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1 コンクリート内塩化物濃度の 非破壊検査技術 岩手大学 工学部 電気電子・情報システム工学科 小林 宏一郎

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Page 1: コンクリート内塩化物濃度の 非破壊検査技術 - JST...2 研究背景 鉄筋コンクリート(Reinforced Concrete:RC)構造物 ・耐久性の保証期間は約50年

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コンクリート内塩化物濃度の 非破壊検査技術

岩手大学 工学部

電気電子・情報システム工学科 小林 宏一郎

Page 2: コンクリート内塩化物濃度の 非破壊検査技術 - JST...2 研究背景 鉄筋コンクリート(Reinforced Concrete:RC)構造物 ・耐久性の保証期間は約50年

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研究背景 鉄筋コンクリート(Reinforced Concrete:RC)構造物

・耐久性の保証期間は約50年

・高度経済成長期(1960~1970)に多くのRC構造物が建設されたため,2020年頃

に耐久性が低下した構造物数がピークになることが予想される

・劣化状況の検査,それに応じた改修・補強工事による「構造物の長寿命化」が

安全維持のためには不可欠

RC構造物の主な劣化現象

塩害、中性化、アルカリ骨材反応、凍結融解

「塩害」・・・コンクリート内に塩化物が侵入することにより起こる

塩化物の作用

コンクリート内鉄筋の酸化被膜を破壊

⇒さびによる鉄筋の体積膨張

⇒ひび割れ、剥離

腐食開始~ひび割れは約5年

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従来技術とその問題点 既存の塩化物量測定法

• 電位差滴定法 • 吸光光度法 • 容積法 • 重量法

塩化物量測定法の現状

①構造物からのコア採取やドリル粉が必要

(コア:直径10cm厚さ1.5cm程度)

②構造物を損傷するため、構造物各面・各部位毎の

詳細な評価は困難

③現地ではなく実験室での測定・評価になるため、

多大な時間を要する

電位滴定法による塩分評価

コア抜きの様子

採取されたコア

化学分析

非侵襲、容易、安価な測定法の開発が急務

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新技術の特徴・従来技術との比較 1 測定原理 メリット 課題

蛍光X線分析 X線をサンプルの照射、サンプルから発生する

蛍光X線を分析

現地で測定可能 コアやドリル粉が必要 簡易でない

電磁波計測 サンプルに電磁波を 照射、反射波の振幅に 着目

現地で測定可能 非破壊・容易

波形のばらつきや低減が大きい

低周波交流電気試験法

サンプルに電流を印加、 キャパシンタンスを算出

飽和度の評価可能 塩化物濃度評価不可 電極の埋込が必要

本方法 交流インピーダン

ス法の応用

交流電気特性を計測し、特徴抽出から塩分濃度評価式を用いる。

非破壊検査 現地で測定可能 安価な装置

データベースが必要 精度の向上

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・現在、研究室の試験体での結果であるが、 非破壊でコンクリート内塩化物濃度の推定が可能になった。 ・安価な装置で、リアルタイムに塩化物濃度推定可能である(ただし、データベースが必要。本研究室にてデータベース作成中)

新技術の特徴・従来技術との比較 2

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実験システム(計測装置)

電極(真鍮) (L50mm×W20mm×H15mm) ※電極間距離:50mm

コンクリートサンプル

測定システム

100

電気的特性の測定

コンクリートサンプルに真鍮製の電極を2個設置 ・測定項目:インピーダンスZ、位相ピーク時の周波数f ・印加電圧、印加周波数:4.0V 、 10Hz~100kHz

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実験システム(試験体) 塩化物濃度は、1m3当たり0.0kg , 1.2kg , 2.4kgの3種類 塩化物イオンの一般的な鋼材腐食発生限界濃度は1.2kg/m3

(土木学会コンクリート標準示方書)

Sample

A Sample B

Sample C

150

200 [mm]

0.0kg/m3

0.6kg/m3 1.2kg/m3

•材齢約5年(2013年12月時点) •ポルトランドセメント使用 •水セメント比60%

水セメント比= 水[kg]

セメント[kg] ×100 %

1.2kg/m3

2.4kg/m3

水 セメント 砂 単位体積重量[kg/m3] 273 455 1405

試験体組成

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実験結果 )()

loglog(),(

)(

aveave

hh

ave hh

ZZ

ffZfF

ave

−=

f : ピーク周波数測定値 fave :ピーク周波数平均値 Z : インピーダンス測定値 Zave:インピーダンス平均値 h : 水蒸気量測定値 have :水蒸気量平均値

ピーク周波数の項 インピーダンスの項 水蒸気量の項

平均値算出期間257日~992日(2011.8.1~2013.8.5)

塩化物濃度[kg/m3] 評価値

0.0 -0.8~0.4 1.2 0.5~1.2 2.4 0.7~1.4

・塩化物濃度を概ね推定することが可能 ・塩化物濃度0.0kg/m3と1.2kg/m3の分離精度は高い ⇒発錆限界が塩化物濃度1.2kg/m3であり、腐食判定において本手法は有用 ・t検定の結果、それぞれの塩化物濃度において有意水準0.01%で差が得られ、 本手法の妥当性が示された

* *

*:P<0.001

塩化物濃度評価値

各塩化物濃度における評価値分布

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想定される用途

• 非破壊・リアルタイム・安価の特徴を生かし、塩害が懸念される構造物へのスクリーニングとしての利用が期待させる。

• 将来的には、高精度の検査装置を目指す。

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実用化に向けた課題

• 現在、試験体において塩化物濃度の発錆限界値(1.2kg/m3 )の推定が可能なところまで開発済み。

• しかし、コンクリートの深さ方向の塩化物濃度分布の推定が未解決である。

• 実用化に向けて、さらなる推定精度の向上、各種組成のデータベース作成を行い、実際の構造物で検証ができるよう技術を確立する予定である。

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企業への期待

• 非破壊検査技術に興味を持つ、企業との共同研究を希望します。

• 実用化に向けた各種研究助成へ共同で申請を行いたい。

• 可能であれば、人的サポート(社会人博士コースの受入など)も期待したい。

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本技術に関する知的財産権

• 発明の名称 :コンクリート体の塩化物濃度測定システム及びコンクリート体の塩化物濃度測定方法

• 出願番号 :特願2013-265560 • 出願人 :岩手大学 • 発明者 :小林宏一郎、山崎慶太

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産学連携の経歴

• 1999年- 竹中工務店と共同研究実施 • 1999年-2004年 JST地域結集型共同研究事業に採択(分担者) • 2005年-2006年 JST実用化のための可能性試験に採択(代表) • 2006年-2008年 JST実用化のための育成研究に採択(分担者) • 2008年- 2009年 株式会社デンソーと共同研究実施 • 2010年-2011年 インテリジェント・コスモス学術振興財団研究費に採択(代表) • 2011年-2012年 JST A-STEP FSに採択(代表) • 2013年-2015年 JST A-Step,ハイリスク挑戦タイプに採択(研究代表) • その他:企業との技術相談多数あり

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お問い合わせ先(必須)

岩手大学地域連携推進センター

知的財産移転部門

TEL 019-621-6494

FAX 019-604-5036

e-mail [email protected]