学事暦とグローバル化  ～米国大学における学期制の意味と運用の実際

テンプル大学ジャパンキャンパス

アカデミック・アドバイジング・センター（教務部） ディレクター　島田 敬久

2013年7月26日

於: テンプル大学ジャパンキャンパス 206教室

本日の内容

1.  学事暦～学期制とは 2.  質保証 3.  大学のプロダクト～単位とその単価 4.  グローバル化にむけて 5.  Q & A

1. アメリカにおける学事暦（Academic Calendar)

① セメスター制（2学期）* ② クォーター制（4学期） ③ トライメスター制（3学期）

* セメスター制においても夏学期・冬学期は存在する場合があるが、あくまでもオプション扱い

セメスター制（1学期＝15-16週）** 例）Brown University, Temple University

•  秋学期（Fall Semester） 9月初旬～12月中旬

•  春学期（Spring Semester） 1月中旬～5月上・中旬

•  夏学期（Summer Session）- オプション 5月中・下旬～8月上旬

** これは一般的な指標であり、具体的な開講時期は大学によって異なります。

トライメスター制（1学期＝12-14週）** 例）Carleton College

•  秋学期（Fall Semester） 9月初旬～11月下旬

•  冬学期（Spring Semester） 1月上旬～3月中旬

•  夏学期（Summer Session） 3月下旬～6月上旬

クオーター制（1学期＝10-11週）** 例）University of Washington

•  秋学期（Fall Quarter） 9月中・下旬～12月中旬

•  冬学期（Winter Quarter） 1月上旬～3月中旬

•  春学期（Spring Quarter） 3月下旬～6月上旬

•  夏学期（Summer Quarter) 6月中・下旬～8月下旬

アメリカの大学に「年度」という概念はないのか？

“Academic Year”という単位は存在する Ø  Academic Yearは学費、卒業要件（Requirement）など大学

の管理・運営に用いられる単位 Ø  Academic Yearと学生の修学プランは連動しない

–  入学 –  授業 –  成績評価 –  卒業 → これらは全て学期ベース（Term Driven）で行われる

＝学期制

学期制の概念とは？

学期制 ≠ 「分割された通年制」 学期制とは、 「学生の修学が各学期で完結可能な状態」

Ø どの学期でも入学・卒業が可能 Ø 「年度」「学年」という概念があてはまらない

＝留年というシステムも存在しない

学期制と単位制は不可分

学年制

原則として全員が同時期に進級・卒業する •  入口と出口が決まっているため •  初等中等教育の「履修主義」の影響？

学期制・単位制

学期制によって入口が異なる → 出口も異なるのが自然 •  単位制によって必要なものを必要なだけ

履修し終えた時点で卒業 •  一種の「修得主義」

学期制と質保証

学期・単位制 早期の卒業が（理論上）可能なスキーム

「卒業は早ければ早いほうがいい??」 Ø  修得主義の出口管理＝質保証の重要性

質保証を支えるツール Ø  GPA (Grade Point Average) Ø  キャップ制度 Ø  シラバス Ø  専門職アカデミックアドバイザー　

質保証のシステム

GPA: 学習の成果を数値化・平均化したもの 最低でも下記2タイプのGPA運用が望ましい (1)  Cumulative GPA (総合GPA) (2)  Semester GPA (学期GPA)

キャップ制度 一学期に履修可能な単位数の上限を定める

Ø  必要な学習時間を確保し学びの質を高める Ø  GPAとの連動が効果的

質保証のシステム

シラバス：教員と学生の相互契約書 Ø  通年授業を分割した授業では意味がない Ø  週複数回授業：学期毎に必ず完結する短期集中型 Ø  効果的な学習のための精緻な授業計画 Ø  明確な成績評価基準

専門職アカデミックアドバイザー これらのシステムを理解し有機的に活用する専門家の支援が効果的な学習計画の立案には不可欠

大学のプロダクトは単位

アメリカの大学の学費は単位計算 Ø  「一山いくら」ではなく「一ついくら」 Ø 学費にも単価計算が必須 Ø 学んだ分だけ支払う「明朗会計」 Ø 単位ごとに学費が発生する

– 学期制・早期卒業との連動

グローバル化にむけて / 学期制から考える

日本の大学の現状から： • “Outbound” と “Inbound” • 秋入学とそれをとりまく社会情勢 • 入口の整備とそれから

参考Webサイト：

•  Brown University Academic Calendar: http://www.brown.edu/Administration/Registrar/calendar.html#fall13 •  Carleton College Academic Calendar: http://apps.carleton.edu/calendar/academic/ •  Temple University Academic Calendar: http://www.temple.edu/registrar/documents/calendars/ •  Temple University Tuition Rates: http://bursar.temple.edu/tuition-and-fees/tuition-rates •  University of Washington Academic Calendar: http://www.washington.edu/students/reg/1314cal.html •  University of Washington Tuition Rates: http://opb.washington.edu/content/tuition-and-required-fees 参考/引用文献: •  馬越徹「グローバル化と日本の高等教育改革」 •  尾木直樹、諸星裕 2011, 「危機の大学論 – 日本の大学に未来はあるか？」角川書店 •  中嶋嶺雄 2010，「なぜ、国際教養大学で人材は育つのか」祥伝社 •  諸星裕 2010, 「大学破綻 – 合併、身売り、倒産の内幕」角川書店

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