ユーザ指向型データベース「koala/ザイトス」の構築info.numazu-ct.ac.jp/comm01/include/netcommons_file.php?...ユーザ指向型データベース「koala/ザイトス」の構築...

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ユーザ指向型データベース「KOALA/ザイトス」の構築 神 智也 ※1 市坪 誠 ※2 佐野 浩実 ※1 ※1 国立高専機構本部事務局 総務課情報企画係 ※2 国立高専機構本部事務局 教育研究調査室長 概要 国立高専機構は平成19年3月に,Webブラウザで利用可能なファイル(管理)サ ーバシステム「Xythos Digital Locker 6」を導入した。このシステムを利用し,総合的な データベースを構築して高専みんなで情報を共有し,また,メール添付や機密データの 取り扱いなどの情報セキュリティ対策の基盤が整うこととなった。この「KOALA/ザイトス」 が,国立高専全体における情報格差を解消し,全体発展に結びつくことを目指す。 1.はじめに システムを導入したきっかけは,機構の中期計画 に記載されている「(4)教育の質の向上及び改善の ためのシステム」の中で,「④ 教育研究の状況につ いての自己点検・評価、及び認証を受けた者による 評価など多角的な評価への取組みによって教育の 質の保証がなされるように,総合的なデータベース を計画的に整備する。」を具体化するためであった が,本システムは多機能にわたっており,データベ ース整備以外での活用も可能である。 今後,教職員に1人1個のアカウント(ユーザIDと パスワード)を配布し,「KOALA/ザイトス」利用の 推進を図りたいため,まずは,このシステムの特徴や までの運用状況,今後の展開や導入効果につい て,ご理解を頂きたいと考えている。 2.システムの概要 表1にシステムの基本構成,表2に対応ブラウザ, 図1にアクセス経路図を示す。「ザイトス(Xythos)」 は,クライアント側で専用ソフトが必要がなく,またプ ラットホームに依存しないWebブラウザで利用可能 なファイル(管理)サーバシステムであり,操作方法 も簡単である。また,「WebDAV」をサポートしてお り,Windowsでは「マイネットワーク(Webフォルダ)」 から,MacOSでは「Finder」からも,サーバに接続可 能である。 表1 サーバ(3台) ハードウェアとソフトウェアの基本構成 ザイトスサーバ データベースサーバ バックアップサーバ 機種 HP ProLiant DL360 G5 HP ProLiant DL380 G5 HP ProLiant DL360 G5 CPU QuadCore XeonE5335 2GHz QuadCore XeonE5320 1.86GHz DualCore Xeon5110 1.60GHz メモリ 4 GB 4 GB 2 GB 内蔵HDD 72GB×2 (RAID1) 72GB×2 (RAID1) 72GB×2 (RAID1) 外部HDD 300GB×11 (RAID5) 左記外部HDDを併用 500GB×6 (RAID5) OS RedHat Enterprise Linux ES 4 RedHat Enterprise Linux ES 4 RedHat Enterprise Linux ES 4 Apache 2.0.52/Tomcat 5.5.20 PostgreSQL 8.1.8 rsync サービス Xythos DigitalLocker 6.0.50.4 F-Secure 4.65.7020 表2 Web ブラウザとメールソフト の対応状況一覧 Webブラウザ メールソフト InternetExplorer 5.5/6.0/7.0 Outlook/OutlookExpress/AL-Mail Windows Firefox 1.0 以上/Netscape 7.0 以上 Shuriken/Eudora/Thunderbird Mozilla 1.6 以上/Opera 9.0 Becky/WinBiff InternetExplorer 5.2/Netscape 7.0 以上 AppleMail/Thunderbird MacOS Firefox 1.0 以上/Mozilla 1.6 以上 Opera 9.0/Safari 1.2 以上 Unix Netscape 7.0 以上/Firefox 1.0 以上 Mozilla 1.6 以上/Opera 9.0

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  • ユーザ指向型データベース「KOALA/ザイトス」の構築

    神 智也※1 市坪 誠※2 佐野 浩実※1

    ※1国立高専機構本部事務局 総務課情報企画係※2国立高専機構本部事務局 教育研究調査室長

    概要 国立高専機構は平成19年3月に,Webブラウザで利用可能なファイル(管理)サ

    ーバシステム「Xythos Digital Locker 6」を導入した。このシステムを利用し,総合的な

    データベースを構築して高専みんなで情報を共有し,また,メール添付や機密データの

    取り扱いなどの情報セキュリティ対策の基盤が整うこととなった。この「KOALA/ザイトス」

    が,国立高専全体における情報格差を解消し,全体発展に結びつくことを目指す。

    1.はじめに

    システムを導入したきっかけは,機構の中期計画

    に記載されている「(4)教育の質の向上及び改善の

    ためのシステム」の中で,「④ 教育研究の状況につ

    いての自己点検・評価、及び認証を受けた者による

    評価など多角的な評価への取組みによって教育の

    質の保証がなされるように,総合的なデータベース

    を計画的に整備する。」を具体化するためであった

    が,本システムは多機能にわたっており,データベ

    ース整備以外での活用も可能である。

    今後,教職員に1人1個のアカウント(ユーザIDと

    パスワード)を配布し,「KOALA/ザイトス」利用の

    推進を図りたいため,まずは,このシステムの特徴や

    までの運用状況,今後の展開や導入効果につい

    て,ご理解を頂きたいと考えている。

    2.システムの概要

    表1にシステムの基本構成,表2に対応ブラウザ,

    図1にアクセス経路図を示す。「ザイトス(Xythos)」

    は,クライアント側で専用ソフトが必要がなく,またプ

    ラットホームに依存しないWebブラウザで利用可能

    なファイル(管理)サーバシステムであり,操作方法

    も簡単である。また,「WebDAV」をサポートしてお

    り,Windowsでは「マイネットワーク(Webフォルダ)」

    から,MacOSでは「Finder」からも,サーバに接続可

    能である。

    表1 サーバ(3台) ハードウェアとソフトウェアの基本構成ザイトスサーバ データベースサーバ バックアップサーバ

    機種 HP ProLiant DL360 G5 HP ProLiant DL380 G5 HP ProLiant DL360 G5CPU QuadCore XeonE5335 2GHz QuadCore XeonE5320 1.86GHz DualCore Xeon5110 1.60GHzメモリ 4 GB 4 GB 2 GB

    内蔵HDD 72GB×2 (RAID1) 72GB×2 (RAID1) 72GB×2 (RAID1)外部HDD 300GB×11 (RAID5) 左記外部HDDを併用 500GB×6 (RAID5)

    OS RedHat Enterprise Linux ES 4 RedHat Enterprise Linux ES 4 RedHat Enterprise Linux ES 4Apache 2.0.52/Tomcat 5.5.20 PostgreSQL 8.1.8 rsync

    サービス Xythos DigitalLocker 6.0.50.4F-Secure 4.65.7020

    表2 Web ブラウザとメールソフト の対応状況一覧Webブラウザ メールソフト

    InternetExplorer 5.5/6.0/7.0 Outlook/OutlookExpress/AL-MailWindows Firefox 1.0 以上/Netscape 7.0 以上 Shuriken/Eudora/Thunderbird

    Mozilla 1.6 以上/Opera 9.0 Becky/WinBiffInternetExplorer 5.2/Netscape 7.0 以上 AppleMail/Thunderbird

    MacOS Firefox 1.0 以上/Mozilla 1.6 以上Opera 9.0/Safari 1.2 以上

    Unix Netscape 7.0 以上/Firefox 1.0 以上Mozilla 1.6 以上/Opera 9.0

  • 図1 「KOALA/ザイトス」へのアクセス経路図

    KOALA/ザイトス

    1.5~2M bps

    インターネット

    高専間広域 LAN

    機構本部

    ファイアウォール

    インターネット回線接続(優先)

    高専間広域LAN接続https://172.31.59.153/

    https://koala.kosen-k.go.jp/各高専にて回線速度が異なります

    ※財務会計システムや人事給与システムもこちらの専用回線(KDDI)を経由して接続

    各高専と機構本部のみアクセス可能

    30M bps

    30M bps

    (ベストエフォート)

    100M bps

    国立55高専

    ※外部機関発行の証明書

    ※自己証明書

    (FWにグローバルIPを登録)

    ※各高専で通常利用しているインターネット接続回線

    3.高専みんなで情報を共有しませんか

    本システム「ザイトス」を利用して,総合的なデー

    タベースを構築するにあたり,まず,「KOALA(コア

    ラ)」(KOsen Access to Libraries and Archives の

    略)という,親しみやすい愛称をつけた。「KOALA」

    の利用概念図を図2に示す。

    この「KOALA」構築における目指すところは,例

    えば,「事件・事故・伝染病・情報漏えい等インシデ

    ントが発生した場合,このデータベースをキーワード

    で検索することにより,他高専での対応事例を容易

    に参照することができ,それを参考に迅速な対応が

    可能となる」というような活用が実現できることとなる。

    また,これに限らず他の案件でも,必要な情報を

    瞬時に調べられ利用することが可能となり,比較検

    討のデータ収集のわずらわしさの解消,他高専への

    問い合わせ時間の短縮,資料規格化による入力手

    間の削減等のメリットがあり,各高専での研究・学生

    指導の企画立案や支援に役立つと共に、事務量の

    軽減も期待している。

    現在,「KOALA」に登録されているデータは,機

    構本部所有の「事業報告書」に関する統計的なデ

    ータ(約180個)にとどまっており,本来目指す活用

    には至っていない。本部でも分野拡大等の戦略を

    たて,有用なデータをできる限り登録しているが限

    界がある。今後,データを拡充するためには,高専

    教職員の協力が必要不可欠であり,積極的なデー

    タ登録を呼びかけるものである。

    この「KOALA」を,高専みんなで考え,みんなで

    作り,そして,みんなで情報を共有しませんか。

  • 図2 「KOALA(コアラ)」の利用概念図

    A高専

    総合データベース「KOALA」(コアラ)

    B高専

    機構本部

    ガイドラインに沿って,複数階層で適切に分類されたフォルダを用意し

    登録します。登録するデータのファイル形式に制限はありません。

    また,データのメタ情報から,キーワード検索することも可能です。

    ■ 第1階層のフォルダ構成

    教育,研究,学生,社会連携,人事,予算,管理運営,広報,施設

    ※第2階層以下のフォルダ構成は,KOALAにある下記一覧表を参照

    [KOALA]→[Z_その他]→[01_ザイトス] →[03_総合DBディレクトリ構成一覧]

    A_教育

    第1階層

    01_入学者の確保

    ・・・

    01_中学校長会との連携状況

    11_入学動機に関するアンケート

    02_学校のPRとなった報道事例

    第2階層 第3階層

    「 KOALA 」 の フォルダ構成例

    ・・・02_教育課程

    07_評価

    Z_その他

    ・・・

    画面例②: Webフォルダ(WebDAV)

    画面例①: Webブラウザ

    4.メール添付に対する意識改革を

    個人情報や機密情報を取り扱うことが増えた今,

    メール添付によるファイルのやりとりは,情報漏えい

    の原因の1つで非常に危険である。また,容量制限

    やメーラの相性等で添付ファイル受信でトラブルも

    多く,周知や連絡等が確実にとれないことも多い。

    そこで,「ザイトス」に装備されているEメールリンク

    (チケット/URL)と呼ばれる機能を活用することで,

    メールへファイルを添付しないで,ファイルのやりとり

    が可能となる。この利用法については図3に示す。

    現在,各高専と機構本部間(本部内含む)のみに

    限り,メール添付原則禁止という方針を打ち出し,積

    極的にこの機能(Eメールリンク)を活用している。こ

    れにより,メール添付による容量制限やメーラの相

    性等のトラブルが激減し,また,メール添付の危険

    性や重要ファイルへの取り扱いに対して,各個人の

    意識に変化が現れ,情報セキュリティへの意識が向

    上している。

    また,この他に,機構本部と各高専の担当者(業

    務別)間の専用フォルダにおけるファイル共有との

    併用で,業務効率も良くなり,ザイトス導入の効果

    が,少しずつ現れはじめている。

    今後,事務部に限らず,高専教職員全体に対し

    て,メール添付の危険性を訴え,本部と高専間に限

    らず,高専内および高専間においても,ザイトスのE

    メールリンク(URL)機能の活用を,積極的に推進し

    たい。

    また,高専内および高専間での専用フォルダに

    おけるファイル共有でも,このザイトスを有効活用し

    て頂き,業務効率化やセキュリティ保持等が図れる

    よう,各高専からの要望に応じながら,柔軟かつ安

    全なアクセス権等の設定を行い,運用したいと考え

    ている。

    このザイトスの導入や活用をきっかけに,メール添

    付の危険性や機密ファイルの取り扱いなどの情報セ

    キュリティに対する教職員の意識が,高専全体で少

    しでも向上できるよう目指している。

  • 図3 「ザイトス」を利用したファイル受け渡しの流れ

    送付したいファイルをザイトスにアップロード

    ザイトス

    ② 自動生成されるURL(ザイトス上に保存したファイルまたはフォルダへのアクセスURL)をメールで送信 [添付ファイル無]

    送付されてきたURLにアクセスして,ファイルをザイトスからダウンロード

    【例】 https://koala.kosen-k.go.jp/xythoswfs/webui/_xy-1512272_1-t_zSfAjizK

    A高専

    (送信側)

    B高専

    (受信側)

    ファイルをザイトスにアップしたら,対象ファイルを選択して,「Eメール」というアイコンをクリック

    自動生成されたURLが貼り付けられた状態で,通常利用しているメーラが自動起動

    ※宛先/件名/本文 を入力してメール送信

    ① ③②

    メールで送付されてきたURLにアクセスし,ファイルをザイトスからダウンロード

    【実際のザイトス画面】 【メーラ例:Thunderbird】

    ※ファイルの種類は何でもOK。対象はフォルダも可 ※WordやExcelの場合はソフトが起動

    【表示例:PDF形式のファイル】

    5.今後の課題

    「Xythos Ver7」が平成20年3月にリリースされて

    おり,サポートの保守契約を結んでいることから,本

    システムにおいて,このVer7へは無償でバージョン

    アップが可能である。このVer7では,WikiやRSSなど

    の機能が標準で装備され,キーワードの情報付け

    および検索が,現バージョン(Ver6)よりもかなり充実

    されたことから,早くに移行したいと考えている。

    6.まとめ

    この「KOALA/ザイトス」が,気楽に使える便利な

    ツールになるよう,情報セキュリティを重視しながら

    運用している。効率的かつ安定的な運用にするた

    めには,各高専からの協力が必要不可欠であり,積

    極的な利用をお願いする次第である。

    情報共有による全体発展を目指し,教員は

    教育や研究に注力するため,職員は行政管理のプ

    ロとなるため,最終的には「主役である学生」に,より

    良い教育を行うために,この「KOALA/ザイトス」が

    とても役に立ったと,言われることを願って。

    謝辞

    本システムの構築にあたり,東京高専水谷惟恭校

    長を座長とする総合DBワーキンググループ(東京高

    専)のメンバーの皆様をはじめ,技術的なサポートを

    頂きました舘泉雄治先生(東京高専)に対しまして,

    多大なご協力を頂きましたことを,この場をお借りし

    て,深くお礼申し上げます。

    参考資料

    [1]Xythos Webサイト http://www.xythos.jp/

    CaseStudies 東京電機大学/東京高専