foeasを用いた水田汎用化...
TRANSCRIPT
FOEASを用いた水田汎用化による大豆作での増収効果
○佐藤 輝幸・中西 誠二郎*・青田 聡
(農業総合センター・*会津農林事務所)
はじめに
ほ場整備事業により水田の汎用化を進めているが、水田で転作作物(大豆等)の畑作物を栽培しても、土質条件や経年劣化等による排水不良により期待した収量が確保されていないため、水田汎用化に資する排水対策技術の確立が求められている。
そこで、汎用化水田の排水対策工法としてFOEASについて実証試験を行い、大豆への湿害を低減させる技術を確立する。
FOEASとは
FOEASとは、従来の暗渠排水と異なり、作物栽培に最適な地下水位の設定を可能とした地下水位制御システム。
水位管理器により、任意の水位で用水の供給を停止でき、排水調節器により設定水位以上の余剰水は排水される。
FOEAS(地下水位制御システム)の標準的なレイアウト
設定水位よりも低いときは給水
地下水位が高い時は排水
地下水位の自動制御
従来の暗渠とFOEASの違い従来の暗渠 FOEAS
調査方法
調査場所:
農業総合センター109番ほ場
土壌区分:灰色低地土、土質分類:ML(シルト)
試験区の設定:
FOEAS区(地下かんがい) 大豆 20a
対照区(旧暗渠排水のみ) 大豆 6a
調査場所
地下かんがいの設定:
ア FOEAS区
高密度ポリエチレン製有孔管
(主管φ100mm,吸水管φ50mm)
深さ:地表下0.5m,間隔9.0mで設置
弾丸暗渠:長さ5.0m,間隔1.0m(疎水材:モミガラ)
調整地下水位高:地表面下6月約-50cm
7〜9月上旬約-30cm,以降 -80cm
イ 対照区
ポリコルゲート波形管φ75mm
深さ:地表下0.6~0.8m
調査項目:
ア 大豆(タチナガハ)の生育調査:
草丈、主茎長、分枝数、主茎節数、
分枝節数、茎径他
イ 収量調査:
子実重(粒径(大粒、中粒、屑別))
平成24年度の気象
播種後気温は、6月は平年並み、7〜8月は高めに推移した。
準平年(2001~2010年郡山AMeDAS)と比較すると7月は140mm(準平年の67%)で少なめ、8月は22mm(同14%)と極めて少なかった。
干ばつ傾向であったが、FOEAS区はかん水作業が不要であった。
生育段階と成熟期の生育状況と収量
播種期 開花期 生育比較(9月5日) 成熟期 主茎長主茎節数
分枝数
1本当り莢数粗子実重
精子実重
同標準差比
等級
区分 草丈 主茎長 根長 稔実 不稔
(月/日) (月/日) (cm) (cm) (cm) (月/日) (cm) (節/本) (節/本) (莢) (莢) (kg/a) (kg/a)
FOEAS区 6/7 8/1 117 68 33 11/5 69 14.8 5.3 52.3 2.8 50.2 27.6 150 1等中
対照区 6/7 8/5 98 58 25 11/13 62 14.7 4.7 38.3 3.6 27.5 18.4 (100) 1等下
大豆の生育状況
播種:6月7日
収穫:11月1日
草丈は、FOEAS区と対照区を比較すると、9月5日
でFOEAS区が20cm大きくなった。
大豆の収量(精子実重)
収量ではFOEAS区の27.6kg/aに対し、対照区は
18.4kg/aとなり、FOEAS区が1.5倍の増収となっ
た。
大豆の品質
等級はFOEAS区の1等中に対して、対照区は1等下であった。
粒径は、大粒がFOEAS区では96%、対照区は、69%と差がみられた。
生育状態(24.10.7) 対照区(左)・FOEAS区(右)
草丈比較(24.10.1) 対照区(左)・FOEAS区(右)
まとめ
試験ほ場の土壌は、シルト及び粘土分を多く含む粘性土(灰色低地土)で一旦、降雨があると滞水し、排水不良地であったが、FOEAS区では大豆の生育が良好で、精子実重は、対照区と比較して1.5倍となった。
また、平成24年度は干ばつの傾向で推移したが、FOEAS区のかん水は不要で、かん水作業の省力化が図られた。