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パキスタン・イスラム共和国 パキスタン医科学研究所機能強化計画 準備調査報告書 平成 31 年 4 月 (2019 年) 独立行政法人 国際協力機構(JICA) 共同企業体 株式会社 福永設計 有限会社 エストレージャ 株式会社 アジア共同設計コンサルタント 人間 JR(P) 19-016 パキスタン・イスラム共和国 パキスタン医科学研究所

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パキスタン・イスラム共和国

パキスタン医科学研究所機能強化計画

準備調査報告書

平成 31 年 4 月

(2019 年)

独立行政法人

国際協力機構(JICA)

共同企業体

株式会社 福永設計 有限会社 エストレージャ

株式会社 アジア共同設計コンサルタント

人間

JR(P)

19-016

パキスタン・イスラム共和国

パキスタン医科学研究所

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序 文

独立行政法人国際協力機構は、パキスタン国医科学研究所機能強化計画にかかる協力準備調査

を実施することを決定し、同調査を株式会社福永設計・有限会社エストレージャ・株式会社アジ

ア共同設計コンサルタント共同企業体に委託しました。

調査団は、2018 年 5 月から 2018 年 12 月までパキスタン・イスラム共和国の政府関係者と協議

を行うとともに、計画対象地域における現地踏査を実施し、帰国後の国内作業を経て、ここに本

報告書完成の運びとなりました。

この報告書が、本計画の推進に寄与するとともに、両国の友好親善の一層の発展に役立つこ

とを願うものです。

終わりに、調査にご協力とご支援を頂いた関係各位に対し、心より感謝申し上げます。

2019 年 4 月

独立行政法人国際協力機構

人間開発部

部長 佐久間 潤

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要約

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要 約

1. 国の概要

パキスタン・イスラム共和国(以下「パ国」という)は、東はインド、北東は中華人民共和国、

北西はアフガニスタン、西はイランと国境を接する。国土面積は約 80 万 km2 であり、地形は北

西部から南東部へ次第に高度が下がる。ヒマラヤ山脈に水源をもつインダス川は、北部のカラコ

ルム山脈、ヒンズークシ山脈からの 5 つの支流が合流して本流となり、南端でアラビア海に流れ

出る。アジアと中東の接点に位置し地政学的重要性を有し、国際社会の平和と安定にとって重要

な地域である。パキスタン国の人口は約 2 億人1を超え、2050 年には世界第 6 位の人口大国にな

ると予想されている2。イスラマバード首都圏の人口は約 200 万人で、うち約半数が都市開発の

指定区域に、残りの半数が、農村開発の指定区域に居住する3。

パ国は、Pakistan Vision 2025(以下、「国家開発政策 2025」という)で社会的資本と人的資本の

開発を柱の一つとして掲げている4。さらに、National Health Vision Pakistan 2016-2025(以下、「国

家保健政策 2016-25」という)では、保健サービスへのアクセスを改善し、すべての国民、特に

女性と子どもの健康を改善できる保健システムの整備と運用に努めるとしており、取り組みが

急務となっている。

2. プロジェクトの背景・経緯

パ国では、2015 年までの Millennium Development Goals(MDGs)において 5 歳未満児死亡率

(以下、「U5MR」という)、乳児死亡率(以下、「IMR」という)、妊産婦死亡率(以下、「MMR」

という)を低下させる対策を取ってきたが、達成の遅れがあった。2015 年の目標値に対する実

際値は、U5MR79.5(目標値 45/1,000 人中)、MMR178(目標値 140/10,000 人中)といずれも非常

に高い水準にある。

パ国内有数の第 3 次医療施設であるパキスタン医科学研究所(以下、「PIMS」という)は首都

イスラマバードにある。PIMS の母子保健センター(以下、「MCHC」という)及び小児病院(以

下、「CH」という)では、患者数の大幅な増加に伴い、医療機材と施設が不足している状況にあ

る。特に、手術室は、年間約 5,800 件にのぼる帝王切開手術を最優先するため婦人科手術が延期

されることが慢性化し、乳児重症ケア室や産婦人科病棟では 1 つのベッドを複数患者で共有し

ている状況にある。

パ国内では、妊産婦死亡の原因として、近年は妊娠高血圧症候群の重症化によるものが多く、

また、依然として敗血症による死亡も多い。前者は、妊婦健診で重症化を防ぐための対応が可能

であるため、重症化予防のための保健医療施設へのアクセス改善と、重症化した場合の早期対応

と救命のための救急医療サービスの強化が必要である。

また、イスラマバード首都圏において PIMS の CH は、第 3 次医療を提供する唯一の公立専門

病院であるため、小児外来では年間 33 万人を超える利用者を記録しており、キャパシティが大

1 2 億 945 万人(パキスタン計画開発改革省: MoPD&R)https://www.pc.gov.pk/web/vision 2 https://propakistani.pk/2017/07/01/pakistans-population-exceed-300-million-2050-un-report/ 3 2017 年人口統計(2018 年 1 月 3 日付け)イスラマバード首都圏 2,001,579 人(世帯数 335,408)、Pakistan Bureau of Statistics (http://www.pbs.gov.pk/content/classifications) 4 https://www.pc.gov.pk/uploads/vision2025/Vision-2025-Executive-Summary.pdf

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幅に不足している。U5MR を改善するには、その半数以上を占める新生児死亡率(以下、「NMR」

という)を削減することが不可欠であるが、重篤乳児に対して十分な医療サービスを提供できな

い状況にある。かかる状況を踏まえて、パ国側から我が国に対し、PIMS の MCHC 及び CH の拡

充と機能強化にかかる要請があった。2017 年 8 月には機材の追加的整備を中心に先方への聞き

取りが実施されたが、具体的な協力内容は調査で明らかにするとした。

3. 調査結果の概要とプロジェクト内容

以上を踏まえ、独立行政法人国際協力機構(以下、「JICA」という)は、2018 年 5 月から 7 月

にかけて 2 回の準備調査団を派遣した。調査団は、帰国後の国内解析に基づいて施設計画及び機

材計画をとりまとめ、2018 年 11 月に準備調査結果概要について現地説明を行い、準備調査報告

書を作成した。

(1)協力対象範囲

調査の結果、既存の CH、MCHC のハイリスク周産期医療を集約し、集中治療室・手術室・病

室を拡充することの妥当性が確認された。以下に、施設整備・機材調達の目標と整備概要を記す。

1) ハイリスク妊産婦・新生児を対象とした周産期医療の集約と拡充

・ ハイリスク妊産婦、新生児に対応する救急外来・救急病床の整備。

・ 手術室・分娩室の整備。

・ 検査室及び中央滅菌材料室(以下、「CSSD」という)の整備。ただし、検査室は

術中検査等に最低限必要なものとし、病理検査、画像診断等は既存棟の検査部門

を活用する。また、輸血に関しては、検査室に血液保冷庫を設置する。

・ 新生児集中治療室(以下、「NICU」という)の既存棟から新施設への移転、増床。

20 床の整備。

・ 新生児と乳児のための重症ケア室(以下、「乳児 HDU」という)20 床の整備。

・ 母体胎児集中治療室(以下、「MFICU」という)6 床、産婦人科重症ケア室(以

下、「産婦人科 HDU」という) 4 床の整備。

2) 病床の増床(既存病棟の負担軽減)

・ 病床(小児病棟 50 床、ハイリスク妊産婦病棟 50 床)の整備。

3) 医療機材の調達、及び機材維持管理体制の強化

・ 新施設に必要な、医療機材の調達。

・ ソフトコンポーネントの実施。

(2)要請内容の検討

パ国政府からの要請及び協議結果を踏まえ、協力対象範囲を以下のように策定した。プロジ

ェクト目的が、ハイリスク妊産婦や褥婦、重篤な新生児・乳児を対象とした周産期医療の拡充

であるため、救急部門、手術部門及び集中治療室を最重要コンポーネントと考える。次に、既

存病棟の負担軽減を目的とした、小児病棟と産婦人科病棟の整備、医療機材の整備とする。こ

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の結果、本プロジェクトにより整備される施設の病床数は、集中治療病床を含んで 150 床、調

達機材は主に医療機材 84 種目とする(表 1)。

表 1 プロジェクトの概要

規模 病床数 150 床(集中治療 50 床、小児病棟 50 床、産婦人科 50 床)

延床面積:約 6,225 ㎡

診療科目 ハイリスク妊産婦・褥婦及びハイリスク新生児・乳児に主眼をおいた産婦人科と小児科

施設 1) 救急部門 新生児救急外来、産婦人科救急外来の整備。(重症患者を対象とした救急診療を行う。)

約 660 ㎡ (救急 10 床)

2) 手術/ICU 部門 手術室 4室、分娩室、集中治療室(MFICU、NICU、乳児 HDU、産婦人科 HDU)、経過観察室、CSSD、医療機材室(以下、「ME 室」という)を整備する。緊急帝王切開を含む緊急性の高い手術、ハイリスク妊産婦の分娩、治療を行う。

約 2,000 ㎡

3) 病棟部門 小児病棟・産婦人科入院病棟の整備。 約 1,800 ㎡

4) その他 管理諸室、検査室、機械室、洗濯室、厨房、他。

約 1,765 ㎡

機材 ・上記施設に必要な医療機材、一般家具等。 ・医療機材にかかるソフトコンポーネント

・主な医療機材

①新施設

・ NICU:移動式 X線装置、血液ガス分析装置(ポータブルタイプ)、新生児保育器、新生児保育器(搬送用)、インファントウォーマ、患者監視モニタ

・ MFICU:患者監視モニタ、除細動装置、人工呼吸器(成人用)、超音波ネブライザ、超音波診断装置

・ 乳児 HDU:インファントウォーマ、新生児保育器、新生児保育器(搬送用)、患者監視モニタ

・ 手術室:患者監視モニタ、除細動装置、腹腔鏡システム、血液ガス分析装置、電動手術台、電気メス、麻酔器

・ 陣痛室・分娩室:超音波診断装置、胎児ドップラ、手術用ライト(可動式)分娩台、分娩監視装置

・ CSSD:オートクレーブ(大型)、軟水製造装置、ウォッシャーディスインフェクタ、低温滅菌装置、システム乾燥機

・ 臨床検査室:遠心分離機、輸血用冷蔵庫、赤血球沈降速度測定装置、蒸留水・ 製造装置救急診察室:患者監視モニタ、除細動装置、超音波診断装置、吸引

器、心電計 病棟:患者監視モニタ、除細動装置、バイタルサインモニタ

・ ②既存施設 ・ 小児集中治療室(以下、「PICU」という):人工呼吸器(小児用)

4. プロジェクトの工期

本プロジェクトの実施に必要な工期は、施設の規模及び現地の調達事情等から判断して約 31

ヵ月と想定される。詳細設計及び入札業務 10 ヵ月、施設建設工事及び機材据え付け工事が 21 ヵ

月を予定している。

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5. プロジェクトの評価

(1) 妥当性

本プロジェクトは、以下の観点から我が国の無償資金協力対象事業として妥当であると判断さ

れる。

1) プロジェクトの裨益対象者

イスラマバード首都圏及び隣接するパンジャブ州ラーワルピンディの 0~14 歳の小児と、

生殖可能年齢とされる 15 歳~49 歳の女性を合わせた人口は、約 442 万 9,500 人である。また、

小児や周産期女性のための専門病院を持たないハイバル・パフトゥンハー州(以下、「KP 州」

という)やアザド・カシミール州から PIMS への患者搬送が行われており、裨益者数はさらに

多くなることが見込まれる。今後、交通網の整備が進むと首都圏への流入人口及び他州からの

患者搬送は、一層、増加する。保健医療サービス利用の高まるニーズに応えるため、本プロジ

ェクトにより、首都で最も利用者数の多い医療施設および機能の拡充計画が実施される意義

は非常に大きい。

2) 人間の安全保障の観点

現在、パ国は比較的安定した経済成長の過程にある。しかしながら、所得、教育、ジェン

ダー、などの格差は依然として大きい。同国政府は国家開発政策 2025 の中で、ジェンダー格

差の均衡化と、貧困対策として女性の就労機会を増やし、社会参加率を 45%まで上げるとし

ている。本計画は、パ国の発展を担う子どもたちの健やかな成長と、その子らを生み育て、

世帯収入の担い手でもある女性の、救命と健康の回復・維持に必要な医療サービスの質の向

上を目的としており、人間の安全保障において重要な要素である、健康と貧困解消に基づく

民生の安定に貢献できる。

3) パ国の開発計画との整合性

国家保健政策 2016-25 では、医療費の支出増加、機能的な情報システムと保健・衛生施設の

整備とともに、出産前・後の女性に対するケアの強化が明記されているが、本計画は、周産期

医療の改善・強化を目的としており同計画と合致する。また、政策の柱の一つである「保健医

療人材の強化」についても、PIMS は助産師を含む医療従事者の育成と現任教育の訓練機関で

あることから、同施設の設備・機能強化は、保健医療人材の能力向上に寄与する。

4) 我が国の援助政策との整合性

日本外務省は「対パキスタン・イスラム共和国 国別開発協力方針(2018 年 2 月)」の中で、

ポリオ撲滅に向けた支援の継続とともに、特に MDGs 指標達成の遅れが指摘されていた母子保

健システムの強化への貢献を挙げている。第 3 次医療を提供する周産期医療施設が本計画によ

り整備され母子保健指標の改善が期待できるため、日本の援助政策と整合性が高い。

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(2) 有効性

1) 定量的効果

協力対象である MCHC と CH の 2017 年度の実績を基準に定量的効果指標の目標値を設定す

る。目標到達年次は、プロジェクトによる施設の完成から 3 年後の 2024 年とする(表 2)。

表2 定量的効果指標及び目標値

指標名 基準値

(2017 年実績値)

目標値(2024 年)

【事業完成 3年後】

1)MFICU の患者収容件数(件/年) 0

(参考値 142) 300

2)NICU 患児収容件数(件/年) 947 1,100

3)産婦人科と小児科の手術件数

(既存施設と新施設の合計)(件/年) 14,410 16,500

(1) 出典:PIMS 病院管理情報システム(Hospital Management Information System: HMIS、以下「HMIS」とい

う)、 Computer Department 管理データ 2013-2017 より、調査団作成

(2) MFICU 基準値の参考値について:

2017 年時点で既存棟に MFICU はないため基準値は 0 だが、既存の MCHC の術後回復室内の 2 床を、重

症患者のための ICU 病床として使用しており、その 2017 年の利用者数を参考値とする。

(3)目標値データの入手先:

1)と 2)は、新施設に関する Yearly patient’s workload in Wards(MFICU, HDU) 2024 /HIMS” 。

3) は 、 MCHC と CH 及び新施設の “Workload of OT Department 2024 / HIMS

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表3 定量的効果の目標値算出方法

指標 目標値 算出方法

MFICU の患者収容件数(件

/年) 300

2015 年度、東京都周産期医療整備計画実態調査に基づく疾病頻

度から、MFICU の平均入院日数は 6.7 日である。

病床利用率 100%を想定すると、年間患者収容件数は、327 件*2。

*2:1床が年間収容できる患者数 54.5 人×6床=327 件。

緊急受入のために、病床利用率は 100%以下を見込む必要があ

り、300 件(病床利用率 91.7%)と設定した。

NICU の患者収容件数(件

/年) 1,100

2017 年の患者収容件数 947/16 床、1床が年間収容できる患者

数は 59.2 人。病床利用率は 90.0%*3。

*3:(59.2×16 床×平均入院日数 5.5 日×100)÷(16 床×365

日)=90.0%

同等の病床利用率を想定した場合、新 NICU は 20 床となるた

め、59.2 人×20 床=1,184 件/年、よって 1,100 件/年と設定し

た。

産婦人科と小児科の手術

件数(既存施設と新施設の

合計)(件/年)

16,500

【産婦人科・婦人泌尿器科手術】

2017 年の MCHC の手術件数は約 7,900 件(予定帝王切開 1,450

件、緊急帝王切開 4,350 件、その他 2,100 件)である。このうち、

救急搬送による緊急帝王切開は新施設の 2室で行い、既存の手術

室では予定手術と正常分娩中の急変等によるやむを得ない帝切

のみを実施する。既存の 3室で行っていた帝王切開以外の手術(1

室あたり平均 700 件)と同様の手術は、新施設の 1室でも可能と

なる。

目標値として、既存の MCHC での手術を約 4,000 件(予定帝切

1,450 件 + 他の疾患 2,100 件+ 緊急帝切α件)、新施設での手術

5000 件(緊急帝切約 4,300 件 + それ以外の疾患 700 件)、合計

9,000 件とした。

【小児科手術】

基準値は、2013 年~2017 年の CH での平均年間手術件数 6,620

件である。

新施設 4 手術室のうち 1 室を小児の手術に使用する予定であ

る。1日に 3~4件、1年間で約 900 件(平日)の手術を行うと仮

定し、目標値を既存施設 6,620 件+新施設 900 件=7,500 件とし

た。

【合計】

産婦人科・婦人泌尿器科手術 9,000 件

+小児科手術 7,500 件=16,500 件

2) 定性的効果

本プロジェクトの実施により、以下の定性的効果の発現が期待される。

PIMS におけるハイリスク妊産婦・褥婦・新生児への医療サービス提供体制が強化される。

出生後、重症新生児が NICU に収容されるまでの動線の短縮、同施設内における重症患者

の回復段階に応じた治療の実施、手術室の増設による、ハイリスク妊産婦への迅速な外科

的対応等が可能になる。

既存の MCHC と CH において療養環境が改善し、患者サービスの質が向上する。

HDU 及び、一般病床の増床により、複数患者による 1 床の同時使用がなくなり、各種処

置や療養上の世話がより安全に実施でき、患者のプライバシーと安楽等に配慮した療養環

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境でのケアが提供されるようになる。また、NICU の新施設移転後、CH では同スペースを

周手術期 PICU に改築予定であることから、より多くの重症患児に対応が可能となる。

医療機材保守管理業務、CSSD 業務が効率化する。

新施設への医療機器保守管理室の設置と技術者の常駐により、医療機器類が常に良好な状

態で稼働し、必要な医療サービスの質を保つ体制が整えられる。また、新施設の CSSD で

は、前後扉式のオートクレーブに 適な動線で、効率的かつ安全な滅菌作業が、トレーニ

ングされた技術者により、行われるようになる。

以上の内容を踏まえ、本案件の妥当性は高く、また有効性が見込まれると判断される。

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目 次

第 1 章 プロジェクトの背景・経緯 .......................................... 1

1.1 当該セクターの現状と課題 .............................................................................................. 1

1.1.1 保健医療の現状と課題 ............................................................................................ 1

1.1.2 開発計画 ................................................................................................................... 7

1.1.3 社会経済状況 ............................................................................................................ 9

1.2 無償資金協力の背景・経緯及び概要 ............................................................................ 10

1.3 我が国の援助動向............................................................................................................ 11

1.4 他ドナーの援助動向 ........................................................................................................ 13

第 2 章 プロジェクトを取り巻く状況 ....................................... 14

2.1 プロジェクトの実施体制 ................................................................................................ 14

2.1.1 組織・人員.............................................................................................................. 15

2.1.2 財政・予算.............................................................................................................. 21

2.1.3 技術水準 ................................................................................................................. 22

2.1.4 既存施設・機材 ...................................................................................................... 23

2.2 プロジェクトサイト及び周辺の状況 ............................................................................ 31

2.2.1 関連インフラの整備状況 ...................................................................................... 32

2.2.2 プロジェクトサイトの自然条件 .......................................................................... 37

2.2.3 環境社会配慮 .......................................................................................................... 38

2.3 その他(グローバルイシュー等) ................................................................................ 40

第 3 章 プロジェクトの内容 .............................................. 41

3.1 プロジェクトの概要 ........................................................................................................ 41

3.1.1 上位目標 ................................................................................................................. 41

3.1.2 プロジェクト目標 .................................................................................................. 41

3.2 協力対象事業の概略設計 ................................................................................................ 42

3.2.1 設計方針 ................................................................................................................. 42

3.2.2 基本計画(施設計画/機材計画) ...................................................................... 48

3.2.3 概略設計図.............................................................................................................. 72

3.2.4 施工計画/調達計画 ................................................................................................ 78

3.3 相手国側分担事業の概要 ................................................................................................ 92

3.4 プロジェクトの運営・維持管理計画 ............................................................................ 93

3.4.1 運営維持管理体制 .................................................................................................. 93

3.4.2 維持管理計画 .......................................................................................................... 96

3.5 プロジェクトの概略事業費 .......................................................................................... 101

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3.5.1 協力対象事業の概略事業費 ................................................................................ 101

3.5.2 運営・維持管理計画 ............................................................................................ 102

第 4 章 プロジェクトの評価 ............................................. 107

4.1 事業のための前提条件 .................................................................................................. 107

4.2 プロジェクト全体計画達成のために必要な相手方投入(負担)事項 ....................... 107

4.3 外部条件 ......................................................................................................................... 107

4.4 プロジェクトの評価 ...................................................................................................... 108

4.4.1 妥当性 ................................................................................................................... 108

4.4.2 有効性 ................................................................................................................... 110

4.4.3 結論 ....................................................................................................................... 112

(資料)

1. 調査団員・氏名

2. 調査行程

3. 関係者(面会者)リスト

4. 討議議事録(MD、TN)

5. ソフトコンポーネント計画書

6. 参考資料

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地 図

図 1:パキスタン・イスラム共和国位置図 図 2:イスラマバード市内地図

図 3:プロジェクト協力対象サイト

MCHC

CH

プロジェクトサイト

Islamabad

200km

PUNJAB

KARACHI

BALOCHISTAN

Afghanistan

India

China

PIMS

3km

新設棟

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完成予想図

図 4:鳥観図

図 5:正面図

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写 真

写真 1 計画敷地

左奥が既存の MCHC の高架水槽。右奥の建物は乳がん

検査センター。ほぼ平坦な敷地である。

写真 2 CH の NICU

NICU は MCHC から物理的に遠い、スペースの制限があ

るなど課題が多い。

写真 3 CH の NICU 機材

35 年前に導入された新生児保育器は、現在、必要な

機能を果たしていない。

写真 4 MCHC の乳児 HDU

便所を改築して 2015 年に応急的に設置された HDU。

スペースや機材不足のために複数の新生児患児が 1

台のインファントウォーマを共有している。

写真 5 MCHC の救急診察室

20 年前に導入した設備の老朽化が著しい。年間救急

患者数(2017 年)は 21,772 名であり施設が不足して

いる。

写真 6 MCHC の手術室

現在の手術室は、産婦人科の救急患者の増加に対応

できずにいる。帝王切開などが優先され婦人科系手

術が延期される状態が慢性化している。

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xiii

図表リスト

表 1-1 MDGs 母子保健評価指標の推移 .................................................................................. 2

表 1-2 パ国内の保健医療施設数 ............................................................................................. 4

表 1-3 保健医療人材 (人数) ................................................................................................. 5

表 1-4 看護師・助産師数の周辺国との比較(人口 1,000 に対する看護師・助産師数) ......... 5

表 1-5 保健医療分野の課題と解決のための戦略 ...................................................................... 8

表 1-6 南アジア地域の IMR (出生 1,000 対) ........................................................................ 10

表 1-7 南アジア地域の U5MR (出生 1,000 対) .................................................................... 10

表 1-8 合意された事業概要 .................................................................................................. 11

表 1-9 保健分野における日本の政府開発援助 ..................................................................... 12

表 1-10 ドナー支援状況 ....................................................................................................... 13

表 2-1 CH の職員数の推移 ................................................................................................... 20

表 2-2 MCHC の職員数の推移 ............................................................................................. 21

表 2-3 CADD の予算執行状況(過去 3 年間) .................................................................... 21

表 2-4 PIMS の予算執行状況(過去 5 年間) ...................................................................... 22

表 2-5 PIMS 全体の臨床統計データ(過去 4 年間) ........................................................... 23

表 2-6 PIMS 診療施設の病床数 ............................................................................................ 23

表 2-7 施設別病床統計データ(2017 年) ........................................................................... 24

表 2-8 パブリック開発プログラム(PIMS 申請分) ............................................................ 24

表 2-9 MCHC の陣痛・分娩室 ............................................................................................. 29

表 2-10 PIMS 既存副変電所の状況 ...................................................................................... 34

表 2-11 イスラマバード市の気候 ......................................................................................... 38

表 2-12 PIMS で建設が予定されている焼却炉能力の検討 ................................................... 39

表 3-1 プロジェクトの概要 .................................................................................................. 43

表 3-2 本協力による新施設の概要 ....................................................................................... 48

表 3-3 主要な医療機材リスト .............................................................................................. 50

表 3-4 各室面積 .................................................................................................................... 54

表 3-5 主要室の清浄度レベル .............................................................................................. 63

表 3-6 給水量・給湯量概算 .................................................................................................. 64

表 3-7 構造仕様・主要内外部仕上げ・外部施設仕様リスト ................................................ 66

表 3-8 日本の無償資金協力の支援による医療機材リスト .................................................... 67

表 3-9 先方負担による医療機材リスト(優先順位 B 及び C) ............................................ 70

表 3-10 パ国の輸入品に関係する免税対象になる税金 ......................................................... 81

表 3-11 負担工事範囲 ........................................................................................................... 82

表 3-12 工場出荷前検査対象機材 ......................................................................................... 85

表 3-13 主な建設資材調達先 ................................................................................................ 87

表 3-14 初期指導操作、運用指導計画 .................................................................................. 88

表 3-15 ソフトコンポ―ネント業務実施工程表 ................................................................... 90

表 3-16 業務実施工程表 ........................................................................................................ 91

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xiv

表 3-17 日本側提案による新規雇用スタッフ案 ................................................................... 93

表 3-18 施設維持管理項目 ................................................................................................... 96

表 3-19 主な設備機器の定期点検項目内容(案)及び耐用年数 .......................................... 97

表 3-20 主要機材リスト ....................................................................................................... 99

表 3-21 パ国側負担経費 ..................................................................................................... 101

表 3-22 竣工後の運営・維持管理費(PC-1 ドラフト) ..................................................... 102

表 3-23 日本提案による新規職員の年間給与の推定(2020 年度) ................................... 102

表 3-24 PC-1(ドラフト)による新規職員の年間給与(2020 年度) ............................... 103

表 3-25 2016-2017 CH・MCHC の一般経費と、新施設の一般経費予測 .......................... 103

表 3-26 過去 5 年間の PIMS 予算 ...................................................................................... 106

表 4-1 定量的効果指標及び目標値 ..................................................................................... 110

表 4-2 定量的効果の目標値算出方法.................................................................................. 111

図 1-1 パキスタン保健医療サービス提供体制1 ..................................................................... 3

図 1-2 パ国の保健医療サービス提供体制2(ISLAMABAD CAPITAL TERRITORY) ..... 4

図 1-3 医師と看護師の海外就労登録者数(人数) ................................................................ 6

図 2-1 PIMS 全体組織 .......................................................................................................... 14

図 2-2 連邦保健省組織図 ..................................................................................................... 15

図 2-3 PIMS 組織図 .............................................................................................................. 16

図 2-4 CH の組織図 .............................................................................................................. 17

図 2-5 MCHC の組織図 ........................................................................................................ 17

図 2-6 PIMS の関連組織構成 ............................................................................................... 18

図 2-7 CH の診療サービスと既存施設 ................................................................................. 19

図 2-8 MCHC の診療サービスと既存施設 ........................................................................... 19

図 2-9 PIMS 全体図/過去無償資金協力事業による建設施設およびプロジェクトサイト位置

図 .................................................................................................................................... 32

図 2-10 現況図・埋設インフラと位置 .................................................................................. 33

図 3-1 既存棟と新施設の機能分担 ........................................................................................ 42

図 3-2 MCHC の既存 ER と新施設の ER の役割分担 ....................................................... 44

図 3-3 施設配置計画............................................................................................................. 51

図 3-4 平面計画 .................................................................................................................... 53

図 3-5 概要設計で検討された 2 種類の基礎型式(直接基礎と杭基礎) .............................. 58

図 3-6 パ国建築基準耐震条項(BCP-SP 2007)地震帯地図 ............................................... 59

図 3-7 電気設備計画概要 ..................................................................................................... 60

図 3-8 手術室の空調換気構成図 ........................................................................................... 62

図 3-9 給水・給湯ダイアグラム ........................................................................................... 64

図 3-10 配置図 ..................................................................................................................... 72

図 3-11 1 階平面図 1:300 ...................................................................................................... 73

図 3-12 2 階平面図 1:300 ..................................................................................................... 74

図 3-13 3 階平面図 1:300 ..................................................................................................... 75

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図 3-14 北立面図・南立面図 1:300 ..................................................................................... 76

図 3-15 西立面図・東立面図 1:300 ..................................................................................... 77

図 3-16 事業実施関係図 ....................................................................................................... 79

図 3-17 施設維持に係る運営体制 ......................................................................................... 95

図 3-18 PIMS BME 部門の組織図 ....................................................................................... 95

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略語表

略語 英語 日本語

AHU Air Handling Unit エアハンドリング・ユニット

AVR Automatic Voltage Regulator 自動電圧調整器

BCC Burn Care Centre 熱傷治療センター

BCP-SP-2007 Building Code of Pakistan Seismic Provision 耐震条項 (2007 年)

BME Bio-Medical Engineering バイオメディカルエンジニアリング

BMT Bone Marrow Transplant 骨髄移植

CADD Capital Administration and Development Division

首都行政開発課

CDA Capital Development Authority 首都開発局

CDWP Central Development Working Party 中央開発専門調査委員会

CE Cold Evapolator コールド・エバポレーター

CH Children’s Hospital 小児病院

CH OPD Children’s Hospital Outpatient Department 小児外来診療棟

CMT College of Medical Technology 医療技術短期大学

CMW Community Midwife コミュニティ助産師

CN College of Nursing 看護短期大学

CR Computed Radiography コンピュータ X 線撮影

CT Computed Tomography コンピュータ断層撮影

CSSD Central Sterile Supply Department 中央滅菌材料部門

CTG Cardiotocogram 分娩監視装置

DFID Department for International Development イギリス国際開発庁

DIC Disseminated Intravascular Coagulation 播種性血管内凝固症候群

DR Digital Radiography デジタル X 線撮影

E/N Exchange of Notes 交換文書

EAC Emergency and Accident Centre 救急センター

EAD Economic Affair Division, Ministry of Finance, Revenue and Economic Affiars

財務歳入経済省経済局

ECG Electrocardiogram 心電図

EIA Environmental Impact Assessment 環境影響評価

ETO Exercise Tax Office 州単位の徴税官庁

ER Emergency Room 救急部門

FATA Federally Administered Tribal Areas 連邦直轄部族地域

FBR Federal Board of Revenue 連邦歳入庁

FTN Free Tax Number 免税許可番号

G/A Grant Agreement 贈与契約

GDP Gross Domestic Product 国内総生産

GHSA Global Health Security Agenda グローバル・ヘルス・セキュリティ・

アジェンダ

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GIZ Deutshe Geselleschaft fuur Internationale Zusammenarbeit

ドイツ国際協力公社

HDU High Dependency Unit 重症ケア室

HIV/AIDS Human Immunodeficiency Virus / Acquired Immune Deficiency Syndrome

ヒト免疫不全ウイルス/後天性免疫不

全症候群

HMIS Hospital Management Information System 病院管理情報システム

HVAC Heating Ventilation and Air Conditioning 冷暖房空調設備

HPNDPG Health, Population and Nutrition Development Partners Group

保健・人口及び栄養開発パートナー

グループ

IH Islamabad Hospital イスラマバード総合病院

IMR Infant Mortality Rate 乳児死亡率(出生 1,000 対)

ICU Intensive Care Unit 集中治療室

JICA Japan International Cooperation Agency 独立行政法人国際協力機構

KfW Kreditanstalt für Wiederaufbau ドイツ復興金融公庫

KP Khyber Pakhtunkhwa ハイバル・パフトゥンハー

kVA Kilovolt-ampere キロボルトアンペア

kW Kilowatt キロワット

LAB Clinical Laboratory 臨床検査室

LHV Lady Health Visitor レディー・ヘルス・ビジター

LHW Lady Health Worker レディー・ヘルス・ワーカー

MCHC Maternal and Child Health Care Centre 母子保健センター

MCHC OPD Maternal and Child Health Care Centre Outpatient Department

母子保健センター外来診療棟

MDGs Millennium Development Goals ミレニアム開発目標

MFICU Maternal Fetal Intensive Care Unit 母体胎児集中治療室

MD Minutes of Discussions 討議議事録

MMR Maternal Mortality Ratio 妊産婦死亡率(出生 100,000 対)

MNCH Maternal, Neonatal, and Child Health 母子・新生児保健

MoNHSRC Ministry of National Health Services, Regulations and Coordination

連邦保健省

MoPD&R Ministry of Planning, Development and Reform

計画開発改革省

MRI Magnetic Resonance Imaging 核磁気共鳴画像診断

NICU Neonatal Intensive Care Unit 新生児集中治療室

NMR Neonatal Mortality Rate 新生児死亡率(出生 1,000 対)

ODA Official Development Assistance 政府開発援助

OHWT Overhead Water Tank 高架水槽

OJT On-the-Job Training 業務を通して行う職業訓練

OPD Outpatient Department 外来診療部

OT Operation Theatre 手術室

OTAS Obstetrical Triage Acuity Scale 産科トリアージ緊急度スケール

PB Punjab パンジャブ州

PC-1 Planning Commission-1 事業計画

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PDHS Pakistan Demographic and Health Survey パキスタン人口と保健調査

PEC Pakistan Engineering Council パキスタン技術者協会

PET Positron Emission Tomography 陽電子放出断層撮影

PICU Pediatric Intensive Care Unit 小児集中治療室

PIMS Pakistan Institute of Medical Sciences パキスタン医科学研究所

PNC Pakistan Nursing Council パキスタン看護評議会

PQ Pre-Qualification 入札参加資格事前審査

PR. Pakistani Rupee equals パキスタン ルピー

PUJ Pelvis and Ureter Junction 腎盂尿管移行部

SAARC South Asian Association for Regional Cooperation

南アジア地域協力連合

SDGs Sustainable Development Goals 持続可能な開発目標

SS Sub-Station 副変電所

STR Straightness 直進性

TB Tuberculosis 結核

TN Technical Notes テクニカルノート

U5MR Under-5 Mortality Rate 5 歳未満児死亡率 (出生 1,000 対)

UCG Ultrasound Cardiography 心臓超音波検査

UNFPA United Nations Population Fund 国際連合人口基金

UNICEF United Nations Children’s Fund 国際連合児童基金

UPS Uninterruptible Power Supply 無停電装置

USAID United States Agency for International Development

アメリカ合衆国国際開発庁

UTP Unshielded Twist Pair Cable シールドなしツイスト・ペア・ケーブ

VP Ventriculo Peritoneal 脳室-腹腔

WHO World Health Organization 世界保健機関

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第1章 プロジェクトの背景・経緯

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1

第1章 プロジェクトの背景・経緯

1.1 当該セクターの現状と課題

1.1.1 保健医療の現状と課題

パキスタン・イスラム共和国(以下「パ国」という)は、東はインド、北東は中華人民共和国、

北西はアフガニスタン、西はイランと国境を接する。国土面積は約 80 万 km2 であり、地形は北

西部から南東部へ次第に高度が下がる。ヒマラヤ山脈に水源をもつインダス川は、北部のカラコ

ルム山脈、ヒンズークシ山脈からの 5 つの支流が合流して本流となり、南端でアラビア海に流れ

出る。パ国の人口は約 2 億人を超え、2050 年には世界第 6 位の人口大国になると予想されてい

る。アジアと中東の接点に位置することから、地政学的重要性を有し、国際社会の平和と安定に

とって重要な地域である。

連邦政府の活動の中心であるイスラマバード首都圏の人口は約 200 万人で、うち約半数が都

市開発指定区域に、もう半数が農村開発指定区域に居住する。隣接するラーワルピンディは、古

くからパ国の産業、商業、軍事で重要な役割を担うパンジャブ州(Punjab、以下「PB 州」とい

う)の都市で、イスラマバード首都圏とは相互依存性が高い。

パ国は、南アジアにおいて乳児死亡率(Infant Mortality Rate: IMR、以下「IMR」という)、妊産

婦死亡率(Maternal Mortality Ratio: MMR、以下「MMR」という)が も高い国の一つであり、

5 歳未満児死亡率(Under-5 Mortality Rate: U5MR、以下「U5MR」という)は 79(出生 1,000 対)

で世界 197 ヵ国中 20 位の劣悪な状況にある5。パ国では国民の約 4 人に 1 人が貧困層と言われ、

ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(Universal Health Coverage: UHC)を実現するためには、生

活レベルに応じて、支払い可能な金額で利用できる公的医療機関の強化が重要である。しかし、

全国的に高まるニーズに対し、保健医療サービスは、質とアクセスの両面で追いついておらず、

医療施設の老朽化や人材の不足といった課題を抱えている。

パ国の平均余命は 66.48 歳で、男性 65.51 歳、女性 67.2 歳である6。同年の IMR7と U5MR8は、

それぞれ 62.9(出生 1,000 対)と 77.1(出生 1,000 対)で、さらに MMR9は 178(出生 100,000

対)であった。隣国アフガニスタン及びインドと比較してみると、平均余命にはあまり差がない

が、IMR と U5MR が特に高く、2015 年のミレニアム開発目標(Millennium Development Goals:

MDGs、以下「MDGs」という)の達成度も低くとどまった。

1.1.1.1 母子保健指標 連邦保健省(Ministry of National Health Services, Regulations and Coordination: MoNHSRC)の

MDGs の保健分野での達成状況について保健開発指標のうち、母子保健分野の評価指標の推移

を表 1-1 に示す。

5 国連児童基金「世界子供白書」子どもの死亡率に関する推計値, 2017 6 世界銀行,平均余命, (https://data.worldbank.org/indicator/SP.DYN.LE00.IN?locations=AF-PK-IN) 7 世界銀行, 出生 1,000 人当たり乳児死亡率(https://data.worldbank.org/indicator/SP.DYN.IMRT.IN?locations=AF-IN-PK 8 世界銀行, 出生 1,000 人当たり 5 歳未満児死亡率(https://data.worldbank.org/indicator/SH.DYN.MORT?locations=AF-IN-PK) 9 世界銀行, 出生 100,000 人当たり妊産婦死亡率(https://data.worldbank.org/indicator/SH.STA.MMRT?locations= AF-IN-PK

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2

表 1-1 MDGs 母子保健評価指標の推移

[出典: 国連児童基金(United Nations Children’s Fund :UNICEF 以下、「UNICEF」という。)

「Data: Monitaring the situation of children and women 2018」10]

パ国では 2015 年までに MMR を 140 とするため、熟練した保健医療従事者の介助による分娩

及び、妊婦健診受診率の増加に取り組み、2011 年の地方分権化以降も、MMR は減少傾向にある。

しかしながら、貧困層に対する社会保障整備や保健医療施設数の適正化及び保健医療人材確保

が遅れており、結果的に目標数値には至らなかった。パ国の「人口と保健調査(Pakistan

Demographic and Health Survey 2017 - 2018 : PDHS)」によると、分娩に際し、88%の産婦が熟練し

た保健医療従事者の介助を受けており、66%だった 2013 年より、改善している。ただし、妊娠

中に必要とされる 4 回以上の健診を受けた妊婦は、都市部で 71%、農村部では 42%と地域差が

非常に大きいことが確認された11。特に、農村部では、診療所の不足と交通インフラの整備の遅

れから保健医療サービスへのアクセスが悪く、たとえアクセス可能な場合でも、信仰に根ざす習

慣から、女性一人での外出や男性医師による診察が難しいケースが少なくない。妊婦健診による

ハイリスク妊娠の早期発見と早期対応及び、妊娠中と出産後の継続的なフォローができないこ

とが、症状の悪化を招き、妊産婦死亡につながっている。MMR の改善にむけて、保健医療施設

へのアクセス改善による異常の早期発見、早期対応及び重症化した場合の適切な処置による救

命のために、病院の救急部門と集中治療部門の強化が必要である。

U5MR においてはその 58%を新生児期の死亡が占めている。新生児期の死亡原因は新生児仮

死が約 30%、新生児敗血症/髄膜炎が 28%で、早期産の合併症 11%、新生児肺炎 6%、その他、

と続く。新生児期以降の乳児の死因として代表的な疾患は、敗血症 19%、下痢性疾患 17%、肺

炎 17%、髄膜炎 8%等である12。

小児患者についても妊産婦と同様に、農村部では保健医療サービスへのアクセスが悪く、都市

部でも、第 3 次レベルの小児専門病院が、イスラマバード首都圏に PIMS の小児病院(Children’s

Hospital: CH、以下、「CH」という)1 ヵ所しかないため、CH の外来は、統計上、年間 33 万人を

超える利用者を記録している13。U5MR 改善には、現在、その半数以上を占める新生児期の死亡

を防ぐことが不可欠である。ハイリスク新生児の治療とケアを行う専用の救急救命センターや

新生児集中治療室(Neonatal Intensive Care Unit: NICU、以下「NICU」という)などの施設を整備

するとともに、重症患児の治療や看護ができる医療人材を育成する必要がある。

10: 妊産婦死亡率(出生 100,000 対)(Maternal Mortality Ratio:MMR)、新生児死亡率(出生 1,000 対 Under-5 Mortality Rate)(Neonatal Mortality Rate:NMR)、乳児死亡率(出生 1,000 対)(Infant Mortality Rate:IMR)、5 歳未満児死亡率(出生 1,000 対)(Under-5 Mortality Rate:U5MR) 11 Pakistan Demographic and Health Survey 2017-18, Key Indicators Report National Institute of Population Studies Islamabad, Pakistan P.26-28 12 UNICEF, Situation analysis of Children in Pakistan 2017, P.50 13 PIMS 統計局,Statistics of CH PIMS year 2016, 2017

1990年 1995年 2000年 2005年 2010年 2015年MDGs 目標

2015年 実際値

2016年 2017年

MMR 431 363 306 249 211 140 178 - -

NMR 63.6 66.3 60.1 53 50.6 45.5 46.3 45.2 44.2

IMR 106.4 97.4 87.9 79.8 72.8 40 64.6 62.9 61.2

U5MR 139 126.2 112.6 100.9 90.8 45 79.5 77.1 74.9

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3

1.1.1.2 保健医療サービス提供体制

パ国の保健医療サービスは、図 1-1 のとおり、公的機関と民間事業者より提供されている。公

的機関として各州政府の保健局管轄下にある第 1 次から第 3 次までの医療施設のほか、国防省下

の軍病院、連邦政府の研究機関がある。非公的機関としては、民間事業者が経営する総合病院、

個人クリニック、薬局、各種検査を行うラボラトリーが都市部を中心に開業されているほか、宗

教系の慈善団体や NGO が運営するクリニック、ホメオパシーや伝統的ヒーラーによる施術を行

う施設も存在する。

図 1-1 パキスタン保健医療サービス提供体制1 (出典:現地調査結果より、調査団作成)

公的機関による保健医療サービスは第 1次レベルから第 3次レベルの三層の体制で提供される。

(図 1-2 )

パ国の特徴として第 1 次レベルにおけるレディー・ヘルス・ワーカー(Lady Health Worker: LHW、

以下「LHW」という)とレディー・ヘルス・ビジター(Lady Health Visitor: LHV、以下、「LHV」

という)及びコミュニティ助産師(Community Midwife: CMW、以下、「CMW」という)による、

地域に密着した、基本的保健サービス活動の展開が挙げられる。LHW は、第 2 次レベル以上の公

的施設で実施される 3 ヵ月間の講義と実習及び、コミュニティでの 1 年間の実地トレーニングに

よって養成される。各州政府の保健局から給与が支給され、就業後も、毎年 15 日間、リフレッシ

ュトレーニングを受けることになっている。衛生状態の改善や家族計画などで著しい効果を上げ

る地域もある一方、LHW の役割について、地域住民の不理解と、女性の社会活動を良しとしない

習慣から、家庭訪問の拒否や暴力の対象となるなど、解決すべき課題もある。LHV は助産に関す

る知識と技術を中心に 1年間のトレーニングを受けたのち、第 1次レベルの保健施設に配属され、

コミュニティでの保健医療活動のほか、LHW と CMW の指導も行う。2006 年より、連邦保健省

は、近代的な専門教育を受けずに分娩介助を行っていた伝統的分娩介助者に対し、基本的な解剖

生理学のほか救急時の正しい処置方法などを習得するためのトレーニングを開始した。現在は、

各州政府の保健局がその責任と役割を引き継ぎ、同トレーニング修了者は CMW に認定される。

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4

図 1-2 パ国の保健医療サービス提供体制2(ISLAMABAD CAPITAL TERRITORY) (出典:現地調査結果より、調査団作成)

2015 年の保健医療施設の数については、下表 1-2 のとおりである。第 3 次レベルから、第 2 次

レベルの基礎保健ユニットまでは医師が診療を行うが、第 1 次レベルでは、LHW、LHV と CMW

がケアを行う。医師のいる施設は 1 万を超えるが、人口の増加に加え、医療従事者が均等に、ま

た十分な人数が配置されていないことと、予算不足の結果、医薬品や検査用試薬の不足、故障し

た救急車や医療機材の修理困難などが生じ、質の高い医療サービス提供が難しい。全国の総病床

数は 123,394 で 1 病床あたりの人口は 1,597 人である。基礎保健ユニットは 10 年間で 1,000 以上

増加しているが、連邦保健省は一つの基礎保健ユニットがカバーすべき人口を 1,000 人としてお

り、実際の人口増加に施設整備が追い付いていない。病院数も少しずつ増加しているが、1985 年

以降、人口は 1 億人以上増加し当時の 2 倍以上となっているにもかかわらず、高次レベルの公立

病院は設立されておらず、民間においても、幅広い診療科を持つ総合病院は増えていない。

表 1-2 パ国内の保健医療施設数

(出典:国家統計局データ 2012-13、2016-20114) *2015 年に母子保健センターが減少したのは、ハイバル・パフトゥンハー州(以下「KP 州」と

いう)で組織改編が行われたためである。

14 国家統計局, Health Institutions, Beds and Personnel http://www.pbs.gov.pk/sites/default/files//tables/Health%20Institution%20Beds%20and%20Personnal.pdf

種類 1995 2000 2005 2010 2015 2016-2017 ベット数

病院 827 876 919 972 1,167 1,201 123,394

診療所(Dispensaries) 4,253 4,635 4,632 4,842 5,695 5,802

基礎保健ユニット 4,986 5,171 5,334 5,334 5,464 N/A

母子保健センター 859 856 907 909 733* 731

農村保健センター 498 531 556 577 675 N/A

結核センター 269 274 289 304 339 N/A

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1.1.1.3 保健医療施職種別職員数の推移 医師、歯科医、看護師、LHV の数は増加を続けており、人口 1,000 名あたりの 1 人の医師、

歯科医師、看護師の数は増えている。政府統計「Government of Pakistan 2017-18」における、医

師の人口比率は 1:957、歯科医 1:9,730、そして病院ベッド 1:1,580 となっており、数値的

には WHO の目標とする医師一人当たりの人口比 1:1,000 を昨年より達成している(表 1-3)。

ただし、実際には医師と看護師の配置に都市偏重の課題があり、農村部での医師不足は解決し

ていない。

表 1-3 保健医療人材 (人数)

保健医療人材/年 2012 2013 2014 2015 2016 2017

登録医師 160,880 167,759 175,223 184,711 195,896 208,007

登録歯科医師 12,692 13,716 15,106 16,652 18,333 20,463

登録看護師 82,119 86,183 90,276 94,766 99,228 103,777

医師1名当たりの人口 1,123 1,099 1,073 1,038 997 957

歯科医師1名当たりの人口 14,238 13,441 12,447 11,513 10,658 9,730

1病床当たりの人口 1,616 1,557 1,591 1,604 1,592 1,580

(出典: 国家統計局データ 2012-13、2016-201715)

看護師の数も増加傾向にあるが、人口 1,000 あたりの看護師、助産師数を、周辺国と比べる

と、パ国の数値はアフガニスタンとともに低く、2015 年には、低下している(表 1-4)。

表 1-4 看護師・助産師数の周辺国との比較(人口 1,000 に対する看護師・助産師数)

国/年 2010 2011 2012 2013 2014 2015

パキスタン 0.59 0.44 - - 0.60 0.50

アフガニスタン - - - - 0.36 -

インド 1.53 1.70 - 2.04 - 2.09

ネパール - - 1.56 1.81 2.04 -

ブータン - - 0.99 1.05 1.25 1.38

バングラデシュ 0.18 0.19 0.21 - 0.24 0.26

(出典: 世界銀行、201816)

さらに、パキスタン国立銀行の報告によると、2000 年以降、国外への知的人材の流出(頭脳

流出)が増加しており、そこには、多くの保健医療人材も含まれている。海外就労希望者の増

加の原因は、パ国内の報酬構造及び重労働への不満とされる。人口当たりの看護師の割合に改

善がない状態が続いており、国立銀行より、この状態を是正するため短期・中期的な政策介入

の必要性が提言されている。

15 同上 16 銀行, Nurses and midwives (per 1,000 people), (https://data.worldbank.org/indicator/SH.MED.NUMW.P3?locations=IM)

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図 1-3 医師と看護師の海外就労登録者数(人数) (出典:パキスタン国立銀行「StaffNote 01/18 パキスタンの保健セクターの状態」移民及び国外雇用局17)

1.1.1.4 保健人材育成 学校制度は、6 歳から 15 歳の 10 年間の義務教育があり、5 年間の初等教育のあと中等学校

で 3 年間、初級高等学校で 2 年間の教育を受ける。義務教育終了後、2 年間の上級高等学校を

経て、カレッジと呼ばれる 2 年~3 年間の単科大学(日本の単科短期大学に相当)や総合大学

(大学・学部によって、就学期間は異なる)などに進学する18。看護師、臨床検査技師、臨床工

学技士などは、初級高等学校修了者を対象に 1〜3 年の職業教育で養成される。カレッジには、

上級高等学校の課程(2 年)と統合する形で、2〜3 年制の学士課程が設置されている。大学に

は、4〜5 年制の学士課程が置かれ、さらに学士号取得者を対象とする 2 年制の修士課程、修士

号取得者対象の 3 年制の博士課程が置かれている19。

その他、職業教育機関には初級高等学校修了証の取得者を対象とする 1 年の課程が置かれて

おり、修了者には訓練修了証が付与される。

医師の養成

上級高等学校修了者は公立または私立の大学医学部で 5年間の医学教育を受けたのち研修医

となる。へき地の診療所に赴任した場合でも、1 年間に 3~6 ヵ月、州政府保健局から、教育病

院に指定されている都市の医療機関で、専門医となるための研修を受けることができる。

看護師の養成

看護学校は各州政府保健局の看護課の管轄下にあり、地域の中核病院付属看護学校、医療従

事者養成のための教育病院付属看護学校などで 3 年間、医科系大学看護学部では 4 年で看護師

の養成が行われている。教育機関の数は専門学校が 9 割以上を占めている。助産師資格は 1 年

17 パキスタン国立銀行, SBP Staff Notes 01/18, State of Health Sector in Pakistan P.8, 2018 18 日本外務省 国・地域の詳細情報 (https://www.mofa.go.jp/mofaj/toko/world_school/01asia/infoC11000.html) 19 パキスタン医師・歯科医師会, Human resource training guidelines (http://www.pmdc.org.pk/Portals/0/admission%20housejob%20regulations.pdf), パキスタン看護師教会, Roules & Regulation for mursing educational institutions, 2001

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間の教育訓練で取得可能となる。日本と異なり、パ国の助産師資格は看護師免許保持を前提と

はしていないため、助産師資格のみの取得が可能である。

その他のパラメディカルの養成

臨床検査技師、臨床工学技士、手術技術者、麻酔補助者など、専門学校に 1 - 2 年間の教育課

程がある。

1.1.2 開発計画

1.1.2.1 Pakistan Vision 2025(以下「国家開発政策 2025」という) パ国政府は、下記 7 項目を戦略の柱として位置づけ、MDGs 及び SDGsに沿った国家開発政

策 2025 を発表した。

図 1-6 開発展望概念図

(出典:Pakistan Vision 2025)

独立後 100 周年となる 2047 年までに、パ国を経済的に世界のトップ 10 の国家とするため、

急成長が可能な基盤づくりを目標に掲げている。主な特徴として、建築、土木などによるハー

ドインフラ強化の一方、人的資源とガバナンスに投資することによって、「人材」や「しくみ」

といった、ソフト面の開発を重視するとしている。

1.1.2.2 保健医療分野の課題と開発計画 保健医療セクターの開発計画である国家保健政策 2016-25 の中では、「手頃な価格での質の

良い保健サービスへの普遍的なアクセスを通じて、すべての国民、とりわけ女性と子どもの健

康を改善できるよう、柔軟で対応力のある保健システムの整備と運用に努め、MDGs を達成す

るとともに、対外的な保健衛生の責任を果たすこと」を目標に掲げている。この達成のために

以下 8 項目の課題について、解決に向けた戦略を立てている(表 1-5)。

(1)保健財政 (5)保健行政

(2)保健医療サービスの提供 (6)必須医薬品

(3)保健医療の人的資源 (7)セクター間の連携

(4)保健情報システム構築 (8)グローバルヘルスに係る責任

ひと第一:社会資本と人的資本の開発と女性の

エンパワメント

成長:先住民も含めた包括的かつ持続的な成長

民主的統治:公共部門システムの改革と近代化

安全保障:エネルギー、水、食料の安全

起業家精神:民間セクターと起業家精神主導の

成長

知識経済:競争力を高める付加価値による知識

経済の成長

接続性:交通インフラの近代化と地域のアクセ

ス改善

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表 1-5 保健医療分野の課題と解決のための戦略

課題 戦略

(1) 保健財政 政府の医療費への支出が少ない(GDPの0.6%に

しか過ぎない) 保健に関わる社会保障制度のための予算確保

が十分でない

貧困層の社会保障制度(最近の国民健康保険制

度を含む)への資金提供を継続し、医療費への支

出をGDPの3%とすることを目指す。また、各州

政府は保健機関に財政の自立を与える仕組みを

開発する。

(2) 保健サービスの提供 不十分なインフラとサービスから、第1レベル

の公的保健施設の利用者は人口の20%に達し

ない 人的資源の不均衡と技術不足によりヘルスプ

ロモーション活動が進まない。また医療提供ニ

ーズに応えていない

民間部門との連携の努力を続けながら家庭医

療サービスを提供する。その際、喫煙、薬物、

臓器提供及び移植、安全な輸血、環境保護、食

品安全などに関連する公衆衛生法を遵守させ

る。また、災害(気候変動、自然災害、病気の

流行など)に対応可能な総合的な医療制度を整

備する。

(3) 保健医療の人的資源 職場満足度の低さから離職が進み、医師・看護

師・歯科医師等が不足しており、特に保健医療

従事者の農村部への配置が進んでいない 専門教育のカリキュラムの更新がされていな

い 保健医療従事者の実績の審査の制度に弱点が

ある

専門教育の内容を見直し、保健医療従事者数を

増やす。必要人数や不足人数が直ちにわかるよ

うデータベースを作成する。公衆衛生、統合医

療、家庭医学の分野の人材を増やすためのシス

テムを構築する。その際、農村部勤務を魅力的に

するためのインセンティブを与える。

(4) 保健情報システム構築 情報システムの精度、品質、信頼性、意思決定

者との連携が欠けているため、実用的でなく、

様々な健康情報システムが断片的で、照合さ

れた健康指標データが、矛盾する結果をもた

らすことがある

国、州、地区のレベルで情報システムを強化し、

効果的で統合された疾病監視を行う。特に早期

警戒システムを重視する。

(5) 保健行政 公的及び民間部門の医療行為、薬剤使用等を

監督・規制する能力が弱い 保健機関のガバナンスを管理する統一的なア

プローチがない

専門家の助言と保健サービス計画を通じて保健

システムの管理を再構築する。また、民間セクタ

ーは、医療提供におけるパートナーとみなし、適

切なメカニズムを通じて関与/規制する。

(6) 必須医薬品及び技術 医薬品の品質と価格、処方箋等が適切ではな

い 保健薬理学、薬理疫学などの多面的なアプロ

ーチを採用した評価は、まだ開始されていな

各州政府は、国際基準に従って、技術、機器、医

療の選択、品質、価格、使用状況を注意深く監視

するとともに、医薬品関連のガイドラインを作

成する。また、その基本となる法律整備を行う。

(7) セクター間の連携 セクター間の連携が薄い

政府は、さまざまな分野の共同努力を通じて、ア

ドボカシー、計画、法律、規制、行動変容のコミ

ュニケーション、情報交換、エビデンスに基づく

決定に着手する。

(8) グローバルヘルスに係る責任 国際公衆衛生の安全保障を達成する必要があ

るが、国際保健規則やグローバルヘルスと安

全保障規定のような条約が、連邦及び州レベ

ルでまだ適切に周知されていない その他の条約や規約の運用にも、調整作業が

行われていない

国際的な疾病監視と発生時の対応のため、セク

ター間及び州と連邦省の間の調整の仕組みを確

立する。ポリオ撲滅に係る活動継続と他の予防

可能な疾病の監視を行う。

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1.1.3 社会経済状況

1.1.3.1 保健・医療財政 政府の医療費支出は緩やかながら、持続的に上昇している。過去 10 年間、国内総生産(Gross

Domestic Product: GDP、以下「GDP」という)の 0.5〜0.8%が保健医療に費やされている。ただ

し、これらの割合は、基本的かつ救命が可能なサービスを提供するために必要とされる世界保

健機関(World Health Organization:WHO、以下「WHO」という)のベンチマーク(GDP の少な

くとも 6%)よりも低い。2015 年までの間、支出は、前年同期比 9%増の 1,457 億 7,000 万ドル

である。2015-16 年の間、総支出は 13%増加した。世界銀行によれば、2015 年パ国の 1 人当り

の医療費は 37.9 ドルで、WHO の低所得国のベンチマークである 86 ドルを大幅に下回ってい

る。

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1.2 無償資金協力の背景・経緯及び概要

パ国は、MMR が高い状態が続いているが、特に、IMR と U5MR については、他の南アジア諸

国と比べて明らかに高く、その改善が急務である。これを進めるため、パ国政府は国家開発政策

2025 の中で、社会的資本と人的資本の開発を政策の柱とし、保健セクター開発計画(the National

Health Vision 2016-25)において保健インフラの整備を推進している。

表 1-6 南アジア地域の IMR (出生 1,000 対)

国/年 2013 2014 2015 2016 2017

パキスタン 68.1 66.4 64.6 62.9 61.2

アフガニスタン 58.7 56.7 56.9 53.2 51.5

インド 39.1 37.2 35.3 33.6 32.0

ネパール 32.6 31.2 29.9 28.8 27.8

ブータン 29.8 24.4 27.6 26.5 25.6

バングラデシュ 33.2 31.5 29.8 28.3 26.9

(世界銀行, 201820)

表 1-7 南アジア地域の U5MR (出生 1,000 対)

国/年 2013 2014 2015 2016 2017

パキスタン 84.3 81.1 79.5 77.1 74.9

アフガニスタン 79.2 76.0 73.1 70.4 67.9

インド 49.5 46.7 44.1 41.6 39.4

ネパール 40.3 38.3 36.8 35.0 33.7

ブータン 36.4 34.8 33.4 32.0 30.5

バングラデシュ 41.0 38.6 36.4 34.3 32.4

(世界銀行, 201821)

協力対象の PIMS は首都イスラマバードに位置し、総合病院ほか、専門病院群と保健医療人材

の養成校から構成される複合型の公的第 3 次医療機関である。人口増加が著しい首都周辺に加

え、隣接する PB 州のほか、KP 州など医療機関の少ない遠方の州からの患者受入も行っている。

日本政府は 1985 年の PIMS 設立当初から、パ国を代表する同機関を支援し、CH、母子保健セン

ター(Maternal and Child Health Care Centre: MCHC、以下「MCHC」という)及び、看護短期大学

(College of Nursing: CN、以下「CN」という)と医療技術短期大学(College of Medical Technology:

CMT、以下「CMT」という)の施設と機材整備を行ってきた。

患者数の急激な増加に対して手術室や病床が不足しており、適切な保健医療サービス提供が

困難な状況である。既存の手術室では、年間約 5,800 件の帝王切開や、約 5,000 件にのぼる小児

に対する手術を実施しているほか、新生児と乳児のための重症ケア室(High Dependency Unit:

HDU、 以下「乳児 HDU」という)や産婦人科病床では複数の患者が 1 台のベッドを共有してい

る。医療機材については、過去の無償資金協力やフォローアップ協力で整備された機材の一部は

現在も使用されているが、近年では、経年劣化等に伴い故障が頻発し業務に支障をきたしている。

以上の状況を改善するため、パ国政府より我が国に対して、無償資金協力を活用した、MCHC

と CH の施設及び機材整備の支援が要請された。

20 世界銀, 乳児死亡率(https://data.worldbank.org/indicator/SP.DYN.IMRT.IN?locations=AF-BT-IN-NP-LK-PK) 21 世界銀行, 5 歳未満児死亡率 (https://data.worldbank.org/indicator/SH.DYN.MORT?locations= AF-BT-IN-NP-LK-PK)

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要請を受けて JICA は準備調査団の派遣を決定し、2018 年 4 月より準備調査が開始された。

第 1 回現地調査の結果、ハイリスク妊産婦と新生児のケアに主眼を置いた新施設建設計画と

調達機材素案を策定した。第 2 回現地調査においてパ国側と協議し、帰国後、概略設計を行っ

た。準備調査報告書(案)の説明を経て、2018 年 11 月に協議議事録の署名がされた。同意され

た事業概要は以下の通り。

表 1-8 合意された事業概要 規模 病床数 150 床(集中治療 50 床、小児病棟 50 床、産婦人科 50 床)

診療科目 ハイリスク妊産婦・褥婦及びハイリスク新生児・乳児に主眼をおいた産婦人科と小児科

施設 1) 救急診療部門

2) 手術/集中治療室部門

3) 病棟部門

4) その他(管理室、機械室、厨房、洗濯室など)

機材 ・上記施設に必要な医療機材、一般家具等

・医療機材にかかるソフトコンポーネント

(出典:調査団作成)

1.3 我が国の援助動向

パ国の保健医療分野への、我が国の無償資金協力は、1980 年のシンド州医療機材整備に始ま

り、2014 年度までの累計は、草の根無償を除き、約 231 憶 9,300 万円(交換文書ベース)であ

る。このうち約 30%は、パ国及び周辺国で、未だ深刻なポリオ及び新生児破傷風撲滅のための

ワクチン確保と確実な接種の支援に充てられてきた。これは当初から UNICEF との協働で進め

られてきたが、2011 年より、ポリオの予防活動でパ国政府が一定の目標を達成した場合、ビル

&メリンダ・ゲイツ財団が債務返済を肩代わりする「ローン・コンバージョン」手法を取り入れ

た有償資金協力も実施されている。外務省の「対パキスタン・イスラム共和国国別開発協力方針

(2018 年 2 月)」の中で、保健については、「ポリオ撲滅に向け引き続き支援を行う」旨が明記

されており、2018 年 12 月で終了した有償資金協力「ポリオ撲滅事業(フェーズ 2)」も活動の範

囲を広げた継続案件の実施計画のもと、引き続き、他の援助機関と効果的に連携しながら、支援

が続けられてゆく予定である。表 1-9 に、2000 年以降に開始された、保健医療分野の無償資金協

力の実績及び、同分野の技術協力の実績を示す。

1985 年に設立された PIMS に対し、日本は早い時期から、母子保健指標の改善に向け、CH と

MCHC 及び、CN、CMT の建設と機材調達などハード面の整備を支援してきた。さらに、ソフト

面の強化として、看護教育分野と母子保健分野の人材強化を目的とした技術協力プロジェクト

を展開している。

対パキスタンの国別開発協力方針の中で、ポリオ撲滅とともに、具体的な課題として示されて

いる「MDGs 達成の遅れが指摘されていた母子保健を中心とした保健システム強化」において、

本プロジェクトの実施により、以前日本が整備した CH と MCHC の、現在の状況に合わせた再

整備がなされることになる。

PIMS を含むパ国の保健分野において、これまで実施された我が国の援助実績を示す。(表 1-

9)

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12

表 1-9 保健分野における日本の政府開発援助

案件名 実施年度 概要 金額

(億円)

無償

資金協力

カラチ小児病院改善計画 2012-2014 シンド州カラチ小児病院の新

生児治療室、手術室などの施

設拡充と医療機材の整備 14.23

イスラマバード小児病院 改善計画 (PIMS)

2005-2007 国際的医療基準に基づく手術

室の改修・増設、排水処理施

設の修繕、医療機材の整備 6.47

イスラマバード小児病院 整備計画 (PIMS)

2003-2005 集中豪雨被災の機能回復。空

調ほか設備機器の交換・修繕

雨水・排水設備の改善等 6.25

新生児破傷風予防接種 拡大計画

2003-2004 新生児破傷風ハイリスク地域

に対するワクチン接種必要機

材の調達 2.40

バロチスタン州基礎医療機材 整備計画

2003 バロチスタン州第一次レベル

の医療施設の機材整備 2.89

パキスタン看護師・医療技術者

養成学校建設計画 (PIMS)1985-1987 PIMS内にCNとCMTの建設及

び教育用医療機材調達 25.1

パキスタン医科学研究所

(PIMS)母子保健センター 建設計画 (PIMS)

1985-1987 PIMS内にMCHCの建設と医

療機材の調達 24.64

イスラマバード小児病院建設 (PIMS)

1982-1984 PIMS内にCHの建設と医療機

材の調達 43.0

有償

資金協力

ポリオ撲滅事業(フェーズ 2) 2016-2018 ポリオワクチンの調達 (ゲイツ財団と連携) 62.90

ポリオ撲滅事業 2011-2013 ポリオワクチン調達及びキャ

ンペーン活動のための資金支

援(ゲイツ財団と連携) 49.93

技術協力

定期予防接種強化プロジェクト 2014-2018

KP州3県における予防接種

拡大計画 / ポリオ対策プロ

ジェクトで得られた成果の

他県への展開

根拠に基づく意思決定及び管理

のための県保健情報システム プロジェクト

2009-2013 県保健情報システムの開発と

全国展開のための連邦実施機

関の能力強化 3.2

結核対策プロジェクト 2006-2009

モデルサイト4県において行

政官を含む医療従事者に対す

る研修、記録・報告の強化な

どの活動を支援

3.2

看護教育プロジェクト アフターケア (PIMS)

2000-2002 同プロジェクト終了後8年目

のアフターケア ―

母子保健プロジェクト (PIMS)

1996-2001 母子保健のための人材育成 ―

看護教育プロジェクト (PIMS)

1987-1992

CNの、専門看護師養成課程

の教員に、カリキュラム、

教育技法及び教材に係る開

発・改善の技術強化

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1.4 他ドナーの援助動向

パ国では、保健分野の開発を体系的に、また効果的に支援するため、WHO を中心に、保健・人

口及び栄養開発パートナーグループ(Health, Population and Nutrition Development Partners Group:

HPNDPG)が設立され JICA もメンバーの一員となっている。母子保健と小児の健康に関わる代表

的な援助は下表 1-10 のとおり。

表 1-10 ドナー支援状況

機関名 案件名 実施年度

期間 金額

援助 形態

概要

世界保健機関 (WHO)

レディー・ヘルス・ワー

カー育成プログラム 2006 年よ

り継続中N/A 無償 LHW の研修支援

国連児童基金

(UNICEF)

母子保健プログラ予防接

種支援プログラム 感染症対策プログラム 保健情報管理システム等

2017年よ

り継続中 N/A 無償

左記プログラムの

研修実施、教材作成

支援、消耗品の支援

国連人口基金

(UNFPA)

女性をエンパワーする助

産師へのエンパワープロ

グラム

2014年よ

り2018年まで

N/A 無償 助産師のコミュニ

ケーションの能力

強化研修の支援

ドイツ国際協

力公社(GIZ) 社会的健康保護を含む社

会保障サポート

2016 年よ

り 2020 年

まで

5590 万ユー

ロ 無償

社会保険と健康保

険システム整備に

関する行政能力強

ドイツ復興金

融公庫 (KfW)

農村部家族計画リプロダ

クティブヘルスプログラ

2016年よ

り2019年まで

1 万 4500 ユ

ーロ 無償 産科セット、栄養補

助食品、避妊薬 啓発キッドの支援

FATA 連邦直轄部族地域

基礎保健プログラム

2010 年よ

り 2014年まで

538 万ユー

ロ 無償 FATA の住民の健康

改善。母子保健強化

イギリス国際

開発庁 (DFID)

地方保健栄養プログラム

2013年よ

り2019年まで

1億6000万 イギリスポ

ンド 無償

PB 州及び KP 州の

リプロダクティブ

ヘルス改善

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第2章 プロジェクトを取り巻く状況

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第2章 プロジェクトを取り巻く状況

2.1 プロジェクトの実施体制

2018 年 7 月 25 日にパ国で実施された選挙の結果をうけ 9 月後半にプロジェクトの監督官庁の

変更があった。PIMS は、調査開始時は首都行政開発課(Capital Administration and Development

Division: CADD、以下「CADD」という)傘下にあったところ、監督官庁が連邦保健省となった。

PIMS は、パ国の首都中心部において 1985 年に開院した。同研究所は国内有数の公立第 3 次医

療機関の役割を有しており、イスラマバード市とその周辺地域の住民にとって欠かせない存在で

ある。PIMS は複合的な病院施設であり、イスラマバード総合病院(Islamabad Hospital: IH、以下

「IH」という。)、 CH、MCHC、熱傷治療センター(Burn Care Centre: BCC、以下「BCC」という。)、

心臓診療センター、乳がん検査センター、臓器移植センター及び骨髄移植(Bone Marrow Transplant:

BMT、以下「BMT」という)センターなどから成る。また、医療従事者育成のために CN や CMT

が併設されており、臨床実習を PIMS の各病院で実施している。

検査部門や供給部門は、各施設で不足する機能を必要に応じてセンター間で補い合っている状

況である。

図 2-1 PIMS 全体組織

(出典: PIMS)

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2.1.1 組織・人員

監督機関・実施機関

本プロジェクト実施に係る監督機関は、連邦保健省で、実施機関は、PIMS である。

連邦保健省の組織図は図 2-2 のとおりである。連邦保健省は、計画開発改革省(Ministry

of Planning Development & Reform: MoPD&R、以下「MoPD&R」という)の中央開発専門調

査委員会 (Central Development Working Party: CDWP、以下「CDWP」という)での本案件の

承認を支援するとともに、実施決定後は、実施機関である PIMS を監督する。PIMS の全体

組織図は図 2-3 を参照。

図 2-2 連邦保健省組織図 (出典: 連邦保健省資料より調査団作成)

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実施機関の組織体制

PIMS は首都イスラマバードの市中心部に位置し、その敷地内には、IH、CH、MCHC、BCC、

心臓血管センター、乳がんセンター、臓器移植センター及び BMT センターなどがあり、それ

ぞれ独立した外来、診療、管理部門が備わっている。

図 2-3 PIMS 組織図

(出典: PIMS)

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この中で、今回の協力対象である CH と MCHC の組織図はそれぞれ、図 2-4、図 2-5 の通り。

図 2-4 CH の組織図 (出典: PIMS)

図 2-5 MCHC の組織図

(出典: PIMS)

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PIMS 内の既存の医療施設の構成を図 2-6 に示す。

PIMS の診療施設の中で、IH、CH、MCHC、BCC 及び心臓血管センターは、半自治(semi-

autonomous hospitals)で運営されており、各施設で財務及び人事管理がされている。乳がんセン

ター、臓器移植センター及び BMT センターは IH の予算で運営される。また、これらには病棟

は付随していない。新たな専門疾患センターとして、血液疾患センターと神経科学センター設立

が CADD に承認され、血液疾患センターは具体的な整備が開始されている。

(出典:PIMS 資料より調査団作成)

図 2-6 PIMS の関連組織構成

診療サービスと要員

PIMS の各医療施設のうち、IH、CH、MCHC、BCC、心臓血管センターには、一般外来と救

急外来があり、直接患者を受け入れる。その他の専門疾患センターについては、最初に IH、CH、

MCHC、他の医療機関を受診し、そこから搬送される。

外来診察は、月曜日から土曜日までの 08:00~14:00。時間外診療は 14:00 以降、翌日の 08:00

まで、救急外来で受け付ける。

協力対象である CH の診療サービスと既存の施設は図 2-7 のとおり。MCHC の診療サービ

スと既存施設は図 2-8 である。

高次医療機関として、各地から搬送されてくる重症患者や希少疾患、難病の患者を受け入れ

ているが、第 1 次、第 2 次レベルの保健医療施設へのアクセスが悪い地域も多いため、当該地

域の住民は、それらの施設を受診することなく、直接、第 3 次レベルの PIMS に来院する。ま

た、イスラマバード首都圏の住民は、第 1 次・2 次レベルの施設にアクセスがよくても、より

診療設備のよい PIMS の受診を希望するため、軽症な患者の利用も多い。

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CH はほぼすべての診療科を網羅しているが、遺伝子治療、胎児治療などは行っていない。

また、日本と比較し、慢性疾患患者の長期入院が非常に少ないこともあり、病院内での学習支

援などはない。

(出典:PIMS 資料より調査団作成)

図 2-7 CH の診療サービスと既存施設

(出典:PIMS 資料より調査団作成)

図 2-8 MCHC の診療サービスと既存施設

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協力対象施設である CH と MCHC の職員数の推移を表 2-1、表 2-2 に示す。

CH、MCHC とも、患者数の増加に反比例して、職員数が減少しており、看護職員については、

新卒者の採用がない。CH と MCHC は、毎年、600 名の職員を申請しているが、予算が認可され

るのはその半数以下となっている。看護学生、助産学生には、病院実習中、25,000 パキスタンル

ピー(以下「PR.」という)ほど賃金が支払われており、職員数にその人数は示されないが、重

要な労働力となっている。

看護職員は基本的に 3 交替勤務であり、日勤 08:00~14:00、準夜勤 14:00~20:00 深夜勤 20:00

~翌朝 08:00 までである。学生も準夜勤、深夜勤帯に実習を行うが、NICU ほか、重症患者のケ

アを、単独で行うことはない。日本と異なり、患者の療養上の世話の中で、治療に直接かかわら

ない、身体清拭や寝衣交換、食事・排泄介助などは付き添いの患者家族の役目で、看護師は行わ

ない。

表 2-1 CH の職員数の推移 職種 2013 2014 2015 2016 2017

医師(専門医) 20 17 17 17 13

医師(麻酔医) 3 3 3 2 1

医師(一般) 32 25 22 22 22

歯科医師 1 0 0 0 0

薬剤師 1 1 1 1 1

看護師 120 118 114 110 106

手術補助技士 10 10 10 10 10

助産師 10 10 10 10 10

放射線技師 4 4 4 4 4

臨床検査技師 3 3 3 3 3

理学療法士 4 4 4 4 3

栄養士 2 2 2 2 2

その他医療スタッフ 18 18 18 18 18

事務職員 13 13 13 13 13

運転手 8 8 8 7 5

サービス職(清掃、調理、庭師など) 65 65 65 63 60

中央滅菌材料室/ランドリー 6 6 6 6 6

医療機材維持管理スタッフ 1 1 1 1 1

病院施設維持管理スタッフ 15 15 15 14 14

職員数合計(概算) 336 320 316 307 287

(出典: CH への質問回答表から調査団が作成)

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表 2-2 MCHC の職員数の推移 職種 2013 2014 2015 2016 2017

医師(専門医) 17 17 16 16 14

医師(麻酔医) - 1 1 - -

医師(一般) 1 1 - - -

薬剤師 1 1 - - -

看護師 90 90 90 81 81

手術補助技士 10 10 10 10 9

助産師 10 10 10 10 10

画像技師 4 4 4 4 4

臨床検査技師 3 3 3 3 3

その他医療スタッフ 18 18 18 18 18

事務職員 13 13 13 13 13

運転手 3 3 3 3 3

サービス職(清掃、調理、庭師等) 88 88 85 83 80

中央滅菌材料室スタッフ 6 6 6 6 6

医療機材維持管理スタッフ 1 1 1 1 1

病院施設維持管理スタッフ 15 15 15 14 14

職員数合計 279 280 275 262 256

(出典:MCHC への質問回答表から調査団が作成)

2.1.2 財政・予算

2.1.2.1 CADD の保健予算 過去 3 年間のイスラマバード首都圏における保健医療予算は下表のとおり。国家保健政策

2016-25 に沿って、母子保健関連予算は、年々増加している。病院予算については、その 54~60%

が PIMS に割り当てられている。

表 2-3 CADD の予算執行状況(過去 3 年間) 2015-2016 2016-2017 2017-2018

母子保健事業予算 81,942 120,000 135,073,

病院予算 6,509,117 6,809,248 7,201,370

合計 6,591,059 6,929,248 7,336,443

(出典:CADD 支出報告書 2015-2016 と 2017-2018)

2.1.2.2 PIMS の財務状況 患者の増加に伴い、毎年、人件費及び施設整備費の増額が申請され承認されてきている。PIMS

から医療消耗品と研修費の具体的な数値は示されなかったが、財務省の予算記録によると各年

度とも収支は一致している。2015 年から本年に到る医療機材費の増額は NICU と乳児 HDU の保

育器整備のほか、血液学的疾患センターの設立と内視鏡検査診断サービスの強化プロジェクト

が承認されたことによる。

(単位: 千 PR.)

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表 2-4 PIMS の予算執行状況(過去 5 年間) 2013-14 2014-15 2015-16 2016-17 2017-18

収入

CADD よりの予算 3,114,500 3,245,700 3,652,400 4,049,500 4,034,800

患者利用料金 111,041 115,900 150,300 143,200 152,000

総収入額 3,225,541 3,361,600 3,802,700 4,192,700 4,186,800

支出

人件費 1,808,000 1,874,500 1,999,500 2,103,500 2,113,000

水・光熱費 272,500 251,400 266,500 256,700 213,700

医療材料及び消耗品

事務用品 6,525 7,200 7,900 7,000 9,125

医療機材の調達 12,400 6,500 77,700 98,000 74,000

施設メンテナンス 17,000 30,000 36,000 47,000 50,000

車両整備・運行費 6,100 6,800 12,000 7,500 7,150

研修費

薬品類 448,600 454,700 561,000 672,000 668,000

その他の費用 9,400 12,100 24,200 30,600 28,300

総支出額 (医療材料と

消耗品及び研修費を含ま

ない金額)

2,580,525 2,643,200 2,984,800 3,222,300 3,163,275

(出典:PIMS 財務課)

2.1.3 技術水準

協力対象の CH、MCHC は、設立以来 IH とともに、イスラマバード首都圏及び周辺州のトップ

リファラル病院として機能してきた。CH は、内科・外科を始め、13 の専門診療分野に対応し、重

症患児の集中治療室を備え、高度な医療サービスを提供している。MCHC には母体胎児集中治療

室(Maternal Fetal Intensive Care Unit: MFICU、以下「MFICU」という)はないものの、重症患者用

ベッドがあり、人工呼吸器が必要な妊産婦・褥婦にも対応してきた。提供しているサービスは我

が国の第 3 次レベルの医療施設とほぼ同等である。また、PIMS は教育・研究病院でもあることか

ら、医学生と研修医の教育指導に当たる、教授・准教授・講師、ほか一般医が配置されている。教

授は管理職に位置付けられているが、科によっては一般診療及び手術も行っている。教授、准教

授は、博士号取得者、講師は修士号取得者である。看護師には、看護管理学の学位を修得したス

ーパーバイザーと看護師長がおり、すべての看護師と助産師は専門教育修了後、国家試験に合格

し、パキスタン看護評議会(Pakistan Nursing Council: PNC)に登録された有資格者である。その他

のパラメディカルスタッフ、手術室技師、麻酔技師、臨床検査技師、X 線・画像技師、臨床工学士

(管理者)も専門コース修了者である。学生への指導の他、国内の保健医療施設から、医師や看

護師を受け入れて技術指導を行っており、既存施設における技術水準は本プロジェクト実施機関

として、なんら支障はない。

本プロジェクトでは、特にハイリスク妊産婦、褥婦及び新生児に対する高度な医療サービスの

提供が求められている。NICU と乳児 HDU 及び、MFICU と産婦人科 HDU、救急外来等が拡張、

整備されるため、重症患者に対応でき、これらの施設の運営が可能な技術水準を持ったスタッフ

の確保が求められる。プロジェクト完了時までに、現在のスタッフ、または新規採用者への研修

を PIMS 側で実施し、必要とされる技術レベルを持ったスタッフを確保する計画である。加えて、

本事業では、ソフトコンポーネントにより、調達機材の運用と保守管理技術強化を目的とした研

修が計画されており、調達機材の適正な運用が期待できる。

この費目の詳細データは不明

この費目の詳細データは不明

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2.1.4 既存施設・機材

2.1.4.1 PIMS の医療活動 PIMS は国内有数の公立第 3 次医療機関である。キャッチメント・エリアとしては、イスラ

マバード市とその周辺地域、隣接する PB 州、KP 州も含まれ、これら遠方からの搬送受入も行

っている。また、医療教育機関としての役割も大きく、学生や現役医療従事者を対象とした、

実際に仕事をしながら仕事を覚えていく訓練・教育(On the Job Training: OJT、以下「OJT」と

いう)を実施している。

表 2-5 PIMS 全体の臨床統計データ(過去 4 年間)

診療科目 2013-2014 2014-2015 2015-2016 2016-2017

外来患者数 975,146 1,045,981 1,257,135 1,267,000

救急患者数 431,247 431,772 486,691 586,437

入院患者数 59,630 61,483 68,297 72,601

手術 27,691 27,236 29,371 29,114

コ ン ピ ュ ー タ 断 層 撮 影

(computerized tomography:

CT、以下「CT」という)

400 600 850 データなし

冠動脈血管造影検査 1,025 1,184 1,321 データなし

血管造影形成術 244 511 667 データなし

心臓ペースメーカー 16 27 51 データなし

臨床検査数 2,634,450 2,813,831 2,847,026 3,151,147

放射線検査数 325,857 321,919 355,239 375,878

(出典:PIMS 資料をもとに調査団が作成)

病棟をもつ診療施設は下表の通りであり、PIMS 全体の病床数は 1,149 である(2016-17 年統

計)。各診療施設の病床数には集中治療室(Intensive Care Unit: ICU、以下「ICU」という)、回

復室などの病床数が含まれている。特に、MCHC の病床利用率は、125%と高い。踏査におい

ても、無料病棟において 1 ベッドを複数患者が共有している状況が確認された。

表 2-6 PIMS 診療施設の病床数

略称 英名 和名 病床数

IH Islamabad Hospital イスラマバード総合病院 628

- Cardiac Centre 心臓診療センター 119

CH Children’s Hospital 小児病院 242

MCHC Maternal and Child Health Care

Centre

母子保健センター 140

BCC Burn Care Centre 熱傷治療センター 20

BMT

Centre Bone Marrow Transplant Centre 骨髄移植センター

(病棟の付属

なし) - Breast Cancer Centre 乳がんセンター

- Organ Transplant Centre 臓器移植センター

合計病床数 1,149

(出典:「Statistical report of PIMS 2016-17」をもとに調査団が作成)

PIMS における 2017 年の施設別病床統計データを各医療施設別に示す(表 2-7)。

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表 2-7 施設別病床統計データ(2017 年)

施設名 病床数 年間病

床数

外来患

者数

(OPD)

入院

患者数 退院数

救急患

者 死亡数

病床利用

者数

病床利

用率

平均

入院日

IH 541 197,465 782,487 29,479 26,831 400,245 3,443 200,350 101% 7

CH 242 88,330 333,871 17,292 16,052 143,755 1,543 69,203 78% 4

MCHC 130 47,450 85,732 20,582 20,294 21,772 219 59,317 125% 3

BCC 20 7,300 11,707 531 359 3,895 148 7,795 107% 15

心臓診療

センター

92 33,580 53,203 4,717 4,389 16,770 325 20,931 62% 4

(出典:PIMS 資料をもとに調査団が作成)

2.1.4.2 PIMS 全体の施設計画 2018 年 6 月、連邦政府は、保健分野における 21 件のパブリック開発プログラムについて、

MoPD&R による事業計画(Planning Commission-1: PC-1、以下「PC-1」という)の承認状況を

発表した。母子保健の強化は国家保健政策 2016-25 上の主要課題とされており、イスラマバー

ド市内では、PIMS と同じく第 3 次レベルの医療機関であるポリクリニック病院(総合診療 500

床)の母子保健サービスの強化にかかわる新規案件が承認されている。21 件中、PIMS から申

請されているのは下表の 12 件である。なお、後述する軟水装置の不良や MCHC の建築設備の

課題については、下表中「8. 冷暖房・空調設備(Heating Ventilation and Air Conditioning: HVAC、

以下「HVAC」という)の改善」により、先方政府により改善されることが見込まれている。

表 2-8 パブリック開発プログラム(PIMS 申請分)

(単位:千 PR.)

案件 承認状況

(承認年月)

全体額

見積

2018 年

割り当て

1 血液学的疾患センターの設立(進行中) 2015 年 9 月 588,063 400,000

2 内視鏡検査診断サービス強化(進行中) 2017 年 11 月 198,130 98,130

3 女性医師宿舎の建設 未 222,062 50,000

4 女性看護師宿舎の建設 未 59,413 50,000

5 脳神経科学センターの設立 2018 年 2 月 7,439,000 300,000

6 臓器移植センターの拡張 未 295,316 295,316

7 心臓病センターの拡張(実現可能性高) 未 100,000 25,000

8 HVAC の改善 2018 年 5 月 725,000 725,000

9 腎疾患ケアの向上 未 49,950 49,950

10 既存肝移植センターの強化 未 500,000 500,000

11 肝臓を含む消化器部門の機材強化 未 386,017 100,000

12 その他の施設の改良 未 200,000 200,000

(出典:PIMS/調査団の聞き取り)

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2.1.4.3 CH の医療活動 イスラマバード周辺地域において、第 3 次医療機関として小児科診療を行っている公立病院

は PIMS に限られる。このため、診療部門、病棟部門、救急部門全てにおいて常に多くの小児

科患者22が詰めかけている。2016-17 年の小児外来の患者数は 333,871 人/年、1,113 人/日である。

2.1.4.4 CH の施設と機材の現状 CH 本館は、1984 年に日本の無償資金協力により建設されて以来 34 年が経過している。当

初計画と異なり、1 次外来診療は、パ国政府により建設された隣接する小児外来診療棟

(Children’s Hospital Outpatient Department: CH OPD、以下「CH OPD」という) で行われている。

本邦支援による CH 本館は 2 次、3 次医療を中心に使用されており、2 階建ての病棟が付属し

ている。パ国側の自助努力で小規模な改築が行われ、骨髄移植科、腫瘍科なども診療を開始し

た。小規模改築としては、母親室を病室へ、一部の病室を乳児 HDU へ、透析室を緊急用臨床

検査室へ、職員更衣室及び廊下を BMT センターへ改築したことなどが含まれる。

他方で、CH の大規模な増改築は日本支援で実施された。2003 年には地下機械室への浸水被

害を改善、また、2006 年には手術室の増改築、材料供給室などの施設及び機材を調達した。

以下に主な部屋の現状と課題を述べる。

救急センター(Emergency and Accident Centre: EAC、以下「EAC」という)

2016-17 年の CH 救急患者数は、143,755 人/年、394 人/日と非常に多い。入口付近には救急患

者とその家族で混雑している。救急診療は、石膏ギプス処置用の 2 床を含む 5 床がある。経過観

察病床は合計 12 床(6 床/室)ある。救急患者数が多く、EAC 手術室の回復室を受診者の経過観

察室として使用せざるを得ないことや、麻酔機材・医師の確保が難しいため、設備の古い同手術

室は 2005 年の地震後閉鎖し、救急患者の手術は、日本支援で建設された CH の手術室で行われ

ている。

NICU

看護師数の制約等から現在は 16 床で運営され、2 看護師+1 管理者の看護体制である。NICU

は分娩室から近いことが望ましいが、現状は非常に遠く、連携が難しい状態となっている。

NICU は、MCHC で出生した新生児以外に、周辺医療施設からも重篤新生児を受け入れてい

る。2016 年の NICU 患者数は 1,013 人(内訳:MCHC 547 人、CH OPD 122 人、救急 299 人、

周辺病院 45 人)である。2017 年の受け入れ患者数は 947 名(内訳:MCHC 392 人、CH OPD

173 人、院外 382 人)と、わずかに減少しているものの、既存の NICU では MCHC との連携機

能強化と、収容能力及び医療体制の向上が喫緊に必要であることが認められた。

また、既存機材は、新生児保育器が 16 台あり、そのうちの 10 台は PIMS 独自の予算で 2014

年に更新されている。その他の 6 台は、当院建設当時に調達されたもので、設置後約 30 年を

経過しているため、経年劣化による老朽化が著しく、頻繁に故障していることから更新の必要

がある。

その他の汎用機材として、患者監視モニタ、超音波ネブライザや吸引機なども 30 年前に設

置された機材は寿命を迎え、すでに使われていない状況である。

22 パ国の定義では、12 歳以下が小児とされる。

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小児集中治療室(Pediatric Intensive Care Unit: PICU、以下「PICU」という)

PICU は合計 9 床(6 床+1 コット+隔離ベッド 2 床)あり、小児内科と外科は集中治療室を

共有している。熱傷患者は PIMS の BCC へ収容となったため、30 年前の計画(熱傷治療科と

PICU が部屋を共有する)のようには使われていない。小児内科、外科とも集中治療室病床に

不足があり、各科の増床について要望があった。新施設に NICU 移転後のスペースは、周手術

期 PICU へ改築される予定である。

CH ではセントラル空調が故障しており、ヘパフィルターも機能していない。PIMS は壁かけ

型のルームエアコンを自助努力で設置したが、これは、患者の体温保持のためのものである。

適正な清浄度を保ち、機材と機能を充足した集中治療室へと早期に改善する必要性が認められ

る。PICU の増改築は、本事業の先方負担事項として実施される。機材は、改築による増床分の

小児用人工呼吸器についてのみ日本側で調達する。

手術室(Operation Theater: OT、以下「OT」という)

2006 年の我が国支援による OT 整備事業の結果、現在、CH には 5 つの OT がある。OT1~

4 では、マイナー手術も入れて 30~35 件/日を行っているとのことである。統計では、2017 年

の年間手術総数は約 5,000 件と非常に多く、対応に大きな負荷を強いられている。また、上記

手術室で使用されている機材で、特に麻酔器、患者監視モニタ、吸引機や電気メスなどは、使

用頻度が高いがゆえに、故障や不具合が絶えないことから、修理の回数も増えており、適正な

メンテナンス、機材の更新が必要である。

中央減菌材料室(Central Sterile Supply Department: CSSD、以下「CSSD」という)

2006 年度に既存本館 2 階を改修して、オートクレーブ 2 台を含む施設・機材の整備がされ

た。そのうちの1台は現在故障しており使用されていない。

また、空調機械が故障しており、室内にこもる熱気を逃すため窓を開けて作業しているなど、

部屋の清浄度を保つことが難しい状況にある。イスラマバードの水は硬水の傾向があり、PIMS

全体の問題として温水管や蒸気管の詰まり(スケールの沈着)の問題がある。CH も例外でな

く、一定期間をすぎた軟水処理装置は交換の必要がある。空調設備と軟水装置については、

「2.1.4.2 PIMS 全体の施設計画」で述べた PC-1(HVAC の改善)で改善される見込みである。

ミニッツ協議においても、CHのCSSDの環境改善を先方負担で実施するよう強く推奨された。

小児病棟

CH の病床は 230 床であり、その他、EAC 経過観察室に 12 床がある。病床利用率は「2.1.4.1

PIMS の医療活動、表 2-7」の通り 78%(2017 年)である。ヒアリングによると、有償病床は

1 看護師当たり 16 床、無償病床は 1 看護師当たり 60 床を受け持つ。

近年、病室 2 室を改築して応急的に乳児 HDU が設置されたが、その結果、外科病棟 2 室の

病床数が減少した。同 HDU では、1 室あたり 7 台の新生児保育器、壁掛け型エアコン、紫外線

殺菌灯、が設置されている。看護師が不足しており母親による看護も行われており、この HDU

を本事業の対象とし新施設に集約すると必要な医療サービスが提供しやすくなると考えられ

る。付属機能としては、有償/無償病床を問わず病院食(3 食)の配給がある。

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臨床検査室

当病院には、検査室が二つあり、一つは、2 階で、元々は透析室だった部屋を改築して緊急

用の臨床検査室を備えた。当検査室は 24 時間体制で、主に血液、生化学及び術中で必要な血

液ガス、電解質などの検査を行っている。血液、生化学検査においては、当院の外来、入院患

者及び MCHC や BCC の検体も扱っている。1 日当たりの検査数は約 200 検体ほどに上るため、

自動血球装置や自動生化学分析装置などを PIMS 予算にて調達した。当検査室では、33 年前に

設置された新生児保育器とメディカル冷蔵庫が故障しており更新の必要がある。また、1 階に

設置してある検査室は、CH OPD 及び入院患者専用の検査を担当する。当室では血球計数装置

が故障しているため、更新の必要がある。

画像診断部門

超音波診断室には 2 台の超音波診断装置が設置されており、1 台は、画像が鮮明ではなくプ

ローブの寿命であるため交換の必要性がある。

放射線検査室では、4 台の一般撮影装置があり、うち、3 台は、PIMS 予算において、コンピ

ュータ X 線撮影(Computed Radiography: CR、以下「CR」という) 装置 1 台及びデジタル X 線

撮影(Digital Radiography: DR、以下「DR」という) 装置が 2 台アップグレードされている。ま

た、同科では、小児患者専用の磁気共鳴画像診断(Magnetic Resonance Imaging: MRI、以下「MRI」

という)機材の導入を計画している。すでに計画済であることから、本案件における MRI 調達

の妥当性はないと判断した。

感染症病棟

当病棟には、小児感染症患者のみを収容する。流行性感染症、下痢、はしか、風土病や結核、

ヒト免疫不全ウイルス/後天性免疫不全症候群(Human Immunodeficiency Virus / Acquired Immune

Deficiency Syndrome: HIV/ AIDS)等の患者もここに収容される。ベッド数は 28 床である。当病

棟専用のオートクレーブが設置されたが故障し稼働停止していることから、やむをえず IH の

CSSD で滅菌している。

理学療法室

12 歳以下の小児患者専用の、神経発達促進と筋力強化および機能回復のための、理学療法室

が設置されている。1 日当たりの利用患者数は約 50 人である。対象は、脳性麻痺、自閉症、四

肢の運動障害及び熱傷や呼吸器疾患など幅広く、各種のリハビリが行われている。

既存建築設備

電気

自動電圧調整器(Automatic Voltage Regulator: AVR、以下「AVR」という)は 100 キロボル

トアンペア(kVA)機、非常用発電機は 484 キロワット(kW)機を導入している。

衛生・給排水

給湯については、確認した一部の配管が切断閉止されており、使用できない箇所は少なく

ない。排水系とも配管・水栓の劣化が目立つ。

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空調・換気

ICU 系、手術室の空調機器に設置されているヘパフィルターは長年交換されていない模

様である。セントラル空調は故障しているということであり、自助努力で応急的に設置され

た壁掛ルームエアコン、天吊りエアコンは稼働しているものもある。「2.1.4.2 PIMS 全体の

施設計画」で述べた PC-1「冷暖房・空調設備の改善」で改善される見込みである。

熱源機械室

蒸気ボイラー2 台中 1 台故障。チラー2 台は稼働中。軟水装置はボイラー用が稼働して

いる。

医療ガス

吸引・圧空・医療ガス供給装置とも日本製。古いが問題なく稼働模様している模様であ

る。

2.1.4.5 MCHC の医療活動

2017 年の MCHC の分娩数は 15,384 件/年である。経腟分娩 35%、緊急帝王切開 59%、予定

帝王切開 6%23であり、緊急帝王切開の割合が半数を超える。緊急帝王切開、早産などに対応す

る、CH 及び MCHC の新生児科の機能集約を行う必要がある。

MCHC では病棟の一部に応急的に乳児 HDU を設置して対応している。なお、CH にも近年

乳児 HDU が作られたが、不足している一般病室数を圧迫している状況がある。

2.1.4.6 MCHC の施設と機材の現状 MCHC の外来診療棟(Maternal and Child Health Care Centre Outpatient Department: MCHC OPD、

以下「MCHC OPD」という)及び本館は、1998 年に日本の無償資金協力により建設されて以来

20 年が経過している。ほぼ、建設当時のまま使用されているが、複数の患者が 1 床を共有して

いるなど患者数の増加に対して施設が手狭になってきていることや、施設の老朽化、建築設備が

20 年の寿命を迎えていることが問題として挙げられる。

施設の老朽化に関しては、特に、水回り配管・流し類の劣化が激しく、イスラマバードでは水

道水中の硬度成分が高いため、水道管内で白い個体物(スケール)として沈着する傾向

があり、これを抑制するため、MCHC では軟水装置が設置されている。MCHC では、

PIMS の他の施設と異なり、竣工当初は独自の井戸から揚水し、井水を軟水処理してい

たが、軟水装置が寿命を迎えて故障した結果、給湯管や給水管のスケール沈着の速度が

速まっており、使用できない水栓がある。OT や分娩室の一部の手洗いが使用できないなど、

感染防止機能が低下し、医療機関として緊急に対応が必要な状態である。

本件に関しては、PIMS も十分承知しており、6 ヵ月ごとに配管を取り換えたり、2015 年以降

は「2.1.4.2 PIMS 全体の施設計画」で述べた PC-1(HVAC の改善)を準備して MCHC を含む

PIMS の建築設備の刷新を計画し、2018 年 5 月には右にかかる予算が承認されたため、今後、順

次改善される見込みである。ミニッツ協議においては、パ国側の負担で、MCHC の既存建築設

23 Annual Statistics of Neonatology 2017, Dr. Shagufta, Neonatology department

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備(軟水装置など)の故障機材の撤去と新な整備や、CSSD の環境を改善することが強く推奨さ

れた。

以下に MCHC の主な部屋の現状と課題を述べる。

OT

現在、MCHC には 4 つの OT がある。ヒアリングによると、15~20 件/日の手術を行ってい

る。統計では、2017 年の年間手術数は 7,914 件(メジャー手術 1,697 件、マイナー手術 409 件、

帝王切開 5,808 件)である。既存手術室では、帝王切開手術、婦人科系手術、内視鏡手術、腹

腔鏡手術などが行われているが、帝王切開手術の件数が非常に多く、予定されていた婦人科系

手術を延期されることが日常化している。

機材は無影灯と麻酔器は PIMS が独自に調達している。出生後の新生児の処置に使用するイ

ンファントウォーマは、22 年前の機材であるため老朽化が著しい。

なお、内視鏡装置及び腹腔鏡システムなどは稼働している。

CSSD

設置後 20 年を経て、施設・機材・建築設備とも劣化が著しく緊急に対応が必要である。機材

及び給水設備の劣化が特に著しい。全 3 台あるオートクレーブのうち 2 台は故障後、使用され

ていない。1 台は、2010 年代の本邦機材調達による後付けであり、当該機専用の軟水装置も同

時にバルコニーに設置されている。

空調機器の故障により、換気をするため窓が解放されたままになっており、部屋の清浄度は

低いと言える。機材及び建築設備を再整備し、CSSD としての清浄度を保つ部屋へ改善する必

要がある。ミニッツ協議では、先方で再整備することが強く推奨された。

陣痛・分娩室

統計では、2017 年の分娩数は 15,384 件(経腟分娩 9,576 件、帝王切開 5,808 件)である。陣

痛分娩室のベッド数は以下のとおり。

表 2-9 MCHC の陣痛・分娩室 室名

陣痛室 7 床(7床に対して分娩監視装置(Cardiotocogram:CTG)1 台のみ。)

分娩室 3 床(20 年前に設置された使用不可能な機材を含む。)

特別陣痛室 3 床(有償病床患者/政府職員など)

特別分娩室 2 床(同上。手術用ライト天井に 2台設置。OT が全て使用されている時や、緊急の

場合、簡易手術を行うこともある。)

子癇分娩室 1 床

隔離分娩室 1 床

ハイリスク分娩 1 床

(出典:聞き取り、踏査をもとに調査団が作成)

分娩室の 2ヵ所の感染防止手洗いは使用不能となっており、奥の流し台のみ使用されている。

給水設備は、2018 年 5 月承認の PC-1(HVAC の改善)で改善される見込みである。分娩室の

空調は、施設全体のセントラル空調が壊れているため、壁かけエアコンを自助努力で個別に設

置している。床(テラゾー)は使用に耐える状態である。

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MFICU

既存の MCHC には、MFICU はなく、先方から強く要望があった。

乳児 HDU

MCHC 新生児科では、近年、一般病棟(産前産後病棟)の一画に乳児 HDU をつくった。呼

吸器や循環器などに何らかの問題があり、経過観察が必要な乳児のため、新生児保育器 9 台を

設置している。便所/当直室/倉庫を改築した結果、該当の病棟フロアの便所が 2 便器のみとな

っている。

病棟

MCHC の病床数は 120 床であり、その他に乳児観察室 10 床、救急の産婦人科観察室 10 床が

ある。120 床の内訳は、産前産後病床が 80 床、有償病床が 32 床、他、産科瘻孔治療病床 6 床、

隔離病室 2 床である。病床利用率は「2.1.4.1 PIMS の医療活動、表 2-7」の通り 125%である。

踏査では、無償病床(産前産後病床、80 床)において、複数患者が 1 床を共有している例が認

められた。ヒアリングによると、80 床に対し収容患者数は 100 人を超えるとのことである。こ

のため、先方からは産科、婦人科ともに病床数の増床を強く要請された。

有償病棟には壁かけ型エアコンが設置されているが、無償病棟には設置されていない。なお、

今後 PIMS より実施される HVAC の改善では無償病棟へも冷暖房エアコンが設置される可能性

がある。

MCHC 救急

2016-17 年の MCHC 救急患者数は、21,772 人/年、60 人/日である。14:00 以降は産婦人科

外来が閉まるため、それ以降の患者は全て救急へ来院する。救急診察室は 4 ブースあり、診

察/心臓超音波検査(Ultrasound Cardiography: UCG)・緊急の子宮内掻爬などを行っている。

20 年前に設置された機材の老朽化が著しい。付属室としてナース・ステーション、心電図

(Electro-Cardiogram : ECG、以下「ECG」という)室がある。

臨床検査室

臨床検査室は血液、生化学、血清などの検査を行う目的で MCHC の患者のみを扱っており、

1 日当たりの検査数は約 200 検体である。当検査室においても、機材の老朽化が著しく、特に

培養検査に必要な培地滅菌用オートクレーブ、嫌気性ジャー、電子天秤、遠心分離機及び薬品

用冷蔵庫などは故障している。現在は、血算、生化学及び尿検査などが対応可能とのことであ

り、救急のための検査は CH の臨床検査室で実施されている。

MCHC 建築設備の概要

1998 年の日本支援による設置後 20 年が経ち、ほぼ全てが寿命を迎えている。以下に述べる

現状の不具合は、2018 年 5 月に承認された PC-1(HVAC の改善)で改善される見込みであり、

HVAC, 軟水装置、ボイラーなどが再整備されるということである。

電気設備

AVR(小型)、非常用発電機 440kW 機が整備されている。

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衛生・給排水

水回り配管・流し類の劣化が激しい。火災設備としては屋内消火栓があり、通電はしてい

る。定期点検記録は確認できなかった。軟水装置は寿命を迎え、故障している。排水槽の排

水ポンプは 2 台中 1 台故障しており、希求機能の半分が稼働している。

空調・換気

手術室や分娩室の冷暖房空調設備は古く故障したものに代わって、応急的に設置した壁掛

け型のエアコンがある。各室とも差圧ダンパはあり、簡易だが清浄度が制御される構成であ

るためヘパフィルターがあると推定される。

熱源機械室

チラーは 2 台共故障しており、このためエアハンドリング・ユニット(Air Handling Unit:

AHU)、冷却塔とも稼働していない。ボイラーは 2 台中 1 台のみ稼働中であり、洗濯室などへ

蒸気供給している。蒸気系の還水は槽からあふれ、槽の外側に大量のスケールが付着してい

る。

医療ガス

CH 同様、吸引・圧空・医療ガス供給装置とも日本製であり、古いが問題なく稼働している

模様である。酸素供給は外部の液化酸素タンクより供給されている。

2.2 プロジェクトサイト及び周辺の状況

PIMS はイスラマバード市の G-8/3 区にあり、敷地は 700~800m 四方で約 55ha ある。PIMS は

複合的な医療施設で、敷地内には病院や学校など病院関連施設が多数ある。敷地南半分は、寮や

空地である。我が国による無償資金協力事業で建設された施設は、CH(1986 年開院)、CN・CMT、

MCHC(2001 年開院)である。下図にその位置を示す。

計画敷地は MCHC の西、乳がん検査センターの北、IH への供給棟に囲まれた不整形の土地で

あり、ほぼ平坦で緩やかに東へ降っている。用地面積は約 1 万 m2 であるが、CH 西病棟の横の空

地は将来用地として残したいという先方の意向がある。また、救急車両のアクセス道路を確保す

るため、施設建設が可能なエリアは限定される。

用地内には既存病棟をつなぐ渡り廊下があり、新施設へも繋げたいという先方要請があった。

調査団は一定の妥当性を確認したため、新たな渡り廊下の建設を本事業に含める方針とする。

建設用地内には、既存の給水管や電気配線、既存の食堂や小屋などがあるが、これらは先方負

担で盛替えや移転することが確認された。特記事項としては、用地南側に脳神経科学棟の計画が

あり、PC-1 も承認済みであり、境界線や工事時期などを確認する必要がある。2018 年 11 月時点

では、脳神経科学棟の建設用地のコーナー杭が、乳がん検査センター横に設置してあることを確

認した。(下図中「Possible site for future nuroscience building」と表記。)本プロジェクトへとの用地

の重複はない。ミニッツ協議においては、プロジェクトサイトの境界線を明示するため、先方が

杭を設置する等の措置をとる旨が合意された。

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図 2-9 PIMS 全体図/過去無償資金協力事業による建設施設およびプロジェクトサイト位置図

2.2.1 関連インフラの整備状況

2.2.1.1 交通・アクセス道路 イスラマバード市は碁盤の目状に 2 キロ四方の街区で構成されており、主要道路が格子状に

走る。PIMS の前面道路は、北側の幅員 200 フィート(約 30m)の Ibnesina 道路と、東側の Faisal

Avenue の側道(幅員約 15m)である。主要門は北端にあり、CH ゲートは東端にある。CH 及び

MCHC はこの東門に近いが、東門近くの構内道路は車両で常に混雑している。

調査では、施工計画上必要な建設資材の搬入路を確認した。混雑が著しい東門を避けて、北側

門の一つを使用する。北側の 3 門は、東より、イスラマバード病院入口門、救急車専用ゲート、

職員などが使用するサービス・ゲートである。建築資材等は、サービス・ゲートから搬出入を行

い、プロジェクトサイトの西側道路よりアクセスする予定である。構内道路は、対面通行の 2 車

線道路で幅員は 24 フィート(約 7.6m)であり、資材搬入に特に問題はない。建設用地は CH 及

び MCHC 東側の主たる構内道路からは 100 m 程度の距離がある。施設の建設にあたっては、構

内道路の引き込み及び舗装を行う。

プロジェクトサイト

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CH と MCHC の間の既存歩行者用通路下には、各種のインフラが埋設されている。電線は、

SS1(副変電所)から MCHC への埋設電線がある。PIMS と協議した結果、新築建屋と干渉する

既存の電気、電話・インターネットケーブル、給水などの既存インフラの位置を変更する盛替え

を先方負担事項として実施することとなった。下図に現況を示す。

(出典:調査団作成)

図 2-10 現況図・埋設インフラと位置

2.2.1.2 電力 PIMS 敷地内には 5 つの副変電所 (Sub-Station、前出図中では「SS」と表記) があり、イスラ

マバード電気供給会社(Islamabad Electric Supply Company: IESCO、以下「IESCO」という)から

供給された 11kVA の高圧電力を降圧し諸施設へ供給している。PIMS 内の副変電所の変圧器及び

推定使用電力量は下表の通りである。請求記録による電気使用量は増減が大きく安定していな

CH

MCHC

乳がん

検査

センター

IH

供給棟

小屋

小屋

既存渡り廊下

カンティーン

電話

OHWT1 より給水

OHWT2 へ給水

SS1 より給電

液化酸素 CE5 タンク

酸素供給管 SNGPL ガス

雨水排水

MCHC 井戸

OHWT3 へ給水

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いが、合計使用量から推定すると負荷容量には余裕がある。この検討により、本事業による PIMS

への電力供給の増量(IESCO との契約変更)は必要ないとの初期所見を調査団は持つが、PIMS

では現在、歯科学科の施設建設が進み、将来計画されている施設もあることから、先方負担で電

力量の検討を行い、必要があれば増量契約により本事業への電力供給を担保する必要がある。

表 2-10 PIMS 既存副変電所の状況

副変電所 変圧器の内訳

(kVA)

変圧器合

計(kVA)

電力使用量

(kWH/月)

推定電力使用量

(kVA/月)

合計推定電力

使量(kVA/月)

SS1 1,500+1,000+2,000 4,500 290,440-650,000 390-874 1.095(4 月)

-

2,686(8 月)

SS2 1,500+1,500 3,000 211,440-650,000 284-874

SS3 250+630+200+200+1,250 2,530 50,000-800,000 69-1,111

SS4 1,000 1,000 30,000-250,000 40-336

SS5 630 630 15,000-335,400 20-466

(出典:ヒアリングをもとに調査団が作成)

プロジェクト用地までの電力供給は先方負担で実施される。いずれかの副変電所に分岐遮断

器を設置し、用地まで高圧で幹線の引き込みを先方負担で実施する。PIMS 側は SS3 を想定副

変電所としているが、SS1 が距離的に近いためこの可能性もある。変圧器は本事業で電気室内

に設置する。

・変圧後の定格電圧は、単相 230V/50Hz、三相 400V/50Hz。

・電圧変動は 4~14%と大きく(定格 230V に対して 225V~263V、2018 年 7 月既存建物

における電圧測定による。)不安定なため、医療機器を保護するために新施設では AVR を

設置する。

・首都イスラマバードでは停電は夏季に度々生じており、既存診療棟は病院毎に非常用発電

機を備えている。CH では 484kW 機が、MCHC では 440kW 機が設置されている。新施

設では同様に、非常用発電機を整備する。

2.2.1.3 給水 イスラマバード市の上水給水

イスラマバード市上水道の水源は、ソーン川上流のシムリ・ダムと、市内及び近郊の井戸 194

本であり、浄化処理後に市内へ給水されている。PIMS 付近の公共上水道は、東面道路下に 18

インチ(450mm)、北面道路下に 21 インチ(530mm)の主管がある。同市では水不足を原因に

時間給水を行っており、給水は平均 3~4 時間/日、給水量は 50,000 ガロン(227,300L/hour)、

水圧は 170psi 程度ということである。

イスラマバード首都圏自治体(Metropolitan Corporation Islamabad:MCI、以下「MCI」という)

の上水局では、顧客が新たに 14,000 ガロン(636, 452L=636 トン)の給水を必要とする場合は、

深井戸(400~500 フィート)を掘削するように指導している。調査団では新施設での一日の必

要給水量は約 100 トンと試算しており、井戸新設の必要性は低く、市水給水を前提とする。

PIMS 敷地内の給水状況

PIMS では市水と井水を混ぜて使用している。敷地内には深さ約 200m の 4 基の井戸と、MCH

脇の井戸が 1 基ある。以前は MCHC の井戸は独立していたが、現在は PIMS 給水網に取り込ま

れている。これらの上水が敷地内の 4 つの受水槽(10t/槽)に一時貯水され、高さ約 30m の 4

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基の高架水槽(600t/塔、PIMS 全体敷地図内で OHWT と表記)へポンプで揚水される。一般給

水はそこから重力で給水されており、水量は十分ということである。

既存埋設管としては、計画用地内には、高架水槽から MCHC への給水管と、MCHC の既存

井戸から高架水槽 2基への揚水管がある。これらについて先方負担により盛替えする旨を PIMS

と合意した。新施設へは、盛替え後の給水管から分岐し給水する。

水質

市水は、WHO 水質ガイドラインの上水基準に準拠するよう浄化処理されている。PIMS では

井戸水については一般的に塩素処理を行っている。

調査では、IH、CH、MCHC の 3 ヵ所で採取したサンプルについて、WHO 水質ガイドライン

のうち化学物質、色味匂い等の 29 項目について水質検査を実施した。我が国の厚生労働省の

水道水基準を WHO ガイドラインと共に参照した結果、注意が必要な項目は総溶解性物質量と

硬度である。プロジェクトでは飲料水は購入水とするとともに、適宜軟水化装置を設置する。

・硬度:CH 370mg / L、IH360mg / L、MCHC 400mg / L。(WHO ガイドラインはないが、「300mg

/ L を超えると味覚に対してユーザーから苦情が上がりうる」、及び「200mg / L を超えると

スケール堆積を引き起こすことがある」とされている。厚生労働省基準は 300mg / L 以下。)

・総溶解性物質(Total Dissolved Solids: TDS、(以下「TDS」という):CH 458mg/L、IH446mg/L、

MCHC 460mg/L。(WHO ガイドラインは 1,000mg/L 以下。これを超えるとユーザーから苦

情が上がりうるとされている。プロジェクトでは飲料水としない前提とする。

2.2.1.4 下水 建設用地の東側に深さ 5~8m の雑排水管があるため、これを避けて建設する。PIMS の汚水・

雑排水は、敷地外で南面道路下の 10 インチ(250mm)の公共下水道へ放流されている。MCI の

衛生局への聞き取りでは、汚水放流の水質基準や規定がないということであったが、本計画は

規模の大きい公共施設であることを考慮して汚水浄化槽を設置し、一定程度浄化してのち雑排

水管と同様に公共下水道へ放流する。

2.2.1.5 雨水排水 建設用地付近には、CH 改善計画の際に日本支援で設置した雨水排水管がある。(PIMS 全体

敷地図内で「Storm water pipe」と表示。)CH 前の構内道路を経て、公共雨水排水網へ放流され

ている。本プロジェクトではこれらの PIMS 内の雨水排水網へ接続する形で収集後の雨水を放

流する。

2.2.1.6 都市ガス CH 横に、スイ北方ガス会社(Sui Northern Gas: SNGPL)が供給する都市ガスが引き込まれて

いる。本プロジェクトでは、先方負担工事で、既設配管から分岐して新施設の取り入れ口まで

引き込む。既設配管の盛替え(増径、125A 程度)も必要となると見込まれる。

2.2.1.7 医療ガス(液化酸素ガス) BCC 脇に液化酸素の定置式超低温貯槽(Cold Evapolator: CE、以下「CE タンク」という)が

ある。こちらは小型の、CE5 タンク(5,000m3)であり、MCHC、CH、BCC への酸素はそこか

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ら供給されている。酸素供給管は、MCHC 地下の土留壁沿いから、MCHC と CH の渡り廊下の

屋根上を渡っている。(PIMS 全体敷地図内で「O2 Supply」と表示。)既存タンクは、10 口まで

酸素供給管を接続できる。PIMS には、もう 1 台、大型の液化酸素 CE10 タンク(10,000 m3)が

ある。液化酸素はタンクローリー車で搬入され、大小の CE タンクへ 4 日に 1 度(月に 8 回程

度)補充されている。新施設への供給は CE5 タンクからとなる。タンクから建物までの酸素供

給管の設置は、先方負担事項として実施される。

2.2.1.8 通信 電話は、IH 本館に主配線盤(MDF)が設置されている。新施設への電話網の接続、新施設内

の電話線整備は先方負担事項で実施する。インターネットは、PIMS の各診療棟は原則として光

ケーブル(ファイバー・ケーブル)で接続されている。各所の合計 600~700 台のコンピュータ

が、IH の病院管理情報システム(Hospital Management Information System: HMIS、以下「HMIS」

という)室にある大型サーバー4 台に接続されている。HMIS 構築からは 14 年が経過しており、

現代の医療情報管理に合致するには課題があるとのことである。さらに、MCHC と CH におい

ては、ハードウェア(コンピュータ)が不足しているため、活用が限定されている状況がある。

HMIS メインサーバーから新施設への光ケーブル配線、HMIS の構築、必要な PC の設置は、先

方負担で実施することを念頭としている。

以下に関連インフラの現状写真を示す。

写真 1 液化酸素 CE5 タンク

BCC 横にある CE5 タンク(5,000 ㎥)

4 日に 1 度の頻度で補充されてい

る。

写真 2 酸素(O2 )配管

酸素タンクから土塁壁沿いに酸素

の露出配管があり、CH、MCHC へ供

給している。

写真 3

医療ガス(マニホールド)室のボ

ンぺ類。定期的に供給、点検され

ている模様。

写真 4 MCHC の井戸

MCHC 脇の井戸から 2つの高架水槽

へ揚水。市水と混ぜ合わせたのち

各施設へ給水している。

写真 5 PIMS の高架水槽 OHWT1

写真 6 軟水装置

MCHC の軟水装置は経年劣化により

故障しているが、PIMS 側で再整備

を行う予定である。

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2.2.2 プロジェクトサイトの自然条件

2.2.2.1 地形 プロジェクトサイトはほぼ平坦で、東側の道路から緩やかに勾配が上っており、大規模造成な

どの必要はない。敷地の広さは限定的だが、希求機能に対して広さを確保することは可能である。

2.2.2.2 地質 パ国では 2005 年の大地震後に建物の安全性に対する関心が高まり、2007 年に耐震条項

(Building Code of Pakistan Seismic Provision:BCP-SP、以下「BCP-SP-2007」という)が公布され

た。パキスタン技術者協会(Pakistan Engineering Council: PEC、以下「PEC」という)法により、

PEC に登録した技術者は、構造設計の際、右条項の順守が義務付けられている。当基準はパ国の

地震帯情報を含み、地域毎に耐震基準が定められている。構造の安全性は、設計者(PEC 登録技

術者)の登録制度により担保される前提である。

他方で、法規としての条例の整備・運営状況としては、州や市の建築規制当局による条例とし

ての採用が進んでいるとはいいがたい。イスラマバード市では BCP-SP-2007 が採用されている

が、参照する耐震基準は米国統一基準(United Building Code: UBC、以下「UBC」という)とす

る技術者もおり、プロジェクト実施時に建築許可を受ける際には、当局や現地技術者とよく事前

協議を行う必要がある。

地質調査は、第 1 回現地調査と第 2 回現地調査時にわけて、現地再委託で実施した。標準貫入

試験結果は 1 点を除いて 2 回とも同様の傾向となり、全体的に盛り土の性質を示している。プロ

ジェクトサイトの地質は、シルト質の粘土層と砂礫層で構成されており、表層土(深さ 0.2~1m)

以降はシルト質粘土層から砂礫層と変化し、深さ 9m 付近の支持地盤まで続いている。標準貫入

試験の結果による地盤の許容支持地耐力は、深さや場所により異なるが、10.2t/m2~21.8t/m2 と報

告された。

2.2.2.3 気候 イスラマバード市は温帯夏雨気候にあり、冬季(10 月~3 月)は平均 高気温 16.6℃及び平

均 低気温 3.4℃、夏季(4 月~9 月)は平均 高気温 34.2℃及び平均 低気温 24.4℃と寒暖差

がある(イスラマバード首都開発課(Capital Development Authority: CDA、以下「CDA」という)

資料より)。雷雨と豪雨を伴うモンスーン・シーズンは 7 月から始まる。8 月の平均降水量は

310mm である。

下表に、イスラマバード市の月別平均気温及び雨量(1961~90 年、アメリカ海洋大気庁24)、

1954 年以降の記録的な気温や雨量(パキスタン国気象庁25)を示す。冬季は、地中海起源の低

気圧(ウェスタン・ディスターバンス) が、インド半島北西に降雨をもたらすが、気温により

山側では雪となることもある。本計画の病院では、冷暖房を設置することを前提とするため、

パ国建築基準の省エネルギー条項を参照し、建物外皮について断熱性を確保する方針とする。

24 ftp://ftp.atdd.noaa.gov/pub/GCOS/WMO-Normals/RA-II/PK/41571.TXT 25 http://www.pmd.gov.pk/cdpc/extrems/islamabad.htm

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表 2-11 イスラマバード市の気候

(出典:パキスタン気象庁、アメリカ海洋大気庁資料をもとに調査団が作成)

2.2.2.4 自然災害 洪水

イスラマバード市では 2001 年 7 月に局地的な豪雨があり、10 時間で 620mm の降雨があっ

た。この際に、CH の地下に多量の雨水が流れ込み、泥水が進入し計器の絶縁不良が起こり電

気設備、機械設備が停止した。その後フォローアップ事業が実施された。2010 年 7 月 30 日に

も 257mm/日の豪雨があったが、同様の事象は起きていない。

地震

PIMS における過去の大きな地震災害は報告されていない。BCP-SP-2007 の耐震条項におい

てイスラマバ―ドはゾーン 2B と規定されており、これに従い地震荷重を検討する。

2.2.3 環境社会配慮

パ国の環境社会配慮制度・組織

根拠法は「パキスタン国環境保護法(1997)」であり、法律制定と同時にパキスタン環境保護

委員会が発足した。環境保護庁(Enbironmental Protection Agency: EPA、以下、「EPA」という)

は、初期環境アセスメント(Initial Environmental Examination: IEE、以下、「IEE」という)及び

環境アセスメント(Environmental Impact Assessment: EIA、以下、「EIA」という。)について実

際的な業務を行う組織であり、活動の根拠法は「パキスタン国 EPA 規則(IEE 及び EIA レビュ

ー)2000(Pakistan Enviromental Protection Agency (Review of IEE and EIA) Regulation, 2000)」と

なる。

本プロジェクトにおける環境社会配慮手続き

根拠法を参照すると、本プロジェクトは、IEE あるいは EIA が必要なものではない。しかし、

EPA が必要と判断する開発行為については IEE/EIA を実施する必要がある。PIMS は病院と

して過去 30 年間にわたり同一の敷地で医療サービスを提供してきた。本計画はその拡充計画

であり、環境に与える影響としては、病院全体に占める割合として微増にとどまるため、環境

社会配慮はカテゴリ-C と考えられる。PIMS は、EPA が発出する No Objection Certificate: NOC

(以下、「NOC」という)を取得する必要性があり、CDWP の PC-1 承認委員会のコメントとし

ても付されている。このため、本プロジェクトでは、建設許可等に先立ち、贈与契約(以下、

「G/A」という)後 2 ヵ月以内までに NOC を取得するよう PIMS と確認した。

月 1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月 年

日平均気温 ℃(1961-1990)

10.1 12.1 16.9 22.6 27.5 31.2 29.7 28.5 27.0 22.4 16.5 11.6 21.3

30.1 30.5 35.5 40.6 45.6 46.6 45.0 42.0 38.1 37.5 32.2 28.3 46.6

(1995/1/30) (2016/2/24) (3/31/2017) (2006/4/29) (1988/5/31) (2005/6/23) (2012/7/3) (1987/8/11) (1982/9/5) (2009/10/1) (1999/11/2) (1998/12/7) (2005/6/23)

-3.9 -2.0 -0.3 5.1 10.5 15.0 17.8 17.0 13.3 5.7 -0.6 -2.8 -3.9

(1967/1/17) (1978/2/8) (1967/3/17) (1994/4/7) (1997/5/9) (1979/6/2) (1966/7/5) (1976/8/3) (1994/9/26)(1984/10/31

)(1970/11/28

)(1984/12/25

)(1967/1/17)

月平均降水量(mm)(1961-1990)

56.1 73.5 89.8 61.8 39.2 62.2 267.0 309.9 98.2 29.3 17.8 37.3 1142.1

166.9 306.0 332.0 264.9 115.3 255.0 743.3 641.4 421.0 95.8 91.2 177.9 1900.0

(1954) (2013) (2015) (1983) (1965) (2008) (1995) (1982) (2014) (1997) (1959) (1990) (2013)

最高気温記録 ℃(年/月/日)

最低気温記録 ℃(年/月/日)

月最高降水量(mm)(年)

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廃棄物処理

PIMS では、2017 年初頭に「病院廃棄物管理委員会 (Hospital Waste Management Committee for

PIMS) 」を再編した。サブ・コミッティは、IH、CH、MCHC、BCC、心臓科の 5 病院に設置さ

れている。IH、CH、MCHC のサブ・コミッティ長は救急診療部門長である。PIMS では、さら

に、敷地内に医療・病院廃棄物専用の焼却炉を整備する計画も進めている。計画中の焼却炉は

2 炉あり、それぞれ焼却能力 100kg/時で検討されている。現在の PIMS の病床数は、救急病棟

や回復室等も含めて約 1,200 床であるが将来 1,800 床程度までの増床を見こんだ能力が検討さ

れている。焼却炉の詳細な仕様は不明であるが、PC-1 及び必要となる EPA の同意は得ている

とのことである。なお PIMS では現在はガンマ・カメラが機能していないため、放射線廃棄物

は排出されていない。

表 2-12 PIMS で建設が予定されている焼却炉能力の検討

感染系医療廃棄物 非感染系医療廃棄物

病床数 0.4kg 容器/日 月の廃棄量 (kg/月) 1.6kg 容器/日 月の廃棄量 (kg/月)

1,200 480 ~14,400 1,920 ~57,600

1,800 720 ~21,600 2,880 ~86,400

(出典:PIMS からの収集資料より、調査団作成)

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2.3 その他(グローバルイシュー等)

グローバルイシュー

本プロジェクトの実施に深い関連性を持つグローバルイシューとして、「貧困削減」と「人間

の安全保障」があげられる。

パ国は、国際通貨基金(International Monetary Fund: IMF、以下「IMF」という)による拡大信

用ファシリティ及び中国・パキスタン経済回廊の投資により、景気は好調で、治安も改善傾向

にある。しかし、対外不均衡が累積し、総選挙前のばらまき政策から財政赤字が拡大し、新政

府には、政府予算の緊縮が必須である。これにより、貧困層への福祉政策は必要とされながら

も、急速かつ十分な展開が望みにくい。貧困層が利用できるのは公的な保健医療施設のみであ

る。特に、症状が悪化したのち、ようやく受診する傾向のある低所得の労働者や、信仰上の習

慣から外出を控えがちで、リスクが見逃されやすい妊産婦などにとって、高次医療サービスを

安価もしくは無料で提供する施設の質の向上は、これらの人々が貧困脱却の基礎となる健康改

善のために必要である。

人間の安全保障は、2015 年にパ国が達成できず、継続してその状況改善に取り組み続けてい

る、MDGs の重要な概念である。本プロジェクトで整備する、周産期ケアと子どものケアに関

わる救急外来、手術室、病棟並びに医療機材の整備は、乳幼児と母親の救命に不可欠のもので

あり、MDGs の「乳児死亡率の削減」と「妊産婦の健康の改善」に直接つながるものであり、

女性の健康改善は、女性が、尊厳とともに生命を全うできる社会づくりに貢献する。

日本との関係

日本がこれまで PIMS に対して行ってきた、CH、MCHC、CN、CMT の建設支援や医療機材

の調達、技術協力プロジェクトを通じたパ国人材育成については、関連施設に設置された、日

本からの支援を示すプレートや、Web 上の PIMS 関連の紹介文、メディアを通じた多数の報道

などを通じ、それが周知され、利用者に感謝されている。日本政府にとっても PIMS はパ国支

援のフラッグシップともいえる案件であり、今後も、日本の支援による施設や医療機材が広く

活用され、地域医療と教育・研究機関として機能してゆくことで、両国の良好な関係の維持強

化が期待される。

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第3章 プロジェクトの内容

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第3章 プロジェクトの内容

3.1 プロジェクトの概要

3.1.1 上位目標

パ国は、2015 年までの MDGs において NMR、IMR、MMR を改善させる対策を取ってきたが、

いまだ南アジアにおいて母子保健指標が最も低い水準にある国の一つである。

国家保健政策 2016-25 では、手頃な価格で質の良い保健サービスへの普遍的なアクセスを通じ

て、すべての国民、とりわけ女性と子どもの健康を改善できるよう、柔軟で対応力のある保健シ

ステムの整備と運用に努めるとしている。

PIMS は首都イスラマバードに位置し、IH、CH、MCHC、CN、CMT 等から構成される医療複合

施設である。公的第 3 次医療機関であり、首都周辺のみならず、隣接州からの患者の受入も行っ

ている。入院患者数は、増加の一途をたどり、PIMS の果たすべき役割の重要性は年々増している。

我が国は、1980 年代より PIMS 内の CH、MCHC、教育施設への支援を行っており、これらの支

援で整備された施設や医療機材は現在まで使用されているものの、キャパシティの不足に伴い、

治療や感染管理が適切に行えない状況にある。

本プロジェクトは、PIMS において、医療機材の整備及び CH、MCHC の拡充を通じ、ハイリス

ク妊産婦及び新生児のための保健医療サービスの質の向上を図り、もってパキスタンにおける人

間の安全保障の確保と社会基盤の改善に寄与することを目標とする。

公的医療に頼らざるを得ない貧困層の母親と子どもへの質の高い医療サービスへのアクセス改

善は、SDGs ゴール 3「あらゆる年齢のすべての人々の健康的な生活を確保し、福祉を促進する」

に貢献することから、無償資金協力にて本事業の実施を支援する必要性は高い。

3.1.2 プロジェクト目標

以下に、施設整備・機材調達の目標と整備概要を記す。

ハイリスク妊産婦・新生児を対象とした周産期医療の集約と拡充

・ ハイリスク妊産婦、新生児に対応する救急外来・救急病床の整備

・ 手術室・分娩室の整備

・ 検査室及びCSSDの整備。ただし、検査室は術中検査等に最低限必要なものとし、

病理検査、画像診断等は既存棟の検査部門を活用

・ 輸血に関しては、OT 部門と検査室に血液保冷庫を設置

・ NICU の既存棟から新施設への移転、増床

・ 乳児 HDU の整備

・ MFICU、産婦人科 HDU の整備

病床の増床(既存病棟の負担軽減)

・ 病床(小児病棟 50 床、ハイリスク妊産婦病棟 50 床)の整備。

医療機材の調達、及び機材維持管理体制の強化

・ 新施設に必要な医療機材の調達

・ ソフトコンポーネントの実施

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3.2 協力対象事業の概略設計

3.2.1 設計方針

3.2.1.1 基本方針

協力対象範囲(協力対象部門の選定)

本プロジェクトは、既存の CH、MCHC では十分な対応が困難となっている緊急性の高いハ

イリスク妊産婦及び新生児への診断・治療機能を集約し、効率的な医療サービスを提供するた

めに実施されるものである。右 2 病院のハイリスク症例や緊急医療に対応する、OT・分娩室、

救急外来(Emergency Room: ER、以下「ER」という)、検査室、MFICU、NICU、HDU、CSSD

等を含む新施設を建設し、保健医療サービスに必要な機材の調達調達を行うことにより、PIMS

全体の母子に対する医療サービスの質の向上を図る。新施設と既存施設との機能分担・構成に

ついて、以下に示す。

(出典:調査団作成)

図 3-1 既存棟と新施設の機能分担

主な協力対象部門は次のように選定し、必要諸室を計画した。

救急部門

新生児の ER と、ハイリスク妊産婦及び婦人科重篤患者を対象とする産婦人科 ER を新施

設の 1 階に計画する。重篤患者を対象とするため救急車及び緊急車両のアクセス道路を整

備し、各医療科へ搬送する。(次項「(2)救急外来」参照。)検査室は、血液・尿検査を行い、

救急診療、手術の術中検査に迅速に対応する。生体検査(心電図その他)、臨床検査及び画

像検査は、CH 及び MCHC の既存検査部門を活用する。

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ハイリスク手術・分娩部門

ハイリスク手術・分娩部門は、OT4 室、ハイリスク妊産婦の分娩室、回復室、感染症患者

隔離室、医療従事者更衣室等で構成する。清潔度が異なる OT を 2 部屋ずつ配置し、小児科

の関節手術や易感染患者の手術を行う 2 室は清潔度をより高く設定する。その他 2 室は、

ハイリスクの帝王切開手術等に使われる。術前後の患者を迅速に搬送できるよう、同階に

MFICU、産婦人科 HDU を配置する。

集中治療室

既存 MCHC の重症患者の治療は術後回復室内にある 2 病床のみで行われているため、新

施設では、MFICU を設置し産婦人科 HDU を付属させる。また、現在は、MCHC 及び CH の

病棟を改築して応急的に対応している新生児部門の拡充のため、既存 CH の NICU を新施設

へ移転し、新生児・乳児 HDU を付属させる。病床数は、MFICU6 床、産婦人科 HDU4 床、

NICU は新生児保育器 20 台、乳児 HDU は 20 コットとする。医療ガス(酸素、窒素、笑気、

吸引)を必要箇所へ供給する。

CSSD・医療機材管理部門

CSSD は、OT、ICU や病棟で使用される器具・材料の管理・消毒・滅菌・配置を行う供給

部門であり、必要最小限の広さをもつよう計画する。滅菌機 2 台を介して、汚染エリアと清

潔エリアを 2 区分する計画とする。

医療機材管理部門は CSSD に隣接し、医療機材室(以下「ME 室」という)と医療機材倉庫

で構成される。医療機材技術者が常駐し、機材点検用の医療ガス口も設置し、機材の動作確

認や保守管理を行う。

病棟

産婦人科病床と小児病床を計画する。同階を共有するため、男性が産婦人科病床に立ち入

らない配置とするなど、現地慣習への適切な配慮を行うこととする。

なお、施設規模及び調達機材の種類・数量は、本プロジェクト終了時までに配置が予定されて

いる職員により運営維持管理が可能なものとする。既存 CH の、NICU が新施設へ移転した後の

スペースは、、先方負担により周手術期 PICU に改築される予定である。

表 3-1 プロジェクトの概要

施設

1) 救急部門:新生児救急外来、産婦人科救急外来の整備。

2) 手術/ICU 部門:手術室 4室、集中治療室(MFICU、NICU、乳児 HDU、産婦人科 HDU)、ハイリス

ク分娩室、経過観察室、中央滅菌室、術中検査室の整備。

3) 病棟部門:小児病棟・産婦人科病棟の整備。

4) その他: 管理諸室、ME 室、必要となる建設設備(電気・空調機械・給排水衛生)、医療ガス設

備、消防設備。

機材 上記施設に必要な医療機材、一般家具等。医療機材にかかるソフトコンポーネント

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新旧 ER の役割分担

新施設の ER と、CH の EAC 及び MCHC の既存 ER について、以下のような役割と機能の

分担を想定している。

・ CH の EAC

生後 1 ヵ月以上、12 歳以下の救急患児は、これまでどおり CH の EAC を利用し、新生児

は、新施設の ER で受け入れる。また、生後 1 ヵ月を超える乳児であっても、成長発達状況に

よっては新施設の ER で受け入れる。

・ MCHC の既存 ER

新施設開設以前に MCHC の ER が果たして来た機能のうち、14:00 以降翌朝 08:00 までの時

間外診療窓口の役割はそのまま残し、既存 ER では、主として低リスクの患者(正常分娩予定

で、歩行可能な妊産婦)に対応する。産科トリアージ緊急度スケール (Obstetrical Triage

Acuity Scale: OTAS、以下「OTAS」という)等で来院者の緊急度を判断し、必要に応じて患

者を新施設の ER に移送する。

・ 新施設の ER

24 時間、ハイリスク妊産婦・褥婦及び新生児を受け入れる。特に、PIMS 敷地内に到着した

段階で自立歩行が困難な患者はこちらに直接搬送する。上記 MCHC の時間外外来と同様、

OTAS 等により、患者の重症度・緊急性を判断し、低リスクであることが確認された場合は、

MCHC に移送する。

以下、新施設と既存 MCHC の ER の役割分担(案)の概念図を示す。

(出典:調査団作成)

図 3-2 MCHC の既存 ER と新施設の ER の役割分担

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3.2.1.2 新施設自然環境条件に対する方針

気温

イスラマバード市は夏冬の寒暖差が厳しく、新施設では必要箇所に冷暖房空調を計画する方

針とする。パ国建築基準の省エネルギー条項を参照し、断熱性能を高める。具体的には、外壁

を断熱材入り二重壁とし、屋根(小屋裏)断熱及び小屋裏換気を行い、強い日射をさけるため

の庇やルーバーを採用する。

降雨

年間降水量の大半は 7~8 月に集中し、平均 255mm/月の降雨がある。雷雨も頻繁に起こるた

め、本プロジェクトでは避雷針を計画する。過去の豪雨では、2001 年 7 月には 10 時間で 620

mm の雨量を記録したが、この際に CH の地下に雨水・泥水が流れ込み、電気設備、機械設備

が停止した。その後フォローアップ事業が実施された。そのため、本プロジェクトでは地下階

は設置せず、地上階に機械室を計画する。建物へ水が浸入しないよう建物周囲の排水等を計画

する。

3.2.1.3 社会経済条件に対する方針

本建物は PIMS の要請に応えて、CH と MCHC が共有する施設となる。宗教上の配慮を必要

とする事項として、女性患者が男性の目に触れることのないよう配慮する。産婦人科病棟と小

児科病棟が階を共有せざるを得ないところでは、適切にドア等を配置して、小児の付き添い家

族(男性)が産婦人科病棟へ立ち入ることのないよう計画する。

3.2.1.4 施設建設・調達にかかる方針

建築法規、建設許可、防火基準等

パ国は連邦制であり、各州の行政機関などが独自の制定法で建築規制を行う。イスラマバー

ド首都圏では CDA が管轄する。CDA への聞き取りによると本プロジェクトは原則的に準拠の

対象となるが、既存病院への増設であり、かつ、地上 3 階の建物であるため、下記の手続きが

必要となるということである。

建設許可申請は新築・増築を問わず義務付けられており、CDA に認可登録されたパ国建築士

及び構造技術者により申請図書を作成、提出する必要がある。本プロジェクトでは、現地設計

コンサルタントを活用して本邦コンサルタントが統括し作成した図書を施主(PIMS)へ提出し、

PIMS が建築許可申請を行う。審査では、第三者による構造確認及び消防の意見書が必要であ

り、施主及び本邦コンサルタント出席による高位委員会へのプレゼンテーションを求められる

ことから、最低 2 ヵ月を工程に見込む方針とする。

本プロジェクトの防火基準は、現地消防の指導により、2016 年に制定されたパ国建築基準の

火災安全条項(Fire safety provision 2016)及び、CDA建築基準の火災安全条項 2010(CDA Building

Standards for Fire Prevention and Life Safety – 2010)を参照する。設置を推奨された火災安全設

備は、避難階段、屋内消火栓、消火器、火災報知器、非常照明、消火水槽、消火ポンプ等であ

る。一部を先方負担とするが、基本的に消防の助言に従い設置する方針とする。屋外の避難ス

ロープについても、現地行政からの推奨に基づき設置する。

施設のバリアフリーについては、パ国厚生・特別教育省発行の設計ガイドラインを参照する

が、解釈や適用に幅があるため可能な範囲で適用する。

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なお、PIMS 敷地内の既存病院への遡及処置については、本プロジェクトの範囲内とせず、

考慮しない方針とする。

建設資材

コンクリート工事のための建材資材等,一般的な建設資材は現地調達が可能である。施設完

成後の修理や維持管理が容易なことから、建築資材は現地調達を基本とする。現地調査結果か

ら、対候性や製品品質などを考慮して、アルミサッシ、手術室の壁天井パネル、無影灯、造付

け医療ユニットや自動ドアなど特殊資機材は日本調達とする方針である。

労務事情・現地会社の活用

イスラマバード市には、日本の無償資金協力プロジェクトにかかわった経験のある施工会社

が複数ある。現地施工会社は PEC に登録認定される必要があり、最上位の C-A から最下位の

C-6 まで、資本や技術者の種別により登録される。例えば、C-B の資格要件は、自己資本が 1 億

パキスタン PR. (2017 年)、15 年以上の経験をもつ登録技術者が 2 名以上などである。請負金額

上限は C-A にはないが、それ以下にはあり、C-B は 40 億 PR. (2017 年)である。ランクが下が

る毎に、C-1 は 25 億 PR.、C-2 は 10 億 PR.、C-3 は 5 億 PR.、C-4 は 2.5 億 PR.、C-5 は 6500

万 PR.、C-6 は 2500 万 PR.となる。これらの会社の資本力と技術力を判断して、適正な施工会

社を選択し、本邦施工会社に協力する現地会社を活用することは十分可能であると考える。他

方で、特殊設備などに関しては、日本から技術者を派遣する必要がある。

機材調達にかかる方針

現地調査の結果から、約 80%の現地代理店は、日本製の医療機材を取り扱っており、さらに、

今までの納入実績、アフターサービスに必要なサービスエンジニアの有無、保守・修理に必要

なワークショップの有無、スペアパーツなどの供給体制が十分に整備されていることなどを調

査し、また、本計画の対象施設である PIMS 側の評価も考慮した。その結果、本計画の対象機

材を扱う現地代理店の殆どは、日本国及び第三国(ヨーロッパ、米国)など世界的に市場シェ

アが高いメーカーを取り扱っている。従って、本計画における医療機材は、日本国及び第三国

から調達を行う方針である。

一方、医療器具、家具及び手術用の器具等については、先方負担となったため、本計画の調

達には含まないこととする。

なお、本計画で調達を予定している医療機材のうち、超音波診断装置、人工呼吸器、腹腔鏡

システムなどは、精密機器であるため、故障時の対応には高度な知識と技術が必要となり、故

障診断から修理までの工程は、かなり困難が予想されるため、故障のないように十分な保守点

検の実施と定期交換部品の供給が必要となる。一般的に購入時の無償保証期間は 1 年間である

が、PIMS では、購入後 2 年間の保証期間を標準とし、この保証期間終了後は 5 年の保守契約

を締結する。合算した 7 年間を機材の耐用年数と定め、その後は新規に更新するといった規定

を設けている。以上から、保証期間終了後の保守契約については、PIMS 側が十分な予算を確

保しておく必要がある。PIMS との協議ではその旨を説明し、PC-1 においては機材維持管理に

かかる予算は竣工後 5 年間について申請された。

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3.2.1.5 運営・維持管理にかかる方針

施設

PIMS における施設管理は、PIMS 管理局下に技術部門 4 課があり、それぞれ、電気、HVAC、

ボイラー、バイオメディカルエンジニアリング(以下、「BME」という)部門が、担当する建築

設備や機材の管理を担っている。既存 CH においては、建築設備の操作・維持管理は PIMS 職

員が実施しているが、MCHC 及びその他の PIMS 施設では外部へ委託している。エレベーター

の維持管理、警備は外注されている。本計画では、建築施設・設備に関して全体像を理解し統

括する維持管理コアグループとなる技術職員の新規雇用(増員)を提言する。専門的な知識と

技術が必要となる、軟水装置、OT や ICU の空気清浄フィルター(以下、「HEPA フィルター」

という)、エレベーター、医療ガス供給装置等の操作、維持管理、定期点検については、外部専

門会社への委託が適当である。

機材

医療機材の保守管理は PIMS の BME 部門が実施する。既存の CH 及び MCHC には、簡易な

ワークショップがあり、BME 部門のエンジニアが保守点検、整備を行っている。新施設には

ME 室を設置するため、専従のエンジニアを配置する必要がある。機材の故障、不具合の発生

時には、BME 部門から速やかに現地代理店へ連絡し、必要に応じたアフターサービスを実施す

る。

日々の保守点検は、医療機材が設置される各ユニットの医療スタッフ責任者が実施する。保

守点検の手法は、ME 室の専従エンジニアにより指導する。また、BME 部門が実施する定期保

守点検については、各機材の点検頻度をメーカーに確認のうえ、個々に設定する必要がある。

引き渡しの際に基本情報を先方へ提供する。さらに、適切な医療機材管理台帳の作成と機材維

持管理体制の構築を達成するため、ソフトコンポーネントを実施する方針とする。

3.2.1.6 施設・機材等のグレードの設定にかかる方針

施設

工法と資材調達については現地で一般的なものを原則として採用する。構造形式としては鉄

筋コンクリート造が一般的である。建築設備については、本プロジェクトは第三次医療機関の

周産期医療センターとして、ハイリスク妊産婦や特別なケアが必要な新生児が対象となり、清

潔度が高い手術室や ICU が必要であるが、PIMS の既存グレードを参照しつつ公的医療施設と

して必要最低限の仕様とする。清潔度は、手術室 4 室のうち 2 室はクラス 1,000、他 2 室はク

ラス 10,000 とする。

機材

本計画で新施設へ導入する機材の殆どは、PIMS で既に使用されている機材であり、特に新

しい知識や技術を必要とする機材は含まれないことから、基本的に、既存施設で使用されてい

る機材と同等のグレードとする。また、各機材の仕様は本計画対象となる機材全てにおいて標

準的なグレードとする方針である。

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3.2.1.7 工期にかかる方針

約 1 ヵ月間にわたるラマダン期間中の作業効率の低下と、その後の 2 週間のイード休暇を工

期に反映させる。プロジェクト工期 21 ヵ月を想定すると 2 回のラマダン期間を工期に見込む

方針とする。

医療機材は、画像診断機器に代表される大型機材の調達がなく、機材製作期間は 5.5 ヵ月程

度と考えられる。事前検査、船積み検査を経て、大半を船便で輸送する。カラチ港に荷揚げ後、

輸入通関で 3 ヵ月ほど要する見込みである。円滑な通関審査のため、カウンターパート、関係

機関との連携を密に行う方針とする。

3.2.2 基本計画(施設計画/機材計画)

3.2.2.1 要請内容の検討

施設コンポーネント

支援対象とする施設コンポーネント 現地調査のミニッツ協議での要請コンポーネントを

検討した結果、以下を原則的に本プロジェクトの対象とする。プロジェクトの目的が、ハイリ

スク妊産婦及び、新生児のための保健医療サービスの質の向上であるため、救急部門、OT 部

門及び ICU 諸室を最重要コンポーネントと考える。次に、既存病棟の負担軽減を目的とした、

小児病棟と産婦人科病棟の整備、医療機材の整備とする。この結果、本プロジェクトにより整

備される施設の病床数は、新生児病床を含んで 150 床、調達機材は主に医療機材 84 種目とす

る。

表 3-2 本協力による新施設の概要

診療科目 産婦人科、新生児医療を専門とする小児科を含む新施設

病床数 産婦人科病棟 50床 合計 150床

小児科病棟 50床

MFICU 6床(うち 1床は隔離室)

産婦人科 HDU 4床

NICU 20 保育器(うち 10 保育器は既存 CH から

移設)

乳児 HDU 20コット

救急病床 産婦人科救急 4床(うち 1床は隔離室) 救急 10床

新生児救急 6コット

OT、分娩室 OT 4 室(手術台 4 床、回復室 4 床、隔離室 1

床)

手術部門 11床

分娩室 1室(2床)

検査室 基礎的な血液・尿検査に特化し、臨床検査、画像診断、エコー等は、

既存 CH、MCHCの件で実施する。

その他 管理諸室、機械室、洗濯室、厨房

電気設備、HVAC、衛生機器設備、医療ガス、火災安全設備

(出典:調査団作成)

支援対象としない施設コンポーネント

・ 家族室:先方との協議で優先順位 C とされた家族室は整備しない。(我が国の『総合

(地域)周産期母子保健センター』の構造設備基準による「家族宿泊室等」は設けな

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い。)他方、MFICU、NICU に隣接して多目的室を設け、必要に応じてカンガルーケア

を行うなど、柔軟な運営を行えるよう配慮する。

・ 検査機能は、既存施設に付属する画像診断室や臨床検査室を最大限活用する方針とす

る。ただし、緊急時及び手術中において、最小限必要な検査機能は配備する。簡易な検

査室を設置し、血液、生化学検査が実施できる機材を導入する。また画像診断において

も緊急対応的に超音波診断装置や回診用 X 線装置を配備する。

・ 霊安室は既存施設のものを使用する。新設する渡り廊下及び屋外スロープの裏動線で速

やかに移動できるよう計画する。

・ 一般外来、特別外来は、既存施設で実施する。洗濯室、厨房は必要最低限として計画す

るが、プロジェクト実施の際にコンポーネント調整が必要となった場合、対象外とする

可能性がある。

機材コンポーネント

全体計画

本計画で調達する機材の殆どは、新施設に設置される予定である。機材の据付・設置に必

要な環境やインフラ等は日本側の設計により整備される。また、棚など一部の家具について

も日本側で調達する。

今般は、CH の既存 NICU の機能をすべて新施設に移動し、NICU 移動後のスペースは、先

方負担にて、周手術期 PICU に改築拡張する計画である。PIMS と合意した通り、新施設の

NICU の新生児保育器は、既存 NICU で使用している 10 台を新施設に移動し、本プロジェク

トでは 10 台を新規に調達し、合計 20 台とする。

既存施設に調達する機材は、CH の周手術期 PICU に設置する小児用人工呼吸器のみの予

定である。

機材計画

本計画では、新施設のコンポーネントの機能を充分に活用するために必要な機材を対象と

する。具体的には、下記の各コンポーネントに従った主要な医療機材を示す。

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表 3-3 主要な医療機材リスト

(出典:調査団作成)

配備部門 機 材 名 用 途 数量 日本製機材

の可能性

NICU

新生児保育器

呼吸や体温調節機能の未熟な早産児、低出生体重児

等を収容し、適切な温度・湿度・酸素濃度下で全身管

理を行う。

10 有り

インファントウォー

新生児の体温管理を行う。出産直後の新生児治療処

置に使用する。 10 有り

移動式 X線装置 ICU や病棟などで検査室までの移動が困難な患者へ

の X線撮影を行う。 1 有り

患者監視モニタ

患者に電極を取り付け、生体から出力される心電図、

脈拍、酸素飽和度、血圧などを常時測定し、患者の様

態を監視する。

20 有り

MFICU

超音波ネブライザ 薬剤または水分を霧状にし、患者が気道に吸入する

ための装置。 2 有り

除細動装置

心室細動、心房細動など重症の不整脈を起こした心

臓に対して電気ショックを与え、正常な心臓の拍動

に戻す装置。

1 有り

人工呼吸器 患児の呼吸機能を代行、補助、調整を行う。 6 有り

超音波診断装置 体表面や膣内などから、観察したい臓器に超音波を

当て、センサーが受信した画像から診断を行う。 1 有り

手術室

電動手術台

手術患者を手術部位や術式に応じて、様々な体位で

固定する際、手術台各所の角度や高さを電動で調節

する。

4 有り

電気メス 生体組織の切開と凝固を行い、止血しながら手術を

行う装置。 4 有り

麻酔器 全身麻酔を必要とする患者に、手術中に吸引させる

麻酔ガスの混合量の調節や管理を行う。 4 有り

腹腔鏡システム 腹部を切開して内視鏡を挿入し、腹腔内の観察、組織

採取、腫瘍・臓器切除術等を行うための装置。 1 有り

血液ガス分析装置 血液における酸素、二酸化炭素、pH 等の濃度を測定

する装置 1 有り

陣痛室・

分娩室

胎児ドップラ 胎児の心音を観察する。 2 有り

分娩台 産婦が仰臥位や座位に近い体位で出産介助や医療処

置を受けるための台。 2 有り

分娩監視装置 分娩時の胎児心拍数と産婦の子宮収縮(陣痛)を連続

的に検出、監視する。 2

CSSD

高圧蒸気滅菌装置 手術用鋼製器具、リネン類を高圧蒸気により滅菌す

る装置。 2

軟水製造装置 硬水を各種フィルター、イオン交換樹脂を介して軟

水化する装置。 1

臨床検査

遠心分離機 患者から採血した血液を血漿と血球に分離する。 2

輸血用冷蔵庫 輸血用血液を保冷する。 2

赤血球沈降速度測定

装置

臨床検査において、赤血球沈降速度(赤沈)の測定に

用いる。 1 有り

蒸留水製造装置 原水をボイラーで加温し、蒸留水を製造、保存する。 1 有り

ER

吸引器 患者の血液、分泌物等を吸引する。 3 有り

心電計

患者の胸部体表に電極を取り付け、心臓から発する

微弱な電気信号を増幅し、心電図波形を出力し、記録

する。

1 有り

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3.2.2.2 施設配置計画 施設の建設にあたっては、救急車両の通行のために構内道路を新たに引き込み舗装する。PIMS

構内には幅員約 8m の構内道路が巡っている。計画用地は、主たる構内道路には面していないも

のの、東側の構内道路まで約 100m 程度の距離にある。サービス車両は、新施設の南側にある乳

がん検査センター横からのサブ・アクセスが可能であるが、特に本協力で舗装することはしない。

CH 西側の敷地は将来計画があるということで、建設できるエリアが限られている。用地の南側

に施設を集約する配置計画とした。

先方要請において PIMS は、新施設を、既存 CH 及び MCHC と何等かの形で接続することを

要望した。調査団は一定の妥当性を確認したため、新施設と既存施設を結ぶ新たな渡り廊下を設

置することをプロジェクトに含めることとした。

図 3-3 施設配置計画

新施設

付属棟

IH

供給棟

救急車 車寄せ

既存

CH

既存

MCHC

乳がん検査センター

サービス

(サブ・

アクセス)

新設道路

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3.2.2.3 施設計画 平面計画

施設は、ER 外来、OT 部門、ICU、CSSD・医療機材管理部門、病棟等をもつ。ハイリスクで

緊急度の高い患者を対象とすることから、ストレッチャで容易にアクセスできる平面計画とす

る。手術室へはエレベーターを使用して速やかに患者を移送する。

ER 部門、事務管理室、機械室等(1 階)

新生児及びハイリスクな産婦人科患者の救急診療を行う。救急車や緊急車両で搬送される

患者は、速やかに救急処置室や上階手術室へエレベーターで搬送される。受付、会計等は、

エントランス・ホールに設置する。

事務室、空調機械室、医療ガス室、ポンプ室は 1 階裏手に設置する。平屋建ての別棟には、

音・振動・臭気等を発生させる諸室(発電機室、電気室、洗濯室、厨房)を配備し、本館施設

への影響を少なくする計画とする。

OT 部門、ICU、CSSD・医療機材管理部門(2 階)

ICU は OT から近く配置し、術前後の患者を速やかに搬送する。NICU と MFICU は待合を

挟んで向かい合い、必要な医療連携をとる。乳児 HDU と NICU は、機材庫や職員控室を共有

する。

CSSD は、OT、ICU や病棟で使用される器具・材料の管理・消毒・滅菌・配置を行う供給

部門であり、必要 小限の広さを持ちつつ、医療機材管理室と隣接して連携して業務にあた

る。

病棟(3 階)

産婦人科病棟と小児科病棟を計画する。エレベーターホールを挟んで対称的に設置し、関

係者以外が立ち入らないよう管理するため、主入口横にスタッフステーションを配置する。

病室は外周に面しており、自然光を部屋内に取り入れつつ、適切な遮光を行う。建物の中央

エリアに職員更衣室や共通薬品庫等の関連諸室を配置する。

屋上機械室(塔屋)

屋上には、エレベーター機械室、温水ボイラー等の給水設備、空調機械を設置する。

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■救急部門(1 階)

■手術/ICU 部門(2階)

■病棟部門(3階)

図 3-4 平面計画

新生児救急外来

産婦人科

救急外来

空調機械室

ポンプ室/

医ガス室

別棟機械室/

洗濯・厨房

エントランス

管理諸室

小児

MFICU

乳児

HDU NICU CSSD

手術部門

産婦人科病棟(50 床)

小児科病棟(50 床)

産婦人科

HDU

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表 3-4 各室面積

1階 室名 室

床面積/

室(m2) 備考

新施設共有部

541.96m2

エントランス、小児救急受付、産

婦人科救急受付 1 347.98

救急、病棟入口。

各科受付は会計も兼ねる

警備/中央監視室 1 27.20 24時間警備を前提とする。目視警備と火災等

の中央監視室を兼ねる。

薬局 1 37.13 患者が購入する薬の販売、調達。

検査室 1 31.68 臨床検査室。入院患者、術中検査、救急外来患

者用。(血液、生化学検査等)

医療機材・リネン庫 1 21.48 新生児科と産婦人科の共通とする。

医師宿直室 1 16.20 新生児科と産婦人科の共通とする。

職員宿直室 1 16.20 新生児科と産婦人科の共通とする。

当直用シャワー室 2 4.23 男女別

一般便所 2 17.82

産婦人科救急

472.43m2

救急診察室 3 18.36 産婦人科(重症患者)救急の診察を行う

救急診察バックスペース 1 18.60 看護師が3診察室の間を行き来する。

隔離診察室/便所 1 16.60 感染が疑われる症状の患者を診察する

処置室 1 49.00 救急患者の医療を行う

経過観察室 1 50.15 24時間までの患者の経過観察を想定

隔離経過観察室 1 16.10

スタッフステーション 1 39.42 救急スタッフ常駐。カウンター設置

薬品庫 1 8.55

書類・機材保管庫 1 12.45

医師室 1 19.08

職員休憩室 1 16.22

汚物室 1 5.20

医療器材庫 1 16.10

患者説明室 1 16.10

前室 1 8.38

中待ち/廊下 1 119.23

患者用便所/職員用便所 2 3.10

新生児救急

187.67m2

診察/処置/経過観察室 1 164.01 救急病床(6 コット)、処置室(診察台2台)

汚物室 1 9.12

患者説明室 1 10.55

管理部門

145.92m2

事務室 1 46.80 周産期医療センターの管理業務を行う。

電話・インターネット室、管理室便所

館長室 1 22.08

研修・コンファレンス室 1 22.80

更衣室、職員便所・シャワー室 1 54.24 男女別

機械室(主屋)

305.16m2

ゴミ置き場 1 22.20

空調機械室 1 148.40

ポンプ室 1 81.20 圧送ポンプ、貯水槽、軟水装置

医療ガス室(マニホールド) 1 53.36 中央供給式の医療ガスボンベ、圧縮空気

その他310.85m2 廊下・階段・便所・半屋外庭等 310.85

1階(主屋)床面積小計 1,960.00 主屋の屋内面積。屋外避難スロープ含まず

別棟

210m2

発電機室 1 49.00 400kVA発電機を設置、油庫併設

電気室 1 47.25 変圧器

洗濯室 1 49.00

厨房 1 34.65

外部便所 1 30.10

1階床面積合計 2,170.00 屋外避難スロープ・バルコニー含まず

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2階 室名 室

床面積/

室(m2) 備考

手術部門

630.73m2

前室 1 2.73

手術室前ホール 1 157.55

OT1 1 53.10 清浄度1000とする。(壁内矩面積:35.28)

OT2 1 50.15 清浄度1000とする。(壁内矩面積:32.88)

OT3 1 51.63 清浄度10000とする。(壁内矩面積:34.38)

OT4 1 51.63 清浄度10000とする。(壁内矩面積:34.38)

分娩室 1 53.81 分娩台2台を設置。ハイリスク、緊急分娩に対

応陣痛室 1 17.61

重症用陣痛室の他、手術前の手術待機室として

も機能。

回復室 1 51.63 4床。術後の経過を観察する

隔離回復室 1 14.98 1床

医療器材庫 1 9.54

汚物室 1 5.63

スタッフステーション 1 23.88

麻酔科医室 1 13.00

患者説明室 1 11.64

医療スタッフ更衣室・便所・シャワ

ー 1 62.26

手術前後の医師/職員の更衣室(便所、シャワ

ー室を併設)清潔区域と分離

CSSD

178.48m2

中CSSD 1 128.80 2区分構成を基本とし、洗浄室と清潔室に分け

る。

ME室/ワークショップ 1 25.20 医療機材の管理、貸出、維持管理、補修

医療機材庫 1 24.48 M&Eワークショップに隣接する

MFICU/HDU

262.50m2

MFICU 1 150.23 解放病床(5床)+感染隔離病床(1床)を設

置する。

産婦人科HDU 1 42.00 4床。MFICUのスタッフステーションからの看

護を想定する

産婦人科ICU関連諸室 1 70.28 前室、汚物室、スタッフステーション、薬品

庫、医療機材室、職員休憩室を併設

NICU/HDU

453.89m2

NICU 1 144.90 20 床

乳児HDU 1 147.00 20床

NICU関連諸室 1 107.99

ミルク調合/搾乳保管庫、患者説明室、汚物

室、スタッフ休憩室、医療機材庫は、NICUと

HDUで共用

待合 1 54.00

その他

495.34m2

多目的室 1 19.98 祈祷室やカンガルーケアなど多目的に使用

空調機械室 1 24.50

廊下・階段・便所等 1 330.86

渡り廊下 1 120.00 既存の渡り廊下と主屋をつなぐ内廊下

2階床面積合計 2,020.94

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室名 室

床面積/室

(m2) 備考

小児病棟

796.93m2

病室(6床) 8 46.38 6床を基本する。医療ガスを病床に設置

病室(2床) 1 28.80 便所を併設する。隔離室として使用する。

処置室 1 28.80

スタッフステーション 1 30.40

患者説明室 1 7.80

医師当直室 1 15.75

職員当直室 1 12.09

医療器材庫 1 13.50

汚物室 1 7.74 廊下の端部2ヵ所に設置する

患者便所 1 49.21 廊下の端部2ヵ所に設置する

患者シャワー室 1 8.09 2ブース

洗濯室 1 9.05 洗濯機等の機材設置は先方負担事項で実施

リネン庫 1 16.95 使用済み/清潔リネンを区別する

病棟廊下 1 197.76

産婦人科病棟

796.93m2

病室(6床) 8 46.38 6床を基本とし、医療ガスを病床に設置

病室(2床) 1 28.80 便所を併設する。隔離室として兼用する。

処置室 1 28.80

スタッフステーション 1 30.40

患者説明室 1 7.80

医師当直室 1 15.75

職員当直室 1 12.09

医療機材庫 1 13.50

汚物室 1 7.74 廊下の端部2ヵ所に設置する

患者便所 1 49.21 廊下の端部2ヵ所に設置する

患者シャワー室 1 8.09 2ブース

洗濯室 1 9.05 洗濯機等の機材設置は先方負担事項で実施

リネン庫 1 16.95 使用済み/清潔リネンを区別する

病棟廊下 1 197.76

共用

53.15m2

職員更衣室 2 9.13 職員更衣室、薬剤庫、パントリーは共有する。

職員便所・シャワー室 2 9.28

パントリー 1 13.74

共有薬剤庫 1 21.00

その他

178.33m2 階段・廊下等 1 178.33

3階床面積合計 1,825.34

施設面積 床面積(m2)

床面積

1階 2,170.00

2階 2,020.94

3階 1,825.34

3階バルコニー(一部) 43.28 *1)上部庇があり奥行2m以上の部分を算入

塔屋(屋上機械室) 165.22

延床面積 6,224.78

外部避難スロープ、バルコニー 706.75 *1)を除く

合計 6,931.53

(出典:調査団作成)

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断面・立面計画

1 階及び 2 階の処置室・手術室では、空調制御が必要であり天井懐を考慮して階高さは 4.0m

を基準とする。3 階の病棟の階高さは 3. 5m とする。屋根形状は、既存の陸屋根のメンテナン

スが難しい状況が認められたため、原則的に勾配屋根を採用する。

敷地が限られているため東西南北方向とも奥行の深い建物となっているが、平面の中央に半

屋外の採光・換気エリアを設ける。春秋の中間期には吹き抜けに面した窓を開け、エントラン

ス・ロビーや一般廊下等において積極的に自然換気を行い、エネルギー消費を抑制しつつ適度

な明るさと通風が得られるよう計画する。

現地の厳しい日射に配慮し、バルコニーや深い軒を設けることで日射を遮蔽する計画とする。

また、立面では、一部コンクリートブロック・スクリーンを設けて開口部の日射を遮蔽する。

構造計画

基礎構造計画

a) 現地再委託による地質調査と推奨基礎形状

標準貫入試験の結果による地盤の許容支持地耐力は、深さや場所により異なるが、10.2t/m2

~21.8t/m2 と報告された。標準貫入試験の結果のみを参照すると、国内解析で調査団が必要

と考えた想定接地圧の 10.2t/m2(100kN/m2)を満たしている。現地技術者が構造を検討し推

奨した基礎形状は、鉄筋コンクリートの直接基礎(比較的弱い地盤上に浮かせる筏状の構造)

である。

代表的な 1 点のみだが沈下量もあわせて検討され、深さ 1.5m で 15.8mm、深さ 2m で 17.7

mm、深さ 3m で 24.4mm となり、許容沈下量の 50mm 内である旨が報告された。基礎深さ

については、1 社は深さ 2m 以上を推奨し、1 社は深さ 3m を推奨した。これらの結果によ

り推奨された構造型式についてはパ国では問題がないと認識したが、引き続き国内調査で、

土質試験結果を分析した。

b) 国内解析における検討(概要設計での方針)

標準貫入試験と同時に行った土質試験の結果を国内解析において分析したところ、杭基

礎が望ましいという一定の結論が出た。このため、準備調査の概要設計では、二次設計まで

を含む日本基準で計算した杭基礎で設計をすすめ積算する。

この分析は、三軸試験結果等について日本国の建築告示による計算式で検討された。この

結果、現地地質調査で 1 点矛盾があった箇所の地耐力が、想定接地圧の 10.2t/m2(100kN/m2)

に満たなかった。土質試験用の試料が乱された可能性は否定できないため、追加調査で矛盾

地点の脇で標準貫入試験を追加で実施したところ、右地点の三軸結果の一部が想定接地圧

に満たない結果となった。

なお、プロジェクト実施時の建築許可申請ではパ国の PEC 登録技術者による図書作成が

必要であり、現地設計会社が構造計算を改めて行うため、構造設計が変わる可能性がある。

現地構造技術者へのヒアリングによると、イスラマバード市では本プロジェクトサイトに

類似する地質の場合、低層建物では表層改良も行わず直接基礎とすることが多く、支持地盤

まで到達する支持杭を採用するのは 10 階建て程度以上が一般的ということである。施工計

画上も、現地で打設できる杭の直径が限られており、拡底杭がない、病院敷地での騒音など

課題が多くあるため、詳細設計時に基礎形状を再度検討する。

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図 3-5 概要設計で検討された 2 種類の基礎型式(直接基礎と杭基礎)

上部構造計画

現地で一般的な工法である鉄筋コンクリート構造ラーメン架構とする。パ国建築基準の

省エネルギー条項を参照して断熱性能を確保するため、外壁は断熱材入り二重壁とする。

荷重

本プロジェクトで採用する仮定荷重及び外力は、現地の気象・地理・建物用途を考慮し、

次のように設定する。

ⅰ. 積載荷重

床構造計算用の積載荷重はパ国基準あるいは我が国の指針を参照し、おおむね以下の数値

を採用する。

・ 病室・諸室 1,900N/ m2 (パ国基準。日本国文部科学省設計指針は 1,800 N/ m2)

・ 手術室・診察室・検査室 3,900N/ m2(パ国基準なし、文科省指針による。)

ⅱ.地震荷重

パ国建築基準の耐震条項(Building Code of Pakistan Seismic Provision(以下、「BCP-SP-2007」

という)に準拠し、パ国の地震ゾーンマップにより計画する。対象地域は地震ゾーン 2B に

位置し、地動加速度は 0.16~0.24g である。

BCP-SP-2007 に基づき、設計用層せん断力(V)を以下の通り算出した。

a) 𝑉 𝑊. .

. .𝑊 0.595𝑊 (ただし b)より大きい必要なし)

b) V.

W. . .

.W 0.25W b) < a)

Ca = 地震係数 0.28(地震帯ゾーン 2B の Zone factor Z=0.2 及び地質タイプ SD。地質調査

結果による)

Cv =地震係数 0.4(地震帯ゾーン 2B の Zone factor Z=0.2 及び地質タイプ SD。地質調査

結果による)

I = 重要度係数 1.25 (グループ I、手術・救急処置あり)

R = 構造型式(RC ラーメン構造)3.5

T = 固有周期 (0.23=0.02x11.5m 高さ)

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(出典:Building Code of Pakistan (Seismic Provision -2007))

図 3-6 パ国建築基準耐震条項(BCP-SP 2007)地震帯地図

ⅲ. 風荷重

BCP-SP-2007 に基づき、標準的な内陸における風速 120km/時(約 33.3m/s)として設計す

る。

ⅳ. 材料の質

下記、または現地で一般的に使用されている同等品を採用する。

コンクリート:設計基準強度 Fc=24N/mm2

鉄筋:降伏強度 390N/mm2 、345N/mm2 、295 N/mm2

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電気設備計画

PIMS の敷地内には 11kV の高圧線が引き込まれており、PIMS 所有の 5 つの副変電所(Sub-

Station: SS、以下「SS」という)がループ型の電力供給網を形づくっている。新施設の電気負荷

は約 858kVA を見込んでおりプロジェクトでは 1,000kVA の変圧器を新設する。電気設備計画

の概要は以下の通り。

(出典;調査団が作成)

図 3-7 電気設備計画概要

受変電設備

・電力は、施設内の既設変電所(SS3)に11kV分岐遮断器を設置し、高圧電線(11kVケーブ

ル)地中埋設配線で本計画の別棟電気室まで11kV電力を引込む。なお、この引込工事はパ

国側負担とする。

・電気室内受電盤で11kV受電後、本工事で設置する変圧器 (1,000kVA)で降圧(3相4線

400V/230V)し、電気配線スペース(EPS)を経由し各階に設置の電気盤へ給電する。

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自家用発電機設備

発電機で対応する負荷の範囲は、下記の通りとする。

法負荷(消火ポンプ等)、ER・OT・ICU 諸室(MFICU・NICU・HDU)の照明及び特殊機器

用電源(絶縁変圧器回路)とした。その他のエリアについては照明(各室 1~2 灯)・雑コン

セント(各室約 1~2 個)程度の負荷、その他、ポンプ関連、エレベーターをカバーできる程

度で計画する。非常用発電機は 400kVA、運転時間は約 24 時間とし燃料タンクを準備する。

幹線設備

電気室内低圧配電盤二次側から各盤に至る配線は、ケーブルラック及び配管にて敷設する。

また、将来の負荷増設に対応できるように計画する。

・ 医療機器用クリーン電源として、AVR150kVAを設置する。

・ 手術用無停電装置(UPS)40kVA(5分)を設置する。

・ OT、NICU、HDU、MFICUには絶縁変圧器(アイソレーション・トランス)を設置し電

源供給を行う。

電灯・コンセント設備

・ LED照明を主体として採用し、エネルギー消費を抑える。非常用照明、誘導灯は現地法

規に従い設置する。

・ コンセント設備は一般雑コンセント(清掃用等)と医療機器用コンセント(基本2口E付)

を設置する。接地極付きとし、適正な設置個数を計画する。

・ 非常電源回路コンセントは他の一般コンセントと区別し赤色或は非常回路である旨をコ

ンセントプレートに明記する。

・ 水気の機器、屋外に設置のコンセントは漏電ブレーカ回路とする。

通信設備

・ LAN設備、電話設備は、スタッフステーション、事務室、管理室等に取出口を計画し配管

のみを設備する。通線及び電話機、関連機器は、パ国側負担とする。サーバー、ルーター等

の機器及び光ファイバー網の整備もパ国側負担とする。

・ 放送設備用スピーカを必要諸室に設置し、施設内連絡用及び非常時連絡用として計画す

る。

・ ナースコールはMFICU、HDU、手術回復室、隔離病床等に設置する。受信用機器は各エ

リアのスタッフステーション等で受信する。トイレには非常警報設備を設置する。イン

ターホンは計画しない。

・ 監視カメラは、パ国側負担とする。

避雷設備

内部雷対策として、突発的な過電圧・過電流(雷サージ)が、電子機器に進入するのを防

ぐ部品 (Surge Protective Device: SPD)を主要電源盤に設置する。外部避雷設備として、屋

上に棟上げ導体、避雷突針を2基設置し、地中の接地ループに接続する。

防災設備

自動火災報知設備をパキスタン消防法に従い設置し館内の火災監視を行う。

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空調換気設備計画

冷暖房設備

エントランス・ロビー、2 階待合室などの一般部へは天井扇を設置し、空気を循環させる。

中間期には自然換気を行うよう推奨する。また、病室についても、各室に天井扇を設置する。

既存病棟の有償病室には空調が整備されているが、本計画では協議において、有償病棟は優

先順位 C となった。このため病室空調は支援対象外とするが、将来、先方負担事項として

ルームエアコンを設置できるよう、エアコン用コンセントまでは本プロジェクトで実施す

る。

救急部門は、患者にとって適正な環境とするため、パッケージ・エアコン(外気処理エア

コン+マルチエアコン)を計画する。

手術室は必要十分な温湿度環境及び清浄度が要求されるため、各室にエアハンドリング・

ユニット(Air Handling Unit: AHU、以下「AHU」という)を設置して制御された冷房/暖房

及び除湿/加湿を行う計画とする。清浄度要求に対しては天井吹出口に HEPA フィルターを

設置する。AHU 用冷温熱源には、空冷チラー及びガス焚温水ボイラーを採用する。

分娩室や CSSD などの手術関連諸室、ICU 諸室は、一般温湿度環境を実現するため、系統

別のマルチエアコンを設置し、清浄度に対しては HEPA フィルター内蔵のファンフィルタ

ーユニットを設置する。本プロジェクトは重篤患者を対象としており、施設の清潔度を適正

に保つことを前提としている。月次点検で粒子量測定を実施し、3 年に一度などの適正頻度

で HEPA フィルター及びプレ・フィルターを交換する必要がある。

(出典:調査団作成)

図 3-8 手術室の空調換気構成図

換気設備

手術室と関連諸室、ICU 系各室は、清浄度を維持することが要求されるため、空調機械に

より外気を処理・導入し、陽圧保持のため差圧ダンパにより周辺室に排出する計画とする。

一般居室は自然給気+機械排気を主体とし、陰圧対象となる隔離室、便所・汚物室・シャワ

ー室等の臭気・湿気発生室には機械排気を設置する。隔離室用排風機は、人の通らない場所・

高さで開放する。以下に、清浄度が求められる室の空調、換気レベルを示す。

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表 3-5 主要室の清浄度レベル レベル ゾーン名称 用途 清潔 0.5 100 1,000 10,000 100,00 室圧

Ⅰ 高度清潔区 適用なし +++

Ⅱ 清潔区域

OT1・2 ++

OT3・4 ++

Ⅲ 準清潔

区域

分娩室, 手術ホール, 回復室、CSSD,

MFICU,産婦人科 HDU, NICU,

乳児 HDU

医療器材庫(手術室付)

+

隔離回復室(手術室付) -

Ⅳ 一般区域

一般病室, スタッフステーション,

救急外来(診察・処置), 薬局

Ⅴ 汚染管理区 産婦人科救急隔離診察室,

産婦人科救急隔離経過観察室

拡散防止区 汚物室, 便所, シャワー室,

共有キッチン

(出典:調査団作成)

自動制御設備

手術室用の空調機・熱源機器の温湿度制御、ポンプ・ファン類の発停制御、各設備の中央

監視、及びエアコン等のリモコン配線を行う。

給排水衛生設備計画

給水設備

PIMS 敷地内には高架水槽が 4 基あり、PIMS 各施設へはそこから重力給水されている。

高架水槽 1 から MCHC への埋設管が新施設計画地を通っているため先方負担による盛替え

が必要である。盛替え後、給水主管から新施設へ分岐し給水する。以上を含めた、PIMS 敷

地内配水管から本施設近くまでの引き込み工事はパ国側負担とする。水量としては、高架水

槽 1 への揚水量は 400 ガロン(1,818L)/分で、揚水ポンプは 24 時間/日稼働している(PIMS

にある他 3 台の揚水ポンプは 12 時間/日の稼働)。他棟の使用水量を想定しても充分な水量

と言える。

上記高架水槽に十分な量の水が貯水され 24 時間重力で供給されていることを考慮して、

給水方式は直結増圧ポンプによる圧送とする。給湯系及び加湿系の軟水は、増圧ポンプの上

流で分岐し軟水処理を行い、軟水用受水槽から加圧給水ポンプ式により必要各所に給水す

る。オートクレーブ用は装置側で別途軟水処理を行う。

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(出典:調査団作成)

図 3-9 給水・給湯ダイアグラム

概算給水量は以下の通り。

表 3-6 給水量・給湯量概算

対 象 想定人数

[人]

単位給水量

[L/人・日]

日給水量

[L/日]

単位給湯量

[L/人・日]

日給湯量

[L/日]

NICU + 乳児 HDU 40 500 20,000 150 6,000

MFICU + 産婦人科 HDU 10 500 5,000 150 1,500

病床(小児) 50 500 25,000 150 7,500

(産婦人科) 50 500 25,000 150 7,500

合 計 75,000[L/日] 22,500[L/日]

(出典:調査団作成)

給湯・加湿用の軟水用受水槽は、加湿補給水量は少ないため、1 日給湯量の 50%相当とす

る。中仕切り付きの 2 槽式 FRP(繊維強化プラスチック製)受水槽を採用し、清掃等メンテ

ナンス時に給水停止とならないようにする。

受水槽(軟水)容量=22,5000(L/日)×0.5÷1,000≒12(m3)

飲料水については、既存病院ではウォーターサーバーが設置されており、本プロジェクト

においても先方負担で設置する。

排水設備

汚水・雑排水は建屋内分流、屋外合流方式とする。MCI の衛生局によると、排水水質基準

及び浄化槽の設置規定はない。しかし本計画では、一定規模の公共施設であることを考慮し

て汚水浄化槽を設置する。汚水は浄化のち雑排水管と合流して、自然流下で PIMS 内の既設

排水主管に接続する。既設排水管は、敷地外で南面道路の公共下水道(10 インチ=250mm)

へ接続しており、雑排水を放流する。雨水は敷地内雨水桝に接続して放流する。

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給湯設備

シャワー・医療用手洗いなどの必要箇所に供給する。屋上に設置する、ガス焚無圧温水ヒ

ーターと貯湯槽により、各所に循環させる計画とする。

衛生器具設備

各水回り諸室に衛生器具を設置する。

ガス設備

屋上に設置するボイラー、厨房機器の熱源として、都市ガスを利用する。先方負担工事で、

既設配管から分岐して新施設の取入れ口まで引き込む。既設配管の盛替え(増径、125A 程度)

と、本施設近くまでの引き込み工事はパ国側負担とする。

医療ガス設備

新施設においては、原則として医療ガス室からの中央式の供給システムを採用する。新

施設の医療ガス室に、酸素、窒素、笑気、医療用空気(コンプレッサー)、吸引(バキュー

ムポンプ)を設け、各所に供給する。

酸素は、パ国側負担で、敷地内の液化酸素 CE タンクから新施設の取り入れ口まで供給

される。本プロジェクトは取り入れ口以降を整備の対象とする。

なお、先方負担項目として可能性のあった、既設液化酸素 CE タンクの容量増加(CE5 タ

ンク:5,000 m3 から CE10 タンク:10,000 m3 への挿げ替え)について検討した結果、現在の

周辺医療施設への供給頻度及び本計画の希求量から推測して、容量増加の必要はないとい

う結論に至った。しかし、PIMS が購入する液化酸素の供給頻度は、現在の 4 日に 1 度に比

べてより頻繁になる可能性は高い26。PIMS は、新施設で見込まれる酸素消費量 52,380L に

加えて、周辺の既存施設での酸素消費量を考慮して、タンク増設の是非、タンクローリー車

による液化酸素供給頻度を決定する必要がある。

消火設備

現地消防局では、10 万リットルの消火水槽(100 m3)、屋内消火栓、消火ポンプ、消火器、

1 万リットル(10 m3)の高架水槽、消防ポンプ 3 台(ディーゼル式と電気式 1,620LPM を 1

台ずつ,ジョッキーポンプ電気式 180LPM)を設置するよう指導があった。このうち、本プロ

ジェクトでは、施設横に地下埋設の消火水槽を設けてポンプで圧送する計画とし、屋内消火

栓及び消火器までを設置する。高架水槽及び消防ポンプ 3 台はパ国側負担事項とするが、先

方負担事項の詳細については実施開始後、PIMS を含めた行政協議で決定される。

厨房器具設備

別棟の厨房に厨房器具設備を設置する。

洗濯設備

別棟の洗濯室に必要設備を設置する。

26本施設の酸素使用量(気体)は、52,380L/日と試算している。液化酸素 CE5 タンク:5000 ㎥の気体換算値は 380 万リットル

程度。現在は、4 日に 1 度タンクローリー車が液化酸素を補給しており、タンクが 1/3 になった時点での補給と仮定すると、現

在の MCHC、CH、BCC の使用量が推測できる。これに新施設分を加えて計算すると、3.7 日に 1 度以上の補給が必要となると

試算できる。

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建築資材計画

一般的な建築資材及び仕上げ材は、原則として、現地において使用され、調達及び維持管理

が可能なものとする。主要な外部仕上げ、内部仕上げは、下記のとおり。

表 3-7 構造仕様・主要内外部仕上げ・外部施設仕様リスト 構造仕様

棟名 仕様 備考

病棟 RC ラーメン構造

附属棟 RC ラーメン構造

外部仕上げ

部位 仕上げ 備考

屋根

下地の上に、シングルセメント(1.1kg/㎡)ア

スファルトシングル(2.8mm 厚)葺き

(下地)RC 傾斜スラブに

水性プライマー塗布の

上、防水シート 1.5mm2 層

渡り廊下陸屋根 アスファルト防水

バルコニー ウレタン防水塗布

屋外避難スロープ 粗面テラゾブロック 300 角貼り 点字用ブロック(段面)

外壁 モルタル塗りの上 EP/塗装、あるいはウレタン

樹脂塗装

外部建具 鋼製建具、アルミサッシ

内部仕上げ

室系統 仕上げ

床 巾木 壁 天井

エントランス 石貼り 30 mm 石貼り 150 mm モルタル下地 EP 塗装 岩綿吸音板

救急部門 テラゾブロック 300

㎜角 テラゾブロック モルタル下地 EP 塗装 岩綿吸音板

管理事務室 テラゾブロック 300

㎜角 テラゾブロック モルタル下地 EP 塗装

ケイ酸カルシウム板

6㎜の上、EP 塗装

医療ガス室 防塵塗装 モルタル モルタル下地 EP 塗装 天井現し

空調機械室 防塵塗装 モルタル グラスウール 100 ㎜ グラスウール 100 ㎜

OT 人造石研ぎ出し ステンレス メラミン不燃化粧板 メラミン不燃化粧板

3㎜

CSSD テラゾブロック 300

㎜角

テラゾブロック

100 mm モルタル下地 EP 塗装 岩綿吸音板 12.5mm

ICU テラゾブロック 300

㎜角

テラゾブロック

100 mm モルタル下地 EP 塗装 岩綿吸音板 12.5mm

病室 テラゾブロック 300

㎜角

テラゾブロック

100 mm モルタル下地 EP 塗装 岩綿吸音板 12.5mm

医療機材庫 テラゾブロック 300

㎜角

テラゾブロック

100 mm モルタル下地 EP 塗装 石膏ボード 9.5mm

便所 タイル貼り 100 ㎜角 タイル貼り 100

㎜角 タイル貼り 200 ㎜角

ケイ酸カルシウム板

6㎜

廊下 テラゾブロック 300

㎜角

テラゾブロック

100 mm モルタル下地 EP 塗装 岩綿吸音板 12.5mm

外構仕様

名称 仕様

アクセス道路 アスファルト塗装(乗用車用)

アプローチ(エントランス廻り) コンクリート 150 ㎜+石貼り 35mm(歩行用)

サービスヤード舗装 インターロッキング 60mm(歩行用)

(出典:調査団作成)

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3.2.2.4 機材計画 医療機材

以下に日本支援による医療機材リストを示す。優先順位 B、C の機材は先方負担で整備され

る旨、ミニッツ協議で合意した。

表 3-8 日本の無償資金協力の支援による医療機材リスト

S# 機材名(英) 機材名(和) 数量 部門 優先

順位

1. Mobile X ray machine 移動式 X線装置 1 NICU A

2. Infant Warmer インファントウォーマ 10 HDU A

3. Infant Scale インファントスケール 1 ER A

4. Infant Scale インファントスケール 2 Ward A

5. Patient Warming System 温風式加温装置 4 OT A

6. Jaundice meter 黄疸計 2 NICU A

7. Vacuum Extractor 吸引娩出器 2 DR A

8. Phototherapy unit 光線治療器 5 NICU A

9. Blood gas analyzer 血液ガス分析装置

(ポータブルタイプ)

1 NICU A

10. Biliblanket ビルブランケット 5 NICU A

11. Obstetric Examnation Table 産科診察台 3 ER A

12. Obstetric Examnation Table 産科診察台 2 Ward BB

13. Doppler Fetus Detector 胎児ドップラ 2 DR A

14. Doppler Fetus Detector 胎児ドップラ 1 ER A

15. Doppler Fetus Detector 胎児ドップラ 5 Ward BB

16. Infant Incubator 新生児保育器 10 NICU A

17. Infant Incubator 新生児保育器 1 HDU A

18. Transport Incubator 新生児保育器(搬送用) 1 NICU A

19. Transport Incubator 新生児保育器(搬送用) 1 HDU A

20. CTG Monitor 分娩監視装置 2 DR A

21. Delivery Table 分娩台 2 DR A

22. Patient monitor 患者監視モニタ 20 NICU A

23. Patient monitor 患者監視モニタ 6 MFICU A

24. Patient monitor 患者監視モニタ 10 HDU A

25. Patient monitor 患者監視モニタ 6 OT A

26. Patient monitor 患者監視モニタ 5 ER A

27. Patient monitor 患者監視モニタ 2 Ward BB

28. Defibrillator 除細動装置 1 MFICU A

29. Defibrillator 除細動装置 1 OT A

30. Defibrillator 除細動装置 1 ER A

31. Defibrillator 除細動装置 1 Ward A

32. ECG Machine 心電計 1 NICU A

33. ECG Machine 心電計 1 MFICU A

34. ECG Machine 心電計 1 ER A

35. Vital Sign Monitor バイタルサインモニタ 4 Recovery Room A

36. Ventilator 人工呼吸器 6 PICU A

37. Ventilator 人工呼吸器 6 MFICU A

38. Syringe Pump シリンジポンプ 20 NICU A

39. Syringe Pump シリンジポンプ 6 MFICU A

40. Syringe Pump シリンジポンプ 4 OT A

41. Infusion Pump 輸液ポンプ 10 NICU A

42. Infusion Pump 輸液ポンプ 2 MFICU A

43. Infusion Pump 輸液ポンプ 4 OT A

44. Ultrasound Diagnostic

Machine

超音波診断装置 1 MFICU A

45. Ultrasound Diagnostic 超音波診断装置 1 DR A

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68

Machine

46. Ultrasound Diagnostic

Machine

超音波診断装置 1 ER A

47. Ultrasonic Nebulizer 超音波ネブライザ 5 NICU A

48. Ultrasonic Nebulizer 超音波ネブライザ 2 MFICU A

49. Ultrasonic Nebulizer 超音波ネブライザ 3 HDU A

50. Ultrasonic Nebulizer 超音波ネブライザ 3 ER A

51. Ultrasonic Nebulizer 超音波ネブライザ 4 Ward A

52. Laparoscope 腹腔鏡システム 1 OT A

53. Pressure bag with inflating

Cuff for BP machine

加圧バッグ 8 OT A

54. Blood gas analyzer 血液ガス分析装置 1 OT A

55. Operating Light (Stand

type)

手術用ライト(可動式) 2 DR A

56. Vein Finder (IR) 静脈穿刺トランスイルミネ

ータ

3 NICU A

57. Surgical Diathermy Machine 電気メス 4 OT A

58. Electric OT table 電動手術台 4 OT A

59. Bubble CPAP バブル CPAP 5 NICU A

60. Anesthesia Machine 麻酔器 4 OT A

61. High Pressure Steam

Sterilizer(Large size)

オートクレーブ(大型) 2 CSSD A

62. Washer Disinfector ウォッシャーディスインフ

ェクタ

1 CSSD BB

63. Sterilized bag sealler 滅菌シーラー 2 CSSD A

64. Water softner 軟水製造装置 2 CSSD A

65. Low Temperature Sterilizer 低温滅菌装置 1 CSSD BB

66. Tube Dryer チューブ乾燥機 1 CSSD BB

67. System Dryer システム乾燥機 1 CSSD BB

68. Ultrasonic washer 超音波洗浄装置 1 CSSD A

69. Suction Unit 吸引機 3 NICU A

70. Suction Unit 吸引機 9 OT A

71. Suction Unit 吸引機 2 DR A

72. Suction Unit 吸引機 3 ER A

73. Emergency Treatment Bed 救急処置用診察台 1 ER A

74. Ophthalmoscope 検眼鏡 1 NICU BB

75. Fiber Optic Laryngoscope ファイバーオプティクス

喉頭鏡

1 MFICU BB

76. Fiber Optic Laryngoscope ファイバーオプティクス

喉頭鏡

4 OT A

77. Fiber Optic Laryngoscope ファイバーオプティクス

喉頭鏡

2 ER BB

78. Fiber Optic Laryngoscope ファイバーオプティクス

喉頭鏡

1 Ward BB

79. LED- X ray Illminator シャーカステン 1 NICU A

80. LED- X ray Illminator シャーカステン 4 OT A

81. LED- X ray Illminator シャーカステン 2 Ward A

82. Laryngoscope for infant 小児用喉頭鏡 1 NICU A

83. Laryngoscope for infant 小児用喉頭鏡 1 ER BB

84. Laryngoscope for infant 小児用喉頭鏡 1 Ward BB

85. Examination Light

(Mobile type)

診察用ライト 5 ER A

86. Adult Scale 身長計(大人用) 2 ER A

87. Adult Weighing Scale 体重計(大人用) 2 Ward A

88. Digital Baby Weighing Scale デジタル体重計

(新生児用)

2 NICU A

89. Incubator 新生児保育器 1 LAB A

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69

90. Centrifuge 遠心分離機 2 LAB A

91. Water Distilling Apparatus 蒸留装置 1 LAB A

92. Blood Sedimentation Set 赤血球沈降速度測定装置 1 LAB A

93. Micropipette マイクロピペット 10 LAB A

94. Stretcher ストレッチャ 1 MFICU A

95. Stretcher ストレッチャ 2 OT A

96. Stretcher ストレッチャ 2 ER A

97. Stretcher ストレッチャ 2 Ward A

98. Gadged Bed ベッド(ギャッジタイプ) 6 HDU A

99. Gadged Bed ベッド(ギャッジタイプ) 5 ER A

100. Gadged Bed ベッド(ギャッジタイプ) 75 Ward A

101. Gadged Bed ベッド(ギャッジタイプ) 4 Recovery Room A

102. Gadged Bed ベッド(ギャッジタイプ) 2 Labor Room A

103. Motorized Gadged Bed ベッド(ギャッジタイプ、

電動式)

6 MFICU A

104. Motorized Gadged Bed ベッド(ギャッジタイプ、

電動式)

3 ER A

105. Bed for infant ベッド(小児用) 25 Ward A

106. Baby Cradle ベビーコット 20 HDU A

107. Baby Cradle ベビーコット 6 ER A

108. Examination Table for

Infant

患者処置台(新生児用) 2 ER BB

109. Examination Table for

Infant

患者処置台(新生児用) 2 Ward BB

110. Medicine Refrigerator 薬品用冷蔵庫 1 NICU A

111. Medicine Refrigerator 薬品用冷蔵庫 1 MFICU A

112. Medicine Refrigerator 薬品用冷蔵庫 1 HDU A

113. Medicine Refrigerator 薬品用冷蔵庫 1 LAB BB

114. Medicine Refrigerator 薬品用冷蔵庫 2 ER A

115. Medicine Refrigerator 薬品用冷蔵庫 3 Ward A

116. Blood Bank Refrigerator 血液保冷庫 1 OT A

117. Blood Bank Refrigerator 血液保冷庫 1 LAB A

118. Oxygen Humidifier 壁掛式酸素湿潤器 14 NICU BB

119. Oxygen Humidifier 壁掛式酸素湿潤器 6 MFICU BB

120. Oxygen Humidifier 壁掛式酸素湿潤器 24 HDU BB

121. Oxygen Humidifier 壁掛式酸素湿潤器 5 OT BB

122. Oxygen Humidifier 壁掛式酸素湿潤器 2 DR BB

123. Oxygen Humidifier 壁掛式酸素湿潤器 10 ER BB

124. Oxygen Humidifier 壁掛式酸素湿潤器 12 Ward BB

125. Oxygen Humidifier 壁掛式酸素湿潤器 4 Recovery Room BB

126. Wall Suction Unit 壁掛式吸引器 14 NICU BB

127. Wall Suction Unit 壁掛式吸引器 6 MFICU BB

128. Wall Suction Unit 壁掛式吸引器 22 HDU BB

129. Wall Suction Unit 壁掛式吸引器 4 OT BB

130. Wall Suction Unit 壁掛式吸引器 2 DR BB

131. Wall Suction Unit 壁掛式吸引器 2 ER BB

132. Wall Suction Unit 壁掛式吸引器 6 Ward BB

133. Wall Suction Unit 壁掛式吸引器 2 Recovery Room BB

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70

表 3-9 先方負担による医療機材リスト(優先順位 B 及び C)

S# 機材名(英) 機材名(和) 数量 部門 優先

順位

1. Anesthesia Trolley 麻酔カート 5 OT C

2. Instrument Trolley 処置用カート 1 DR C

3. Obstetric Examination Table 産科診察台 2 ER C

4. Sample Storage Racks 検体収納ラック

4 LAB

Hematology C

5. Diagnostic set 診断処置用器具セット 2 NICU C

6. EEG Machine 脳波計 1 NICU C

7. Infrared Thermometer 赤外線温度計 2 NICU C

8. Medicine Cart 医薬品カート 1 NICU C

9. Miscellaneous Instruments 多目的処置用器具セット 5 NICU C

10. Resuscitation Cart 蘇生カート 1 NICU C

11. Stethoscope 聴診器 10 NICU C

12. Transport case for diagnostic

samples

検体搬送用ボックス 1 NICU C

13. Resuscitation Trolley 蘇生カート 3 MFICU C

14. Medicine Trolley 医薬品カート 2 MFICU C

15. Stethoscope 聴診器 10 MFICU C

16. Treatment Instrument set 処置用器具セット 3 MFICU C

17. Transport case for diagnostic

samples

検体搬送用ボックス 1 MFICU C

18. Emergency cart 救急カート 1 HDU C

19. Medicine Cart 医薬品カート 1 HDU C

20. Treatment Instrument set 処置用器具セット 1 HDU C

21. Stethoscope 聴診器 10 HDU C

22. Transport case for diagnostic

samples

検体搬送用ボックス 1 HDU C

23. Infant Incubator 新生児保育器 1 OT C

24. Miscellaneous Surgical

Instrument Set

多目的外科処置用器具セット 10 OT C

25. Anesthesia Cart 麻酔カート 4 OT C

26. Instruments Table 処置台 6 OT C

27. Mayo Table メイヨー台 6 OT C

28. Transport case for diagnostic

samples & blood

血液検体搬送用ケース 2 OT C

29. Miscellaneous Delivery

Instrument Set

多目的分娩処置用器具セット 5 DR C

30. Stethoscope 聴診器 2 DR C

31. Sphygmomanometer 血圧計 2 DR C

32. Anesthesia Cart 麻酔カート 2 DR C

33. Instruments Table 処置台 2 DR C

34. Water bath 恒温水槽 1 LAB C

35. Vortex Mixer 撹拌機 1 LAB C

36. Autoclave オートクレーブ 1 LAB C

37. Drying Sterilizer 乾熱滅菌装置 1 LAB C

38. Electronic Balance 電子天秤 1 LAB C

39. Tally Counter 血球計数カウンター 2 LAB C

40. Vacuum Extractor 吸引娩出器 1 ER C

41. Emergency cart 救急カート 1 ER C

42. Medicine Cart 医薬品カート 1 ER C

43. Stethoscope 聴診器 5 ER C

44. Sphygmomanometer 血圧計 1 ER C

45. Miscellaneous Instruments &

Table

多目的処置用器具セットとテーブル 1 ER C

46. Emergency cart 救急カート 4 Ward C

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47. Medicine Cart 医薬品カート 4 Ward C

48. Stethoscope 聴診器 10 Ward C

49. Sphygmomanometer 血圧計 10 Ward C

50. ECG Machine 心電計 2 Ward C

51. Surgical Instrument Set 外科用処置セット 4 Ward C

52. Child Birth Simulator for all

stage of labor and delivery

分娩シミュレータ 1 Others C

53. OB/GY Ultrasound Simulator with

Low frequency, High risk fetal

cases

胎児超音波診断シミュレータ

1 Others C

54. Air way scope エアウエイスコープ 1 NICU B

55. Infant meter 身長計(小児用) 2 NICU B

56. Ventilator for Neonatal 新生児用人工呼吸器 6 NICU B

57. Oxygen Hood 酸素テント 10 NICU B

58. Pulse oximeter パルスオキシメータ 5 NICU B

59. Bronchoscope 気管支鏡 1 NICU B

60. Infant meter 小児用身長計 1 MFICU B

61. Nerve Stimulator 神経刺激装置 1 OT B

62. Cystoscope No flexible type

(Hard type)

膀胱鏡 1 OT

B

63. Suction Irrigation Unit イリゲータ 1 OT B

64. Infant Scale 小児用体重計 1 OT B

65. Operating Hysteroscope 子宮鏡 1 OT B

66. C-Arm Fluoroscope 外科用イメージ X線装置(C アーム) 1 OT B

67. Ultrasonic Scalpel 超音波手術装置 1 OT B

68. Ultrasound Diagnostic Machine 超音波診断装置 1 OT B

69. Operation Microscope 手術用顕微鏡 1 OT B

70. Air way scope エアウエイスコープ 1 OT B

71. Automated Biochemistry Analyzer 自動生化学分析装置 1 LAB B

72. Hematology Analyzer 血球計数アナライザ 1 LAB B

73. Electrolyte Analyzer 電解質アナライザ 1 LAB B

74. Blood gas analyzer 血液ガス分析装置 1 LAB B

75. Infant Warmer インファントウォーマ 1 ER B

76. Ultrasound Diagnostic Machine

(Portable type)

超音波診断装置(ポータブルタイプ) 1 WARD

B

77. Mobile X ray machine 回診用 X線装置 1 WARD B

その他の機材(家具など)

新施設の一般家具については、原則的に先方負担で整備される旨をミニッツ協議で合意した。

(資料「ミニッツ協議録(2018 年 11 月 28 日署名版)」参照。)一般家具とは、机、椅子、ファ

イル・キャビネット、ミーティング・テーブル、休憩室テーブル、ホワイトボード等であり、

総数は 189 点である。これらの家具は、次項「3.2.3 概略設計図」の平面図において破線及び

ハッチで示されている。竣工引き渡し後、速やかに PIMS により整備される必要がある。

その他、造作家具、棚、別棟の厨房機器、洗濯室の機器については、日本支援スコープに含

まれる。施設スコープと同様に、プロジェクト実施の際にコンポーネント調整が必要となった

場合、洗濯室、厨房は対象外とする可能性がある。

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72

3.2.

3 概略設計図

図 3

-10

配置図

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73

図 3

-11

1階平面図

1:30

0

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74

図 3

-12

2階平面図

1:3

00

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75

図 3

-13

3階平面図

1:3

00

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図 3

-14

北立面図・南立面図

1:3

00

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77

3-1

5 西立面図・東立面図

1:3

00

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3.2.4 施工計画/調達計画

3.2.4.1 施工方針/調達方針 無償資金協力事業

本計画は日本国政府の無償資金協力事業として実施されることが想定されている。計画の実

施には日本国政府の閣議決定を必要とする。閣議決定後、本プロジェクトの事業実施に関する

交換公文(以下「E/N」という)が両国政府間で締結され、G/A が JICA と相手国政府の責任機

関の間で締結される。

コンサルタント契約

日本国政府の無償資金協力の枠組みに従って、本事業のカウンターパートである PIMS と本

邦コンサルタント会社が業務契約を締結し、JICA による認証を受ける。本計画は施設建設と機

材調達がある。これを遂行するため監理契約を締結する。JICA による契約認証後、本準備調査

報告書に基づき、施設計画においては詳細設計図面及び入札図書の作成、機材計画においては

入札図書の作成を行い、PIMS に説明し同意を得る。日本国法人の建設会社、機材調達会社を

対象とした競争入札を実施し、パ国政府は選定された企業と建設工事契約、機材調達契約を締

結する。無償資金協力で実施する施設建設・機材調達にかかる本邦コンサルタント業務は以下

の通り。

詳細設計

建築計画の詳細を決定し、必要に応じて機材計画の見直しを行う。パ国法令に則り、建設

許可申請に必要な技術図書(設計・構造・消防・その他)を、パ国登録技術者として認証され

た現地設計会社を活用して作成する。なお、パ国側分担事項に関して、実施機関と緊密な連

絡をとり、調整する。特に工事着手前に実施が必要な先方分担事項に関しては、先方の予算

確保等の措置が必要である。

詳細設計では入札図書を作成し、費用見積も算出する。詳細設計図、仕様書、入札条件書、

施設建設工事契約書案、機材調達・据付工事契約書案を作成する。

入札管理

パ国政府の合意を得た上で、入札公示、資格審査、入札評価等の業務を実施する。また、

選定された本邦会社とパ国政府との施設建設工事契約の締結、機材調達・据付工事の締結、

及び JICA 認証取得のための、支援業務を行う。

施工監理・機材調達監理

コンサルタントは、施工会社及び機材調達会社が実施する業務について、契約の適正な履

行を確認する。計画実施を促進するため、コンサルタントは公正な立場に立ち、建設工事会

社や機材調達会社への助言、指導だけでなく、全ての関係者の調整を行う常駐監理者を派遣

する。

瑕疵検査、メーカー保証期間満了前検査

工事完了後の 1 年間の瑕疵期間満了前に瑕疵検査、メーカー保証期間満了前検査を実施する。

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79

実施体制

本計画の無償資金協力業務の実施機関は以下の通り。

連邦保健省、PIMS

本プロジェクトにおけるパ国の主管省庁は連邦保健省、実施機関は PIMS であり、G/A に

基づき案件を監理し、パ国側負担事項を履行する。本邦企業と設計監理契約、機材調達監理

契約、建設工事契約、機材調達契約を締結し、施主として必要な手続き、業務を実行する。

なお、プロジェクト実施中の管理は、業務調整ユニット(Project management Unit: PMU、以下

「PMU」という。) が引き渡しまでの管理を実施する。PMU の人件費については PC-1 に計

上済みである。

JICA

JICA は、日本の無償資金協力の制度に則り、パ国側機関と G/A を締結し、本協力の日本国

政府の実施機関として本計画の実施促進に必要な業務を行う。

コンサルタント

コンサルタント契約に基づき、詳細設計、入札支援、施工・調達監理を実施する。

建設工事会社及び機材調達会社

本プロジェクトは、施設建設工事及び医療機材の調達・据付工事からなる。建設工事会社、

機材調達会社は、それぞれ、本邦企業を対象にした競争入札により選出される。パ国政府と

建設工事契約、機材調達契約を締結し、契約に基づき業務を履行する。本邦会社は必要に応

じて、パ国内の施工会社、調達会社を活用して工事・調達を遂行する。

竣工時、機材調達終了時には、本邦会社は、PIMS に対し当該機材の操作と維持管理に関す

る情報提供を行い、必要に応じて技術指導を行う。また、機材引渡し後においても、有償で

主要機材のスペアパーツ・消耗品の供給及び技術指導を協力対象施設が受けられるよう、メ

ーカー、代理店との協力を基に後方支援を行うことを想定する。

無償資金協力で実施される本計画の、業務実施担当者の相互関係は、下図の通りである。

(出典:調査団作成)

図 3-16 事業実施関係図

JICA

本部

 コンサルタント

    契約   ・各契約書の認証               機材調達

   ・詳細設計の同意 契約

   ・入札図書の同意

   ・工事進捗状況の報告

   ・詳細設計図の作成

   ・入札仕様書の作成

   ・入札業務の作代行

   ・管理業務の実施   ・機材の調達・設置

機材調達・据付会社

  ・建設資機材の調達

  ・施設建設工事

  ・家具・備品の調達・設置

施設施工会社

日本国政府

工事契約

在パキスタン

日本国大使館

パキスタン国政府

イスラマバード

医科学研究所

(PIMS / PMU))

日本のコンサルタント

E/N

G/A

施工・調達監理

パキスタン事務所

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80

3.2.4.2 施工上/調達上の留意事項 施工上の留意点

工程管理

工程を管理する上での留意事項は、ラマダン及びイード期間中の作業効率の低下である。

ラマダンの 1 ヵ月及びイード 2 週間は、ワーカーは休暇を取るため、この期間中はほぼ工事

が行われない状況となる。次に、最高気温が 30℃を超える夏季のコンクリート工事であるが、

本工事ではレディーミクストコンクリートを使用する計画であり、気温が下がる夜間にコン

クリートを打設することも検討する。

また 8 月、9 月にはゲリラ豪雨の様な短時間に 60mm~80mm/時間の降雨が報告されてお

り、工事進捗に支障を生じる事があり留意が必要である。

工事においては、PIMS、邦人コンサルタント、本邦施工会社により定期的に会議を開催し、

工程や問題点等を確認・協議し、協働して着実にプロジェクトを進捗させる。

安全管理

プロジェクトサイトは PIMS の既存施設に囲まれており、多数の歩行者が敷地内を通過し

ている。施設建設時には、安全確保のため対象地をフェンスで囲う。このため、既存歩行者

用通路に代わる迂回路を PIMS が設定する。着工前に、PIMS と迂回ルートの位置について協

議する。また建設車両が PIMS 敷地に入るための通用口の位置、進入可能時間帯、通用口か

ら建設地に至るルートを双方で確認する。

その他

現在、イスラマバード市内では、様々なテロ対策が実施されている。諸省庁、主要オフィ

ス・ホテル、スーパー商業施設等大勢の人の集まる施設では、出入口で金属探知機の設置や

銃を携帯する警備員の常駐など、厳重な治安対策が実施されている。本計画では下記の対策

を実施する。

・ プロジェクトサイトの警備:プロジェクトサイトは複数名のガードマンにより 3 交代

の 24 時間体制にて警備を実施する。

・ 邦人関係者の宿泊施設の安全性:警備体制の整っている市内のサービスアパートメン

トなどの宿泊施設の利用を想定する。

・ 気温が低い夜間にコンクリート打設を行うなど夜間作業が避けられないことが予想さ

れるため、周囲の建物に対して影響を軽減するよう配慮する。

・ 本案件では現地技術から乖離しない工法を前提としており、希求される品質管理を行

うために、国際事業に慣れているパキスタン建築技術者を確保し、本邦コンサルタン

トと共に工事監理を実施する。

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81

機材調達上の留意点

内陸輸送

機材を日本ないし第三国から調達する際に船便でパ国・カラチ港入港後イスラマバードま

で 1,500km の陸路での輸送となる。長距離での輸送となるため、コンテナ格納前に各機器輸

送時に損傷しないよう緩衝材にて養生し、コンテナ輸送時に内部で振動しないように固縛す

る、輸送ルートは安全かつ悪路を避けて通行するように配慮が必要である。

通関手続き

パ国では他の国より通関手続きに時間がかかり、正規の手順を踏んでも最低 2~3 ヵ月ほど

かかることがわかっている。通関に必要な書類、手続きを踏むことは必要であり、カラチ港

入港前に税関職員と本件に関して、遅滞なく税関審査が進むよう事前に調整することが必要

である。

保守契約

PIMS が独自に行う機材調達の規定では、購入後 2 年間の保証期間を標準とし、この保証期

間終了後は 5 年の保守契約を締結する。合算した 7 年間を機材の耐用年数と定め、この期間

を経過後、機材の稼働状態を鑑みながら、既に劣化が著しいことを見極めたら、更新の手続

きを行う。

以上の規定に準じ、選定する機材のメーカーは、現地代理店との販売、サポートにかかわ

る契約が適切に締結され、過去に納入とアフターサービスの実績がある必要がある。

輸入機材に関する免税

本プロジェクトで調達する資機材に関するパ国側の免税手続き(付加価値税を含む) は、

請負会社から PIMS に対し免税手続きの依頼がなされた後、PIMS が財務歳入経済省経済局

(Economic affairs Department: EAD、以下「EAD」という)に免税レターの発行を依頼し、EAD

が税関宛に免税レターを発行する。請負会社は、調達資機材がパ国の港に到着した際に、所

定の船積書類に上記免税レターのコピーを添付し、税関に提出することにより、 免税措置が

なされるが、免税措置の遅れが本プロジェクトの進捗に影響を及ぼさない様に留意が必要で

ある。特に政府系機関が免税申請する場合は、入札公示前までに EAD 傘下の連邦歳入庁

(Federal Board of Revenue: FBR、以下「FBR」という)から免税許可番号(Free Tax Number:

FTN、以下「FTN」という)を受理する必要がある。

表 3-10 パ国の輸入品に関係する免税対象になる税金 項目 税名称 申請官庁

輸入 関税

FBR/EAD

輸入税

所得税

消費税

源泉課税

インフラ税 州単位の徴税官庁(Excise Tax

Office: ETO)

現地調達 源泉課税 FBR/EAD

(出典:調査団作成)

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82

3.2.4.3 施工区分/調達・据付区分 建設工事及び機材調達・据付段階での両国政府の負担工事範囲は、下表の通りとなる。

表 3-11 負担工事範囲 日本国側工事内容 パ国側工事内容

基本計画に含む

A. 建設工事

a. 建設工事

新施設の建築(OT・分娩室・無影灯・ICU・昇降

機など特殊工事含む)、電気室を備えた付属棟

の建設、既存渡り廊下と連結する新たな渡り廊

下の建設、外構工事の一部(救急車アクセス道

路など)

b. 電気設備工事

(a. 建築工事に伴う)幹線・非常発電機・

AVR/UPS・照明/コンセント・ナースコール・自

動火災報知・避雷設備他

c. 機械設備工事

(a. 建築工事に伴う)給水(直結増圧ポンプ含

む)・給湯(給湯用貯水槽、軟水装置、衛生工事、

空調工事

A. 建築工事

a. 整地:建設用地の造成・既存小屋の撤去/

移設・既存貯水槽の撤去・樹木伐採/伐根

b. 許認可:建設許可申請・EIA・電力容量増設

のためのレポート作成及び契約電力増設申請

c. 外構:竣工後のランドスケープ・屋外照明

灯(必要に応じてフェンスの整備)

d. インフラ整備:予定地を通る電気・給水管・

電話/光ケーブルの盛替え。副変電所 SS3 から

新施設電気室までの高圧(11kV)線の埋設敷設。

水、都市ガス、酸素、電話/インターネット線

の新施設取り入れ口までの引き込み。HMIS。環

境の整備

e. 改築工事

既存 CH の元 NICU スペースを周手術期 PICU へ改

築工事

B. 機材調達

a. 新施設の医療機材

b. 既存棟の機材 (CH、周手術期 PICU に小児用人

工呼吸器:6台を追加)

c. 棚、別棟の厨房・洗濯室機器

B. 機材調達

a. 優先順位 B,C となった医療機材の整備

b. 医療家具(キャビネットなど)、一般家具(机・

椅子・書類棚など)の整備

c. CH の NICU から新生児保育器:10 台、新生児

用人工呼吸器:14 台及び二相式換気新生児人工

呼吸器(SIPAP):3台を新施設へ移設

(出典:調査団作成)

3.2.4.4 施工監理計画/調達監理計画 本邦コンサルタントは、コンサルタント契約に基づき業務を遂行し、両国関係機関と密接に協

力し、遅滞なく施設建設及び機材整備が完了することを目指すものである。

施工監理計画

工事期間中は、邦人常駐監理者はプロジェクトサイトに常駐する。また、工事の進捗状況に合

わせ本邦技術者を適時日本より派遣する。

主たる業務

コンサルタントは下記の主たる業務を遂行する

· 建設工事会社が作成する施工計画書、施工図、仕様書、その他の図書の照合及び確認手続き

· 納入される建設資機材、家具の品質の検査及び確認、輸入機材/特殊機材の出荷前検査(日

本国及び第三国)

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· 建設設備機器、機材の納入・据付、取扱い説明の確認

· 施主への工事進捗状況の報告、出来高の査定

· パ国行政検査がある場合、施主への技術的な補助

· 竣工検査

· JICA 及び日本国政府関係機関への本計画の進捗状況の報告、支払い、竣工引渡し、プロジ

ェクト完了等についての報告

施工監理実施体制

・ 業務主任 : 全体調整、工程・品質管理指導

・ 施工監理 : 常駐監理者

・ 建築担当 : 行政・施主説明、特殊工事(OT・ICU 工事)等のスポット監理

・ 構造担当 : 構造関連のスポット監理

・ 機械設備 : 給排水・空調換気・医療ガス設備の中間・竣工検査等のスポット監理

・ 電気設備 : 電気設設備の中間・竣工検査等のスポット監理

・ 現地技術者

本邦施工会社

設計図書に合致した病院施設を工期内に完成させるため、本邦施工会社は施工監督技師の

常駐が必要である。行政との調整、施主への説明を本邦コンサルタントと協力して実施し、

竣工時に、維持管理にかかる資料を PIMS へ提出する。竣工時説明には、OT、ICU、ER,エ

レベーター、軟水装置、消火設備等の定期的な施設維持管理を含み、PIMS 管理課、PIMS 技

術者(電気・空調・給排水)へ説明する。

機材調達監理計画

受注者または機器製作会社から提出された機器図、機材仕様書の確認をし、発注仕様書に記

載された要求仕様を満足しているか確認する。図面承認後、調達機材の内、本体単価が高額な

もの、構成品が比較的多数になるもの、精密機器に分類されるものについては、製作会社に立

会い、品質確認を実施する。その後、合格したものについては、コンサルタントから委託した

第 3 者検査機関による船積み前検査を実施し、員数照合を行う。

調達監理実施体制

・ 常駐調達監理者:機材調達監理業務に関する責任者

・ 検査要員(図面承認):機器製作会社からの図面承認作業

・ 検査要員(立会検査):機器製作会社に往訪し、品質確認

・ 船積前検査立会:船積み前検査の立会

内陸輸送・据付工事

PIMS 到着後、常駐調達監理者立ち会いのもと、外観検査、員数確認を実施する。検査後、

受注者が契約時に提出した実施工程に基づき工事進捗状況を確認する。工程進捗の遅延が判

明した場合は、受注者に納期遵守を促すとともに、対策案の提出・実施を指示し、契約工期

内に作業完了するよう指導を行う。

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建築設備工事との取り合い部分は、建築工事常駐監理者、関係者と工程や作業内容を調整

し、受注者の作業が円滑にできるようにする。

引き渡し

据付工事、調整・試運転終了後、初期操作指導・運用指導の履行確認と調達内容の最終確

認を施主と行い、引き渡しを実施する。

3.2.4.5 品質管理計画 建設

本工事の品質確保のために公共建築工事標準仕様書(公共建築協会)及び JASS5(日本建築

学会)を基準とし、必要に応じて British Standard (BS)、American Concrete Institute (ACI)基準を

参照する。主要なコンクリート工事は、イスラマバードが夏季の高温のため JASS5 の暑中コン

クリート基準に則り品質管理を実施する。監理項目は以下の通りである

杭工事:材料、施工機械及び工法、施工記録、杭載荷試験、報告書

土工事:法面角度、床付精度、置換土厚

鉄筋工事:鉄筋被り厚、加工精度、ミルシート(引張り試験結果など)

コンクリート工事:圧縮工事、スランプ値、塩化物量、空気量、コンクリート温度、出来形精

型枠工事:コンクリート打設前の被り厚

組積工事:圧縮強度

左官工事、塗装工事:材料保管場所、調合、回数、塗厚、施工精度

屋根防水工事:材料保管場所、下地管理、シーリング

給排水工事:給水管漏れ水圧試験、排水管漏れ

電気工事:絶縁テスト規制値、通電テスト規制値

機材

本計画対象機材のうち、特に機材単価が比較的高額、精密機器や多種類の付属品、消耗品など

の構成品がある機材については、工場出荷前検査を実施する。その対象となる機材は下表のとお

りである。

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表 3-12 工場出荷前検査対象機材 機 材 名 数量 設置場所

移動式 X線装置 1 NICU

インファントウォーマ 10 HDU

温風式加温装置 4 OT

血液ガス分析装置 4 OT

新生児保育器 11 NICU & 乳児 HDU

新生児保育器(搬送用) 2 NICU & 乳児 HDU

分娩監視装置 2 陣痛室・分娩室

患者監視モニタ 20

6

10

6

5

2

NICU

MFICU、乳児 HDU、産婦人科 HDU

OT

ER

病棟

除細動装置 1

1

1

1

1

MFICU

産婦人科 HDU

OT

ER

産婦人科病棟

心電計 1

1

1

NICU

MFICU

ER

人工呼吸器 6

6

周手術期 PICU (CH)

MFICU

超音波診断装置 1

1

1

MFICU

陣痛室・分娩室

ER

超音波ネブライザ 5

2

3

3

4

NICU

MFICU

産婦人科 HDU

ER

病棟

腹腔鏡システム 1 OT

電気メス 4 OT

麻酔器 4 OT

オートクレーブ 2 CSSD

低温滅菌装置 1 CSSD

超音波洗浄機 1 CSSD

ファイバーオプティクス喉頭鏡

1

4

2

1

MFICU

OT

ER

病棟

小児用喉頭鏡 1

1

1

NICU

ER

小児科病棟

(出典:調査団作成)

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3.2.4.6 資機材等調達計画 建設資材

調達方針

コンクリート工事のための建材資材等,一般的な建設資材は現地調達が可能である。施設

完成後の修理や維持管理が容易なことから、建築資材は現地調達を基本とする。現地調査結

果から、対候性を考慮してアルミサッシは日本製品に優位性がある。また、手術室の壁天井

パネル、無影灯、造り付け医療ユニットや自動ドアなど特殊設備は日本調達とする予定であ

る。なお輸入品であっても現地市場で恒常的に出回っている資機材は現地製品扱いと判断す

る。

調達計画

(ア) 建築躯体工事

躯体工事用の鉄筋、コンクリート材料、型枠、間仕切り壁用のレンガ、タイル・石材等

は現地製品を調達する。

(イ) 建築内外装工事

アルミ建具・鋼製ドア、手術室ユニット、ICU 等の各種内外装資材は輸入製品を含め日

本または第三国での調達とする。

(ウ) 空調・衛生・医療ガス工事

空調機、排風機、天井扇、ポンプ類、貯水タンク類、衛生陶器については、輸入資材を

含め現地市場にて調達する。医療ガス設備は、現地調達可能なものは現地で調達する。消

防設備は、建設許可申請の際の行政指導に従う認可品を前提とする。

(エ) 電気工事

盤類、発電機、AVR、照明器具、電線、配管材等は現地市場での調達を基本とするが、

故障が起きにくいなど品質に優位がある場合に日本または第三国調達を行う。

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表 3-13 主な建設資材調達先

調達先

備考 現地 日本 第三国

[建築]

セメント、骨材、型枠等 ○

異形鉄筋 ○

レンガ ○

防水材 ○

軽量鉄骨材 ○

アスファルトルーフィング等屋根材 ○

アルミ製建具、自動ドア ○

手術室ユニット、 ○

ガラス ○

タイル、石 ○

内装ボード 〇

塗装材 ○

エレベーター 〇

[設備・電気]

受水槽(FRP) 〇

空調機 ○

排風機 ○

ポンプ ○

配管材・配管金物 ○

衛生陶器 ○

分電盤、配電盤 ○

発電機・AVR ○ ○

配線・配管 ○

照明器具 ○

避雷針 ○

(出典:調査団作成)

機材

調達方針

本計画における医療機材は、機材本体・付属品・消耗品の品質、現地代理店の公的医療施

設での販売実績、部品や消耗品の在庫状況、訓練を受けたサービスエンジニアの在籍等を総

合的に勘案し、日本国、パ国及び第三国からの調達とする。ただし、第三国調達は、品質が

担保できるメーカーの販売拠点が所在することを条件とする。特に今回調達を予定している

機材の多くの品目は、過去に PIMS が独自に調達している機材がほとんどであり、現地代理

店との保守契約を締結しているものも少なくない。現在取引のある代理店の中でも PIMS の

医療従事者や BME スタッフの評価を重視する。

保守契約

購入時の無償保証期間については、1 年間が一般的である。日本国の無償資金協力で調達

する機材の保証期間は 1 年であることから、その後の保守については保守管理契約を代理店

と締結することが必要とされ、この財源を先方が準備しておく必要がある。

輸送計画

日本ないし第三国から積み出される機材は、ほとんどが真空梱包ないし木枠梱包されコン

テナに格納され、海上輸送される。海上輸送後、パ国カラチ港にて荷揚げされ、保税倉庫に

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て痛感検査後、コンテナトレーラーにてプロジェクトサイトまで輸送する。精密機器を多数

扱っているため、整備されている輸送ルートを選定する必要がある。

調達上の留意点にも記載したように、通関業務に時間がかかるため、調達に必要な期間は

十分注意して配慮すべきである。

3.2.4.7 初期操作指導・運用指導等 調達する機材の初期操作指導、運用指導にかかる日数については下記方針で行うこととする。

表 3-14 初期指導操作、運用指導計画 機材名 指導者 指導内容 所要日数

画像診断関連機器

OT 関連機器

内視鏡関連機器

ラボ関連機器

現地人専門技師 操作方法

アプリケーション使用

日常点検実施方法 6 日

CSSD 関連機器 メーカー専属技師 同上 2 日

ICU 及び汎用関連機器 現地人専門技師 操作方法

日常点検方法 6 日

現地人専門技師:十分な実務経験を有し、メーカーの訓練を受講している経験豊富なエンジニア

(出典:調査団作成)

3.2.4.8 ソフトコンポーネント計画 ソフトコンポーネント投入の要否

本プロジェクトでは、医療施設を新設し、その各諸室に医療機材を設置する。対象となる医

療機材は、既存施設で使用されている仕様とほぼ同等のグレードとするが、既存機材の中には、

約 30年前のモデルもある。本プロジェクトで調達される全ての機材は最新モデルであるため、

中には、機器全体の構造や仕組み等が 30 年前から大きく変化した機材も含まれる。これらを

良好な状態で使用し続けるためには、必要な情報収集を怠らず、保守管理業務を適切に行う必

要がある。

現在、既存機材を含む PIMS の各医療施設で使用されているすべての医療機材の維持管理業

務は、PIMS 内の BME 部門が担っている。しかし、同業務を円滑に進めるための基本的なシス

テムが整っていない。例えば、各機材の基本情報や定期整備の対象となる機材の使用期間、そ

の期間中の故障回数、修理実施の有無などの履歴が残る機材管理台帳が整備されていないため、

個々の機材の状態が正常なのか異常なのかといった判断、もしくは、いつまで使えるのかとい

った予測が困難である。これにより、機材の維持や更新が効率的かつ経済的に行われないだけ

でなく、同セクションの技師が実践を通じた技能向上を目指す上で、整備計画の立案能力や機

材の不具合に関する分析力、対応力などが強化されにくい。

また、MCHC と CH の CSSD に据え付けられた大型オートクレーブは、数年前から故障して

いる。現在、手術に使用する大量の医療器具やリネン等は、小型の滅菌機材を使うほか、IH の

中央滅菌室まで運搬して対応せざるをえず、移動中に起こりうる滅菌済資材への汚染と、その

汚染器材からの感染リスクがある。また、滅菌作業に係るスタッフへの負担も大きく、滅菌プ

ロセス全体に支障が生じている。

本プロジェクトにより整備される施設では、特にハイリスク妊産婦や新生児等を扱うため、

院内感染防止対策は最重要課題であり、CSSD において、オートクレーブ等の関連機材の保守

管理を含め、適切かつ効率的な運用・管理能力の向上が必要不可欠である。

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以上の状況を鑑み、本ソフトコンポーネントでは、2 つの課題について、OJT による実技を

中心とした技術研修を実施する計画を立案した。1 つ目は、新施設に導入される医療機材の適

切な維持管理を実施するために必要な体制を構築する。2 つ目は、今回の新施設にも、CSSD が

備わることから、当部門に設置されるオートクレーブ等の機材保守管理を含め、CSSD の適切

な運用・管理体制を定着させる。具体的な内容は下記のとおりである。

ソフトコンポーネント実施内容

医療機材維持管理能力の向上

新施設に設置された医療機材を適切に使用、維持していくため、現地の状況に即した医療

機材維持管理システムを構築し、その運用指導を行う。具体的には、既存の機材管理台帳が

単なる機材リストにしかすぎず、個々の機材に必要な情報、使用期間中の不具合及び修理等

の履歴は記録が無いことから、これらの情報とその更新履歴等を付加し、検索・表示が出来

るよう簡易なプログラムを作成、導入する。この管理台帳を基に、BME スタッフが実施すべ

き保守点検業務を定期化するとともに、同点検内容も同台帳に記録し、管理できるようにす

る。また、同スタッフは、このプロセスにおいて、今回新たに配備される医療機材の保守点

検を含む取り扱い方法に習熟し、医療現場でそれを使用する医師・看護師などに対し、必要

な説明を適切な方法で実施できるよう能力強化を図る。

また、調達された医療機材を適切に維持管理し、可能な限り長い間、良好に活用するため

には、保守点検、修理等に係るコスト(現地代理店に対する技術サポート料やスペアパーツ、

消耗品の購入など)のための予算確保も重要な課題であることから、上記点検・修理履歴に

は、これらへの支出金額も記録した修理レポートを作成し、病院事務管理の資材調達課に提

出する流れを作る。これにより、資材調達課は上記レポートから機材維持管理に必要な年間

予算を算出し、次年度の業務計画への反映が可能となる。

本ソフトコンポーネントの対象施設は、今般建設される新施設とするが、同施設での維持

管理体制で初期の成果が出れば、PIMS の他の施設に普及拡大が可能であり、これを視野に入

れた研修とする。

CSSD の運用・管理能力の向上

既存の CH 及び MCHC の CSSD における滅菌装置及び滅菌器具の適切な管理を確保するた

め、滅菌作業に従事する医療スタッフの機材の運用・管理能力向上に必要な知識・技術の強

化研修を行う。主要な強化項目は、① 新たに設置される滅菌装置や周辺機器及び軟水処理装

置等の適切な取り扱いと日常点検、② BME スタッフを対象とした定期的な保守点検方法の

習得、 ③ 清潔維持のための動線を考慮に入れた滅菌資材の適切かつ効率的な取り扱い等で

ある。これらに関しても、PIMS の他施設の CSSD への普及・定着を将来的な目標とする。

研修に必要な人員構成

a. 運用マニュアル作成指導(日本人) :1 名(格付 3 号)

b. 医療機材維持管理指導(日本人) :1 名(格付 3 号)

c. 中央滅菌材料部門の運用・管理指導(日本人) :1 名(格付 4 号)

d. 研修計画/業務調整(日本人) :1 名(格付 4 号)

e. 研修計画/調整(現地傭人) :1 名

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ソフトコンポーネントの業務実施工程

本ソフトコンポーネントの業務実施工程は、下表のとおりである。

表 3-15 ソフトコンポ―ネント業務実施工程表

(出典:調査団作成)

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3.2.4.9 実施工程 E/N 締結後、竣工に至るまでの実施工程は、下記の 3 行程となる。

実施設計

準備調査報告書に基づき実施設計(詳細設計)を行い、入札図書を作成する。コンサルタン

トは現地登録技術会社の協力を得て建設許可申請図書を作成し、PIMS は建設許可申請を CDA

へ申請する。建設許可に係る CDA の高位委員会へのプレゼンテーションが必要となるため、

施主の入札図書承認の際に、同時期に実施することを想定する。

入札(2 段階国内入札)

実施設計終了後、日本国において入札公示を行う。事前の入札参加資格事前審査(PQ)後、

実施機関である PIMS が入札参加を希望する本邦会社を招聘する。機材調達は、現時点では、

建設工事とは分離した入札を想定している。入札内容が適正であると評価された入札者が落札

者となり、PIMS と施設建設工事契約、機材調達契約を結ぶ。

施設建設工事と機材調達

本プロジェクトの実施に必要な工期は、施設の規模及び現地の調達事情等から判断して約 31

ヵ月と想定される。詳細設計及び入札業務 10 ヵ月、施設建設工事及び機材添え付け工事が 21

ヵ月を予定している。順調な資機材の調達、パ国側関係機関の迅速な諸手続きや審査、先方負

担工事の円滑な実施が前提となる。

本プロジェクトの事業実施工程表を下表に示す。

表 3-16 業務実施工程表

(出典:調査団作成)

1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31

詳細設計 【建設工事】入札

工事準備

杭・基礎工事

躯体工事

内外装工事

外構工事

検査

【機材調達】

機器製作図作成輸送

据付・調整

機材製作

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3.3 相手国側分担事業の概要

本プロジェクトの実施にかかる、パ国政府が負担する項目は以下の通り。

施設建設・機材調達

・ プロジェクトサイトの整備(地ならし、既存建屋の撤去、受水槽撤去、既存舗装はがし、樹

木伐採抜根、等)

・ 許可申請(建設許可、EIA、必要な場合は電力契約容量増設)

・ 外構工事

・ インフラ整備(既存インフラの盛替え、新施設までの電力・給水・都市ガス・酸素供給・電話

/インターネット、HIMS のための光ケーブルの引込)

・ 改築工事(NICU 移設後の周手術期 PICU への改築、NICU の保育器の移動など)

機材

・ 日本側協力対象外の医療機材(優先順位 B 及び C の機材)の調達

・ 日本側協力対象外の一般家具及び什器備品の調達

維持管理

・ 病院運営に必要となる職員の雇用、研修、給料手当の支払い

・ 施設・機材の運営維持管理に必要となる消耗品・交換部品等の調達

・ 無償資金協力で建設された施設と調達された機材の適正かつ効果的な活用と維持管理

その他

・ 銀行取極の手続き及び契約金額支払手数料の支払い、支払授権書、修正授権書の通知手数

料の支払い

・ 無償資金協力範囲で調達される輸入資機材の免税措置・通関手続きの迅速な対応。必要に

応じ、輸入資機材にかかる関税の支払い

・ 本プロジェクトに携わる日本国法人、日本人及び第三国関係者に対し、パ国内で課せられ

る関税、国内税その他の税制課徴金の免除

・ 前項の日本人及び第三国関係者に対し、本プロジェクトの業務遂行のためのパ国への入国

及び滞在に必要な便宜供与

・ 無償資金協力に含まれず、本プロジェクトの遂行に必要となるその他全ての費用負担

・ プロジェクトモニタリングレポートの作成と提出

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3.4 プロジェクトの運営・維持管理計画

3.4.1 運営維持管理体制

3.4.1.1 運営体制 PIMS の運営体制は従前と変更がないが、新施設は既存の MCHC と CH が共用する施設とな

るため、新施設の運営体制について PIMS が確立する必要がある。このため、調査団は、日本

の医療法を基準に新施設に必要な人材を下表の通り試算した。本情報は、PIMS が PC-1 を作成

する参考とするため 2018 年 10 月に先方へ提供した。PC-1 では、下表とは異なる人材が要請さ

れており、運営体制及び職員種類と数については、日本側提案、先方の PC-1 要請、実施の段

階で異なる可能性がある。

医療従事者にかかる日本側提案は、我が国厚生労働省の周産期医療体制整備指針及び中央社

会保険医療協議会の診療報酬基準を参照した。右の指針及び基準では、24 時間診療体制を適切

に確保するために必要な職員を確保することが望ましいとされている。医師については、産科

は、複数の担当医師が 24 時間体制で勤務する必要があり、新生児科も、同じく 24 時間体制で

担当医師が勤務する必要がある。看護師、助産師数にかかる日本の規定及び本計画における提

案は下表中に言及する。また、分娩室は、後方病棟とは独立して勤務することを原則としてい

るが、MFICU の勤務を兼ねることは差し支えないとされている。この結果、日本側より PIMS

へは、看護師及び助産婦 152 名を中心に 392 名の新規雇用を提言した。

表 3-17 日本側提案による新規雇用スタッフ案 部署 必要人材 人数

1 管理部門

センター長、副センター長、事務長 3

社会福祉士、社会福祉助手 2

看護部長、看護スーパーバイザー 3

統計課長、統計助手 2

2

周産期救命救急室

(産婦人科と新生

児科)

救急室長 1

看護師長、看護師・助産師 21 (日本基準)特になし

(提案)助産師または看護師 5名×4グループ

雑役婦、ワードボーイ、掃除人 17

3 受付・会計・薬局 医療事務、医療事務助手 8

薬剤師,薬剤師助手 8

4 OT、分娩室

手術室長、麻酔科准教授,麻酔科講

師、麻酔技師 15

看護師長、看護師 16 (日本基準)特になし

(提案)看護師 4名×4グループ

手術助手 10

雑役婦、ワードボーイ,手術室掃除

人 16

5

MFICU(6 床)

産婦人科 HDU(4

床)

看護師長、看護師・助産師 21

(日本基準)常に 3床に 1 名の助産師または看

護師が配置されること

(提案)2床に 1名(10÷2=助産師または看護

師 5名×4グループ)、分娩室と兼務とする。

雑役婦、ワードボーイ、掃除人 16

6 NICU(20 床) 看護師長、看護師・助産師 21

(日本基準)常に 3床に 1 名の看護師が配置さ

れること

(提案)4床に 1名(20÷4=看護師 5×4 グル

ープ)

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部署 必要人材 人数

雑役婦 3

7 新生児・乳児 HDU

(20 床)

看護師長、看護師・助産師 21

(日本基準)常に 3床に 1 名の看護師が配置さ

れること

(提案)NICU と同様。看護師 5名×4グループ

雑役婦 3

8 検査室 チーフ、検査技師,X線技師、助手 11

掃除人 2

9 産婦人科医局 産婦人科准教授、産婦人科講師 3

10 泌尿器科医局 泌尿器科准教授、泌尿器科講師 3

11

産婦人科

泌尿器科

病棟

看護師長、看護師・助産師 25

(日本基準)一般病棟では 10 床に 1名、重症

度の高い患者の割合が多い病棟では 7床に 1名

の看護師

(提案)看護師 6名×4グループ

雑役婦、ワードボーイ、掃除人 17

12 小児科医局

新生児科教授、新生児科准教授、新

生児科講師 3

小児科准教授、小児科講師、小児外

科准教授、小児外科講師 6

13 小児病棟 看護師長、看護師 25

(日本基準)一般病棟では 10 床に 1名、重症度

の高い患者の割合が多い病棟では 7 床に 1 名の

看護師

(提案)看護師 6名×4グループ

雑役婦、ワードボーイ 11

14 医療機材保守整備

チーフ臨床工学士、臨床工学士、助

手 7

15 CSSD チーフ、滅菌技師、滅菌助手 9

16 調理室

チーフ、病院管理栄養士、調理師,

調理助手 16

配膳員、掃除人 11

17 ランドリー チーフ、技術者、助手 7

18 施設整備

チーフ、電気技師、空調技師、空調

技師、ボイラー技師、ガス関係技

師、エレベーター技師、助手

12

19 警備員 チーフ警備員、警備員 9

20 倉庫 倉庫番、助手 4

21 救急車 運転手、助手 4

合計 392

(出典:調査団作成)

3.4.1.2 維持管理体制 施設

施設管理は、PIMS の管理課が掌握している。管理課は医療系部門と医療外部門に分けられ

る。医療外部門は PIMS 総長代理(常任)が統括する。建物や建築設備の運営は、技術部副部

長(Deputy Director of Engineering )が、電気・HVAC・ボイラー・BME を統括する。ヒアリン

グによると、PIMS の施設・医療技術系職員は、政府に承認された技術系職員数 22 名に対し、

実雇用は 9 名であり深刻な人材不足がある。既存各施設の維持管理体制、要員、外部委託状況

等は以下の通りである。

CH では、電気・HVAC・ボイラーなどの建築設備の操作・維持管理は、上記の PIMS の職員

が実施している。MCHC では外部へ委託している。

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95

既存 MCHC では軟水装置及び全館空調の経年劣化による不具合があり、適正な清潔度が保

つことが難しく医療サービスを提供する上で支障となっている。2015 年に「PIMS における

HVAC の更新と改善」にかかる PC-1 を作成して資金確保に当たった結果、2018 年 5 月に承認

された。

順調に資金が提供された場合、HVAC 改修工事は 2021 年 6 月に終了予定であるが、その後

の維持管理体制・手法は不明である。

警備、PIMS にある全 18 台のエレベーターの維持管理は全て外注されている。

本計画では、建築施設・設備管理を統括する維持管理コアグループとなる職員の新規雇用を

提言するとともに、建築設備の定期点検など、専門的な知識と技術が必要となる項目(「3.4.2.2

建設設備の維持管理」で後述。)については外部専門会社への委託が適当であると判断し、先方

の運営維持管理経費に含めることを提言する。

(出典:PIMS)

図 3-17 施設維持に係る運営体制

機材

PIMS 全体の医療機材の整備を担当する部署は BME 部門である。当セクションの人員は総勢

8 名で、うち技士(医療機材を専門とするエンジニア)は 3 名、テクニシャン(医療機材の定

期点検作業を実施できる能力を有する人員)は 4 名そしてヘルパーと称するスタッフが 1 名存

在する。PIMS の各医療施設にそれぞれ 1 名の技士が配属されている。同セクションが対象と

している機材総数は、約 5,000 台(適切な機材管理台帳が無いため、詳細は不明)であり、こ

れらの機材を 8 名のみで対応しなければならず、人員の絶対数が不足している。下図の組織図

からもわかるように各施設において、アシスタント技士と呼ばれる人員が IH を除いて不足し

ているため、人員増員要請を PIMS 所長に提出している。

(出典 PIMS)

図 3-18 PIMS BME 部門の組織図

電気設備技師

冷暖房空調設備技師

清掃部⾨ ボイラー技⼠

輸送管理部⾨ BMEスタッフ

緑地管理部⾨

キッチン/⾷料供給部⾨

安全管理部⾨常任理事代理

(医療)

常任理事代理(医療以外)

共同常任理事

エンジニアリング部⾨技師⻑代理

: 将来計画

MCHC担当技士長

PIMS全体管理

課長

CH担当技士長

IH担当技士長

BCC担当技士長

心臓病センター担当技士長

アシスタント

技士

アシスタント

技士

アシスタント技士

アシスタント技士

アシスタント

技士

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機材の故障診断・修理に関する対応は、簡易な修理(電源関連の故障、破損や機械的な故障な

ど)については同セクションの技士が対応するが、高度且つ精密な医療機材(画像診断装置、自

動生化学分析装置など)については、保守点検契約を締結している現地代理店が担当している。

例えば、IH の画像診断部に 2017 年に購入した CT スキャンは、同メーカーを取り扱う現地代

理店と約 10 年にわたる保守点検契約を締結している。契約内容は、メーカーの無償保証期間が

終了する購入 1 年を過ぎた、2 年目から 10 年目までの保守契約で、その間には年 2 回の定期点

検と、故障・不具合が生じた場合、24 時間応でサービスエンジニアが現場に駆け付けるという

ものになっている。また、保守契約中にスペアパーツの交換が必要な場合、スペアパーツ購入費

も含まれている。但し、契約費用は1年ごとに見直しがあり、機材本体価格が1年ごとに約 10%

増額することに加え、経年劣化による装置の故障率上昇も考慮されるため段階的に本費用も若

干ではあるが増額されている。以上から PIMS は、医療機材の維持管理について、重要な課題で

あることを認識しており、維持管理に必要な予算の中で特に診療サービスに直結する機材の維

持管理予算は、独自に確保している。

3.4.2 維持管理計画

3.4.2.1 施設の維持管理 本施設の建物本体の維持管理は、建築設備を除いて特別な維持管理機材・技術は不要である。

しかし、樋を掃除し、雨水溝や排水溝を数ヵ月に一度は清掃するなど、将来的に大がかりな修繕

が必要とならないよう、定期的に施設を清掃し、管理マニュアルに従って定期点検を行う必要が

ある。

施設の修繕は、内外装仕上げ材の補修を定期的に実施することを推奨する。

定期点検と補修の細目は、建築設備を含んだ「維持管理取扱説明書」として施工会社より提出

され、点検方法や定期的な清掃方法の説明を行う。

表 3-18 施設維持管理項目 項目 頻度

・外壁の修繕・塗り替え 7 年に 1度(補修は随時)

・屋根の点検・補修 7 年に 1度(点検は 1年に 1 度)15 年に 1 度張替え

・内壁の塗り替え 7 年に 1度(補修は随時)

・ハンドホール等の定期的点検と清掃 半年に 1回

・樋、雨水溝、排水溝の定期清掃 2~3ヵ月に 1 回

・エレベーター、自動ドアの定期点検 維持管理は製品仕様に応じる。点検は月に 1回

(出典:調査団が作成)

3.4.2.2 建築設備の維持管理 設備機器は、その仕様を理解し、正しく操作し、必要な調整や日常的なメンテナンスを確実に

実施する予防保全が大切である。このため、PIMS の技術系職員を増員して、維持管理のための

技術者グループをつくる。他方で、動力機器やボイラー用の軟水装置、HEPA フィルターの交換

などは、専門的知識や技術が必要となることから、外部専門会社に維持管理を委託し、機器の仕

様に応じた頻度の定期点検やパーツの取り換えを行うことが必須である。定期点検における維

持管理記録や管理要領書(保守点検票)の作成と発注や、オーバーホールの必要性と内容の判断、

リニューアルを含んだ維持管理計画について、PIMS 常駐の技術者グループが把握し、発注し、

監理する。主要設備機器の定期点検内容(案)と頻度、一般的な耐用年数は下表の通りである。

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97

表 3-19 主な設備機器の定期点検項目内容(案)及び耐用年数 設備機器 定期点検

(頻度と内容)

オーバー

ホール

耐用年数(リ

ニューアル)

電気 配電盤、分電盤 半年に 1回 動作試験、絶縁抵抗測定、電圧測定、遮断

器・開閉器テスト、シーケンステスト

- 20~30 年

非常用発電機 月次点検

及び

毎年

(月次点検)5 分程度の無負荷(空ふかし)

によるエンジン試運転

(1回/年)30%以上の負荷試験点検

- 15 年

LED 照明 毎年 清掃、目視点検 - 2~4万時間

AVR 毎年 清掃、目視点検 -

UPS 半年に 1回 (日常点検)運転ランプ目視確認、出力電

圧、電流確認

(通常定期点検)動作確認、バッテリ点検、

内部清掃

- 15 年

給排水 ポンプ類 半年に 1回 メーカー指定点検項目に従った定期点検

(摩耗、水漏れ、性能低下など。必要に応

じてパーツ交換)

5~6年 15 年

タンク類 毎年 貯水槽の清掃、清掃後の水質点検、タンク

の損傷などの目視点検。

- 15 年

軟水装置

10 日に 1回 再製塩(250kg)の補充(1 日の給湯量を

22,500L とした場合の頻度。)

3 年毎に

イオン交

換樹脂を

全量交換

10~12 年

排水管、浄化槽 半年に 1回

(清掃は毎

年)

臭気検査、外観検査、ブロアー等付帯装置

の作動状況の確認、水質検査

汚泥さらい

- 15~20 年

給湯機 半年に 1回 清掃、機能点検、ガス漏れ 5~6年 9~10 年

医療ガス 半年に 1回 メーカー指定点検項目に従った定期点検

(損傷・摩耗、漏洩、圧力点検、警報機能

点検、必要に応じパーツ交換、フィルター

交換)など。

10-15 年

コンプレッサー、吸引ポンプ 1 年

クリーンエアユニット、窒素アウトレット 3 年

マニホールド 5 年

空気タンク、制御盤、吸引タンク、吸引フ

ィルター、減圧装置、警報盤、等

自動火災報知

設備、屋内消化

栓設備

半年に 1回 機能点検、総合点検(1回/年) 20~30 年

空調 空調機(自動制

御含む)、換気

(送風機、排風

機)、加湿装置

半年に 1回 吹出し口・吸込み口の清掃、送風量/排風

量の測定及び作動状況の確認、手術室の温

湿度測定、センサー類誤差の有無確認、

- 10~15 年

チラー、ボイラ

半年に 1回 メーカー指定点検項目に従った定期点検

(水漏れ、性能低下など。必要に応じてパ

ーツ交換)チラーの洗浄、

5~6年 15 年

空気清浄装置 月次点検

(プレ・フィ

ルターは毎月

清掃)

粒子量の測定(室内塵埃の堆積状況の確

認)、集塵部の性能確認(HEPA フィルター

破損チェック)、気圧(陽圧の確保)

3 年毎に

HEPA フ

ィルタ

ー、プ

レ・フィ

ルターを

交換

3~4年

昇降機 昇降機、自動ド

月次点検 メーカー指定点検項目に従った定期点検 20~25 年

(出典:調査団作成)

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本プロジェクトでは、清潔度が要求される部屋の空調機に HEPA フィルターを設置する。手術

室は天井吹出し口に、ICU 等ではファン・フィルターに HEPA フィルターを設置する。HEPA フ

ィルターは PIMS 既存の心臓診療棟や BCC で採用されており、定期点検として、外部委託で部

屋の粒子量を実測し、クリーンルームの清潔度を保つ努力をしている。新施設は重篤患者を対象

としており、施設の清潔度を適正に保つため、月次点検で粒子量測定を実施し、3 年に一度など

の頻度で HEPA フィルターを適正に交換する必要がある。

3.4.2.3 機材の維持管理 医療機材の維持管理は基本的には、前述した PIMS の BME 部門が担当することになる。新施

設には、CSSD の隣接に ME 室を設置するので、新施設にも、既存施設である CH や MCHC と

同様に少なくとも 1 名の BME スタッフ(医療機材を専門とするエンジニア)及び 2~3 名の補

助スタッフ(テクニシャンレベルで医療機材の定期点検作業を実施できる能力を有する人員)の

配置を提案する。本プロジェクトでは、画像診断装置のような超高額且つ高度な機材は導入しな

いが、ICU や手術室に配備される機材の多くは精密機材であるため、日常点検(ユーザーが実施

する点検で、原則機材を始動する前、稼働中及び稼働終了後の点検)、定期点検(医療機材管理

を専門とする技術者が実施する点検、点検実施日を年 1 回もしくは 2 回と計画的に実施する点

検)は怠ってはならない。

日常点検に関しては、上記のとおり、新施設 ME 室に常駐する BME スタッフが各諸室を毎日

巡回し、各機材の稼働状況を目視確認する。もし、動作異常・不具合等が起き、同 BME スタッ

フが対応できない状況の時には、BME 本部から応援を依頼するなど適切な処置を行う 。また、

保守契約対象機材については、メーカー代理店に電話連絡し、代理店のサービスエンジニアを現

場に呼ぶ。

また、具体的な点検作業の工程や手法及び運用・管理については、ソフトコンポーネント研修

にて、そのノウハウを指導する予定である。

主要機材の必要と思われる維持管理概要を下表にまとめた。

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表 3-20 主要機材リスト

配備部門 機 材 名 必要な維持管理の内容 推奨定期

点検回数

NICU

新生児保育器 年 2 回は温度制御部の分解掃除、保育チャンバーとその周辺部品

をアルコール液等で消毒、点検時にマイクロフィルターやポート

カバーを劣化状況に応じて交換する。

2 回/年

インファントウ

ォーマ

年 2 回は温度制御部の分解掃除、患者接触部とその周辺部品をア

ルコール液等で消毒、点検時に光線ランプや温度プローブなどを

劣化状況に応じて交換する。

2 回/年

移動式 X線装置 15 万~20 万照射で必要に応じて X線管球の交換。その他年に 2回

は、本体の分解掃除、年に 1 回は X 線照射の校正試験を実施(メ

ーカー代理店技士による)。

2 回/年

患者監視モニタ 年 2 回は本体内部の分解掃除、年 1 回は各種パラメータの信号出

力試験と校正(メーカー代理店技士による)。点検時に各種消耗

部品の交換と調整。

2 回/年

MFICU

超音波ネブライ

年 2 回は本体内部の分解掃除、超音波出力の点検。点検時に各種

消耗部品の交換と調整。 2 回/年

除細動装置 年 2 回は本体内部の分解掃除、年 1 回はパッド電極の出力試験と

校正(メーカー代理店技士による)。点検時に各種消耗部品の交

換と調整。

2 回/年

人工呼吸器 年 4 回は、メーカー指定点検項目に従った定期点検、稼動点検。

年 1 回は本体内部の分解掃除、動作試験及び校正(メーカー代理

店技士による)。点検時に各種消耗部品の交換と調整。

4 回/年

超音波診断装置 年 2 回は本体内部の分解掃除、稼動点検。年 1 回は超音波出力試

験と校正(メーカー代理店技士による)。点検時に各種消耗部品

の交換と調整。

2 回/年

OT

電動手術台 年 2 回は本体内部の分解掃除、注油。点検時に各種消耗部品の交

換と調整。 2 回/年

電気メス 年 4 回は、メーカー指定点検項目に従った定期点検、稼動点検。

年 1 回は本体内部の分解掃除、動作試験及び校正(メーカー代理

店技士による)。点検時に各種消耗部品の交換と調整。

4 回/年

麻酔器 年 4 回は、メーカー指定点検項目に従った定期点検、稼動点検。

年 1 回は本体内部の分解掃除、動作試験及び校正(メーカー代理

店技士による)。点検時に各種消耗部品の交換と調整。

4 回/年

腹腔鏡システム 年 4 回は、メーカー指定点検項目に従った定期点検、稼動点検。

年 1 回は本体内部の分解掃除、動作試験及び校正(メーカー代理

店技士による)。点検時に各種消耗部品の交換と調整。

4 回/年

血液ガス分析装

年 4 回は、メーカー指定点検項目に従った定期点検、稼動点検。

年 1 回は本体内部の分解掃除、動作試験及び校正(メーカー代理

店技士による)。点検時に各種消耗部品の交換と調整。

4 回/年

陣痛室・分

娩室

胎児ドップラ 年 2 回は本体内部の分解掃除、稼動点検。点検時に各種消耗部品

の交換と調整。 2 回/年

分娩台 年 1 回は本体の分解掃除、注油。点検時に各種消耗部品の交換と

調整。 1 回/年

分娩監視装置 年 2 回は本体内部の分解掃除、稼動点検。点検時に各種消耗部品

の交換と調整。 2 回/年

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配備部門 機 材 名 必要な維持管理の内容 推奨定期

点検回数

CSSD

高圧蒸気滅菌装

年 4 回は、メーカー指定点検項目に従った定期点検、稼動点検。

年 1 回は本体内部の分解掃除、動作試験及び校正(メーカー代理

店技士による)。点検時に各種消耗部品の交換と調整。

4 回/年

軟水製造装置 年 4 回は、メーカー指定点検項目に従った定期点検、稼動点検。

年 1 回は本体内部の分解掃除、動作試験及び校正(メーカー代理

店技士による)。点検時に各種消耗部品の交換と調整。

4 回/年

臨床検査室

遠心分離機 年 2 回は本体内部の分解掃除、稼動点検。点検時に各種消耗部品

の交換と調整。 2 回/年

輸血用冷蔵庫 年 1 回は本体内部の分解掃除、稼動点検。点検時に各種消耗部品

の交換と調整。 1 回/年

赤血球沈降速度

測定装置

年 4 回は、メーカー指定点検項目に従った定期点検、稼動点検。

年 1 回は本体内部の分解掃除、動作試験及び校正(メーカー代理

店技士による)。点検時に各種消耗部品の交換と調整。

4 回/年

蒸留水製造装置 年 4 回は本体内部の分解掃除、稼動点検。点検時に各種フィルタ

ーなどの交換と調整。 4 回/年

ER

吸引器 年 2 回は本体内部の分解掃除、稼動点検。点検時に各種消耗部品

の交換と調整。 2 回/年

心電計 年 2 回は本体内部の分解掃除、年 1 回は各種パラメータの信号出

力試験と校正(メーカー代理店技士による)。点検時に各種消耗

部品の交換と調整。

2 回/年

(出典:調査団が作成)

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101

3.5 プロジェクトの概略事業費

3.5.1 協力対象事業の概略事業費

日本の無償資金協力により、協力対象事業を実施する場合に必要となる事業費について、日本

とパ国との負担区分に基づく事業費の内訳は、下記(3)に示す積算条件によれば、次のとおりと見

積もられる。但し、この金額は E/N 上の供与限度額を示すものではない。

日本国負担経費 : 入札までは非公表

パ国負担経費:453.603 百万 PR.(約 424 百万円)

2018 年 11 月時点の PC-1 申請資料によるパ国負担経費は下表 3-21 の通り。項目及び金額

は増減する。

表 3-21 パ国側負担経費

NO 負担内容 内容 概算工事費

(千 PR.)

円換算 千円

(1 PR. 0.9344

円)

1-1 整地 建設予定地の造成。受水槽解体撤去。食堂、

小屋の撤去・移設。樹木伐採・伐根。 6,500 6,074

1-2 外構工事 フェンスの設置、植栽 4.000 3,737

1-3 インフラ整備

既存インフラの盛替え。新施設までの、電力、

水道、都市ガス、電話、医療ガス引込み工事。

必要な場合、供給容量増加のためのインフラ整

備。PIMS 内の構内インターネット網への接続

(新施設を HMIS 網へ参加させる際の光ケーブ

ルの敷設、コンピュータ端末の整備等。)電話

工事。監視/防犯カメラ(Closed-circuit

television: CCTV)、先方負担の消火設備工事。

85.000 79,424

1-4 改築工事 CH の NICU 移転に伴う周手術期 PICU への改

築工事 25.000 23,360

1-5 技術費 上記 1-4 にかかる技術費(公共事業省など) 15.665 14,637

1.施設工事関連小合計 136.165 127,232

2-1 機材調達 日本国側協力対象外の医療機材の調達 150.000 140,160

日本国側協力対象外の医療家具・一般家具の

調達 35.000 32,704

2.機材調達関連小合計 185.000 172,864

3-1 銀行手数料、税

支払授権書発行料、支払銀行手数料。輸入資

機材にかかる関税 40,000 37,376

3-2 許認可 建設許可申請。EIA 費用。電力・ガス申請費

用。 12,580 11,755

3. 申請許認可関連小合計 52,580 49,131

1.2.3 合計 373,745 349,227

4 予備費 56,062 52,384

5 PMU 業務調整ユニット(PMU)人件費 23,796 22,235

合計 453,603 423,846

註)パ国の会計年度は、7 月~6 月。上記負担経費は FY2019-2020 及び FY2020020PM の支出を前提とするが、項

目により前後する場合がある

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102

積算条件

1) 積算時点 :2018(平成 30)年 7 月

2) 為替交換レート:1米ドル=110.09 円

1ユーロ:131.53 円

1パキスタンルピー:0.9344 円

(2018 年 4 月から 2018 年 6 月までの 3 か月の平均)

3) 物価変動係数 :7.7%(1.0770)を見込む。

4) 調達・施工期間:詳細設計、機材調達・建設工事の期間は施工工程に示した通り。

3.5.2 運営・維持管理計画

運営・維持管理費の試算(2018 年 11 月時点の PC-1)を下表に示す。なお、物価変動係数は

積算条件と同等とする。

表 3-22 竣工後の運営・維持管理費(PC-1 ドラフト) (単位:千 PR.)

費 目 2021 年度 2022 年度 2023 年度 2024 年度 2025 年度

(竣工) 1 年後 2 年後 3 年後 4 年後

(1) 人件費 1,981,000 2,134000 2,298,000 2,475,000 2,665,000

(2) 運営費(通信費、光熱費) 12,000 15,324 16,504 17,774 19,143

(3) 運営費(燃料費(POL)) 1,000 1,077 1,160 1,249 1,345

(4) 運営費(一般経費) 53,500 57,620 62,056 66,835 71,981

(5) 修繕/維持管理費(機材) 0 6,792 7,315 7,878 8,485

(6) 修繕/維持管理費(家具) 0 2,400 2,585 2,784 2,998

小合計 2,048,000 2,214,000 2,385,000 2,568,000 2,766,000

(7) 修繕/維持管理費(施設) 0 0 0 0 85,000

合 計 (10 万 PR.以下四捨五入) 2,047,500 2,214,350 2,384,850 2,568,490 2,851,260

(出典:PIMS)

3.5.2.1 運営・維持管理費の算出根拠 人件費

新施設に必要となる職員数は「3.4.1.1 運営体制」の通り、日本の医療基準を参考として算定

した(表 3-17)。PIMS の給料体系は Basic pay scale(以下、「BPS」という)1-20 まで設定されて

おり、高位はその数値が高い。本施設で特に新規雇用及び事前研修が必要な看護師は、BPS16 に

あたる。下表 3-23 に、給料体系グループごとの 2020 年給与、年間総支出予測を示す。これに物

価変動率を乗じた推定額を、2021 年から 5 年間の PC-1 に計上するため先方へ情報を提供した。

表 3-23 日本提案による新規職員の年間給与の推定(2020 年度) BPS 職種 人数 年間給与合計(PR.)

BPS 20-18 管理職、教授、助教授 33 名 39,061,725

BPS 17-16 看護師長、看護師、助産婦、技師 177 名 94,661,261

BPS 14-9 BME, 麻酔技師、手術室技師、アシスタント 49 名 17,072,965

BPS 7-1 運転手、ワードボーイ、その他 133 名 31,887,868

合計 392 名 182,683,819

(出典:調査団作成)

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103

これに対して、PIMS が PC-1 で計上した 2020 年度の新規職員の合計数は 395 名であり、開院

時の推定年間給与合計額は以下の通りである。新規 BME 職員が不足しているなどの特徴があ

り、今後ソフトコンポーネントを実施する上で、先方と協議し増員するなどの措置が必要である

が、合計額としては日本側の試算と相違ない。

表 3-24 PC-1(ドラフト)による新規職員の年間給与(2020 年度) BPS 職種 人数 年間給与合計(PR.)

BPS20-18 管理職、教授、助教授、看護部長、栄養師 30 名 40,414,896

BPS17-16 看護師長、看護師、管理課アシスタント、

BME アシスタント、薬剤師

139 名 86,752,956

BPS14-9 パラメディックス、技師(ボイラー、空調機

械)、衛生設備管理者、管理(速記、統計、

会計)、助産婦

100 名 34,970,160

BPS7-1 設備技師、調理師、ワードボーイ、その他 126 名 35,942,508

合計 395 名 198,080,520

(出典:PIMS)

運営費(通信費・光熱費)

運営費には、通信・電話代、光熱費、職員住居賃貸、交通費、燃料費、一般経費が含まれる。

新施設が竣工すると、現在の CH と MCHC の規模は 27%程度拡張される。CH と MCHC の直近

の通信・電話代の支出実績を参考に按分した経費を目安として PC-1 へ計上する。

運営費(燃料費)

燃料費(Petroleum, Oils, and Lubricants: POL)が過去の PC-1 で計上されており、本施設の経費

としても、竣工時予算として 100 万 PR.を計上する。

運営費(一般経費)

PIMS の経費支出項目のうち、一般経費に含まれるものは、文房具購入費、印刷代、会議費、

書籍代、制服/防護服、広告、法的事務費、薬品購入費、その他である。新施設が竣工すると、

現在の CH と MCHC の規模は 27%程度拡張される。CH と MCHC の直近の一般経費支出実績を

参考に按分した経費を目安として計上する。なお、施設維持管理費は、先方による PC-1 の計上

のように 5 年後から発生するオーバーホール以外に、竣工後すぐに開始される定期点検や溶剤

補充などがあり、竣工年から発生するものがある。(「(6) 定期点検・維持管理費(施設)」で後

述。)これらも、本項目に含まれる前提とする。

表 3-25 2016-2017 CH・MCHC の一般経費と、新施設の一般経費予測 (単位:千 PR.)

1) CH 2) MCHC 5) 新施設における一般経費(2020 年予測)

一般経費支出 100,453 47,143 53,500

文房具 1,537 497 *積算上の物価変動率を考慮する。

1)+2)=147,596

147,596 x 0.27=39,850

39,850 x 1.0774 =53,550

*竣工後から発生する「建築設備 定期点検・

維持管理費用」を含む。

印刷費 1,226 394

書籍 498 100

制服/防護服 1,484 1,006

広告 144 173

薬品購入費 84,973 38,843

その他 10,591 6,136

(出典:CH 及び MCHC の一般経費実績は PIMS。調査団による試算)

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104

修繕・維持管理費(機材・家具)

PC-1 では機材家具調達費のうちの一定金額が、竣工翌年度以降の機材・家具の修繕維持管理

費として計上される。割合に寄らない方法で積み上げて試算した、医療機材の修繕・維持管理費

の目安は以下の通りである。

対象となる医療機材:優先順位 A+BB で、機材納入後 1 年間の保証期間経過後から 2 年間に

支出が想定される保守点検費用と消耗品費用を分けて算出する。

維持管理費用:約121万円/年

点検費用単価:現地代理店のサービスエンジニアが PIMS を訪問した場合の技術料(労賃)

を 1 日 2 万円として計算

点検回数:1 年に 1 回以上定期点検を必要とする機材に対し、上記のエンジニアが点検する

ことを想定

金額合計:各機材あたり、点検費用単価×点検回数(ほとんどの機材は年 1 回×2 年分)

消耗品費用 :約3,630万円/年

各アイテムの機材を使用するのに必要な消耗品をリストアップし単価を設定し、2年間に

消費するであろう数量を乗じた。数量は、ある程度の年間患者数を想定した。

定期点検・維持管理費(施設)

PC-1 では施設建設費の一定金額が竣工度 5 年後のオーバーホール費用(機材パーツの一部

を刷新する中規模修繕)として申請される。他方で、主な建築設備について日常の保守整備で

必要となる維持管理費の目安は以下の通りである。「3.4.2.2 建築設備の維持管理」で述べた通

り、予防保全の観点から、竣工引き渡し直後から建築設備の定期点検を開始し、軟水装置の塩

の補充なども開始する必要があることを関係者はよく理解する必要がある。

HEPAフィルター

手術室や ICU 諸室に設置される空調設備の保守管理、HEPA フィルターの交換は、PIMS

が外部委託で実施する。PIMS の管理課の契約管理のもと、専門会社との契約による年間の

保守管理(差圧の計測など)及び室内粒子観測の結果による適正時期での HEPA フィルター

の交換を想定する。予測される新施設全体でのクリーンルームの保守管理及び HEPA 交換

費用は、578 万 PR.(540 万円/年)と見積もられる。

ア)保守管理費(フィルター交換労務費、プレ・フィルター代等含む)試算:420 万円

/年(72 万円×4 手術室+12 万円×11 室)

イ)HEPA フィルター代(材料費のみ):120 万円/年

(根拠)

・ファンフィルターユニット(FFU)の HEPA フィルター(60 センチ角)交換:11

室、48 枚

約 4.5 万円×48 =約 216 万円/3 年(約 72 万円/年)

・手術室天井制気口の HEPA フィルター 約 4.5 万円×32=約 144 万円/3 年(約

48 万円/年)

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軟水装置

本施設では、給湯及び蒸気に使用する上水についてのみ軟水処理する。一般給水について

は、他の PIMS 施設と同様に軟水処理しない。また、オートクレーブ用の軟水器は、建築設備

とは切り離した独立したものであるため、別途、機器の仕様に則った維持管理が必要となる。

建築設備(給湯・蒸気用)の軟水処理装置にかかる年間維持管理費用は、139 万 PR.(130 万

円)/年(材料費約 76 万円、定期点検及び補充作業費 4.5 万円/月)と見積もられる。

ア)Na 型陽イオン樹脂代(材料費)

450 円×168L=75,600 円(3 年に 1 度全量交換、25,200 円/年)

イ)樹脂再生のための塩代(材料費)

254 ㎏×36 回/年×80 円/kg=731,500 円

(根拠)

・必要樹脂量 250L:①原水硬度量が 375mg/L ②使用水量約 30 ㎥/日、③除去硬度量

45g/L とする。一日に除去する硬度量 11,250g(375g/L×g/m3)÷g/ g/L=250L

・軟水機 1 再生あたりの塩再生量:選定機械により樹脂1L あたりに必要な塩再生量は

96g/RL。一日の必要樹脂量は 250L のため、96×250=24kg

・塩タンクの補充サイクル:254 ㎏÷24=10.5(36 回/年→維持管理上は「254 ㎏の塩を

10 日に 1 回補充。」で提案。)

エレベーター

PIMS では、現在、ダムウェーターを含む 18 台について保守管理業務を外部委託している

ため、本施設に 2 台設置する予定のエレベーターに関しても、PIMS 管理課との外部委託契

約による保守管理費を見込む方針とする。2017年 3月の例では、18台の合計請負金額 419,500

PR. /月であり、1 台あたり 23,300PR. /月・台程度と考えられる。物価変動率を考慮し、本施

設での保守管理費を 29,100 PR. /月・台とした場合、本施設にはエレベーターを 2 台設置す

るため、年間費用は 698,400 PR. (約 65 万円)と見込まれる。

医療ガス

維持管理費用として、医療ガス供給費用 408 万 PR. (約 382 万円/年)と、医療ガス設

備の保守点検費用(約 200 万円)が必要となる。

本施設のマニホールド室には、予備酸素ボンベ 8 本、窒素ボンベ 8 本、笑気 2 本を設置す

る。下記の通り、年間の医療ガス供給費用の内訳は以下の通り。

ア)液化酸素

既存 CE5(5,000 m3)タンクへの供給頻度が増えることが想定される。PIMS では

タンク内の貯蔵量の約 6 割を消費した時点で、外部委託されたぎょうしゃ会社がタ

ンクローリー車で液化酸素を 4 日に 1 度の頻度で供給している。液化酸素の単価は

34.9PR./m3(2016 年 7 月)。本施設の酸素消費量は 52,380L/日と試算されており、液

化酸素量に換算すると 22,341L/年となる27。物価変動率を考慮した年間の液化酸素

供給の増額費用は以下の通りが見込まれる。

22,331×34.9×1.0775=1,129,812PR.(約 105.5 万円)

27 液化酸素 1kg は気酸 750L に相当。液化酸素の液比重(Kg/L)は 1.141 とする。

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イ)笑気(N2O)ボンベ

本施設の笑気消費量は 1,920L/日と試算されており、笑気ボンベ量に換算すると

1297kg/年(30kg 笑気ボンベ 44 本分)となる28。笑気ボンベの単価は 7200 PR. /30 ㎏

シリンダー1 本 (2015 年 9 月)。物価変動率を考慮した年間の笑気ボンベ供給費用

は以下の通りが見込まれる。

44×7200×1.0776=532,470 PR.(約 49.8 万円)

ウ)窒素(N2)ボンベ

本施設の窒素消費量は 3,000L/日と試算されており、年間使用量は 1,095,000L と

なる。N2充填量 7000L(実際量を 6800L と仮定)の窒素ボンベ量に換算すると 161

本分となる。窒素ボンベの単価は 750 PR./240cft(240 キュービック・フィートは約

6800L)であり、物価変動率を考慮した年間の窒素ボンベ供給費用は以下の通りが見

込まれる。

161×750×1.0776=1,884,436 PR.(約 176 万円)

エ)予備酸素ボンベ

約 54 万 PR.(約 50.5 万円)

3.5.2.2 本プロジェクト実施後の収支予測 過去 5 年の PIMS の予算収入は下表の通りであり、やや変動はあるものの平均予算上昇率は

6.8%である。PIMS の 2017 年度予算収入 41.86 億 PR.に平均予算上昇率を乗算すると、2021 年度

PIMS 予算は 54.47 億 PR.と算定できる。新施設の 2021 年度運営・維持管理費見込みは右予算の

4.8%であり、負担可能と考えられる。

表 3-26 過去 5 年間の PIMS 予算 (単位:千 PR.)

2013-14 2014-15 2015-16 2016-17 2017-18

収入

監督庁よりの予算配分 3,114,500 3,245,700 3,652,400 4,049,500 4,034,800

患者利用料金 111,041 115,900 150,300 143,200 152,000

総収入額 3,225,541 3,361,600 3,802,700 4,192,700 4,186,800

予算上昇率 1 1.042 1.131 1.102 0.998

(出典:PIMS)

28 笑気 1kg は、540L の笑気ガスに相当する。

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第4章 プロジェクトの評価

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第4章 プロジェクトの評価

4.1 事業のための前提条件

本プロジェクトの実施に当たり、下記事項がパ国政府により実行される必要がある。

建設工事着工まで

• 2019 年 2 月の日本国政府閣議前までに PC-1 を承認する。

• EIA に関して NOC を取得する。

• 建設工事の入札までにプロジェクトサイト内に存する既存の小屋、構造物、舗装や樹木を

解体・撤去し、整地する。

• 建設工事着工までに CDA より建築許可を取得する。

• 建設工事着工までにプロジェクトサイト内に存する既存インフラ(電気、電話/インター

ネット、給水、他)の管路の盛替えを行う。

• プロジェクト口座を開設し手数料を支払う。

建設工事中

• 電力、水道、都市ガス、酸素ガス、通信網の引込

• 免税手続き

• 工事中の安全確保(工事仮囲い外の迂回路確保、周知など)

日本側工事と並行及び完成後

• 既存病院の対象範囲の改修(周手術期 PICU への改築、機材の移転)

• 日本側協力対象以外の医療機材・家具等の調達。

4.2 プロジェクト全体計画達成のために必要な相手方投入(負担)事項

本プロジェクトの効果を発現・持続させるために、下記の事項がパ国政府により実行される必

要がある。

• 引き渡し時までに、ICU 看護師などの医療従事者のトレーニングを終了し、管理職員、医

療機材維持管理者、建築設備維持管理技術者を含んだ必要職員を、新施設(協力対象施設)

へ配置する。

• 移設が必要な機材・備品を、既存 CH 及び MCHC より移設する。

• 新施設の運営に必要な予算を確保する。

• 新施設の維持管理に必要な人材、予算を確保する。対象となる建築設備について維持管理

及び消耗品や交換部品、補充物の供給を行うため、外部委託業務を発注管理する。

4.3 外部条件

プロジェクトの効果を発現・持続するための外部条件として、下記が満たされることが必要で

ある。

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国家保健政策 2016-25 の継続

標記政策に基づき、第1次レベル、第2次レベルの医療インフラの整備が続けられ、PIMSへの

適正なレファレルがなされるようになること。また、保健医療人材強化に関する施策が展開さ

れ、プロジェクト対象施設に必要な人材の確保が継続されること。医療サービスの提供ととも

に、教育機関としてのPIMSの役割に変更がなく、本プロジェクトにより整備された施設と機材

がパ国の保健医療人材育成と強化に有効に活用され続けること。

新施設の維持管理と業務実施に必要な財源の確保

国家財政及び州政府財政の安定化と予算の適正配分のもと、PIMSへの配賦予算を確保し、

新施設での診療・看護活動に必要な人材、医療材料、医薬品と医療機材の運用に必要な消耗

品などが不足なく供給されていること。

パ国の政情の極度な悪化がない

2018 年 7 月の総選挙前には、バルチスタン州マスタングや KP 州ペシャワルでの自爆テロ

や、他州の都市部でも選挙運動に関わる暴動が発生したものの、それが国全体に拡大すること

はなく、政情は一応の落ち着きを見せている。しかしながら、深刻な外貨不足と財政難は続い

ており、財政の緊縮による行政サービスの低下に国民の不満が高まれば、政情不安に陥るよう

な反政府運動が発生しかねない。安定した行政運営により、現在の政情が極度に悪化しないこ

とが強く望まれる。

4.4 プロジェクトの評価

評価 5 項目のうち、妥当性と有効性について以下に述べる。

4.4.1 妥当性

4.4.1.1 プロジェクトの裨益対象者 PIMS への来院者が多いイスラマバード首都圏及び隣接する PB 州北端のラーワルピンディ

の人口を合わせると、約 740 万 7,200 人(2017 年 国家統計局)である。このうち、本プロジ

ェクトによって強化される CH と MCHC が提供するサービスを利用しうる、0~14 歳の小児

と、生殖可能年齢とされる 15 歳~49 歳の女性を合わせた裨益対象者数は、約 442 万 9,500 人

である。これに加えて、小児や周産期女性のための専門病院を持たない KP 州の町や北部のア

ザド・カシミール州からの患者搬送もあり、実際にはさらに多くのサービス利用者が存在する。

ここ 10 年間、国内の人口増加率は、2.0~2.4%ほどで推移している。一方、イスラマバード首

都圏の人口増加率は、2017 年に全国平均の 2 倍以上の 4.91%を記録した。イスラマバード首都

圏がこのままの割合で、また、ラーワルピンディが全国平均値で人口増加を続けた場合、プロ

ジェクト終了時(2021 年を想定)には、さらに 50 万人の裨益対象者の増加が予想される。近

年、政府により、都市部と地方を結ぶ幹線道路の拡張や新設と、それに合わせたバス路線の延

長など、交通網の整備が進んでいる。これにより、今後、都市部への流入人口のさらなる増加

が予測される。人口増加と比例して、保健医療サービス利用のニーズが高まるため、この時期

に、本プロジェクトにより、医療サービスの強化のための支援が行われることの意義は非常に

大きい。

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4.4.1.2 人間の安全保障の観点 パ国は、国内の一部に、過激派勢力の影響が強い地域を残すものの、長期の政情不安から脱

却しつつあり、比較的安定した経済成長の過程にある。インフラをはじめとする経済基盤の開

発が、都市部を中心に進んでいるが、所得格差や、開発速度と規模の地域格差、教育格差、宗

教文化に影響されやすいジェンダー格差が依然大きく、貧困者層の社会に対する不満は少なく

ない。貧困による栄養不良や不衛生な環境が疾病をもたらし、疾病による就業困難や治療費の

支払いが、さらなる貧困をもたらす悪循環が続いている。これに対し、PIMS では、患者の支

払い能力に応じた診療費用の請求や、ザカート(イスラム教で困窮者を助けるための義務的な

喜捨)の活用など、来院者への公平な医療サービス提供のための仕組みづくりを続けている。

この組織の中で、本プロジェクトの協力対象である CH と MCHC は、社会的弱者になりやす

い、子どもと女性に対し、必要な医療サービスを提供する施設である。政府は国家開発政策 2025

の中で、ジェンダーバランスの均衡化と貧困対策として、女性の就労機会を増やし、社会参加

率を 24%から 45%に上げるとしている。本プロジェクトによる CH と MCHC の機能強化は、

今後のパ国の発展を担う子どもたちの健やかな成長と、その子どもたちを生み育て、世帯収入

の担い手にもなる女性の、救命と健康の回復及び維持に必要なサービスの質を上げるための支

援である。人間の安全保障において重要な、健康と貧困解消に基づく民生の安定に、大きな貢

献ができる事業である。

4.4.1.3 パ国の開発計画との整合性 MoPD&R が発表している、2014 年 5 月から向こう 10 年間の国家開発政策 2025 では、国内

開発政策と SDGs との統合を図り、7 つの戦略が立てられ、これに基づき連邦保健省及び、各

州政府の保健局により、保健医療分野のプロジェクトが進められている。パ国では国民一人当

たり GDP 比での医療費支出が非常に少ない状態が続いている。国家開発政策 2025 では、医療

費の支出増加を目指すとし、加えて、機能的な情報システム及び保健・衛生インフラを整備の

ほか、出産前・後の女性のケアに必要なバックアップについて、これを強化することも明記さ

れている。本プロジェクトはパ国を代表する、重要な保健インフラの強化であり、その機能強

化による、出産前・後の女性のケア改善を目的としていることから、パ国開発計画で示されて

いる強化事項との矛盾はない。また、国家保健政策 2016-25 の戦略の一つである「保健医療人

材の強化」について、PIMS は LHW のトレーニング施設として WHO とともにその研修を実施

しているだけではなく、保健医療従事者養成校の学生や他病院の医師・看護師のトレーニング

を実施していることから、本プロジェクトによる同施設の設備・機能強化は、国内の保健医療

人材の能力向上にも寄与する。

4.4.1.4 我が国の援助政策との整合性 本プロジェクトの実施により、パ国の保健システム上、第 3 次レベルに位置する周産期医療

施設及び小児医療施設が、拡充・強化され、より多くのハイリスク妊産婦・ハイリスク新生児

への対応が可能になる。高度な医療サービスの提供により、救命件数が増加することで、遅れ

ている MDGs 達成のための、MMR や IMR 等、母子保健指標の改善が期待できる。日本の外務

省は、「対パキスタン・イスラム共和国 国別開発協力方針(2018 年 2 月)」の中で、ポリオ撲

滅に向けた支援の継続とともに、特に MDGs 達成の中で、遅れが指摘されていた母子保健を

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110

中心とした保健システムの強化への貢献を挙げており、この点において、本プロジェクトは、

日本の援助政策と整合性が高い。

4.4.2 有効性

本プロジェクトの実施により、以下の定量的効果と定性的効果の発現が期待される。

4.4.2.1 定量的効果 協力対象である MCHC と CH の 2017 年度の実績を基準に、実現可能な定量的効果指標の目標

値を設定する。目標到達年次は、プロジェクトによる施設の完成から 3 年後の 2024 年とする。

目標値の算出方法は、前述 3.2.1.1(3)のとおり。

表 4-1 定量的効果指標及び目標値

指標名 基準値

(2017 年実績値)

目標値(2024 年)

【事業完成 3年後】

1)MFICU の患者収容件数(件/年) 0

(参考値 142) 300

2)NICU 患児収容件数(件/年) 947 1,100

3)産婦人科と小児科の手術件数

(既存施設と新施設の合計)(件/年) 14,410 16,500

出典:

HMIS / PIMS Computer Department 管理データ2013-2017より、調査団作成

MFICU 基準値の参考値について:

2017年時点で既存棟にMFICUはないため基準値は0だが、既存のMCHCの術後回復室内

の2床を、重症患者のためのICU病床として使用しており、その2017年の利用者数を参

考値とする。

目標値データの入手先:

1)と2)は、新施設に関するYearly patient’s workload in Wards(MFICU, HDU) 2024 /HIMS”

3) は 、 MCHCとCH及び新施設の “Workload of OT Department 2024 / HIMS

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111

表 4-2 定量的効果の目標値算出方法 指標 目標値 算出方法

MFICU の患者収容件数(件

/年) 300

2015 年度、東京都周産期医療整備計画実態調査に基づく疾病頻

度から、MFICU の平均入院日数は 6.7 日である。

病床利用率 100%を想定すると、年間患者収容件数は、327 件*2。

*2:1床が年間収容できる患者数 54.5 人×6床=327 件。

緊急受入のために、病床利用率は 100%以下を見込む必要があ

り、300 件(病床利用率 91.7%)と設定した。

NICU の患者収容件数(件

/年) 1,100

2017 年の患者収容件数 947/16 床、1床が年間収容できる患者

数は 59.2 人。病床利用率は 90.0%*3。

*3:(59.2×16 床×平均入院日数 5.5 日×100)÷(16 床×365

日)=90.0%

同等の病床利用率を想定した場合、新 NICU は 20 床となるた

め、59.2 人×20 床=1,184 件/年、よって 1,100 件/年と設定し

た。

産婦人科と小児科の手術

件数(既存施設と新施設の

合計)(件/年)

16,500

【産婦人科・婦人泌尿器科手術】

2017 年の MCHC の手術件数は約 7,900 件(予定帝王切開 1,450

件、緊急帝王切開 4,350 件、その他 2,100 件)である。このうち、

救急搬送による緊急帝王切開は新施設の 2室で行い、既存の手術

室では予定手術と正常分娩中の急変等によるやむを得ない帝切

のみを実施する。既存の 3室で行っていた帝王切開以外の手術(1

室あたり平均 700 件)と同様の手術は、新施設の 1室でも可能と

なる。

目標値として、既存の MCHC での手術を約 4,000 件(予定帝切

1,450 件 + 他の疾患 2,100 件+ 緊急帝切α件)、新施設での手術

5000 件(緊急帝切約 4,300 件 + それ以外の疾患 700 件)、合計

9,000 件とした。

【小児科手術】

基準値は、2013 年~2017 年の CH での平均年間手術件数 6,620

件である。

新施設 4 手術室のうち 1 室を小児の手術に使用する予定であ

る。1日に 3~4件、1年間で約 900 件(平日)の手術を行うと仮

定し、目標値を既存施設 6,620 件+新施設 900 件=7,500 件とし

た。

【合計】

産婦人科・婦人泌尿器科手術 9,000 件

+小児科手術 7,500 件=16,500 件

4.4.2.2 定性的効果 本プロジェクトの実施により、以下の定性的効果の発現が期待される。

PIMSにおけるハイリスク妊産婦・褥婦・新生児への医療サービス提供体制が強化される。

出生後、重症新生児が NICU に収容されるまでの動線の短縮、同施設内における重症患者

の回復段階に応じた治療の実施、手術室の増設による、ハイリスク妊産婦への迅速な外科的

対応等が可能になる。

既存のMCHCとCHにおいて療養環境が改善し、患者サービスの質が向上する。

HDU 及び、一般病床の増床により、複数患者による 1 床の同時使用がなくなり、各種処置や

療養上の世話がより安全に実施でき、患者のプライバシーと安楽等に配慮した療養環境での

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ケアが提供されるようになる。また、NICU が新施設移転後、CH では同スペースを周手術期

PICU に改築予定であることから、より多くの重症患児に対応が可能となる。

医療機材保守管理業務、CSSD業務が効率化する。

新施設への医療機器保守管理室の設置と技術者の常駐により、医療機器類が常に良好な状

態で稼働し、必要な医療サービスの質を保つ体制が整えられる。また、新施設の CSSD では、

前後扉式のオートクレーブに 適な動線で、効率的かつ安全な滅菌作業が、トレーニングさ

れた技術者により、行われるようになる。

4.4.3 結論

以上の内容を踏まえ、本案件の妥当性は高く、また有効性が見込まれると判断される。