プログラミング教材「メッシュ」の実践例...に)プログラミングの体験学習として位置付けるなどしなければ、時間の確保は難しい。...

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プログラミング教材「メッシュ」の実践例 熊本市立力合小学校 報告者 藤田 まり子 実践者 理科専科(講師)金成久雄 協力者 島津理化 久芳 郁夫氏 目的 児童がメッシュを使用することによって、プログラミングの意味を理解し、簡単なプログラミング ができるようになり、プログラミングへの興味・関心を高めるようにする。 理科学習「電流の働き」の単元において、メッシュを活用した発展学習を試行し、児童の理解の状 況やメッシュの活用法について成果と課題を明らかにする。 期日 2018,12,17 2018,12,21 プログラミングの基礎とメッシュの使い方:1 時間(総合的な学習):久芳氏の協力で実施 理科発展学習:3 時間:専科が中心になって実施 対象児童 力合小学校 6 年生児童 3 学級 108 名(うち特別支援学級児童 2 名) 実践記録 学習活動 教師の支援 プログラミングの意味を知る メッシュの説明を聞く ・メッシュを紹介する動画の視聴(ドミ ノ倒し) ・メッシュをモニター画面で確認した あと、カードを使ってイメージを持つ ・メッシュと iPad に触れてみる メッシュで簡単なプログラムを作る ・ボタンと LED ・日常の例を挙げる 暗くなったら明かりがつく。手を差し出すと水道 水が出て止まる。「こうしたら」「こうなる」という 条件と結果の関係と onoff の必要性を知らせる。 ・モニターで動画をみせ、ドミノの列に間の空いて いるところがあるのに、続けて倒れる様子を見せ、 どうしてそうなっているかを考えさせる。 ・タグカードではたらきを紹介する。 ・班に 1 セット(メッシュと iPad)配布し、箱の裏 表紙でタグの実物と説明をマッチングさせる。 ・ボタンと LED のみ取り出させる。 ボタンを押しても LED がつかないことを確認した 後、プログラミングの仕方を教え、二つのタグをつ ないでボタンを押すと点灯することを確認させる。 こうすることで狙う動作が実現できることを実感さ

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Page 1: プログラミング教材「メッシュ」の実践例...に)プログラミングの体験学習として位置付けるなどしなければ、時間の確保は難しい。

プログラミング教材「メッシュ」の実践例 熊本市立力合小学校

報告者 校 長 藤田 まり子 実践者 理科専科(講師)金成久雄 協力者 島津理化 久芳 郁夫氏

1 目的 児童がメッシュを使用することによって、プログラミングの意味を理解し、簡単なプログラミング

ができるようになり、プログラミングへの興味・関心を高めるようにする。 理科学習「電流の働き」の単元において、メッシュを活用した発展学習を試行し、児童の理解の状

況やメッシュの活用法について成果と課題を明らかにする。 2 期日 2018,12,17 ~ 2018,12,21 プログラミングの基礎とメッシュの使い方:1 時間(総合的な学習):久芳氏の協力で実施 理科発展学習:3時間:専科が中心になって実施 3 対象児童 力合小学校 6年生児童 3 学級 108 名(うち特別支援学級児童 2 名) 4 実践記録 時間

学習活動 教師の支援

1 ① プログラミングの意味を知る

② メッシュの説明を聞く ・メッシュを紹介する動画の視聴(ドミノ倒し) ・メッシュをモニター画面で確認したあと、カードを使ってイメージを持つ ・メッシュと iPadに触れてみる

③ メッシュで簡単なプログラムを作る ・ボタンと LED

・日常の例を挙げる 暗くなったら明かりがつく。手を差し出すと水道水が出て止まる。「こうしたら」「こうなる」という条件と結果の関係と on・off の必要性を知らせる。 ・モニターで動画をみせ、ドミノの列に間の空いているところがあるのに、続けて倒れる様子を見せ、どうしてそうなっているかを考えさせる。 ・タグカードではたらきを紹介する。 ・班に 1セット(メッシュと iPad)配布し、箱の裏表紙でタグの実物と説明をマッチングさせる。 ・ボタンと LED のみ取り出させる。 ボタンを押しても LEDがつかないことを確認した後、プログラミングの仕方を教え、二つのタグをつないでボタンを押すと点灯することを確認させる。こうすることで狙う動作が実現できることを実感さ

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タグカードで思考を可視化

単独動作のみのプログラム

⑤ 追加された課題を知る。 「人に優しいプログラミングを考えよう」

「人に優しい」とはどのようなことか?

班で意見を出し合う。

少しずつ条件を組み合わせたプログラムが

出てくるようになる。

・動かす命令だけでなく、止める命令(オフ命令)が入っているかを確認させる。 ・この段階で、ほとんどの班が「人感センサー」と「温度センサー」の単独プログラムで、人の意思にあまり関係なく作動するものだったので、新しい課題を追加することにした。 →「人に優しい扇風機をかんがえてみよう」 ・自動で動くのも便利だが、機械が勝手に反応して困ったことがないかを問いかけて、具体的な場面で考えるように支援する。 ・センサーで動くのも便利だが、人の意思で動きを制御できることも大切であることに気づかせる。

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5 成果と課題 〇 成果

操作活動は、それ自体がゲーム感覚で児童の興味・関心を引き付けやすい。操作することを通して自然に工夫・改善が行われていくので、教具としては大変有効である。 メッシュで作ったプログラムをモニターに提示することで、考えの共有が容易になり、活発に

交流が行えるようになった。どのような意図でこのように組んだのかを考えることで、聞いている側も自然に思考するようになり、学びにつながった。 メッシュを使うことで、簡単なプログラミングを短時間で体験できることが分かった。 児童は、自分の考えを、形にできたことを、とても喜んでいた。 身近な生活場面にどのようなプログラムが組んであるか、興味をもって考える姿が見られた。 理科の学習としては、電気エネルギーが変換されていくことを実際に確認できるので、実感を

伴った学びにつながることが期待できる。 考えを文章化して明記し、同時にメッシュでもプログラムを見える化したことで、メッシュの

つなぎ方とその意図が対比して示され、発表する側も聞く側も分かりやすくなる。意図とプログラムを共有できるので、対話も活発になる。 発表会の形にすることで、プログラムのアイデアを自分たちで考えて作らざるを得ない状況に

した。そうすることで、講義式の場合よりも児童の主体性は高まった。 1時間内で発表会を終わらせるために、今回のような発表形式を工夫してみたが、児童には好

評だった。教室内の3か所のブースで、参観する班2つとプレゼンをする班に分かれて発表会を行い、交代することにより、全員が異なる複数の班の発表を聞いて、気づきや意見を交流していくことができた。3つの班からなるグループ内での発表だったので、緊張せず意見交換などもスムーズにできた。発表後、修正の時間を取ったので、発表を重ねるごとにより良いプログラムに近づいていき、児童もその達成感を味わうことができた。

〇 課題

操作に慣れるための時間を十分とる必要がある。総合的な学習の時間の中に(年間計画の中に)プログラミングの体験学習として位置付けるなどしなければ、時間の確保は難しい。 タグを使う前にメッシュに触れて操作することを通して自分で学び取っていく方が、理解は速

いのかもしれない。しかし、制限をかけないと学び取ってほしいことを学べないままにやりたいことに走って時間が過ぎるので、どのような条件を提示して自由試行の時間を作るかが課題である。メッシュの配置・つなぎ方など具体的なイメージができたら、紙のタグでプログラムの視覚化ができるようになる。そうなれば、意見の交流もしやすい。 教具として整備するための特別な予算措置が必要と考えられる。今回のようなキットもセット

化しないと、動作化していくとき内容が限られてしまうし、理科学習としての電気エネルギーの変換につながりにくい。