エネルギー・地球環境問題における技術の役割 山地憲治(10 …...出典)ipcc...

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俯瞰講義:エネルギーと地球環境 エネルギー・地球環境問題における技術の役割 山地憲治(1022日、29日、115) ・エネルギーシステムの視点 ・エネルギー資源と技術 地球温暖化対策の長期技術シナリオ :このマークが付してある著作物は、第三者が有する著作物ですので、同著作物の再使用、同著 作物の二次的著作物の創作等については、著作権者より直接使用許諾を得る必要があります。

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俯瞰講義:エネルギーと地球環境

エネルギー・地球環境問題における技術の役割山地憲治(10月22日、29日、11月5日)

・エネルギーシステムの視点

・エネルギー資源と技術

・地球温暖化対策の長期技術シナリオ

‡:このマークが付してある著作物は、第三者が有する著作物ですので、同著作物の再使用、同著

作物の二次的著作物の創作等については、著作権者より直接使用許諾を得る必要があります。

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地球温暖化対策の長期技術シナリオ

-地球温暖化の原理・現状・影響の概要IPCC第4次報告の知見を中心に

-地球温暖化対策の究極目標科学の不確実性の下での対策大気中GHG濃度の安定化レベルIPCC第4次報告での対策に関する知見

-地球温暖化対策の長期シナリオ研究地球温暖化対策の基本構造世界エネルギーモデルDNE21の構成CO2濃度550ppm安定化の最適対策シナリオ

-茅方程式による地球温暖化対策の評価-地球温暖化対策に関する基本認識

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(IPCC第4次報告)

‡ 出所:IPCC、2007、WG1-AR4翻訳版、p13(15枚目)、図SPM-4http://www.data.kishou.go.jp/climate/cpdinfo/ipcc/ar4/ipcc_ar4_wg1_spm_Jpn_rev2.pdf

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地球の温度の決まり方

F[w/m2] 地

πR2FA反射(可視光 )

黒体輻射 (赤外線 )4πR2σT4

R

πR2

太陽

4πR2σT4 =πR2(1- A)FT = (1-A)F 1/4

A(アルベド)=0.3 , F(太陽定数)=1368 W/m2

σ(ステファン・ボルツマン定数)= 5.67×10-8 Wm-2K-4

T=255K(-18℃)

温室効果ガス

4πR2σT’ 4

B

1-B地上

宇宙

B: 温室効果ガスによる

輻射エネルギーのトラップ率

T’ = (1-A)F 1/4

4(1-B)σ

B=0.4

T’=288K (15℃)‡出所:山地憲治、「エネルギー・環境・経済システム論」、岩波書店、2006年

図3-9(p87)

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水資源

生態

異常現

突然の不可逆的なリス

水資

予測される気候変動の影響

多くの地域、特に開発途上地域での農作物の収量の減

高緯度地域での収量増加の可能性

多くの先進地域での収量の減少

水利用に大きな変化(アフリカの多くをはじめ、10億人

以上が水不足に襲われるという研究もある)

主要都市での海面上昇の脅威

生態系の大多数は現状維持が不可能に

暴風雨、林野火災、干魃、洪水、熱波の強度の増加

気候システムの急激かつ大規模な転換のリスクが上昇

小山岳氷河の消滅-いくらかの地域での水資源

減少の脅威

サンゴ礁の生態系が不可逆的かつ破壊的被害を受ける

世界の気温の変化(工業化前との比較)0℃ 1℃ 2℃ 3℃ 4℃ 5℃

‡出所:スターン・レビュー(環境省)、図2、p5(21枚目)http://www.env.go.jp/press/file_view.php?serial=9176&hou_id=8046

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出典)S. Rahmstorf “Ocean circulation and climate during the past 120,000 years.”, Nature, 2002. Box 1

♦ 熱塩循環(THC)の停止は、特に北大西洋における気候システムへの影

や、全球的な海洋生態系への大きな擾乱等が危惧され、予防的な視点からは、これを避けることは地球温暖化対策の一つの基準となる。

熱塩循環停止(不可逆的リスクの例)

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温室効果ガス排出量(1970-2004年)

♦ GHGは1970から2004年の間に約70%増加

♦ とりわけCO2の増加が大きい

♦ 化石燃料燃焼CO2は約57%を占める

♦ 2005年の大気中CO2濃度は379 ppm♦ GHGによる等価CO2濃度は455 ppm-CO2eq.♦ エアロゾル等を含む等価CO2濃度は375

ppm-CO2eq.出典)IPCC WG3 AR4, SPM Figure SPM.1, p4

出典)IPCC WG3 AR4, Ch.1Figure 1.1b (p103)

Y2004

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地域別の一人当たりGHG排出量(2004年)

Annex I Non-Annex I

人口 19.7% 80.3%GHG排出量 48% 52%

一人当たり排出量 16.1 tCO2eq./cap 4.2 tCO2eq./cap

出典)IPCC WG3 AR4, SPM Figure SPM.3a, p5

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地球温暖化対策の究極の目標(気候変動枠組み条約第2条)

• 目標水準:気候系に対して危険な人為的干渉を及ぼすこととならない水準において、大気中の温室効果ガスの濃度を安定化。

• 目標達成期限:生態系が気候変動に自然に適応し食料の生産が脅かされず、かつ経済開発が持続可能な態様で進行することができるような期間内に目標達成。

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2℃安定化目標の意味(気候科学の不確実性)

出典)B. Hare & M. Meinshausen, “How much warming are we committed to and how much can be avoided?”PIK Report No.93, 2004

2℃をオーバーシュートする確率は、400 ppmvCO2eq.で安定化しても数%~60%程度、550 ppmvCO2eq.では70%~100%程

度と評価

8種類の気候感度の確率密度分布を基に2℃をオーバーシュートする確率を導出

http://www.pik-potsdam.de/research/publications/pikreports/.files/pr93.pdf、figure2, p12、figure8,p26

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安定化レベル別の温暖化影響被害と対策費用

CO2濃度

(ppm)

等価CO2濃度(ppmCO2eq.)

産業革命以降の気温上昇幅(℃)

2050年の

CO2削減率

(00年比%)

2050年削減費用(対GDP

比%)

温暖化影響損失(対GDP

比%)

350-400 445-490 2.0-2.4 -85~-50

400-440 490-535 2.4-2.8 -60~-30

440-485 535-590 2.8-3.2 -30~+5 1.3(-0~4)

485-570 590-710 3.2-4.0 +10~+60 0.5(-1~2)

570-660 710-855 4.0-4.9 +25~+85 ― 1~5

660-790 855-1130 4.9-6.1 +90~+140 ― ―

出典)IPCC WG2 & WG3 AR4, SPMより整理

注)費用便益的には、削減費用と影響損失の和が最小になる濃度が望ましい

+5.5未満 地域により損

失(+)/便益(-)混在

すべての地域で+

スターン・レビュー?

EU提案

政府提案(美しい星50)

(http://www.rite.or.jp/Japanese/labo/sysken/about-global-warming/download-data/Long-termTarget.pdf

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各レベルに安定化するために必要な排出量推移

Category I (2.0–2.4ºC) Category II (2.4–2.8ºC)

Category III (2.8–3.2ºC) Category IV (3.2–4.0ºC)

Category V (4.0–4.9ºC) Category VI (4.9–6.1ºC)

2000年比2050年排出–85~–50% –60

–30~+10~

+25~

+90~

排出量がピークとなる年

EU目標、Stern推奨値、安倍首相宣言

出典)IPCC WG3 AR4, SPM Figure SPM.7, p16

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安定化レベルによる必要となる削減技術

♦ いずれのモデルの結果も2100年には一次エネルギー供給の半分以上は

再生可能エネルギー(少々楽観的?)

♦ MESSAGEは、バイオマスCCSの大規模利用も

出典)IPCC WG3 AR4 Ch.3 Figure 3.24, p204

ベースライン

Category II: 3-3.6 W/m2; 490-540 ppm CO2eq.Category IV: 4.5 W/m2; 650 ppm CO2eq.

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2030年の経済ポテンシャル

♦ 世界の排出量の伸びを相殺または現在のレベル以下に削減することも能な削減ポテンシャルが存在

♦ 世界で最も安価なところから理想的に削減できた場合の値

♦ 通常、SRESのシナリオ自体にはネガティブ費用は折り込み済み

ボトムアップ評価 トップダウン評価

出典)IPCC WG3 AR4, SPMを基にRITEにて作成

0

10

20

30

40

50

60

70

80

2000 Low High Low High

GH

G e

mis

sion

s (G

tCO2

eq.)

Red. by 0 $/tCO2eq.Red. by 20 $/tCO2eq.Red. by 50 $/tCO2eq.Red. by 100 $/tCO2eq.> 100$/tCO2eq.

A1B B22030

0

10

20

30

40

50

60

70

80

2000 Low High Low High

GH

G e

mis

sion

s (G

tCO2

eq.)

Red. by 0 $/tCO2eq.Red. by 20 $/tCO2eq.Red. by 50 $/tCO2eq.Red. by 100 $/tCO2eq.> 100$/tCO2eq.

A1B B22030

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出所:山地憲治、「エネルギー・環境・経済システム論」、岩波書店、2006年

図3.11(p93)

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DNE21モデルの世界地域分割

西ヨーロッパ

中東・北アフリカ

サハラ以南のアフリカ

その他のアジア

計画経済圏アジア日本

オセアニア

ラテンアメリカ

北アメリカ

旧ソ連・東ヨーロッパ

DNE21モデルについては下記の参考文献参照:

山地憲治、藤井康正:グローバルエネルギー戦略、電力新報社 1995年

Fujii, Y., K. Yamaji: Assessment of technological options in the global energy system for limiting the atmospheric CO2 concentration, Environmental Economics and Policy Studies, vol.1, pp.113-139 (1998)

新エネルギー・産業技術総合開発機構/(財)地球環境産業技術研究機構:「地球再生計画」の実施計画作成に関する調査事業報告書(1994-2002)

http://www.rite.or.jp/English/lab/syslab/research/new-earth/download-page/downloadable-data/dne21-manual.pdf, 図2-2、p6

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CO2排出削減のための技術

省エネルギーの推進• 最終需要での節約(自動車燃費など)

• 変換効率の改善

燃料転換• 燃料転換(石炭から天然ガスへの転換など)• 再生可能エネルギー、原子力

CO2分離・回収・処分• 発電所排ガスからのCO2回収• CO2の地中処理、海洋処理

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省エネルギーの推進 変換効率の改善

0

10

20

30

40

50

60

701990

2000

2010

2020

2030

2040

2050

2060

2070

2080

2090

2100

発電

効率

(%)

天然ガス火力

石油火力

石炭火力

CO2回収装置付き

IGCCバイオマス発電

メタノール発電

水素発電

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化石燃料資源

0

100

200

300

400

0 2000 4000 6000 8000 10000

2000年以降の累積生産量 (石油換算億トン )

化石

エネ

ルギ

ー生

産コ

スト

(米

ドル

/石

油換

算ト

ン)

石油

天然ガス

石炭

出所:http://www.rite.or.jp/English/lab/syslab/research/new-earth/download-page/downloadable-data/dne21-manual.pdf, 図2-4、p10

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バイオマスエネルギー資源

0

20

40

60

80

100

2000 2010 2020 2030 2040 2050 2060 2070 2080 2090 2100西暦年

年間

エネ

ルギ

ー供

給可

能量

(石油

換算

億ト

ン)

新型燃料用丸太・エネルギー作物

産業用丸太伐採残渣

製材残渣

廃材等

穀物収穫時残渣

サトウキビ収穫時残渣

バガス

古紙

黒液

家庭ゴミ

家畜糞尿(乾)

家畜糞尿(湿)

人糞尿

出所:http://www.rite.or.jp/English/lab/syslab/research/new-earth/download-page/downloadable-data/dne21-manual.pdf, 図2-5、p11

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再生可能エネルギー資源

0

5

10

15

20

水力・地熱 風力

年間

エネ

ルギ

ー供

給可

能量

(兆

キロ

ワッ

ト時

0

100

200

300

太陽光

年間

エネ

ルギ

ー供

給可

能量

(兆

キロ

ワッ

ト時

旧ソ連・東欧

ラテンアメリカ

サハラ以南のアフリカ

中東・北アフリカ

その他のアジア

計画経済圏アジア

オセアニア

日本

西ヨーロッパ

北アメリカ

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原子力発電

0

200

400

600

800

1000

1200

1400

1600

原子

力発

電導

入容

量の

上限

(GW

)

1990 2010 2030 2050 2070 2090

旧ソ連・東欧

ラテンアメリカ

その他アフリカ

中東・北アフリカ

その他アジア

計画経済圏アジア

オセアニア

日本

西ヨーロッパ

北アメリカ‡

出所:http://www.rite.or.jp/English/lab/syslab/research/new-earth/download-page/downloadable-data/dne21-manual.pdf,図2-8、p14

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CO2の分離・回収 排ガスからのCO2回収

• 化学吸収法アルカノールアミンの一種

40℃→R-NH2 + H2O + CO2 ⇔ R-NH3HCO3

← 150℃

• 物理吸収法SELEXOLプロセスCO2をポリエチレングリコールに溶解させる

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CO2の処理 地中処理、海洋処理

CO2

CO2

CO2

地中処分(帯水層貯留)

海洋処分

(深海貯留)

CO2 タンカー 洋上基地火力発電所など

CO2 分離回収プラント

3,700m

以深地下

2,000~3,000m

パイプパイプ

海洋処分 (浅海注入)

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CO2の処理 地中処理、海洋処理

0

20

40

60

80

100

石油増進回収 廃ガス田

二酸

化炭

素処

分可

能容

量(炭

素換

算億

トン

0

2000

4000

6000

帯水層

二酸

化炭

素処

分可

能容

量(炭

素換

算億

トン

旧ソ連・東欧

ラテンアメリカ

サハラ以南のアフリカ

中東・北アフリカ

その他のアジア

計画経済圏アジア

オセアニア

日本

西ヨーロッパ

北アメリカ

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エネルギーシステム構成

Natural Gas Splitting

Coal Gasification

Biomass Gasification

Coal Liquefaction

IGCC with CO Rec.2

Biomass Liquefaction(Fermentation)

Shift Reaction

CO2 Recovery

CO Liquefaction2

CO Compression2

CO Injection2

Methane Synthesis

Methanol Synthesis

EORGas WellAquifer

Ocean

Methanol Synthesis

CoalMethanolCO (pipeline)2

CO (tanker)2

Water Electrolysis

Water Electrolysis

H Liquefaction2 Hydrogen (tanker)

Methane (tanker)

Synthetic. Oil

Hydrogen (pipeline)

Methane (pipeline)

CH Liquefaction4

Methanol Upgrading (into Gasoline)

Oil Refinery(Distillation)

Oil Refinery (Gasoline)

Natural Gas

Methane

Crude Oil

Synthetic Oil

Oil

Coal

Coal

Energy Crops

Wind&O.R.E.

Photovoltaics

Nuclear

H2

CO

CH4

CO2

CO2

CH OH3

Methanol

Electricity

CO Disposal2

Hydrogen

From Other Regions

From Other Regions To Other Regions

To Other Regions

Hydro

Geothermal

Electricity

Gaseous Fuel

Light Fuel Oil

Solid Fuel

: Electricity Use

Gasoline

Heavy Fuel Oil

Modern Fuel WoodsWood Residues

Sawmill ResiduesTimber Scraps

Cereal Harvest ResiduesSugarcane Harvest Resid.

Bagasse

Paper Scraps

Black Liquor

Kitchen Wastes

Animal Wastes

Human Feces

Synthetic Oil

Crude Oil

SOx

Syn.Oil

Oil Refinery(Distillation)

Oil Refinery (Gasoline)

Biomass Liquefaction

Biomass Gasification(Anaerobic Digestion)

Crude Oil

EthanolCoal Cleaning

N.Gas power gen.

Meth. power gen.

Coal power gen.

H power gen.2

Biomasspower gen.

Oil power gen.

Oil power gen.

Photov. power gen.

Hydro power gen.Geoth. power gen.Nuclear power gen.

Sorbent InjectionWet limestone scrub.Wellman-Lord

Sorbent InjectionWet limestone scrub.Wellman-Lord

SOx Rec. in End Use

SOx Rec.in End Use

出所:http://www.rite.or.jp/English/lab/syslab/research/new-earth/download-page/downloadable-data/dne21-manual.pdf, 図2-3、p7

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気候変動モジュールの概要

以下に示す結果では、大気中CO2濃度までを計算

CO排出量2

エネルギーシステムモデル

SOx排出量

メタン排出量

NO排出量2

ハロカーボン(20種)排出量

大気中CO濃度2

海洋吸収 地表植生

CO放射強制力

2

大気中メタン濃度

大気中NO濃度2

大気中ハロカーボン(20種)濃度

メタン放射強制力

N放射強制力

2O

ハロカーボン放射強制力(20種)

SOx放射強制力

HO放射強制力

2

オゾン放射強制力

全球平均気温上昇

海面上昇

地域別気温上昇

UIUCモデル計算結果

(グリッドデータ)

温暖化ダメージモデル

全放射強制力

エネルギーシステム以外

からのCO排出量2

エネルギーシステム以外

からのSOx排出量

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大気中CO2濃度安定化の経路

出所:IPCC第2次報告

濃度目標を決めてもそれを達成する排出経路は無数にある。

DNE21モデルは濃度目標を達成する排出経路、地域ごとの削減量、削減を実現

する技術の選択を総費用最小化によって求めることが出来る。

http://www.aec.go.jp/jicst/NC/tyoki/chokei2004/chokei01/siryo2.pdf、p3

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Simulation cases

以下のモデル解析の出所:K. Yamaji, Long-Range Strategy for the New Earth 21 Plan, Japan Review of International Affairs,1999, Vol.12, No.4, pp.267-282 (1999)

Case CO2 constraints1 BAU free2 550ppm Global atmospheric CO2 concentration

at 550ppm in 21003 COP3 forever COP3 forever in Annex1 after 20104 300% after 2020:

Annex1:80% CO2 emissions at 1990non-Annex1: 300% CO2 emissions at 1990

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Primary energy production

0

5,000

10,000

15,000

20,000

25,000

30,000

2000

2020

2040

2060

2080

2100

Prim

ary

Ene

rgy

Prod

uctio

n(M

TO

E/y

r)

0

5,000

10,000

15,000

20,000

25,000

30,000

2000

2020

2040

2060

2080

2100

Prim

ary

Ene

rgy

Prod

uctio

n(M

TO

E/y

r)

Nuclear Photovoltaics Wind Hydro & Geoth. Biomass Coal Crude Oil Natural Gas

BAU 550ppm

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0

5,000

10,000

15,000

20,000

25,000

30,000

2000

2020

2040

2060

2080

2100

Fina

l Ene

rgy

Con

sum

ptio

n(M

TOE/

yr)

Final energy consumption

BAU 550ppm

0

5,000

10,000

15,000

20,000

25,000

30,000

2000

2020

2040

2060

2080

2100

Fina

l Ene

rgy

Con

sum

ptio

n(M

TOE/

yr)

Electricity Biomass Coal

Methanol Oil Products Natural Gas Hydrogen

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Contributions of each technological option

-5,000

0

5,000

10,000

15,000

20,000

25,000

30,00020

00

2010

2020

2030

2040

2050

2060

2070

2080

2090

2100

CO

2 E

mis

sion

s, R

educ

tions

, and

Seq

uest

ratio

ns(M

t-C)

ReforestationDemand DecreaseFossil Fuel SwitchingBiomassPhotovoltaWind PowerHydro & GeothermalNuclear PowerOcean DisposalAcquiferGas Well DisposalEORCO2 Emission (550ppm)CO2 Emission (BAU)

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CO2 emissions

0

5,000

10,000

15,000

20,000

25,000

30,000

35,000

2000

2020

2040

2060

2080

2100

CO

2 em

issi

ons (

Mt-C

/yr)

annex1 non-annex1

0

5,000

10,000

15,000

20,000

25,000

30,000

35,000

CO

2 em

issi

ons (

Mt-C

/yr)

2000

2020

2040

2060

2080

2100

annex1 non-annex1

0

5,000

10,000

15,000

20,000

25,000

30,000

35,000C

O2

emis

sion

s (M

t-C/y

r)

2000

2020

2040

2060

2080

2100

annex1 non-annex1

0

5,000

10,000

15,000

20,000

25,000

30,000

35,000

2000

2020

CO

2 em

issi

ons (

Mt-C

/yr)

2040

2060

2080

2100

annex1 non-annex1

BAU 550ppm COP3forever

300%

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300

400

500

600

700

800

900

1990

2000

2010

2020

2030

2040

2050

2060

2070

2080

2090

2100

Atm

osph

eric

CO

2 co

ncen

tratio

n (p

pmv)

BAU550ppmCOP3 forever300%

Atmospheric CO2 concentration

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DNE21モデルの解析から得られる主要な結論

・世界全体で技術を組み合わせることでCO2濃度550ppm安定化は可能。

・CCSと組み合わせることで地球温暖化対策において化石燃料は重要な役割を果たす。

・削減のタイミングに関する柔軟性が重要。

・京都議定書は重要な第1歩。

・削減対策における途上国の参加は不可欠。

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茅方程式(Kaya Identity)

CO2=(CO2 /Energy)×(Energy/GDP)×GDPここで、X=(CO2/Energy)とすると、Xはエネルギーの炭素強度、つまり、エネルギー源の選択によるCO2削減効果を表す。また、Y=(Energy/GDP)とすると、YはGDPのエネルギー源単位、つまり、省エネルギーのマクロな指標を表す。ここで、上式の時間微分を行うと次の式が導かれる。

つまり、CO2排出量の増加率は、X(エネルギーの炭素強度)とY(GDPのエネルギー源単位)およびGDPの増加率の和で表現される。

dt

dGDPGDPdt

dYYdt

dXXdt

dCOCO

1111 2

2

++=

茅方程式の出典:Kaya,Y., K.Yamaji, R.Matsuhashi: Grand Strategy for Global Warming, Proceedings of the Government Symposium on Global Environment, Tokyo, September 1989

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(1-0.025)50=0.97550=0.282

Y X

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地球温暖化対策に関する基本認識

・温暖化は現実に進行しており、その原因が人間活動に伴う温室効果ガス排出であることはIPCCによって確認されている。→今からは現象の解明だけでなく、世界規模で温暖化対策を本格化する必要がある。温室効果ガス排出の環境コスト(逆に言えば削減の価値)を社会

に発信する仕組みが必要。

・しかし、温暖化の科学(特に影響予測)にはまだ不確実な領域が大きい。→予防保全の原則

に基づいて対策に早期に着手する必要があるが、対策の選択において不確実性の考慮が大切。温暖化対策だけでなくほかにもメリットがある省エネや植林、リサイクルなどを優先して実施すべき。また、ある程度の温暖化は避けられないので途上国の国土整備などの適応対策も重要。

・対策の選択においては、実効性と地域間および世代間の衡平性が大切。→世界が協調して対策を行う京都メカニズム(排出量取引、共同実施、CDM)のような仕組みの工夫。最先端

の技術の世界的な普及。長期的な排出経路に関する国際合意。

・主要な排出国が対策に参加することが不可欠。→米国は当然、中・印をはじめとする途上国の参加も不可欠。

・国別の排出目標設定という京都議定書の方策は実効ある国際制度としては参加国を広げることが難しい。→国別でなく主要排出部門別のアプローチ(省エネなど)が重要。

・世論に受け入れられやすい省エネや再生可能エネルギーの推進に加えて、原子力、CCS(CO2回収・貯留)についても社会が受け入れられるよう条件整備をする必要がある。

・技術は大きな削減可能性を持つがそれを現実のものにするためには社会的側面(経済性、国際的な普及、社会的受容)を重視する必要がある。