ビジネスに効果的な iot システムをスピーディかつ...

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ビジネスに効果的な IoT システムをスピーディかつ低コストで実現する ソラコムと AWS による IoT ソリューション 本ホワイトペーパーでは、IoT/M2M 向けにモバイル通信網を利用したワイヤレス通信を提供する株式会社ソ ラコム(以下、ソラコム)の IoT 通信プラットフォーム「SORACOM」について解説するとともに、アマゾン ウェブ サービス(以下、AWS)上に構築され、2018 年 10 月現在 1 万を超えるお客様が利用する SORACOM の各サービスを活用した IoT ソリューションの導入事例をご紹介します。 ●IoT 活用における通信回線とセキュリティの課題 IoT 3 つの要素 – モノ (things) クラウド (internet) そこをつなぐ通信回線 近年における目覚ましいクラウドの普及や、デバイスの性能向上・センサーコストの低下など、デジタル化の潮流 を後押しする事象により、IoT システム商用化に向けての技術やコスト面におけるハードルは年々低くなってき ています。膨大なモノのデータ活用には、クラウドリソースとの連携は必須ですが、データの送信には通信環境の 構築と接続が必要です。 例えば、Wi-Fi 経由で工場内のインターネットに繋ぐ場合も社内規定で繋ぐことができない、あるいは、有線 LAN 環境を用意する場合、工場内のラインごとにケーブルの引き回しの手間と工数が必要かかります。また LAN 環境が整った後には別途、回線業者との契約が必要になるなど、IoT システムを迅速に構築して効果 検証を行う際、本質的ではない準備や社内調整で疲弊し IoT プロジェクト開始までに時間やコストなど多くの リソースを要するというケースも散見されます。 ビジネスに向けた IoT システムを構築する上で、不可欠な要素となるのがセキュリティレベルの担保です。IoT デバイスはパソコンやスマートフォンと同様にネットワーク上の脅威に対するセキュリティを確保する必要があります。 多くの場合、IoT デバイスの性能はパソコンやスマートフォンほど高くはなく、一般的なセキュリティソフトを動かす ことは難しいのが現状です。大量の IoT デバイスやデバイスからインターネット上に送信される大量のデータのセ キュリティを担保するためには、システムの設計や準備、構築、オペレーションに多大な労力を要します。 ●ソラコムと AWS の組み合わせで、ビジネスに効果的な IoT システムを実現 製造・インフラ業界では、従来から IoT に近い考え方の運用管理の仕組みを利用してきましたが、その多くは 各工場・設備内での個別最適化を目的としたシステムでした。複数の設備や国・地域にまたがった可視化や 分析、自律化といった全体の最適化を行うには構築する設備も大掛かりで、巨額の投資が必要でした。投資 対効果が事前に明確にできない状況では導入が難しかったと言えます。 この状況を打開したのが、クラウドサービスです。クラウドの活用で、国をまたがる可視化・分析基盤の構築が容 易になり、インフラ運用やコストの負荷も削減することができます。IoT を活用し、データを「新たな価値」に変え る取り組みが、世界中から次々に発表されています。

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ビジネスに効果的な IoT システムをスピーディかつ低コストで実現する ソラコムと AWS による IoT ソリューション

本ホワイトペーパーでは、IoT/M2M 向けにモバイル通信網を利用したワイヤレス通信を提供する株式会社ソ

ラコム(以下、ソラコム)の IoT 通信プラットフォーム「SORACOM」について解説するとともに、アマゾン ウェブ

サービス(以下、AWS)上に構築され、2018年 10月現在 1万を超えるお客様が利用する SORACOM

の各サービスを活用した IoT ソリューションの導入事例をご紹介します。

●IoT活用における通信回線とセキュリティの課題

IoT 3 つの要素 – モノ (things) クラウド (internet) そこをつなぐ通信回線

近年における目覚ましいクラウドの普及や、デバイスの性能向上・センサーコストの低下など、デジタル化の潮流

を後押しする事象により、IoT システム商用化に向けての技術やコスト面におけるハードルは年々低くなってき

ています。膨大なモノのデータ活用には、クラウドリソースとの連携は必須ですが、データの送信には通信環境の

構築と接続が必要です。

例えば、Wi-Fi 経由で工場内のインターネットに繋ぐ場合も社内規定で繋ぐことができない、あるいは、有線

LAN 環境を用意する場合、工場内のラインごとにケーブルの引き回しの手間と工数が必要かかります。また

LAN 環境が整った後には別途、回線業者との契約が必要になるなど、IoT システムを迅速に構築して効果

検証を行う際、本質的ではない準備や社内調整で疲弊し IoT プロジェクト開始までに時間やコストなど多くの

リソースを要するというケースも散見されます。

ビジネスに向けた IoT システムを構築する上で、不可欠な要素となるのがセキュリティレベルの担保です。IoT

デバイスはパソコンやスマートフォンと同様にネットワーク上の脅威に対するセキュリティを確保する必要があります。

多くの場合、IoT デバイスの性能はパソコンやスマートフォンほど高くはなく、一般的なセキュリティソフトを動かす

ことは難しいのが現状です。大量の IoT デバイスやデバイスからインターネット上に送信される大量のデータのセ

キュリティを担保するためには、システムの設計や準備、構築、オペレーションに多大な労力を要します。

●ソラコムと AWSの組み合わせで、ビジネスに効果的な IoT システムを実現

製造・インフラ業界では、従来から IoT に近い考え方の運用管理の仕組みを利用してきましたが、その多くは

各工場・設備内での個別最適化を目的としたシステムでした。複数の設備や国・地域にまたがった可視化や

分析、自律化といった全体の最適化を行うには構築する設備も大掛かりで、巨額の投資が必要でした。投資

対効果が事前に明確にできない状況では導入が難しかったと言えます。

この状況を打開したのが、クラウドサービスです。クラウドの活用で、国をまたがる可視化・分析基盤の構築が容

易になり、インフラ運用やコストの負荷も削減することができます。IoT を活用し、データを「新たな価値」に変え

る取り組みが、世界中から次々に発表されています。

Page 2: ビジネスに効果的な IoT システムをスピーディかつ …...ビジネスに効果的なIoTシステムをスピーディかつ低コストで実現する ソラコムとAWS

日本国内でもクラウドを活用し、先進的な取り組みを発表する企業が増える一方、前述の通信やセキュリティ

の問題で、次の一歩を踏み出しきれていない企業もまだ多くいます。現在の国内 IoT 市場では二極化の傾

向が顕著に現れています。このような状況を打破すべく誕生したのが、誰もが簡単かつセキュアに低コストの

IoT に最適化されたモバイル通信網を利用できる SORACOM です。

●SORACOM 導入のメリット

SORACOM は、セルラー(3G/LTE、LTE-M)や低消費電力で長距離通信が可能な LPWA(Sigfox、

LoRaWAN)を利用した IoT デバイス向けワイヤレス通信サービス「SORACOM Air」や、IoT システム構築

に必要となる回線管理、認証管理、クラウド連携、ダッシュボード作成、ネットワークセキュリティ強化、デバイス

遠隔操作といった機能をサービスとして提供しています。

次にソラコムの各種サービスを導入するメリットをご紹介します。

すぐに繋がり、低コスト

サービスの利用開始手続きは非常に簡単で、回線の調達から管理まで、全ての手続きをウェブ上で完結でき

ます。1 回線からスモールスタートでき、すぐに試すことが可能です。ブラウザからコンソールを操作し、SIM ごとに

契約内容や速度の変更、データ使用量の監視、解約まで管理可能です。さらに、これらの機能はすべて API

で提供しており、より多くの回線を管理や、業務システムと連携することもできます。

センサーや GPS 等のデータ収集は、データそのものは少量ですが、送信回数が多いという特徴があります。これ

らを踏まえて、月額 45円から用途に合わせて選べる IoT 通信と料金体系を提供しています。

必要なパーツを組み合わせて、迅速に IoT システムを構築

SORACOM のプラットフォームには IoT システム構築や運用で、作り込みが必要な機能がサービスとして用意

されています。IoT には、様々なシステムが必要です。クラウドにおける再利用や可搬性に富んだシステム設計、

デバイスがもつデータフォーマットからインターネット通信可能なフォーマットへの変換、各デバイスからサーバー連

携する際に必要な認証設定、サーバーからデバイスへのリモートメンテナンスなど、枚挙に暇がありません。これら

の機能を自作で実装していては、早急な構築はできません。SORACOM のサービスを利用すれば、IoT シス

テム構築にかかる時間を一気に短縮し、セキュリティやデバイス負荷などの課題を考慮し、迅速にスタートするこ

とができます。

お客様の IoT デバイスをインターネットの脅威から守る

ソラコムは自社のコアネットワークを AWS 上に実装しており、各通信キャリアとソラコムの間は専用線サービス

(AWS Direct Connect)で接続しています。デバイスに組み込まれた SORACOM Air からの通信は、通

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信キャリアのモバイル通信網を経由して AWS に直接接続しています。モバイル通信網は、通信キャリアが管理

する SIM による認証を要するネットワークです。デバイスからのデータはパブリックインターネットに一切出ることな

く AWSに到達し、お客様の IoT デバイスやデータをインターネットに繋がることによる脅威から守ることができま

す。

●AWS と SORACOMで実現する IoT システム

SORACOM の IoT 通信の登場により、迅速にデバイスが得たデータを AWS 上に構築したユーザーのシステ

ムにスムーズに送り、クラウドリソースを活用してデータ活用を始めることができるようになりました。しかし、AWS

と SORACOM の組み合わせが効果的な場面は、IoT 活用のスモールスタートだけではありません。高度なセ

キュリティが求められるシステムや、大量の IoT デバイスがつながる大規模なシステム、更には専門エンジニアが

いなくても簡単に IoT 活用できるシステムといった観点においても、AWS と SORACOM の組み合わせはお客

様を力強くサポートします。

次に AWS と SORACOM の組み合わせにより実現可能な IoT システムの代表的な例をご紹介します。

IoT システムのための「イントラネット構築」をグローバルなスケールで実現可能

人口減少に伴い国内市場が縮小していく中で、これまで国内市場だけを対象としてきた製造業をはじめとした

日本企業の海外進出が加速しています。これらの企業に向けてソラコムでは、グローバルでのプライベート接続

を提供する VPG サービス「SORACOM Canal」を用意しています。AWS上に構築したユーザーの仮想プライ

ベートクラウド環境と、SORACOM プラットフォームを直接接続することで、クラウド上にありながらインターネット

からアクセスできないプライベートネットワーク、つまりイントラネットの構築を可能にします。2018年 3月からは、

AWS リージョン間のピアリングのサポートを開始しました。これにより、IoT システムのためのイントラネット構築を

日本から世界規模で実現できます。

AWS IoT利用時のデバイス認証を代替

IoT 活用法の一つに、お客様先に納品した機器の稼働データを取得し、メンテナンスや利用改善があります。

デバイスのデータを AWS IoT に連携することで AWS のデータベース、分析やキューイングのようなサービスへの

連携がスムーズです。一方、AWS IoT に接続するためには「認証情報」が必要となります。大量のデバイスの

場合、デバイス毎に認証を発行して設定する作業は、本格的に展開する際のビジネス上の足かせとなります。

ソラコムでは、SIM が持つ認証の複製されにくい特性を活かしたプロビジョニングサービス「SORACOM

Krypton」を提供しています。SIM を鍵として AWS IoT や各種 AWS サービスに連携する認証情報を代理

で取得することができ、デバイス製造と運用負担を軽減します。また、機器製造時に組み込める eSIM の提供

や、在庫時など利用しない期間は基本料金を無料にできる料金体系も用意しています。このように、お客様

先に納品する機器やコンシューマー製品に通信を組み込むケースにおいても、セキュアかつ効率的な IoT シス

テム運用を可能にします。

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eSIM搭載 AWS 1-Click に連携する SORACOM LTE-M Button

クラウド連携する IoT デバイス開発には、ハードウェア基盤や、組込みソフトウェアの開発、デバイスからクラウド

を連携させる認証情報設定など多大な工数がかかります。2018年 10月にソラコムは、AWS 1-Click認定

デバイスとして、すぐに使い始めることができるボタン型デバイス「SORACOM LTE-M Button powered by

AWS」の提供を開始しました。ボタン型デバイスには予めソラコムが提供するセルラー通信が eSIM として内蔵

されており、AWS 1-Click連携に必要な認証が設定されています。お客様は電池をセットし、AWS 1-Click

上でボタンの挙動を定義すれば、すぐに使い始めることができます。ボタンのロジックは、AWS Lambda に連携

することで、他のWeb API や企業システムとの連携も可能です。企業が IoT システム構築のリードタイムを一

気に短縮し、スピーディな IoT ビジネス活用を実現します。

●事例紹介

ソラコムのソリューションを活用した IoT事例を以下にご紹介します。

--AGC株式会社事例

ウェアラブル型ロガーで工場の作業動態を分析・可視化

・課題

AGC では、従来より工場における作業改善に取り組んでいます。しかしそのやり方は、目視やビデオ撮影をもと

にストップウォッチで計測し、データを Excel にまとめて各現場の担当者が分析するというもので、多くの時間が

費やされていました。そこで、現場のデータをムラなく簡単に集約し、現場が効率よく改善に活かせる手法を模

索していました。

・ソリューションと効果

AGC は、株式会社シーイーシーと共同で作業動態分析ソリューション「スマートロガー」を開発し、工場に導入

しました。作業員がスマートフォンやウェアラブル型ロガー(ウォッチ型、メガネ型)を使用することで、作業データ

を容易に取得できます。データは、SORACOM Air SIM のモバイル通信でクラウド上に蓄積し、SORACOM

のダッシュボード作成・共有サービス「SORACOM Lagoon」を用いて分析・可視化しています。

スマートロガーを導入で、これまで収集を諦めていたデータを含め、数多くのデータを一箇所に集約し、ビックデー

タとして分析することが可能になりました。今では、国内外の工場の情報をリアルタイムで参照でき、直ちに改善

行動に取り組むことができます。

--株式会社トーア紡コーポレーション事例

工場の電力使用量をオンデマンドで見える化しピーク抑制

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・課題

トーア紡コーポレーションの四日市工場では、電力会社とオンデマンド契約を結び、特に夏は契約した使用量

を超えないようピーク対策をする必要がありました。しかし、PLC から電力データを取得していたものの、確認は

監視センターからしかできなかったため、現場全体で省エネの意識を徹底することが難しく、効果を上げられずに

いました。

・ソリューションと効果

株式会社 KYOSO と 2 週間で開発したアプリケーションを利用することで、これまで監視センターでしか見られ

なかった電力利用量データを、社内のサイネージやスマートフォン上から確認できるようになりました。リアルタイム

で利用量がわかるため抑制効果が現れ、現場の意識も大きく改善しました。この効果は社内で広く共有され、

今では他業務にも IoT の活用が広がっています。

日置電機株式会社事例

電気計測器を遠隔監視する業務プロセスを効率化

・課題

日置電機の電気計測器は、ビル内の電気設備の点検、予兆保全や故障検知に使われています。遠隔地に

設置した計測器のデータを取得するために、作業員が数ヶ月に 1度現地まで赴く必要があり、設定エラーや電

源トラブルでデータが取得できていないトラブルもしばしば発生していました。

・ソリューションと効果

測定データを外部から確認したいという顧客のニーズに応えるため、同社は従来事業として展開してきた電気

計測器の製造と販売に加え、2017 年 5 月、電力計とデータロガー(多チャンネル電圧計)で簡単に遠隔

監視できるサービス「GENNECT Remote」の提供を開始しました。

GENNECT Remote では、電力計とデータロガーから、SORACOM Air SIM カードを入れたゲートウェイ経

由でクラウドにデータを送信しますが、設置にかかる時間は 5 分で完了します。デバイスからのデータ送信には、

SORACOM Beam のプロトコル変換機能を使用することで、セキュアな通信を実現し、Beam の利用前と比

較するとデータ通信量を 1/20 まで削減できています。

これらの事例からわかるように、IoT 活用は全ての既存システムを一新するものではありません。今あるモノや仕

組みをできるだけ活かし、インターネットへ繋げることで新たなサービスや価値ある製品を生み出しているのです。

●先行者利益を得るには、スピードが不可欠

クラウドの普及により、システムを構築する際の初期投資と運用管理の手間が大幅に削減できるようになった

今、IoT の導入へのハードルは下がっています。アイデアを手軽にスモールスタートさせ、コンセプトの検証をスピ

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ーディに行うことができます。例え失敗してもすぐに止めることができ、失敗から学んだ知見を活かしてさらに一歩

進んだ試みを続けることができます。

デジタルトランスフォーメーションの時代には、とかくスピードが要求されます。他社に先んじることができれば、より

大きな先行者利益の獲得につながります。ソラコムと AWS によって提供されるソリューションは、ビジネスに効果

的な IoT システムを実現するため一番の近道です。

AWS 同様、SORACOM も最新のテクノロジーと顧客のフィードバックをいち早く取り入れて、プラットフォーム機

能を継続的に拡充しています。AWS と SORACOMの最新技術は、お客様のビジネスイノベーション創出をサ

ポートします。