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新商品・ソリューション・サービス解説 118 富士ゼロックス テクニカルレポート No.26 2017 多様な製本ニーズに応える「フィニッシャーD6」 Finisher D6: A New Finisher That Fulfills Diverse Bookbinding Needs 近年、お客様が求める製本は多様化し、それに応えられるプリ ンターのフィニッシャー(後処理装置)の提供が急務となってい る。特に、三方断裁、筋入れ、角背などの多様な後処理、用紙の汎 用性、高い生産性、高品質の仕上がりが求められている。そこで、 富士ゼロックスアドバンストテクノロジーでは、富士ゼロックス が提供するプロダクションプリンター「Versant TM 3100 Press」 「Versant TM 180 Press」のオプションとして「フィニッシャー D6(ディーシックス)」を2016年11月に市場導入した。本稿で は、この「フィニッシャーD6」に導入した「新たな技術」と、商 品共通化のための「モジュール化」への取り組みについて紹介する。 Abstract In recent years, as the types of bookbinding demanded by our customers have become more diverse, it has become an urgent mission of All-FX to develop and provide finishers that can answer these needs. In particular, our customers seek versatile finishing functionality, including full-bleed trim, creasing, and square-fold finishing, in addition to a wider range of compatible paper, higher productivity, and enhanced output quality. To fulfill these requirements, Fuji Xerox Advanced Technology launched Finisher D6 in November 2016 as an optional device for the Versant TM 3100 Press and Versant TM 180 Press production printers offered by Fuji Xerox. This paper introduces the new technologies implemented in Finisher D6 to support the realization of these customer requirements and explains our approach to modularization, which enables a smaller number of finisher models to be compatible with more printers. 執筆者 風間裕篤(Hiroatsu Kazama梁川禎介(Teisuke Yanagawa矢坂裕一(Yuichi Yasaka米山武志(Takeshi Yoneyama池田喜一(Yoshikazu Ikeda原田勝則(Katsunori Harada富士ゼロックスアドバンストテクノロジー株式会社 Fuji Xerox Advanced Technology Co.,Ltd【キーワード】 Versant TM 3100 Press 、 Versant TM 180 Press、フィニッシャー、プロダクション、ク リース、天地断裁、バッファー、中とじ、小口ト リマー、インターポーザー、スクエアフォール ド、モジュール化 KeywordsVersant TM 3100 Press, Versant TM 180 Press, finisher, production, crease, two-sided trim, buffer, saddle staple, face trimmer, inserter, square fold, modularization

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新商品・ソリューション・サービス解説

118 富士ゼロックス テクニカルレポート No.26 2017

多様な製本ニーズに応える「フィニッシャーD6」

Finisher D6: A New Finisher That Fulfills Diverse BookbindingNeeds

要 旨

近年、お客様が求める製本は多様化し、それに応えられるプリ

ンターのフィニッシャー(後処理装置)の提供が急務となってい

る。特に、三方断裁、筋入れ、角背などの多様な後処理、用紙の汎

用性、高い生産性、高品質の仕上がりが求められている。そこで、

富士ゼロックスアドバンストテクノロジーでは、富士ゼロックス

が提供するプロダクションプリンター「VersantTM 3100 Press」

「VersantTM 180 Press」のオプションとして「フィニッシャー

D6(ディーシックス)」を2016年11月に市場導入した。本稿で

は、この「フィニッシャーD6」に導入した「新たな技術」と、商

品共通化のための「モジュール化」への取り組みについて紹介する。

Abstract

In recent years, as the types of bookbinding demanded by ourcustomers have become more diverse, it has become an urgentmission of All-FX to develop and provide finishers that can answer these needs. In particular, our customers seek versatile finishingfunctionality, including full-bleed trim, creasing, and square-fold finishing, in addition to a wider range of compatible paper, higherproductivity, and enhanced output quality. To fulfill theserequirements, Fuji Xerox Advanced Technology launched Finisher D6 in November 2016 as an optional device for the VersantTM 3100 Press and VersantTM 180 Press production printers offered by Fuji Xerox. This paper introduces the new technologies implemented inFinisher D6 to support the realization of these customerrequirements and explains our approach to modularization, whichenables a smaller number of finisher models to be compatible with more printers.

執筆者 風間裕篤(Hiroatsu Kazama) 梁川禎介(Teisuke Yanagawa) 矢坂裕一(Yuichi Yasaka) 米山武志(Takeshi Yoneyama)

池田喜一(Yoshikazu Ikeda) 原田勝則(Katsunori Harada) 富士ゼロックスアドバンストテクノロジー株式会社 (Fuji Xerox Advanced Technology Co.,Ltd)

【キーワード】

VersantTM 3100 Press、VersantTM 180

Press、フィニッシャー、プロダクション、ク

リース、天地断裁、バッファー、中とじ、小口ト

リマー、インターポーザー、スクエアフォール

ド、モジュール化

【Keywords】

VersantTM 3100 Press, VersantTM 180 Press, finisher, production, crease, two-sided trim, buffer, saddle staple, face trimmer, inserter, square fold, modularization

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多様な製本ニーズに応える「フィニッシャーD6」

富士ゼロックス テクニカルレポート No.26 2017 119

1. はじめに

富士ゼロックスアドバンストテクノロジーは、富士ゼロック

スが提供するプロダクションプリンター「VersantTM 3100

Press」1)「VersantTM 180 Press」2)用フィニッシャー(後

処理装置)として、当社にとって第4世代にあたる「フィニッ

シャーD6(ディーシックス)」を新たに導入した。このフィニッ

シャーでは、お客様の多様な製本ニーズへ対応するために、天

地断裁とクリース(筋入れ)が可能な「天地トリマークリーサー

D1」など、新たな後加工オプションを加えた。また、従来のオー

ルインワン型のフィニッシャーから、各機能をモジュール化し、

お客様が必要な機能だけを選択できるようにした。

本稿では、「フィニッシャーD6」の新しい機能や技術などを、

これまで当社が提供してきたフィニッシャーの変遷を交えな

がら紹介する。

2. 市場概況と製本ニーズ

日々変わる消費者ニーズに対応するため、印刷業や一般企業

は、カタログやマニュアル、販売促進用冊子などの印刷に、従

来のオフセット印刷による大量印刷ではなく、短納期で必要な

部数だけ印刷が可能なオンデマンドプリントを活用し始めて

いる。また、新たに「中吊り広告」や「A4の多面付け」など、

長尺を活用したデザインやアプリケーションへのニーズも高

まっている。

3. 当社が提供してきたフィニッシャー

当社は、複合機およびプリンターに、低速用から高速用の

フィニッシャーを提供しており、特に高速用にはさまざまな後

処理機能を提供してきた。次に、高速用に焦点を当て、これま

で提供してきた第1世代から第3世代までを概観する(図1)。

① 第1世代:コピー機のデジタル化に伴い、オフィスのハイエ

ンド機向けに、100枚とじ/中とじ15枚の高速フィニッ

シャーを提供した。高速モノクロ機用として販売したこの

フィニッシャーは、とじ枚数と高生産性でお客様にご好評い

ただき、富士ゼロックスのモノクロデジタルコピー機の躍進

を支えた。

② 第2世代:デジタルプリンティングの需要増加に伴い、大容量

スタッカーや小口断裁、角背などの機能を追加した。これに

より、お客様に多様な後処理機能を提案できるようになった。

③ 第3世代:ハイエンドプリンターにインラインでつなげる他

社製のフィニッシャー(くるみ製本機、中とじ製本機、ニス

コーターなど)を国内およびアジア太平洋地域に提供し、品

ぞろえを充実させた。また、入稿から印刷、後処理までの工

程を自動的に処理、管理するフィニッシングソリューション

図1 フィニッシャーの取り組み

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多様な製本ニーズに応える「フィニッシャーD6」

120 富士ゼロックス テクニカルレポート No.26 2017

をアジア太平洋地域に提供し、さらなる付加価値の提供に寄

与した。

4. フィニッシャーへのニーズと課題

4.1 製本ニーズの多様化

近年、お客様が求める製本は多様化し、かつ、より高い製本

精度が求められている。特に、三方断裁や筋入れ、角背など多

様な後処理、用紙の汎用性、高生産性、および高品質な仕上が

りが求められているが、オフィスのハイエンド機や軽印刷用カ

ラー機のフィニッシャーではこのようなニーズに十分に応え

られていなかった。

4.2 品種の増加と構成の課題

複合機およびプリンターには、フィニッシャーにつなげる独

自の仕様(用紙排出高さ、排出速度、排出タイミング、追加機

能)があるため、これまでは、個別のフィニッシャーを開発せ

ざるをえなかった。それにより品種が増え、開発効率の悪化と

煩雑な在庫管理を必要としていた。また、従来のフィニッ

シャー本体はオールインワンタイプのため、お客様が必要な機

能だけを選択することができなかった。

5. 課題に向けた取り組み

これらの課題を解決すべく、第4世代では「高品質と高生産

性の中とじ冊子」と品種削減のための「モジュール化」をコン

セプトに、プラットフォームとなるフィニッシャーを刷新した。

お客様がフィニッシャーの各機能を自由に選択できるように、

各機能を個別の装置とする「モジュール化」を行った。これに

より、品種の削減が可能となり、開発効率の改善も実現した。

5.1 多様な製本ニーズへの対応

新開発の「フィニッシャーD6」では、高速かつ高精度の中と

じ処理や天地断裁、筋入れなどの新たな後処理技術に加え、用

紙の汎用性と生産性向上を実現した。次に、各モジュールの機

能とキーとなる技術を紹介する。(図2)

① インターポーザー

インターポーザーは、専用の給紙トレイから表紙や合紙を直

接フィニッシャーへ供給するユニットである。このインター

ポーザー機能をフィニッシャー構成の入り口側に配置する

ことで、表紙や合紙をすべてのモジュールで処理することが

可能となる。この表紙や合紙は、複合機の定着ユニットを通

らないため、印刷済みのプレプリント用紙や感熱紙等の熱に

弱い用紙も使用することができる。また、給紙機能には、前

世代機である「フィニッシャーD4」のインターポーザーよ

り高性能の給紙方式を採用し、紙種(厚紙、コート紙、用紙

サイズ等)やトレイ積載量、および生産性を改善することが

できた(表1)。

フィニッシャーD4 項目 フィニッシャーD6

200枚 トレイ容量 250枚

257×182mm B5( 小)

用紙サイズ

210×148mm

297×431.8mm ( 大)

330.2×480mm

( 大)

64~220g/m2

コート紙対応なし 用紙質量

52~350g/m2

条件ありでコート紙対応

非対応 大容量スタッカー

への排出 対応

16ppm*1

表紙/合紙時の 生産性(参考値)

@A4片面 表紙1枚本紙1枚

連続出力

70ppm

図2 フィニッシャー構成

表1 インターポーザー基本仕様

*1 ppm:1 分間に印刷されるページ数を表す単位

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多様な製本ニーズに応える「フィニッシャーD6」

富士ゼロックス テクニカルレポート No.26 2017 121

② 天地トリマークリーサー

天地トリマークリーサーでは、筋入れと用紙の上端、下端を

断裁する天地断裁を行う。

● 筋入れ

筋入れとは、パンフレットなどの表紙やカードの折り目に

あらかじめ筋を入れることで、折り目でのトナー割れを防

ぐために行う。山折りや谷折りなど、折りの方向によって、

使用する刃の向きを調整し、用紙1枚に 大5本の筋入れ

を自由に加工できる(図3)。また、用紙の厚さに応じて筋

入れの強さを調節することが可能で、蛇腹折りなど多種の

折りを実現した。

● レジ補正

印刷物の多様化に伴い、レジ補正技術としてロールスイン

グ方式を採用した。これは、搬送された用紙のスキュー量

(傾き)をセンサーで検知し、スキュー量に応じてスウィ

ングロールをあらかじめ傾け、用紙先端がスウィングロー

ルを通過する直後にロールの傾きを基準値に戻す方法で

ある(図4)。この方式により厚紙も含む多様な用紙のス

キュー補正が可能となった。

● 天地断裁

天地断裁機能では、1枚ごとにラインセンサーで用紙のサ

イド位置を検知し、検知したサイド位置を基準にカッター

ユニットが移動する。このようにカット位置を調節する一

連の流れを自動化した(図5左)。丸刃カッターを採用す

ることで、薄紙52gsm~厚紙350gsmの用紙を断裁可能

とし、カッターユニットの独立可動により、カット前用紙

幅196~330.2mmまで幅広い用紙サイズに対応してい

る。また、カットの位置と幅は、0.1mm単位で調整可能

とした。さらに、断裁したカット屑がきれいに並んで収容

されるように排出部を設計することで、屑箱の無駄な空間

をなくし、屑箱の小型化と装置の省スペース化を実現した

(図5右)。お客様は、一定時間内であればジョブ中にカッ

ト屑を捨てることができるため、業務の中断がなく、高い

生産性を実現している。

● バッファー

バッファー部では、先行ジョブの処理中に、次のジョブの

1枚め、2枚めの用紙をバッファーパスに滞留させ、搬送

可能なタイミングで2枚重ねて搬送することができる。こ

図3 筋入れ例と筋入れ構成イメージ

図4 レジ補正動作イメージ

図5 天地断裁のイメージとカット屑が整列した屑箱

図6 バッファー構成部と生産性

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多様な製本ニーズに応える「フィニッシャーD6」

122 富士ゼロックス テクニカルレポート No.26 2017

れにより、後処理に要する時間を削減し、4枚以上の中と

じ枚数でプリンター本体の生産性に近い高生産性を実現

している(図6)。

�③ 中とじフィニッシャー

中とじフィニッシャーでは、スタック、ソート、ステープル

(ホチキスとめ)、中折り、中とじを行う。

● スタック

用紙排出トレイには、さまざまな種類の用紙が排出される。

薄紙や薄コート紙を用いた場合、用紙排出角度やトレイの

角度によっては、用紙間の摩擦により用紙が排出しきれな

い、または、収容された用紙を突き押してしまうといった

収容不良が発生することがある。

そこで、薄紙や薄コート紙使用時には用紙間摩擦を軽減す

るために、排出トレイ角度を緩やかな角度に切り替えられ

るような構成とした。このように用紙の種類によって排出

トレイ角度は可変であるが、用紙の重さなどで排出トレイ

角度が変わらないように、トレイのヒンジ部の形状を工夫

している(図7)。

● 平とじ

平とじは、用紙をそろえ、ステープラーでとじる製本の方

法である。「フィニッシャーD6」の用紙そろえ部では、用

紙を支えるタンパーの駆動範囲を従来の片側から両側に

広げた。その結果、用紙排出位置で用紙をそろえられるだ

けでなく、コーナーとじでは冊子ごとタンパーで挟んでス

テープラー位置まで移動させることができる(図8)。この

ように用紙の移動回数を 少限に抑えたため、後処理の高

速化と耐カール性の向上、小サイズ用紙の用紙ぞろえが可

能になるなど、高い用紙汎用性を実現した。また、用紙そ

ろえ部の直前に、搬送用紙を一時的に二枚重ねて格納でき

るバッファー機能を設けたことで、複数枚の用紙を搬送し

同時にそろえる高生産性を実現した。また、バッファーパ

ス内の搬送抵抗の低減と駆動制御の 適化により、バッ

ファーパス内で重ね合わせた用紙のズレを防止している。

フィニシャーで発生するステープラーの稼働音に対して

は、モーターの電流値制御の 適化と、用紙の種類や枚数

に応じた針とじ速度の多段制御を行うことで、必要 低限

の力で針とじを可能とし、稼動音の低減を実現している。

● 中とじ

中とじ製本部では、ステープラーと折りロールの配置を変

更し、用紙をそろえるタンパーを長尺にすることで、大サ

イズの用紙ぞろえ精度を向上した(図9)。また、環境変動

に伴う用紙のカールに対応するため、用紙を抑えるクラン

プ機能を追加し、用紙のたわみなどによる位置ズレを改善

した(図10)。その結果、用紙を正しい位置に配置でき、

用紙折り精度を向上した。

さらに、一度に折る枚数を増やすため、折りロールを両側

に開く機構にした。そして、折りロールの径と、用紙枚数

による折りロール間の圧力(ニップ圧)を 適化し、少数

枚(折りロール間ギャップが小さい場合)ではしわが発生

しないようニップ圧を低くし、多数枚(折りロール間

図7 用紙排出トレイの角度比較

図9 用紙そろえ部の構成(中とじ)

図10 用紙そろえ部の構成(中とじ)

図8 用紙揃え部の構成(平とじ)

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ギャップが大きい場合)では表紙ずれが発生しないよう、従来

機よりもニップ圧を高く設定した(図11)。

�④ 小口トリマースクエアフォールド

小口トリマースクエアフォールドでは、中とじ、中折り時に

小口断裁と角背加工を行う。

● 小口断裁

小口を断裁するカッター内の冊子押さえ部の改良と圧力

の 適化を行った。これにより、断裁時の冊子のズレを低

減し、冊子の用紙枚数に左右されることなく、正確な位置

で小口断裁を行うことができ、高品質な製本処理を実現し

た(図12)。

● 角背(かくせ)

中とじ冊子では、ページ数の増加により冊子の背に膨らみ

が発生する。そこで、冊子を上下のクランプで固定して潰

しローラーを背の部分に当て、圧力をかけることで、冊子

の背の形状を平らにする角背仕上げを行う。この処理によ

り、冊子の膨らみが低減し、高品質な製本処理を実現して

いる(図13)。

項目 仕様

用紙排出高さ 770mm

用紙排出角度 15度上向きまたは水平

用紙搬送速度 1000mm/s

※既存の大容量スタッカーは除く

ドッキング構成 ドッキング構成共通化

取付位置/高さ統一

ケーブル接続 隣接接続方式

用紙検知センサー位置 排出センサー位置統一

跨り紙づまり除去 -下流モジュールへ自動送り出し

-下流/上流モジュールから除去

5.2 品種の増加と構成の課題への対応

① ハードウェアのインターフェイス仕様の統一

「フィニッシャーD6」では、お客様の要望する機能に応じ

て、多様なモジュールの組み合わせが発生する。そこで、各

モジュールの用紙排出高さや排出角度、搬送速度、ドッキン

グ構成、ケーブル接続方式などのインターフェイス仕様を統

一し、さまざまな組み合わせを可能にした(表2)。また、プ

リンターはそれぞれ固有の搬送速度を持つため、プリンター

に直接に接続される「インターフェイスデカーラーD1」に

搬送速度差と用紙排出高さの差を吸収する機能を持たせた

(図14)。これにより、お客様が必要な後処理機能を自由に

図11 用紙枚数(ロール間ギャップ)とニップ圧の関係

図12 用紙搬送経路概略

図13 角背機構と仕上がりイメージ

表2 ハードウェアインターフェース仕様

図14 用紙搬送経路概略

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多様な製本ニーズに応える「フィニッシャーD6」

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選択できる「モジュール化」を実現させ、かつフィニッシャー

の品種を削減することができた。

② ソフトウェアのインターフェイス仕様の統一

従来のインターフェイスは、プリンターの機種にあわせて設

計していたため、プリンターごとに異なるインターフェイス

が必要となり、結果として品種が増えることになった。対応

策として、機種情報ではなく、各プリンターのパラメーター

情報(たとえば用紙の受け渡し搬送速度や増速する位置など)

を受け取り、フィニッシャー側がその情報にあわせて対応す

る方式に変更した。この結果、プリンターに依存しない共通

インターフェイスを確立した。

また、モジュール化を採用した「フィニッシャーD6」では

13種類のオプション組み合わせが発生するため、今までの

検査方法では多くの評価が必要となる。そこで、同一のイン

ターフェイスで制御され、相互に影響を与えるオプションの

組み合わせを事前に抽出して組み合わせ評価の効率化を

図った。まず、オプション商品を、あるインターフェイスで

制御される8オプション(群A)と、もう1つのインターフェ

イスで制御される5オプション(群B)に分けた。そして、群

Aと群Bの中でオプションの組み合わせ評価を行い、 後に

異なる群のオプションを接続した評価を実施した。この効率

化により、D6フィニッシャーでは、従来の検査方法で行っ

た場合の1/10以下の検査数で、すべての組み合わせを評価

できた。

6. 今後のフィニシャー開発の方向性

第4世代フィニッシャーは、ライトプロダクション領域から

オフィス領域まで幅広い対応を目指して開発してきた。

特にプロダクション領域では、フィニッシャーに高い信頼性

が要求され、お客様のダウンタイムを低減させることが重要で

ある。今後のフィニッシャー開発では、さらなる信頼性向上を

目指す。たとえばオンラインでの診断機能や故障予測機能、

ディフェクト検知機能などを導入することにより、故障前に適

切に処置することが可能となり、お客様のダウンタイムを大幅

に減らすことが可能となる。

また、フィニッシャーはますます多機能で複雑になってきて

いるため、お客様が間単に操作でき、かつ期待した加工仕上げ

ができるようなユーザーインターフェイスの改善が求められ

ている。当社でも、機能と使いやすさの両面に対するお客様の

期待に応えられるよう、商品ラインアップの強化とユーザーイ

ンターフェイスの改善に努めたい。

7. おわりに

以上述べてきたように、「フィニッシャーD6」は、お客様の

要求に応える第4世代フィニッシャーとして、プロダクション

領域に本格的に参入するべく開発した。この第4世代のフィ

ニッシャーをお客様に使っていただき、改善のご要望をお聞き

しながら、さらに進化させていきたい。

一方、お客様が求める製本は多様化しており、すべてを自社

開発するのは難しい。近年開催された印刷関連の展示会でも、

ニス加工やラベル加工などさまざまなフィニッシャーが展示

されている。より付加価値の高いフィニッシャーを構成して提

供していくには、他のフィニッシャーメーカーとのアライアン

スが重要となってきている。当社の得意分野を活かしながら、

自社開発フィニッシャーと他社製のフィニッシャーを組み合

わせ、相互に補完する形で市場エリアをすみ分けながら、多く

のお客様へ 適な環境を提供していく。

商標について

Versant 3100 Press、Versant 180 Press、中とじフィニッシャーD6、

紙折りユニットCD2、インターフェイスデカーラーD1、天地トリマーク

リーサーD1、小口トリマースクエアフォールドD1、フィニッシャーD6、

フィニッシャーD4は、富士ゼロックス株式会社の日本およびその他の国に

おける登録商標または商標です。

その他の商品名、会社名は、一般に各社の商号、登録商標または商標です。

参考文献

1) 商品情報 VersantTM 3100 Press(バーサント 3100 プレス)

http://www.fujixerox.co.jp/product/publishing/versant_3100/ ( 参 照 日 :

2016.12.26)

2) 商品情報 VersantTM 180 Press(バーサント 180 プレス)

http://www.fujixerox.co.jp/product/publishing/versant_180/ ( 参 照 日 :

2016.12.26)

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多様な製本ニーズに応える「フィニッシャーD6」

富士ゼロックス テクニカルレポート No.26 2017 125

筆者紹介

風間裕篤 富士ゼロックスアドバンストテクノロジー株式会社に所属

専門分野:プロジェクト開発推進

梁川禎介 富士ゼロックスアドバンストテクノロジー株式会社に所属

専門分野:システム設計、機械工学

矢坂裕一 富士ゼロックスアドバンストテクノロジー株式会社に所属

専門分野:システム設計、機械工学

米山武志 富士ゼロックスアドバンストテクノロジー株式会社に所属

専門分野:機械工学、製本装置設計

池田喜一 富士ゼロックスアドバンストテクノロジー株式会社に所属

専門分野:電気・電子工学

原田勝則 富士ゼロックスアドバンストテクノロジー株式会社に所属

専門分野:機械工学、製本装置設計