セブン-イレブンにおける品質重視型プライベート...

11
金沢学院大学紀要 経営・経済・情報科学・自然科学編 第13号 The Journal of Kanazawa Gakuin University Business Administration, Economics, Informatics and Natural Sciences No. 13 平成27(2015)年3月1日 March 1, 2015 セブン-イレブンにおける品質重視型プライベートブランド開発の背景 大野 尚弘 The Background to Quality Emphasis Private Label Development in 7-Eleven Takahiro OHNO

Upload: others

Post on 18-Mar-2020

5 views

Category:

Documents


0 download

TRANSCRIPT

Page 1: セブン-イレブンにおける品質重視型プライベート …kg.kanazawa-gu.ac.jp/kiyou/wp-content/uploads/2016/03/...大野:セブン-イレブンにおける品質重視型プライベートブランド開発の背景

金沢学院大学紀要

経営・経済・情報科学・自然科学編

第13号

The Journal of Kanazawa Gakuin University

Business Administration, Economics, Informatics and Natural Sciences

No. 13

平成27(2015)年3月1日

March 1, 2015

セブン-イレブンにおける品質重視型プライベートブランド開発の背景

大野 尚弘

The Background to Quality Emphasis Private Label Development in 7−Eleven

Takahiro OHNO

Page 2: セブン-イレブンにおける品質重視型プライベート …kg.kanazawa-gu.ac.jp/kiyou/wp-content/uploads/2016/03/...大野:セブン-イレブンにおける品質重視型プライベートブランド開発の背景

セブン-イレブンにおける品質重視型プライベートブランド開発の背景1)

大野 尚弘2)

The Background to Quality Emphasis Private Label Development in 7−Eleven1)

Takahiro OHNO2)

要 約

PB商品は、価格を訴求する商品として誕生した。しかし、近年、品質を重視した PB商品が登場しはじめてい

る。品質重視型の PB商品の誕生は、スーパーマーケット・チェーンの PB開発と CVS業態では、開発の動機、背

景、発想が異なっている。本稿は、CVSのリーディングカンパニーであるセブン-イレブンの品質重視型 PB開発

を逸脱事例として取りあげる。セブン-イレブンが品質を重視した PB開発の背景を検討するとともに、その狙い

についても触れている。セブン-イレブンによる品質を重視する PB開発が、有力メーカーの技術資産を引き出す

ことに成功している。

キーワード:ストアブランド、品質重視型 PB、優良技術資産

�.はじめに

プライベートブランド(以下、PB)商品の品揃えを拡充する小売店舗が増えている。その多くは、チェーン展

開を行う流通企業である。従来、PB商品は、NB商品に比べて低価格であることを訴求点として開発されてきた。

しかしながら、近年、PB商品は価格訴求だけではなく、品質を重視し、それを訴求点とする PB開発が行われは

じめている。

例えば、コンビニエンスストア(以下、CVS)業界最大手のセブン-イレブンは、価格訴求ではなく品質を重視

した PB商品を拡充したことが、業績面での好調につながっている1。

本稿は、価格訴求ではなく品質重視型の PB商品が誕生した背景に光を当てる。品質重視型の PB商品は、スー

パーマーケット・チェーンによる開発の経緯と、CVSチェーンによる開発の経緯では、その開発動機は異なって

いる。このことに触れた後に、なぜ CVSにおいて品質重視型の PBが必要とされたのかを明らかにする。セブン

-イレブン・ジャパン創業者である鈴木氏の発言を拾いながら、品質重視型 PB商品の開発動機や開発発想の狙い、

背後にある論理を明らかにする。

�.品質重視型 PB商品の誕生

これまで大手流通企業の PB開発は、NB(ナショナルブランド)商品との「価格差」が訴求されてきた。価格

支配力を強める寡占的製造企業に対して、大手流通企業は価格設定権を奪取することで、低価格志向を強める消費

者に利益を還元してきた。

実際、多くの流通企業における PB商品の開発コンセプトは、既存 NB商品の2~3割程度低価格、かつ品質は

同水準というものである。低価格の PB商品を実現する方法は、広告費の削減、包装の簡略化、品質(機能)の絞

1):平成26年10月10日受付;平成26年10月31日受理。

Received Oct. 10, 2014 ; Accepted Oct. 31, 2014.

2):金沢学院大学 経営情報学部;Faculty of Business Administration and Information Science, Kanazawa Gakuin University.

Page 3: セブン-イレブンにおける品質重視型プライベート …kg.kanazawa-gu.ac.jp/kiyou/wp-content/uploads/2016/03/...大野:セブン-イレブンにおける品質重視型プライベートブランド開発の背景

2 金沢学院大学紀要「経営・経済・情報科学・自然科学編」 第13号(2015)

込みによる生産工程の削減、完全買取(返品なし)、国内外の中小メーカーへの生産委託である。

PBは、流通企業が生産から販売までの責任を負うことで商品の安心、安全を担保した商品である。流通企業が

生産受託メーカーから発注商品を完全買い取りすることで在庫リスクを負担する一方、低価格でありながら高い粗

利益率を実現することができる。

歴史的に、PB商品は NB商品との価格差を強調することを開発コンセプトとして誕生している。NB商品と PB

商品の競争(ブランド・バトル)を通じて、品質を重視する PB商品が戦略オプションとして登場する(Hoch,1996)。

PB開発において品質を重視する商品の開発は欧米でも見受けられる2。一般に、プレミアム PBと呼ばれる商品が

品質重視型の PB商品である3。品質重視型 PB商品は、消費者の商品選択における品質を重視する層に対して開発

される商品である。

品質重視型PB商品の誕生の背景

流通企業側が PB商品の開発に取り組む動機は、寡占的製造企業の生産する NB商品への価格面での対抗・牽制

であり、その目的は消費者への利益還元である。歴史を振り返ると PB商品の登場は、景気後退期における NB商

品の値上げが発端になっている。安易な値上げ要求は、消費者に不利益が生じる。原材料高などを理由に値上げを

要求してくる NBメーカーに対して、PB商品の開発は値上げへの牽制の意味が含まれていた。

品質を重視したオリジナル商品にはストアブランド(以下、SB)がある。価格訴求型の PB商品の多くは中小メ

ーカーが製造元である。これまで NB商品に対して価格差を訴求する PB商品の多くが、消費者の知覚する品質差

を解消できず、ライフサイクルの終焉を迎えている。NB商品と PB商品の知覚品質の差は、PB開発における課題

となってきた。

店舗間の競争において、オリジナルブランド所有したい流通企業と NB商品の棚割り確保と値崩れによるブラン

ド崩壊を防止したいメーカーとの妥協から生まれた商品が SB商品である。流通企業とメーカーの両方のブランド

を付与したダブルチョップ商品が代表的な SB商品であり、有力メーカーの生産によって技術的な品質は担保され

る。その一方で、特定流通企業向けブランドとして買取りが取引の基本となる。大手流通企業と有力メーカーによ

る SB商品の開発は安定的なものでなく、多くの場合、価格設定権を巡り、その供給、開発は消滅と登場を繰り返

してきた(大野,2010年)。また、NB商品を所有する有力メーカーにとって、特定の流通企業向けの商品を供給

することは、競合する流通企業の反発を招く。このことが、有力メーカーによる特定流通企業向けの SB供給が安

定的に継続しなかった理由でもある。

品質を重視した PB商品の開発は、二つの方面から進んでいる。まず、本来、PB商品は生産から販売に至るま

で自身が責任を負う商品であるとする流通企業の PB開発では、自ら川上にさかのぼり品質管理、原材料調達にか

かわりはじめている。具体的には、PB商品の品質管理部門の設置、生産工場を買収することによる技術の修得4、

メーカー出身者の採用5によって、従来、メーカーに任せてきた品質問題を流通企業が自ら担う事例が見られはじ

めている。

もう一つは、生産相手を中小メーカーから有力メーカーへシフトすることで、技術的な品質問題を解決しようと

するものである。有力メーカーの所有する優良な技術資産を、流通企業の PB開発向けに引き出すことで、品質向

上を実現する方法である6。後者の場合、有力メーカーが特定流通企業向けに PB商品を供給する動機を明らかにし

ておく必要がある7。

有力メーカーによるPB供給とその動機

セブン&アイ HLDGSは、NB商品を所有する、技術力の確かな有力メーカー中心に PB商品の生産委託を行っ

ている。その PB商品であるセブンプレミアムのパッケージには、製造業者名が記載され、商品の技術的品質の確

かさ(=高品質)を消費者にアピールしている。

有力メーカーが特定流通企業向けに PB商品を供給しはじめたのはなぜだろうか。その背景には、流通段階にお

ける特定流通企業への販売依存度の高まりや NB商品の取引を含めた店頭における自社ブランドのシェア拡大、継

続的な取引関係の構築が挙げられる(大野,2013年)。

Page 4: セブン-イレブンにおける品質重視型プライベート …kg.kanazawa-gu.ac.jp/kiyou/wp-content/uploads/2016/03/...大野:セブン-イレブンにおける品質重視型プライベートブランド開発の背景

3大野:セブン-イレブンにおける品質重視型プライベートブランド開発の背景

従来、PB商品を生産受託した中小メーカーの多くが、工場の稼働率向上や大手流通企業の棚割り確保といった

経済的な誘因を受託動機としていた。近年、有力メーカーが特定流通企業向けに PB商品を供給する動機は、寡占

化を強める大手流通企業との関係構築、競合他社から店頭のシェアを奪い自社ブランドのシェアを拡大しようとい

う製品カテゴリー内での競争を動機としている(Gomez and Bell−Acebron,2008;大野,2014年)。

一方、有力メーカーが特定流通企業向けに PB商品を供給することによる流通企業側のメリットは、技術的な品

質の確かさを担保できることや小売ブランドである PB商品に対する消費者のイメージを改善できることにある。

大手流通企業が品質を重視した PB商品を開発することで、品質面で劣ると判断されてきた PB商品に対する消費

者のイメージの改善を見込むことが出来る(大野,2014年)。PB商品の技術的な品質向上は、品質を重視する消費

者(客層)の開拓にもつながり、店舗イメージの向上、店舗差別化に貢献することが期待できる。

NB商品を製品ラインに所有する有力メーカーが、特定流通企業向けに PB商品を供給しはじめたという事実は、

従来までの PB商品に対する対応、考え方の変更があったことを意味する(大野,2014年)。それは従来、有力メ

ーカーが特定流通企業向けに PB商品を供給することから生じるメリットの獲得を優先し、デメリットをある程度

解消したことである。まず、メリットは成長著しい流通企業の販路(棚割り)を確実に得ることである。NB商品

であれば、棚割りから外される場合であっても、PB商品は安定的に棚割りを確保できる。この点で特定流通企業

との安定的な取引関係を得ることができる。一方、デメリットは、NB商品のシェアを奪うカニバリゼーションの

発生、競合他社の反発である。本来、NB商品よりも低価格の商品を PBで供給する(特に、製造者名を開示する)

ことは、消費者の PBへのブランド・スイッチや競合する流通企業の反発を招く恐れがある。消費者のブランド・

スイッチについては、PB商品の供給による取引関係構築を NB商品の棚割り確保に結びつけ、自社ブランドのシ

ェアを拡大することを優先している(Dunne and Narasimhan,1999)。競合する流通企業の反発についても、チャネ

ル別のブランド供給により対応している(大野,2014年)。

品質重視型のPB開発の逸脱事例

わが国ではダイエーが PB開発の先駆的存在であった。スーパーマーケット・チェーンであるダイエーが価格を

訴求するその背後には、寡占的製造企業の価格支配力を崩し、流通企業が価格設定権を握ることで消費者主権を実

現しようとする思想があった8。ただし、PB生産の担い手であるメーカーは、市場地位の低いメーカーや海外メー

カーが中心であり、技術的な品質差が課題であった。技術的な品質の向上を課題とする大手流通企業とブランドを

値崩れから守りたい有力メーカーとの間で SBの開発がみられた。有力メーカーが生産する商品であることで、技

術的な品質は担保されたわけである。有力メーカーによって開発される特定流通企業向けブランド、いわゆる SB

は、メーカーと大手流通企業の課題解消と妥協が生んだ産物であった。

価格差を訴求する大手流通企業の PB戦略が、有力メーカーの商品政策の変更を余儀なくし、その結果、品質を

重視する SB商品の供給が行われた。これが価格訴求から品質重視型へ特定流通企業向けのブランドの訴求点が移

行する基本パターンであった。

近年、これまでの PB開発の基本パターンとは異なるかたちで、PB商品の開発がみられる。CVSを主力事業と

するセブン&アイ HLDSの PB開発である。セブン&アイ HLDSの PB開発が、同業他社とは異なる発想で実行さ

れたのはなぜだろうか。セブン&アイ HLDGSの中核企業であるセブン-イレブンの PB開発の成功を、逸脱事例9

として取りあげる。

図表1 PB開発を動機づける要因と寡占的製造企業に対する牽制(PB開発の基本パターン)

寡占的製造企業の値上げ

価格訴求

の PB開発消費者の低価格志向 NB商品価格へ牽制 プレミアム PB開発

店舗差別化の必要性

SB商品の共同開発

Page 5: セブン-イレブンにおける品質重視型プライベート …kg.kanazawa-gu.ac.jp/kiyou/wp-content/uploads/2016/03/...大野:セブン-イレブンにおける品質重視型プライベートブランド開発の背景

4 金沢学院大学紀要「経営・経済・情報科学・自然科学編」 第13号(2015)

�.セブン-イレブンにおける品質重視型 PBの開発発想の背景

価格訴求型の PB商品の開発の背後には、寡占的製造企業による値上げへの抵抗、消費者の低価格志向を捉えた

流通企業の戦略、小売店舗間競争における店舗差別化の必要性がある。価格を訴求した PB商品の開発は、NB商

品の価格を牽制したものであった。その背後には、寡占的製造企業により作り上げられた価格体系を崩し、消費者

の求める価格と品質(過剰品質の排除)の商品を販売することで消費者主権を確立するという思想がある(大野

2010年)。PB商品の生産相手は、主として中小メーカーであるが、品質は NB商品と同水準であることを条件とし、

広告費の削減や完全買取(返品無し)、工程の削減、包装の簡素化、素材の見直しによって、本当に必要な品質を

使う側の論理で再検討する商品開発が基本パターンであった。

セブン&アイ HLDGSの PB開発は、基本パターンから逸脱した商品開発の成功事例である10。セブン&アイ

HLDGSの PB開発はどのような点で、逸脱事例であると言えるのだろうか。

従来、PB商品は NB商品における過剰な品質を省き、本当に必要な品質(機能)に絞り込むことを基本パター

ンとしてきた。それに対して、セブン&アイ HLDGSの PB(セブンプレミアム)は、有力メーカーに対して、NB

と同様か、それ以上の品質を要請することを開発コンセプトとしている。次に、商品パッケージに有力メーカー名

を記載している。従来、特に有力メーカーにおいて、PB商品の生産受託を開示しない傾向にあった11。最後に、寡

占的製造企業の価格設定に対する牽制という側面が見られない。これら3点において、セブンプレミアムは、PB

開発の基本パターンを逸脱する事例である。一方、商品開発面で成功しているかどうかも事例選択で重要な側面で

ある。セブンプレミアムは、2007年の開発以来、安定的に品目数を伸ばしている。さらに、CVS同業2位のロー

ソンと比べて、加工食品の粗利益率が高いことも PB拡充の効果であるといえる。そして、近年の業績報道でセブン

-イレブンの業績好調が PBによるものであると報道されている12点からも成功事例としてふさわしいといえよう。

図表2 セブンプレミアムの売上推移

(出所 セブン&アイ HLDS『Corporate Outline2011』p.19、『Corporate Outline2013』p.18、)

図表3 商品カテゴリー別の粗利益率の推移

2010年2月 2011年2月 2012年2月 2013年2月 2014年2月

セブン-イレブン

加工食品 37.9 38.3 38.3 38.2 38.7ファーストフード 33.8 34.1 34.3 34.3 35.1

日配品 33.1 33.3 33.2 33.1 33.2

ローソン加工食品 23.8 24.5 23.8 23.9 24

ファーストフード 38.2 37.8 38.2 38.4 38.9日配品 34.5 34.6 34.5 34.4 34.1

(『セブン&アイ HLDS決算補足資料』2014年、2013年、2012年、2011年。『ローソン 決算補足資料』2014年、2013年、2012年、2011年)

Page 6: セブン-イレブンにおける品質重視型プライベート …kg.kanazawa-gu.ac.jp/kiyou/wp-content/uploads/2016/03/...大野:セブン-イレブンにおける品質重視型プライベートブランド開発の背景

5大野:セブン-イレブンにおける品質重視型プライベートブランド開発の背景

品質重視型PB開発の発想とその源流

「量は質を絶対に凌駕できない。質の追求の結果として量があるのであって、量の増大が質を生むのではない。」13

これは、セブン&アイ HLDGS鈴木会長の考え方を象徴する発言である。

PB商品の開発についても、価格訴求は欧米の PB開発を参考にしたものであり、日本では質を重視することに

よる PB商品の開発を指示した14。その考え方の背後には、売り手市場から買い手市場への変化する中で、買い手

が求める価値を提案し続けることを優先するという思想がある。価格ではなく、品質、おいしさを重視した PB商

品の開発がセブン&アイ HLDGSの PB開発の姿勢である15。

セブン&アイ HLDGSにおいて品質を重視する開発発想が誕生したのはなぜだろうか。開発発想の背景にある要

因を探ることで、これまでの PB開発の基本パターンとは異なる効果を明らかにできるはずである。セブン&アイ

HLDGSの PBであるセブンプレミアムは、主要販路が CVS(セブン-イレブン)である。したがって、セブンプ

レミアムの開発発想の背後には、CVS事業やその仕組みに独特の開発理由があると考えられる。このことから検

討を始める。

消費の即時性

CVSが業態として確立しえたのは、その業態が消費者に提案する価値が、他の業態とは異なっているからであ

る。CVS業態の存立根拠を、経済的な効率性と社会的な有効性という視点でみると、「消費の即時性」が CVSの

存立根拠とされる16。

矢作(1996年)によれば、消費の即時性とは、消費の緊急性に対応した時間的な流通サービス水準の高さ、であ

る(p.59)。CVSにおける消費者の来店動機と商品購買の意思決定という点に光を当てるならば、その購買は、先

の使用を想定したものではなく、購買と使用のリードタイムは、スーパーマーケットなどと比べて極めて短い。CVS

は、消費者の①不確実性ニーズ、②高付加価値ニーズ、③在庫代替ニーズに応えている17。

わが国 CVS業界のリーディングカンパニーであるセブン-イレブンは、「消費の即時性」という切り口で消費

者ニーズに対応してきた。セブン-イレブンが実行してきた PB商品の開発も、CVS業態における消費者への価値

提案をコンセプトとしている。

セブン-イレブンの PB開発における開発発想は、業態存立根拠、業態成長のための仕組み、そして小売市場競

争における店舗差別化の必要性を背景としている。

サウスランド社の破綻、中小規模の小売店と大規模小売店との共存

セブンーイレブンは商品の質を追求することを基本原則としている18。品質追求の思想の原点には、CVS発祥の

地である米国におけるサウスランド社の破綻がある。鈴木(2013年)は、サウスランド社の経営悪化の元凶は、ス

ーパーに追随したディスカウント政策による価格競争にあったと分析している19。

サウスランド社の経営するセブン-イレブンとの契約は、鈴木氏が米国視察の際、目にした光景が源流にある。

大規模チェーンの寡占化の進む米国で、小規模な小売店(セブン-イレブン)が共存していることや定価販売を行

っている様子である。当時(1970年代)、わが国では、大型店の出店に際して、地元小売商との出店調整の難航が

見られ、大型店が出店することで、中小零細小売店は淘汰されるという認識があった。

米国視察において発見したセブン-イレブンから、中小と大手は役割や機能が異なり、共存が可能であると悟っ

たとされる20。

「僕がコンビニをやろうと思ったのは、お客の生活に合わせ、便利さを追求すれば小さい店でも十分もうかると考

えたから。」21

と紙面で鈴木氏が述べているように、その原点は、大手とは異なる機能・役割の提案をすることで、CVS業態が

共存可能であると判断したからにほかならない。

Page 7: セブン-イレブンにおける品質重視型プライベート …kg.kanazawa-gu.ac.jp/kiyou/wp-content/uploads/2016/03/...大野:セブン-イレブンにおける品質重視型プライベートブランド開発の背景

6 金沢学院大学紀要「経営・経済・情報科学・自然科学編」 第13号(2015)

寡占的製造企業の NB商品を標的とした価格訴求の PB商品が大手流通企業の開発発想であるならば、小規模な

CVSは、同様に価格訴求するのではなく、便利さや消費の即時性を求める顧客の期待に応える PB商品の開発が求

められる。

セブン-イレブンの PB開発が、価格訴求ではなく、品質を重視した価値訴求型となる背景には、中小規模の小

売店の役割、機能が、大規模小売店とは異なっており、これを意識することが、中小の生き残り、共存の基盤とな

るとする考え方がある22。

業態成長の仕組みとしての「粗利分配方式」

セブン-イレブンをはじめとする CVS各社は、粗利分配方式によって加盟店からロイヤルティを徴収するフラ

ンチャイズ・チェーン(FC)方式を採用している。

粗利分配方式は米国サウスランド社が CVSチェーンをフランチャイズ展開する上で採用したロイヤルティ徴収

方法である23。サウスランド社からのノウハウは、①セブン-イレブンの商標(看板)、②コンビニエンスストアの

コンセプト、③粗利分配方式の3つのみが、フランチャイズ・システムを支える財産となった24(金,2001年、p.51)。

セブン-イレブンをはじめとする CVSチェーンの多くは、FC方式を採ることによって、加盟店を募集している。

FC方式の採用は、加盟店と FC本部が運命共同体となる点に特徴がある。加盟店が繁盛することで FC本部収益も

増加する仕組みとなっている。FC本部は加盟店に対して、商品の供給、オペレーション・フィールド・カウンセ

ラー(OFC)による経営指導を行う一方、加盟店は粗利益額に対して一定のロイヤルティを支払う関係となってい

る25。当然、加盟店の粗利益額が増加することで、FC本部のロイヤリティ額も増加する。

粗利分配方式の場合、本部も加盟店も粗利益の最大化という共通の目標を共有できる(金,2001年、p.74)。売

上分配方式26の場合、本部が売上を、加盟店は粗利益を重視することとなり、両者にコンフリクトが生じる恐れが

ある(金,2001年、p.55)。

粗利分配方式は、FC本部と加盟店の両方が共通の目標を共有するという点で優れたロイヤルティ徴収方法であ

る27。

FC本部と加盟店の両社が粗利益額の拡大を目標として共有する上で、本部推奨商品の粗利益率の拡大は、経営

上の命題となる。FC本部と加盟店との粗利分配方式による契約は、両者に粗利益率の高い PB商品の開発と品揃

えを動機づけている。

近年、セブン-イレブンの品揃え形成において拡充されている加工食品の多くが PB商品である。一般に、PB

商品は発注商品を完全買い取りすることで、在庫リスクを流通企業側が負う分、高い粗利益率が確保されている。

PB商品の売上増加は、粗利益分配方式の契約上、本部と加盟店の両者にメリットをもたらす。セブン-イレブン

において、粗利益率の高い PB商品を拡充しようという動機が生じる源流は、本部と加盟店の契約関係にあるとい

える。

セブン-イレブンによる品質重視と優良技術資産の引き出し

「4割近くの人が『価格だけではなく価値』―つまりおいしいもの、鮮度のいいもの、品質のいいものを求めて

いる・・・・6割の人たちが価格を求めているからといって、皆そこに殺到し、安売り競争に明け暮れ、PBもその発

想のもとでつくられている。・・・・4割のほうはがら空きとなっている。・・・我々はここに目を向けたPBをやるべ

きだ」28

CVSが顧客に提案する価値基準は何か。鈴木氏は CVSの基本原則として質の重視を挙げている。中小小売店の

機能・役割が、大手と同じであるならば、結局、価格競争に陥ってしまう。大手流通企業が「消費の大衆化」を役

割として担い、価格面で利益を還元するのに対して、CVSは「消費の即時性」という役割を担い、価格以外の価

値を提案することで、大手とは異なる存在領域を開拓した。価格ではなく、品質を重視する PB商品の開発は、CVS

が大手スーパーなどとは異なる価値提案であるといえよう29。

では、セブン-イレブンの提案する品質とは何であろうか。価格は数字で差を容易に表現できるのに対して、品

Page 8: セブン-イレブンにおける品質重視型プライベート …kg.kanazawa-gu.ac.jp/kiyou/wp-content/uploads/2016/03/...大野:セブン-イレブンにおける品質重視型プライベートブランド開発の背景

7大野:セブン-イレブンにおける品質重視型プライベートブランド開発の背景

質の確かさを消費者に伝えるには工夫が必要である。例えば、「おいしさ」という評価基準一つとっても、その評

価は、すべての人にとって同一ではなく、消費する人によって判断が異なる。

セブン-イレブンが PB開発で(技術的な)品質の確かさを担保するためにとった工夫が、NB商品を所有する

有力メーカーに生産を委託し、PB商品のパッケージに製造業者名を記載する30という方法である。消費するまで判

断できない品質の確かさを、有力メーカー名の記載によって担保したわけである。

セブン-イレブンは店舗数(約1万7千店、2014年時点)と棚割の優先的な提供を武器に、有力メーカーから専

用商品の提供を受けている31。有力メーカーによるセブン専用の商品の開発は、メーカーにとって在庫リスクのな

い商品を生産することと巨大な店舗網を持つセブン-イレブンの棚を確保できること32をメリットとする一方、セ

ブン-イレブン側にとって、品質の確かな商品を取り扱うことによって、店舗の差別化、顧客の集客を見込むこと

が出来る33。

さらに、品質を重視することを開発コンセプトとした PB商品の中に、有力メーカーから特別な製造技術(優良

技術資産)を引き出すことに成功している事例がみられはじめている34。例えば、東洋水産は「セブンゴールド

金の麺」で自社の新商品「マルちゃん正麺」に採用した製造技術と同じコンセプトの商品を PB商品向けに供給し

ている35。有力メーカーがセブン-イレブン向けに優良な技術資産を利用した PB商品を供給する動機は、セブン

-イレブンの購買数量、棚割の獲得だけではない。PB商品でありながら、価格(原価)の上限を設けないことに

も優良技術資産を提供する動機づけがある3637。

有力メーカーが保有する優良技術資産を用いた PB商品を供給すること38は、セブン-イレブン店舗の差別化、

顧客の集客に結びつく。特定流通企業向けのブランドが消費者に強く選好されることで、小売事業のブランド化39

が促進されてゆく。

図表4 品質重視型PB商品の開発とその発想の源流

中小規模の小売店の機能・

役割(価格競争の回避)

品質重視

の PB開発

CVSに対する顧客の期待

(消費の即時性)優良技術資産の引き出し

粗利分配方式

(加盟店との目標共有) 小売事業のブランド化

�.むすびにかえて

スーパーマーケット・チェーンを展開してきた大手流通企業にとって、PB開発は NB商品をとの価格差を訴求

することで、NB商品に対する牽制、価格設定権の奪取を狙いとしてきた。有力メーカーと大手流通企業が共同開

発した SB(ストアブランド)は、メーカーにとっては NB商品の値崩れ、流通にとっては PBの品質問題を課題

としたことから誕生している。品質重視型の PB開発は、価格訴求型の PB商品の製品ラインに、品質の次元を加

えることで、プレミアム PBとして品揃えに加えられた。

品質を重視する PB商品の開発は、CVS業態において、従来の PB開発の基本パターンとは異なるかたちで登場

している。本稿は、セブン-イレブンの PB開発を、逸脱事例として取りあげている。CVS業態の存立根拠、FC

システムと粗利分配方式を採用したことによる業態成長のための粗利益確保商品の必要性、店舗差別化のための品

質面で競争力のある独自商品の必要性が、従来の PB開発の基本パターンとは異なる事例となって登場している。

とりわけ、品質を重視することによる有力メーカーの商品供給や優良技術資産をいち早く PB商品として取り入れ

ることの成功が、店舗差別化商品として小売事業のブランド化の原動力となっている。

Page 9: セブン-イレブンにおける品質重視型プライベート …kg.kanazawa-gu.ac.jp/kiyou/wp-content/uploads/2016/03/...大野:セブン-イレブンにおける品質重視型プライベートブランド開発の背景

8 金沢学院大学紀要「経営・経済・情報科学・自然科学編」 第13号(2015)

参考文献

秋川卓也・戸田裕美子(2013年)「プライベートブランドのサプライチェーン・マネジメント セブンプレミアムの事例考察から」『一

橋ビジネスレビュー』8月号 pp.144-156。

朝永久見雄(2013年)『セブン&アイ HLDGS.9兆円企業の秘密―世界最強オムニチャネルへの挑戦』日本経済新聞出版社。

池田信太朗(2012年)『個を動かす 新浪剛史 ローソン作り直しの10年』日経 BP社。

緒方知行(1999年)『二人の流通革命 中内功と鈴木敏文』日経 BP社。

緒方知行編(2003年)『鈴木敏文 商売の原点』講談社。

緒方知行・田口香世(2013年)『セブンプレミアムの進化論 なぜ安売りのしなくても売れるのか』朝日新聞出版。

緒方知行・田口香世(2014年)『セブン-イレブンだけがなぜ勝ち続けるのか?』日本経済新聞社。

大野尚弘(2010年)『PB戦略 その構造とダイナミクス』千倉書房。

大野尚弘(2013年)「有力メーカーが PB生産を受託するのはなぜか」『金沢学院大学紀要』第11号 pp.1-9。

大野尚弘(2014年)「有力メーカーによる小売ブランド生産の必要性と受託動機」『金沢学院大学紀要』第12号 pp.23-34。

小川進(2006年)『競争的共創論』白桃書房。

川辺信雄(1994年)『セブン-イレブンの経営史 日本企業・経営力の逆転』有斐閣。

勝見明(2000年)『なぜ、セブンでバイトをすると3カ月で経営学を語れるのか?―鈴木敏文の「不況に勝つ仕事術」40』プレジデ

ントブックス。

金顕哲(2001年)『コンビニエンス・ストア業態の革新』有斐閣。

鈴木敏文(2013年)『変わる力 セブン-イレブン的思考法』朝日新書。

田中陽(2012年)『セブン-イレブン 終わりなき革新』日本経済新聞出版社。

田村正紀(2002年)『流通原理』千倉書房。

田村正紀(2006年)『リサーチ・デザイン―経営知識創造の基本技術』白桃書房。

田村正紀(2014年)『セブン-イレブンの足跡』千倉書房。

根来龍之(2014年)『事業創造のロジック ダントツのビジネスを発想する』日経 BP社。

根本重之(1995年)『プライベート・ブランド―NBと PBの競争戦略』中央経済社。

矢作敏行(1994年)『コンビニエンス・ストア・システムの革新性』日本経済新聞社。

Dunne,D. and Narasimhan,C (1999), “The New appeal of private labels”, Harverd Bussiness Revew , Vol.77 No.3, pp.41−52.(千野博訳「メー

カーのプライベート・ブランド活用戦略」『ダイヤモンド・ハーバード・ビジネス』1999年10月-11月,pp.111-120)。

Gomez−Arias,J.Tomas, and laurentiono Bello−Acebron, (2008), “Why do Leading Brand Manufactures Supply Private Labels?” Journal of

Business & Industrial Marketing 23(4) : 273−278.

Hoch, S.J. (1996), “How Should National Brands Think about Private Labels?”, Sloan Management Review, (Winter), pp.89−102.

Kumar, Nirmalya and Jan−benedict E. M. Steenkamp (2007) Private Label Strategy : How to Meet the Store Brand Challenge Harvard Business

School Pr.

1 コンビニエンスストア事業の好調が「セブンプレミアム」「セブンゴールド」の品揃え強化に基づいていることが決算短信でも

指摘されている。『セブン&アイ HLDGS決算短信 平成27年度第一四半期』。

2 PB商品の発展を段階的にみる考え方も存在している。価格から品質への移行が段階を経て生じることを指摘する研究もある。例

えば、根本(1995年)を参照されたい。

3 Kumer and Steenkamp(2007)によれば、プレミアム PBは品質を重視した PB商品であるが、そのプレミアムはリーディングメ

ーカーの NBに対しての品質の高さというよりもむしろ、既存の PB商品に対して高品質であることを指している(p.42)。品質を

重視した PB商品は、消費者の店舗イメージの向上(店舗差別化)やストアロイヤルティを生じさせ、その結果、高い利益率を得

ている(pp.55-57)。わが国における品質重視型 PBの代表例であるセブンプレミアムの基本方針は NB商品の品質を上回ること

である(秋川・戸田2013年)。

4 イオンは、自社で PB開発子会社を設立し、品質管理部門を設け、技術的な品質面でも自社で責任を負う体制を整えている。イ

オンは委託先工場に担当者が足を運び製造に立ち会っている。(『日経MJ』2008年6月30日、2013年2月25日)。また、靴販売の

流通大手であるエービーシー・マートは、事業停止したシミズフットウエアの靴工場(石川県)を買収し、自社ブランドの生産に

乗り出している。その狙いは、高品質の靴生産、修理技術の取得にある(『北國新聞』2013年2月23日)。

Page 10: セブン-イレブンにおける品質重視型プライベート …kg.kanazawa-gu.ac.jp/kiyou/wp-content/uploads/2016/03/...大野:セブン-イレブンにおける品質重視型プライベートブランド開発の背景

9大野:セブン-イレブンにおける品質重視型プライベートブランド開発の背景

5 例えば、西松屋チェーンでは、電機メーカー出身者を採用することでメーカーの視点を PB開発に生かしている。

6 小川(2006年)は、川下の流通企業が、川上のメーカーが持つ開発・営業スタッフや資金、生産キャパシティなどの有限の優良

資源を自社にどれだけ配分してもらえるかが競争優位のカギとなっていることを指摘した。

7 詳しくは、大野(2013年、2014年)を参照されたい。

8 大野(2010年)を参照されたい。

9 田村(2006年、p.80、pp.83-84.)を参照されたい。逸脱事例とは代表事例、先端事例の両方から逸脱した事例である。

10 セブン&アイ HLDGSの PB開発は、先端事例と見ることもできるが、従来の PB開発パターンから逸脱している点、そして、CVS

を中核としたグループであるからこそ可能な PB開発である点から、PB開発の逸脱事例と考えられる。

11 NB商品を所有する有力メーカーにとって、特定流通企業向けに PB商品を供給することや供給していることを明示されることは、

もっとも拒否反応の強い行為であった。PB供給の事実が、同業流通企業に知られることの反発だけではなく、PB商品の供給によ

り、流通企業側に原価を知られるリスクがあるためである。大野(2010年)を参照されたい。

12 コンビニエンスストア事業の好調が「セブンプレミアム」「セブンゴールド」の品揃え強化に基づいていることが決算短信でも

指摘されている。『セブン&アイ HLDS決算短信 平成27年度第一四半期』。

13 緒方(1999年)、p.105。

14 「もともと PBは、アメリカでナショナルブランド(NB)商品に対抗するために誕生しました。大手メーカー品ではないけれど、

低価格を訴求してストアブランドで販売したものです」『セブン&アイ HLDGS 四季報2010年 Vol.107』を参照されたい。

15 『セブン&アイ HLDGS 四季報2007年 Vol94』 セブン&アイ HLDGSの PBは NB商品と同等、あるいはそれ以上の品質を重

視している。価格を縦軸、価値を横軸にとって、その開発領域があらわされている。

16 矢作(1996年)、p.52、pp.58-63。

17 矢作(1996年)、pp.58-63。

18 緒方編(2003年)でも、「質への追求、こだわり」を商売の基本原則として語っている。「たとえば、弁当の味がまずかったら、

価格の問題ではありません。どんなに安くても、買ってもらえなくなるでしょう(p.45)。」

19 鈴木(2013年)によれば、米セブン-イレブンを経営するサウスランド社の経営破綻は、多角化の失敗もあるものの、破綻の本

質は、本業の弱体化にあるとしている(pp.151-153)。

20 緒方・田口(2014年)pp120-121。

21 『日本経済新聞』2014年7月9日。

22 「流通理論における共存共栄は二つのかたちがある。一つは、大型店とともに商業集積を形成して外部経済を利用するかたちで

ある。もう一つは、各業態がそれぞれの立地場所を得て一種の生態的均衡の中で共存していくかたちである。鈴木の目指したのは

後者である(田村,2014年、p.66)」。

23 金(2001年)によれば、セブン-イレブンは日本に誕生した初期から粗利分配方式を採用していたが、他の CVSでは、売上分配

方式の採用が見られたが粗利分配方式へ徴収方法を変更していった(pp.53-54)。

24 この3つを除くと、サウスランド社からのノウハウで役立つものはなかったとの記載もある。期待していたマーケティングや物

流などのノウハウは分厚いマニュアルに載っていなかった(鈴木,2013年、pp.25-26を参照されたい)。

25 セブン-イレブンは、同業他社と比べて、高いロイヤルティ率となっている。とりわけ、土地・建物を所有しない Cタイプの加

盟店増加は、本部収益拡大に貢献する。(表は、池田,2000年 p.127)

セブン-イレブン ローソン

契約タイプ A C B4 C5・G

土地・建物の準備 加盟店 本部 加盟店 本部

チャージ率 43%固定スライド方式(56~76%)

34% 50%・45%固定

26 売上分配方式の場合、加盟店が利益ゼロで商品を売ったとしても、売上に対して一定率のチャージを本部に支払うことになる

(金,2001年、p.53)。本部は加盟店の売上だけを把握すればよいという簡便性がメリットとしてある。

27 粗利分配方式の場合、本部は加盟店の貸借関係を正確に把握する必要性がある。CVS特有の会計方式といわれるオープンアカウ

ント制度により貸借関係は逐次把握されている(金,2001年、pp.61-62)。

28 緒方・田口(2013年)pp.67-68。

Page 11: セブン-イレブンにおける品質重視型プライベート …kg.kanazawa-gu.ac.jp/kiyou/wp-content/uploads/2016/03/...大野:セブン-イレブンにおける品質重視型プライベートブランド開発の背景

10 金沢学院大学紀要「経営・経済・情報科学・自然科学編」 第13号(2015)

29 品質重視の思想には、食中毒事件の教訓もある。田中(2013年)第4章を参照されたい。

30 イオンは、PB商品にメーカー名は記載しない方針をとっている。その理由は PB商品は流通企業側が生産も含めたすべての責任

を負うという考えからである。

31 「コカ・コーラグループがセブン専用の「コカ・コーラ レモン」を数量限定商品として、3ヶ月程度扱う」との報道がある。

食品メーカーが専用商品や PBを供給することで、セブンの売り場の目立つ位置に優先して商品を置くことができる。このことが

セブン向け商品の開発動機となっている(『日本経済新聞』2014年6月27日)。

32 日本ハムが全額出資の子会社プレミアムキッチンが工場を設け、セブン-イレブン向けの弁当・総菜の製造を始めている(『日

経MJ』2014年8月6日)。有力メーカーにとって、セブン-イレブンの販売チャネルは無視できない存在となってきている。

33 セブン-イレブンによる有力メーカーを巻き込む共同商品開発はチームMDと呼ばれる。この方式の源流は、74年の日本デリカ

フーズ協同組合の結成にある。田村(2014年)pp.316-322。

34 小川(2006年)は、川下企業(流通企業)がメーカーの有限優良資源を自社にどれだけ配分してもらえるかが競争上需要な要素

になることを指摘している。

35 東洋水産によれば、「使う技術も味も違う」とのことであるが、開発コンセプトが同様の商品 PBとして供給したことに業界の

驚きがあった。セブン-イレブンの販売力がメーカーから貴重な技術を引き出すことに成功していることを示した事例とされる

(『日経ヴェリタス』2013年6月9日)を参照されたい。

36 価格を訴求する PB商品の場合、価格という制約が技術提案の妨げになる可能性がある。

37 自社工場を持たないことも、有力メーカーから優良技術を引き出す戦略となっている。ベンダーに出資しないことで、質のよい

ものを作ることができなければお引取り願うという緊張関係を作り上げている(『日本経済新聞』2014年8月24日)。

38 有力メーカーから優良技術資産を引き出すことで商品の開発を行う事例は、ファーストリテイリングの商品開発にも見られる。

ファーストリテイリングは、東レからヒートテックのような優良技術を引き出し、独特の商品を他社に先駆けて導入している。

39 田村(2002年)p.270.を参照されたい。