格付を取得していない場合であっても、

    R&I が認める先であれば運用が可能である。 図表:金融機関の発行体格付の短期格付への基本的な読み替え 発行体格付 短期格付

    AAA~AA- a-1+

    A+~A- a-1

    BBB+~BBB- a-2

    CP など運用対象の中途解約時に、元本ロスが発生する可能性がある場合は、運

    用期間に関する充足基準を適用する。この場合、運用対象の満期は、格付対象の

    支払い前に設定する。(日本国債や政府保証債の場合は下表の充足基準を満たす必

    要はない)。 図表:運用期間に関する充足基準 格付対象の格付 AAA~AA- A+~A- BBB+~BBB-

    3 カ月以内の運用対象 a-1 以上 a-2 以上 a-2 以上

    3 カ月を越えて半年以内の

    運用対象 a-1+ a-1 以上 a-2 以上

    2. リスク対応がない場合 評価は、余資運用対象の信用力を基に行う。

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    VII. 重要な仕組み関係者の業務態勢に関するリスク

    A. リスク要因

    サービサー、SPV の事務代行者等、重要な仕組み関係者が SF 商品のスキームを遂行する上で必要とされる実務能力や態勢を十分備えていない場合、事務ミス等により

    投資家への支払に損失が生じる可能性がある。また、重要な仕組み関係者の破綻等に

    よって業務が継続されない可能性がある。

    B. 主なリスク対応と評価の視点

    1. 業務管理態勢リスク 重要な仕組み関係者が存在する場合には、業務管理態勢や経験、実績等を確認

    する。 評価は、SF 商品の運営に支障がないかどうかという視点で行う。特にサービサ

    ーの破綻等による回収業務の継続性は重要である。回収の継続性リスクに対して

    は、適切なバックアップの手当てがなされているかどうかという視点で行う。

    VIII. プロジェクト等を裏付資産とする案件の資金管理及び資金運用等に関するリスク

    A. リスク要因

    一般的に、回収金や現金準備金などの資金を滞留させる金融機関や当該資金の余資

    運用対象、スワップカウンターパーティー等について、当該金融機関等が破綻した場

    合、キャッシュフローが減少するまたはキャッシュフローのミスマッチが顕在化する

    可能性がある。

    B. 主なリスク対応と評価の視点

    1. 事業をコントロールする主体が事業継続のための措置を講じる プロジェクト、事業キャッシュフロー等、航空会社向け金銭債権、航空機等を

    裏付資産とする場合、事業の継続性を確保するために能動的に事業をコントロー

    ルする主体またはレンダー等が、自ら能動的に行動することが想定される(例:

    シンジケートローン)。その場合、預金先金融機関、余資運用対象、またはスワッ

    プカウンターパーティー等の信用力低下や破綻等のリスクの蓋然性が高まった際、

    キャッシュフローが減少するリスクを軽減し、レンダー等に不利益とならない対

    応がなされることが期待できる。従って、評価は事業をコントロールする主体の

    有無を確認した上、契約がレンダー等に特段不利なものとなっていないかという

    視点で行う。

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    第4節 外部信用補完の仕組み

    第1項 基本的な事項

    I. 仕組みの目的

    信用リスク要因による原資産の損失に備え、格付対象が約定通りに履行される確実性

    を高める。

    II. 仕組みの構成

    信用補完には証券化のスキームの中で設定される「内部信用補完」とスキームに内在

    した信用補完以外の信用補完(第三者に信用供与させるようなもの)である「外部信用

    補完」がある。外部信用補完には、保証や信用事由に用いるバックアップライン、銀行

    の信用状などがある。 契約書などにより、信用補完の範囲、信用補完提供者、信用補完のタイミング、信用

    補完の方法などを定める。

    III. 主な仕組みの関係者

    信用補完提供者、被信用補完提供者

    第2項 信用リスク要因の分析

    I. 信用補完提供者に関するリスク

    A. リスク要因

    信用補完提供者がデフォルトした結果として、信用補完が供与されないリスクがあ

    る。

    B. 主なリスク対応と評価の視点

    1. 信用補完提供者のリスク 信用補完提供者の信用力を基に評価する。

    2. 優先劣後構造 信用補完提供者が複数ある場合、信用補完提供者のデフォルトによってキャッ

    シュフローが減少するリスクに備えるため、キャッシュフローの分配順位が異な

    る階層の商品を設定することがある。評価は、劣後部分による補完の十分性の視

    点から行なう。

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    II. 信用補完が供与されないリスク

    A. リスク要因

    信用補完契約にて、権利者が信用補完提供者に信用補完の供与を請求するために必

    要な要件や供与に関する拒絶事由又は免責事項が数多くある場合、信用補完が供与さ

    れないリスクが高まる。

    B. 主なリスク対応と評価の視点

    1. 無条件かつ取消不能の信用補完を付す 信用補完が供与されないリスクに備えるため、債権に付す信用補完を無条件か

    つ取消不能のものとする。無条件かつ取消不能とすることで、信用補完提供者が

    催告・検索の抗弁権をもつことがなく、信用補完される確実性が高まる。 評価は、信用補完の有効性の視点から行なう。

    2. 信用補完供与のための請求要件や信用補完の拒絶事由・免責条項を限定する 信用補完が容易に供与されるよう、信用補完供与の請求要件や信用補完の拒絶

    事由・免責条項を限定する。ABCP・ABL プログラムの場合であれば SPV の破綻などの事由以外には信用補完提供者は貸出を拒絶することができないよう手当て

    する。 評価は、信用補完の有効性の視点から行なう。

    III. 信用補完のタイミング

    A. リスク要因

    信用補完供与の時期が SF 商品の支払期日より遅れるため、キャッシュフローが不足するリスクがある。

    B. 主なリスク対応と評価の視点

    1. SF 商品の償還期日にあわせた信用補完 SF 商品の償還期日に、信用補完供与のタイミングをあわせ、償還ができるよう

    にする。 評価は、信用補完からの回収の十分性の視点から行なう。

    2. 信用補完供与までの一時的なキャッシュフローの不足に対する流動性補完 信用補完供与の手続きによるキャッシュフローの不足に備えるため、流動性補

    完提供者を設定する。 評価は、流動性補完のタイムリー性の視点から行なう。 流動性補完提供者の信用力を基に評価を行う。

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    第5節 外部流動性補完の仕組み

    第1項 基本的な事項

    I. 仕組みの目的

    流動性リスクによる SF 商品の約定不履行に備え、格付対象の元利払いが約定通りに履行される確実性を高める。

    II. 仕組みの構成

    流動性補完には、バックアップライン、立替払いなどがある。 契約書などにより、流動性補完の範囲、流動性補完提供者、流動性補完のタイミング、

    流動性補完の方法などを定める。

    III. 主な仕組みの関係者

    流動性補完提供者、被流動性補完提供者

    第2項 信用リスク要因の分析

    I. 流動性補完提供者に関するリスク

    A. リスク要因

    流動性補完提供者がデフォルトした結果として、流動性補完が供