ゲンジボタルのすむ小川 -...
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ゲンジボタルのすむ小川
ゲンジボタルは、環境の良い水辺にしかすむことができま
せん。ゲンジボタルがすんでいるかどうかで、わたしたちの
街が住み良い環境かどうかを知る目安にもなります。 どうしてゲンジボタルがすめなくなったかを、その暮らし
方や水辺の環境から学びましょう。また、ゲンジボタルを守
り育てるためにはどうすれば良いのか、わたしたちに何がで
きるのかを考えましょう。
ホタルが飛びかう光景は、とてもすてきですね。わたし たちの街にも、昔はたくさんのゲンジボタルがすんでいま した。今では、矢田丘陵の周辺にごくわずかしか見ること ができなくなりました。そして、その数は年々減っている のです。 わたしたちの大和郡山市が、「ゲンジボタルがすむ小川 のある街」、「豊かな自然と人々の暮らしが調和した街」 にしたいですね。
ゲンジボタルの一生
交尾を終えたメスは、水面につき出した岩のコケや樹木
などに集ってたくさんの卵を産みます。産みつけられた
ゲンジボタルの卵のうち、きびしい環境をのりきって成虫
となって命をつなぐことができるのはごくわずかです。
卵は1ヶ月あまりでふ化します。
≪ホタルの観察ポイント≫ 1.からだのつくりの観察 ① ゲンジボタルとヘイケボタル
の成虫と幼虫のからだのつくり
のちがいを調べよう。 ② 成虫のオスとメスの発光器の
ちがいを調べよう。
1匹のメスが産む卵は500~800個 寿命は数日~1週間
わたしたちがゲンジボタルに気づくのは、美しい不思議な光を
放ちながら飛びかっているときでしょう。しかし、その寿命はた
った数日~1週間ぐらいです。成虫は水滴(つゆ)を少しなめる
だけで他には何も食べません。オスとメスは、たがいに光の合図
(フラッシュ発光)で寄りそって交尾をし、卵を産み、ほんとう
に短い命を終えます。
ふ化した
幼虫は、翌年の
春まで9カ月も
水の中で過ごします。
成虫はえさを食べません
が、幼虫はきれいな水から
少し汚れたぐらいの水にすむ
カワニナという貝を食べます。
9カ月の水中生活の後、幼虫はい
っせいに岸にはい上がり、土の中に
数センチもぐると口から粘液を出して
土まゆを作って前蛹(ぜんよう)となります。
川が三面コンクリートで固められているところ
や護岸が高いところでは、もぐる穴を掘れず、前
蛹になれません。40日ほどすると、前蛹は脱皮してさ
なぎになり、クリーム色~黒色になって10日後に土の中
で羽化して成虫となり、2日ほどでからだがかたくなると土をかき
けて出てきます。羽化するまで、およそ50日を土の中で過ごします。
水中で9カ月、20~50匹のカワニナを食べる
蛹(さなぎ)
卵
成虫
幼虫
♂
♀
ゲンジボタル ヘイケボタル
幼虫 25mm成虫 18mm 成虫 10mm 幼虫 16mm
≪大和郡山市の河川の水質について≫ 右図は、平成 11 年度~12 年度に実
施した大和郡山市の水質調査結果を表
したものです。残念なことに、本市に
は水質ランクのきれいな水が保たれた
水域はありません。しかし、少し汚れ
た水が流れる小川の一部では、ゲンジ
ボタルの姿(成虫と幼虫)を確認する
ことができました。 ゲシジボタルの幼虫は、水温が 25℃以下で水深が 20~30cm の水域に生息
します。森林や池や棚田は、ゲンジボ
タルがすめる小川であるための最も大
切な水源です。また、幼虫や餌となる
カワニナは、きれいな水~少し汚れた
水が保たれた小川にしかすむことがで
きません。他にも、ゲンジボタルが繁
殖して次の世代へと命をつなぐために
必要な環境がいろいろあります。 ゲンジボタルの一生の学習をとおし
て、ゲンジボタルがすめる環境につい
てやゲンジボタルの減少した原因を調
べ、わたしたちの暮らしとのかかわり
や街づくりについて話し合いましょう。 2.成虫の行動の観察 ① オスとメスの明滅〈光ったり消えたりすること〉のちがいを調べよう。また、明滅(めいめつ)の間隔や 1分間の回数を調べよう。
② オスとメスの飛び方のちがいや交尾や産卵のようすを観察しよう。 3.幼虫のすんでいる環境の観察 ゲンジボタルはきれいな水から少し汚れた程度の水にすむカワニナを食べます。ヘイケ ボタルは水田や農業用水路などの汚れた水にすむサカマキガイを食べます。また、どちら も卵→幼虫→さなぎ→成虫と変態します。 ① 水の流れや深さ、川底のようす、水温や水質を継続して調べよう。 ② すんでいる貝類(幼虫の餌)の種や他にどんな生き物がすんでいるかを調べよう。 ③ 護岸のようすや高さ、岸辺や草木のようすを観察して、生活していける環境かどうかを調べよう。
サカマキガイ
水生生物を観察して水の汚れを調べてみよう
き
れ
い
な
水
Ⅰ
12mm 20mm 21mm 42mm 6mm
○クロタニガワカゲロウ ○フタスジモンカゲロウ ○ニシカワトンボ ○ミルンヤンマ ○シマアメンボ
60mm 13mm 8.5mm
○ヘビトンボ ○ニンギョウトビケラ ○モンキマメゲンゴロウ ○ニッポンヨコエビ 12mm ○サワガニ 甲ら幅40mm
少
し
汚
れ
た
水
Ⅱ
ゲ
ン
ジ
ボ
タ
ル
10mm 12mm 5mm 20mm 10mm 26mm
○キイロカワカゲロウ ○シロタニガワカゲロウ ○コカゲロウの仲間 ○モンカゲロウ ○オナシカワゲラ ○ハグロトンボ
35mm 45mm 30mm 10mm 60mm 35mm 30mm
○ヤマサナエ ○オニヤンマ ○コヤマトンボ ○コガタシマトビケラ ○スジエビ ○カワニナ ○マシジミ
汚
れ
た
水
Ⅲ 7mm 25mm 30mm 43mm 16mm 10mm 40mm 35mm○サホコカゲロウ ○シオカラトンボ ○タイコウチ ○ミズカマキリ ○アメンボ ○ミズムシ ○シマイシビル ○ヒメタニシ
ヘ
イ
ケ
ボ
タ
ル
大
変
汚
れ
た
水
Ⅳ
幼虫12mm 蛹 7mm 成虫6mm 成虫15mm 幼虫20mm 100mm 12mm 40mm 細菌のかたまり
○セスジユスリカ ○ハナアブ ○アメリカザリガニ ○サカマキガイ ○イトミミズ ○ミズワタ
・観察した種の○に∨のしるしをつけよう。 ・生かしたまま観察して、終わったらもとの場所へ返してやろう。 ・調査地点の水質がきまれば、水の汚れ地図を作ろう。
発行所 大和郡山市矢田町574番地 大和郡山市立少年自然の家
執筆者 谷 幸 三 発行年月日 平成13年 3月 31日