ハーレーダビッドソンという名の鉄馬を。一台のバ …mono harley-davidson...
TRANSCRIPT
mono
Harley-Davidson●特集[ハーレーダビッドソン]
SINCE 1903~
VOL.16
アメリカが世界の工業生産をリードした
20世紀初頭、1903年に誕生した
フォードと大量生産技術は後世の
工業史に残る革命的な出来事だったが
そのまったく同じ年に、米北東部の街
ミルウォーキーで二人の若者が
一台のバイクを作り上げた。
ハーレーダビッドソンという名の鉄馬を。
89
左の写真は1915年に撮影されたデトロイト警察の警官。右の写真は1921年撮影。公園のモニュメントの前に整列した警察隊がハーレーに跨った勇壮な一枚。騎馬から鉄の馬へと移行した時代の雰囲気が漂う貴重な写真だ。
Photo/Harley-Davidson JapanText/Teruhiko Doi(WPP)
1960年代の広告。いまもリペアを繰り返しながら走っているであろうデュオグライドと当時のファッションやカルチャーをうかがい知ることができるイラストが何とも味わい深い。ビッグツイン初の油圧式サスペンション採用モデル
mono1903年に誕生した記念すべきハーレーダビッドソン1号機は排気量409㏄で出力3馬力。自転車のフレームをベースにしたループ フレームを採用。黒の塗装にゴールドのストライプが施されたデザインだった。
内燃機関の発明は、多くの自
動車やモーターサイクルの産業
を興していった。特に本格的な
実用化が進んだ20世紀初頭は、
このエンジンを搭載した夢の乗
り物を生み出す熱気に溢れてい
た時代だ。ミルウォーキーに住
んでいた隣同士の幼馴染である
ウィリアム・S・ハーレーとア
ーサー・ダビッドソンは、190
3年に1台のモーターサイクル
を作り上げ、この年に計3台の
製造を行った。翌年にはダビッ
ドソン家の裏庭に木造の小屋を
建て、扉に「H
arley-Davidson
Motor C
ompany
」の看板を上
げた。21世紀のいまもモーター
サイクルの最高峰に立つ『ハー
レーダビッドソン』の誕生であ
る。1907年にはその製造台
数を150台にして、正式に株
式会社としてスタートした。第
一号のハーレーは黒くペイント
されていたが、1906年以降
はグレーが基本色となった。初
期のハーレーはこのカラーリン
グから〝サイレント
グレー
フ
ェロー〞というニックネームで
呼ばれることになる。しばしば
〝鉄馬〞と呼ばれるハーレーダビ
ッドソンは、こうしたニックネ
ームを数多く持っている。たと
えば30年代に発売されたOHV
エンジンの〝ナックルヘッド〞
や40〜50年代の〝パンヘッド〞
などがよく知られているが、そ
こにこのブランドを愛してやま
ない製造者とユーザーとの絆を
感じるのだ。普遍的愛称は利益
を凌駕する名誉なのである。
上の見開き写真はコカコーラの配達に利用されていたサイド バン。サイドカーの代わりにフタ付きの木箱を備えていた。1915年から販売されていた。1931年には扉ページの白いバイク3輪の商用車サービカーが登場した。
1011
馬車が自動車に、そして馬がハーレーへと乗り換えられてから20世紀が始まった
最速であることよりも、その文化の代弁者であることがハーレーダビッドソンというブランドに求められる感性。60年代の経済界に吹き荒れた企業買収の波には同社も飲まれてしまったが、後年、株式を買い戻すというドラマを演じる。ブランドへの愛が文化までも守ったのだ。
ハーレーダビッドソン社の波
乱の歴史は1929年の世界恐
慌から始まる。ブラックマンデ
ー以降のアメリカのモーターサ
イクル業界では倒産が相次いだ。
最盛期には200ほどあったブ
ランドはついには同社を含めた
数社のみになってしまったが、
マシンの信頼性向上を怠らずに、
レジャー用だけではなくビジネ
スバイクの分野でもしっかりと
した販売網とマーケティングを
持っていたハーレーは、何とか
この危機を乗り越えたのだった。
1931年に登場したビジネス
バイクの3輪サービカーには、
従来のビッグツインではなく、
排気量750㏄のVツインエン
ジン(通称:ベビーツイン)が
搭載され、結局、このサービカ
ーとフラットヘッドのベビーツ
イン・エンジンは1973年ま
で生産された。1909年に開
発されたVツインエンジンに代
表されるように、ハーレーの歴
史はエンジン開発の歴史でもあ
る。以降のナックルヘッドやパ
ンヘッド、70年代のショベルヘ
ッド、そして近年のツインカム
88に至るまで、ハーレーのエン
ジンはすべてのモーターサイク
ルファンの憧れであり、その時
代ごとのモデルに搭載されたエ
ンジンについての知識は学業よ
りも大切な必須科目だった。美
しいという形容詞で称えられる
エンジンはそうあるものではな
い。車体のフォルムと同等に語
られるそのデザインこそが、ハ
ーレーのスタイリングなのだ。
2011年9月に発売されたばかりの「ハーレーダビッドソン2012モーターサイクル・ニューモデル」。下のモデルは『VRSCDX ANV V-Rod 10th Anniversary Edition』(価格224万1000円/ブリリアントシルバーパール)。これに『VRSCF V-Rod Muscle』(価格208万4000円/ビビッドブラック、クロームイエロー、ブラックデニムの3色)と『VRSCDX Night Rod Special』(価格218万円/ビビッドブラック、ブラックデニム、セドナオレンジの3色)を加えた3モデルが2012年の新たなV-Rodファミリーとなる。左は『SPORTSTER XL1200C/1200 Custom』(価格133万8000円/モノトーン、136万9000円/ツートン)よりカスタムルックなスタイリングが特徴。
↓タンクにはアニバーサリーグラフィック、V-Rod 10th Anniversaryのグラフィックも入っている。テールライトにはLEDが採用されている。倒立フォークは新デザイン軽量アルミニウムキャストホイールの採用で約1400gの軽量化を実現。
初期のハーレーの名前を一躍有名にしたのは圧倒的なレースでの勝利。最初のレーシングチームのエンジニアはウィリアム・S・ハーレーだった
1213
100年以上の時を経ても“鉄馬”の感性。文化とテクノロジーの理想的な融合
mono 時代の流れに沿って1998年に発表されたのが新型エンジンツインカム88。現行モデルもこの躍動感溢れるツインカム・エンジンが基本となっている。問い合わせは問ハーレーダビッドソン ジャパン0800-080-8080
http://www.harley-davidson.co.jp
TOURING ファミリーFLHTCU103Ultra Classic Electra Glideツインカム103(排気量1689㏄)エンジンを搭載した圧倒的安定感と胸を震わす鼓動。価格318万8000円(モノトーン)価格321万9000円(ツートン)
SOFTAIL ファミリーFLSTC Heritage Softail Classic2012年モデルはパッシングランプスイッチの追加などさらなる操作性の向上を目指している。価格228万8000円(モノトーン)価格231万9000円(ツートン)
V-Rod ファミリーVRSCF V-Rod Muscle旧VRSCファミリーは2012年からV-Rodファミリーとなる。価格208万4000円
DYNAファミリーFXDL Low RiderDYNAエレクトリカルシステム、BCM(ボディ・コントロール・モジュール)など、21世紀のハーレーはやはり体感で理解したい。価格195万8000円(モノトーン)価格198万9000円(ツートン)
左の写真:左側がハーレーのデザインとコンセプトワークを手がけるウィリーG。隣は息子のビル・ダビッドソン。右の写真:ミルウォーキーの本社ビル(1918年当時)。
1415