セリン/スレオニン・ キナーゼを標的にした 抗が …...pim-3...
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セリン/スレオニン・ キナーゼを標的にした
抗がん薬の開発
研究責任者: 向田 直史(金沢大学・がん進展制御研究所・教授)
コーディネーター:渡辺 良成(金沢大学・イノベーション創成センター・教授)
マウス肝がん発症モデルの前がんからがん病変での
Pim-3の選択的発現
マウス肝がん発症モデルの前がんからがん病変での
Pim-3の選択的発現
HBs抗原トランスジェニックマウス
胸腺摘出
放射線照射
野生型マウス HBs抗原による免疫
脾臓細胞移入
骨髄移植
8~9ヶ月
慢性肝炎 多発性肝がんの発症
Pim-3発現
p34
p34
p34 p37 p40
キナーゼ・ドメイン
Pim-1
Pim-2
Pim-3
ヒト Pim-1 57.1%
ヒトPim-2 44.0%
マウスPim-3 95.0%
ラットPim-3 95.0%
ウズラPim-3 73.9%
カエルPim 68.7%
Pim-3は、セリン/スレオニン・キナーゼ、Pimキナーゼの一つで、調節ドメインを欠いている
Pim-3は、セリン/スレオニン・キナーゼ、Pimキナーゼの一つで、調節ドメインを欠いている
Int J Cancer 114: 209-218, 2005
野生型マウス
12~16ヶ月
相同性
Pim-3 とPim-1・Pim-2との高い相同性 Pim-3 とPim-1・Pim-2との高い相同性
ヒトPim-1の立体構造
ヒトPimキナーゼのアミノ酸配列. 箱部分, ヒンジ領域; 白字, ATP結合に重要なアミノ酸配列; 赤字、基質特異性に重要なアミノ酸配列.
Pim-3
アポトーシス
BADのリン酸化
細 胞 周 期 進 行
リン酸化 CDK 阻害因子 p27 Cdc25A(?) C-TAK-1(?)
AMPK 活性化 (↓)
タンパク合成
PGC-1a発現 (↑)
c-Mycタンパク 発現 (↑)
c-Mycのリン酸化
共活性化因子
c-Myc依存性
転写
Pim-3の生物活性 Pim-3の生物活性 血管内皮細胞
腫瘍細胞
進展
移動
増殖
Pim-3
GAPDH
ヒト正常組織でのPim-3 mRNA発現
Pim-1・Pim-2・Pim-3 を欠損したマウスは、体重増加速度の軽度の低下を認めるが、生存可能である.
Pim-1・Pim-2・Pim-3 を欠損したマウスは、体重増加速度の軽度の低下を認めるが、生存可能である.
Pim-3は正常心臓で発現しているが、Pim-3
を阻害しても重篤な症状が現れない可能性が高い.
Pim-3は正常心臓で発現しているが、Pim-3
を阻害しても重篤な症状が現れない可能性が高い.
Pim-3は心臓・脳などの重要な臓器の正常状態でも発現している Pim-3は心臓・脳などの重要な臓器の正常状態でも発現している
Mikkers H. et al. Mol Cell Biol 2004;24:6104
肝臓・膵臓・腸などの内胚葉由来臓器においてがん化に伴うPim-3の発現の異常亢進
肝臓・膵臓・腸などの内胚葉由来臓器においてがん化に伴うPim-3の発現の異常亢進
前がん病変
がん病変 正常
Pim-3 セリン/スレオニン・キナーゼ
Int J Cancer 114: 209-218, 2005; Cancer Res 66: 6741-6747, 2006; Cancer Sci 98: 321-328, 2007
0 1 2 3 4 5
8
7
6
5
4
3
2
1
0
培養日数
shRNA(-)
コントロールshRNA
Pim-3 shRNA
* * * *
アネキシン-V
Pim-3 shRNA
shRNA(-)
Pim-3 shRNA 処理でPim-3発現を低下させるとリン酸化Bad
とBcl-XLの量が減少し, がん細胞のアポトーシスが生じる
Pim-3 shRNA 処理でPim-3発現を低下させるとリン酸化Bad
とBcl-XLの量が減少し, がん細胞のアポトーシスが生じる
生存率
IC50 (mM) 化合物名
Pim-3 Pim-1 Pim-2 Akt-1 Akt-2 PKA PDGFRβ
No.5 78.2 99.6 109.2 nd nd nd nd
T19 62.6 151.2 >160 nd nd nd nd
T19-1 1.5 3.2 164.6 >320 >320 >320 213.9
T19-2 74.7 >320 >320 nd nd nd nd
T26 27.4 32.4 148.7 114.4 177.2 44.2 104.6
Akt1/2 nd nd nd 10.2 29.6 nd nd
Staurosporine nd nd nd nd nd 2.6 0.008
置換フェナントレン化合物のPim-1、Pim-2、Pim-3、Akt-1、Akt-2、PKA, and PDGFRbキナーゼ活性への影響。 キナーゼ活性の50%を抑制する濃度をIC50として求めた。 nd, 検索せず。.
置換フェナントレン化合物の構造
細胞株名 IC50 (mM)
MiaPaca-2 9.1
PCI66 17.6
PCI35 9.8
PCI55 10.3
PANC-1 33.6
L3.6pl 39.0
T26のヒト膵臓がん細胞株の試験管内増殖抑制効果 T26のヒト膵臓がん細胞株の試験管内増殖抑制効果
T19・T19-1・T19-2 → 100mMで細胞増殖抑制効果(-) T19・T19-1・T19-2 → 100mMで細胞増殖抑制効果(-)
MiaPaca-2 PCI66
Pim-3過剰発現による、T26の細胞増殖抑制作用の解除 Pim-3過剰発現による、T26の細胞増殖抑制作用の解除
T26はPim-3の作用を抑制して、細胞増殖を抑制 T26はPim-3の作用を抑制して、細胞増殖を抑制
MiaPac-2 PCI66
T26によるG2/Mアレスト=細胞周期進行の抑制 T26によるG2/Mアレスト=細胞周期進行の抑制
T26処置によるアポトーシス=細胞死の誘導 T26処置によるアポトーシス=細胞死の誘導
ヌードマウス
PCI66 皮下注射
(2 x 106)
T26 20 mg/kg 腹腔内投与
14– 18日目
21– 25日目
28– 32日目
36日目
屠殺
T26処置によるヌードマウスでの腫瘍増殖速度の抑制 T26処置によるヌードマウスでの腫瘍増殖速度の抑制
PCNA
Cleaved
Caspase3
CD31
T26処置による増殖細胞数と血管新生の減少と、アポトーシス細胞の増加 T26処置による増殖細胞数と血管新生の減少と、アポトーシス細胞の増加
Body weight ALT AST
Creatinine BUN Blood Glucose
Erythrocytes Platelets Leukocytes
T26処置によっては重篤な副作用が生じない T26処置によっては重篤な副作用が生じない
結論
• 低分子化合物T26は試験管内でのPim-3 ・Pim-1 ならびに弱いながらもPim-2活性を抑制する.
• T26はヒト膵臓がん細胞株の試験管内での増殖を抑制する.
• T26はヒト膵臓がん細胞株に対して、試験管内で 、G2/M アレストとアポトーシスとを誘導する.
• ヒトがん細胞株PCI66を接種後に、腫瘍を形成したマウスにT26を投与すると 、重篤な副作用を生じずに、腫瘍増殖速度を著明に減少させる.
T26が、抗がん剤開発のための有用なリード化合物であることが示唆された.
T26が、抗がん剤開発のための有用なリード化合物であることが示唆された.
特願2011-121088 平成23年5月30日出願
Cancer Science (in press)
本技術に関する知的財産権
• 発明の名称 :置換フェナントレン化合物を有効成分とするがんを予防および/または治療するための医薬組成物
• 出願番号 :特願2011-121088 • 出願人 :金沢大学 • 発明者 :向田 直史, 石橋 弘行, 谷口剛史 • 所属 :がん進展制御研究所 教授、
医薬保健研究域薬学系 教授,助教
• 特許出願日 :平成23年5月30日
想定される技術移転
ヒトの膵臓がんに対する新規分子標的医薬品の開発を、製薬会社との共同研究および技術移転で目指します。
従来の分子標的抗がん剤に多いチロシンキナーゼと異なりセリン/スレオニンキナーゼを標的にすることに新規性があります。
既存薬で薬剤耐性が生じた場合の効果と、類似のAKT阻害剤でみられる高血糖の副作用の回避が期待されます。
• 膵臓がん、肝臓がん、大腸がんの治療
• Pim-3が血管新生誘導作用が報告されているので、黄斑変性症および/または糖尿病性網膜症の治療
• Pim-3が細胞増殖促進作用が報告されているので、ケロイドの治療
想定される用途と 本技術の特徴による他の想定用途
本発表に関する共同研究等のお問い合わせは、以下の担当コーディネーターまでご連絡願います。
金沢大学 イノベーション創成センター 連携研究推進部門 部門長・教授 渡辺 良成 TEL:076-264-6111 FAX:076-234-4019 [email protected]