アメリカのＮＰＯ活動と日本のＮＰＯの行方

九州大学　文学部　助教授九州大学　文学部　助教授

安　立　清　史安　立　清　史

地域活動、市民活動、ボランティア活動、ＮＰＯ

アメリカのＮＰＯ制度

アメリカのＮＰＯ

規 定 ： IRS Code for tax-exempt organizations

501(c)(3)status organizations

宗教、教育、慈善、科学、学術団体などが、公共の安全や子どもや動物保護のために活動するなど、慈善目的をもった団体の場合に、税を免除(tax-exempt)される。またこうした団体への個人や企業の寄付金も損金扱いされる(tax-deductible)。

アメリカのＮＰＯの実際

ロサンゼルスでの事例

アメリカのＮＰＯの歴史的背景

アレクシス・ド・トックヴィルの『アメリカの民アレクシス・ド・トックヴィルの『アメリカの民主政治』（いまから約１５０年まえにかかれ主政治』（いまから約１５０年まえにかかれたフランス人によるアメリカ社会の描写）たフランス人によるアメリカ社会の描写）「アメリカは、世界中でもっとも団体をよく利「アメリカは、世界中でもっとも団体をよく利用している国である用している国である……彼らは無数の種類彼らは無数の種類の団体を持っているの団体を持っている……彼らはこうして病院彼らはこうして病院も刑務所も学校も作る。新しい企画や事業も刑務所も学校も作る。新しい企画や事業にあたっては、フランスでは政府が、イギリにあたっては、フランスでは政府が、イギリスでは領主がやるようなところに、アメリカスでは領主がやるようなところに、アメリカでは団体が見いだされる」では団体が見いだされる」国家はあとからやってきた。移民にとって国家はあとからやってきた。移民にとっては、まず共同体があり、コミュニティをつくり、は、まず共同体があり、コミュニティをつくり、団体をつくり、地域の自治があった。団体をつくり、地域の自治があった。

アメリカのＮＰＯの社会的背景社会問題の頻発社会問題の頻発大きな政府から小さな政府へ（ﾚｰｶﾞﾝ･ｻｯ大きな政府から小さな政府へ（ﾚｰｶﾞﾝ･ｻｯﾁｬｰ時代からの流れ）ﾁｬｰ時代からの流れ）社会福祉予算の削減社会福祉予算の削減連邦政府が、コミュニティや家族に介入す連邦政府が、コミュニティや家族に介入することへの警戒や拒否ることへの警戒や拒否人種のルツボ理論から、サラダボウル理人種のルツボ理論から、サラダボウル理論へ論へエスニシティごとの社会サービス、社会活エスニシティごとの社会サービス、社会活動動連邦政府や自治体による社会ｻｰﾋﾞｽ提供連邦政府や自治体による社会ｻｰﾋﾞｽ提供から、ＮＰＯへの補助金による間接的提供から、ＮＰＯへの補助金による間接的提供へへ

アメリカのＮＰＯの特徴人種的・民族的・文化的・ニーズ的多様性に対応するためのボランティア活動エスニック・グループごとのＮＰＯとボランティア活動ナーシング・ホームへのオンブズマン活動ＲＳＶＰ（連邦政府のボランティア活動振興プログラム）専門職志向（専門職としてのコーディネーター）Support Organization（財団、助成団体、United Wayなど）全国ネットワーク（ワシントンＤＣでの情報収集とロビー活動）Challenge & Evaluation（実験的・進取の試みと、短期的な成果・評価ｼｽﾃﾑ）

アメリカのＮＰＯ

(1)　活動領域：human services, health, education, arts & culture, public, societal benefit(2)1970年代に大部分が設立

(3)マーケティング手法の浸透 (general public で は な く specific population をtargetingしている)

(4)地域での活動(local & regional levels)

(5)全国ネットワークに加入しているのは22%、８割はネットワークなし

(6)40%が会員制組織

アメリカのＮＰＯ(7)実践型組織 operating organization(学校、病院、クリニック、給食プログラム等)とサ ポ ー ト 型 組 織 　 supporting organization(ﾌｧﾝﾄﾞﾚｲｼﾞﾝｸﾞ組織等)とに二分される(9)収入の17％はPublic support(個人からの寄付その他、政府補助金等も含む)。75％はプログラムによる収益(料金、会費、その他)。政府からの直接資金は2％以下。その他、10％が資産運用など。(10)中小組織($100,000以下)は、寄付金(25％)や政府補助金(7％)、そして会費や料金(29％)が収入。大組織($10million以上)は、会費、料金が8割以上、寄付は6％、補助金は4％程度。

アメリカのＮＰＯ(17)ＮＰＯ全体(宗教団体を含む)では、970万人の従事者(1992年。フルタイムとパートタイムを含む)。88％がＮＰＯ、12％が宗教団体。(19)ＮＰＯの十分の八が活動や運営上の問題を抱えている。主要問題は、「基金や資金問題」(62%)、「マネージメントやプラニング」(21%)、「政府の規制、その他」(17%)(20)ＮＰＯの四分の三、宗教団体の83％が、州税および地方税を免除されている。ＮＰＯの35％、宗教団体の84％が、固定資産税を免除されている。ＮＰＯの十分の六、宗教団体の過半数が、郵便料金を軽減されている。

アメリカのＮＰＯの社会的機能医療・福祉といった専門的閉鎖空間を民主化する作用（利用者志向、market oriented、情報の開示、その他）

社会的サービスとコミュニティとの関係を媒介する作用（地域住民、コミュニティのニーズの把握、理事会その他の機能）

エスニック・グループごとの自覚と自主性の覚醒（エスニック・アイデンティティとも関連）

新しいニーズや活動の開拓と触発

市民事業への発展と展開（マネジメントやマーケティングへの関心）

日本のＮＰＯ法案

ＮＰＯ（市民活動促進法）案

市民団体が１０人以上の会員と組織・書類市民団体が１０人以上の会員と組織・書類をととのえて都道府県などに申請すれば、をととのえて都道府県などに申請すれば、３ヶ月以内に法人格がとれるという法案３ヶ月以内に法人格がとれるという法案「民法３４条（公益法人法）」の特別法案と「民法３４条（公益法人法）」の特別法案としての位置づけしての位置づけ許可主義－認可主義－準則主義のなかで許可主義－認可主義－準則主義のなかでは「許可」にちかい「認証」になる。は「許可」にちかい「認証」になる。許可の基準が行政の自由裁量になるとい許可の基準が行政の自由裁量になるという現在の公益法人制度を変えるう現在の公益法人制度を変える所轄庁は、原則として都道府県の団体委所轄庁は、原則として都道府県の団体委任事務任事務議員立法議員立法

ＮＰＯ法案の課題・問題

税の優遇措置については触れられない税の優遇措置については触れられない

民法３４条の特別法という位置づけのため、民法３４条の特別法という位置づけのため、

３４条の公益法人との「棲み分け」が必要３４条の公益法人との「棲み分け」が必要

となる。そのため、市民活動の目的を１２となる。そのため、市民活動の目的を１２

に限定的に列挙している。に限定的に列挙している。

「届け出制」でなく「認可制」「届け出制」でなく「認可制」

ＮＰＯの社会的機能　１

自己実現・やりがい　（自己アイデンティティ関連）ふれあい・交流・ネットワーク　（意味ある社会性）

情報公開の促進・アカウンタビリティ権利や人権の擁護　（アドボカシー）ネットワーキング　（様々な団体やグループの連合）社会サービス（医療・福祉など）を利用者志向へと転換させる専門組織の民主化　（医療・福祉施設など）

ＮＰＯの機能　２

コミュニティのニーズの代表・代弁地域社会づくり、まちづくり、村おこしサービスの消費者から、サービスの生産者へ新しいサービスの開拓行政サービス改善の触媒公的サービスの代替→公的負担の軽減へ政府・行政の縮小→行政改革社会の民主化作用

ＮＰＯの機能　３

自己実現自己実現、楽しみ、満足感、やりがい

社会貢献問題の発見・キャンペーン・社会への呼びかけ情報公開、民主化作用公的サービスの代替・補完コミュニティや地域社会のニーズの発見・代弁マイノリティの権利擁護・アドボカシーオンブズマン・監視・ウォッチ

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